説明

車両用電源システム

【課題】この発明は、ブレーキ動作におけるドライバの違和感を減らして、制動エネルギーの回生量を増やすことができる車両用電源システムを得る。
【解決手段】制御装置は、発電機の回転子の回転数と発電機側配線の電圧とから発電機の発電可能量を推定し、第1蓄電装置の第1回生可能量と第2蓄電装置の第2回生可能量とを推定し、第1回生可能量と第2回生可能量との合成回生可能量と発電可能量との大小関係から合成回生可能量を調整し、調整された合成回生可能量により走行制動量を補正するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用電源システムに関し、特に車両の制動エネルギーの回生と車両の燃費向上とを実現できる車両用電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用電源システムは、車両の制動時に、発電機で発電させてバッテリに充電させることで制動エネルギーを回生し、車両の通常走行時には、発電機の発電量を少なくして、通常走行時のエンジン負荷を減らして燃費の向上を図るようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4172148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用電源システムでは、界磁巻線の状態によって発電量、すなわち回生量が変動する。そこで、フットブレーキを踏み込んだドライバは、回生量の変動をそのままブレーキ変動として受けるため、違和感をもち、ドライバビリティが低下することになる。
従来、このドライバの違和感を減らすために、回生量の小さい範囲、すなわちトルク変動の小さい範囲でのみ回生動作を行うようにしているので、車載負荷やバッテリに供給される回生量が少なかった。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、ブレーキ動作におけるドライバの違和感を減らして、制動エネルギーの回生量を増やすことができる車両用電源システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両用電源システムは、エンジンにより駆動されて交流電力を発電する発電機と、上記発電機で発電された交流電力を直流電力に整流して出力する整流器と、上記整流器の高圧側出力端子に発電機側配線を介して接続され、該整流器の出力電圧の電圧値を異なる直流電圧に変換して出力する第1DC/DCコンバータと、上記第1DC/DCコンバータに負荷側配線を介して接続され、車載負荷に電力を供給する第1蓄電装置と、上記整流器の高圧側出力端子に発電機側配線を介して接続され、該整流器の出力電圧の電圧値を異なる直流電圧に変換して出力する第2DC/DCコンバータと、上記第2DC/DCコンバータに接続される第2蓄電装置と、上記発電機の界磁巻線に界磁電流を供給するレギュレータ回路と、上記レギュレータ回路に発電指令を発して、上記発電機を発電させるとともに、上記第1DC/DCコンバータおよび上記第2DC/DCコンバータを駆動制御して、上記発電機の発電電力を上記第1蓄電装置および上記第2蓄電装置に蓄電させる制御装置と、を備えている。そして、上記制御装置は、上記発電機の発電可能量を推定し、上記第1蓄電装置の第1回生可能量と上記第2蓄電装置の第2回生可能量とを推定し、上記第1回生可能量と上記第2回生可能量との合成回生可能量と上記発電可能量との大小関係から上記合成回生可能量を調整し、上記調整された合成回生可能量により走行制動量を補正するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、発電機の回転子の回転数と発電機側配線の電圧とから発電機の発電可能量を推定し、第1蓄電装置の第1回生可能量と第2蓄電装置の第2回生可能量とを推定し、第1回生可能量と第2回生可能量との合成回生可能量と発電可能量との大小関係から合成回生可能量を調整し、調整された合成回生可能量により走行制動量を補正しているので、回生量の低下を抑えて、ブレーキペダル踏み込み時のドライバの違和感を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係る車両用電源システムの概略構成図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る車両用電源システムの回路構成図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係る車両用電源システムに用いられる発電機の発電特性を示す図である。
