説明

車両用車椅子収納装置

【課題】簡単な構造によって、車椅子の収納・取出の作動時において、収納ボックスが乗用自動車の側端部から突出する量を小さく抑えることができる車両用車椅子収納装置を提供すること。
【解決手段】車両用車椅子収納装置2は、折り畳み状態の車椅子8を収納する収納ボックス3と、収納ボックス3を上下方向へ回動させる回動手段4と、折り畳み状態の車椅子8を昇降させる昇降手段5とを有している。収納ボックス3は、折り畳み状態の車椅子8を挿入するための挿入開口部31を一方の側端部側に向けた状態でフードパネル11上に載置した原位置301と、回動手段4による動力を受けて原位置301から回動し、挿入開口部31を下方に向ける作動位置とに回動可能である。昇降手段5は、作動位置にある収納ボックス3における挿入開口部31へ、折り畳み状態の車椅子8を挿入するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用自動車のフードパネル上において、折り畳んだ状態の車椅子を収納するよう構成した車両用車椅子収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を利用する身体障害者等が、自動車の運転座席に乗車するときには、車椅子を折り畳んで、自動車の助手席、後部座席、トランクルーム等に収納する必要がある。そのため、例えば、特許文献1の車両の車椅子格納装置は、電動力によって折り畳んだ状態の車椅子を持ち上げ、この車椅子を車両のフードパネル上において格納するよう構成している。
【0003】
この特許文献1においては、フードパネル上に配設した装置本体に取り付けられたスライダが、乗降口の上方まで車両の左右方向に水平に移動し、ベルトやワイヤ等が垂直上方に車椅子を吊り上げ、折り畳まれた車椅子を装置本体へ格納する。これにより、雨天時に身体障害者及び車椅子を濡らすことがなくフードパネル上に車椅子を格納することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、スライダが車両の左右方向に水平に移動することにより、このスライダが車両の側端部から大きく突出してしまう。そのため、上記車椅子格納装置を配設した当該車両の横に隣接して他の車両等がある場合には、スライダが他の車両に干渉しないように常に確認する必要が生じる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−237238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造によって、車椅子の収納・取出の作動時において、収納ボックスが乗用自動車の側端部から突出する量を小さく抑えることができる車両用車椅子収納装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乗用自動車のフードパネル上において、折り畳み状態の車椅子を収納するよう構成した車両用車椅子収納装置であって、
該車両用車椅子収納装置は、上記フードパネル上において上記折り畳み状態の車椅子を収納する収納ボックスと、
該収納ボックスを上記フードパネルにおける一方の側端部を中心に上下方向へ回動させる回動手段と、
上記乗用自動車の運転座席側のドアの側方と上記収納ボックスとの間で、上記折り畳み状態の車椅子の出し入れを行う昇降手段とを有しており、
上記収納ボックスは、上記折り畳み状態の車椅子を挿入するための挿入開口部を上記一方の側端部側に向けた状態で上記フードパネル上に載置した原位置と、上記回動手段による動力を受けて上記原位置から回動し、上記挿入開口部を下方に向けた作動位置とに回動可能であり、
上記昇降手段は、上記作動位置にある上記収納ボックスにおける上記挿入開口部へ、上記折り畳み状態の車椅子を挿入するよう構成してあることを特徴とする車両用車椅子収納装置にある(請求項1)。
【0008】
本発明の車両用車椅子収納装置は、上記収納ボックス、上記回動手段及び上記昇降手段を有しており、回動手段によって収納ボックスを上方へ回動させて作動位置にし、この作動位置にある収納ボックスへ、昇降手段によって折り畳み状態の車椅子を収納することができるものである。
そのため、収納ボックスは、上下方向に回動して、その挿入開口部を下方に向けることができ、この収納ボックスが、乗用自動車の側端部から突出する量を小さく抑えることができる。
【0009】
また、本発明の車両用車椅子収納装置は、回動手段によって収納ボックスを回動させ、昇降手段によって折り畳み状態の車椅子を昇降させるといった簡単な構造で実現することができる。
それ故、本発明の車両用車椅子収納装置によれば、簡単な構造によって、車椅子の収納・取出の作動時において、収納ボックスが乗用自動車の側端部から突出する量を小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の車両用車椅子収納装置にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
本例の車両用車椅子収納装置2(以下、車椅子収納装置2という。)は、図1〜図4に示すごとく、乗用自動車1のフードパネル11上において、折り畳んだ状態の車椅子8を収納するよう構成してある。
