説明

車両走行支援装置

【課題】自動車等の車両とこれに並んだ状態で移動する通行者との衝突の可能性を予測できるようにした車両走行支援装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載された広角レンズ付きのカメラ21A,21Bにより車両の両側面の歩道上の歩行者や自転車等の通行者を撮影する。この撮影画像に対し、画像処理部2により画像内に含まれる通行者が検出され、そのデータは第1の記憶部3に通行者データベースとして登録される。車速パルス発生器7による車速パルスにより車速が算出されて、右折・左折検知部9により車両の方向変更が検知される。演算部10は、第1,第2の記憶部3,11のデータベース及び右折・左折検知部9の出力に基づいて通行者と車両との衝突の可能性を判定する。この結果に基づいて警報部13は、ブザー14、ディスプレー15、振動発生部16を駆動して衝突の可能性を示す警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車搭乗者、歩行者等の通行者と自動車等の車両との衝突の可能性を予測するための車両走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通事故防止を電子技術により支援することが考えられている。例えば、自動車にカメラ及びレーザ検知機を搭載し、カメラで歩行者、他の車両等の移動体を撮影すると共にレーザ等で移動体までの距離を測定し、撮影画像及び測定距離に基づいて移動体の距離、方向、相対速度を算出し、この結果から所定の表示、自車の制御(減速、制動等)、運転者への警報等を行えるようにした自動車走行支援装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−16099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の自動車走行支援装置によると、自動車と、その前方(車両進行方向)に存在する歩行者や走行車両との相対速度を測るものであるため、自動車と並んだ状態で移動する人や自転車搭乗者等の通行者を対象にすることができず、例えば、通行者が自動車(車両)の直前の交差点を渡る可能性があっても衝突予測を行うことは困難である。
【0004】
従って、本発明の目的は、自動車等の車両とこれに並んだ状態で移動する通行者との衝突の可能性を予測できるようにした車両走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の車両走行支援装置を提供する。
[1]車両に搭載されて前記車両の側面方向を撮影するカメラと、前記カメラによる撮影画像に含まれる通行者を検出する画像処理部と、前記画像処理部により検出された通行者のデータ、及び前記車両の車速を車速履歴データベースとして格納する記憶部と、前記車両の進行方向の変更を検知する右折・左折検知部と、前記通行者のデータ、前記車速履歴データベース及び前記右折・左折検知部による前記進行方向の変更の情報に基づいて前記通行者と前記車両との衝突の可能性を判定する演算部と、を備えたことを特徴とする車両走行支援装置。
【0006】
[2]前記画像処理部は、予め準備したテンプレートと前記通行者の画像のパターンとのマッチングの有無により前記通行者を検出することを特徴とする前記[1]に記載の車両走行支援装置。
【0007】
[3]前記演算部は、前記衝突の可能性を判定したときに警報を発する警報手段が接続されていることを特徴とする前記[1]に記載の車両走行支援装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両走行支援装置によれば、自動車等の車両とこれと同一方向に移動する通行者との衝突の可能性を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両走行支援装置を示すブロック図である。
【0010】
(車両走行支援装置の構成)