【図4】この発明の一実施の形態に係る車両用電源システムに用いられる発電機の出力特性を示す図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係る車両用電源システムにおける制動時の回生量制御を説明するフロー図である。
【図6】発電機の発電可能量を推定する動作を説明するフロー図である。
【図7】回生可能量を推定する動作を説明するフロー図である。
【図8】発電機の最大電力追従制御を説明するフロー図である。
【図9】発電機の最大効率制御を説明するフロー図である。
【図10】この発明の一実施の形態に係る車両用電源システムにおける発電機の内部状態の監視動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両用電源システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0010】
図1はこの発明の一実施の形態に係る車両用電源システムの概略構成図、図2はこの発明の一実施の形態に係る車両用電源システムの回路構成図である。
【0011】
図1および図2において、車両用電源システムは、内燃機関であるエンジン1の回転トルクにより駆動されて交流電力を発生する発電機5と、発電機5で発生された交流電力を直流電力に整流して出力する整流器14と、整流器14の出力電圧を異なる電圧値の直流電圧に変換して出力する第1電力変換装置としての第1DC/DCコンバータ19と、整流器14の出力電圧を異なる電圧値の直流電圧に変換して出力する第2電力変換装置としての第2DC/DCコンバータ20と、第1DC/DCコンバータ19により変換された直流電力により充電され、車載負荷17に電力を供給する第1蓄電装置16と、第2DC/DCコンバータ20により変換された直流電力を蓄える第2蓄電装置18と、発電機5の界磁巻線8への通電量を制御するレギュレータ回路11と、エンジン1の回転数f、第2蓄電装置18の端子電圧Vc、負荷側配線22bの電圧などに基づいて第1および第2DC/DCコンバータ19,20、およびレギュレータ回路11の駆動を制御する制御装置21と、界磁巻線8の断線を報知する報知手段23と、を備えている。
【0012】
発電機5は、回転軸に固着されたプーリ6がエンジン1のクランクシャフト2に固着されたプーリ3にベルト4を介して連結され、エンジン1の回転トルクにより駆動される。発電機5は、界磁巻線8を有するクローポール型回転子7と、固定子巻線としての3相交流巻線10を有する固定子9と、レギュレータ回路11と、を備えたランデル型交流発電機である。
【0013】
レギュレータ回路11は、MOSFET12と、ダイオード13と、から構成されている。そして、MOSFET12のドレイン端子がダイオード13のアノード端子に接続され、ソース端子が接地され、ゲート端子が制御回路に接続されている。また、ダイオード13のカソード端子が整流器14の高圧側出力端子14aと第1DC/DCコンバータ19の入力電圧端子とを接続する発電機側配線22aに接続されている。さらに、界磁巻線8の両端が、ダイオード13のカソード端子と、ダイオード13のアノード端子とMOSFET12のドレイン端子との接続点と、にそれぞれ接続されている。なお、レギュレータ回路11は発電機5に内蔵されているものとしているが、発電機5と別体に構成されてもよい。
【0014】
整流器14は、2つのダイオード15を直列に接続してなるダイオード対を並列に3つ接続したダイオードブリッジ回路からなる三相全波整流回路に構成され、3相交流巻線10に誘起される交流電力を直流電力に整流する。なお、整流器14は発電機5と別体に構成されているものとしているが、発電機5に内蔵されてもよい。
【0015】
第1蓄電装置16は、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池などの二次電池であり、例えば15V(定格電圧)の低電圧系の車載電源を構成する。そして、第1蓄電装置16は、第1DC/DCコンバータ19の出力電圧端子と車載負荷17とを接続する負荷側配線22bに接続されている。車載負荷17は、車両に搭載される空調装置やオーディオ装置等の電気機器であり、第1蓄電装置16により駆動される。
第2蓄電装置18には、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池などの二次電池、あるいは瞬時に大電力を放電できる電気二重層コンデンサなどが用いられる。そして、第2蓄電装置18は、第2DC/DCコンバータ20を介して整流器14の高圧側出力端子14aと第1DC/DCコンバータの入力電圧端子とを接続する発電機側配線22aに接続されている。
