説明

車両間充電システム

【課題】車両がバッテリ不足となった場合、課金を考慮した電力供給を他車から受けることができる車両間充電システムを提供する。
【解決手段】充電車両301と被充電車両201のそれぞれの識別情報と認証情報を取得する車両間充電装置101と、取得された各車両の識別情報と認証情報を用いて認証を行う管理サーバ701とを備え、車両間充電装置101は、認証結果に基づいて充電車両301から被充電車両201への充電を行う車両間充電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ充電に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリンエンジン自動車間相互のバッテリ充電は行われているが、ガソリンエンジン自動車のバッテリの位置付けはあくまで補助的なものであるため、通常は充電する側の好意により、無料で充電が行われる。
【0003】
また近年、自動車に電池を搭載し、電力を動力源とした電気自動車や、電力とガソリンとの2つを動力源としたハイブリッド自動車が製造、販売されている。
【0004】
また関連のある技術として、以下の文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−302147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車の普及に当たり、バッテリ充電そのものがガソリンに代わる燃料補給となるため、バッテリ電力そのものが課金の対象となり得る。
【0007】
本発明は、電気自動車がバッテリ不足となった際に、近くを通りかかった車両等から容易に電力の供給を受けることで、充電ステーションまたは自宅までの自走を可能とし、同時に自動的に充電、被充電車両所有者間での課金を実施することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の形態に係る車両間充電システムは、電力を供給する車両である充電車両と電力が供給される車両である被充電車両のそれぞれの識別情報と認証情報を取得する取得部と、取得部によって取得された各車両の識別情報と認証情報を用いて認証を行う認証部と、認証部による認証結果に基づいて充電車両から被充電車両への充電を行う充電制御部とを備える。
【0009】
また、取得部は、充電制御部に接続された携帯端末装置であり、認証部からの認証結果を取得し、認証結果が良である場合に充電制御部に充電開始の指示を送信することを特徴とする。この構成により、認証部との送受信機能を従前の携帯端末装置を用いて行うことができるため、システムの製造費用を抑え、また携帯性を向上させることができる。
【0010】
また、取得部は、さらに、充電車両から被充電車両への充電量を取得し、充電制御部は、さらに、充電車両から被充電車両への充電量が取得部によって取得された充電量となるように制御し、認証部は、さらに、取得部によって取得された充電量に基づき被充電車両の所有者へ課金を行うことを特徴とする。この構成により、課金が自動的且つ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
車両が電力不足となった場合、課金を考慮した電力供給を手軽に他車から受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る車両間充電システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る車両間充電装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態の車両間充電システムの構成例を図1に示す。車両間充電システム1は、車両間充電装置101(取得部、充電制御部)、無線基地局401、交換機501、IP網601、管理サーバ701(認証部)を有し、充電する側である充電車両301と、充電される側である被充電車両201との間での電力供給の制御を行う。充電車両301と被充電車両201とは電気自動車とする。
【0014】
車両間充電装置101は、被充電車両201、充電車両301のそれぞれと接続され、管理サーバ701からの指示(後述する認証結果)を受けることで、充電車両301から被充電車両201への電力供給を制御する機器である。また、車両間充電装置101はアンテナ111を有し、無線基地局401との間で無線通信を行うことで、データの送受信を行う。無線通信手段の例として、本実施の形態では携帯電話ネットワークが用いられる。
【0015】
無線基地局401は、携帯電話ネットワークを介して車両間充電装置101との間でデータを送受信する装置である。交換機501は、無線基地局401から送信されたデータをインターネットプロトコル通信に変換し、また管理サーバ701からIP網601を介して受信したデータを無線基地局401が取得可能なプロトコルに変換する。IP網601は、有線または無線のIP(Internet Protocol)ベースのネットワークである。
【0016】
管理サーバ701は、少なくともデータベース702、決済処理部703を有する。データベース702には、車両の識別情報と、認証情報(例えばパスワード)とを対応付けた「識別情報テーブル」が構成され、また充電を行った実施日時、充電車両の識別情報、被充電車両の識別情報、充電した量である充電量とを対応付けた「充電実施テーブル」が構成されている。
【0017】
またデータベース702には、車両の識別情報とその車両の所有者の個人情報(住所、氏名、連絡先電話番号等)、および決済方法が対応付けられた「個人情報テーブル」や、所定充電量と価格とが対応付けられた「料金体系テーブル」が構成されている。尚、識別情報テーブル、個人情報テーブル、料金体系テーブルは事前に登録されており、充電実施テーブルは充電の行為が行われた場合に登録される。
【0018】