車両走行支援装置100は、自動車等の図示しない車両(自車)の左右の側面方向を撮影するカメラ部1と、カメラ部1からの映像を処理して該映像から人物等の通行者を検出する画像処理部2と、画像処理部2からの画像を通行者データベースに格納する第1の記憶部3と、第1の記憶部3に格納された通行者データベースを管理するデータベースコントローラ4と、ハンドルの回転の度合い(回転角、回転量等)を検出するハンドル切れ角検出器5と、車両が曲がる方向を示す方向指示器6と、車両速度に応じたパルス信号を出力する車速パルス発生器7と、地図やメッセージで車両走行をガイドするナビゲータ部8と、車両が右折または左折しようとしていることを判定する右折・左折検知部9と、第1の記憶部3のデータベースに基づいて図示しない通行者(自転車搭乗者、歩行者等)との衝突の危険性の有無を判定する演算部10と、第2の記憶部11と、第2の記憶部11に格納されたデータベースを管理するデータベースコントローラ12と、車両の乗員に衝突の危険性を警報音、音声、表示画像、文字メッセージ等により警報するための駆動信号を出力する警報部13と、警報部13からの駆動信号により駆動されるブザー14、ディスプレー15及び振動発生部16と、を備えて構成されている。更に、音声メッセージによる注意を通行者等に対して行えるように、スピーカ及び音声増幅器を警報部13に接続した構成にすることもできる。
【0011】
(カメラ部1の構成)
カメラ部1は、車両の進行方向右側を視野範囲(例えば、車両右側面のほぼ全域)とするカメラ21A、車両の進行方向左側を視野範囲(例えば、車両左側面のほぼ全域)とするカメラ21B、カメラ21Aの視野範囲24にある被写体を赤外光により照明する赤外線ランプ22Aと、カメラ21Bの視野範囲24にある被写体を赤外光により照明する赤外線ランプ22Bと、カメラ部1の全体を制御するカメラコントローラ23と、を備えて構成されている。
【0012】
カメラ21A,21Bは同一仕様であり、例えば、撮像素子にCCDを用い、レンズに広角レンズを用いると共に、防湿、防滴、耐熱牲を有するように構成されている。その取り付け場所は、例えば、アウターミラー(ドアミラー)やドアの上部等である。
【0013】
なお、カメラ部1は、車両左右を視野範囲とするカメラ21A,21Bのほか、車両前方を視野範囲とする力メラを設置し、この前方撮影用のカメラをカメラ21A,21Bに組み合わせる構成も可能である。
【0014】
赤外線ランプ22A,22Bは、その投光範囲がカメラの視野範囲とほぼ同一であり、投光範囲と視野範囲が重なるようにして、カメラ21A,21Bの近傍に取り付けられている。なお、赤外線ランプ22A,22Bは、投光範囲が視野範囲に重なる配置が得られればよく、このような条件が満たされるなら、カメラ21A,21Bから離れた場所に設置されていてもよい。
【0015】
カメラコントローラ23は、照度センサ、ヘッドライト(いずれも図示せず)のスイッチオン等の情報に基づいて夜間状態を判定し、夜間状態の判定時には赤外線ランプ22A,22Bを自動点灯すると共に、その発光タイミング、発光光量等を制御する機能と、カメラ21A,21Bを所定のタイミングで撮像動作させ、その撮影画像を取り込み、画像処理部2へ出力する機能とを備えている。更に、カメラコントローラ23は、前方撮影用のカメラを備えた構成においては、カメラ21A,21Bの映像に合成(例えば、側面画像に前方画面を連結)し、これを画像処理部2へ映像を出力する機能を備えている。
【0016】
(画像処理部2の構成)
画像処理部2は、カメラ部1からの映像を処理し、その処理結果を第1の記憶部3に格納させる画像処理回路を有している。更に詳しく説明すると、画像処理部2は、歩行者や自転車に乗った通行者の様々なポーズのテンプレートを、パターンマッチングにより通行者を検出するために有すると共に、車道側から見たときにガードレールや花壇等で歩行者の下半身が隠れる場合があるため、上半身のみのテンプレートも備えている。
【0017】
(第1の記憶部3の構成)
第1の記憶部3は、画像処理部2からのデータを登録するリレーショナルデータベースを有し、例えば、ハードディスク装置を用いて構成されている。また、第1の記憶部3は、同一のラベル番号を持つデータが複数存在した場合、検出時刻が新しいもののみを残し、それ以外のデータは破棄するように構成されている。
【0018】
(その他の構成)
データベースコントローラ4は、第1の記憶部3におけるデータベースにおいて、ラベル番号が重複したデータの処理、及び不要データの破棄の処理を実行するように構成されている。
【0019】
ナビゲータ部8は、現在位置の周辺を地図で表示し、目的地への進行状況に応じてガイドメッセージを表示及び音声により行う機能を備えている。
【0020】
右折・左折検知部9は、ハンドル切れ角検出器5、方向指示器6、車速パルス検出器7及びナビゲータ部8の各出力に基づいて、車両が方向変更、すなわち、右折しようとしているのか左折しようとしているのかを判定する機能を備えている。また、右折・左折検知部9は、右折及び左折に対する複数のパターンについて検出できるように、予め複数のパターンが登録されたメモリ(図示せず)を備えている。
【0021】