【0016】
つぎに、発電機5の動作について説明する。
電流が回転子7の界磁巻線8に供給され、磁束が発生される。これにより、N極とS極とが、回転子7の外周部に、周方向に交互に形成される。そして、エンジン1の回転トルクが回転子7の回転軸に伝達され、回転子7が回転駆動される。そこで、回転磁界が固定子9の3相交流巻線10に与えられ、起電力が3相交流巻線10に発生する。この交流の起電力が、整流器14により直流電力に整流され、出力される。
【0017】
ここで、発電機5の発電電力と回転数との関係について図3に基づいて説明する。図3はこの発明の一実施の形態に係る車両用電源システムに用いられる発電機の発電特性を示す図であり、縦軸は発電電力、横軸は回転子7の回転数である。なお、図3中、実線は出力端電圧がV1(V)のときの発電特性線を示し、一点鎖線は出力端電圧がV2(V)の時の発電特性線を示し、破線は出力端電圧がV3(V)のときの発電特性線を示している。なお、V1、V2、V3の大小関係は、V1<V2<V3である。また、図3中、V1(V)の出力特性線とV2(V)の出力特性線との交点での回転子の回転数をα、V2(V)の出力特性線とV3(V)の出力特性線との交点での回転子の回転数をβとする。
【0018】
図3から分かるように、回転数がα未満の領域では、出力端電圧をV1(V)に設定した場合に大きな発電電力を出力することができ、回転数がα以上β未満の領域では、出力端電圧をV2(V)に設定した場合に大きな発電電力を出力することができ、回転数がβ以上の領域では、出力端電圧をV3(V)に設定した場合に大きな発電電力を出力することができる。
【0019】
このことから、制御装置21が、出力端電圧、すなわち発電機側配線22aの電圧を回転子7の回転数に応じて変えるように、第1および第2DC/DCコンバータ19,20の駆動を制御することにより、発電機5の発電電力を増大させることができる。つまり、制御装置21は、回転子7の回転数がα未満のときには、発電機側配線22aの電圧がV1(V)となるように第1および第2DC/DCコンバータ19,20を駆動する。また、制御装置21は、回転子7の回転数がα以上β未満のときには、発電機側配線22aの電圧がV2(V)となるように第1および第2DC/DCコンバータ19,20を駆動する。さらに、制御装置21は、回転子7の回転数がβ以上のときには、発電機側配線22aの電圧がV3(V)となるように第1および第2DC/DCコンバータ19,20を駆動する。これにより、発電機5の発電電力が増大し、第1および第2蓄電装置16,18の充電速度を速くすることができる。
【0020】
ここで、回転子7の回転数はエンジン1の回転数fとプーリ比(動力伝達比)とから算出されるが、回転センサを発電機5に取り付けて回転子7の回転数を直接検出してもよい。
【0021】
つぎに、発電機5の出力電力と出力端電圧との関係について図4に基づいて説明する。図4はこの発明の一実施の形態に係る車両用電源システムに用いられる発電機の出力特性を示す図であり、縦軸は出力電力、横軸は出力端電圧である。
【0022】
図4から分かるように、発電機5の出力電力は、出力端電圧が大きくなるとともに増加し、出力端電圧が所定の値となったときに最大値をとり、出力電圧が所定の値を超えて大きくなると減少する。そして、界磁電流が増加するとともに、発電機5のトルクが大きくなり、出力電力が増加する。
このことから、界磁電流と出力端電圧が決定すると、発電機5の出力電力が一意に定まることがわかる。
【0023】
制御装置21は、CPU、メモリ、入出力回路などを有するマイクロコンピュータから構成されている。そして、メモリには、図3に示される発電機5の発電電力と回転子7の回転数との関係に基づいた出力端電圧探索マップ、図4に示される発電機5の出力電力と出力端電圧との関係に基づいた出力電力探索マップ、後述する効率探索マップなどが格納されている。
【0024】
つぎに、車両用電源システムの制動時の回生量制御について図5乃至図9を参照しつつ説明する。図5はこの発明の一実施の形態に係る車両用電源システムにおける制動時の回生量制御を説明するフロー図、図6は発電機の発電可能量を推定する動作を説明するフロー図、図7は回生可能量を推定する動作を説明するフロー図、図8は発電機の最大電力追従制御を説明するフロー図、図9は発電機の最大効率制御を説明するフロー図である。
【0025】
