説明

車両用運転支援装置

【課題】同じ運転者でも、その時々に応じた運転支援を可能とすると共に、安全度を向上するための情報に対する運転者の対応度に応じて情報内容を設定する。
【解決手段】検出されたドライバの運転行動指標に基づいて運転を支援するためのメッセージをメッセージ作成部15で作成して提示すると共に、過去に運転を支援するためのメッセージを提示したときのドライバの受容性レベルを受容性算出部17で算出し、その算出されたドライバの受容性レベルに基づいて運転を支援するためのメッセージを設定する。ドライバの受容性レベルが高いほど、運転支援メッセージの明確さ指標を低く設定し、明確さ指標が高いほど、安全度を向上するためのメッセージの明確さを高め、ドライバの受容性レベルが低いほど、運転支援メッセージの提示機会を大きくする。過去に情報を提示したときのドライバの運転行動に基づいて、それまでの受容性レベルを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバの運転を支援する車両用運転支援装置に関するものであり、特に安全度の向上のための情報を提示し得る車両用運転支援装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このような車両用運転支援装置としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この車両用運転支援装置は、2段階目よりも1段階目の方が抑制された2段階の警報設定がある衝突警報装置において、ドライバの集中度を推定し、集中度が高い場合には2段階目の警報を発生するものである。また、下記特許文献2に記載される車両用運転支援装置は、一時停止位置や前方障害物に対する情報提供、警報、制御のタイミングを、ドライバの覚醒度や反応時間に影響を与えると考えられる諸要因(年齢、視力、運転経験、等)に応じて調整するものである。
【特許文献1】特開2004−231017号公報
【特許文献2】特開2005−209073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載される車両用運転支援装置では、衝突の可能性が高い場合にのみ情報を提供するだけであり、種々の周辺環境や走行環境、運転環境に応じた運転支援を行うことができない。また、前記特許文献2に記載される車両用運転支援装置では、ドライバ個々の特性に応じて運転支援を行うことはできるものの、同じドライバの、その時々に応じた運転支援を行うことはできない。
本発明はこれらの諸問題を解決すべくなされたものであり、同じ運転者でも、その時々に応じた運転支援を可能とすると共に、安全度を向上するための情報に対する運転者の対応度に応じて情報内容を設定することが可能な車両用運転支援装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用運転支援装置は、運転者の運転行動を検出し、その検出された運転者の運転行動に基づいて運転を支援するための情報を提示すると共に、過去に運転を支援するための情報を提示したときの運転者の対応度合いから情報に対する運転者の受容性の程度を算出し、その算出された運転者の受容性の程度に基づいて運転を支援するための情報を設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る車両用運転支援装置によれば、検出された運転者の運転行動に基づいて運転を支援するための情報を提示すると共に、過去に運転を支援するための情報を提示したときの運転者の対応度合いから情報に対する運転者の受容性の程度を算出し、その算出された運転者の受容性の程度に基づいて運転を支援するための情報を設定することとしたため、同じ運転者でも、その時々に応じた運転支援を可能とすると共に、安全度を向上するための情報に対する運転者の対応度に応じて情報内容を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図を参照して本発明の車両用運転支援装置の実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の車両用運転支援装置が搭載された車両の概略構成図である。図中の符号1は、運転支援に関する種々の演算処理を司るコントロールユニットである。また、図中の符号2は、自車両(以下、自車とも記す)の位置を検出し、道路案内を行うナビゲーション兼音声・画像モニタであり、符号3は、自車位置を検出するための自車位置センサである。ナビゲーション兼音声・画像モニタ2には、道路形状のデータ、一時停止線の位置データ、道路の制限速度のデータなどが記憶され、コントロールユニット1とデータの授受を行うことができる。また、図中の符号4は、ステアリングホイール101の操舵角を検出する操舵角センサ、符号5は、ブレーキペダルの踏込みを検出するブレーキペダルセンサ、符号6は、アクセルペダルの踏込み量を検出するアクセルペダルセンサである。また、図中の符号7は、自車に発生する加速度を検出する加速度センサ、符号8は、自車の走行速度を検出する自車速度センサである。また、図中の符号9は、レーザレーダや赤外線レーダで構成され、自車前方の車両との車間距離や相対速度を検出する前方車間距離・相対速度センサ、符号10は、同じく、自車両後方の車両との車間距離や相対速度を検出する後方車間距離・相対速度センサである。また、図中の符号11は、ステアリングホイール(正確にはステアリングシャフト)に振動を付与する(ハプティックとも言う)振動装置である。
【0007】
図2には、本実施形態の車両用運転支援装置のシステムブロック図を示す。本実施形態のコントロールユニット1内には、前記各センサ3〜10の出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2の各データを読込み、運転者(以下、ドライバとも記す)の運転行動指標を算出する運転行動指標算出部12が設けられている。この運転行動指標算出部12で算出された運転行動指標は、コントロールユニット1内のメモリに蓄積され、この蓄積された運動行動指標に基づいて安全度算出部14で安全度の状態、特に安全度の変化の状態を算出する。メッセージ作成部15は、安全度算出部14で算出された安全度の状態、特に安全度の変化の状態に応じたメッセージ(情報)を作成し、それを表示装置及び音声装置に相当するナビゲーション兼音声・画像モニタ2に表示したり、振動装置11でステアリングホイール101を振動したりして、ドライバに提示する。一方、コントロールユニット1内に設けられたドライバ対応度合い算出部16では、過去のメッセージ提示時のドライバの対応度合いを算出し、受容性算出部17では、過去のドライバの対応度合いからドライバのメッセージに対する受容性を算出する。メッセージに対する受容性とは、そのメッセージをドライバがどの程度受け入れるかの評価指標である。そして、メッセージ作成部15では、ドライバのメッセージに対する受容性に応じてメッセージの内容を設定する。なお、本実施形態のコントロールユニット1は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ13を備えたコンピュータシステムであり、運転行動算出部12や安全度算出部14、メッセージ作成部15、ドライバ対応度合い算出部16、受容性算出部17は、後述する演算処理によって構築されている。また、安全度とは、安全性の度合いであり、より安全性である場合に、安全度が高いと定義する。