演算部10は、CPU等の演算手段を備えて構成され、通行者との衝突の危険性を判定して警報部13へ警報を出す機能、通行者の現在の位置を算出する機能、登録時刻から現在時刻までに自車両が走行した距離を算出する機能、車速パルス発生器7からの車速パルスに基づいて車速を算出する機能等を備えている。
【0022】
第2の記憶部11は、例えば、ハードディスク装置を用いて構成された車速履歴データベースを有し、車速履歴データベースに演算部10で算出した車速データが書き込まれる。
【0023】
データベースコントローラ12は、第2の記憶部11における車速履歴データベースに対し、不要データを破棄する等の処理を実行するように構成されている。
【0024】
警報部13は、演算部10からの警報出力に基づいて、ブザー14、ナビゲータ部8のディスプレー15、振動発生部16を駆動する回路を備えている。警報部13、ブザー14、ナビゲータ部8のディスプレー15及び振動発生部16は、警報手段を構成している。なお、上記各種の警報は、衝突の警報ではなく、道路横断者がいる可能性に対して「十分注意せよ」という注意喚起の目的でなされるものである。
【0025】
[車両走行支援装置100の動作]
図2Aは歩道通行者検出処理フローチャート、図2Bは衝突危険性判断処理フローチャート、図3は、車両及び通行者の移動を説明する模式図、図4は、カメラによる通行者の撮影画像の模式図、図5は、検出した通行者に対する検出枠(テンプレート)と検出点の設定を示す説明図、図6は、画像内座標系から車両座標系への座標変換を示す説明図である。以下に、図1〜図6を参照し、車両走行支援装置100の動作を説明する。
【0026】
ここでは、図3(a),(b)に示すように、車両30は車道31を走行し、車両30に並ぶようにして、歩道32上に歩行者33及び自転車34に乗った人が通行者として存在し、車両30の前方には交差点35が存在するものとする。また、歩行者33及び自転車34は、車両30に搭載されたカメラ21Bの視野範囲24内に存在している。
【0027】
(歩道通行者検出処理)
図2Aに示す歩道通行者検出処理フローチャートに従い、以下説明する。この処理フローは、車両走行中は常に動作状態となっており、所定のインターバルで繰返し動作を行なうので、以下では1回の歩道通行者検出処理について説明する。車両走行支援装置100が起動しているとき、カメラコントローラ23は、カメラ21A,21Bに所定時間間隔で撮影を行わせる(図2、S201)。また、カメラコントローラ23は、夜間であることが検知された場合には、カメラ21A,21Bの撮影タイミングで赤外線ランプ22A,22Bを点灯させる。
【0028】
カメラ21A,21Bによる撮影画像は、カメラコントローラ23に取り込まれた後、画像処理部2へ出力され、画像処理部2のメモリに登録される。
【0029】
(画像処理部2の動作)
画像処理部2は、例えば、図4(a)に示すように、カメラ部1からの入力画像40に対し、時間tにおけるパターンマッチングの手法によって歩道側の通行者(歩行者33、自転車34+搭乗者36)を検出し、通行者ごとにラベルを付与する。画像処理部2は、入力画像40が、t,t,・・・というタイミングで連続的にカメラ部1から入力されてくるため、通行者の検出を逐次実行し、複数の通行者をそれぞれ追跡処理する。
【0030】
画像処理部2は、歩行者33、自転車34を検出した後、図5(a)に示す検出枠(当てはめたテンプレートの枠)41に対し、自転車34に対する全身テンプレートがマッチした場合、図5(b)に示すように、検出枠41の下辺の中間点を検出点42とする検出点座標を算出する(S202)。
【0031】
歩道通行者検出を検出したかを判断し、検出した場合はステップ204(S204)に進み、検出しない場合は処理を終了する(S203)。
【0032】
画像処理部2は、図5(c)に示すように、例えば、自転車34に対しては、自転車34の搭乗者36に対する上半身テンプレートがマッチした場合、図5(d)に示すように、検出枠41の重心と検出枠41の下辺の中点を結んだ直線を延長した点を検出点42に設定する。延長する長さは、テンプレートを作成した際に、予めテンプレートサイズの何倍かを決めておき、テンプレートを当てはめた後の枠サイズに合わせて計算する。こうして得られた検出点は、以下に述べる座標変換の座標に用いられる。
【0033】
次に、画像処理部2は、図6(a)に示す検出点座標(画像内座標系60)を、図6(b)に示す実際の座標(車両座標系61)に変換する(S204)。この座標変換は、例えば、カメラ21Bで車両30の側面方向を写した場合の実際の位置と、入力画像40上の位置との関係を予め測定して作成した変換テーブルを参照して実施する。こうして得られた車両座標系61は、ディスプレー15への表示に用いる。