本車両用電源システムにおいては、発電機側配線22aの電圧Va、および第2蓄電装置18の端子電圧Vcが電圧センサ(図示せず)により検出され、発電機側配線22aを流れる電流Ia、および第2蓄電装置18と第2DC/DCコンバータ20との間の経路を流れる電流Icが電流センサ(図示せず)により検出され、エンジン1の回転数fが回転センサ(図示せず)により検出される。そして、電圧センサ、電流センサ、回転センサの検出信号が制御装置21に入力される。制御装置21は、車両の走行状態、第2蓄電装置18の端子電圧Vcなどに基づいて、発電機5、第1DC/DCコンバータ19、および第2DC/DCコンバータ20の動作を制御する。
【0026】
そして、非制動時(非減速時)には、制御装置21は、デューティ比0の信号をレギュレータ回路11に出力し、発電機5を発電しない状態とする。この状態では、第2蓄電装置18に蓄電されている電力が、第2DC/DCコンバータ20と第1DC/DCコンバータ19を介して第1蓄電装置16および車載負荷17に供給される。ただし、非制動時においても、第1蓄電装置16および第2蓄電装置18に蓄電される電力がない場合は、デューティ比を0にせず、発電機5から第1蓄電装置16および第2蓄電装置18に給電を行う。
【0027】
一方、制動時(減速時)には、制御装置21は、発電指令(デューティ比)を発し、発電機5が発電する。発電された電力は、整流器14により直流電力に変換され、第2DC/DCコンバータ20を介して第2蓄電装置18に給電され、第1DC/DCコンバータ19を介して第1蓄電装置16および車載負荷17に給電される。
【0028】
まず、制御装置21は、発電機5の発電可能量を推定する(ステップ100)。このステップ100における具体的動作は、図6に示される。
つまり、制御装置21は、発電機側配線22aの電圧Va(出力端電圧)を検出し(ステップ200)、発電指令(デューティ比)から界磁電流を算出する(ステップ201)。ついで、ステップ202に移行し、検出された電圧Vaと算出された界磁電流とに基づいてメモリに格納されている出力電力探索マップを探索し、出力電力、すなわち発電機5の発電可能量を推定する。
【0029】
ここで、ステップ202では、検出された出力端電圧と界磁電流に基づいて出力電圧探索マップから出力電力を求めるものとしているが、出力電力を求める方法はこれに限定されない。例えば、出力端電圧と出力電力との関係を関数化してメモリに格納しておき、検出された出力端電圧と格納されている関数とから出力電力を求めてもよいし、出力端電圧と出力電力とのデータをメモリに格納しておき、検出された出力端電圧の近傍のデータから線形近似法やスプライン近似法などにより出力電力を演算して求めてもよい。
【0030】
ステップ100において、発電機5の発電可能量が推定されると、ステップ101に移行し、車両が減速中であるか否かを判定する。なお、加速、減速、定速走行(巡行)、停止などの車両の走行状態は、ECU信号、エンジン回転数fの増減、アクセルペダルやブレーキペダルの状態などから判断される。
ステップ101において、車両が非減速状態であると判断されると、ステップ100に戻る。車両が減速状態であると判断されると、ステップ102に移行し、回生可能量を推定する。
【0031】
ここで、回生可能量は、例えば、発電機5から第1蓄電装置16と第2蓄電装置18とに給電される電力である。そして、発電機5からの電力供給経路は、発電機5から第1DC/DCコンバータ19に至る電力経路P1と、第2DC/DCコンバータ20から第2蓄電装置18に達する電力経路P2とがある。電力経路P1を介して給電される電力である第1回生可能量PW1は、発電機5からの給電電流Iaと発電機側配線22aの電圧Vaとの積で表される。電力経路P2を介して給電される電力である第2回生可能量PW2は、第2蓄電装置18に蓄電されている電圧Vcと第2DC/DCコンバータ20から第2蓄電装置18に流れる電流Icとの積で表される。Va,Vc,Ia,Icはいずれも直流である。
【0032】
非制動時では、発電機5が発電しないので、第2蓄電装置18に蓄電されている電力を放電し、第1蓄電装置16に給電される。一方、制動時では、発電機5が発電し、第1蓄電装置16および第2蓄電装置18に給電される。このため、走行状態によって、第2蓄電装置18は充放電を行うので、電流Icの向きが変わる。つまり、非制動時では、PW2が合成回生可能量となり、制動時では、合成電力(PW1+PW2)が合成回生可能量となる。
【0033】
このステップ102における具体的動作は、図7に示される。
