説明

車両用表示装置

【課題】車速等の車両情報と現在位置情報等のナビゲーション情報とを小さいスペースに視認性よく表示できるようにした車両用表示装置を提供する。
【解決手段】速度計ユニット60は、機械的に回動する指針62の回動角度によって車速を表示するアナログ速度表示部61と、該アナログ速度表示部61に近接配置されると共にアナログ速度表示部61の表示領域より小さい表示領域で車速情報をデジタル表示するデジタル速度表示部64とを備える。ナビゲーション表示装置80によるナビゲーション情報の表示領域とアナログ速度表示部61の表示領域とが互いに重なるように構成する。制御手段90は、ナビゲーション情報を非表示とする際には、アナログ速度表示部61による車速表示を行い、一方、ナビゲーション情報を表示する際には、アナログ速度表示部61による車速表示をデジタル速度表示部64による車速表示に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に係り、特に、乗員に対向するように配設されると共に車両の各種情報を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員に対向するように配設されると共に、車両の速度や現在位置情報等の複数の情報を表示する車両用表示装置(メータ装置)において、同じ表示領域に異なる情報を切り換えて表示するようにした構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、車両の走行中に回転計および速度計を表示する表示領域に、車両が停車している間は、回転計および速度計の表示に代えて、現在位置を示す地図や文字等のナビゲーション情報を表示することができる車両用表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−86198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、停車時にしかナビゲーション情報を表示できないので、走行中でもナビゲーション情報を表示できるようにするのが望ましい。また、ナビゲーション情報を表示している間は、速度計および回転計が表示できないという課題もあったので、走行中にナビゲーション情報を表示できるようにする場合は、走行に必要な情報を表示できるようにすることも望まれる。ただし、この課題を解決するためにすべての情報を並べて表示しようとすると、表示範囲が広くなって表示装置全体が大型化すると共に、乗員が必要とする情報が認知しにくくなる可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、車速等の車両情報と現在位置等のナビゲーション情報とを小さいスペースに視認性よく表示できるようにした車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、少なくとも現在位置を含むナビゲーション情報を表示するナビゲーション表示装置(80)と、少なくとも車両の車速情報を表示する速度計ユニット(60)と、前記ナビゲーション表示装置(80)および前記速度計ユニット(60)の表示制御を行う制御手段(90)とを備えると共に、乗員の前方に配置される車両用表示装置(50)において、前記ナビゲーション表示装置(80)は、乗員の操作に応じて前記ナビゲーション情報の表示または非表示を選択可能に構成されており、前記速度計ユニット(60)は、機械的に回動する指針(62)の回動角度によって車速を表示するアナログ速度表示部(61)と、該アナログ速度表示部(61)に近接配置されると共に前記アナログ速度表示部(61)の表示領域より小さい表示領域で車速情報をデジタル表示するデジタル速度表示部(64)とを備え、前記ナビゲーション表示装置(80)によるナビゲーション情報の表示領域と前記アナログ速度表示部(61)の表示領域とが互いに重なるように構成されており、前記制御手段(90)は、前記ナビゲーション情報を非表示とする際には、前記アナログ速度表示部(61)による車速表示を行い、一方、前記ナビゲーション情報を表示する際には、前記アナログ速度表示部(61)による車速表示を前記デジタル速度表示部(64)による車速表示に切り換える点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記車両用表示装置(50)は、表側から照射された光を反射すると共に裏側から照射された光を透過するハーフミラー(53)を備え、前記ハーフミラー(53)は、その表側を乗員(M)の側に向けると共に下方に傾斜させて配設されており、前記速度計ユニット(60)および前記ナビゲーション表示装置(80)のいずれか一方