【0008】
図3には、図2のコントロールユニット1の各構成要件を構築するための演算処理のゼネラルフローを示す。この演算処理では、まずステップS1で、前記各センサ3〜10の出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2の各データを読込み、後述する図4の演算処理に従ってドライバの運転行動指標を算出する。
次にステップS2に移行して、例えば予め30分程度に設定された所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過した場合にはステップS3に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
【0009】
ステップS3では、前記各センサ3〜10の出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2の各データ、或いはメモリ13に格納されたデータや演算結果を読込んでからステップS4に移行する。
ステップS4では、後述する図9の演算処理に従って、安全度指標の算出を行ってからステップS9に移行する。
一方、ステップS5では、前記各センサ3〜10の出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2の各データ、或いはメモリ13に格納されたデータや演算結果を読込んでからステップS6に移行する。
ステップS6では、後述する図10の演算処理に従って、ドライバ対応度合いを算出してからステップS7に移行する。
【0010】
ステップS7では、後述する図11の演算処理に従って、ドライバの受容性レベルを算出してからステップS8に移行する。
ステップS8では、後述する図13の演算処理に従って、メッセージの明確さ指標を算出してからステップS9に移行する。
ステップS9では、後述する図14の演算処理に従って、メッセージを作成する。
次にステップS10に移行して、後述する図15の演算処理に従って、メッセ維持を出力してからメインプログラムに復帰する。
【0011】
次に、前記図3の演算処理のステップS1で行われるドライバの運転行動指標算出のための演算処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、後述する図5〜図8の演算処理に従って、まずステップS11で、走行シーンの検出を行い、次いでステップS12で運転行動指標の算出を行ってから、図13の演算処理のステップS2に移行する。
【0012】
本実施形態では、各走行シーンにおける運転行動指標として、先行車両(以下、先行車とも記す)を追従して走行しているとき(以下、先行車追従シーンとも記す)の車間時間(先行車と自車との車間距離を自車速度で除した値)、先行車が接近しているとき(以下、先行車接近シーンとも記す)の接触余裕時間(先行車と自車との車間距離を両者の相対速度で除した値)、自車が単独で走行しているとき(以下、単独走行シーンとも記す)の自車速度と道路の制限速度との差分値、一時停止線から発進したとき(以下、一時停止線発進シーンとも記す)の発進加速度、一時停止線で減速するとき(以下、一時停止線減速シーンとも記す)のブレーキ操作開始時の自車位置と一時停止線の距離、後続車両(以下、後続車とも記す)に追従されているとき(以下、後続車被追従シーンとも記す)の後続車との車間時間(後続車と自車との車間距離を自車速度で除した値)、直線路を走行しているとき(以下、直線路走行シーンとも記す)のステアリングエントロピー(エントロピー:乱雑さ、無秩序さ、不規則さ、といった意味で、この場合はふらつきを意味する)の何れか一つ以上を検出し、その運転行動指標について安全度指数の算出を行う。
【0013】
一例として、先行車追従シーンの車間時間、先行車接近シーンの接触余裕時間、単独走行シーンの自車速度と道路の制限速度との差分値を、各シーン毎に記録する演算処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS101で、前方車間距離・相対速度センサ9によって先行車が検出されているか否かを判定し、先行車が検出されている場合にはステップS102に移行し、そうでない場合にはステップS107に移行する。
【0014】
ステップS102では、前方車間距離・相対速度センサ9によって検出されている先行車と自車との相対速度の絶対値が2km/h以下であるか否かを判定し、先行車と自車との相対速度の絶対値が2km/h以下である場合にはステップS103に移行し、そうでない場合にはステップS104に移行する。
ステップS103では、先行車追従シーンとして、先行車と自車との車間距離を自車速度で除して車間時間を算出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
【0015】
ステップS104では、前方車間距離・相対速度センサ9によって検出されている先行車と自車との相対速度が−2km/h未満であるか否かを判定し、先行車と自車との相対速度が−2km/h未満である場合にはステップS105に移行し、そうでない場合にはステップS106に移行する。
ステップS105では、先行車接近シーンとして、先行車と自車との車間距離を先行車と自車との相対速度で除して接触余裕時間を算出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
【0016】
ステップS106では、シーンの記録をせずに図3の演算処理のステップS2に移行する。
一方、ステップS107では、自車位置センサ3からの出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2からのデータに基づいて自車位置を検出してからステップS108に移行する。
ステップS108では、ナビゲーション兼音声・画像モニタ2からのデータから、走行路の制限速度データを照会してからステップS109に移行する。
ステップS109では、単独走行シーンとして、自車速度から制限速度を減じて両者の差分値を算出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