まず、制御装置21は、発電機側配線22aの電圧Vaを検出し(ステップ210)、発電機側配線22aを流れる電流Iaを検出し(ステップ211)、ステップ212に移行する。ステップ212では、発電機5から第1蓄電装置16に給電される電力である第1回生可能量PW1(=Va×Ia)を算出する。ついで、第2蓄電装置18の端子電圧Vcを検出し(ステップ213)、第1蓄電装置18と第2DC/DCコンバータ20との間の配線に流れる電流Icを検出し(ステップ214)、ステップ215に移行する。ステップ215では、発電機5から第2蓄電装置18に給電される電力である第2回生可能量PW2(=Vc×Ic)を算出し、ステップ216に移行する。ステップ216では、PW1とPW2との和から合成回生可能量PWを推定する。
【0034】
ここで、電圧Vcが閾値より高い場合には、第2蓄電装置18が満充電であると判断し、発電機5の電力が第2蓄電装置18に給電されないように第2DC/DCコンバータ20の駆動を制御することが好ましい。
【0035】
つぎに、ステップ103では、推定された合成回生可能量と発電可能量との大小関係を判定する。そして、合成回生可能量が発電可能量より大きいと判定されるとステップ104に移行し、最大発電量追従制御により発電機5を発電させる。合成回生可能量が発電可能量以下であると判定されるとステップ105に移行し、最大効率制御により発電機5を発電させる。
【0036】
このステップ104における具体的動作を図8に基づいて説明する。
まず、制御装置21は、回転子7の回転数を検出し(ステップ220)、メモリに格納されている出力端電圧探索マップを探索し、回転子7の回転数から出力端電圧の目標電圧Vffを推定する(ステップ221)。ついで、ステップ222に移行し、発電機側配線22aの電圧Vaが目標電圧Vffとなるように第1DC/DCコンバータ19と第2DC/DCコンバータ20の電圧変換比を調整する。ついで、ステップ223に移行し、発電機側配線22aの電圧Vaが目標電圧Vffから一定量Vεずれた電圧となるように第1DC/DCコンバータ19と第2DC/DCコンバータ20の電圧変換比を調整し、ステップ224に移行する。ステップ224では、PW(=PW1+PW2)の出力端電圧に対する微分値が0であるか否かを判定する。ステップ224において、PWの出力端電圧に対する微分値が0でない場合には、ステップ223に戻る。ステップ224において、PWの出力端電圧に対する微分値が0である場合には、PWが最大となったと判断し、ステップ106に移行する。
【0037】
つぎに、このステップ105における具体的動作を図9に基づいて説明する。
まず、制御装置21は、発電機側配線22aの電圧Va(出力端電圧)を検出し(ステップ230)、発電指令(デューティ比)から界磁電流を算出する(ステップ231)。ついで、ステップ232に移行し、検出された電圧Vaと算出された界磁電流とに基づいてメモリに格納されている効率探索マップから効率ηを探索する。ついで、ステップ233に移行し、発電機側配線22aの電圧Vaが現在の電圧から一定量Vεずれた電圧となるように第1DC/DCコンバータ19と第2DC/DCコンバータ20の電圧変換比を調整し、ステップ234に移行する。ステップ234では、発電機5の効率ηの出力端電圧に対する微分値が0であるか否かを判定する。ステップ234において、効率ηの出力端電圧に対する微分値が0でない場合には、ステップ233に戻る。ステップ234において、効率ηの出力端電圧に対する微分値が0である場合には、効率ηが最大となったと判断し、ステップ106に移行する。
【0038】
ここで、ステップ232では、検出された電圧Vaと界磁電流に基づいて効率探索マップから効率を求めるものとしているが、効率を求める方法はこれに限定されない。例えば、出力端電圧と効率との関係を関数化してメモリに格納しておき、検出された出力端電圧と格納されている関数とから効率を求めてもよいし、出力端電圧と効率とのデータをメモリに格納しておき、検出された出力端電圧の近傍のデータから線形近似法やスプライン近似法などにより効率を演算してもとめてもよい。
【0039】
なお、発電機5の効率ηは出力/入力であり、出力はPW(=PW1+PW2)として計算でき、入力はエンジン1のトルクとエンジン1の回転数との積である。そして、メモリには、電圧Vaと界磁電流とをパラメータとして算出された効率ηが効率探索マップとして格納されている。
【0040】
ステップ106では、制御装置21は、回生可能量PW(=PW1+PW2)を発電機5の回転数と発電機5の効率ηとで除して、回生制動量を算出する。ここで、回生制動量は、回生トルクである。
ついで、ステップ107に移行し、制御装置21は、算出した回生トルクとブレーキペサル踏み込み量から推定されるドライバが要する目標トルクとの差を算出し、実ブレーキ補正量(走行制動補正量)を得る。そして、ステップ108に移行し、実ブレーキ補正量に相当する回生量を第1蓄電装置16および第2蓄電装置18に蓄電させる。これにより、ドライバが望むブレーキトルクを提供でき、ブレーキペダル踏み込み時のドライバの違和感を改善できる。
