車両用衝撃吸収操舵装置およびこれに用いる中間シャフトのチューブの製造方法
【課題】蛇腹部が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置を提供する。
【解決手段】本車両用衝撃吸収操舵装置1の中間シャフト5は、チューブ35を含む。チューブ35は、円筒をなす第1の端部38および第2の端部39と、第1の端部38および第2の端部39の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部40とを含む。蛇腹部40は、中間シャフト5の軸方向S2に交互に配置された山部41および谷部42を有する。蛇腹部40の山部41の外径D3が、円筒の外径D1,D2と等しくされている。または小さくされてもよい。車両の衝突のときに、蛇腹部40が屈曲することにより相隣接する山部41の頂部43が互いに当接し、互いに当接した蛇腹部40の山部41の頂部43を支点として、さらに蛇腹部40が屈曲する。
【解決手段】本車両用衝撃吸収操舵装置1の中間シャフト5は、チューブ35を含む。チューブ35は、円筒をなす第1の端部38および第2の端部39と、第1の端部38および第2の端部39の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部40とを含む。蛇腹部40は、中間シャフト5の軸方向S2に交互に配置された山部41および谷部42を有する。蛇腹部40の山部41の外径D3が、円筒の外径D1,D2と等しくされている。または小さくされてもよい。車両の衝突のときに、蛇腹部40が屈曲することにより相隣接する山部41の頂部43が互いに当接し、互いに当接した蛇腹部40の山部41の頂部43を支点として、さらに蛇腹部40が屈曲する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収操舵装置およびこれに用いる中間シャフトのチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用衝撃吸収操舵装置は、ステアリングシャフトおよびステアリングギヤを連結する中間シャフトを有している。この中間シャフトは、屈曲変形可能な中空の蛇腹部を有している。車両の衝突時に、ステアリングギヤが車両後方に移動するのに伴って、中間シャフトの蛇腹部が屈曲変形し、その結果、中間シャフトの両端部間の距離が短くなるようになっている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
【特許文献1】特開2004−352011号公報
【特許文献2】特開平8−198123号公報
【特許文献3】特開2007−145061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、衝撃吸収のときに、蛇腹部の屈曲の角度をあまり大きくできないので、衝撃吸収のときに、中間シャフトの両端部間の距離の収縮量をあまり大きくできなかった。また、車両の小型化、および室内空間の確保のために、中間シャフトの小型化が要請されている。
そこで、本発明の目的は、蛇腹部が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置およびこれに用いる中間シャフトのチューブの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の車両用衝撃吸収操舵装置(1)は、操舵部材(2)に連結されたステアリングシャフト(3)と、転舵輪(16)を転舵するためのステアリングギヤ(11)と、上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤの間に介在し上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤを連結する中間シャフト(5)と、上記中間シャフトおよび上記ステアリングシャフトを連結する第1の自在継手(4)と、上記中間シャフトおよび上記ステアリングギヤの入力部材(7)を連結する第2の自在継手(6)と、を備え、上記中間シャフトは、チューブ(35)を含み、上記チューブは、第1の端部(38)と、第2の端部(39)と、上記第1の端部および上記第2の端部の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部(40,40A)とを含み、上記蛇腹部は、上記中間シャフトの軸方向(S2)に交互に配置された山部(41)および谷部(42)を有し、上記第1の端部および上記第2の端部は、円筒をなし、上記第1の端部および上記第2の端部のそれぞれのなす上記円筒の中心軸線(C1,C2)は、上記第1の自在継手および上記第2の自在継手の継手中心(27,31)間を結ぶライン(32)に一致しており、上記蛇腹部の上記山部の外径(D3)が、上記円筒の外径(D1,D2)と等しいかまたは小さくされており、車両の衝突のときに、上記蛇腹部が屈曲することにより相隣接する上記山部の頂部(43)が互いに当接し、互いに当接した上記蛇腹部の上記山部の上記頂部を支点として、さらに上記蛇腹部が屈曲するようにしてあることを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、車両の衝突のときに、蛇腹部の屈曲に伴って、相隣接する山部の頂部が互いに当接した後、これら互いに当接した山部の頂部を支点として、さらに蛇腹部が屈曲する。このとき、蛇腹部の山部の外径が、円筒の外径と等しいかまたは小さくされているので、相隣接する山部の頂部が互いに当接するまでの蛇腹部の屈曲の角度が大きくなる。蛇腹部の屈曲の角度が大きいほどに、中間シャフトを軸方向に圧縮するときに、互いに当接する山部の頂部を屈曲の支点とする曲げモーメントが大きくなる。従って、山部が互いに当接した状態で、蛇腹部が屈曲し易くなる。
【0006】
結果として、蛇腹部の屈曲角度を大きくできる。その結果、蛇腹部の屈曲角度が小さい場合と比較して、衝撃吸収するときの第1および第2の自在継手の継手中心間の距離の収縮量を大きくすることができる。ひいては、上述の収縮量を所要量で確保するという条件のもとで、衝撃吸収前の第1および第2の自在継手の継手中心間の距離を小さくできる。従って、蛇腹部が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置を実現できる。
【0007】
また、本発明の中間シャフトのチューブの製造方法は、上記本発明の上記車両用衝撃吸収操舵装置に用いる上記中間シャフトの上記チューブの製造方法であって、素管としての円筒管(48)の軸方向(S3)の中間部(55)を内側からの加圧により塑性変形させることにより、蛇腹部(58)を有しその蛇腹部の両端(62)の山部(59)の頂部(61)が円筒をなす製造用中間体(49)を得る工程(51)と、上記製造用中間体の上記蛇腹部の上記両端の上記山部の上記頂部のなす上記円筒を切断する工程(52)とを含むことを特徴とする。本発明によれば、蛇腹部の山部の外径を、チューブの円筒の外径と等しいかまたはこの外径よりも小さくしたチューブを容易に製造できる。
【0008】
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施の形態の添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態の車両用衝撃吸収操舵装置の概略構成の模式図であり、(a)に衝撃を吸収する前の通常状態を、(b)に衝撃を吸収した状態を図示している。車両用衝撃吸収操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間シャフト5と、中間シャフト5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7と、ピニオンシャフト7の端部近傍に設けられたピニオン歯8に噛み合うラック歯9を有して自動車の左右方向(図1(a)において紙面垂直方向に相当する。)に延びる転舵軸としてのラックバー10とを有している。
【0010】
ピニオンシャフト7およびラックバー10によりラックアンドピニオン機構からなるステアリングギヤ11が構成されている。ピニオンシャフト7は、ステアリングギヤ11の入力部材として機能する。ラックバー10は、車体12に固定されるラックハウジング13内に図示しない複数の軸受を介して直線往復可能に支持されている。ラックバー10には、一対のタイロッド14(一方のみ図示)が結合されている。各タイロッド14は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪16に連結されている。
【0011】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン歯8およびラック歯9によって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪16の転舵が達成される。
