説明

車両用静電霧化装置

【課題】車両用窓ガラスの曇り止めができ、安全運転に寄与でき、また、車室内、特に、車両用窓ガラスの内面に付着した臭やアレルゲン物質の除去ができる。
【解決手段】放電電極1と、曇り止め液を溜めるタンク部2と、タンク部2に溜めた曇り止め液3を放電電極1に供給する液供給手段4と、放電電極1に高電圧を印加して放電電極1に供給された曇り止め液3を静電霧化して帯電微粒子液を生成する高電圧印加部5とを備えている。生成された帯電微粒子液を車両6に備えられた空調装置7の空気流れにより車両用窓ガラス8に吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化現象を利用して帯電微粒子水を生成して自動車等の車両における曇り止めをするための車両用静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両のガラスは車室内と外部との温度差により車両用窓ガラスが曇り、特に、車室内の湿度が高い場合は車両用窓ガラスが曇る。この曇るという現象は、表面に微小な水滴が露となって付着し、この露が光を乱反射するために生じるものであるが、車両においては安全性の面で大きな問題である。
【0003】
一般に、車両用窓ガラスの曇りの対策としては、車両用窓ガラスに曇りが発生すると、車両に搭載している空調装置に設けたデフロスター吹き出し口から車両用窓ガラスに送風して車両用窓ガラスの内面の露を蒸発させることで行うようになっている。
【0004】
ところが、この方法では、車両用窓ガラスに一旦発生した曇りが除去されるまでに時間がかかり、安全運転という観点上問題がある。
【0005】
一方、車両用窓ガラスに界面活性剤などの曇り止め液を塗布して親水性を付与することで曇り止めをすることが特許文献1などにより提案されている。
【0006】
ところが、界面活性剤のような曇り止め液を車両用窓ガラスの内面に塗布した車両用窓ガラスの内面を親水性とすることで曇りを防ぐ方法の場合、車両用窓ガラスの内面に曇り止め液を塗布する手間がかかって面倒であるという問題があり、しかも、車両の運転中には車両用窓ガラスの内面に曇り止め液を塗布することができないという問題がある。
【0007】
また、従来から、特許文献2により、車両に備え付けた空調装置に、水を霧化させてナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノミスト)を発生させる静電霧化装置を設け、空調装置の吹出口から吹き出す空気流に乗せて帯電微粒子水を車室内に放出することで、密閉空間である車室内の臭やアレルゲン物質を除去するようにしたものが特許文献2により知られているが、特許文献2に示す従来例においては車両用窓ガラスの曇り止め防止効果はない。
【特許文献1】特開2002−308651号公報
【特許文献2】特開2006−151046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、車両用窓ガラスの曇り止めができ、安全運転に寄与でき、また、車室内、特に、車両用窓ガラスの内面に付着した臭やアレルゲン物質の除去ができる車両用静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る車両用静電霧化装置は、放電電極1と、曇り止め液を溜めるタンク部2と、タンク部2に溜めた曇り止め液3を放電電極1に供給する液供給手段4と、放電電極1に高電圧を印加して放電電極1に供給された曇り止め液3を静電霧化して帯電微粒子液を生成する高電圧印加部5とを備え、生成された帯電微粒子液を車両6に備えられた空調装置7の空気流れにより車両用窓ガラス8に吐出することを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、曇り止め液3を静電霧化して生成した帯電微粒子液が車両6に備えられた空調装置7の空気流れにより車両用窓ガラス8に向かって放出され、車両用窓ガラス8に曇り止め液の帯電微粒子液を車両用窓ガラス8の全面に均一に噴霧される。この場合、帯電微粒子液は粒子径が小さいため拡散性がよくて車両用窓ガラス8に向かって放出することで、車両用窓ガラス8全面に行き渡って車両用窓ガラス8に付着することになり、この時更に、帯電微粒子液が帯電しているので車両用窓ガラス8(グランド)に更に付着し易くなる。帯電微粒子液が車両用窓ガラス8に付着すると表面張力により車両用窓ガラス8全体に曇り止め液3による薄い膜が構成されて車両用窓ガラス8内面が親水化されて、確実に曇り止めを行うことができ、しかも、曇り止め液3を車両用窓ガラス8に手作業で塗布する必要がないので、手間がかからず、更に、車両6の運転中であっても車両用窓ガラス8内面を親水化することができる。また、帯電微粒子液にはラジカルを含んでいるので、車両用窓ガラス8面に到達するまでの間や、車両用窓ガラス8に薄膜が形成されるまでの間に、ラジカルによる脱臭、除菌が行われる。
【0011】
また、タンク部2における曇り止め液3の有無を検知する検知手段9を設け、検知手段9により曇り止め液3が無くなったことを検知すると放電電極1への高電圧の印加ができないようにすることが好ましい。
【0012】
