説明

車両用警報システム

【課題】 高速走行中であっても前走車両や後続車両などの周囲の車両に対して、的確な衝突回避を可能とする。
【解決手段】 対象物検知装置によって自車両に近接した車両を検出すると、高速走行中であるか否かを確認し、高速走行中であれば、ヘッドライト等の点滅か周期を短くして、周囲に警報を発し、自車両が近接車両から離れるように自車両の走行制御を行う(ステップ100〜120)。これと共に、周囲の車両への走行制御の操作要求を行う(ステップ122)。これにより、前走車両が加速制御を行い、後続車両が制動制御を行うことにより、近接車両と共に、周囲の車両を自車両から離すことができる、近接車両への衝突や接触、それに伴う二次的な衝突や接触を的確に回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の周囲に、衝突の可能性がある障害物を検出したときに、警報を発する車両用警報装置に係り、詳細には、前方車両ないし後方車両に警報を発する車両用警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両の運転者は、車両の走行速度などによって視力や他の感覚が変化することがあり、特に高速走行中は、低速時に比べて各種の感覚が相対的に下がることがある、例えば、視覚に関しては、高速走行中では、低速走行中に比べて動体視力が低下し、実質的な視認範囲が狭くなり、視認範囲であっても認識が遅れることがある。また、高速走行中の運転者は、低速時とは異なる緊張状態であり、そのために、各種の感覚に変化が生じることがある。
【0003】
一方、運転者は、走行中に、前方車両や後続車両などを視認し、感覚的に衝突の可能性を判断し、衝突の可能性が高くなったときには、車両制動等によって衝突回避行動を実行する。
【0004】
また、早期視認によって回避行動を起こすのに余裕があるときには、前方車両や後続車両に衝突の危険性があることや、そのための回避動作を行う可能性があることを報知することができる。
【0005】
ところで、運転者が危険を認識できなかったり、認識が遅れると、衝突回避行動を実行が遅れたり、周囲への危険性の報知が遅れることがある。また、周囲への危険性の報知を実行したときに、後続車両の運転者が認識できなかったり、認識が遅れると、二次衝突が発生したり、衝突回避の動作が遅れることがある。
【0006】
ここから、走行中の車両の周囲の対象物を検知して、検知した対象物と自車両との衝突の可能性を判断し、衝突する可能性が高いときには、運転者に警報を発する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1では、自車両の走行環境によって前方車両との衝突の危険性が変化することから、前方の対象物に対する衝突の危険性を、相対速度、距離のみでなく、自車両の走行環境から判断するようにしている。また、特許文献1では、自車両が速度制御及び制動制御が可能であるときに、速度制御又は制動制御を行うことにより、前方車両など衝突の危険性の報知と合わせて、衝突の回避のための制御を行うように提案している。
【0008】
一方、自車両の運転者への警報のみならず、後続車両等へ警報を発することにより、後続車両への回避行動等を促す車両用警報装置の提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
この特許文献2では、ミリ波、レーザー波、超音波等を用いて前方を走行する車両を検知して、相対速度、車間距離等から衝突の可能性を判断し、衝突の可能性が高くなったときに、後続車両に対して、ブレーキランプの点灯、ハザードランプの点滅などの光を用いて警報するようにしている。また、特許文献1では、後続車両との間で通信が可能であるときに、後続車両のシートベルトを緊張させるなどのプリテンション機能の作動や、ブレーキ制動などを行うように提案している。
【0010】
一方、衝突防止対策としては、前走車両と自車両の車間距離を計測し、走行速度に応じた車間距離を保つように速度制御や、運転者が設定した車速を維持するように自動走行が行われることがある。
【0011】
このような速度制御が可能であるときに、カーブや坂道などでは前走車両が検知されなくなることがあり、このために前走車両に接近し過ぎてしまうことがある。ここから、各車両の位置情報を人工衛星によって取得し、自車両の位置を特定すると共に、前走車両及び後続車両のそれぞれの位置を特定して、走行制御をおこなうことにより、適正な走行制御を行うようにした提案がなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0012】
しかしながら、例えば、後続車両にハザードランプの点滅などの光警報や、クラクションなどを用いた音警報を発したときに、後続車両の運転車の視認や認識が遅れると、警報の実質的な遅れとなってしまう。また、単に、音警報や光警報によって後続車両に警報を発しても、高速走行中などで後続車両の運転者の警報に対する認識が遅れると、回避動作が遅れるなどの問題が生じる可能性がある。
【0013】
さらに、後続車両が自車両に衝突する可能性があるときには、後続車両に対する警報は勿論、自車両が衝突を回避するためには、前方車両への警報が必要となることがあるが、このときにも、前方車両の運転者の視認や認識が遅れると、衝突が回避できなくなると共に、前方車両への二次衝突の可能性も高まってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2004−164188号公報
【特許文献2】特開2002−222491号公報
【特許文献3】特開2001−14596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、前走車両や後続車両などの周囲の車両に対して、的確な衝突回避を可能とするための車両用警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、自車両の周囲の対象物及び対象物との距離を検出する対象物検出手段と、車両高速走行中か否かの走行状態を検出する走行状態検出手段と、周囲に警報を発する警報手段と、前記走行状態検出手段が高速走行状態を検出しているときに、前記警報手段の警報周期を非高速走行状態であるときより短くするように設定する警報設定手段と、前記対象物検出手段によって自車両の周囲の予め設定している所定以内の領域に近接した対象物を検出したときに、前記警報設定手段の設定に基づいて前記警報手段を作動させることにより自車両の周囲に警報を発する警報制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、自車両に衝突する可能性の高いほど近接した対象物を検知したときに、ヘッドライト、ストップランプ、ハザードランプなどの光警報手段や、クラクションなどの音警報手段などの警報手段を用いて、周囲に警報を発する。
