説明

車両監視装置

【課題】車両監視装置としての誤報の抑制と侵入検知機能の維持との好適な両立を実現することのできる車両監視装置を提供する。
【解決手段】停車中の車両の内部環境の変化に基づき車両内への監視対象の侵入を検知する侵入検知装置310により監視対象の侵入が検知されることに基づいて警報装置320により監視対象に対する警報を行う。この車両監視装置は、車両のウィンドウ140の開量として侵入検知装置310による車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得るウィンドウの開量である第1のウィンドウ開量が記憶されたウィンドウ開量メモリ301を有している。また、監視動作の開始に伴ってウィンドウ140の開量を取得するとともに、この取得したウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量を超えるとき、同ウィンドウ140の開量がこの第1のウィンドウ開量となるまでウィンドウ140を閉じる制御を行う監視制御部300を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内への不審者等の侵入を車両内の環境の変化に基づき監視する車両監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両監視装置としては、例えば特許文献1に記載の装置(システム)がある。図9及び図10に、この特許文献1に記載の車両監視装置についてその概要を示す。
【0003】
この車両監視装置は、図9に示すように、車両(自動車)に搭載されている。そして、この車両の盗難等を目的として車両内に侵入する不審者の有無が侵入検知部10により検知され、検知された不審者に対する威嚇が適宜行われるこの車両監視装置の構成を図10に示す。
【0004】
この図10に示す車両監視装置は、上記侵入検知部10として、車室内の不審者検知を行う赤外線センサ23及び車室外の不審者検知を行う電波センサ24を備えている。それら赤外線センサ23及び電波センサ24は、処理部21を構成する監視制御部28によってその監視動作が制御される。こうした制御を通じて赤外線センサ23及び電波センサ24により検出された各検出情報は、それら各検出情報に基づき車両の内部及び外部の異常状態を検知する異常検知部29に入力される。そして、この異常検知部29によって車両の内部あるいは外部の異常状態が検知されると、異常検知部29に入力された上記各検出情報が犯罪予備行為判定部30に入力される。
【0005】
犯罪予備行為判定部30では、異常検知部29から入力された各検出情報と記憶部22に記憶されている徘徊行為、不要滞在行為、覗きこみ行為などの犯罪予備行為に関する情報との対比に基づいて、赤外線センサ23及び電波センサ24による監視エリアに侵入した監視対象の犯罪予備行為の有無が判定される。そして、こうした犯罪予備行為判定部30により監視対象による犯罪予備行為が判定されると、この判定結果が警報制御部31に入力される。こうして犯罪予備行為の判定結果が入力されると、警報制御部31では、LED25の発光、スピーカ26による警告、ホーン27の鳴動等により、監視対象(不審者)に対する威嚇が行われる。
【0006】
このような車両監視装置によれば、赤外線センサ23や電波センサ24によって検出される各検出情報に基づき監視エリア内への不審者の侵入を検知可能なことから、車両の監視とともに、車両に対して犯罪予備行為を行っている不審者に対する威嚇を併せて行うことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−92727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常、赤外線センサ23や電波センサ24をはじめとする各種検知手段による監視対象の検知とは、それら検知手段による監視エリアの環境の変化量が監視対象の存在の有無を判別する所定の閾値を超えたか否かの判定に基づき行われる。しかし、車両内部の換気や閉め忘れ等により車両のウィンドウが開放された状態においては、車両のウィ
ンドウを介して音や光といった車両外部の環境が車両内部に取り込まれることとなり、この車両内部に取り込まれた車両外部の環境の変化量が上記閾値を超えた場合には、車両の内部に不審者が侵入したとして誤報が発生することがあった。そこで、こうした誤報を抑制すべく上記各種検知手段による検出感度を低めに設定することも提案されているが、この場合には検知手段による検出感度の低下に伴って不審者の検知性能までもが低下することとなり、車両監視装置としての信頼性を損なうことにもなりかねない。すなわち、車両監視装置としての誤報の抑制と侵入検知機能の維持との好適な両立を実現するには至っていない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両監視装置としての誤報の抑制と侵入検知機能の維持との好適な両立を実現することのできる車両監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、停車中の車両の内部環境の変化に基づき車両内への監視対象の侵入を検知する侵入検知装置により車両内の監視を行う車両監視装置において、前記車両のウィンドウの開量として前記侵入検知装置による車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得るウィンドウの開量である第1のウィンドウ開量が記憶されたメモリを有し、監視動作の開始に伴って前記ウィンドウの開量を取得するとともに、この取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量を超えるとき、同ウィンドウの開量がこの第1のウィンドウ開量となるまでウィンドウを閉じる制御を行う監視制御部を備えることを要旨とする。
【0011】
上記構成によるように、監視動作の開始に伴って取得したウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量を超えるときにウィンドウの開量が上記記憶されたとなるまで、ウィンドウを閉じることとすれば、監視動作が開始される際には、車両のウィンドウの開量が車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得る開量まで自動的に調整されるようになる。このため、車両内部の換気や閉め忘れ等により車両のウィンドウが開放された状態で監視動作が開始されたとしても、このウィンドウの開量が自動調整されることにより、上記監視装置による車両内への監視対象の侵入の検知機能が保証されるようになる。このように、上記構成によれば、車両のウィンドウの開量の調整を通じて監視対象の侵入の検知機能を好適に維持することができるようになり、ひいては、車両監視装置としての誤報の抑制と侵入検知機能の維持との好適な両立を実現することができるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両監視装置において、前記車両監視装置は、監視対象に警報を行う警報装置を備え、前記侵入検知装置により監視対象の侵入が検知されることに基づいて警報装置を作動させることを要旨とする。
【0013】