このような構成とすることで、曇り止め液3が無い状態では高電圧の印加ができず、曇り止め液3の無い状態で高電圧をかけ続けることによる放電電極1の寿命が短くなることを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のように、曇り止め液を放電霧化した帯電微粒子液を空調装置の空気流れにより車両用窓ガラスに吐出する構成のものであるから、帯電した曇り止め液の微粒子液を車両用窓ガラスに自動的に確実に付着させて、車両用窓ガラスの曇り止めができ、安全運転に寄与できる。また、曇り止め液を放電霧化した帯電微粒子液にはラジカルを含んでいるので、車室内、特に、車両用窓ガラスの内面に付着した臭やアレルゲン物質の除去ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
図1には自動車のような車両6の概略図が示してあり、車両6には車載用の空調装置7が備えてある。
【0016】
図2には車載用の空調装置7の概略図が示してあり、空調装置7は、一端が車外又は車室10内のいずれかに連通する吸込口24となり且つ他端が車室10内に連通する複数の吹き出し口25となった空気流路26と、前記吸込口24から車外又は車室10内の空気を吸込むと共にこの空気を前記吹き出し口25から車室10内に吹き出す送風手段27と、前記吸込口から吸込まれた空気流路26内の空気の浄化をするフィルタ29と、温度調節するためのエバポレータ28とを有している。
【0017】
空調装置7の吹き出し口25としては中央吹き出し口25b、運転席側吹き出し口25c、助手席側吹き出し口25d、デフロスター吹き出し口25a等がある。デフロスター吹き出し口25aは通称インパネと称されるインストルメントパネル13の上面前端部の車両用窓ガラス8であるフロントガラスのやや手前に設けてあって、車両用窓ガラス8の内面に向けて空気を吹き出すようになっている。
【0018】
車両6には静電霧化装置12が設けてある。静電霧化装置12は図3の概略構成図に示すように、放電電極1と、曇り止め液を溜めるタンク部2と、タンク部2に溜めた曇り止め液3を放電電極1に供給する液供給手段4と、放電電極1に高電圧を印加して放電電極1に供給された曇り止め液3を静電霧化して帯電微粒子液を生成する高電圧印加部5とを備えたものである。
【0019】
放電電極1は絶縁材料からなるハウジング15の底部を貫通していてその先端部がハウジング15内に突入させてあり、ハウジング15の前開口部16の開口縁部にはリング状をした対向電極11が設けてあり、放電電極1の軸心の延長線上にリング状の対向電極11のリングの中心が位置するように放電電極1と対向電極11とが対向している。
【0020】
放電電極1は多孔質材料で形成したり、小径の貫通孔を形成したりして後端部から前端部にかけて液を毛細管現象により移送できるようになっている。
【0021】
タンク部2は界面活性剤のような曇り止め液3を溜めるようになっており、タンク部2と放電電極1の後端部とをフレキシブルホースのようなホース17により連通接続してあり、該ホース17と放電電極1に設けた毛細管現象発生手段とでタンク部2に溜めた曇り止め液3を放電電極1の前端部に供給する液供給手段4を構成している。
【0022】
放電電極1と対向電極11との間に高電圧を印加するための高電圧印加部5としては車両6に搭載してあるバッテリーを用いている。もちろん、車両6に搭載してあるバッテリー以外の電源であってよい。
【0023】
タンク部2には、タンク部2における曇り止め液3の有無を検知する検知手段9を設けてある。検知手段9としては、例えば、タンク部2内に浮かべた磁石19付きのフロート18と、磁石19が近づいたり、遠ざかることでオン、オフされるリードスイッチ20とで構成してあり、タンク部2内に曇り止め液3が無い状態ではフロート18が下降し、磁石19がタンク部2底部の外側に設けたリードスイッチ20に近づいてリードスイッチ20を操作することで、放電電極1への高電圧の印加ができないようになっており、タンク部2に曇り止め液3がある状態ではフロート18が上昇することで磁石19がリードスイッチ20から離れ、放電電極1への高電圧の印加ができないようになっている。
【0024】
また、タンク部2には給液口21が設けてあって曇り止め液3をタンク部2内に補充できるようになっている。
【0025】
この静電霧化装置12は、上記のようにタンク部2に溜めた曇り止め液3を液供給手段4により放電電極1の前端部に供給し、この状態で、高電圧印加部5により放電電極1と対向電極11との間に高電圧を印加すると、放電電極1と対向電極11との間にかけられた高電圧により放電電極1の前端部(先端部)に供給された曇り止め液3と対向電極11との間にクーロン力が働いて、曇り止め液3の液面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。このようにテーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、これによりこの部分に生じるクーロン力が大きくなり、更にテーラーコーンを成長させる。このようにテーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の曇り止め液3が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子液を大量に生成させ、生成された帯電微粒子液はハウジング15の前開口部16又は前開口部16に連通して形成した通路部23の先端の放出口14から外部に放出されるようになっている。