【0017】
このとき、車両の走行状態が高速走行状態であれば、非高速走行状態である定速走行状態のときよりも、各警報手段が発する警報周期を短くする。例えば、ヘッドライトの点滅、ストップランプの点滅、ハザードランプの点滅によって警報を発するときには、点滅周期(オン−オフ周期)を短くする。
【0018】
これにより、視覚的に刺激を与えることにより、周囲の車両の運転者が、高速走行中であるために光などに対する認識性が低くなっても、的確にかつ迅速に認識させることができ、所望の警報効果を得ることができる。
【0019】
また、本発明は、自車両の周囲の対象物及び対象物との距離を検出する対象物検出手段と、車両高速走行中か否かの走行状態を検出する走行状態検出手段と、それぞれが異なる媒体を用いて自車両の周囲への発警報が可能な複数の警報手段と、前記対象物検出手段によって自車両の周囲の予め設定している所定以内の領域に近接した対象物を検出したときに、前記走行状態検出手段によって検出する走行状態に基づいて前記警報手段の作動を制御し、自車両の周囲に警報を発する警報制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、ヘッドライト、ストップランプ、ハザードランプなどの光警報手段や、クラクションなどの音警報手段などの異なる媒体によって発警報が可能な複数の警報手段を備えているときに、走行状態検出手段によって検出する走行状態に基づいて、警報手段の作動を制御して発警報を行う。
【0021】
車両走行状態に応じて警報手段の作動を制御することにより、自車両の緊急状態を周囲に的確に知らせることができる。
【0022】
このような本発明は、前記警報制御手段は、前記走行状態に基づいて最適な発警報が行われるように前記警報手段の作動を制御するものであれば良く、本発明は、前記走行状態に基づいて、前記警報手段、前記警報手段ごとの警報開始タイミングないし警報周期を設定する警報設定手段を含み、前記警報制御手段が前記警報設定手段の設定に基づいて前記警報手段の作動を制御するものであっても良い。
【0023】
また、本発明は、前記走行状態検出手段が高速走行状態を検出しているときに、前記警報設定手段が、前記警報手段の警報周期を非高速走行状態であるときより短くするように設定する、ことが好ましく、車両が高速走行状態であるときに、警報周期を短くすることにより、自車両の緊急状態がより高いことを周囲に的確に知らしめることができる。
【0024】
また、本発明は、自車両の周囲の対象物及び対象物との距離を検出する対象物検出手段と、他車両との間で情報の通信を可能とする通信手段と、前記対象物検出手段によって自車両の周囲の予め設定している所定以内の領域に近接した対象物を検出したときに、前記通信手段によって自車両の周囲の車両に警報情報を発する警報制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、通信手段を介して車両間の情報通信が可能となっているときに、通信手段を介して、周囲の車両に警報情報を発する。
【0026】
これにより、自車両が対象物と近接状態となって、対象物への衝突や接触を起こす可能性が生じていることを、高速走行中であっても、周囲の車両に的確に伝達することが可能となる。
【0027】
このような本発明では、車両高速走行中か否かの走行状態を検出する走行状態検出手段と、それぞれが異なる媒体を用いて自車両の周囲への発警報が可能な複数の警報手段と、前記走行状態検出手段の検出する走行状態に基づいて前記複数の警報手段の中から最適な警報手段、警報開始タイミングないし警報周期を設定する警報設定手段と、を含み、前記警報制御手段が、前記警報設定手段の設定に基づいて前記警報手段を作動させることにより自車両の周囲に警報を発する、構成を含むことができ、このときに、前記走行状態検出手段が高速走行状態を検出しているときに、前記警報設定手段が、前記警報手段の警報周期を非高速走行状態であるときより短くするように設定する、構成とすることもできる。
【0028】
また、本発明は、前記通信手段を介して入力される情報に基づいて車両の走行制御を可能とする走行制御手段を含み、前記警報制御手段が、前記通信手段によって前記他車両が自車両から退避するように走行制御を行う、ことを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、速度制御(加速制御及び減速制御)、制動制御、操舵制御などの走行制御手段を含むときに、通信手段によって、他車両の走行制御を行う。
【0030】
これにより、自車両から周囲の車両を離反させることができるので、自車両が対象物に衝突ないし接触したときにも、周囲にその影響を波及するのを抑えることができる。
【0031】
また、本発明は、前記自車両と前記近接車両との間で、走行速度に応じて設定している以上の車間距離を確保するように前記他車両の走行制御を行うことを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、前走車両又は後続車両が自車両に近接したときに、近接した車両を、自車両から離反させる。これにより、円滑に近接状態を解消することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ヘッドライト、ストップランプなどを用いた光警報などを発するときに、高速走行状態では、点滅周期を短くすることにより、高速走行状態であっても、周囲の車両の運転者に的確に警報を認識させることができる。
【0034】
また、本発明は、通信手段を介して周囲の車両に警報情報を発するので、発した警報情報を周囲の車両の運転者に的確に伝達することができる。
【0035】
さらに、本発明では、走行制御手段を用いて、周囲の車両が自車両から離れるように走行制御を行うので、前走車両や後続車両が自車両に近接しても、近接状態を円滑に解除することが可能となるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る車両用警報システム10の概略構成を示している。この車両用警報システム10は、マイクロコンピュータと共に各種のインターフェイス等を含む警報コントローラ(以下、警報ECU12とする)を備えている。