が前記ハーフミラー(53)の車体下方側に配設されると共に、他方が車体前方側に配置されており、前記アナログ速度表示部(61)による速度表示および前記ナビゲーション表示装置(80)によるナビゲーション情報の表示は、そのいずれか一方が前記ハーフミラー(53)を透過する実像として視認されると共に、他方が前記ハーフミラー(53)に反射された虚像として視認されるように構成されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記ナビゲーション表示装置(80)および前記アナログ速度表示部(61)は、予め定められた位置に配設されており、前記アナログ速度表示部(61)の表示領域と、前記デジタル速度表示部(64)の表示領域とが、互いに重ならないように構成されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記速度計ユニット(60)から前記ハーフミラー(53)までの距離と、前記ナビゲーション表示装置(80)から前記ハーフミラー(53)までの距離とが異なることにより、前記ナビゲーション表示装置(80)のナビゲーション表示より前記デジタル速度表示部(64)の速度表示の方が車体後方側に表示されるように構成されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記速度計ユニット(60)が前記ハーフミラー(53)の車体前方側に配設されると共に、前記ナビゲーション表示装置(80)が前記ハーフミラー(53)車体下方側に配置されている点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記デジタル速度表示部(64)は、その速度表示が前記ナビゲーション表示の車幅方向中央に表示されるように配設されている点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記速度計ユニット(60)は、前記アナログ速度表示部(61)の下部で前記指針(52)の回動範囲外の位置に、前記デジタル速度表示部(64)を配設した点に第7の特徴がある。
【0014】
また、前記速度計ユニット(60)に、前記デジタル速度表示部(64)より表示領域が小さいデジタル距離表示部(63)が備えられており、前記速度計ユニット(60)は、前記ナビゲーション情報の表示または非表示にかかわらず常時表示される点に第8の特徴がある。
【0015】
また、前記ナビゲーション表示装置(80)は、デジタル式の映像表示機器である点に第9の特徴がある。
【0016】
さらに、前記制御手段(90)は、前記アナログ速度表示部(61)および前記ナビゲーション表示装置(80)を同時に作動させることが可能に構成されている点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
第1の特徴によれば、ナビゲーション表示装置は、乗員の操作に応じて前記ナビゲーション情報の表示または非表示を選択可能に構成されており、速度計ユニットは、機械的に回動する指針の回動角度によって車速を表示するアナログ速度表示部と、該アナログ速度表示部に近接配置されると共にアナログ速度表示部の表示領域より小さい表示領域で車速情報をデジタル表示するデジタル速度表示部とを備え、ナビゲーション表示装置によるナビゲーション情報の表示領域と前記アナログ速度表示部の表示領域とが互いに重なるように構成されており、制御手段は、ナビゲーション情報を非表示とする際には、アナログ速度表示部による車速表示を行い、一方、ナビゲーション情報を表示する際には、アナログ速度表示部による車速表示をデジタル速度表示部による車速表示に切り換えるので、ナビゲーション情報が不要である際には、ナビゲーション情報の表示領域に大きなアナログ表示による車速表示を行うと共に、ナビゲーション情報を表示する際には、小さな表示領域において車速情報をデジタル表示できることとなる。これにより、ナビゲーション情報を大きく表示できると共に、走行時に確認する頻度の多い車速情報をナビゲーション情報の邪魔になることなく常に見やすく表示することができる。
【0018】
第2の特徴によれば、車両用表示装置は、表側から照射された光を反射すると共に裏側から照射された光を透過するハーフミラーを備え、ハーフミラーは、その表側を乗員の側に向けると共に下方に傾斜させて配設されており、速度計ユニットおよびナビゲーション表示装置のいずれか一方がハーフミラーの車体下方側に配設されると共に、他方が車体前方側に配置されており、アナログ速度表示部による速度表示およびナビゲーション表示装置によるナビゲーション情報の表示は、そのいずれか一方がハーフミラーを透過する実像として視認されると共に、他方がハーフミラーに反射された虚像として視認されるように構成されているので、メータ装置の大型化を避けつつ、アナログ車速表示とナビゲーション情報とを切り換えて表示することが可能となる。また、ハーフミラーの取付角度を変更することで速度計ユニットおよびナビゲーション表示装置の配置を変更することができ、メータ装置の設計自由度が高められる。