また、車両用衝撃吸収操舵装置1は、ステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム17と、このステアリングコラム17を車体12に支持する支持部材18とを有している。
【0012】
ステアリングコラム17は、ステアリングシャフト3を、当該ステアリングシャフト3の軸方向S1の上方へ相対移動不能に保持している。
また、ステアリングコラム17は、ステアリングシャフト3の軸方向S1に平行に延びている。例えば、操舵部材2が上側となるように、ステアリングシャフト3の中心軸線が車両の前後方向Xに対して斜めにされて、ステアリングコラム17が車体12に支持されている。
【0013】
支持部材18は、車両衝突時にステアリングコラム17およびステアリングシャフト3が共に車体12に対して車両の後方XBへ向けて移動することを規制している。
中間シャフト5は、ステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11の間に介在している。中間シャフト5は、ステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11を連結している。中間シャフト5は、ステアリングシャフト3から伝達されたトルクを、ステアリングギヤ11のピニオンシャフト7に伝達する。
【0014】
また、中間シャフト5の中心軸線が、車両の前後方向Xに対して斜めになるように配置されている。また、中間シャフト5は、ステアリングシャフト3に対して斜めに配置されている。
また、中間シャフト5は、衝撃吸収するときに、屈曲しつつ収縮するようにされている(図1(a)および図1(b)参照。)。以下では、特に説明しないときには、衝撃吸収前の通常時の状態を基に説明する。
【0015】
図2は、図1に示す中間シャフト5およびその周辺部分の模式的な側面図であり、部分的に断面表示してある。図2を参照して、第1の自在継手4は、ステアリングシャフト3の端部に固定された第1のヨーク21と、中間シャフト5の一方の端部に固定された第2のヨーク22と、第1および第2のヨーク21,22間を連結する十字軸23とを有している。
【0016】
十字軸23は、4つの軸部としてのトラニオン24(一部のみ図示)を有している。4つのトラニオン24は、互いに直交する第1および第2の中心軸線25,26上に十の字状に配置されている。なお、第2の中心軸線26は、図2の紙面垂直方向に延びている。4つのトラニオン24のうちの2つのトラニオン24は、第1の中心軸線25に沿って互いに逆向きに延びており、第1のヨーク21に回動可能に支持されている。残りの2つのトラニオン24は、第2の中心軸線26に沿って互いに逆向きに延びており、第2のヨーク22に回動可能に支持されている。十字軸23の第1および第2の中心軸線25,26の交点が、第1の自在継手4の継手中心27である。
【0017】
第2の自在継手6については、第1の自在継手4との相違点を中心に説明する。第2の自在継手6は、中間シャフト5の他方の端部に固定された第1のヨーク28と、ピニオンシャフト7の端部に設けられた第2のヨーク29と、第1および第2のヨーク28,29間を連結する十字軸30とを有する。
第2の自在継手6の十字軸30の構成要素は、第1の自在継手4の十字軸23の構成要素と同じである。第1および第2の自在継手4,6の十字軸23の構成要素は、互いに同じ符号を付してある。第2の自在継手6の十字軸30の第1および第2の中心軸線25,26の交点が、第2の自在継手6の継手中心31である。なお、第2の自在継手6の十字軸30の第2の中心軸線26は、図2の紙面垂直方向に延びている。
【0018】
中間シャフト5は、第1の自在継手4の継手中心27と第2の自在継手6の継手中心31とを結ぶライン32を回転中心軸線として回転する。中間シャフト5は、ライン32を中心軸線とした回転体形状をなしている。また、中間シャフト5は、チューブ35と、シャフト36とを有している。
シャフト36は、金属製の軸である。シャフト36の軸方向の一方の端部は、チューブ35に固定されている。シャフト36の軸方向の他方の端部は、第2の自在継手6の第1のヨーク28に固定されている。
【0019】
チューブ35は、金属部材により形成されており、中間シャフト5の軸方向S2に沿って延びている。チューブ35は、中間シャフト5の軸方向S2に関する第1および第2の端部38,39を有している。また、チューブ35は、第1の端部38および第2の端部39間に介在した蛇腹部40を有している。
第1の端部38と、第2の端部39と、蛇腹部40とは、単一の材料により一体に形成されている。チューブ35の第1の端部38は、第1の自在継手4の第2のヨーク22に固定されている。第2の端部39は、シャフト36の端部に固定されている。
【0020】
図3は、図2に示す中間シャフト5のチューブ35の断面図である。図2および図3を参照して、第1の端部38は、円筒をなしている。第2の端部39は、円筒をなしている。第1の端部38のなす円筒(以下、第1の円筒ともいう。)および第2の端部39のなす円筒(以下、第2の円筒ともいう。)は、互いに同心に配置されている。第1の端部38のなす円筒の中心軸線C1および第2の端部39のなす円筒の中心軸線C2は、上述のライン32に一致している。
【0021】
第1および第2の円筒の外周は、互いに同じ円形に形成されている。この円形の直径が、第1および第2の円筒の外径D1,D2である。
図3を参照して、蛇腹部40は、複数の山部41と、複数の谷部42とを有している。山部41と谷部42とが、中間シャフト5の軸方向S2に交互に並んでいる。また、中間シャフト5の軸方向S2に関する蛇腹部40の両端部には、山部41が配置されている。具体的には、蛇腹部40は、4つの山部41と、3つの谷部42とを有している。
【0022】
各山部41は頂部43(一部のみ図示)を有している。また、蛇腹部40の両端部にある一対の山部41の頂部43は、対応する第1および第2の円筒になめらかに連続してつながっている。
各山部41の頂部43は、中間シャフト5の軸方向S2を含む断面において、凸湾曲形状をなしている。各山部41の頂部43の外周は、中間シャフト5の軸方向S2に垂直な断面において円形をなしている。この円形の直径が山部41の外径D3に相当する。また、各山部41の頂部43の外径D3が、第1の円筒の外径D1(第2の円筒の外径D2でもよい。)と等しくされている。
【0023】
各谷部42は、互いに同じ形状をなしている。各谷部42は底部44を有している。
また、蛇腹部40は、塑性変形可能である。車両の衝突時には、蛇腹部40が塑性変形する。これにより、衝撃エネルギーが吸収されるようになっている。これとともに、蛇腹部40が収縮し、また屈曲する。
図4は、図3のチューブ35の蛇腹部40が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に小さい状態を示す。図5は、図3のチューブ35の蛇腹部40が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に大きい状態を示す。なお、図3は、チューブ35の自然状態を示す。自然状態は、チューブ35が車両に取り付けられ且つ車両が衝突していないときに、チューブ35が屈曲しておらず且つ収縮していない状態である。
【0024】
先ず、図1を参照して、車両が衝突したときに、衝撃力が所定の大きさよりも大きくなると、ステアリングギヤ11が車両の後方XBへ向けて車体12に対して移動する。これとともに、蛇腹部40は、中間シャフト5の軸方向S2に衝撃力を受けて、収縮する。このとき、中間シャフト5は曲げモーメントを受けるので、蛇腹部40が屈曲する。蛇腹部40のうちの下部45を湾曲の内側として、蛇腹部40全体が湾曲するようになる。なお、図1には、上下方向Zを図示した。
【0025】
図3および図4を参照して、蛇腹部40が屈曲することにより、相隣接する山部41の頂部43の下部45が互いに当接する。やがて、相隣接する全ての山部41の頂部43の下部45が互いに当接する。このように互いに当接した山部41の頂部43の下部45が曲げの支点として機能する(この状態を図4に図示した。)。
図4および図5を参照して、上述の曲げの支点の周りに、さらに蛇腹部40が屈曲する。その結果、相隣接する谷部42の底部44の下部46が互いに当接する。また、山部41の頂部43の上部同士の間隔が大きくなる。これにより、蛇腹部40全体が塑性変形を伴って大角度で屈曲する。
【0026】