【0037】
この警報ECU12には、車両用警報システム10が搭載された車両に設けられて近接検出手段を形成する障害物検知装置14が接続されている。
【0038】
障害物検知装置14は、障害検知センサ16を備えていると共に、車両に設けてられて車速を検知する車速センサ18が接続されている。障害物検知センサ18は、ミリ波などの電磁波、レーザー波、遠赤外線、近赤外線などの光(光波)、超音波などの音波などを探索波として発すると共に、車両などの対象物によって反射された探索波を受信することにより、探索対象物を検知する。
【0039】
障害物検知装置14は、障害物検知センサ16が対象物で反射された探索波を受信すると、受信した探索波の時間のずれや位相のずれなどから、対象物との距離を演算する。なお、このような処理は、予め設定している時間間隔などで、時系列的に行われる。
【0040】
また、障害物検知装置14は、車両の前方側、後方側及び両側方側のそれぞれを探索する障害物検知センサ16(以下、特に区別する必要があるときには、障害物検知センサ16F、16R、16Rs、16Lsとする)を備えている。
【0041】
これにより、図2に示すように、車両(自車両)20の周囲の対象物の探索が可能となっている。なお、以下では、主たる対象物として、自車両20Aの前方を走行している前走車両20B及び、自車両20Aの後方を走行している後続車両20Cを探索するものとして説明する。
【0042】
障害物検知装置14は、障害物検知センサ16によって検出した探索対象物ごとに、時間経過に応じた相対距離の変化を検出し、探索対象物が自車両20A に衝突する可能性があるか否かを判断する。すなわち、障害検知装置14は、前走車両20B、後続車両20Cの有無を検知し、例えば、前走車両20Bを検知すると、車間距離を計測し、車間距離が狭まったときに、自車両20Aと衝突する可能性があるほど近接したか否かを判断するようにしている。
【0043】
このときに、前走車両20Bの車間距離x、自車両20Aの走行速度(速度)vとして、予め設定した時間間隔(例えば、時刻t1と時刻t2)で、車間距離x(車間距離x1、x2)及び速度v(速度v1、v2)を検知し、時間値T1、T2を演算する。
【0044】
1=x1/v1
2=x2/v2
この演算結果と、予め設定している時間値Tに対するしきい値Tthから、
1−T2<0、T2<Tth
であるときに、検知されている前走車両20Bが自車両20Aと衝突する可能性のあると判断する。すなわち、T1−T2<0であることにより、前走車両20Bが自車両20Aに接近していると判断することができ、このときの時間値T2が、しきい値Tthよりも小さいときに、前走車両20Bが自車両20Aに衝突する可能性があるほど近接している判断することができる。
【0045】
このようなしきい値Tthは、前方側、後方側及び側方側のそれぞれに対して例えば、前方側に比べて後方側が小さくなるように異なる値が設定されている。なお、しきい値Tthは、方向のみでなく、例えば、自車両20Aの速度vに応じ、速度vが高くなるほどしきい値Tthが小さくなるように設定されていても良い。また、対象物の近接度合いの検知方法及び判断方法は、これに限らず、任意の検知方法及び判断方法を適用することができる。
【0046】
なお、障害物検出装置14としては、これに限らず、少なくとも車両用警報システム10が搭載される自車両20Aと、自車両20Aの周囲の障害物(例えば、前走車両20B、後続車両20C)との距離(車間距離)、相対速度及び、移動方向の情報を取得できる構成を備えたものであればよい。
【0047】
一方、図1に示すように、警報ECU12には、周囲警報手段として、車両20(自車両20A)に設けているヘッドライト22、ストップランプ24、ハザードランプ26及びクラクション(警笛)28が接続されている。
【0048】
警報ECU12は、障害物検知装置14が、探索対象である前走車両20Bや、後続車両20Cが、衝突する可能性があると判断されるほど近接していると判定すると、ヘッドライト22、ストップランプ24、ハザードランプ26の点滅ないしクラクション28の鳴動によって警報を発するようになっている。
【0049】
このとき、車両用警報システム10では、前走車両20Bに対する警報を、ヘッドライト22、ハザードランプ26及びクラクション28を用いて行い、後続車両20Cに対する警報を、ストップランプ24、ハザードランプ26及びクラクション28を用いて行うようにしている。
【0050】
ところで、車両用警報システム10では、走行状態検出手段として、車両に取り付けられているナビゲーションシステム30を用いており、警報ECU12には、このナビゲーションシステム30が接続している。警報ECU12は、ナビゲーションシステム30から、地図上の自車両20Aの走行位置が自動車専用道路などの高速道路上であるか否かを取得するようにしている。
【0051】
車両用警報システム10では、高速走行中であるか否かに応じて、例えば、ヘッドライト22を用いて警報を発するときのオン−オフ周期を変更するようにしており、警報ECU12では、ナビゲーションシステム30から、高速走行中であると判断される情報を取得すると、例えば、警報を発するときのオン−オフ周期を、非高速走行中よりも短くするようにしている。
【0052】
また、警報ECU12では、高速走行中に警報を発するときには、非高速走行中よりも、警報を発するタイミングを早めるようにしている。すなわち、警報ECU12では、衝突する可能性の高い障害物を検知すると、所定時間遅延して(例えば、コンマ数秒から数秒程度)警報を発するようにしているが、高速走行中であると判断されるときには、遅延時間を短くするか、遅延時間を無くして警報を発するようにしている。
【0053】
ここで、図3を参照しながら、第1の実施の形態の作用として、警報ECU12での警報処理の概略を説明する。なお、前記したように、ここでは、障害物検知装置14によって前走車両20B及び後続車両20Cを検知し、それぞれがしきい値Tth以内に接近したか否かに基づいて警報を発するものとしている。
【0054】