上記構成によるように、上記侵入検知装置により監視対象の侵入が検知されることに基づいて警報装置を作動させることとすれば、この警報装置を侵入検知装置による監視対象の検知機能が保証された状態で作動させることができるようになる。これにより、警報装置による警報を通じて監視対象に威嚇を行う上で、その誤報が好適に抑制されるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両監視装置において、前記侵入検知装置は、前記停車中の車両の内部環境の変化量が監視対象侵入の検知基準となる所定の変化量を超えることに基づいて車両内への監視対象の侵入を検知するものであり、前記メモリに記憶された前記第1のウィンドウ開量は、前記車両の外部環境の変化が前記ウィンドウの開口を介して当該車両の内部に取り込まれる環境の変化量を前記侵入検知装置の検知基準となる所定の変化量未満とし得る最大限のウィンドウ開量に設定されてなること
を要旨とする。
【0015】
通常、監視対象とする不審者等が車両の内部に侵入した際には、この不審者の侵入に伴って車両内部の光や音といった環境が変化することから、この車両内部の環境の変化量に基づけば車両の内部への監視対象の侵入を検知することが可能となる。このため、上記侵入検知装置による侵入検知機能の信頼性を維持するためには、車両の内部に取り込まれる車両の外部環境の変化量を少なくする必要がある一方、停車中の車両内部の換気等を行う上ではウィンドウの開量を多くすることが望ましい。すなわち、上記構成によるように、上記第1のウィンドウ開量を、車両の外部環境の変化がウィンドウの開口を介して同車両の内部に取り込まれる環境の変化量を侵入検知装置の検知基準となる所定の変化量未満とし得る最大限のウィンドウ開量に設定することとすれば、侵入検知装置による侵入検知機能を担保しつつも上記自動調整後のウィンドウの開量を最大限に確保することができるようになる。これにより、ウィンドウの開量の自動調整を行う上で、車両監視装置としての信頼性を好適に維持しつつ換気等のための必要十分なウィンドウの開量を確保することができるようになり、ひいては、車両監視装置としての実用性がより高められるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両監視装置において、前記監視制御部は、前記車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作を開始して前記ウィンドウの開量を取得するとともに、該取得したウィンドウの開量が前記第1のウィンドウ開量以下にあることを条件に前記侵入検知装置を起動することを要旨とする。
【0017】
停車中の車両のユーザが降車後、車両から離れる際には車両のドアがロック操作されるのが普通であり、また上記車両監視装置も車両のユーザの不在時に機能することが望ましい。この点、上記構成によれば、車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作が開始されることから、上記車両監視装置による監視動作を望ましいかたちで行うことができるようになる。また、上記構成によるように、侵入検知装置を、上記取得されたウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量以下にあることを条件に起動することとすれば、
(イ)ウィンドウの開量が予め第1のウィンドウ開量以下まで閉じられていれば直ちに侵入検知装置が起動される。
(ロ)ウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量を超えて開かれていれば、同ウィンドウの開量が上記第1のウィンドウ開量まで自動的に閉じられるのを待って、侵入検知装置が起動される。
といった態様で侵入検知装置の起動が可能となる。これにより、侵入検知装置の起動時における監視対象の誤検知を好適に抑制することができるようになる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の車両監視装置において、前記監視制御部は、前記車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作を開始して前記ウィンドウの開量を取得し、前記侵入検知装置及び前記警報装置を起動するとともに、前記侵入検知装置により車両内への監視対象の侵入が検知されてのち、前記取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量を超えるとき、前記侵入検知装置による検知信号を一時的にマスクした状態で前記ウィンドウの開量が前記第1のウィンドウ開量となるまで前記ウィンドウを閉じる制御を行うことを要旨とする。
【0019】
上記車両のウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量を超えた状態で監視動作が開始され、上記侵入検知装置及び上記警報装置が起動された場合には、車両のウィンドウの開量が車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得る開量を超えていることから、侵入検知装置により監視対象の侵入が検知されたとしても誤検知である可能性が存在する。この点、上記構成によれば、侵入検知装置及び警報装置の起動後において、侵入検知装置により監視対象の侵入が検知されたとしても、侵入検知装置による検知信号を一時的にマスク(無
効化)した状態でウィンドウの開量が上記第1のウィンドウ開量となるまでウィンドウが閉じられる。すなわち、ウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量を超えるときに侵入検知装置により監視対象の車両内への侵入が検知された場合には、誤検知である蓋然性が高いとして上記検知信号をマスクしつつ侵入検知装置による侵入検知機能を保証し得る状態となるまでウィンドウの開量が自動調整される。これにより、侵入検知装置によって車両の内部への監視対象の侵入を検知する上で、同装置による誤検知及び上記警報装置による誤報が好適に抑制されるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両監視装置において、前記監視制御部は、前記侵入検知装置により車両内への監視対象の侵入が検知されてのち、前記取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量以下にあることを条件に前記警報装置による警報を能動とすることを要旨とする。
【0021】
車両のウィンドウの開量が上記第1のウィンドウ開量以下にある状態では、上述のように侵入検知装置による侵入検知機能にかかる信頼性が高いことから、車両のウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量以下にあるときに侵入検知装置により車両内への監視対象が検知された場合には、実際に車両内に監視対象が侵入した可能性が極めて高く、誤検知である可能性が極めて低い。このため、上記構成によれば、侵入検知装置により車両内への監視対象の侵入が検知されて、かつ、上記取得されたウィンドウの開量が第1のウィンドウ開量以下であることを条件に警報装置による警報が能動とされることにより、車両内に監視対象が侵入した可能性が極めて高い状況下での警報の発動が可能となる。これにより、上記車両監視対象としての監視対象に対する警報機能が好適に高められるようになる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両監視装置において、前記車両のウィンドウの開閉を制御するパワーウィンドウ制御部を備え、前記監視制御部は、前記パワーウィンドウ制御部との協働のもとに、前記ウィンドウの開量の取得、及び取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量を超えるときの前記ウィンドウを前記第1のウィンドウ開量となるまで閉じる制御を行うことを要旨とする。