図1および図2を参照して、以上説明したように、本実施形態の車両用衝撃吸収操舵装置1は、操舵部材2に連結されたステアリングシャフト3と、転舵輪16を転舵するためのステアリングギヤ11と、ステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11の間に介在しステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11を連結する中間シャフト5と、中間シャフト5およびステアリングシャフト3を連結する第1の自在継手4と、中間シャフト5およびステアリングギヤ11の入力部材としてのピニオンシャフト7を連結する第2の自在継手6と、を備えている。中間シャフト5は、チューブ35を含んでいる。チューブ35は、第1の端部38と、第2の端部39と、第1の端部38および第2の端部39の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部40とを含んでいる。蛇腹部40は、中間シャフト5の軸方向S2に交互に配置された山部41および谷部42を有している。第1の端部38および第2の端部39は、円筒をなしている。第1の端部38および第2の端部39のそれぞれのなす円筒の中心軸線C1,C2は、第1の自在継手4および第2の自在継手6の継手中心27,31間を結ぶライン32に一致している。蛇腹部40の山部41の外径D3が、第1および第2の円筒の外径D1,D2と等しくされている。車両の衝突のときに、蛇腹部40が屈曲することにより相隣接する山部41の頂部43が互いに当接し、互いに当接した蛇腹部40の山部41の頂部43を支点として、さらに蛇腹部40が屈曲するようにしてある。
【0027】
本実施形態によれば、車両の衝突のときに、蛇腹部40の屈曲に伴って、相隣接する山部41の頂部43が互いに当接した後、これら互いに当接した山部41の頂部43を支点として、さらに蛇腹部40が屈曲する。
このとき、蛇腹部40の山部41の外径D3が、円筒の外径D1,D2と等しいので、相隣接する山部41の頂部43が互いに当接するまでの蛇腹部40の屈曲の角度が大きくなる。蛇腹部40の屈曲の角度が大きいほどに、中間シャフト5を軸方向S2に圧縮するときに、互いに当接する山部41の頂部43を屈曲の支点とする曲げモーメントMが大きくなる。
【0028】
すなわち、継手中心27,31間に作用する圧縮力Pが蛇腹部40を屈曲させる向きの分力P1を生じる(図4参照)。相隣接する山部41の頂部43が互いに当接した状態では、上述の分力P1が、上述の屈曲の支点の周りの曲げモーメントMを生じさせる。この曲げモーメントMの大きさが、蛇腹部40の屈曲の角度が大きくなるほどに、大きくなる。従って、相隣接する山部41の頂部43が互いに当接した状態で、蛇腹部40が屈曲し易くなる。
【0029】
結果として、蛇腹部40の屈曲角度を大きくすることができる。その結果、蛇腹部の屈曲角度が小さい従来の場合と比較して、衝撃吸収するときの第1および第2の自在継手4,6の継手中心27,31間の距離ZA(以下では、継手中心間距離ZAという。)の収縮量を大きくすることができる。なお、継手中心間距離ZAの収縮量は、衝撃吸収の前後での継手中心間距離ZAの差分に相当する。
【0030】
ひいては、上述の継手中心間距離ZAの収縮量を所要量で確保するという条件のもとで、衝撃吸収前の継手中心間距離ZAの値を小さくすることができる。従って、蛇腹部40が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置1を実現することができる。
また、本実施形態の中間シャフト5は、収縮前の長さを短くできるので、収縮後(屈曲状態)の中間シャフト5が占めるスペースを小さくできる。
【0031】
また、蛇腹部40の各山部41の外径D3が、第1の円筒の外径D1および第2の円筒の外径D2のうちの小さいものと等しくされているのが、屈曲し易い蛇腹部40を確実に得るのに好ましい。
また、蛇腹部40の山部41の数(蛇腹部40の軸方向両端部にある山部41を含めた数)が4個の場合には、蛇腹部40を屈曲し易くするのに好ましい。なお、山部41の数は、4個以外の数、例えば、3個とすることも考えられる。
【0032】
図6を参照して、本実施形態の蛇腹部40と従来の蛇腹部(図示せず)との屈曲し易さを比較する。
図6は、図3のチューブ35を含む実施例の中間シャフト5と従来の中間シャフトに相当する比較例の中間シャフトとにおける、継手中心間に作用する圧縮力の大きさPと、継手中心間の距離の収縮量ZBとの関係を模式的に示すグラフである。縦軸に継手中心間に作用する圧縮力の大きさPを、横軸に継手中心間の距離の収縮量ZBを示し、実施例における上述の関係を線G1に示し、比較例における上述の関係を線G2で示す。図6のグラフは、実施例および比較例をコンピュータ上で有限要素法の解析モデルとして作成し、その解析結果として得たものである。
【0033】
ここで、比較例は、実施例のチューブにおいて山部と谷部との関係を逆にしたものに相当とする。すなわち、比較例の蛇腹部の谷部の直径は、第1および第2の円筒の直径と等しくされている。また、比較例の蛇腹部の山部は、3つあり、その直径が第1および第2の円筒の直径よりも大きくされている。
図6に示すように、実施例は、比較例に比べて、中間シャフトの収縮量が大きい。また、実施例では、収縮量が大きくなっても、圧縮力は概ね一定値に飽和する傾向にある。一方、比較例では、収縮量があまり大きくできない。しかも、収縮量が大きくなるほどに、圧縮力は急増する。従って、実施例は、比較例に比べて、屈曲し易いといえる。
【0034】
図7は、図3のチューブ35の製造方法を模式的に示すフローチャートである。図7を参照して、チューブ35を、例えば、以下の製造方法により製造することができる。チューブ35の製造方法は、素管としての円筒管48から半製品としての製造用中間体49を得る第1の工程51と、製造用中間体49から製品としてのチューブ35を得る第2の工程52とを有している。
【0035】
円筒管48は、軸方向S3に真直に延びている。円筒管48の外周は、軸方向S3に垂直な断面において円形をなしている。円筒管48は、軸方向S3の両端部54と、これら両端部54間の中間部55とを有している。
第1の工程51では、円筒管48の軸方向S3の中間部55を拡径する。具体的には、液圧バルジ加工法により、円筒管48の軸方向S3の中間部55を内側からの加圧により塑性変形させる。これにより、製造用中間体49が得られる。
【0036】
この製造用中間体49は、当該製造用中間体49の軸方向S4の両端部に配置された一対の円筒57と、一対の円筒57の間に配置された蛇腹部58とを有している。蛇腹部58は、複数の山部59および複数の谷部60を有している。複数の山部59および複数の谷部60は、製造用中間体49の軸方向S4に交互に並んでいる。
各山部59は、頂部61を有している。製造用中間体49の軸方向S4に関する蛇腹部58の両端62にある一対の山部59の頂部61が円筒をなしている。両端62にある一対の山部59以外の残りの山部59の頂部61は、製造用中間体49の中心軸線を含む断面において、凸湾曲形状をなしている。全山部59の頂部61の外径は、互いに等しくされている。
【0037】
図8は、図7の第1の工程51における円筒管48と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。図9は、図7の第1の工程51における円筒管48と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。図10は、図7の第1の工程51における製造用中間体49と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。図11は、図7の第1の工程51における製造用中間体49と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。図12は、図7の製造用中間体49の断面図である。
【0038】
図8および図9を参照して、第1の工程51では、例えば、製造用治具として、互いに対をなす第1および第2の成形型65,66を用いる。第1および第2の成形型65,66は、互いに組み合わされて用いられる。この状態で、第1および第2の成形型65,66は、空洞部を有している。第1および第2の成形型65,66のそれぞれは、上述の空洞部の内面に、製造用中間体49の蛇腹部58を形成するための成形面67を有している。成形面67は、被加工材としての円筒管48に接してこれを変形させる。
【0039】
図10および図11を参照して、第1および第2の成形型65,66のそれぞれの成形面67は、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59を形成するための第1の部分71と、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62以外の山部59を形成するための第2の部分72と、製造用中間体49の蛇腹部58の谷部60を形成するための第3の部分73と、製造用中間体49の一対の円筒57を形成するための第4の部分74とを有している。各成形面67において、第1の部分71は一対あり、第2の部分72は少なくともひとつ(本実施形態では2つの場合を図示)あり、第3の部分73は、複数、例えば、3つあり、第4の部分74は、一対である。