このフローチャートは、例えば、車両に設けている図示しないイグニッションスイッチがオンされて走行が開始されることにより実行され、最初のステップ100では、障害物検知装置14の検知結果を読み込み、ステップ102では、自車両20Aに近接している車両(前走車両20Bないし後続車両20C)が検知されているか否かを確認する。
【0055】
ここで、例えば、自車両20Aと前走車両20Bの車間距離が短くなって、前走車両20Bが自車両20Aに近接し、衝突する可能性が高くなっていると、ステップ102で肯定判定してステップ104へ移行する。
【0056】
このステップ104では、ナビゲーションシステム30から自車両20Aの位置情報を取得し、ステップ106では、高速走行中であるか否かを判断する。なお、自車両の位置の取得及び高速走行中であるかの判断は、予め実行しておいて記憶されているものであっても良い。
【0057】
これにより、高速走行中で無ければ、ステップ106で否定判定してステップ108へ移行する。このステップ108では、光警報及び音警報を発するときの開始タイミング及びオン−オフ周期(警報周期)を、低速走行中(非高速走行中)の値に設定する。
【0058】
この後、ステップ110では、設定したタイミング及びオン−オフ周期で前走車両20B及び後方車両20Cに警報を発する。
【0059】
これに対して、高速走行中であると判断されるときには、ステップ106で肯定判定してステップ112へ移行する。このステップ112では、光警報及び音警報を発するときの開始タイミング及びオン−オフ周期を、高速走行中の値に設定し、ステップ110へ移行することにより、設定した警報開始タイミングで、設定したオン−オフ周期の警報処理を実行する。
【0060】
車両用警報システム10では、高速走行中であると、ヘッドライト22の点滅周期、ストップランプ24の点滅周期、ハザードランプ26にお点滅周期及びクラクション28の鳴動周期を、低速走行中よりも早くする。また、車両用警報システム10では、高速走行中であると、警報を発するタイミングを、低速走行中よりも早くする。
【0061】
これにより、自車両20Aが、低速走行中に、前走車両20Bの間の車間距離が詰まり、前走車両20Bが近接状態となったときには、緩やかなヘッドライト22の点滅、ハザードランプ26の点滅及び、クラクション28の鳴動によって、前走車両20Bに接近していることを知らしめて注意を促すことができる。
【0062】
これと共に、ストップランプ24の緩やかな点滅によって、後続車両20Cに対し、自車両20Aが前走車両20Bに近接した状態であることを知らせて、注意を促すことができる。
【0063】
これに対して、高速走行中に、例えば、自車両20Aと前走車両20Bとが近接状態となり、衝突事故が発生する可能性が高くなると、警報開始タイミングを早め、かつ、短い点滅間隔(オン−オフ周期)でのヘッドライト22の点滅、ストップランプ24の点滅、ハザードランプ26の点滅及びクラクションの鳴動を行う。
【0064】
これにより、高速走行中の周囲の車両の運転者に、自車両20Aの緊急状態を的確に伝達することができる。すなわち、高速走行中の前走車両20Bの運転者は、進行方向の前方側に集中していることが多いが、このときに、後方側で短い周期でのヘッドライト22の点滅や、クラクション28の鳴動が行われることにより、ヘッドライト22が点滅していることや、クラクション28が鳴っていることを、迅速にかつ的確に視認することができる。
【0065】
したがって、前走車両20Bの運転者は、後続する車両(自車両20A)が、衝突するほどの近接状態であることを確実に認識することができ、これにより、衝突の回避操作を遅滞無く行うことが可能となる。
【0066】
また、高速走行中では、運転車の視認感覚が低下することがあり、これにより自車両20Aの発した警報に対して、後続車両20Cの運転車の視認が遅れる可能性がある。
【0067】
このときに、ストップランプ24を、短い周期で点滅することにより、後続車両20Cの運転者の視覚に刺激を与えることができるので、高速走行中であっても、自車両20Aの緊急状態を、後続車両20Cの運転者に、迅速にかつ的確に伝達することができるので、後続車両20Aの運転者は、前方の車両(自車両20A又は自車両20Aと前走車両20B)の緊急状態に対する的確な回避操作を、遅滞無く行うことができる。
【0068】
したがって、自車両20Aと前走車両20Bが近接状態となったときにも、衝突を回避することが可能となると共に、後続車両20Cでは、自車両20A、前走車両20Bの衝突回避が起因する衝突等を未然に防ぐことが可能となる。
【0069】
また、仮に、自車両20Aと前走車両20Bが衝突を回避しきれずに、接触等を起こしても、後続車両20Cが、この接触に巻き込まれるのを防止することが可能となる。
【0070】
一方、警報ECU12では、警報処理を実行すると、ステップ114では、障害物検知装置14の検知結果を読み込み、ステップ116では、近接していた前走車両20Bとの車間距離が開くなどして、近接状態が解消されたか否かを確認する。
【0071】
これにより、近接状態が解消されると、ステップ116で肯定判定してステップ118へ移行し、警報処理を停止する。
【0072】
このように、車両用警報システム10では、高速走行中と低速走行中(非高速走行中)とで、警報を発するタイミングと共に周期を変化される。このとき、高速走行中であれば、警報を発するタイミングを、低速走行中より早め、ヘッドライト22などの点滅周期を短くすることにより、周囲の車両の運転者の視覚や聴覚を刺激して、迅速な視認が可能となるようにしている。
【0073】
また、低速走行中であれば、高速走行中よりも警報タイミングが遅くなるようにし、かつ、ヘッドライト22等の点滅周期を長くする。これにより、低速走行中の周囲の車両の運転者に、必要以上の刺激を与えてしまうのを防止し、的確で確実な対処が可能となるようにしている。
【0074】
なお、以上説明した第1の実施の形態では、自車両20Aが高速走行中であるか否かを検出する走行状態検出手段として、ナビゲーションシステムを用いたが、走行状態検出手段は、これに限らず、各種の構成を適用することができる。
【0075】
例えば、走行状態検出手段としては、所定の周波数で配信される道路情報放送を用いることができる。この道路情報放送は、一般道でも配信されているが、高速道路では、ハイウェイラジオ放送として、高速道路専用の情報が配信されることから、放送内容を解析することにより、高速走行中であるか否かの判断が可能となる。
【0076】