【0017】
また、他の例として、一時停止線発進シーンの発進加速度、一時停止線減速シーンのブレーキ操作開始時の自車位置と一時停止線の距離を、各シーン毎に記録する演算処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS111で、前方車間距離・相対速度センサ9によって先行車が検出されているか否かを判定し、先行車が検出されている場合にはステップS112に移行し、そうでない場合にはステップS118に移行する。
【0018】
ステップS112では、自車位置センサ3からの出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2からのデータに基づいて自車位置を検出してからステップS113に移行する。
ステップS113では、ナビゲーション兼音声・画像モニタ2からのデータに基づいて、走行路上の一時停止線までの距離データを照会してからステップS114に移行する。
ステップS114では、ステップS113で照会された走行路上の一時停止線までの距離が±3m以下で且つ自車速度が0km/hであるか否かを判定し、一時停止線までの距離が±3m以下で且つ自車速度が0km/hである場合にはステップS115に移行し、そうでない場合にはステップS116に移行する。
【0019】
ステップS115では、一時停止発進シーンとして、発進後、3秒以内での最大加速度を検出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
一方、ステップS116では、一時停止線までの距離が50m以下であるか否かを判定し、一時停止線までの距離が50m以下である場合にはステップS117に移行し、そうでない場合にはステップS118に移行する。
ステップS117では、一時停止線減速シーンとして、ブレーキ操作開始時の自車位置と一時停止線との距離を検出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
ステップS118では、シーンの記録をせずに図3の演算処理のステップS2に移行する。
【0020】
また、他の例として、後続車被追従シーンの後続車との車間時間を、シーン毎に記録する演算処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS121で、後方車間距離・相対速度センサ10によって後続車が検出されているか否かを判定し、後続車が検出されている場合にはステップS122に移行し、そうでない場合にはステップS123に移行する。
ステップS122では、後続車被追従シーンとして、後続車と自車との車間距離を自車速度で除して車間時間を算出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
ステップS123では、シーンの記録をせずに図3の演算処理のステップS2に移行する。
【0021】
また、他の例として、直線路走行シーンのステアリングエントロピーを、シーン毎に記録する演算処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS131で、自車位置センサ3からの出力及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2からのデータに基づいて自車位置を検出する。
次にステップS132に移行して、ナビゲーション兼音声・画像モニタ2からのデータに基づいて道路形状データを照会する。
【0022】
次にステップS133に移行して、ステップS132で照会した道路形状データから、走行している道路形状の曲率半径Rが1000mより大きいか否かを判定し、道路形状の曲率半径Rが1000mより大きい場合にはステップS134に移行し、そうでない場合にはステップS135に移行する。
ステップS134では、直線路走行シーンとして、操舵角センサ4で検出される操舵角からステアリングエントロピーを算出し、それをドライバによる運転行動指標として記録してから図3の演算処理のステップS2に移行する。
ステップS135では、シーンの記録をせずに図3の演算処理のステップS2に移行する。
【0023】
次に、前記図3の演算処理のステップS4で行われる安全度指標の算出について、図9のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS41で、所謂普段の運転行動指標として、例えば過去3週間分の運転行動指標の代表値を算出する。この代表値には、例えば前述のようにして記録された運転行動指標の平均値であるとか、或いは所定の累積頻度割合などが挙げられる。所定の累積頻度割合とは、例えば記録された運転行動指標が正規分布する場合に、そのデータの25%が含まれる車間時間の値とか、逆にデータの75%が含まれるステアリングエントロピーといったように、選択される運転行動指標に応じて適宜に設定すればよい。なお、この場合は、どちらも、後述する安全度をより厳しく評価するサイドに寄せてある。
【0024】
次にステップS42に移行して、所謂現在の運転行動指標として、例えば過去30分の運転行動指標の代表値を、前記ステップS41と同様にして算出する。
次にステップS43に移行して、前記ステップS41で算出された普段の運転行動指標の代表値及びステップS42で算出された現在の運転行動指標の代表値から安全度指標を算出する。本実施形態では、過去3週間分の運転行動指標の代表値から過去30分の運転行動指標の代表値を減じた値を安全度指標とする。従って、運転行動指標が、先行車追従シーンの先行車との車間時間、先行車接近シーンの接触余裕時間、一時停止線減速シーンのブレーキ操作開始時の自車位置と一時停止線の距離、後続車被追従シーンの後続車との車間時間である場合には、安全度指標が負値なら普段に比べて現在は安全度が高く、正値なら安全度が低いことになる。一方、運転行動指標が、単独走行シーンの自車速度と制限速度の差分値(自車速度が制限速度を越えている場合)、一時停止線発進シーンの発進加速度、直進路走行シーンのステアリングエントロピーである場合には、安全度指標が正値なら普段に比べて現在は安全度が高く、負値なら安全度が低いことになる。
【0025】
次に、前記図3の演算処理のステップS6で行われるドライバ対応度合いの算出について、図10のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS61で、後述する安全度向上メッセージの有効期間内であるか否かを判定し、安全度向上メッセージの有効期間内である場合にはステップS62に移行し、そうでない場合にはステップS67に移行する。この安全度向上メッセージの有効期間としては、例えば予め設定した時間、とか、走行路の種類が高速道路から一般道路といったように切り替わるまで、とか、エンジンを停止するまで、とか、日付が変わるまで、とか、ナビゲーションの目的地が変わるまで、とか、ドライバが変わるまで、という期間が設定可能である。なお、ドライバが変わったか否かは、例えばシート位置やドアミラー位置、ルームミラー位置を変更したか否か、或いは有料道路の自動料金精算システム用カードが変更されたか否か、等を用いることができる。