【0023】
上記車両のウィンドウとしては、電気的にウィンドウが開閉駆動されるパワーウィンドウ機能を備えた車両が多い。そして、このようなパワーウィンドウ機能にあっては、ウィンドウの開量の調整が上記パワーウィンドウ制御部によって行われるのが通常である。このため、上記構成によれば、上記ウィンドウの開量の取得と上記ウィンドウを閉じる制御とが監視制御部とパワーウィンドウ制御部との協働のもとに行われることから、上記侵入検知装置の侵入検知機能を担保するためのウィンドウの開量調整をより望ましいかたちで実現することができるようになる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の車両監視装置において、前記車両のドアのロック/アンロックを制御するドア制御部を備え、前記監視制御部は、前記ドア制御部との協働のもとに前記車両のドアがロック操作されたことを検知することを要旨とする。
【0025】
上記ドアのロック/アンロックといったドア制御機能も近年は標準で備える車両が多い。この点、上記構成によるように、上記制御監視部と上記ドア制御部との協働のもとに車両のドアがロック操作されたことを検知することとすれば、車両のドアがロック操作されたことを条件に上述の監視動作を開始する上で、ドアのロック操作の的確な検出、ひいては、監視動作の開始を行うことができるようになる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両監視装置において、前記侵入検知装置は、前記車両の内部に設けられた赤外線センサ、音響センサ、光学セ
ンサ、電波センサ、及び画像センサの少なくとも一つを含むものであることを要旨とする。
【0027】
車両内に不審者等の監視対象が侵入した場合には、車両内の環境としての空間的な情報や物理量等が変化する。このため、上記構成によるように、赤外線センサ、音響センサ、光学センサ、電波センサ、及び画像センサの少なくとも一つを含んで上記侵入検知装置を構成することとすれば、こうした空間的な情報や物理量等の変化に基づき、不審者等の監視対象の車両内への侵入を的確に検知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる車両監視装置の第1の実施の形態について、その構成を示すブロック図。
【図2】ウィンドウの開量と車両内の環境の変化量との関係の一例を示すグラフ。
【図3】(a)及び(b)は、同装置のウィンドウの自動調整態様を示す図。
【図4】同実施の形態の車両の監視手順を示すフローチャート。
【図5】(a)は、同実施の形態の装置によるウィンドウの開量の推移例を示すタイミングチャート。(b)及び(c)は、車両内の環境の変化量の推移例を示すタイミングチャート。
【図6】本発明にかかる車両監視装置の第2の実施の形態について、その車両の監視手順を示すフローチャート。
【図7】(a)は、同実施の形態の装置によるウィンドウの開量の推移例を示すタイミングチャート。(b)及び(c)は、車両内の環境の変化量の推移例を示すタイミングチャート。
【図8】(a)は、同実施の形態の装置によるウィンドウの開量の推移例を示すタイミングチャート。(b)及び(c)は、車両内の環境の変化量の推移例を示すタイミングチャート。
【図9】車両監視装置が搭載される自動車を模式的に示す図。
【図10】従来の車両監視装置について、その構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかる車両監視装置の第1の実施の形態について図1〜図7を参照して説明する。この実施の形態の装置は、先の図9に例示したように、自動車に搭載されて、同自動車の盗難等を目的とした不審者等の監視対象の車両内への侵入を検知するとともに、同監視対象に対して警報を行う車両監視装置として構成されている。
【0030】
まず、図1に示されるように、この車両監視装置は、ユーザによる車両のウィンドウの開閉指令が与えられるウィンドウ開閉スイッチ110を備えている。このウィンドウ開閉スイッチ110の操作を通じて与えられたウィンドウの開閉指令は、車両のウィンドウの開閉を電気的に制御するパワーウィンドウ制御部120に取り込まれ、このパワーウィンドウ制御部120を通じて上記開閉指令に応じた車両のウィンドウ開閉制御が行われる。すなわち、パワーウィンドウ制御部120は、上記開閉指令に応じたウィンドウ制御量を求め、この求めた制御量に応じた駆動指令をウィンドウ駆動部130に与えることによりウィンドウ140の開閉を制御する周知の制御部(ECU)である。また、ウィンドウ駆動部130も、モータや回転センサ等によって構成されて上記車両のウィンドウ140の開閉駆動を行う周知の部分であり、図示しないモータに設けられた回転センサによりモニタされるモータの回転量情報がウィンドウ140の開閉量情報としてパワーウィンドウ制御部120にフィードバックされる。これにより、パワーウィンドウ制御部120では、ウィンドウ140の開量を制御しつつ、このフィードバックされる開閉量情報に基づきウィンドウ140のその都度の開量を認識できるようになる。なお、本実施の形態において、このパワーウィンドウ制御部120は、ウィンドウ駆動部130に加わる負荷に基づき
ウィンドウ140への人体や異物の挟み込みを検知してその開閉を安全側に制御する挟み込み防止機能を併せて備えているとする。
【0031】
また、この車両監視装置は、ユーザによる車両のドアのロック/アンロック指令が与えられるドアロック/アンロックスイッチ210を備えている。このドアロック/アンロックスイッチ210の操作を通じて与えられたロック/アンロック指令は、閉じられた車両ドアのロック/アンロックを制御するドア制御部220に取り込まれ、このドア制御部220を通じて上記ロック/アンロック指令に応じた車両ドアのロック/アンロック制御が行われる。すなわち、ドア制御部220も、上記ロック/アンロック指令に応じて対応する駆動指令をロック機構駆動部230に与えることによりドアロック機構240の施錠/解錠を制御する周知の制御部(ECU)である。なお通常、上記パワーウィンドウ制御部120とこのドア制御部220は、車載されたその他の制御部(ECU)と共に車載LANを介して接続されており、互いに情報の交換が可能となっている。
【0032】
一方、本実施の形態の車両監視装置は、これら各制御部120、220との協働のもとに停車中の車両内への不審者等の監視対象の侵入の有無を監視する監視制御部300を備えている。この監視制御部300には、車両内の環境として例えば車両内の異常音を検知する音響センサを備える侵入検知装置310が接続されており、この侵入検知装置310によって検知される車両内の音響の変化量が検知基準となる所定の変化量を超えることに基づいて車両内への監視対象の侵入が検知されると、その旨が検知信号として監視制御部300に取り込まれる。