【0034】
次に、座標変換の計算例を説明する。まず、図4(a)に示す時刻tで検出した自転車34(ラベル「000」とする)について、画像内座標(x,y)を車両座標(X,Y)に変換する。時刻tから少し時間が経過した時刻tの画像から、自転車34(ラベル「000」)の車両座標(X,Y)を同様に検出する。ここで知りたいのは、車両30と同じ方向に向かう自転車34の速度である。そこで、ラベル「000」の自転車の速度v000を次式で算出する。
【数1】

【0035】
ここで、Vcは車速、(X−X)は図4に示す自転車34の移動距離(x−x)を車両座標に変換したもの、(t−t)は自転車34の移動時間である。
【0036】
画像処理部2は、この段階で、ラベル「000」の通行者(自転車34及び搭乗者35)の速度、検出時刻(t)、車両に対する位置関係(左右)の情報の書き込みを第1の記憶部3に行い、「通行者データベース」を作成する(S205)。なお、速度が閾値を下回っている場合、画像処理部2は、第1の記憶部3への書き込みは行わない。また、閾値の設定は、例えば時速5km以下等とし、第1の記憶部3に不要なデータが増えるのを防止する。
【0037】
(第1の記憶部3への登録処理)
例えば、渋滞時などのため、車両30が自転車34を一度追い越した後、車両30が自転車34に追い越されるような場面がある。この場合、自転車34はラベル「000」と同一の自転車であるのだが、自転車34に対して別のラベル番号(例えば、ラベル「001」)を付与し、新規にデータを登録する。自転車34が入力画像40の検出枠41から一旦外れてしまうと、画像処理部2は同一の自転車なのか否かを判断できないが、同一であることを同定する必要がないため、問題はない。
【0038】
第1の記憶部3に登録されたデータベースは、データベースコントローラ4によって管理され、ラベル番号が重複したデータや不要データが破棄される。例えば、同一のラベル番号を持つデータが複数存在した場合、検出時刻が新しいもののみを残し、それ以外のデータは破棄する。
【0039】
破棄対象になるデータは、2種類有り、1つは、速度が閾値(例えば、時速1km)以下で、かつ記録時間が古い(例えば、現在より20秒以上前)データである。他の1つは、十分に古い(例えば、現在より60秒以上前)データである。例えば、60秒以上前に検出した通行者は、交差点を渡り終わっているか、他の方向へ行った可能性が高く、交差点で衝突する可能性は極めて低いので、破棄しても問題はない。また、車両30が交差点35を曲がった後に破棄してもよい。
【0040】
以上説明したように、図2Aに示す歩道通行者検出処理は、S201〜S205のステップを所定のインターバルで車両走行中は常に動作し、第1の記憶部3へ歩道通行者に関するデータを登録、更新し、また破棄の処理を行なっている。
【0041】
(衝突危険性判断処理)
図2Bに示す衝突危険性判断処理フローチャートに従い、以下説明する。この処理フローは、右折または左折検知を行なった場合に動作する処理フローである。
【0042】
(右折・左折検知)
右折・左折検知部9は、ハンドル切れ角検出器5によるハンドル切れ角、方向指示器6による指示情報、車速パルス発生器7による車速パルス、及びナビゲータ部8によるナビ案内指示の複数または全部の出力に基づいて、車両30が右折しようとしているか、左折しようとしているかを検知する。例えば、交差点35(図3参照)において、車両30が、運転者により方向指示器6が左折方向に操作され、車速パルスが一定値以下で、かつハンドルを切り始めたところで右折・左折検知部9は左折を検出する。この右折・左折検知情報は、右折・左折検知部9から演算部10に送られる。
【0043】
(演算部10の処理)
演算部10は、車速パルス発生器7により検出された車速パルスに基づいて車両30の車速vを算出し、これを車速履歴データベースとして第2の記憶部11に登録する。車速履歴データベースの記録方法として、測定時刻とその瞬間の車速vを記録する方法、記録する時間間隔を一定にして、その間に自車両(車両30)が移動した距離Lを記録する方法等がある。また、第2の記憶部11においても、一定時間以前(例えば、現在より60秒以上前)のデータがデータベースコントローラ12によって破棄される。尚、この車速履歴データベースの作成および第2の記憶部11への登録、更新および破棄は、所定のインターバルで車両走行中は常に動作している。
【0044】