【0040】
図8および図9を参照して、液圧バルジ加工法の場合に則して説明する。先ず、分割された第1および第2の成形型65,66の内部に、円筒管48がセットされる。このセットされた円筒管48の両端部には、一対の軸押しシリンダ76(一部のみ図示)の端面が接触するようにされる。一対の軸押しシリンダ76は、円筒管48の内部に液圧を供給するための液圧供給口(図示せず)を有しており、第1および第2の成形型65,66にセットされる。第1および第2の成形型65,66が互いに組み合わされて、その内部が閉じられる。
【0041】
図10を参照して、円筒管48の内部に液圧(図示せず)が液圧源により負荷される。これとともに、円筒管48の両端部が軸押しシリンダ76により押圧される。これにより、円筒管48を塑性加工し、成形面67の形状に沿った形状、すなわち、蛇腹形状の製造用中間体49を得ることができる。
図11を参照して、拡径加工後に、軸押しシリンダ76が取り外され、また、第1および第2の成形型65,66を、互いに離隔させる。これにより、製造用中間体49を取り外すことができる。
【0042】
図7および図12を参照して、第2の工程52では、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61のなす円筒を、切断位置CP1で切断する。製造用中間体49において、一対の切断位置CP1の間にある部分は、チューブ35と同じ形状に形成されている。従って、製造用中間体49が切断されることにより、チューブ35が得られる。
【0043】
具体的には、切断により、製造用中間体49は、当該製造用中間体49の軸方向に関する一対の両端部と中間部とに、3分割される。中間部における両端部は、円筒をなしている。この円筒は、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61のなす円筒の少なくとも一部が残されてなる。このようにして、製造用中間体49の一部としての中間部が、チューブ35になる。
【0044】
このように、本実施形態のチューブ35の製造方法は、(1)素管としての円筒管48の軸方向S3の中間部55を内側からの加圧により塑性変形させることにより、蛇腹部58を有しその蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61が円筒をなす製造用中間体49を得る第1の工程51と、(2)製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61のなす円筒を切断する第2の工程52とを含むようにしている。
【0045】
本実施形態によれば、第1および第2の円筒の外径D1,D2を、蛇腹部40の山部41の外径D3と等しくしたチューブ35を容易に製造できる。
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点のみを説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
【0046】
例えば、図13は、本発明の変形例としてのチューブ35の断面図である。チューブ35は、図3に示す蛇腹部40に代えて、図13に示す蛇腹部40Aを有している。蛇腹部40Aは、両端部を除いた残りの山部41の頂部43の外径D3は、第1および第2の端部38,39のなす円筒の外径D1,D2よりも小さい。この場合、図3に示す蛇腹部40と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、蛇腹部40Aの両端部を除いた各山部41の外径D3が、第1および第2の円筒の外径D1,D2の小さいものよりも小さくされているのが、屈曲し易い蛇腹部40Aを確実に得るのに好ましい。
また、蛇腹部40Aを含むチューブ35を図7に示した上述の製造方法により製造することができる。この場合、蛇腹部40Aの山部41の外径D3を、第1および第2の円筒の外径D1,D2よりも小さくしたチューブ35を容易に製造できる。
【0048】
また、上述の各実施形態において、第1の円筒の外周の断面形状が、円形に代えて、円形に近似した形状であってもよい。この場合の第1の円筒の外径D1として、チューブ35の中心軸線に垂直な断面において、中心軸線を挟んだ反対側にある第1の円筒の外周上の2点間の距離を用いることができる。第2の円筒およびその外径D2についても同様である。山部41の頂部43の外径D3についても同様である。
【0049】
また、上述の各実施形態において、シャフト36を廃止することも考えられる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の車両用衝撃吸収操舵装置の概略構成の模式図であり、(a)に衝撃を吸収する前の通常状態を、(b)に衝撃を吸収した状態を図示している。
【図2】図1に示す中間シャフトおよびその周辺部分の模式的な側面図であり、部分的に断面表示してある。
【図3】図2に示す中間シャフトのチューブの断面図であり、自然状態を示す。
【図4】図3のチューブの蛇腹部が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に小さい状態を示す。
【図5】図3のチューブの蛇腹部が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に大きい状態を示す。
【図6】図3のチューブを含む実施例の中間シャフトと比較例の中間シャフトにおける、継手中心間に作用する圧縮力の大きさPと、継手中心間の距離の収縮量ZBとの関係を模式的に示すグラフである。
【図7】図3のチューブの製造方法を模式的に示すフローチャートである。
【図8】図7のチューブの製造方法の第1の工程における素管と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。
【図9】図7のチューブの製造方法の第1の工程における素管と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。
【図10】図7のチューブの製造方法の第1の工程における製造用中間体と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。
【図11】図7のチューブの製造方法の第1の工程における製造用中間体と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。
【図12】図7の製造用中間体の断面図である。
【図13】本発明の変形例のチューブの断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用衝撃吸収操舵装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、4…第1の自在継手、5…中間シャフト、6…第2の自在継手、7…ピニオンシャフト(入力部材)、11…ステアリングギヤ、16…転舵輪、27,31…継手中心、32…ライン、35…チューブ、38…チューブの第1の端部、39…チューブの第2の端部、40,40A…蛇腹部、41…山部、42…谷部、43…山部の頂部、48…円筒管、49…製造用中間体、51…第1の工程(製造用中間体を得る工程)、52…第2の工程(切断する工程)、55…中間部、58…蛇腹部、59…山部、61…頂部、62…蛇腹部の両端、C1…第1の円筒の中心軸線、C2…第2の円筒の中心軸線、D1,D2…円筒の外径、D3…山部の外径、S2…中間シャフトの軸方向、S3…円筒管の軸方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収操舵装置およびこれに用いる中間シャフトのチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用衝撃吸収操舵装置は、ステアリングシャフトおよびステアリングギヤを連結する中間シャフトを有している。この中間シャフトは、屈曲変形可能な中空の蛇腹部を有している。車両の衝突時に、ステアリングギヤが車両後方に移動するのに伴って、中間シャフトの蛇腹部が屈曲変形し、その結果、中間シャフトの両端部間の距離が短くなるようになっている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
【特許文献1】特開2004−352011号公報
【特許文献2】特開平8−198123号公報
【特許文献3】特開2007−145061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、衝撃吸収のときに、蛇腹部の屈曲の角度をあまり大きくできないので、衝撃吸収のときに、中間シャフトの両端部間の距離の収縮量をあまり大きくできなかった。また、車両の小型化、および室内空間の確保のために、中間シャフトの小型化が要請されている。