【0033】
ここで、こうして検知信号が取り込まれる監視制御部300は、上記ウィンドウ140の開量として侵入検知装置310による車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得るウィンドウの開量である第1のウィンドウ開量(開量A)が記憶されたウィンドウ開量メモリ301を備えている。そして本実施の形態において、この第1のウィンドウ開量は、車両の外部環境の変化がウィンドウ140の開口を介して同車両の内部に取り込まれる環境の変化量、すなわち車両外部の音響を侵入検知装置310の上記検知基準となる所定の変化量未満とし得る最大限のウィンドウ開量に設定されている。また、この監視制御部300は、上記パワーウィンドウ制御部120によって取得(認識)されたウィンドウ140の開量と上記ウィンドウ開量メモリ301に記憶されている第1のウィンドウ開量(開量A)とを比較して監視の開始に伴うウィンドウ140の開量の適否を判定するウィンドウ開量判定部302を併せて備えている。なお、上記侵入検知装置310を通じて不審者等、監視対象の車内への侵入が検知された場合には、この監視制御部300による制御を通じて警報装置320が能動とされ、侵入者(監視対象)に対する警報が発せられる。
【0034】
次に、上記第1のウィンドウ開量(開量A)の設定態様について図2を参照して説明する。なお、この図2において、直線で示すLa〜Lcは、上記侵入検知装置310をそれぞれ音響センサ、赤外線センサ、電波センサによって構成したときのウィンドウ140の開量と各センサ毎に設定された検知基準との関係の一例を示しており、破線で示す直線Qは、各センサに設定された監視対象が侵入したときの検知基準の一例を示している。
【0035】
すなわち、図2に直線Laとして示すように、上記音響センサによって検出される車両内の音響の変化量Qは、ウィンドウ140の開口を介して車両外部の音響が車両内に取り込まれ易いことから、ウィンドウ140の開量の増加に伴って大きく増大する。そして、ウィンドウ140の開量が開量Xaを超えたときには、ウィンドウ140の開口を介して取り込まれる外部環境が上記検知基準Qを超えるようになり、車両内に監視対象が侵入していないにも拘わらず監視対象が車両内に侵入したとして誤検知される虞がある。このため、音響センサによる車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得るウィンドウ140の開量の範囲は、開量「0」〜開量Xaとなる。そこで本実施の形態では、この開量「0
」〜開量Xaのうちの最大限の開量Xaを、上記第1のウィンドウ開量(開量A)として設定する。
【0036】
また、赤外線センサによって検出される温度情報の変化量Qも、ウィンドウ140に開口が存在する場合には、この開口を介して車両外に存在する監視対象が検出されることによる影響が大きく、図2に直線Lbとして示すように、ウィンドウ140の開口を介して車両の内部に取り込まれる温度の変化量Qを上記検知基準Q未満とし得る最大限のウィンドウ140の開量は開量Xbとなる(通常、開量Xa<開量Xb)。
【0037】
また一方、電波センサの場合には、この電波センサによって検出される検出値は、ウィンドウ140の開口を介して車両の内部に取り込まれる環境の変化量Qの影響が低く、図2に直線Lcとして示すように、ウィンドウ140の開口を介して車両の内部に取り込まれる環境の変化量Qを上記検知基準Q未満とし得る最大限のウィンドウ140の開量は開量Xcとなる(通常、開量Xa<開量Xb<開量Xc)。
【0038】
このように、上記第1のウィンドウ開量とは、侵入検知装置310を構成するセンサの特性や感度に応じて個別に設定されることとなる。そこで、本実施の形態では、監視制御部300によるウィンドウ140の開量の自動調整にかかる必要性が高いセンサとして、上記音響センサを用いることとしている。
【0039】
次に、このような前提のもとに、上記監視制御部300とパワーウィンドウ制御部120との協働により行われるウィンドウ140を閉じる制御、すなわちウィンドウ140の開量の自動調整制御にかかる制御態様について、図3を参照して説明する。なお、図3(a)は、この車両監視装置による監視動作が開始される以前のウィンドウ140の状態を示しており、図3(b)は、同監視動作の開始に伴って上記ウィンドウ140を閉じる制御が行われた後のウィンドウ140の状態を示している。
【0040】
図3(a)に示すように、車両の停止後、換気や閉め忘れ等によりウィンドウ140の開量が例えば開量X1とされた状態でドアのロック操作が行われたとすると、車両内には、車両外の外部環境(ここでの例では音響)がウィンドウ140の開口を介して取り込まれることとなる。そして、このときのウィンドウ140の開量X1は、上記第1のウィンドウ開量である開量Aよりも大きいことから、ウィンドウ140の開口を介して取り込まれる外部環境が上記検知基準Qを超える虞がある。すなわち、車両内に不審者等の監視対象が侵入していないにも拘わらず上記侵入検知装置310により監視対象の侵入が誤検知され、この侵入検知装置310による検知信号に基づき上記警報装置320による警報(誤報)が行われる虞がある。そこで本実施の形態では、こうした侵入検知装置310による誤検知及び警報装置320による誤報を抑制すべく、以下の態様でウィンドウ140を自動的に閉じる制御が行われる。
【0041】
例えば、上述のように、ウィンドウ140の開量X1が第1のウィンドウ開量である開量Aを超えていると判定されると、ここでは図3(b)に示すように、ウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量である開量Aとなるまでウィンドウ140を閉じる制御が行われる。これにより、ウィンドウ140の開口を介して車両内に取り込まれる音響が上記検知基準Q未満とされ、たとえ車両外の音響がウィンドウ140の開口を介して車両内に取り込まれたとしても、侵入検知装置310による上述した誤検知が行われることはない。しかし、このようにウィンドウ140を閉じる制御が一旦行われたのちに車両内の音響の変化量Qが上記検知基準Qを超えた場合には、実際に監視対象が車両内に侵入したとして、侵入検知装置310から検知信号が出力されるとともに警報装置320による警報が監視対象(侵入者)に対して行われる。
【0042】
次に、これらの制御も含めて上記監視制御部300によって行われる車両の監視手順について、図4を参照して更に詳述する。