【0026】
ステップS62では、最後に安全度向上メッセージを提示したときの現在の運転行動指標の代表値、即ち最後に安全度向上メッセージを提示したときから過去30分の運転行動指標の代表値を、前述の安全行動指標の代表値と同様に算出してからステップS63に移行する。なお、安全度向上メッセージを提示するときに、常にその過去30分の運転行動指標の代表値をメモリに記憶し、その記憶値を読込むようにすれば、算出を省略できる。
ステップPS63では、最後の安全度向上メッセージ定時後の、例えば30分程度に設定された一定期間の運転行動指標の代表値を、前述の安全行動指標の代表値と同様に算出してからステップS64に移行する。
【0027】
ステップS64では、前記ステップS62で算出された最後に安全度向上メッセージを提示したときの現在の運転行動指標の代表値から、その後の一定期間の運転行動指標の代表値を減じて個別ドライバ対応度合いを算出してからステップS65に移行する。なお、運転行動指標によって、安全度向上メッセージにドライバが対応した場合の個別ドライバ対応度合いの正負記号が異なる。安全度向上メッセージにドライバが対応した場合の各運転行動指標に応じた正負記号は下記表1のように表れる。
【0028】
【表1】

【0029】
ステップS65では、交通状況に応じた個別ドライバ対応度合いの補正を行ってからステップS66に移行する。この補正は、運転行動指標に応じて異なるので、以下に、個々の運転行動指標毎に補正方法を列記する。
・先行車追従シーンの先行車との車間時間
自車の後方に後続車があり、この後続車との車間時間が2秒以下の時間の割合がデータ数の50%以上である場合(後続車との車間距離が短く、先行車との間に長い車間距離をとりにくい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
先行車が現在の走行路の制限速度を越えている時間の割合がデータ数の50%以上であった場合(先行車との車間距離が長くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
【0030】
・先行車接近シーンの先行車との接触余裕時間
過去30分のうち、先行車の減速度の平均値が2.45m/s2以上である場合(先行車との車間距離が短くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
過去30分のうち、先行車の加速度の平均値が1.5m/s2以上である場合(先行車との車間距離が長くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
【0031】
・単独走行シーンの自車速度と制限速度の差分値
自車の後方に後続車があり、この後続車との車間時間が2秒以下の時間の割合がデータ数の50%以上であった場合(後続車との車間距離が短く、自車速度を減速しにくい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
過去30分で、天候が晴れ若しくは曇りから雨に変わった場合(視認性が低下し、自車速度が減速しやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
【0032】
・一時停止線発進シーンの発進加速度
一時停止線からの発進時に、後続車があった割合がデータ数の50%以上である場合(発進加速度が大きくなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
一時停止線からの発進時に、ナビゲーションからのデータで前方が渋滞していた割合がデータ数の50%以上である場合(発進加速度が小さくなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
【0033】
・一時停止線減速シーンのブレーキ操作開始時の自車位置と一時停止線の距離
一時停止線で減速する際に、後方に後続車があった割合がデータ数の50%以上である場合(後続車に一時停止を認識してもらうためにブレーキ操作が早くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
一時停止線で減速する際に、降雨の割合がデータ数の50%以上である場合(視認性が低下し、ブレーキ操作が遅くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
【0034】
・後続車被追従シーンの後続車との車間時間
先行車があり、先行車との車間時間が2秒以下となる時間の割合がデータ数の50%以上である場合(先行車との車間距離が短く、自車が減速しがちになって後続車との車間距離が短くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
後続車の速度が、現在の走行路の制限速度の半分以下となる時間の割合がデータ数の50%以上ある場合(後続車の速度が遅く、後続車との車間距離が長くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
【0035】
・直線路走行シーンのステアリングエントロピー
過去30分の走行路の曲率半径の平均値が500m以下である場合(道路が緩やかに曲がっていて修正舵が多くなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが負値であれば数値を2/3倍する。
過去30分の走行路の曲率半径の平均値が1000m以上である場合(道路が殆ど直線状で修正舵が少なくなりやすい状態)、個別ドライバ対応度合いが正値であれば数値を2/3倍する。
【0036】