【0019】
第3の特徴によれば、ナビゲーション表示装置およびアナログ速度表示部は、予め定められた位置に配設されており、アナログ速度表示部の表示領域と、デジタル速度表示部の表示領域とが、互いに重ならないように構成されているので、ナビゲーション表示とデジタル速度表示とが重なることがなく、それぞれを見やすく表示することができる。
【0020】
第4の特徴によれば、速度計ユニットからハーフミラーまでの距離と、ナビゲーション表示装置から前記ハーフミラーまでの距離とが異なることにより、ナビゲーション表示装置のナビゲーション表示よりデジタル速度表示部の速度表示の方が車体後方側に表示されるように構成されているので、ナビゲーション情報を表示した際に、このナビゲーション表示よりデジタル速度表示の方が手前に浮き出して見えることとなり、表示範囲が小さくとも効果的な速度表示を行うことができる。これにより、斬新な視覚的効果が得られると共に、メータ装置の質感や高級感を高めることができる。
【0021】
第5の特徴によれば、速度計ユニットがハーフミラーの車体前方側に配設されると共に、ナビゲーション表示装置がハーフミラーの車体下方側に配置されているので、文字の反転等を特に考慮せずに通常のアナログ式速度計を用いて本願発明に係る車両用表示装置を得ることができる。また、液晶画面等からなるナビゲーション表示装置は、反転映像の作成が容易であり、虚像の作成手段として好適である。
【0022】
第6の特徴によれば、デジタル速度表示部は、その速度表示がナビゲーション表示の車幅方向中央に表示されるように配設されているので、ナビゲーション表示をした際に、このナビゲーション表示の幅方向の略中央にデジタル速度表示が表示され、見やすい車速表示が可能となる。
【0023】
第7の特徴によれば、速度計ユニットは、アナログ速度表示部の下部で指針の回動範囲外の位置にデジタル速度表示部を配設したので、アナログ速度表示部の下部で、指針の回動範囲外の位置にデジタル速度表示部を配設することにより、アナログ速度表示部の視認性に影響を与えることなく両者の距離を狭めて速度計ユニットの天地寸法を低減することができる。
【0024】
第8の特徴によれば、速度計ユニットに、デジタル速度表示部より表示領域が小さいデジタル距離表示部が備えられており、速度計ユニットは、ナビゲーション情報の表示または非表示にかかわらず常時表示されるので、ナビゲーション情報の表示時でもデジタル距離計を見やすく表示することができると共に、常時表示により制御の簡素化を図ることができる。
【0025】
第9の特徴によれば、ナビゲーション表示装置は、デジタル式の映像表示機器であるので、指針の回動角度によって速度を表示するアナログ式かつ機械式の速度計ユニットの表示と、デジタル画面からなるナビゲーション表示とを同一の表示領域に表示させることができ、運転者に新規な印象を与えることができて意匠性を向上できる。また、ナビゲーション情報を表示する際には速度表示もデジタル表示されるので、表示画面に統一感を与えることができる。
【0026】
第10の特徴によれば、制御手段は、アナログ速度表示部およびナビゲーション表示装置を同時に作動させることが可能に構成されているので、例えば、ナビゲーション表示装置によってアナログ速度表示部の周囲に背景映像を表示することで、視認者に斬新な印象を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】本実施形態に係るメータ装置およびその周囲の構成を示す配置説明図である。
【図3】メータ装置の拡大正面図である。
【図4】ナビゲーション表示を行った際のメータ装置の拡大正面図である。
【図5】メータ装置の内部構造を示す側面断面図である。
【図6】速度計ユニットの正面図である。
【図7】本実施形態に係るメータ装置およびその周辺機器の構成を示すブロック図である。
【図8】表示態様の変形例を示すメータ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。鞍乗型の自動二輪車1は、低床フロア15を有するスクータ型とされる。自動二輪車1の車体フレーム10は、前輪WFを軸支する左右一対のフロントフォーク3および該フロントフォーク3に連結される操向ハンドル4を操向可能に支承するヘッドパイプ2を備える。車体フレーム10の後方下部には、車体前方に指向するシリンダ21を有すると共に車軸25によって後輪WRを回転自在に軸支するユニットスイングエンジン20が上下揺動可能に支承されている。