【0041】
つぎに、車両用電源システムにおける発電機の内部状態の監視について図10を参照しつつ説明する。図10はこの発明の一実施の形態に係る車両用電源システムにおける発電機の内部状態の監視動作を説明するフロー図である。
【0042】
まず、制御装置21は、界磁巻線8の両端の電圧を検出し(ステップ240)、デューティ比から界磁電流を算出する(ステップ241)。ついで、ステップ242に移行し、界磁巻線8の両端の電圧と界磁電流とから界磁巻線8の抵抗を推定する。ついで、ステップ243に移行し、界磁巻線8の抵抗から現在の界磁巻線8の温度を推定する。ついで、推定された界磁巻線8の温度が上昇したか否かを判定する(ステップ244)。ステップ244において、界磁巻線8の温度が上昇したと判断されると、ステップ245に移行し、メモリに格納されている温度判定フラッグδを1とする。また、ステップ244において、界磁巻線8の温度が上昇しないと判断されると、ステップ246に移行し、メモリに格納されている温度判定フラッグδを0とし、ステップ247に移行する。ステップ247では、デューティ比を0とし、発電機5の発電を停止した後、ステップ248に移行し、報知手段23により運転者に発電機5の内部異常、すなわち界磁巻線8の断線発生を報知する。
【0043】
ここで、界磁巻線8は界磁電流が通電されることで発熱する。また、金属は温度とともに抵抗が増加する特性を有している。そこで、界磁巻線8の抵抗から界磁巻線8の温度を推定することができる。また、界磁巻線8の温度が上昇しているか否かは、例えば界磁巻線8の温度と環境温度との大小関係により判別することが可能である。
【0044】
この実施の形態では、第1蓄電装置16の第1回生可能量と第2蓄電装置18の第2回生可能量との和である合成回生可能量と発電可能量とを推定し、合成回生可能量と発電可能量との大小関係から合成回生可能量を調整し、調整された合成回生可能量により走行制動量を補正するようにしているので、回生量、すなわち発電量の低下を抑えて、ブレーキペダル踏み込み時のドライバの違和感を改善できる。
【0045】
合成回生可能量が発電可能量より大きい場合には、最大発電量追従制御により発電機5を駆動し、合成回生可能量が発電可能量以下の場合には、最大効率追従制御により発電機5を駆動しているので、発電機5の発電量を大きくすることができるとともに、第1および第2蓄電装置16,18の過充電がなくなる。
第2蓄電装置18の端子電圧Vcが閾値を超えると、発電機5の発電電力が第2蓄電装置18に供給されないように第2DC/DCコンバータが駆動されるので、第2蓄電装置18の過充電が阻止され、第2蓄電装置18の長寿命化が図られる。
【0046】
制御装置21のメモリには、所定の温度状態での発電機5の出力特性が記憶されているに過ぎず、また制御装置21の計算誤差、電圧センサや電流センサの測定誤差、界磁巻線8の温度などの影響があり、出力端電圧Vaが目標電圧Vffのときに、発電機5の発電電力が最大となるとは限らない。しかし、発電機5を最大発電量追従制御により駆動している。つまり、ステップ223において、発電機側配線22aの電圧である出力端電圧Vaを一定量Vεずれるように、第1および第2DC/DCコンバータ19,20の電圧交換比を調整し、ステップ224において、発電機5から第1DC/DCコンバータ19に至る電力経路P1を介して給電される電力PW1と、第2DC/DCコンバータ20から第2蓄電装置18に達する電力経路P2を介して給電される電力PW2との合成電力PWの出力端電圧に対する微分値が0となるか否かを判断し、その微分値が0でないとステップ223に戻るようにしている。このように、合成電力の出力端電圧に対する微分値が0となるように、第1および第2DC/DCコンバータ19,20の電圧変換比を調整するフィードバック制御を行っているので、発電機5が常に最大発電量となるように駆動できる。
【0047】
また、発電機5を最大効率追従制御により駆動している。つまり、ステップ233において、発電機側配線22aの電圧Vaが現在の電圧から一定量Vεずれた電圧となるように第1および第2DC/DCコンバータ19,20の電圧変換比を調整し、ステップ234において、発電機5の効率ηの出力端電圧に対する微分値が0であるか否かを判断し、その微分値が0でないとステップ233に戻るようにしている。このように、発電機5の効率の出力端電圧に対する微分値が0となるように、第1および第2DC/DCコンバータ19,20の電圧変換比を調整するフィードバック制御を行っているので、発電機5が常に最大効率となるように駆動できる。