ステップS66では、下記表2に従って、ステップS64で算出され且つステップS65で補正された個別ドライバ対応度合いに応じたドライバ対応度合いを算出してから図3の演算処理のステップS7に移行する。この表2は、個々の運転行動指標で異なるスケールや次元を合わせるためのものである。例えば先行車追従シーンの先行車との車間時間に関しては、個別ドライバ対応度合いが−1秒以下であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが0.3秒以上であればドライバ対応度合いを−1とする。また、先行車接近シーンの先行車との接触余裕時間に関しては、個別ドライバ対応度合いが−2秒以下であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが1秒以上であればドライバ対応度合いを−1とする。また、単独走行シーンの自車速度と制限速度の差分値に関しては、個別ドライバ対応度合いが10km/h以上であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが−5km/h以下であればドライバ対応度合いを−1とする。また、一時停止線発進シーンの発進加速度に関しては、個別ドライバ対応度合いが0.5m/s2以上であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが−0.2m/s2以下であればドライバ対応度合いを−1とする。また、一時停止線減速シーンのブレーキ操作開始時の一時停止線と自車位置の距離に関しては、個別ドライバ対応度合いが−10m以下であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが−3m以上であればドライバ対応度合いを−1とする。また、後続車被追従シーンの後続車との車間時間に関しては、個別ドライバ対応度合いが−1秒以下であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが0.3秒以上であればドライバ対応度合いを−1とする。また、直線路走行シーンのステアリングエントロピーに関しては、個別ドライバ対応度合いが0.5以下であればドライバ対応度合いを+1とし、個別ドライバ対応度合いが1以上であればドライバ対応度合いを−1とする。
【0037】
【表2】

【0038】
次に、前記図3の演算処理のステップS7で行われる受容性レベルの算出について、図11のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS71で、受容性レベルの情報が有効期間内であるか否かを判定し、受容性レベルの情報が有効期間内である場合にはステップS72に移行し、そうでない場合にはステップS73に移行する。この受容性レベルの情報の有効期間は、例えば1日に設定する。
【0039】
ステップS72では、有効期間内の受容性レベルを読込んでからステップS74に移行する。本実施形態では、受容性レベルを図12に示すレベル1〜レベル5の5段階に区分し、レベル5は受容性レベルが最も高く、レベル1は受容性レベルが最も低いものとして、段階付けする。
ステップS73では、デフォルトの受容性レベルを読込んでからステップS74に移行する。受容性レベルが確定しないときのデフォルトの受容性レベルはレベル3である。但し、過去3週間の受容性レベルの平均値がレベル4以上である場合には、デフォルトの受容性レベルをレベル4とする。逆に、過去3週間の受容性レベルの平均値がレベル2以下である場合には、デフォルトの受容性レベルをレベル2とする。
【0040】
ステップS74では、図3の演算処理のステップS6又は図10の演算処理で算出されたドライバ対応度合いに基づき、ステップS72又はステップS73で読込まれた受容性レベルを修正してから図3の演算処理のステップS8に移行する。この受容性レベルの修正は、ドライバ対応度合いが+1である場合には、ステップS72又はステップS73で読込まれた受容性レベルを1つ上のレベルとし、ドライバ対応度合いが−1である場合には、ステップS72又はステップS73で読込まれた受容性レベルを1つ下のレベルとする。
【0041】
次に、前記図3の演算処理のステップS8で行われるメッセージの明確さ指標の算出について、図13のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS81で、前記図3の演算処理のステップS7又は図11の演算処理で算出された受容性レベルを読込む。
次にステップS82に移行して、下記表3に従って、受容性レベルに対応した明確さ指標を算出してから図3の演算処理のステップS9に移行する。本実施形態では、受容性レベルが高いほど、メッセージの明確さ指標を低く設定することとし、受容性レベルがレベル5の場合には、メッセージの明確さ指標を1とし、受容性レベルがレベル1の場合には、メッセージの明確さ指標を5とする。
【0042】
【表3】

【0043】
次に、前記図3の演算処理のステップS9で行われるメッセージの作成について、図14のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS91で、安全度が低いか否かの判定を行い、安全度が低い場合にはステップS92に移行し、そうでない場合にはステップS94に移行する。この安全度の評価は、前記図3の演算処理のステップS4又は図9の演算処理で算出された安全度指標を用い、下記表4に示すように、個々の運転行動指標に応じて行う。例えば先行車追従シーンの先行車との車間時間に関しては、安全度指標が1秒以上であれば安全度が低いとみなし、安全度指標が−1秒以下であれば安全度が高いとみなす。また、先行車接近シーンの先行車との接触余裕時間に関しては、安全度指標が2秒以上であれば安全度が低いとみなし、安全度指標が−2秒以下であれば安全度が高いとみなす。また、単独走行シーンの自車速度と制限速度の差分値に関しては、安全度指標が−10km/h以下であれば安全度が低いとみなし、安全度指標が10km/h以上であれば安全度が高いとみなす。また、一時停止線発進シーンの発進加速度に関しては、安全度指標が−1m/s2以下であれば安全度が低いとみなし、安全度が1m/s2以上であれば安全度が高いとみなす。また、一時停止線減速シーンのブレーキ操作開始時の一時停止線と自車位置の距離に関しては、安全度指標が10m以上であれば安全度が低いとみなし、安全度指標が−10m以下であれば安全度が高いとみなす。また、後続車被追従シーンの後続車との車間時間に関しては、安全度指標が1秒以上であれば安全度が低いとみなし、安全度指標が−1秒以下であれば安全度が高いとみなす。また、直線路走行シーンのステアリングエントロピーに関しては、安全度指標が−0.5以下であれば安全度が低いとみなし、安全度指標が0.2以上であれば安全度が高いとみなす。
【0044】
【表4】

【0045】
ステップS92では、図3の演算処理のステップS8又は図13の演算処理で算出された明確さ指標を読込んでからステップS93に移行する。