そこで、本発明の目的は、蛇腹部が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置およびこれに用いる中間シャフトのチューブの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の車両用衝撃吸収操舵装置(1)は、操舵部材(2)に連結されたステアリングシャフト(3)と、転舵輪(16)を転舵するためのステアリングギヤ(11)と、上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤの間に介在し上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤを連結する中間シャフト(5)と、上記中間シャフトおよび上記ステアリングシャフトを連結する第1の自在継手(4)と、上記中間シャフトおよび上記ステアリングギヤの入力部材(7)を連結する第2の自在継手(6)と、を備え、上記中間シャフトは、チューブ(35)を含み、上記チューブは、第1の端部(38)と、第2の端部(39)と、上記第1の端部および上記第2の端部の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部(40,40A)とを含み、上記蛇腹部は、上記中間シャフトの軸方向(S2)に交互に配置された山部(41)および谷部(42)を有し、上記第1の端部および上記第2の端部は、円筒をなし、上記第1の端部および上記第2の端部のそれぞれのなす上記円筒の中心軸線(C1,C2)は、上記第1の自在継手および上記第2の自在継手の継手中心(27,31)間を結ぶライン(32)に一致しており、上記蛇腹部の上記山部の外径(D3)が、上記円筒の外径(D1,D2)と等しいかまたは小さくされており、車両の衝突のときに、上記蛇腹部が屈曲することにより相隣接する上記山部の頂部(43)が互いに当接し、互いに当接した上記蛇腹部の上記山部の上記頂部を支点として、さらに上記蛇腹部が屈曲するようにしてあることを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、車両の衝突のときに、蛇腹部の屈曲に伴って、相隣接する山部の頂部が互いに当接した後、これら互いに当接した山部の頂部を支点として、さらに蛇腹部が屈曲する。このとき、蛇腹部の山部の外径が、円筒の外径と等しいかまたは小さくされているので、相隣接する山部の頂部が互いに当接するまでの蛇腹部の屈曲の角度が大きくなる。蛇腹部の屈曲の角度が大きいほどに、中間シャフトを軸方向に圧縮するときに、互いに当接する山部の頂部を屈曲の支点とする曲げモーメントが大きくなる。従って、山部が互いに当接した状態で、蛇腹部が屈曲し易くなる。
【0006】
結果として、蛇腹部の屈曲角度を大きくできる。その結果、蛇腹部の屈曲角度が小さい場合と比較して、衝撃吸収するときの第1および第2の自在継手の継手中心間の距離の収縮量を大きくすることができる。ひいては、上述の収縮量を所要量で確保するという条件のもとで、衝撃吸収前の第1および第2の自在継手の継手中心間の距離を小さくできる。従って、蛇腹部が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置を実現できる。
【0007】
また、本発明の中間シャフトのチューブの製造方法は、上記本発明の上記車両用衝撃吸収操舵装置に用いる上記中間シャフトの上記チューブの製造方法であって、素管としての円筒管(48)の軸方向(S3)の中間部(55)を内側からの加圧により塑性変形させることにより、蛇腹部(58)を有しその蛇腹部の両端(62)の山部(59)の頂部(61)が円筒をなす製造用中間体(49)を得る工程(51)と、上記製造用中間体の上記蛇腹部の上記両端の上記山部の上記頂部のなす上記円筒を切断する工程(52)とを含むことを特徴とする。本発明によれば、蛇腹部の山部の外径を、チューブの円筒の外径と等しいかまたはこの外径よりも小さくしたチューブを容易に製造できる。
【0008】
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施の形態の添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態の車両用衝撃吸収操舵装置の概略構成の模式図であり、(a)に衝撃を吸収する前の通常状態を、(b)に衝撃を吸収した状態を図示している。車両用衝撃吸収操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間シャフト5と、中間シャフト5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7と、ピニオンシャフト7の端部近傍に設けられたピニオン歯8に噛み合うラック歯9を有して自動車の左右方向(図1(a)において紙面垂直方向に相当する。)に延びる転舵軸としてのラックバー10とを有している。
【0010】
ピニオンシャフト7およびラックバー10によりラックアンドピニオン機構からなるステアリングギヤ11が構成されている。ピニオンシャフト7は、ステアリングギヤ11の入力部材として機能する。ラックバー10は、車体12に固定されるラックハウジング13内に図示しない複数の軸受を介して直線往復可能に支持されている。ラックバー10には、一対のタイロッド14(一方のみ図示)が結合されている。各タイロッド14は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪16に連結されている。
【0011】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン歯8およびラック歯9によって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪16の転舵が達成される。
また、車両用衝撃吸収操舵装置1は、ステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム17と、このステアリングコラム17を車体12に支持する支持部材18とを有している。
【0012】
ステアリングコラム17は、ステアリングシャフト3を、当該ステアリングシャフト3の軸方向S1の上方へ相対移動不能に保持している。
また、ステアリングコラム17は、ステアリングシャフト3の軸方向S1に平行に延びている。例えば、操舵部材2が上側となるように、ステアリングシャフト3の中心軸線が車両の前後方向Xに対して斜めにされて、ステアリングコラム17が車体12に支持されている。
【0013】
支持部材18は、車両衝突時にステアリングコラム17およびステアリングシャフト3が共に車体12に対して車両の後方XBへ向けて移動することを規制している。
中間シャフト5は、ステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11の間に介在している。中間シャフト5は、ステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11を連結している。中間シャフト5は、ステアリングシャフト3から伝達されたトルクを、ステアリングギヤ11のピニオンシャフト7に伝達する。
【0014】
また、中間シャフト5の中心軸線が、車両の前後方向Xに対して斜めになるように配置されている。また、中間シャフト5は、ステアリングシャフト3に対して斜めに配置されている。
また、中間シャフト5は、衝撃吸収するときに、屈曲しつつ収縮するようにされている(図1(a)および図1(b)参照。)。以下では、特に説明しないときには、衝撃吸収前の通常時の状態を基に説明する。
【0015】
図2は、図1に示す中間シャフト5およびその周辺部分の模式的な側面図であり、部分的に断面表示してある。図2を参照して、第1の自在継手4は、ステアリングシャフト3の端部に固定された第1のヨーク21と、中間シャフト5の一方の端部に固定された第2のヨーク22と、第1および第2のヨーク21,22間を連結する十字軸23とを有している。
【0016】
十字軸23は、4つの軸部としてのトラニオン24(一部のみ図示)を有している。4つのトラニオン24は、互いに直交する第1および第2の中心軸線25,26上に十の字状に配置されている。なお、第2の中心軸線26は、図2の紙面垂直方向に延びている。4つのトラニオン24のうちの2つのトラニオン24は、第1の中心軸線25に沿って互いに逆向きに延びており、第1のヨーク21に回動可能に支持されている。残りの2つのトラニオン24は、第2の中心軸線26に沿って互いに逆向きに延びており、第2のヨーク22に回動可能に支持されている。十字軸23の第1および第2の中心軸線25,26の交点が、第1の自在継手4の継手中心27である。