演算部10は、右折・左折検知部9から右折・左折検知情報を受け取った後、第2の記憶部11の車速履歴データベース及び第1の記憶部3の通行者データベースに基づいて歩道通行者データ(1レコード)を取り込み(S206)、交差点35における通行者と車両30の衝突の危険性の有無の判定ステップへ進む。
【0045】
演算部10は、通行者データベースにある通行者データを登録時刻が新しい物から順に衝突の危険性の有無の判定を行う。登録時刻と現在時刻の差を求め、通行者の速度を掛けて通行者の現在位置を算出する。また、車速履歴データベースに基づいて、登録時刻から現在時刻までに車両30が走行した距雛を算出する。この2つの距離の差が閾値以下の場合、衝突の可能性が有ると判断する(S207)。衝突の可能性がない場合は処理対象を終了するが、可能性が有ると判断された場合は警報出力処理へ進む。
【0046】
例えば、車両30の右折・左折が検出され、自転車34が速度v000により交差点35に到達する距離L000と車両30がT時点から速度Vにより交差点35に到達する距離Lとが、所定時間内にL000=LまたはL000≧Lの状態にあるとき、車両30と自転車34が衝突する可能性があると判定する。演算部10は、衝突の危険性有りを判定した場合(S209:有り)、警報部13へ警報出力命令を出力する(S208)。なお、閾値に余裕を持たせることで、衝突警報ではなく、「注意して通過せよ」という段階の警報を出すことも可能である。
【0047】
(警報処理)
警報部13は、演算部10からの警報出力命令により警報を出力する(S208)。具体的には、ブザー14を鳴らす、ナビゲータ部8のディスプレー15に対して警報を表示する、振動発生部16を駆動してシートベルト(図示せず)を振動させる等の駆動を実行し、運転者に注意喚起を促す。更に、車両30が歩道向けのスピーカを備える場合、道路横断者に対して音声で車両の接近を警報する。
【0048】
演算部10は、その後、新しい通行者の検知データが有る場合、そのデータに対する衝突の危険性の有無を判定する処理を実行する。ついで、処理対象が残っているか否かを判定し(S209)、残りが有ればステップS207へ処理を移行し、処理対象が無い場合には処理を終了する。
【0049】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)第1の記憶部3の通行者データベース及び第2の記憶部11の車速履歴データベースに基づいて、演算部10により自車(車両30)と並んだ状態で移動する歩行者33、自転車34等の通行者との衝突の可能性を予測することができる。
【0050】
(2)演算部10による衝突防止の予測結果に基づいて、交差点35の横断歩道を通過する前に通行者との衝突の可能性について警報部13により警報を出せるため、運転者がより慎重に安全確認を励行するように促すことができる。特に、右折・左折時は、安全確認以外の運転動作の負荷が大きいため、安全確認支援の効果が期待できる。
【0051】
(3)カメラ部1は、赤外線ランプ22A,22Bを備えているため、夜間、歩道が暗くて歩行者33や自転車34を視認することが難しい場合でも、カメラ21A,21Bによる撮影が可能になると共に、可視光ではないので、他車の運転者の運転に障害を及ぼすのを防止することができる。
【0052】
(4)画像処理部2は、同時に複数の通行者の計測が可能であるため、複数の自転車や歩行者が混在していても、それぞれについて衝突の危険性の有無の判定及び警報を行うことができる。
【0053】
(5)カメラ部1で撮影し、画像処理部2で処理した通行者の画像は、ディスプレイー15に表示されるため、通行者との関係を視覚により認識することができる。
【0054】
(6)画像処理部2は、同時に複数の通行者の計測が可能であるため、複数の自転車や歩行者が混在していても、それぞれについて衝突の危険性の有無の判定し、及び警報を行うことができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両走行支援装置を示すブロック図、図8は、図7の車両走行支援装置を示すフローチャートである。
【0056】
本実施の形態は、第1の実施の形態において、演算部10に車両に搭載された各種の機器やエンジン(図示せず)を制御するECU(電子制御ユニット)18を接続すると共に、ECU18にエンジンの絞り弁(図示せず)を制御する絞り弁制御部19を接続したものであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0057】