また、走行状態検出手段としては、ETC装着車両であれば、ETC装置を用い、ETCゲートを通過したか否かから高速走行中であるか否かを判断することができる。
【0077】
さらに、一定速度で走行する機能(例えば、クルーズコントロール機能)を備えた車両であるときには、このクルーズコントロール機能を用い、設定速度が所定速度を越えているか否かから、高速走行中(高速道路の走行中)であるか否かを判断するようにしても良い。
【0078】
また、走行状態検出手段としては、車速センサによって検出する速度を用いることができる。このときには、所定速度以上での走行が、所定時間(例えば、十数分から数十分)以上継続しているか否かから判断すればよい。
【0079】
また、これらに限らず、高速走行中であるか否かの判断が可能であれば、任意の構成を適用することができる。
〔第2の実施の形態〕
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態の基本的構成は、前記した第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同一の部品には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0080】
図4には、第2の実施の形態に適用した車両用警報システム50の概略構成を示している。この車両用警報システム50は、警報ECU52を備え、この警報ECU52に、障害物検知装置14が接続されている。
【0081】
これにより、警報ECU52では、自車両20Aに前走車両20Bや後続車両20Cが近接しているか否かの判断が可能となっている。
【0082】
また、警報ECU52では、ナビゲーションシステム30から取得する位置情報から、高速走行中であるか否かの確認が可能となっており、また、高速走行中か否かに応じて、警報開始タイミング、警報周期を設定し、近接車両を検知したときには、この設定に基づいた警報処理を実行するようになっている。
【0083】
ところで、第2の実施の形態に適用した車両用警報システム10では、警報ECU52に、アクセルペダルの操作に応じたスロットル開度等の制御を行うエンジンコントロールECU54及び、車両のブレーキシステムに設けられて各種のブレーキ制御を行うブレーキECU56が接続している。
【0084】
これにより、警報ECU52では、近接車両などを検出したときに、エンジンコントロールECU54を用いて速度制御及び、ブレーキECU56を用いた制動制御が可能となっている。
【0085】
また、車両用警報システム50には、通信手段として無線通信装置58が設けられており、この無線通信装置58が、警報ECU52に接続している。無線通信装置58は、例えば、所定周波数の微弱電波を用い、数十メートルから数百メートル程度(例えば、300メートル程度)の限られた範囲での無線通信が可能な構成を適用することができ、警報ECU52では、この無線通信装置58を用いることにより、各種の情報の送受信が可能となっている。
【0086】
車両用警報システム50は、無線通信装置58を用いることにより、相互に情報交換が可能となっている。すなわち、無線通信装置58は、通信可能距離内の車両用警報システム50の間で、情報の送受信が可能となるようにしており、車両用警報システム50の一方が送信側となって、他方の受信側へ、速度制御要求や制動制御要求の送信を行うことができるようになっている。
【0087】
また、受信側の車両用警報システム50は、速度制御要求を受信することにより、受信した速度制御要求に基づいた加減速等のアクセルコントロールを行い、制動制御要求を受信することにより、車両の制動制御を行うようになっている。
【0088】
これにより、例えば、自車両20Aに車両用警報システム50(以下、区別するときには、車両用警報システム50Aとする)が設けられていると共に、自車両20Aの前を走行する前走車両20Bに車両用警報システム50(以下、区別するときには、車両用警報システム50Bとする)が設けられているときに、車両用警報システム50Aが、前走車両20Bの近接を検知すると、ブレーキシステムを用いた制動制御を行うと共に、無線通信によって車両用警報システム50Bに近接したことを旨の警報を発し、加速制御などの要求を行う。
【0089】
車両用警報システム50Bは、後続する車両(ここでは、自車両20A)の車両用警報システム50Aから、加速制御要求を受信すると、エンジンコントロールECU54へ加速制御信号を出力する。
【0090】
これにより、エンジンコントロールECU54が加速制御を行うことにより、近接している自車両20Aと前走車両20Bの車間距離が離され、近接状態が円滑に解消されるようにしている。
【0091】
また、後続車両20Cに車両用警報システム50(区別するときには、車両用警報システム50Cとする)が設けられているときには、車両用警報システム50A、50Cの間で、無線通信装置58を用いた通信が行われる。
【0092】
このときに、自車両20Aと後続車両20Cの近接を、車両用警報システム50Aで検知すると、車両用警報システム50Aの警報ECU52は、エンジンコントロールECU54を用いて、自車両20Aの加速制御を行う。これと共に、車両用警報システム50Aの警報ECU52は、後続車両20Cの車両用警報システム50Cへ、近接状態の通知と、減速制御要求を出力する。
【0093】
後続車両20Cに設けられている車両用警報システム50Cの警報ECU52は、無線通信装置58を介して、近接状態の通知と共に、減速制御要求を受信すると、ブレーキシステムのブレーキECU56へ、減速制御信号を出力することにより、車両制動が実行されるようにする。なお、減速制御要求を受信したときには、制動制御に加え、エンジンコントロールECU54でアクセル開度を狭めるようにしても良い。
【0094】
これにより、自車両20Aと後続車両20Cが近接したときには、進行方向前方側の自車両20Aが加速すると共に、後方側の後続車両20Cが減速して、近接状態が解消される。
【0095】
すなわち、第2の実施の形態に適用した車両用警報システム50は、自車両20Aと共に、前走車両20B、後続車両20Cに設けられることにより、無線通信によって近接状態を通知すると共に、加速制御ないし減速制御などの、近接状態を解消するための制御を要求するようにしている。
【0096】
ここで、図5及び図6を参照しながら、第2の実施の形態に適用した車両用警報システム50での警報処理を説明する。
