説明

車両用防疫装置

【課題】車両に簡単に取り付けられ、走行中或いは停車中にタイヤを除菌する。
【解決手段】家畜や家禽類に発生する病原菌を除菌する薬剤溶液と、該薬剤溶液を貯蔵するタンクと、前記薬剤溶液を圧送する圧送手段と、該圧送手段を制御する制御装置と、前記圧送された薬剤溶液を噴霧する複数のノズルと、から構成され、前記複数のノズルは、車両のタイヤハウジング内及び車両の前部若しくは後部の底に配置され、前記タイヤハウジング内及び前記車両の底方向に向けて、前記薬剤溶液を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防疫装置であって、とくに家畜や家禽類を多数飼育する農家、農業法人などの防疫を必要とする施設に出入りする車両等の除菌を行なう車両用防疫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家畜や家禽類の経営規模が拡大する傾向があり、一つの農業法人の施設において数千頭の家畜の飼育や、数万羽の家禽類の飼育がなされている。そのため、一端外部から口蹄疫や鳥インフルエンザなどのウイルスが浸入して病気が発生すると、施設内の全ての家畜や家禽類を殺処分するなど経営者にとって多大の損失となるものである。これらのウイルスの進入する原因としては、野生の動物や鳥の施設内への持ち込みや、施設へ出入りする各種の車両本体、若しくは人に付着したウイルスからの感染が考えられる。
【0003】
これらのウイルスの浸入に対して従来は、施設周辺に大量の石灰を散布したり、施設に出入りする車両に対して、噴射洗浄装置などを用いて車両のタイヤ、車両本体、乗員の靴などの除菌をおこなっているが、複数の農業法人の施設を巡回している業務車両においては、除菌作業に多大の時間を要するものであった。
【0004】
そこで、車両の運転席から除菌操作ができ、タイヤ全体を万遍なく十分な液量で除菌可能にすると共に、乗員の靴等の除菌をおこなうことができる除菌装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3059617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている除菌装置は、運転席から除菌操作ができ、タイヤ全体を万遍なく十分な液量で除菌可能とするものであるが、タイヤ噴射ノズルは、タイヤの周面と側面に向かって配置されており、車両の底面やタイヤハウジング内の除菌に関しては何らの対策がないものであった。そのため、車両の底やタイヤハウジング内を除菌する際には、乗員用の噴射ノズルを引き出して手作業で噴霧作業を行なう必要があった。
【0007】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、複数の家畜や家禽類の施設を巡回する車両の除菌を行なう際に、車両に乗った状態で車両の底部、タイヤ表面、タイヤハウジング内の除菌を確実に行い、更に乗員の靴などの除菌も可能とする車両用防疫装置を提供するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の車両用防疫装置は、家畜や家禽類に発生する病原菌を除菌する薬剤溶液と、該薬剤溶液を貯蔵するタンクと、前記薬剤溶液を圧送する圧送手段と、該圧送手段を制御する制御装置と、前記圧送された薬剤溶液を噴霧する複数のノズルと、から構成され、前記複数のノズルは、車両のタイヤハウジング内及び車両の前部若しくは後部の底に配置され、前記タイヤハウジング内及び前記車両の底方向に向けて、前記薬剤溶液を噴霧することを第一の特徴とする。
【0009】
また、前記複数のノズルのうち少なくとも1個が、車両の側面下部に設けられ、乗員の履物に噴霧可能とすることを第二の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用防疫装置によれば、家畜や家禽類に発生する病原菌を除菌する薬剤溶液を複数のノズルを介して、車両の底部やタイヤハウジング内に配置し、薬剤溶液を圧送する圧送手段によって、タイヤハウジング内及び前記車両の底方向に向けて噴霧を行なうことができるため、車両に乗って移動しながら車両に付着した病原菌の除菌を行なうことができるという効果を有する。
【0011】
また、複数のノズルのうち少なくとも1個が、車両の側面下部に設けられ、乗員の履物に噴霧可能とされており、車両で移動する乗員の靴などに付着した病原菌の除菌を行なうことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用防疫装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の部分拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施例を示す図面を参照しながら説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明の車両用防疫装置の一実施例を示す構成図、図2は図1の部分拡大説明図である。尚、本実施例においては小型トラックに塔載した例を示す。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の車両用防疫装置を使用した車両の例を示している。図に示すように、車両本体1に病原菌を除菌する薬剤溶液を貯蔵するタンク2と、このタンク2内の薬剤溶液を圧送するポンプ3とが配設されている。このポンプ3の駆動には電動モータなどが使用され、スイッチ4によって制御される。そしてこのスイッチ4は車両の運転席内の操作パネル近傍に取付けられ、車両内のバッテリー5と接続されている。車両本体1のタイヤハウジング6には夫々ポンプ3から圧送される薬剤溶液をタイヤハウジング6内に噴霧するためのノズル7が夫々取付けられている。そして車両本体1のタイヤハウジング6近傍側面、及び車両本体1の底部に夫々ノズル8、9が設置され、上述した薬剤溶液が圧送される。