【0017】
第2の自在継手6については、第1の自在継手4との相違点を中心に説明する。第2の自在継手6は、中間シャフト5の他方の端部に固定された第1のヨーク28と、ピニオンシャフト7の端部に設けられた第2のヨーク29と、第1および第2のヨーク28,29間を連結する十字軸30とを有する。
第2の自在継手6の十字軸30の構成要素は、第1の自在継手4の十字軸23の構成要素と同じである。第1および第2の自在継手4,6の十字軸23の構成要素は、互いに同じ符号を付してある。第2の自在継手6の十字軸30の第1および第2の中心軸線25,26の交点が、第2の自在継手6の継手中心31である。なお、第2の自在継手6の十字軸30の第2の中心軸線26は、図2の紙面垂直方向に延びている。
【0018】
中間シャフト5は、第1の自在継手4の継手中心27と第2の自在継手6の継手中心31とを結ぶライン32を回転中心軸線として回転する。中間シャフト5は、ライン32を中心軸線とした回転体形状をなしている。また、中間シャフト5は、チューブ35と、シャフト36とを有している。
シャフト36は、金属製の軸である。シャフト36の軸方向の一方の端部は、チューブ35に固定されている。シャフト36の軸方向の他方の端部は、第2の自在継手6の第1のヨーク28に固定されている。
【0019】
チューブ35は、金属部材により形成されており、中間シャフト5の軸方向S2に沿って延びている。チューブ35は、中間シャフト5の軸方向S2に関する第1および第2の端部38,39を有している。また、チューブ35は、第1の端部38および第2の端部39間に介在した蛇腹部40を有している。
第1の端部38と、第2の端部39と、蛇腹部40とは、単一の材料により一体に形成されている。チューブ35の第1の端部38は、第1の自在継手4の第2のヨーク22に固定されている。第2の端部39は、シャフト36の端部に固定されている。
【0020】
図3は、図2に示す中間シャフト5のチューブ35の断面図である。図2および図3を参照して、第1の端部38は、円筒をなしている。第2の端部39は、円筒をなしている。第1の端部38のなす円筒(以下、第1の円筒ともいう。)および第2の端部39のなす円筒(以下、第2の円筒ともいう。)は、互いに同心に配置されている。第1の端部38のなす円筒の中心軸線C1および第2の端部39のなす円筒の中心軸線C2は、上述のライン32に一致している。
【0021】
第1および第2の円筒の外周は、互いに同じ円形に形成されている。この円形の直径が、第1および第2の円筒の外径D1,D2である。
図3を参照して、蛇腹部40は、複数の山部41と、複数の谷部42とを有している。山部41と谷部42とが、中間シャフト5の軸方向S2に交互に並んでいる。また、中間シャフト5の軸方向S2に関する蛇腹部40の両端部には、山部41が配置されている。具体的には、蛇腹部40は、4つの山部41と、3つの谷部42とを有している。
【0022】
各山部41は頂部43(一部のみ図示)を有している。また、蛇腹部40の両端部にある一対の山部41の頂部43は、対応する第1および第2の円筒になめらかに連続してつながっている。
各山部41の頂部43は、中間シャフト5の軸方向S2を含む断面において、凸湾曲形状をなしている。各山部41の頂部43の外周は、中間シャフト5の軸方向S2に垂直な断面において円形をなしている。この円形の直径が山部41の外径D3に相当する。また、各山部41の頂部43の外径D3が、第1の円筒の外径D1(第2の円筒の外径D2でもよい。)と等しくされている。
【0023】
各谷部42は、互いに同じ形状をなしている。各谷部42は底部44を有している。
また、蛇腹部40は、塑性変形可能である。車両の衝突時には、蛇腹部40が塑性変形する。これにより、衝撃エネルギーが吸収されるようになっている。これとともに、蛇腹部40が収縮し、また屈曲する。
図4は、図3のチューブ35の蛇腹部40が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に小さい状態を示す。図5は、図3のチューブ35の蛇腹部40が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に大きい状態を示す。なお、図3は、チューブ35の自然状態を示す。自然状態は、チューブ35が車両に取り付けられ且つ車両が衝突していないときに、チューブ35が屈曲しておらず且つ収縮していない状態である。
【0024】
先ず、図1を参照して、車両が衝突したときに、衝撃力が所定の大きさよりも大きくなると、ステアリングギヤ11が車両の後方XBへ向けて車体12に対して移動する。これとともに、蛇腹部40は、中間シャフト5の軸方向S2に衝撃力を受けて、収縮する。このとき、中間シャフト5は曲げモーメントを受けるので、蛇腹部40が屈曲する。蛇腹部40のうちの下部45を湾曲の内側として、蛇腹部40全体が湾曲するようになる。なお、図1には、上下方向Zを図示した。
【0025】
図3および図4を参照して、蛇腹部40が屈曲することにより、相隣接する山部41の頂部43の下部45が互いに当接する。やがて、相隣接する全ての山部41の頂部43の下部45が互いに当接する。このように互いに当接した山部41の頂部43の下部45が曲げの支点として機能する(この状態を図4に図示した。)。
図4および図5を参照して、上述の曲げの支点の周りに、さらに蛇腹部40が屈曲する。その結果、相隣接する谷部42の底部44の下部46が互いに当接する。また、山部41の頂部43の上部同士の間隔が大きくなる。これにより、蛇腹部40全体が塑性変形を伴って大角度で屈曲する。
【0026】
図1および図2を参照して、以上説明したように、本実施形態の車両用衝撃吸収操舵装置1は、操舵部材2に連結されたステアリングシャフト3と、転舵輪16を転舵するためのステアリングギヤ11と、ステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11の間に介在しステアリングシャフト3およびステアリングギヤ11を連結する中間シャフト5と、中間シャフト5およびステアリングシャフト3を連結する第1の自在継手4と、中間シャフト5およびステアリングギヤ11の入力部材としてのピニオンシャフト7を連結する第2の自在継手6と、を備えている。中間シャフト5は、チューブ35を含んでいる。チューブ35は、第1の端部38と、第2の端部39と、第1の端部38および第2の端部39の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部40とを含んでいる。蛇腹部40は、中間シャフト5の軸方向S2に交互に配置された山部41および谷部42を有している。第1の端部38および第2の端部39は、円筒をなしている。第1の端部38および第2の端部39のそれぞれのなす円筒の中心軸線C1,C2は、第1の自在継手4および第2の自在継手6の継手中心27,31間を結ぶライン32に一致している。蛇腹部40の山部41の外径D3が、第1および第2の円筒の外径D1,D2と等しくされている。車両の衝突のときに、蛇腹部40が屈曲することにより相隣接する山部41の頂部43が互いに当接し、互いに当接した蛇腹部40の山部41の頂部43を支点として、さらに蛇腹部40が屈曲するようにしてある。
【0027】
本実施形態によれば、車両の衝突のときに、蛇腹部40の屈曲に伴って、相隣接する山部41の頂部43が互いに当接した後、これら互いに当接した山部41の頂部43を支点として、さらに蛇腹部40が屈曲する。
このとき、蛇腹部40の山部41の外径D3が、円筒の外径D1,D2と等しいので、相隣接する山部41の頂部43が互いに当接するまでの蛇腹部40の屈曲の角度が大きくなる。蛇腹部40の屈曲の角度が大きいほどに、中間シャフト5を軸方向S2に圧縮するときに、互いに当接する山部41の頂部43を屈曲の支点とする曲げモーメントMが大きくなる。
【0028】
すなわち、継手中心27,31間に作用する圧縮力Pが蛇腹部40を屈曲させる向きの分力P1を生じる(図4参照)。相隣接する山部41の頂部43が互いに当接した状態では、上述の分力P1が、上述の屈曲の支点の周りの曲げモーメントMを生じさせる。この曲げモーメントMの大きさが、蛇腹部40の屈曲の角度が大きくなるほどに、大きくなる。従って、相隣接する山部41の頂部43が互いに当接した状態で、蛇腹部40が屈曲し易くなる。
【0029】
結果として、蛇腹部40の屈曲角度を大きくすることができる。その結果、蛇腹部の屈曲角度が小さい従来の場合と比較して、衝撃吸収するときの第1および第2の自在継手4,6の継手中心27,31間の距離ZA(以下では、継手中心間距離ZAという。)の収縮量を大きくすることができる。なお、継手中心間距離ZAの収縮量は、衝撃吸収の前後での継手中心間距離ZAの差分に相当する。
【0030】