【0097】
図5には、車両用警報システム50に設けている警報ECU52による警報処理の概略を示している。なお、この警報処理は、自車両20Aのイグニッションスイッチがオンされている走行可能状態又は、車両走行中に実行される。
【0098】
このフローチャートでは、最初のステップ100で、障害物検知装置14の検知結果を読み込み、ステップ102では、読み込んだ検知結果から、自車両20Aに近接している車両の有無を確認する。
【0099】
これにより、前走車両20B又は後続車両20Cが自車両20Aに極めて接近し、衝突ないし接触する可能性が高い近接状態であると、ステップ102で肯定判定されてステップ104へ移行する。このステップ104では、ナビゲーションシステム30から自車両20Aの位置情報を取得し、高速走行中か否かを判断する(ステップ106)。
【0100】
ここで、位置情報から自車両20Aが、高速道路上であれば高速走行中と判断して、ステップ106で肯定判定してステップ112へ移行することにより、高速走行中に合わせた警報設定を行う。また、自車両20Aが一般道路上であれば、低速走行中と判断して、ステップ106で否定判定してステップ108へ移行し、低速走行中に合わせた警報設定を行う。
【0101】
この後、ステップ120では、設定に基づいた警報処理を実行する。すなわち、低速走行中であれば、所定の遅延時間が経過すると、緩やかな周期でのヘッドライト22の点滅、ストップランプ24の点滅、ハザードランプ26の点滅と共に、クラクション28の鳴動を実行することにより、前走車両20Bの運転者及び、後続車両20Cの運転者に、自車両20Aに衝突が発生する可能性が高くなっていることを知らせる。
【0102】
これに対して、高速走行中であれば、遅延時間を短くするか、遅延時間を設けずに警報を発する。このとき、短い周期でのヘッドライト22の点滅、ストップランプ24の点滅、ハザードランプ26の点滅と共に、クラクション28の鳴動を行う。
【0103】
また、ステップ120では、警報処理と合わせて、自車両20Aの加速制御又は制動制御を実行する。すなわち、前走車両20Bが近接しているときには、ブレーキECU56によって制動制御を実行し、後続車両20Cが近接しているときには、エンジンコントロールECUによって加速制御を実行する。
【0104】
これと共に、警報ECU52では、ステップ122へ移行し、周囲の車両(前走車両20Bないし後続車両20C)へ、衝突ないし接触を回避するための操作要求を送信する。すなわち、前走車両20Bに設けられている車両用警報システム50Bに対しては、加速制御要求を送信し、後続車両20Cに設けられている車両用警報システム50Cに対しては、制動制御要求を送信する。
【0105】
図6には、この操作要求に対する処理の概略を示している。このフローチャートでは、最初のステップ130で、周囲の車両の車両用警報システム50から発せられた操作要求を検知したか否かを確認し、操作要求を検知するとステップ130で肯定判定してステップ132へ移行し、検知した操作要求を受信する。
【0106】
この後、ステップ134では、受信した操作要求が、加速制御要求か否か、すなわち、加速制御要求か制動制御要求かを確認する。
【0107】
ここで、受信した操作制御要求が、前走車両20Bに対する加速制御要求であるときには、ステップ134で肯定判定してステップ136へ移行し、加速制御を行う。また、受信した操作制御要求が、後続車両20Cに対する制動制御(減速制御を含む)要求であるときには、ステップ134で否定判定してステップ138へ移行し、ブレーキシステムを用いた制動制御を実行する。なお、このときには、エンジンコントロールECU54によりスロットルを閉じる減速処理を合わせて実行するものであっても良い。
【0108】
これにより、自車両20Aと前走車両20Bの車間距離及び、自車両20Aと後続車両20Cの車間距離が開かれ、自車両20Aと前走車両20B又は、自車両20Aと後続車両20Cの間の近接状態が円滑にかつ短時間で解消される。
【0109】
図5に示すフローチャートでは、周囲の車両への警報及び、衝突ないし接触を回避するための操作制御要求を送信すると、ステップ114では、障害物検知装置14の検知結果を読み込み、近接状態が解消されたか否かを確認し(ステップ116)、近接状態が解消されると、ステップ116で肯定判定してステップ124へ移行し、警報を停止し、実行中の加速制御又は制動制御を合わせて解除する。
【0110】
これと共に、ステップ124では、操作制御要求の解除を送信する。
【0111】
一方、図6のフローチャートでは、加速制御又は制動制御を実行すると、ステップ140へ移行し、解除要求を受信したか否かを確認する。
【0112】
ここで、近接状態が解消されて、解除要求が送信されることにより、この解除要求を受信すると、ステップ140で肯定判定してステップ142へ移行し、制御操作を解除する。すなわち、加速制御ないし減速制御を実行しているときには、強制的な加速制御又は減速制御を解除し、通常の速度制御を実行する。また、制動制御を実行しているときには、その制動制御を解除する。
【0113】
このように、近接車両を検知したときに、警報を発すると共に、近接車両に応じて加速制御又は減速制御を実行する。このとき、自車両20Aのみでなく、前走車両20B、後続車両20Cのそれぞれでも、加速制御又は減速制御を実行することにより、近接状態を円滑に、かつ、短時間で解消することができ、近接車両との衝突、接触を未然に防止することができると共に、二次的な衝突や接触も未然に防止することが可能となる。
【0114】
なお、前走車両20Bで加速制御を行うときや、後続車両20Cで制動制御を行うときには、それぞれに設けている障害物検知装置14によって、さらに先行する車両や後続する車両の有無、車間距離等を検出し、検出結果に基づいた加速制御、減速制御を行うことが好ましい。
【0115】
すなわち、前走車両20Bが加速制御を行うときには、車両用警報システム50Bが、さらに先行する車両との車間距離を確認し、先行する車両との車間距離が短ければ、加速度を抑えるようにしながら加速制御を行い、後続車両20Cが減速制御を行うときには、車両用警報システム50Cが、さらに、後続する車両の有無、車間距離を検知して、車間距離が狭くなっているときには、制動力を抑えるようにしながら制動制御を行うことが好ましい。
【0116】