【0029】
ユニットスイングエンジン20には、駆動側プーリ22、従動側プーリ24および無端状のベルト23からなる無段変速機が収納されている。ユニットスイングエンジン20の車体右側には、消音器としてのマフラ32が配設されている。
【0030】
車体フレーム10の前方下部で、ヘッドパイプ2から下部へ延びるダウンフレーム11には、車体側面視で上下に長く形成される燃料タンク14およびエンジン冷却水のラジエータ13が取り付けられている。車体フレーム10の後部には、乗員用シート17とおよび同乗者用シート29を支持するシートフレーム27と、このシートフレーム27を下方から支持するリヤフレーム28とが取り付けられている。車体フレーム10の周囲は、合成樹脂等からなる車体カバー16で覆われている。乗員用シート17は、ヒンジを軸にして開くことでヘルメット等の収納空間にアクセスできるように構成されている。
【0031】
ユニットスイングエンジン20の前方側は、リンクプレート19を介して車体フレーム10に支承されている。リンクプレート19は、シートフレーム27およびリヤフレーム28を連結するように固定されたマウントプレート18に支持されている。一方、ユニットスイングエンジン20の後端部は、リヤクッション26を介してシートフレーム27の後端部に吊り下げられている。また、シートフレーム27の後方およびその下方には、尾灯装置30およびリヤフェンダ31が取り付けられている。
【0032】
ヘッドパイプ2の車体前方側は、ヘッドライト7が取り付けられたフロントカバー6で覆われている。燃料タンク14の車幅方向左右および上部は、乗員が足を乗せる低床フロア15およびフロアカバー12で覆われている。フロントフォーク3には、前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ9が取り付けられている。
【0033】
操向ハンドル4には、左右一対のバックミラー5が取り付けられており、フロントカバー6の上部には、無色透明または有色透明のウインドスクリーン8が取り付けられている。本発明に係る車両用表示装置(メータ装置)50は、ウインドスクリーン8と操向ハンドル4との間の位置で、乗員Mに対向するように配設されている。
【0034】
図2は、本実施形態に係るメータ装置50およびその周囲の構成を示す配置説明図である。この図は、乗員Mの目線で俯瞰した状態に相当する。操向ハンドル4の両端部には、乗員が把持するハンドルグリップ33がそれぞれ取り付けられている。両ハンドルグリップ33の内側に近接配置されるハンドルスイッチ34には、セルスタータやウインカ装置の操作スイッチ等(不図示)が配設される。操向ハンドル4は、ヘッドパイプ2(図1参照)に回動自在に軸支されるステアリングステムに連結されたハンドルクランプ42の上部に取り付けられている。
【0035】
メータ装置50は、コンソールパネル43の前方側で、その表示面が乗員に対向するように配設されている。メータ装置50の左右には、オーディオ機器の音声等を出力するスピーカ35が配設されている。また、コンソールパネル43から車体下方に連続して形成される面には、メインスイッチ40およびコンソールボックス39が配設されている。乗員Mが跨ぐフロアトンネルを形成するフロアカバー12には、給油口にアクセスする開閉リッド41が配設されている。
【0036】
コンソールパネル43の車幅方向右寄りの位置には、コンソールボックス39のロック解除ボタン37および乗員用シート17のロック解除ボタン38が配設されている。本実施形態に係るメータ装置50は、速度計や距離計のほか、現在位置の地図や緯度経度等のナビゲーション情報を表示できるように構成されており、コンソールパネル43の車幅方向左寄りの位置には、ナビゲーション情報を表示または非表示に切り換えるナビゲーション表示切替ボタン36が配設されている。
【0037】
図3は、メータ装置50の拡大正面図である。メータ装置50の乗員に対向する面は、無色透明または有色透明の合成樹脂等からなるカバー51で覆われている。メータ装置50内の中央上部には、指針62の回動角度で車速を示すアナログ速度表示部61が配設されており、この速度表示部61の下方にデジタル距離表示部63が配設されている。速度表示部61は、物理的に形成された実際の指針が文字板上を回動するムーブメント式のメータとされる。
【0038】