この車椅子収納装置2は、図1、図2に示すごとく、フードパネル11上において折り畳み状態の車椅子8を収納する収納ボックス3と、この収納ボックス3をフードパネル11における一方の側端部を中心に上下方向へ回動させる回動手段4と、乗用自動車1の運転座席側ドア12の側方と収納ボックス3との間で、折り畳み状態の車椅子8の出し入れを行う昇降手段5とを有している。
【0011】
また、上記収納ボックス3は、図1、図2、図4に示すごとく、折り畳み状態の車椅子8を挿入するための挿入開口部31を一方の側端部側に向けた状態でフードパネル11上に載置した原位置301と、図3に示すごとく、回動手段4による動力を受けて原位置301から回動し、挿入開口部31を下方に向ける作動位置302とに回動可能である。
また、上記昇降手段5は、作動位置302にある収納ボックス3における挿入開口部31へ、折り畳み状態の車椅子8を挿入するよう構成してある。
【0012】
以下に、本例の車椅子収納装置2につき、図1〜図4と共に詳説する。
本例の車椅子収納装置2は、電動力によって折り畳み状態の車椅子8を、収納ボックス3内へ収納するよう構成してある。この車椅子収納装置2に収納する車椅子8は、運転座席に乗車する身体障害者等の乗員が乗るものである。
【0013】
また、図1、図2に示すごとく、車椅子収納装置2は、乗用自動車1のフードパネル11上に、取付部材211を介して設置するベースプレート21上に形成してある。また、収納ボックス3は、ベースプレート21上に配設した一対の軸受22によって回動可能に支持してある。
本例の回動手段4は、上記フードパネル11上に配設した回動用モータ41を用いて構成してあり、本例の昇降手段5は、フードパネル11上に配設した昇降用モータ51を用いて構成してある。
【0014】
同図に示すごとく、本例の乗用自動車1は、右ハンドル車であり、原位置301にある収納ボックス3の挿入開口部31は、フードパネル11における右端部側に向けて開口している。また、収納ボックス3における回動中心部32は、フードパネル11における右端部近傍に設けてあり、回動用モータ41及び昇降用モータ51は、フードパネル11における右端部近傍に配設してある。
【0015】
図1、図2に示すごとく、上記回動手段4は、回動用モータ41と、この回動用モータ41の出力軸411に取り付けた駆動側動力伝達車42と、収納ボックス3の前後方向Dにおける外側側面に固定した従動側動力伝達車43と、駆動側動力伝達車42と従動側動力伝達車43とを連結する連結線材44とを有している。
上記昇降手段5は、昇降用モータ51と、昇降用モータ51の出力軸511に連結し、収納ボックス3の前後方向Dにおける一対の側面に掛け渡した駆動側シャフト52と、収納ボックス3の前後方向Dにおける一対の内側側面に掛け渡した従動側シャフト53と、この従動側シャフト53に設けた巻取り治具56とを有している。
【0016】
また、駆動側シャフト52及び従動側シャフト53の両端部には、それぞれ動力伝達車54が設けてあり、駆動側シャフト52の動力伝達車54と従動側シャフト53の動力伝達車54とは、連結線材55によって連結してある。また、巻取り治具56は、従動側シャフト53に係合した状態で収納ボックス3内に配設した治具本体561と、従動側シャフト53の回転を受けて、治具本体561から送出し及び巻取りが可能な昇降用線材562とを有している。
駆動側シャフト52は、収納ボックス3における運転座席側の端部(本例では右端部)近傍に設けてあり、従動側シャフト53は、収納ボックス3における助手席側の端部(本例では左端部)近傍に設けてある。
【0017】
また、昇降用モータ51の出力軸511は、上記従動側動力伝達車43の中心に設けた貫通穴431内に挿通してある。そして、昇降用モータ51の出力軸511及び駆動側シャフト52の軸心と、従動側動力伝達車43の軸心とは、収納ボックス3の回動中心部32の中心軸線上にある。この構成により、回動用モータ41及び昇降用モータ51をフードパネル11上に配設して、収納ボックス3の軽量化を図ることができる。
また、回動用モータ41及び昇降用モータ51は、ギヤードモータとし、ギヤによる減速を行って出力軸411、511に大きなトルクを発生するよう構成した。
【0018】
本例の駆動側動力伝達車42及び従動側動力伝達車43はプーリとし、連結線材44はベルトとした。これ以外にも、駆動側動力伝達車42及び従動側動力伝達車43は、歯付プーリ、スプロケット、歯車等とすることもでき、連結線材44は、歯付ベルト、チェーン等とすることもできる。
また、本例の動力伝達車54はプーリとし、連結線材55はベルトとした。これ以外にも、動力伝達車54は、歯付プーリ、スプロケット、歯車等とすることもでき、連結線材55は、歯付ベルト、チェーン等とすることもできる。
【0019】
なお、上記回動手段4及び昇降手段5は、モータを用いる以外にも、種々のアクチュエータを用いて構成することができる。このアクチュエータとしては、例えば、シリンダー、電磁ソレノイド、ガススプリング等を用いることができる。
【0020】
次に、上記車椅子収納装置2における動作を説明する。
車椅子収納装置2を配設した乗用自動車1に乗車する身体障害者等の乗員は、開いた状態の運転座席側ドア12の側方まで車椅子8に乗って走行し、車椅子8から運転座席へ乗り移る。次いで、乗員は、車椅子8を折り畳み、乗用自動車1のダッシュボード、運転座席側ドア12の内側ポケット等に配置した操作部(図示略)における回動用操作スイッチ(又は回動用リモコンスイッチ)を操作して、回動用モータ41を一方向へ回転させる。このとき、図3に示すごとく、上記駆動側動力伝達車42、連結線材44、従動側動力伝達車43を介して収納ボックス3が一方向へ回動する。これにより、収納ボックス3が原位置301から作動位置302へ回動して起立状態になり、その挿入開口部31が、折り畳み状態の車椅子8に向けられる。