ステップS93では、ステップS92で読込まれた明確さ指標に対応した安全度向上メッセージを作成してから図3の演算処理のステップS10に移行する。この明確さ指標に対応した安全度向上メッセージは、例えば下記表5に示すように、明確さ指標が1の場合には、前述した過去30分における現在の運転行動指標の代表値を示す。また、明確さ指標が2の場合には、前述した過去30分における現在の運転行動指標のヒストグラムを示す。また、明確さ指標が3の場合には、普段の運転行動指標のヒストグラムに対する現在の運転行動指標のヒストグラムを示す。また、明確さ指標が4の場合には、明確さ指標が4の場合には、普段の運転行動指標のヒストグラムに対する現在の運転行動指標のヒストグラムと、その差異から、現在安全度が高いか、低いかを明文化して示す。また、明確さ指標が5の場合には、普段の運転行動指標のヒストグラムに対する現在の運転行動指標のヒストグラムと、具体的にとるべき運転行動を明文化して示す。具体的には、例えば先行車追従シーンの先行車との車間時間に関しては、例えば図15のように設定する。即ち、明確さ指標が5(受容性レベルが1)の場合には、図15aに示すように、普段の先行車との車間時間と現在の先行車との車間時間のヒストグラム表示し、更に「車間を空けると安全度が向上します」という具体的な表示や音声、更にはステアリングホイールを振動する、といった内容のメッセージとする。また、明確さ指標が4(受容性レベルが2)の場合には、図15bに示すように、普段の先行車との車間時間と現在の先行車との車間時間のヒストグラム表示し、更に「安全度が低くなっています」という比較的具体的な表示や音声、といった内容のメッセージとする。また、明確さ指標が3(受容性レベルが3)の場合には、図15cに示すように、普段の先行車との車間時間と現在の先行車との車間時間のヒストグラム表示し、更に「普段と現在の違い」という表示や音声、といった内容のメッセージとする。また、明確さ指標が2(受容性レベルが4)の場合には、図15dに示すように、現在の先行車との車間時間のヒストグラム及び「現在の運転状態」という表示、といった内容のメッセージとする。また、明確さ指標が1(受容性レベルが5)の場合には、図15eに示すように、車間時間の平均値を表示する、といった内容のメッセージとする。
【0046】
【表5】

【0047】
一方、ステップS94では、前記ステップS91の判定と同様に、前記表5を用いて、安全度が高いか否かの判定を行い、安全度が高い場合にはステップS95に移行し、そうでない場合にはステップS97に移行する。
ステップS95では、ドライバの受容性レベルが低いか否かを判定し、ドライバの受容性レベルが低い場合にはステップS96に移行し、そうでない場合にはステップS97に移行する。
【0048】
ステップS96では、高安全度状態メッセージの作成を行ってから図3の演算処理のステップS10に移行する。高安全度状態メッセージとは、例えば「安全度の高い状態にあります」という表示や音声のメッセージからなる。この高安全度状態メッセージは、文字通り、安全度の高い状態を示しているが、受容性レベルの低いドライバに対して、肯定的なメッセージを提示することで、現在の安全度の高い運転行動を認識してもらうことができる。
【0049】
一方、ステップS97では、メッセージを作成することなく、図3の演算処理のステップ10に移行する。
次に、前記図3の演算処理のステップS10で行われるメッセージの作成について、図16のフローチャートを用いて説明する。この演算処理では、まずステップS201で、図3の演算処理のステップS9又は図14の演算処理で安全度向上メッセージが作成されたか否かを判定し、安全度向上メッセージが作成された場合にはステップS202に移行し、そうでない場合にはステップS204に移行する。
ステップS202では、図3の演算処理のステップS7又は図11の演算処理で算出されたドライバの受容性レベルを読込んでからステップS203に移行する。
【0050】
ステップS203では、下記表6に従って、ステップS202で読込まれたドライバの受容性レベルに応じた出力を行ってからメインプログラムに復帰する。具体的には、ドライバの受容性レベルが5の場合には、前述した安全度向上メッセージを小さく表示する。また、ドライバの受容性レベルが4の場合には、前述した安全度向上メッセージを大きく表示する。また、ドライバの受容性レベルが3の場合には、前述した安全度向上メッセージを大きく表示すると共に、小さな音量の音声を発生する。また、ドライバの受容性レベルが2の場合には、前述した安全度向上メッセージを大きく表示すると共に、大きな音量の音声を発生する。また、ドライバの受容性レベルが1の場合には、前述した安全度向上メッセージを大きく表示すると共に、大きな音量の音声を発生し、更にステアリングホイールを振動する(ハプティック)。なお、下記表6中の提示確率は、本実施形態の場合、走行シーンが継続しているときには30分ごとに安全度向上メッセージが作成される可能性があるが、受容性レベルの高いドライバにとって、頻繁に安全度向上メッセージが提示されるのは煩わしい。そこで、ドライバの受容性レベルが高いほど、安全度向上メッセージの提示確率を小さくして、煩わしさを軽減する。ちなみに、定期的な安全度向上メッセージは提示しないが、安全度向上メッセージが作成された場合には、例えば図17に示すように「安全度の診断結果※停車時にご覧下さい」という表示をナビゲーション兼音声・画像モニタ2に表示し、ドライバのニーズに応じて停車中に安全度向上メッセージを提示するようにしてもよい。
【0051】
【表6】

【0052】
一方、ステップS204では、図3の演算処理のステップS9又は図14の演算処理によって高安全度状態メッセージが作成されたか否かを判定し、高安全度状態メッセージが作成された場合にはステップS205に移行し、そうでない場合にはステップS206に移行する。
ステップS205では、受容性レベルの低いドライバに対し、高安全度状態メッセージを大きな表示及び小さな音量の音声で提示してからメインプログラムに復帰する。
ステップS206では、メッセージの出力をせずにメインプログラムに復帰する。
【0053】
以上より、各センサ3〜10及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2及び運転構造指標算出部12或いは図3の演算処理のステップS1又は図4〜図8の演算処理が本発明の運転行動検出手段を構成し、以下同様に、メッセージ作成部15及びナビゲーション兼音声・画像モニタ2及び振動装置11或いは図3の演算処理のステップS9及びステップS10又は図14及び図16の演算処理が情報提示手段を構成し、受容性算出部17或いは図3の演算処理のステップS6及びステップS7又は図10及び図11の演算処理が受容性算出手段を構成し、図3の演算処理のステップS8又は図13の演算処理が明確さ算出手段を構成し、ナビゲーション兼音声・画像モニタ2及び振動装置11が情報提示手段を構成している。
【0054】
このように本実施形態のサスペンション装置によれば、以下のような効果が得られる。即ち、