図4に示すように、この処理ではまず、ステップS101において、上記ドア制御部220からの情報をもとに停車中の車両のドアのロック操作がユーザにより行われたか否かが判断される。次いで、この判断結果に基づきドアのロック操作が行われたことを条件に監視動作が開始され、上記パワーウィンドウ制御部120からの情報をもとにウィンドウ140の開量Xが取得される(ステップS101:YES、S102)。こうして取得されたウィンドウ140の開量Xは、監視制御部300内の上記ウィンドウ開量判定部302を通じてウィンドウ開量メモリ301に記憶されている上記第1のウィンドウ開量である開量Aと比較される(ステップS103)。そしてこの比較の結果、図3(a)に示したように、ウィンドウ140の開量Xが上記開量Aを超えていると判断された場合には、ウィンドウ140の開口を介して取り込まれる外部環境が上記検知基準Qを超える虞があるとして、上述のようにウィンドウ140の開量Xが上記開量Aとなるまでウィンドウ140を閉じる制御が行われる(ステップS104)。なおこの制御は、上記パワーウィンドウ制御部120との協働のもとに行われる。一方、上記比較の結果、上記取得したウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量A以下であると判断された場合には、侵入検知装置310による侵入検知機能を保証し得る状態にあるとして、上記侵入検知装置310及び上記警報装置320が起動される(ステップS105)。こうして侵入検知装置310が起動されることで、車両内の環境(音響)の変化量Qの検出が開始される(ステップS106)。そして、この検出される変化量Qが上記検知基準Qを超えていることがあると、監視対象が車両内に侵入したとして、警報装置320による警報が能動とされ、監視対象(侵入者)に対する警告が行われる(ステップS107、S108)。
【0043】
図5は、こうした車両監視装置による不審者の監視態様をタイミングチャートとして示したものであり、以下、この図を併せ参照して、同装置による監視動作を総括する。なお、この図5において、図5(a)は、監視制御部300とパワーウィンドウ制御部120との協働のもとに制御されるウィンドウ140の開量の推移例を示している。また、図5(b)は、車両内に監視対象が侵入していないときの車両内の環境(音響)の変化量Qの推移例を示しており、図5(c)は、車両内に監視対象が侵入したときの車両内の環境(音響)の変化量Qの推移例を示している。
【0044】
この図5に示すように、タイミングt1において、ウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量である開量Aを超える開量X1とされた状態でユーザによるドアのロック操作が行われたとすると、このロック操作をトリガとして車両の監視動作が開始され、そのときのウィンドウ140の開量X1が監視制御部300により取得される(タイミングt2)。なお、この間の車両内の音響の変化量Qは、車両外部から車両内に取り込まれる音響が無視できない環境にあるとして、図5(b)及び(c)にそれぞれ示すように、監視対象の侵入の有無に拘わらず上記検知基準Qを超える値になっているとする(期間:t0−t2)。
【0045】
そして、上記取得されたウィンドウ140の開量X1を第1のウィンドウ開量である開量Aとすべく、上述したウィンドウ140を閉じる制御が行われることにより、図5(a)に示すように、ウィンドウ140の開量Xが上記開量となるまでウィンドウ140が閉じられる(期間:t2−t3)。これにより、車両内に監視対象が侵入していない場合には、車両内の音響の変化量Qは、図5(b)に示すように、ウィンドウ140の開量が開量X1から上記開量Aへと減少するにつれて次第に減少するようになる(期間:t2−t3)。そして、タイミングt3においてウィンドウ140の開量が上記開量Aとされることにより、この時点で侵入検知装置310が起動されて以降は、車両内の変化量Qが検知基準Q未満に維持されるようになる(タイミングt3〜)。
【0046】
一方、車両内に監視対象が侵入している場合には、図5(c)に示すように、車両内の音響は、監視対象の車両内での動きに起因して大きく変化することから、ウィンドウ140の開量によることなく、その変化量Qも検知基準Qを超える値となっている(期間:t2−t3)。そして、タイミングt3において上記侵入検知装置310が起動されることにより、車両内の音響の変化量Qが検知基準Qを超えた旨の検知信号がこの侵入検知装置310から監視制御部300に伝えられ、同監視制御部300を通じて上記警報装置320による警報が監視対象に実行されるようになる(タイミングt3〜)。
【0047】
なお、先の図4に示したフローチャートでは図示を割愛したが監視制御部300によるこうした監視動作は、例えばユーザによってドアがアンロック操作されることなどを条件として終了される。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両監視装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)車両の監視動作の開始に伴って取得されたウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量である開量Aを超えているときには、ウィンドウ140の開量がこの開量Aとなるまでウィンドウ140を閉じることとした。これにより、車両内部の換気や閉め忘れ等により車両のウィンドウ140が開放された状態で監視動作が開始されたとしても、このウィンドウ140の開量が侵入検知装置310による監視対象の検知を保証し得る開量まで自動的に調整されるようになる。これにより、侵入検知装置310による監視対象の侵入検知機能を好適に維持することができるようになり、ひいては、車両監視装置としての誤報の抑制と侵入検知機能の維持との好適な両立を実現することができるようになる。
【0049】
(2)第1のウィンドウ開量である開量Aを、車両の外部環境(音響)の変化がウィンドウ140の開口を介して同車両の内部に取り込まれる環境の変化量を侵入検知装置310の検知基準Q未満とし得る最大限のウィンドウ開量に設定することとした。このため、侵入検知装置310による侵入検知機能を担保しつつもウィンドウ140の開量の自動調整後の同ウィンドウ140の開量を最大限に確保することができるようになる。これにより、車両監視装置としての信頼性を好適に維持しつつ換気等のための必要十分なウィンドウ140の開量を確保することができるようになり、ひいては、車両監視装置としての実用性がより高められるようになる。
【0050】
(3)車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作を開始してウィンドウ140の開量を取得するとともに、この取得したウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量である開量A以下にあることを条件に侵入検知装置310及び警報装置320を起動することとした。このため、ユーザの不在時における監視動作を的確に開始することができるようになるとともに、ウィンドウ140の開量が侵入検知装置310による侵入検知機能を保証し得る開量に調整された状態で侵入検知装置310を起動させることができるようになる。これにより、侵入検知装置310の起動時における誤検知及び警報装置320による誤報を好適に抑制することができるようになる。
【0051】
(4)ウィンドウ140の開量の取得、及びウィンドウ140の開量の自動調整を、監視制御部300とパワーウィンドウ制御部120との協働のもとに行うこととした。これにより、ウィンドウ140の開量の取得、及びウィンドウ140の開量の自動調整を既存の装置を用いて実現することができるようになり、ひいては、上記車両監視装置としての実現も容易となる。
【0052】
(5)車両のドアがロック操作されたことを、監視制御部300とドア制御部220との協働のもとに検知することとした。これにより、車両のドアがロック操作されたことを条件に上述の監視動作を開始する上で、ドアのロック操作を的確に検出することができる
ようになり、ひいては、監視動作の的確な開始を行うことができるようになる。