図8の処理は、図2Bの処理において、ステップS208とステップS209の間に車速制御を行うステップS801を設けたものである。第1の実施の形態で説明したステップS201〜S208の処理が終了すると、演算部10はECU18へ制御信号を送出する。演算部10は、演算部10からの制御信号に基づいて絞り弁制御部19を動作させる。絞り弁制御部19は、絞り弁を絞る方向に駆動してエンジン回転数を下げ(S801)、車両が高速に走り出すのを防止する。
【0058】
ついで、演算部10は、処理対象が残っているか否かを判定し(S209)、新しい通行者の検知データが有る場合、そのデータに対する衝突の危険性の有無を判定する処理を実行する(S209)。処理対象が無い場合には処理を終了する。
【0059】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、エンジン回転数を下げる制御がECU18及び絞り弁制御部19が行えることで車速の制御が行えるため、第1の実施の形態の効果に加え、運転者が警報を聞きのがし或いは無視した場合でも、確実に衝突防止を図ることができる。
【0060】
なお、第2の実施の形態において、絞り弁の制御に代えてブレーキを制御する構成にすることも、車速制御とブレーキ制御の両方を行う構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両走行支援装置を示すブロック図である。
【図2A】図2Aは、歩道通行者検出処理フローチャートである。
【図2B】図2Bは、衝突危険性判断処理フローチャートである。
【図3】図3は、車両及び通行者の移動を説明する模式図である。
【図4】図4は、カメラによる通行者の撮影画像の模式図である。
【図5】図5は、検出した通行者に対する検出枠(テンプレート)と検出点の設定を示す説明図である。
【図6】図6は、画像内座標系から車両座標系への座標変換を示す説明図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両走行支援装置を示すブロック図である。
【図8】図8は、図7の車両走行支援装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 カメラ部
2 画像処理部
3 第1の記憶部
4 データベースコントローラ
5 ハンドル切れ角検出器
6 方向指示器
7 車速パルス発生器
8 ナビゲータ部
9 右折・左折検知部
10 演算部
11 第2の記憶部
12 データベースコントローラ
13 警報部
14 ブザー
15 ディスプレー
16 振動発生部
18 ECU(電子制御ユニット)
19 絞り弁制御部
21A,21B カメラ
22A,22B 赤外線ランプ
23 カメラコントローラ
24 視野範囲
30 車両
31 車道
32 歩道
33 歩行者
34 自転車
35 交差点
36 搭乗者
40 入力画像
41 検出枠
42 検出点
60 画像内座標系
61 車両座標系
100 車両走行支援装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて前記車両の側面方向を撮影するカメラと、
前記カメラによる撮影画像に含まれる通行者を検出する画像処理部と、
前記画像処理部により検出された通行者のデータ、及び前記車両の車速を車速履歴データベースとして格納する記憶部と、
前記車両の右折・左折検知部と、
前記通行者のデータ、前記車速履歴データベース及び前記右折・左折検知部による情報に基づいて前記通行者と前記車両との衝突の可能性を判定する演算部と、
を備えたことを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、予め準備したテンプレートと前記通行者の画像のパターンとのマッチングの有無により前記通行者を検出することを特徴とする請求項1に記載の車両走行支援装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記衝突の可能性を判定したときに警報を発する警報手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両走行支援装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−122917(P2009−122917A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295598(P2007−295598)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】