(1)運転行動指標算出部12で検出されたドライバの運転行動指標に基づいて運転を支援するためのメッセージをメッセージ作成部15で作成して提示すると共に、過去に運転を支援するためのメッセージを提示したときのドライバの対応度合いから情報に対するドライバの受容性レベルを受容性算出部17で算出し、その算出されたドライバの受容性レベルに基づいて運転を支援するためのメッセージを設定することとしたため、同じドライバでも、その時々に応じた運転支援を可能とすると共に、安全度を向上するためのメッセージに対するドライバの対応度に応じてメッセージ内容を設定することができる。
【0055】
(2)受容性算出部17で算出されたドライバの受容性レベルに基づいて運転を支援するメッセージの明確さ指標を算出し、その算出された明確さ指標に基づいて運転を支援するためのメッセージの内容を設定することとしたため、運転を支援するためのメッセージの内容に幅を持たせ、より広いタイプのドライバや状況に対応することが可能となる。
(3)ドライバの受容性レベルが高いほど、運転を支援するメッセージの明確さ指標を低く設定することとしたため、受容性の低いドライバには理解しやすいメッセージを提示でき、受容性の高いドライバには不要なメッセージを回避して煩わしさを低減することができる。
【0056】
(4)明確さ指標が高いほど、安全度を向上するためのメッセージの明確さを高めることにより、受容性の低いドライバにメッセージの内容を理解してもらいやすくなる。
(5)明確さ指標が高いほど、安全度を向上するためのメッセージを具体化することにより、受容性の低いドライバでも、安全度を向上するための運転行動を行いやすくなる。
(6)ドライバの受容性レベルが低いほど、運転を支援するメッセージ提示の機会を大きくすることにより、受容性の低いドライバには注意を喚起することができ、受容性の高いドライバには煩わしさを低減することができる。
【0057】
(7)ドライバの受容性レベルが低いほど、運転を支援するメッセージ提示手段を増やすことにより、受容性の低いドライバには具体的に注意を喚起することができ、受容性の高いドライバには具体的に煩わしさを低減することができる。
(8)ドライバの受容性レベルが低いほど、運転を支援するメッセージ提示の頻度を増やすことにより、受容性の低いドライバには具体的に注意を喚起することができ、受容性の高いドライバには具体的に煩わしさを低減することができる。
(9)ドライバの受容性レベルが低く且つ現在の自車の安全度が高い場合に、安全度が高い状態にある旨の高安全度状態メッセージを提示することにより、安全度の高い運転行動を認識してもらうことができる。
【0058】
(10)ドライバの受容性レベルを複数の段階に区分すると共に、ドライバの受容性レベルを確定できないときには予め設定されたデフォルトの段階とすることにより、運転を支援するためのメッセージに汎用性を付与することができると共に、受容性レベルを定量化することができる。
(11)過去に情報を提示したときのドライバの運転行動に基づいて、それまでのドライバの受容性レベルを修正することで新たなドライバの受容性レベルを設定することにより、同じドライバでも、その時々に応じた安全度を向上するためのメッセージ内容を設定することができる。
【0059】
(12)所定期間毎にドライバの受容性レベルの段階を初期化すると共に、初期化に際し、それまでのドライバの受容性レベルの段階に応じて初期化されるドライバの受容性レベルの段階を設定することにより、現在のドライバのメッセージに対する対応度に応じた受容性レベルを先読みして設定することが可能となり、効果を早めに発現することができる。
【0060】
(13)ドライバの運転行動として、車両の走行状態、ドライバの操作状態、道路状態、自車の位置、周辺車両との相対関係の何れか一以上の物理指標を用いることにより、ドライバの運転行動を適切に評価することができる。
(14)ドライバの運転行動としての物理指標は、予め設定された走行シーンでの物理指標であることとしたため、ドライバの運転行動を走行シーン毎に適切に評価することができる。
【0061】
(15)現在から過去の所定長期間にわたって検出されたドライバの運転行動としての物理指標の代表値と、現在から過去の所定短期間にわたって検出されたドライバの運転行動としての物理指標の代表値との差分値に基づいて安全度の変化を求め、その安全度の変化に応じて運転を支援するためのメッセージを設定することにより、普段と現在の違いをメッセージに反映することができ、これにより個々のドライバの、現在の運転行動を適切に評価することができる。
【0062】
(16)周辺環境又は運転環境に基づき、現在から過去の所定短期間で発生し得る安全度の変化を求め、その発生し得る安全度の変化に応じて普段の物理指標の代表値と現在の物理指標の代表値の差分値を補正することにより、当たり前の、或いはやむを得ない安全度の変化を除去することができ、これにより個々のドライバの、現在の運転行動を適切に評価することができる。
(17)運転を支援するためのメッセージに有効期限を設けたことにより、状況の変化に伴うドライバの運転行動の変化を排除し、現在の運転行動を適切に支援することが可能となる。
【0063】
なお、ドライバの受容性レベルやメッセージの明確さ指標の段階は、前記実施形態のものに限定されるものではない。また、ドライバの運転行動指標そのものも、前記実施形態のものに限定されるものではない。本発明は、あくまでもドライバの受容性を考慮してメッセージを設定するものであり、受容性の程度に応じて、メッセージの明確さを調整したり、メッセージ提示の機会を調整したりするものであり、受容性レベルやメッセージの明確さ指標の段階区分の数や、運転行動指標自体も、必要に応じて適宜に設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の車両用運転支援装置を適用した車両の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の車両用運転支援装置のブロック図である。
【図3】図1のコントロールユニットで行われる運転支援メッセージ提示のための演算処理を示すフローチャートである。
【図4】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図5】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図6】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図7】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図8】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図9】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図10】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図11】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図12】受容性レベルの段階の説明図である。