デジタル距離表示部63の下方には、横一列に配列された警告灯類70が設けられている。警告灯類70は、ウインカ作動灯71L,R、バッテリ警告灯72、パーキングブレーキ作動灯73、オイル警告灯74、ニュートラルランプ75、エンジン警告灯76、前照灯上向き表示灯77からなる。なお、デジタル距離表示部63には、積算距離計(オドメータ)および短距離計(トリップメータ)を含むことができる。
【0039】
図4は、ナビゲーション情報を表示した際のメータ装置50の拡大正面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。前記したナビゲーション表示切替ボタン36(図2参照)を操作してナビゲーション装置を起動すると、図3に示したアナログ速度表示部61および指針62に代えて、ナビゲーション情報を示すナビゲーション表示80aと、デジタル速度表示部64と、デジタル距離表示部63とが表示される。デジタル距離表示部63は、図3に示した位置と同じ位置に表示される。
【0040】
図5は、メータ装置50の内部構造を示す側面断面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。メータ装置50は、黒色の合成樹脂等で形成されるハウジング52およびカバー51で囲まれた空間に複数の表示機器を収納して構成されている。ハウジング52の車体前方側の壁面には、アナログ速度表示部61および指針62を有する速度計ユニット60が取り付けられている。
【0041】
速度計ユニット60には、指針62を機械的に回動させるステッピングモータ等のアクチュエータ67と、裏面側から照射光を供給することでアナログ速度表示部61および指針62を発光させる光源66が備えられている。アナログ速度表示部61の下方には、発光式のデジタル速度表示部64およびデジタル距離表示部63が配設されている。
【0042】
一方、ハウジング52の車体下方側の壁面には、ナビゲーション情報を表示する液晶画面を車体上方に指向して表示するナビゲーション表示装置80が配設されている。そして、速度計ユニット60の車体後方側かつナビゲーション表示装置80の車体上方側の位置には、少なくとも速度計ユニット60と同等の幅を有するハーフミラー(マジックミラー)53が配設されている。ハーフミラー53は、金属蒸着等でガラス板の表面に透過性のある反射膜を形成してなり、表面側から照射された光を反射膜で反射すると共に、反射膜の裏面側から光が照射された場合には、この光を透過させる性質を有するものである。
【0043】
上記した構成によれば、速度計ユニット60の光源66を点灯することにより、この光源66によって発光するアナログ速度表示部61および指針62が、ハーフミラー53を透過した実像として乗員に視認される。そして、アナログ速度表示部61および指針62に加えて、デジタル距離表示部63を点灯すると、図3に示した状態となる。
【0044】
一方、ナビゲーション表示切替ボタン36を操作してナビゲーション表示装置80を起動した場合には、速度計ユニット60の光源66を消灯することで、アナログ速度表示部61および指針62が視認されなくなると共に、ナビゲーション表示装置80の表示画面が、ハーフミラー53に反射された虚像として乗員に視認されることとなる。このとき、ナビゲーション表示装置80に加えて、デジタル距離表示部63およびデジタル速度表示部64を点灯すると、図4に示した状態となる。
【0045】
このようなメータ装置50の構成によれば、ナビゲーション情報が不要である際には、ナビゲーション情報の表示領域に大きなアナログ表示による車速表示を行い、一方、ナビゲーション情報を表示する際には、アナログ車速表示部61の表示領域と重なる表示領域にナビゲーション情報を表示すると共に、小さな表示領域にデジタル表示で車速情報を表示できることとなる。これにより、ナビゲーション情報を大きく表示できると共に、走行時に確認する頻度の多い車速情報をナビゲーション表示と重なることなく、常に見やすく表示することができる。
【0046】
また、本実施形態では、ハーフミラー53からアナログ速度表示部61までの距離より、ハーフミラー53からナビゲーション表示装置80までの距離を長く設定している。したがって、乗員Mの目の位置からアナログ速度表示部61までの距離Aより、反射像によって視認されるナビゲーション表示装置80までの距離Bの方が大きくなる。これにより、アナログ速度表示61よりナビゲーション表示の方が乗員から遠い位置に視認されることとなり、ナビゲーション表示に切り換えた際に奥行き感を与え、斬新な視覚的効果が得られると共に、メータ装置の質感や高級感を高めることができる。
【0047】
なお、ハウジング52の車体下方側の壁面には、警告灯類70の収納ケース54が配設されている。収納ケース54の上部には無色透明または有色透明のカバー55が設けられ、光源56の照射によって警告灯類70の視認性を高めるように構成されている。