これにより、運転車が意図せずに加速制御、減速制御が行われたための追突や接触事故を未然に防止することが可能となり。
【0117】
なお、ここでは、主として自車両20Aと前走車両20B及び後続車両20Cの加速制御、減速制御を例に説明したが、車両には、ステアリングアシスト機能を備えたものがあり、このステアリングアシスト機能を制御するステアリングECUを、警報ECU52に接続するようにしても良い。
【0118】
図7には、その一例とする車両用警報システム60の概略構成を示している。この車両用警報システム60は、前記した車両用警報システム50の警報ECU52に換えて用いる警報ECU62に、ステアリングECU64が接続しており、警報ECU62では、ステアリングECU64が接続されていることにより、このステアリングECU64を用いた操舵制御が可能となっている。
【0119】
図8に示すように、道路には、片側2車線以上の道路があり、特に高速道路では、走行車線と追い越し車線などのように片側2車線以上となっていることが多い。このような道路を走行するときには、自車両20Aが走行する車線に隣接する車線を並走する車両(並走車両20D)がある。
【0120】
車両用警報システム60に適用する警報ECU62は、高速走行中か否かに応じて警報設定を行い、設定した警報に基づいた警報処理を実行する。このとき、後続車両20Cが近接状態となったときには、並走車両20Dに対して、加速要求を行い、前走車両20Bが近接状態となったときには、並走車両20Dに対して、制動要求を行う。なお、並走車両20Dの位置によっては、制動要求又は加速要求と共に、自車両20Aから離れる方向への操舵要求を行うものであっても良い。
【0121】
このとき、並走車両20Dがステアリングアシスト機能を備えていることにより、自車両20Aの要求に応じて、自車両20Aから離れる方向へ進路変更(例えば、同一の車線内で車線の端に寄せるなど)することにより、並走車両20Dの運転者の視認性が低下した状態であっても、並走車両20Dを確実に退避させ、自車両20Aの衝突や接触に並走車両20Dを巻き込むのを防止することができる。
【0122】
また、警報ECU62は、並走車両20Dが近接状態となったことを検知したときには、周囲の車両に警報を発すると共に、ステアリングECU64によって操舵制御を行って、自車両20Aを並走車両20Dから離すと共に、並走車両20Dに対しても、自車両20Aから離れる方向への操舵制御要求を行う。
【0123】
これにより、自車両20Aに並走車両20Dが近接状態に至っても、円滑に、円滑に近接状態を解消することが可能となる。
【0124】
このように、車両用警報システム60が操舵制御も可能となることにより、周囲の車両の運転車の視認性が低下している可能性があるときにも、的確な近接状態の解消が可能となる。
【0125】
また、操舵制御を合わせて行うことにより、並走車両20Dを、自車両20Aから離すことができるので、警報を発した自車両20Aの避難領域が広がるので、衝突や接触を回避可能となる確率を高めることができる。
【0126】
なお、以上説明した第2の実施の形態では、無線通信装置58を用いて、前走車両20Bの加速制御、後続車両20Cの減速制御を合わせて行うようにしたが、これに限らず、前走車両20B、後続車両20Cに、自車両20Aが近接していることを示す情報を送信し、車両用警報システム20B、20Cが、受信した情報を、前走車両20B、後続車両20Cのそれぞれでカーラジオ、カーオーディオシステム等を用いて、音声によって運転車に通知するようにしても良い。
【0127】
また、通信手段として車両相互での直接的な無線通信を行う無線通信装置58を用いたが、通信手段としては、これに限らず、任意の構成を適用することができる。
【0128】
例えば、前走車両20B、後続車両20Cなどの周囲の車両との間で通信を行うときには、無線通信に限らず、赤外線通信などを適用することができる。
【0129】
また、車両間で直接的な通信を行うものに限らず、例えば、各車両が、衛星や所定の基地局との通信が可能な通信装置を備えるようにし、衛星や基地局を介して、間接的に車両間の通信を行うようにしても良い。
【0130】
このときには、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)を適用できる。DSRCでは、道路の近傍に設けた路側機と、車両に搭載している車載器との間での通信によって各種の情報の送受信が可能となるようにしたものであり、DSRC用車載器を警報ECU52に接続し、DSRC用路側機を介して通信を行うようにしても良い。
【0131】
また、通信手段としては、これらに限らず、車両間での直接的又は間接的な情報交換が可能な構成であれば任意の構成を適用することができる。
【0132】
一方、以上説明した第1及び第2の実施の形態では、車両の走行状態に応じて警報周期を変更するようにしたが、車両の走行状態に応じて警報手段を選択し、選択した警報手段を用いて警報を発するようにしても良い。このときには、例えば、高速走行中であれば、ヘッドライト22、ストップランプ24、クラクション28を用いるか、これらに加えてハザードランプ26を用いて警報を発するようにするが、非高速走行中であるときには、ハザードランプ26又はハザードランプ26とクラクション28を用いて警報を発する。
【0133】
このときに、選択した警報手段を用いて警報を発するときに、高速走行中か否かに基づいて、警報周期を異ならせるようにしても良い。
【0134】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、光を用いた警報手段(光警報手段)としてヘッドライト22、ストップランプ24、ハザードランプ26を適用し、音を用いる警報手段(音警報手段)としてクラクション28を適用して説明したが、警報手段としては、これに限らず、フォグランプなど、光又は音により、周囲に警報を伝達可能であれば、任意の警報手段を適用することができる。
【0135】
また、本実施の形態では、衝突する可能性のある対象物として車両を例に説明したが、本発明が適用される車両用警報システムとしては、車両に限らず、歩行者や動物などの移動体を対象物に含め、移動体の近接を検知して警報を発するものなど、衝突する可能性の高い対象物を検知して警報を発する任意の構成の車両用警報システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】第1の実施の形態に係る車両用警報システムの概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係る自車両と周囲の車両の配置の一例を示す概略図である。