【0053】
(6)車両内の環境の変化量として車両内の音響の変化量を採用するとともに、この音響の変化量を音響センサによって検出することとした。これにより、車両内に侵入した監視対象の動作に伴う音響の変化に基づき同監視対象の侵入を検知することができるようになる。また通常、車両内の環境としての音響は、ウィンドウ140の開口を介して外部の音響が取り込まれることによる影響が大きく、ウィンドウ140の開量の自動調整にかかる必要性も高い。この点、上記構成によれば、こうした音響センサの感度に基づき設定された第1のウィンドウ開量である開量Aに応じてウィンドウ140の開量が調整されることから、こうした音響センサの検出に基づく車両内への監視対象の侵入を高い信頼性のもとに検知することができるようになる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる車両監視装置の第2の実施の形態について図6〜図8を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、侵入検知装置310及び警報装置320を起動したのちに上記ウィンドウ140を閉じる制御を行うものであり、その基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。よって、それら各要素についての重複する説明は割愛する。
【0055】
図6は、先の図4に対応する図として、本実施の形態の監視制御部300によって行われる車両の監視手順を示したものである。
すなわち、図6に示すように、この監視処理でもまず、ステップS201において停車中の車両のドアのロック操作がユーザにより行われたか否かが判断される。次いで、こうした判断結果に基づきドアのロック操作が行われたことを条件に監視動作が開始され、ウィンドウ140の開量Xが取得される(ステップS202)。
【0056】
こうしてウィンドウ140の開量Xが取得されると、侵入検知装置310及び警報装置320が起動され(ステップS203)、この起動された侵入検知装置310によって車両内の音響の変化量Qが検出される(ステップS204)。そして、こうして検出された車両内の音響の変化量Qが上記検知基準Qと比較される(ステップS205)。この比較の結果、変化量Qが検知基準Qを超えていた場合には、監視対象を検知した旨の検知信号が侵入検知装置310から監視制御部300に入力されるとともに、ウィンドウ140の開量Xが侵入検知装置310による監視対象の侵入の検知を保証し得る開量にあるか否か、すなわち、上記取得されたウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量である開量A以下であるか否かが判定される(ステップS206)。
【0057】
こうした判定に基づき、上記取得されたウィンドウ140の開量Xが上記開量A以下であると判定されたときには、ウィンドウ140の開量Xが侵入検知装置310による監視対象の侵入検知機能を保証し得る開量であるにも拘わらず車両内の音響の変化量Qが上記検知基準Qを超えている、すなわち、実際に車両内に監視対象が侵入した可能性が高いとして警報装置320による警報が能動とされ、監視対象に対する警報が行われる(ステップS210)。
【0058】
一方、上記取得されたウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量である開量Aを超えていると判定されたときには、車両外の音響がウィンドウ140の開口を介して取り込まれることにより車両内の音響の変化量Qが上記検知基準Qを超えた可能性が高い、すなわち、侵入検知装置310による検知信号が誤った信号である可能性が高いとして同検知信号が一時的にマスク(無効化)される(ステップS207)。そして、侵入検知装置310による検知信号がマスクされた状態で、ウィンドウ140の開量が上記開量Aとなるまでウィンドウ140を閉じる制御が行われる(ステップS208)。
【0059】
こうして、ウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量である開量Aとされると、侵入検知装置310による検知信号のマスクが解除され(ステップS209)、車両内の音響の変化量Qの検出に基づく上記監視動作が継続して行われるようになる。そして、ウィンドウ140の開量が上記開量Aとされてもなお車両内の音響の変化量Qが上記検知基準Qを超えていると判定されたときには、実際に車両内に監視対象が侵入した可能性が高いとして警報装置320による警報が能動とされ、監視対象に対する警報が行われるようになる。一方、ウィンドウ140の開量が上記開量Aとされることにより、侵入検知装置310による検知信号が入力されなくなった場合には、侵入検知装置310による検知信号が誤検知であるとして警報装置320による警報を行うことなく監視制御部300による監視動作が継続して行われる。
【0060】
図7及び図8は、こうした車両監視装置による不審者の監視態様をタイミングチャートとして示したものであり、以下、この図を併せ参照して、同装置による監視動作を総括する。なお、図7は、本実施の形態において、ドアのロック操作が行われたときにウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量である開量Aを超えていたときの車両の監視態様を示しており、図8はドアのロック操作が行われたときにウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量である開量A以下であったときの車両の監視態様を示している。また、これら図7及び図8において、図7(a)及び図8(a)は、監視制御部300とパワーウィンドウ制御部120との協働のもとに制御されるウィンドウ140の開量の推移例を示している。また一方、図7(b)及び図8(b)は、車両内に監視対象が侵入していないときの車両内の環境(音響)の変化量Qの推移例を示しており、図7(c)及び図8(c)は、車両内に監視対象が侵入したときの車両内の環境(音響)の変化量Qの推移例を示している。
【0061】
まず、図7に示すように、タイミングt1において、ウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量である開量Aを超える開量X1とされた状態でユーザによるドアのロック操作が行われたとすると、このロック操作を条件に車両の監視動作が開始され、ウィンドウ140の開量Xが取得されるとともに、侵入検知装置310及び警報装置320が起動される(タイミングt2)。
【0062】
ここで、タイミングt3において、上記起動された侵入検知装置310により車両内の音響の変化量Qが取得され、この取得された変化量Qが上記検知基準Qを超えている旨が判断されると、侵入検知装置310による検知信号が監視制御部300に出力される。ただし本実施の形態では、こうして侵入検知装置310による検知信号が監視制御部300に入力されると、ウィンドウ140の開量Xが上記開量Aを超えているか否かが判定され、ウィンドウ140の開量Xが第1のウィンドウ開量Aを超えているとの判定に基づき、侵入検知装置310による検知信号がマスクされる(タイミングt3)。そして、ウィンドウ140の開量Xを上記開量Aまで閉じる制御が開始される(タイミングt4)。なお、ウィンドウ140の開量は、ユーザによるドアのロック操作が行われて以降、一定量に維持されている(期間:t1−t4)。また、この間における車両内の音響の変化量Qは、車両外部から車両内に取り込まれる音響が無視できない環境にあるとして、図7(b)及び(c)にそれぞれ示すように、監視対象の侵入の有無に拘わらず上記検知基準Qを超える値になっているとする(期間:t0−t4)。