【0021】
次いで、乗員は、操作部における昇降用操作スイッチを操作して、昇降用モータ51を一方向へ回転させる。このとき、上記駆動側シャフト52、動力伝達車54、連結線材55を介して従動側シャフト53が一方向へ回転し、上記巻取り治具56における昇降用線材562が下方へ送り出される。
【0022】
次いで、図3に示すごとく、乗員は、送り出された昇降用線材562の先端係合部563を、折り畳み状態の車椅子8に取り付け、操作部における昇降用操作スイッチを操作して、昇降用モータ51を他方向へ回転させる。このとき、上記駆動側シャフト52、動力伝達車54、連結線材55を介して従動側シャフト53が他方向へ回転し、上記巻取り治具56における昇降用線材562が上方へ巻き取られる。そして、昇降用線材562によって折り畳み状態の車椅子8が持ち上げられ、収納ボックス3内に挿入される。
【0023】
次いで、図4に示すごとく、乗員は、操作部における回動用操作スイッチを操作して、回動用モータ41を他方向へ回転させる。このとき、上記駆動側動力伝達車42、連結線材44、従動側動力伝達車43を介して収納ボックス3が他方向へ回動する。これにより、収納ボックス3が作動位置302から原位置301へ回動してフードパネル11上に載置され、このフードパネル11上において折り畳み状態の車椅子8を収納することができる。
なお、乗員は、収納ボックス3内から車椅子8を取り出す際には、上記動作と同様の動作を行って取り出すことができる。
【0024】
このように、本例の車椅子収納装置2によれば、乗員が上記操作部を操作することによって、運転座席側ドア12の側方に乗り付けた車椅子8を、折り畳んだ状態で、フードパネル11上における収納ボックス3内に収納することができる。
そのため、収納ボックス3は、上下方向に回動して、その挿入開口部31を下方に向けることができ、この収納ボックス3が、乗用自動車1の側端部(右端部)から突出する量を小さく抑えることができる。
【0025】
また、本例の車椅子収納装置2は、回動手段4によって収納ボックス3を回動させ、昇降手段5によって折り畳み状態の車椅子8を昇降させるといった簡単な構造で実現することができる。
それ故、本例の車椅子収納装置2によれば、簡単な構造によって、車椅子8の収納・取出の作動時において、収納ボックス3が乗用自動車1の側端部から突出する量を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例における、車両用車椅子収納装置を、乗用自動車の前方から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例における、車両用車椅子収納装置を、乗用自動車の上方から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例における、車両用車椅子収納装置を、乗用自動車の前方から見た状態で示す図で、起立状態の収納ボックス内へ折り畳み状態の車椅子を収納する状態を示す説明図。
【図4】実施例における、車両用車椅子収納装置を、乗用自動車の前方から見た状態で示す図で、折り畳み状態の車椅子を挿入した起立状態の収納ボックスを、フードパネル上へ回動させた状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 乗用自動車
11 フードパネル
12 運転座席側ドア
2 車両用車椅子収納装置
3 収納ボックス
301 原位置
302 作動位置
31 挿入開口部
4 回動手段
41 回動用モータ
5 昇降手段
51 昇降用モータ
8 車椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用自動車のフードパネル上において、折り畳み状態の車椅子を収納するよう構成した車両用車椅子収納装置であって、
該車両用車椅子収納装置は、上記フードパネル上において上記折り畳み状態の車椅子を収納する収納ボックスと、
該収納ボックスを上記フードパネルにおける一方の側端部を中心に上下方向へ回動させる回動手段と、
上記乗用自動車の運転座席側のドアの側方と上記収納ボックスとの間で、上記折り畳み状態の車椅子の出し入れを行う昇降手段とを有しており、
上記収納ボックスは、上記折り畳み状態の車椅子を挿入するための挿入開口部を上記一方の側端部側に向けた状態で上記フードパネル上に載置した原位置と、上記回動手段による動力を受けて上記原位置から回動し、上記挿入開口部を下方に向けた作動位置とに回動可能であり、
上記昇降手段は、上記作動位置にある上記収納ボックスにおける上記挿入開口部へ、上記折り畳み状態の車椅子を挿入するよう構成してあることを特徴とする車両用車椅子収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−319221(P2007−319221A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149944(P2006−149944)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(306021435)有限会社宮地自動車 (1)
【Fターム(参考)】