【0048】
図6は、速度計ユニット60の正面図である。速度計ユニット60は、アナログ速度表示部61の下部に、デジタル距離表示部63およびデジタル速度表示部64を上下に並んで配設した構成とされる。アナログ速度表示部61は、指針62の回動範囲を約200度に設定すると共に、指針62の回動範囲外の部分を下方に向けて、この部分に両デジタル表示部63,64を配設することで、速度計ユニット60の上下方向の寸法を抑えることが可能となる。なお、アナログ速度表示部61を表示する際には、境界線65aの上側のみが発光するように構成されている。デジタル距離表示部63およびデジタル速度表示部64は、発光式の液晶画面や7セグメントディスプレイ等で構成することができる。なお、図に示すように、デジタル速度表示部64とナビゲーション表示80aの表示領域とは、互いに重ならないように構成されている。
【0049】
図7は、本実施形態に係るメータ装置50およびその周辺機器の構成を示すブロック図である。メータ装置50の表示は、表示制御装置90によって制御される。表示制御装置90には、車速センサ91、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)92、受信アンテナ93、ナビゲーション表示切替ボタン36からの情報が入力される。なお、表示制御装置90は、エンジンを制御するECU等に含めることができる。
【0050】
メータ装置50には、警告灯類70、ナビゲーション表示装置80および速度計ユニット60が含まれる。速度計ユニット60には、アナログ速度表示部61、デジタル速度表示部64およびデジタル距離表示部63が含まれる。
【0051】
前記したように、本実施形態に係るメータ装置50は、表示制御装置90によって、アナログ速度表示を行う際には、アナログ速度表示部61とデジタル距離表示部63とを表示し、一方、ナビゲーション表示を行う際には、ナビゲーション表示装置80を起動すると共にアナログ速度表示部61を消灯し、かつデジタル速度表示部64およびデジタル距離表示部63を表示するように制御される。
【0052】
図8は、表示態様の変形例を示すメータ装置50の正面図である。前記したように、メータ装置50は、ハーフミラー53を用いて表示の切り換えを行う構造上、アナログ速度表示とナビゲーション表示とを同時に表示することが可能である。すなわち、この図に示すように、アナログ速度表示部61を表示した上で、ナビゲーション表示の表示領域80bに、奥行き感のある背景画像やマーク81等を重ねて表示することができる。
【0053】
さらに、ナビゲーション表示の光度を下げれば、アナログ速度表示部61の文字板と重なる位置に種々の形態の表示、例えば、現在走行中の道路の法定速度を超える領域に赤い帯を重ねる等の機能的な表示を行うこともできる。
【0054】
上記したように、本発明に係るメータ装置によれば、メータ装置の内部にハーフミラーを備えることで、指針の回動角度によって速度を表示するアナログ式かつ機械式の速度計ユニットの表示と、デジタル画面からなるナビゲーション表示とを切り換えて表示することができ、かつ、ナビゲーション情報を表示する際には、ナビゲーション表示に隣接してデジタル速度表示を行うので、ナビゲーション情報を大きく表示できると共に、走行時に確認する頻度の多い車速情報をナビゲーション情報の表示と重なることなく常に見やすく表示することができる。
【0055】
なお、メータ装置、制御装置、速度計ユニット、ナビゲーション表示装置等の構造や配置、速度計ユニットを構成性するアナログ速度表示部、デジタル速度表示部およびデジタル距離表示部の態様等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係るメータ装置は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…自動二輪車、4…操向ハンドル、36…ナビゲーション表示切替ボタン、43…コンソールパネル、50…メータ装置(車両用表示装置)、51…カバー、52…ハウジング、53…ハーフミラー、60…速度計ユニット、61…アナログ速度表示部、62…指針、63…デジタル距離表示部、64…デジタル速度表示部、67…ステッピングモータ、70…警告灯類、80…ナビゲーション表示装置、80b…ナビゲーション表示、90…表示制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも現在位置を含むナビゲーション情報を表示するナビゲーション表示装置(80)と、少なくとも車両の車速情報を表示する速度計ユニット(60)と、前記ナビゲーション表示装置(80)および前記速度計ユニット(60)の表示制御を行う制御手段(90)とを備えると共に、乗員の前方に配置される車両用表示装置(50)において、