ひいては、上述の継手中心間距離ZAの収縮量を所要量で確保するという条件のもとで、衝撃吸収前の継手中心間距離ZAの値を小さくすることができる。従って、蛇腹部40が屈曲し易くてしかも小型の車両用衝撃吸収操舵装置1を実現することができる。
また、本実施形態の中間シャフト5は、収縮前の長さを短くできるので、収縮後(屈曲状態)の中間シャフト5が占めるスペースを小さくできる。
【0031】
また、蛇腹部40の各山部41の外径D3が、第1の円筒の外径D1および第2の円筒の外径D2のうちの小さいものと等しくされているのが、屈曲し易い蛇腹部40を確実に得るのに好ましい。
また、蛇腹部40の山部41の数(蛇腹部40の軸方向両端部にある山部41を含めた数)が4個の場合には、蛇腹部40を屈曲し易くするのに好ましい。なお、山部41の数は、4個以外の数、例えば、3個とすることも考えられる。
【0032】
図6を参照して、本実施形態の蛇腹部40と従来の蛇腹部(図示せず)との屈曲し易さを比較する。
図6は、図3のチューブ35を含む実施例の中間シャフト5と従来の中間シャフトに相当する比較例の中間シャフトとにおける、継手中心間に作用する圧縮力の大きさPと、継手中心間の距離の収縮量ZBとの関係を模式的に示すグラフである。縦軸に継手中心間に作用する圧縮力の大きさPを、横軸に継手中心間の距離の収縮量ZBを示し、実施例における上述の関係を線G1に示し、比較例における上述の関係を線G2で示す。図6のグラフは、実施例および比較例をコンピュータ上で有限要素法の解析モデルとして作成し、その解析結果として得たものである。
【0033】
ここで、比較例は、実施例のチューブにおいて山部と谷部との関係を逆にしたものに相当とする。すなわち、比較例の蛇腹部の谷部の直径は、第1および第2の円筒の直径と等しくされている。また、比較例の蛇腹部の山部は、3つあり、その直径が第1および第2の円筒の直径よりも大きくされている。
図6に示すように、実施例は、比較例に比べて、中間シャフトの収縮量が大きい。また、実施例では、収縮量が大きくなっても、圧縮力は概ね一定値に飽和する傾向にある。一方、比較例では、収縮量があまり大きくできない。しかも、収縮量が大きくなるほどに、圧縮力は急増する。従って、実施例は、比較例に比べて、屈曲し易いといえる。
【0034】
図7は、図3のチューブ35の製造方法を模式的に示すフローチャートである。図7を参照して、チューブ35を、例えば、以下の製造方法により製造することができる。チューブ35の製造方法は、素管としての円筒管48から半製品としての製造用中間体49を得る第1の工程51と、製造用中間体49から製品としてのチューブ35を得る第2の工程52とを有している。
【0035】
円筒管48は、軸方向S3に真直に延びている。円筒管48の外周は、軸方向S3に垂直な断面において円形をなしている。円筒管48は、軸方向S3の両端部54と、これら両端部54間の中間部55とを有している。
第1の工程51では、円筒管48の軸方向S3の中間部55を拡径する。具体的には、液圧バルジ加工法により、円筒管48の軸方向S3の中間部55を内側からの加圧により塑性変形させる。これにより、製造用中間体49が得られる。
【0036】
この製造用中間体49は、当該製造用中間体49の軸方向S4の両端部に配置された一対の円筒57と、一対の円筒57の間に配置された蛇腹部58とを有している。蛇腹部58は、複数の山部59および複数の谷部60を有している。複数の山部59および複数の谷部60は、製造用中間体49の軸方向S4に交互に並んでいる。
各山部59は、頂部61を有している。製造用中間体49の軸方向S4に関する蛇腹部58の両端62にある一対の山部59の頂部61が円筒をなしている。両端62にある一対の山部59以外の残りの山部59の頂部61は、製造用中間体49の中心軸線を含む断面において、凸湾曲形状をなしている。全山部59の頂部61の外径は、互いに等しくされている。
【0037】
図8は、図7の第1の工程51における円筒管48と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。図9は、図7の第1の工程51における円筒管48と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。図10は、図7の第1の工程51における製造用中間体49と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。図11は、図7の第1の工程51における製造用中間体49と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。図12は、図7の製造用中間体49の断面図である。
【0038】
図8および図9を参照して、第1の工程51では、例えば、製造用治具として、互いに対をなす第1および第2の成形型65,66を用いる。第1および第2の成形型65,66は、互いに組み合わされて用いられる。この状態で、第1および第2の成形型65,66は、空洞部を有している。第1および第2の成形型65,66のそれぞれは、上述の空洞部の内面に、製造用中間体49の蛇腹部58を形成するための成形面67を有している。成形面67は、被加工材としての円筒管48に接してこれを変形させる。
【0039】
図10および図11を参照して、第1および第2の成形型65,66のそれぞれの成形面67は、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59を形成するための第1の部分71と、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62以外の山部59を形成するための第2の部分72と、製造用中間体49の蛇腹部58の谷部60を形成するための第3の部分73と、製造用中間体49の一対の円筒57を形成するための第4の部分74とを有している。各成形面67において、第1の部分71は一対あり、第2の部分72は少なくともひとつ(本実施形態では2つの場合を図示)あり、第3の部分73は、複数、例えば、3つあり、第4の部分74は、一対である。
【0040】
図8および図9を参照して、液圧バルジ加工法の場合に則して説明する。先ず、分割された第1および第2の成形型65,66の内部に、円筒管48がセットされる。このセットされた円筒管48の両端部には、一対の軸押しシリンダ76(一部のみ図示)の端面が接触するようにされる。一対の軸押しシリンダ76は、円筒管48の内部に液圧を供給するための液圧供給口(図示せず)を有しており、第1および第2の成形型65,66にセットされる。第1および第2の成形型65,66が互いに組み合わされて、その内部が閉じられる。
【0041】
図10を参照して、円筒管48の内部に液圧(図示せず)が液圧源により負荷される。これとともに、円筒管48の両端部が軸押しシリンダ76により押圧される。これにより、円筒管48を塑性加工し、成形面67の形状に沿った形状、すなわち、蛇腹形状の製造用中間体49を得ることができる。
図11を参照して、拡径加工後に、軸押しシリンダ76が取り外され、また、第1および第2の成形型65,66を、互いに離隔させる。これにより、製造用中間体49を取り外すことができる。
【0042】
図7および図12を参照して、第2の工程52では、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61のなす円筒を、切断位置CP1で切断する。製造用中間体49において、一対の切断位置CP1の間にある部分は、チューブ35と同じ形状に形成されている。従って、製造用中間体49が切断されることにより、チューブ35が得られる。
【0043】
具体的には、切断により、製造用中間体49は、当該製造用中間体49の軸方向に関する一対の両端部と中間部とに、3分割される。中間部における両端部は、円筒をなしている。この円筒は、製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61のなす円筒の少なくとも一部が残されてなる。このようにして、製造用中間体49の一部としての中間部が、チューブ35になる。
【0044】
このように、本実施形態のチューブ35の製造方法は、(1)素管としての円筒管48の軸方向S3の中間部55を内側からの加圧により塑性変形させることにより、蛇腹部58を有しその蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61が円筒をなす製造用中間体49を得る第1の工程51と、(2)製造用中間体49の蛇腹部58の両端62の山部59の頂部61のなす円筒を切断する第2の工程52とを含むようにしている。
【0045】
本実施形態によれば、第1および第2の円筒の外径D1,D2を、蛇腹部40の山部41の外径D3と等しくしたチューブ35を容易に製造できる。
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点のみを説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