【0048】
界磁巻線8の抵抗から界磁巻線8の温度を推定し、推定された界磁巻線8の温度が上昇しているか否かを判断しているので、界磁巻線8の断線発生を簡易に判断することができる。また、推定された界磁巻線8の温度が上昇していないと判断されると、界磁巻線8の断線発生を報知手段23により運転者に報知しているので、運転者は速やかに停車し、修理を依頼することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、整流器がダイオードブリッジを用いた三相全波整流回路に構成されているものとしているが、整流器は、同期整流を行うMOSFETや寄生ダイオードで整流を行うMOSFETなどの多相インバータで構成してもよい。
また、上記実施の形態では、発電機の固定子の固定子巻線は3相交流巻線に構成されているものとしているが、固定子巻線は3相交流巻線に限定されるものでなく、3相交流巻線を多重化したものや、多相交流巻線(例えば、5相、7相)でもよい。その場合、整流器は、相数に応じた全波整流回路で、交流電力を直流に整流する。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジン、5 発電機、7 回転子、8 界磁巻線、11 レギュレータ回路、14 整流器、14a 高圧側出力端子、16 第1蓄電装置、18 第2蓄電装置、19 第1DC/DCコンバータ、20 第2DC/DCコンバータ、22a 発電機側配線、22b 負荷側配線、23 報知手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動されて交流電力を発電する発電機と、
上記発電機で発電された交流電力を直流電力に整流して出力する整流器と、
上記整流器の高圧側出力端子に発電機側配線を介して接続され、該整流器の出力電圧の電圧値を異なる直流電圧に変換して出力する第1DC/DCコンバータと、
上記第1DC/DCコンバータに負荷側配線を介して接続され、車載負荷に電力を供給する第1蓄電装置と、
上記整流器の高圧側出力端子に発電機側配線を介して接続され、該整流器の出力電圧の電圧値を異なる直流電圧に変換して出力する第2DC/DCコンバータと、
上記第2DC/DCコンバータに接続される第2蓄電装置と、
上記発電機の界磁巻線に界磁電流を供給するレギュレータ回路と、
上記レギュレータ回路に発電指令を発して、上記発電機を発電させるとともに、上記第1DC/DCコンバータおよび上記第2DC/DCコンバータを駆動制御して、上記発電機の発電電力を上記第1蓄電装置および上記第2蓄電装置に蓄電させる制御装置と、を備え、
上記制御装置は、
上記発電機の発電可能量を推定し、
上記第1蓄電装置の第1回生可能量と上記第2蓄電装置の第2回生可能量とを推定し、
上記第1回生可能量と上記第2回生可能量との合成回生可能量と上記発電可能量との大小関係から上記合成回生可能量を調整し、
上記調整された合成回生可能量により走行制動量を補正するように構成されていることを特徴とする車両用電源システム。
【請求項2】
上記制御装置は、
上記合成回生可能量が上記発電可能量より大きい場合には、上記発電機を最大発電量追従制御により駆動し、上記合成回生可能量が上記発電可能量以下の場合には、上記発電機を最大効率追従制御により駆動することを特徴とする請求項1記載の車両用電源システム。
【請求項3】
上記制御装置は、上記第2蓄電装置の端子電圧が閾値を超えると、上記発電機の発電電力が上記第2蓄電装置に供給されないように上記第2DC/DCコンバータの駆動を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用電源システム。
【請求項4】
上記界磁巻線の断線を報知する報知手段を備え、
上記制御装置は、上記発電機の発電時に、上記界磁巻線の温度を推定し、推定された上記界磁巻線の温度に基づいて上記界磁巻線の断線の有無を判別し、上記界磁巻線が断線していると上記報知手段を動作させて、上記界磁巻線の断線を運転者に報知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用電源システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−152087(P2012−152087A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10828(P2011−10828)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】