【0026】
本発明においては、上記のような構成の静電霧化装置12で生成される帯電微粒子液を車両6に備えられた空調装置7の空気流れにより車両用窓ガラス8に吐出するようにしたことに特徴がある。
【0027】
図2に示す実施形態においては、空調装置7の空気流路26の下流側に設けたデフロスター吹き出し口25aに連通するデフロスター吹き出し口側分岐流路26aに静電霧化装置12のハウジング15の前開口部16又は前開口部16に連通して形成した通路部23の先端の放出口14を連通接続した構成となっていて、デフロスター吹き出し口側分岐流路26aを流れる空気流に帯電微粒子液が誘引されてデフロスター吹き出し口25aから車両用窓ガラス(フロントガラス)8に向けて吹き出され、帯電微粒子液が空気流に乗って車両用窓ガラス8の内面の全域に吹き付けられる。
【0028】
ここで、帯電微粒子液はナノメータサイズと粒子径が小さいため拡散性がよく、上記のように車両用窓ガラス8に向かって放出することで、車両用窓ガラス8全面に行き渡って車両用窓ガラス8に付着することになる。
【0029】
しかもこの時、更に、放出される帯電微粒子液が帯電しているので車両用窓ガラス8(グランド)に更に付着し易くなる。
【0030】
上記のようにして帯電微粒子液が車両用窓ガラス8に付着すると表面張力により車両用窓ガラス8全体に曇り止め液3による薄い膜が構成されて車両用窓ガラス8内面が親水化され、このように車両用窓ガラス8内面が親水化され、水になじみ易くなり、車両用窓ガラス8内面についた水蒸気の粒(水滴)は直ぐ広がってしまい、曇らなくなり、これにより車両用窓ガラス8が曇るのが防止されることになる。
【0031】
また、曇り止め液3を車両用窓ガラス8に手作業で塗布する必要がないので、手間がかからず、更に、車両6の運転中であっても車両用窓ガラス8内面を親水化することができる。また、帯電微粒子液にはラジカルを含んでいるので、車両用窓ガラス8面に到達するまでの間や、車両用窓ガラス8に薄膜が形成されるまでの間に、ラジカルによる脱臭、除菌が行われることになる。
【0032】
図2に示す実施形態においては、デフロスター吹き出し口側分岐流路26aに静電霧化装置12のハウジング15の前開口部16又は前開口部16に連通して形成した通路部23の先端の放出口14を連通接続した例を示したが、図4のようにデフロスター吹き出し口25aに静電霧化装置12のハウジング15の前開口部16又は前開口部16に連通して形成した通路部23の先端の放出口14を開口させてもよい。
【0033】
また、図5に示すように、静電霧化装置12のハウジング15をデフロスター吹き出し口側分岐流路26a内に配置してもよい。
【0034】
なお、上記実施形態に示す静電霧化装置12においては、対向電極11を設けた例を示したが対向電極11を設けることなく、放電電極1に高電圧を印加することで放電電極1に供給された曇り止め液3を静電霧化するものであってもよい。
【0035】
なお、添付図面に示す実施形態では放電電極と対向電極との間に高電圧を印加して帯電微粒子水を生成する静電霧化装置12の例を示したが、対向電極を設けない場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の車両用浄化装置を備えた車両の概略図である。
【図2】同上の静電霧化装置と空調装置との関係を示す概略構成図である。
【図3】同上の静電霧化装置の概略構成図である。
【図4】同上の静電霧化装置と空調装置との関係を示す他の実施形態の概略構成図である。
【図5】同上の静電霧化装置と空調装置との関係を示す更に他の実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 放電電極
2 タンク部
3 曇り止め液
4 液供給手段
5 高電圧印加部
6 車両
7 空調装置
8 車両用窓ガラス
9 検知手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、曇り止め液を溜めるタンク部と、タンク部に溜めた曇り止め液を放電電極に供給する液供給手段と、放電電極に高電圧を印加して放電電極に供給された曇り止め液を静電霧化して帯電微粒子液を生成する高電圧印加部とを備え、生成された帯電微粒子液を車両に備えられた空調装置の空気流れにより車両用窓ガラスに吐出することを特徴とする車両用静電霧化装置。
【請求項2】
タンク部における曇り止め液の有無を検知する検知手段を設け、検知手段により曇り止め液が無くなったことを検知すると放電電極への高電圧の印加ができないようにすることを特徴とする請求項1記載の車両用静電霧化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−238906(P2008−238906A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80655(P2007−80655)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】