【0063】
そして、ウィンドウ140の開量は、侵入検知装置310による検知信号がマスクされている間に上記ウィンドウ140を閉じる制御が行われることより、開量X1から上記開量Aへと推移する(期間:t4−t5)。
【0064】
これにより、車両内に監視対象が侵入していない場合には、車両内の音響の変化量Qは
、図7(b)に示すように、ウィンドウ140の開量が開量X1から開量Aへと減少するにつれて次第に減少するようになる(期間:t4−t5)。そして、ウィンドウ140の開量が上記第1のウィンドウ開量である開量Aとされることにより、タイミングt5において上記検知信号のマスクが解除されるものの、このときには車両内の変化量Qが検知基準Q未満に維持されていることから、侵入検知装置310から監視制御部300へ検知信号が出力されることもなくなる。こうして、監視制御部300による車両の監視動作が継続して行われるようになる(タイミングt5〜)。
【0065】
一方、車両内に監視対象が侵入している場合には、図7(c)に示すように、車両内の音響は、監視対象の車両内での動きに起因して大きく変化することから、ウィンドウ140の開量によることなく、その変化量Qも検知基準Qを超える値となっている。このため、タイミングt5において上記検知信号のマスクが解除されることにより、侵入検知装置310による検知信号が監視制御部300に入力され、警報装置320による警報が監視対象に対して行われるようになる。
【0066】
次に、図8に示すように、ドアのロック操作が行われたときにウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量A以下である開量X2であった場合には、まずタイミングt1において、ユーザによるドアのロック操作が行われたことを条件に車両の監視動作が開始され、ウィンドウ140の開量Xが取得されるとともに、侵入検知装置310及び警報装置320が起動される(タイミングt2)。なお、このときの車両内の音響の変化量Qは、ウィンドウ140の開量Xが上記開量A以下とされていることから、ウィンドウ140の開口を介して車両内に取り込まれる車両外部の音響も微小なものとなっている。
【0067】
こうして、タイミングt3において、上記起動された侵入検知装置310により車両内の音響の変化量Qが取得される。そして、図8(b)に示すように、この取得された変化量Qが上記検知基準Q未満である場合には、車両内に監視対象が侵入されていないとして監視制御部300による車両の監視動作が継続して行われるようになる。
【0068】
一方、図8(c)に示すように、上記取得された変化量Qが検知基準Qを超えている場合には、侵入検知装置310による検知信号が監視制御部300に出力される。こうして、侵入検知装置310による検知信号が監視制御部300に入力されると、ウィンドウ140の開量Xが上記開量Aを超えているか否かが判定される(タイミングt4)。そして、この判定されたウィンドウ140の開量Xが上記開量A以下であることから、侵入検知装置310による検知信号が車両内への監視対象の侵入を保証し得るものとして、すなわち、実際に車両内に監視対象が侵入されているとして、直ちに警報装置320による警報が監視対象に対して行われるようになる。
【0069】
なお、先の図6に示したフローチャートでは図示を割愛したが監視制御部300によるこうした監視動作は、例えばユーザによってドアがアンロック操作されることなどを条件として終了される。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両監視装置によれば、前記(1)、(2)、(4)〜(6)の効果が得られるとともに、前記(3)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0071】
(3A)車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作を開始してウィンドウ140の開量を取得し、侵入検知装置310及び警報装置320を起動することとした。そして、侵入検知装置310により車両内への監視対象の侵入が検知されてのち、上記取得したウィンドウ140が第1のウィンドウ開量を超えるときに侵入検知装置310による検知信号を一時的にマスクした状態でウィンドウ140の開量の自動調整を行うこととし
た。これにより、侵入検知装置310及び警報装置320の起動後において、ウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量Aを超えるときに侵入検知装置310による検知信号が監視制御部300に入力された場合には、誤検知である蓋然性が高いとして同検知信号をマスクしつつウィンドウ140の開量が侵入検知装置310による侵入検知機能を保証し得る状態となるまで自動調整される。これにより、侵入検知装置310によって車両の内部への監視対象の侵入を検知する上で、同装置310による誤検知及び警報装置320による誤報が好適に抑制されるようになる。
【0072】
(3B)警報装置320による警報を、侵入検知装置310により車両内への監視対象の侵入が検知されてのち、上記取得したウィンドウ140の開量が第1のウィンドウ開量A以下にあることを条件に能動とすることとした。これにより、車両内に監視対象が侵入した可能性が極めて高い状況下での警報の発動が可能となり、ひいては、上記車両監視対象としての監視対象に対する警報機能が好適に高められるようになる。
【0073】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記各実施の形態では、ウィンドウ140による人体や異物の挟み込みをウィンドウ駆動部130に加わる負荷等に基づき検知することとした。これに限らず、ウィンドウ140のフレーム等に異物や人体の存在を検知するセンサを設け、このセンサとパワーウィンドウ制御部120との協働により上記挟み込み防止機能を実現するようにしてもよい。この場合には、同センサによる異物や人体の検知を保証し得る範囲となるように、すなわち、挟み込み防止機能が有効に機能する範囲となるように、第1のウィンドウ開量及び上記侵入検知装置310を構成する音響センサの感度を設定することが望ましい。これにより、上記挟み込み防止機能を異物や人体の存在を検知するセンサを用いて実現する上でウィンドウ140の自動調整にかかる安全性も高められるようになる。
【0074】
・侵入検知装置310を上記音響センサによって構成し、車両の内部環境として車両内の音響を検出することとした。これに限らず、侵入検知装置310を光学センサ、赤外線センサ、電波センサ、及び画像センサの少なくとも一つによって構成し、それら各センサによって検出される車両内の環境の変化量に基づき監視対象の侵入を検知する構成としてもよい。また、この他、車両内への監視対象の侵入を車両の内部環境の変化に基づき検知可能なものであれば侵入検知装置310を構成することは可能である。
【0075】