前記ナビゲーション表示装置(80)は、乗員の操作に応じて前記ナビゲーション情報の表示または非表示を選択可能に構成されており、
前記速度計ユニット(60)は、機械的に回動する指針(62)の回動角度によって車速を表示するアナログ速度表示部(61)と、該アナログ速度表示部(61)に近接配置されると共に前記アナログ速度表示部(61)の表示領域より小さい表示領域で車速情報をデジタル表示するデジタル速度表示部(64)とを備え、
前記ナビゲーション表示装置(80)によるナビゲーション情報の表示領域と前記アナログ速度表示部(61)の表示領域とが互いに重なるように構成されており、
前記制御手段(90)は、前記ナビゲーション情報を非表示とする際には、前記アナログ速度表示部(61)による車速表示を行い、一方、前記ナビゲーション情報を表示する際には、前記アナログ速度表示部(61)による車速表示を前記デジタル速度表示部(64)による車速表示に切り換えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記車両用表示装置(50)は、表側から照射された光を反射すると共に裏側から照射された光を透過するハーフミラー(53)を備え、
前記ハーフミラー(53)は、その表側を乗員(M)の側に向けると共に下方に傾斜させて配設されており、
前記速度計ユニット(60)および前記ナビゲーション表示装置(80)のいずれか一方が前記ハーフミラー(53)の車体下方側に配設されると共に、他方が車体前方側に配置されており、
前記アナログ速度表示部(61)による速度表示および前記ナビゲーション表示装置(80)によるナビゲーション情報の表示は、そのいずれか一方が前記ハーフミラー(53)を透過する実像として視認されると共に、他方が前記ハーフミラー(53)に反射された虚像として視認されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記ナビゲーション表示装置(80)および前記アナログ速度表示部(61)は、予め定められた位置に配設されており、
前記アナログ速度表示部(61)の表示領域と、前記デジタル速度表示部(64)の表示領域とが、互いに重ならないように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記速度計ユニット(60)から前記ハーフミラー(53)までの距離と、前記ナビゲーション表示装置(80)から前記ハーフミラー(53)までの距離とが異なることにより、前記ナビゲーション表示装置(80)のナビゲーション表示より前記デジタル速度表示部(64)の速度表示の方が車体後方側に表示されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記速度計ユニット(60)が前記ハーフミラー(53)の車体前方側に配設されると共に、前記ナビゲーション表示装置(80)が前記ハーフミラー(53)車体下方側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記デジタル速度表示部(64)は、その速度表示が前記ナビゲーション表示の車幅方向中央に表示されるように配設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記速度計ユニット(60)は、前記アナログ速度表示部(61)の下部で前記指針(52)の回動範囲外の位置に、前記デジタル速度表示部(64)を配設したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記速度計ユニット(60)に、前記デジタル速度表示部(64)より表示領域が小さいデジタル距離表示部(63)が備えられており、
前記速度計ユニット(60)は、前記ナビゲーション情報の表示または非表示にかかわらず常時表示されることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記ナビゲーション表示装置(80)は、デジタル式の映像表示機器であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項10】
前記制御手段(90)は、前記アナログ速度表示部(61)および前記ナビゲーション表示装置(80)を同時に作動させることが可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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