【0015】
タンク3とノズル7、8、9との間には切替弁10が取付けられており、この切替弁10を動作させるこによって薬剤溶液を圧送して噴霧させるノズルを切替える。
【0016】
ノズル7、8、9は車両の振動などに適応するものが採用されており、車両を運転した状態であっても薬剤溶液の噴霧を可能とする。そして、図2に示すようにノズル7は車両本体1の4箇所のタイヤハウジング6の前方或いは後方からタイヤハウジング6の上面方向に向けて噴霧する位置に配置されている。またノズル8は車両本体1の少なくとも運転者側面下部から外側方向に噴霧する位置に配置され、そしてノズル9は車両本体1の前底部もしくは後底部の底面方向へ噴霧可能な位置に配置されている。尚、図においてノズル8及び9は夫々1個となっているが、例えばノズル9は車両本体1の底面前部に設置してもよく、さらに複数配置しても構わない。そして、ノズル8は車両本体1から、パイプ(図示せず)などによって引き出して手動によって薬剤溶液を噴霧することも可能である。
【0017】
上記の構成からなる本発明の車両用防疫装置は、乗員が車両に乗ったままで車両の底面やタイヤハウジング6内の除菌を行なうことができる。しかもタイヤハウジング6内に噴霧された薬材は、当然タイヤ11の表面全面に噴霧されることになるため、乗員が車両から降りて、タイヤハウジング6内のタイヤ11の除菌作業を行なう必要がない。しかも、車両を降りる際にはノズル9によって、靴などの履物の底部などを除菌することが可能であり、従来複数の施設を巡回する際の除菌作業に掛かった時間ロスを大幅に削減することができる。
【0018】
次に本発明の車両用防疫装置の駆動方法を説明する。まず家畜や家禽類の施設を巡回する車両は、施設の近くで徐行しながら車両の除菌準備をする。車両の底部とタイヤハウジング6内の除菌を行なう場合には、予め切替弁12をノズル7、9側に接続し、乗員が車両内の操作パネルに設置されたスイッチ4をオンにする。このスイッチ4の操作によってポンプ3が駆動し、タンク2内に貯蔵されている薬剤溶液を圧送して、ノズル7、9から噴霧させる。この状態でタイヤの表面前面や、車両本体の底面にむらなく薬剤が噴霧されたと判断したら、乗員はスイッチ4をオフして施設内に車両を乗り入れ下車する。
【0019】
次に、乗員は車両から下車する際に、切替弁10をノズル8側に接続し、再度スイッチ4をオンにする。このスイッチ4の操作によってポンプ3が駆動し、タンク2内に貯蔵されている薬剤溶液を圧送して、ノズル8から噴霧させる。この状態で乗員の靴の底部などの除菌を行なうことができる。除菌操作が終了すると、スイッチ4をオフにしてさらに切替弁10をノズル7、9側と接続させる。
【0020】
上記の構成からなる本発明の車両用防疫装置によれば、乗員は車両内で運転しながら、スイッチの操作とノズルの切替のみで車両の底面やタイヤハウジング内の除菌を行なうことができる。
【0021】
以上の構成からなる本発明の車両用防疫装置は、家畜や家禽類に発生する病原菌を除菌する薬剤溶液を複数のノズルを介して、車両の底部やタイヤハウジング内に配置し、薬剤溶液を圧送する圧送手段によって、タイヤハウジング内及び前記車両の底方向に向けて噴霧を行なうことができるため、複数の家畜や家禽類の施設を巡回する車両の除菌を行なう際に、車両に乗った状態で車両の底部、タイヤ表面、タイヤハウジン内の除菌を確実に行い、更に乗員の靴などの除菌を行なうことができる。
【符号の説明】
【0022】
1 車両本体
2 タンク
3 ポンプ
4 スイッチ
5 バッテリー
6 タイヤハウジング
7、8、9 ノズル
10 切替弁
11 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用防疫装置であって、家畜や家禽類に発生する病原菌を除菌する薬剤溶液と、該薬剤溶液を貯蔵するタンクと、前記薬剤溶液を圧送する圧送手段と、該圧送手段を制御する制御装置と、前記圧送された薬剤溶液を噴霧する複数のノズルと、から構成され、前記複数のノズルは、車両のタイヤハウジング内及び車両の前部若しくは後部の底に配置され、前記タイヤハウジング内及び前記車両の底方向に向けて、前記薬剤溶液を噴霧することを特徴とする車両用防疫装置。
【請求項2】
前記複数のノズルのうち少なくとも1個が、車両の側面下部に設けられ、乗員の破履物に噴霧可能とすることを特徴とする車両用防疫装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−39880(P2013−39880A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178393(P2011−178393)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(509177289)株式会社KDアグリ (3)
【Fターム(参考)】