【図3】第1の実施の形態に係る警報処理の概略を示す流れ図である。
【図4】第2の実施の形態に係る車両用警報システムの概略構成図である。
【図5】第2の実施の形態に係る警報処理の概略を示す流れ図である。
【図6】第2の実施の形態に係る操作制御要求に基づいた処理の一例を示す流れ図である。
【図7】本発明が適用される車両用警報システムの他の一例を示す概略構成図である。
【図8】図7の車両用警報システムに係る自車両と周囲の車両の配置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0137】
10、50(50A〜50C)、60 車両用警報システム
12、52、62 警報ECU(警報設定手段、警報制御手段)
14 障害物検知装置(対象物検出手段)
20A 自車両
20B 前走車両
20C 後続車両
20D 並走車両
22 ヘッドライト(警報手段)
24 ストップランプ(警報手段)
26 ハザードランプ(警報手段)
28 クラクション(警報手段)
30 ナビゲーションシステム(走行状態検出手段)
54 エンジンコントロールECU(走行制御手段)
56 ブレーキECU(走行制御手段)
58 無線通信装置(通信手段)
64 ステアリングECU(走行制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の対象物及び対象物との距離を検出する対象物検出手段と、
車両高速走行中か否かの走行状態を検出する走行状態検出手段と、
周囲に警報を発する警報手段と、
前記走行状態検出手段が高速走行状態を検出しているときに、前記警報手段の警報周期を非高速走行状態であるときより短くするように設定する警報設定手段と、
前記対象物検出手段によって自車両の周囲の予め設定している所定以内の領域に近接した対象物を検出したときに、前記警報設定手段の設定に基づいて前記警報手段を作動させることにより自車両の周囲に警報を発する警報制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用警報システム。
【請求項2】
自車両の周囲の対象物及び対象物との距離を検出する対象物検出手段と、
車両高速走行中か否かの走行状態を検出する走行状態検出手段と、
それぞれが異なる媒体を用いて自車両の周囲への発警報が可能な複数の警報手段と、
前記対象物検出手段によって自車両の周囲の予め設定している所定以内の領域に近接した対象物を検出したときに、前記走行状態検出手段によって検出する走行状態に基づいて前記警報手段の作動を制御し、自車両の周囲に警報を発する警報制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用警報システム。
【請求項3】
前記警報制御手段は、前記走行状態に基づいて最適な発警報が行われるように前記警報手段の作動を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用警報システム。
【請求項4】
前記走行状態に基づいて、前記警報手段、前記警報手段ごとの警報開始タイミングないし警報周期を設定する警報設定手段を含み、前記警報制御手段が前記警報設定手段の設定に基づいて前記警報手段の作動を制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用警報システム。
【請求項5】
前記走行状態検出手段が高速走行状態を検出しているときに、前記警報設定手段が、前記警報手段の警報周期を非高速走行状態であるときより短くするように設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用警報システム。
【請求項6】
自車両の周囲の対象物及び対象物との距離を検出する対象物検出手段と、
他車両との間で情報の通信を可能とする通信手段と、
前記対象物検出手段によって自車両の周囲の予め設定している所定以内の領域に近接した対象物を検出したときに、前記通信手段によって自車両の周囲の車両に警報情報を発する警報制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用警報システム。
【請求項7】
車両高速走行中か否かの走行状態を検出する走行状態検出手段と、
それぞれが異なる媒体を用いて自車両の周囲への発警報が可能な複数の警報手段と、
前記走行状態検出手段の検出する走行状態に基づいて前記複数の警報手段の中から最適な警報手段、警報開始タイミングないし警報周期を設定する警報設定手段と、
を含み、前記警報制御手段が、前記警報設定手段の設定に基づいて前記警報手段を作動させることにより自車両の周囲に警報を発する、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用警報システム。
【請求項8】
前記走行状態検出手段が高速走行状態を検出しているときに、前記警報設定手段が、前記警報手段の警報周期を非高速走行状態であるときより短くするように設定する、
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の車両用警報システム。
【請求項9】
前記通信手段を介して入力される情報に基づいて車両の走行制御を可能とする走行制御手段を含み、
前記警報制御手段が、前記通信手段によって前記他車両が自車両から退避するように走行制御を行う、
ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の車両用警報システム。
【請求項10】
前記対象物が周囲の走行車両であるときに、前記自車両と前記近接車両との間で、走行速度に応じて設定している以上の車間距離を確保するように前記他車両の走行制御を行うことを特徴とする請求項9に記載の車両用警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−91028(P2007−91028A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282684(P2005−282684)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】