【図13】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図14】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図15】明確さ指標に応じたメッセージの説明図である。
【図16】図3の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
【図17】メッセージが提示されなかったときの安全度評価の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1はコントロールユニット、2はナビゲーション兼音声・画像モニタ、3は自車位置センサ、4は操舵角センサ、5はブレーキペダルセンサ、6はアクセルペダルセンサ、7は加速度センサ、8は自車速度センサ、9は前方車間距離・相対速度センサ、10は後方車間距離・相対速度センサ、11は振動装置、12は運転行動指標算出部、13はメモリ、14は安全度算出部、15はメッセージ作成部、16はドライバ対応度合い算出部、17は受容性算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の運転行動を検出する運転行動検出手段と、前記運転行動検出手段で検出された運転者の運転行動に基づいて運転を支援するための情報を提示する情報提示手段と、前記情報提示手段から過去に運転を支援するための情報を提示したときの運転者の対応度合いから情報に対する運転者の受容性の程度を算出する受容性算出手段とを備え、前記情報提示手段は、前記受容性算出手段で算出された運転者の受容性の程度に基づいて運転を支援するための情報を設定することを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記受容性算出手段で算出された運転者の受容性の程度に基づいて運転を支援する情報の明確さ指標を算出する明確さ算出手段を備え、前記情報提示手段は、前記明確さ算出手段で算出された明確さ指標に基づいて運転を支援するための情報の内容を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記明確さ算出手段は、運転者の受容性の程度が高いほど、運転を支援する情報の明確さ指標を低く設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記情報提示手段は、前記明確さ算出手段で算出された明確さ指標が高いほど、安全度を向上するための情報の明確さを高めることを特徴とする請求項3に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記情報提示手段は、前記明確さ算出手段で算出された明確さ指標が高いほど、安全度を向上するための情報を具体化することを特徴とする請求項4に記載の車両用運転支援装置。
【請求項6】
前記情報提示手段は、前記受容性算出手段で算出された運転者の受容性の程度が低いほど、運転を支援する情報提示の機会を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項7】
前記情報提示手段は、前記受容性算出手段で算出された運転者の受容性の程度が低いほど、運転を支援する情報提示手段を増やすことを特徴とする請求項6に記載の車両用運転支援装置。
【請求項8】
前記情報提示手段は、前記受容性算出手段で算出された運転者の受容性の程度が低いほど、運転を支援する情報提示の頻度を増やすことを特徴とする請求項6に記載の車両用運転支援装置。
【請求項9】
前記情報提示手段は、前記受容性算出手段で算出された運転者の受容性の程度が低く且つ現在の自車両の安全度が高い場合に、安全度が高い状態にある旨の情報を提示することを特徴とする請求項6に記載の車両用運転支援装置。
【請求項10】
前記受容性算出手段は、運転者の受容性の程度を複数の段階に区分すると共に、運転者の受容性の程度を確定できないときには予め設定された初期の段階とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項11】
前記受容性算出手段は、前記情報提示手段から過去に情報を提示したときの運転行動検出手段で検出された運転者の運転行動に基づいて、それまでの運転者の受容性の段階を修正することで新たな運転者の受容性の段階を設定することを特徴とする請求項10に記載の車両用運転支援装置。
【請求項12】
前記受容性算出手段は、所定期間毎に運転者の受容性の程度の段階を初期化すると共に、初期化に際し、それまでの運転者の受容性の程度の段階に応じて初期化される運転者の受容性の程度の段階を設定することを特徴とする請求項10に記載の車両用運転支援装置。
【請求項13】
前記運転行動検出手段は、前記運転者の運転行動として、車両の走行状態、運転者の操作状態、道路状態、自車の位置、周辺車両との相対関係の何れか一以上の物理指標を用いることを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。
【請求項14】
前記運転者の運転行動としての物理指標は、予め設定された走行シーンでの物理指標であることを特徴とする請求項13に記載の車両用運転支援装置。
【請求項15】
前記情報提示手段は、現在から過去の所定長期間にわたって検出された運転者の運転行動としての物理指標の代表値と、現在から過去の所定短期間にわたって検出された運転者の運転行動としての物理指標の代表値との差分値に基づいて安全度の変化を求め、その安全度の変化に応じて運転を支援するための情報を設定することを特徴とする請求項14に記載の車両用運転支援装置。
【請求項16】
前記情報提示手段は、周辺環境又は運転環境に基づき、前記現在から過去の所定短期間で発生し得る安全度の変化を求め、その発生し得る安全度の変化に応じて前記差分値を補正することを特徴とする請求項15に記載の車両用運転支援装置。
【請求項17】
前記情報提示手段は、前記運転を支援するための情報に有効期限を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−20365(P2010−20365A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177532(P2008−177532)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】