【0046】
例えば、図13は、本発明の変形例としてのチューブ35の断面図である。チューブ35は、図3に示す蛇腹部40に代えて、図13に示す蛇腹部40Aを有している。蛇腹部40Aは、両端部を除いた残りの山部41の頂部43の外径D3は、第1および第2の端部38,39のなす円筒の外径D1,D2よりも小さい。この場合、図3に示す蛇腹部40と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、蛇腹部40Aの両端部を除いた各山部41の外径D3が、第1および第2の円筒の外径D1,D2の小さいものよりも小さくされているのが、屈曲し易い蛇腹部40Aを確実に得るのに好ましい。
また、蛇腹部40Aを含むチューブ35を図7に示した上述の製造方法により製造することができる。この場合、蛇腹部40Aの山部41の外径D3を、第1および第2の円筒の外径D1,D2よりも小さくしたチューブ35を容易に製造できる。
【0048】
また、上述の各実施形態において、第1の円筒の外周の断面形状が、円形に代えて、円形に近似した形状であってもよい。この場合の第1の円筒の外径D1として、チューブ35の中心軸線に垂直な断面において、中心軸線を挟んだ反対側にある第1の円筒の外周上の2点間の距離を用いることができる。第2の円筒およびその外径D2についても同様である。山部41の頂部43の外径D3についても同様である。
【0049】
また、上述の各実施形態において、シャフト36を廃止することも考えられる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の車両用衝撃吸収操舵装置の概略構成の模式図であり、(a)に衝撃を吸収する前の通常状態を、(b)に衝撃を吸収した状態を図示している。
【図2】図1に示す中間シャフトおよびその周辺部分の模式的な側面図であり、部分的に断面表示してある。
【図3】図2に示す中間シャフトのチューブの断面図であり、自然状態を示す。
【図4】図3のチューブの蛇腹部が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に小さい状態を示す。
【図5】図3のチューブの蛇腹部が屈曲した状態の断面図であり、屈曲の角度が相対的に大きい状態を示す。
【図6】図3のチューブを含む実施例の中間シャフトと比較例の中間シャフトにおける、継手中心間に作用する圧縮力の大きさPと、継手中心間の距離の収縮量ZBとの関係を模式的に示すグラフである。
【図7】図3のチューブの製造方法を模式的に示すフローチャートである。
【図8】図7のチューブの製造方法の第1の工程における素管と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。
【図9】図7のチューブの製造方法の第1の工程における素管と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。
【図10】図7のチューブの製造方法の第1の工程における製造用中間体と製造用治具の断面図であり、組立状態を示す。
【図11】図7のチューブの製造方法の第1の工程における製造用中間体と製造用治具の断面図であり、分解状態を示す。
【図12】図7の製造用中間体の断面図である。
【図13】本発明の変形例のチューブの断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用衝撃吸収操舵装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、4…第1の自在継手、5…中間シャフト、6…第2の自在継手、7…ピニオンシャフト(入力部材)、11…ステアリングギヤ、16…転舵輪、27,31…継手中心、32…ライン、35…チューブ、38…チューブの第1の端部、39…チューブの第2の端部、40,40A…蛇腹部、41…山部、42…谷部、43…山部の頂部、48…円筒管、49…製造用中間体、51…第1の工程(製造用中間体を得る工程)、52…第2の工程(切断する工程)、55…中間部、58…蛇腹部、59…山部、61…頂部、62…蛇腹部の両端、C1…第1の円筒の中心軸線、C2…第2の円筒の中心軸線、D1,D2…円筒の外径、D3…山部の外径、S2…中間シャフトの軸方向、S3…円筒管の軸方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、
転舵輪を転舵するためのステアリングギヤと、
上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤの間に介在し上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤを連結する中間シャフトと、
上記中間シャフトおよび上記ステアリングシャフトを連結する第1の自在継手と、
上記中間シャフトおよび上記ステアリングギヤの入力部材を連結する第2の自在継手と、を備え、
上記中間シャフトは、チューブを含み、上記チューブは、第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部および上記第2の端部の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部とを含み、上記蛇腹部は、上記中間シャフトの軸方向に交互に配置された山部および谷部を有し、
上記第1の端部および上記第2の端部は、円筒をなし、上記第1の端部および上記第2の端部のそれぞれのなす上記円筒の中心軸線は、上記第1の自在継手および上記第2の自在継手の継手中心間を結ぶラインに一致しており、
上記蛇腹部の上記山部の外径が、上記円筒の外径と等しいかまたは小さくされており、車両の衝突のときに、上記蛇腹部が屈曲することにより相隣接する上記山部の頂部が互いに当接し、互いに当接した上記蛇腹部の上記山部の上記頂部を支点として、さらに上記蛇腹部が屈曲するようにしてあることを特徴とする車両用衝撃吸収操舵装置。
【請求項2】
請求項1の車両用衝撃吸収操舵装置に用いる上記中間シャフトの上記チューブの製造方法であって、
素管としての円筒管の軸方向の中間部を内側からの加圧により塑性変形させることにより、蛇腹部を有しその蛇腹部の両端の山部の頂部が円筒をなす製造用中間体を得る工程と、
上記製造用中間体の上記蛇腹部の上記両端の上記山部の上記頂部のなす上記円筒を切断する工程とを含むことを特徴とする中間シャフトのチューブの製造方法。
【請求項1】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、
転舵輪を転舵するためのステアリングギヤと、
上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤの間に介在し上記ステアリングシャフトおよび上記ステアリングギヤを連結する中間シャフトと、
上記中間シャフトおよび上記ステアリングシャフトを連結する第1の自在継手と、
上記中間シャフトおよび上記ステアリングギヤの入力部材を連結する第2の自在継手と、を備え、
上記中間シャフトは、チューブを含み、上記チューブは、第1の端部と、第2の端部と、上記第1の端部および上記第2の端部の間に介在する塑性変形可能な蛇腹部とを含み、上記蛇腹部は、上記中間シャフトの軸方向に交互に配置された山部および谷部を有し、
上記第1の端部および上記第2の端部は、円筒をなし、上記第1の端部および上記第2の端部のそれぞれのなす上記円筒の中心軸線は、上記第1の自在継手および上記第2の自在継手の継手中心間を結ぶラインに一致しており、
上記蛇腹部の上記山部の外径が、上記円筒の外径と等しいかまたは小さくされており、車両の衝突のときに、上記蛇腹部が屈曲することにより相隣接する上記山部の頂部が互いに当接し、互いに当接した上記蛇腹部の上記山部の上記頂部を支点として、さらに上記蛇腹部が屈曲するようにしてあることを特徴とする車両用衝撃吸収操舵装置。
【請求項2】
請求項1の車両用衝撃吸収操舵装置に用いる上記中間シャフトの上記チューブの製造方法であって、
素管としての円筒管の軸方向の中間部を内側からの加圧により塑性変形させることにより、蛇腹部を有しその蛇腹部の両端の山部の頂部が円筒をなす製造用中間体を得る工程と、
上記製造用中間体の上記蛇腹部の上記両端の上記山部の上記頂部のなす上記円筒を切断する工程とを含むことを特徴とする中間シャフトのチューブの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−64554(P2010−64554A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231036(P2008−231036)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]