・上記各実施の形態では、ドアのロック操作がされたことを条件に監視動作を開始することとした。これに限らず、監視動作は、例えば車両のエンジンの停止等を条件として開始されるものであってもよく、この他、ユーザが車両から降車する等、車両の監視が必要となる状況に至ることを条件に監視動作が開始される構成であればよい。
【0076】
・上記各実施の形態では、第1のウィンドウ開量である開量Aを、車両の外部環境の変化がウィンドウ140の開口を介して同車両の内部に取り込まれる環境の変化量を上記検知基準Q未満とし得る最大限のウィンドウ開量に設定されてなるウィンドウ開量として設定した。これに限らず、第1のウィンドウ開量とは、車両の外部環境の変化がウィンドウ140の開口を介して同車両の内部に取り込まれる環境の変化量を上記検知基準Q未満とし得る範囲内の開量であればよい。要は、第1のウィンドウ開量Aとは、侵入検知装置310による監視対象の車両内への侵入の検知を保証し得る開量であればよい。また、上記開量Aとは、第1のウィンドウ開量の余裕分を含んだ開量であってもよく、上記自動調整を通じて調整されるウィンドウ140の開量は、この余裕分の範囲内の開量であればよい。
【0077】
・上記各実施の形態では、車両のウィンドウの開閉を制御するパワーウィンドウ制御部
120を備える構成とし、このパワーウィンドウ制御部120と監視制御部300との協働のもとに、ウィンドウ140の開量の取得、及びウィンドウ140の自動調整を行うこととした。これに限らず、上記ドア制御部220として一つの制御部で車両のドア及びウィンドウ140を制御する構成としてもよい。
【0078】
・上記各実施の形態では、パワーウィンドウ制御部120、ドア制御部220、及び監視制御部300の協働のもとに上記車両監視装置を構成することとした。これに限らず、これら各制御部を一つによって制御装置として構成してもよい。また、車両ドアにユーザによるドアロック操作を検出するセンサを設け、このセンサの検出に基づきユーザによるドアロック操作を検知するようにしてもよい。
【0079】
・上記各実施の形態では、監視対象に警報を行う警報装置320を備える構成とした。これに限らず、この警報装置320を割愛し、上記侵入検知装置310による車両内への監視対象の侵入の検知に基づいて、その旨をユーザ等に報知する構成としてもよい。要は、侵入検知装置310により車両内の監視を行う構成であれば本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0080】
110…ウィンドウ開閉スイッチ、120…パワーウィンドウ制御部、130…ウィンドウ駆動部、140…ウィンドウ、210…ドアロック/アンロックスイッチ、220…ドア制御部、230…ロック機構駆動部、240…ドアロック機構、300…監視制御部、301…ウィンドウ開量メモリ、302…ウィンドウ開量判定部、310…侵入検知装置、320…警報装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停車中の車両の内部環境の変化に基づき車両内への監視対象の侵入を検知する侵入検知装置により車両内の監視を行う車両監視装置において、
前記車両のウィンドウの開量として前記侵入検知装置による車両内への監視対象の侵入の検知を保証し得るウィンドウの開量である第1のウィンドウ開量が記憶されたメモリを有し、監視動作の開始に伴って前記ウィンドウの開量を取得するとともに、この取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量を超えるとき、同ウィンドウの開量がこの第1のウィンドウ開量となるまでウィンドウを閉じる制御を行う監視制御部を備える
ことを特徴とする車両監視装置。
【請求項2】
前記車両監視装置は、監視対象に警報を行う警報装置を備え、前記侵入検知装置により監視対象の侵入が検知されることに基づいて警報装置を作動させる
請求項1に記載の車両監視装置。
【請求項3】
前記侵入検知装置は、前記停車中の車両の内部環境の変化量が監視対象侵入の検知基準となる所定の変化量を超えることに基づいて車両内への監視対象の侵入を検知するものであり、前記メモリに記憶された前記第1のウィンドウ開量は、前記車両の外部環境の変化が前記ウィンドウの開口を介して当該車両の内部に取り込まれる環境の変化量を前記侵入検知装置の検知基準となる所定の変化量未満とし得る最大限のウィンドウ開量に設定されてなる
請求項1または2に記載の車両監視装置。
【請求項4】
前記監視制御部は、前記車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作を開始して前記ウィンドウの開量を取得するとともに、該取得したウィンドウの開量が前記第1のウィンドウ開量以下にあることを条件に前記侵入検知装置を起動する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両監視装置。
【請求項5】
前記監視制御部は、前記車両のドアがロック操作されたことを条件に監視動作を開始して前記ウィンドウの開量を取得し、前記侵入検知装置及び前記警報装置を起動するとともに、前記侵入検知装置により車両内への監視対象の侵入が検知されてのち、前記取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量を超えるとき、前記侵入検知装置による検知信号を一時的にマスクした状態で前記ウィンドウの開量が前記第1のウィンドウ開量となるまで前記ウィンドウを閉じる制御を行う
請求項2または3に記載の車両監視装置。
【請求項6】
前記監視制御部は、前記侵入検知装置により車両内への監視対象の侵入が検知されてのち、前記取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量以下にあることを条件に前記警報装置による警報を能動とする
請求項5に記載の車両監視装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両監視装置において、
前記車両のウィンドウの開閉を制御するパワーウィンドウ制御部を備え、前記監視制御部は、前記パワーウィンドウ制御部との協働のもとに、前記ウィンドウの開量の取得、及び取得したウィンドウの開量が前記記憶された第1のウィンドウ開量を超えるときの前記ウィンドウを前記第1のウィンドウ開量となるまで閉じる制御を行う
ことを特徴とする車両監視装置。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の車両監視装置において、
前記車両のドアのロック/アンロックを制御するドア制御部を備え、前記監視制御部は、前記ドア制御部との協働のもとに前記車両のドアがロック操作されたことを検知する
ことを特徴とする車両監視装置。
【請求項9】
前記侵入検知装置は、前記車両の内部に設けられた赤外線センサ、音響センサ、光学センサ、電波センサ、及び画像センサの少なくとも一つを含むものである
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−103053(P2011−103053A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257475(P2009−257475)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】