決済処理部703は、個人情報テーブルに保持されている情報に基づき、充電車両、被充電車両の識別情報から該当する所有者をそれぞれ特定し、また料金体系テーブルに基づき充電量から料金を算出する。決済処理部703は、予め定義された各所有者の支払い方法並びに受け取り方法にて、算出された料金で決済を行う。決済機能については、従前の決済システムが有する機能であるものとする。
【0019】
車両間充電装置101の内部構成例を図2に示す。車両間充電装置101は、被充電車両検知部102、充電車両検知部103、スイッチ部104、電力計測部105、制御部106、入力部107、表示部108、無線通信部109、RAM110、アンテナ111を有する。
【0020】
被充電車両検知部102は被充電車両201の接続を検知し、充電車両検知部103は、充電車両301の接続を検知する。スイッチ部104は、制御部106の制御に基づき、充電車両301から被充電車両201への電力供給のON、OFFを切替える。電力計測部105は、充電車両301から被充電車両201への充電量を計測する装置であり、計測値を逐次制御部106に送信する。被充電車両検知部102、充電車両検知部103、スイッチ部104、電力計測部105は、電力線で接続された構成であり、また本実施の形態では、この電力線を通信回線としても利用する(電力線通信)。
【0021】
制御部106は、車両間充電装置101の各ユニットを制御するCPU(Central Processing Unit)であり、制御内容の詳細については以下の作用例で説明する。入力部107は、所有者によるデータ入力を受け付けるキーボードであり、表示部108は、所有者へ情報を表示するディスプレイである。RAM110は、各データを記憶する記憶装置であり、無線通信部109は、各データを管理サーバ701との間で送受信するためのインターフェイスである。
【0022】
次に、車両間充電システム1の作用例を説明する。
【0023】
車両間充電装置101は、被充電車両201および充電車両301と接続される。このとき、被充電車両検知部102及び充電車両検知部103は、各々の車両との接続を検知し、電力線通信により各車両の識別情報が制御部106に送られる。本実施の形態では、この識別情報は充電車両301、被充電車両201に搭載された記憶部に事前に記憶されているものとし、充電車両301、被充電車両201から車両間充電装置101の制御部106に送信されるものとするが、各車両所有者が識別情報を入力部107を用いて入力し、制御部106に送信される実装であってもよい。
【0024】
制御部106は、受信した各車両の識別情報をRAM110へ格納し、さらに表示部108に各車両所有者の認証情報を求める表示を行うように制御する。各車両の所有者は、予め定義された認証情報を入力部107を用いて入力し、入力された認証情報は制御部106を介しRAM110へと格納される。
【0025】
制御部106は、RAM110に格納された各車両それぞれの識別情報と認証情報とを、無線通信部109、アンテナ111、無線基地局401、交換機501、IP網601を介して管理サーバ701へ送信する。各車両の識別情報及び認証情報とが合致しているかを、識別情報テーブルを照会することで判断する。すなわち、管理サーバ701は、送信された充電車両301の識別情報で識別情報テーブル内を検索することで、対応する認証情報を取得し、この認証情報が送信された認証情報と一致するかを判定する。また管理サーバ701は、被充電車両201の識別情報、認証情報についても同様の処理を行う。
【0026】
各車両の識別情報及び認証情報とが合致していない場合、管理サーバ701は認証不可通知を制御部106に送信し、制御部106は表示部108を介して認証不可であった旨を所有者に通知することで、再度認証情報を入力するように促す。
【0027】
各車両の識別情報と認証情報とが合致している場合、管理サーバ701は認証完了通知を車両間充電装置101の制御部106へと送信する。この際、充電量と走行距離の目安を送信してもよい。制御部106は認証完了通知を受信し、表示部108を介して希望の充電量の入力を求める。被充電車両の所有者もしくは充電車両の所有者は、互いの合意に基づき充電量を入力部107から入力する。この充電量はRAM110に格納される。
【0028】
制御部106は供給開始の信号をスイッチ部104へ送信し、スイッチ部104が電力供給をOFFからONに切替えることで、充電が開始される。電力計測部105は電力の供給量(すなわち充電量)を計測し、その計測値を制御部106に逐次送信する。制御部106は、計測値がRAM110に格納されている充電量に到達した場合、スイッチ部104がONからOFFに切り替わるように制御し、充電を停止させる。
【0029】
充電が終了、もしくは中断した場合、制御部106は再び管理サーバ701へ充電量を送信する。管理サーバ701は、実施日時、充電車両301の識別情報、被充電車両201の識別情報、充電量の各データを1つのレコードとして充電実施テーブルに登録する。その後、管理サーバ701の決済処理部703は、充電実施テーブルに登録された充電車両301、被充電車両201の識別情報を用いて個人情報テーブルを検索することで、各所有者の個人情報を取得する。また決済処理部703は、充電実施テーブルに登録された充電量で料金体系テーブルを検索することで取引料金を算出する。その後決済処理部703は、予め登録された各所有者の支払い方法並びに受け取り方法にて決済を行う。決済は、充電実施テーブルの充電量を月単位で集計することで月次決済も可能である。
【0030】
車両間充電装置101内の入力部107、表示部108、無線通信部109、アンテナ111、制御部106の各機能は、携帯電話機等の携帯端末装置(取得部)でも実現することができる。この場合、車両間充電装置は、被充電車両検知部102、充電車両検知部103、スイッチ部104、電力計測部105、および携帯端末装置と有線通信または無線通信可能な通信インターフェイスで構成される。
【0031】
さらに、車両間充電装置にGPSユニットを接続するか、GPS測位機能を具備した携帯電話を使用する場合は、GPSの測位情報を管理サーバ701へと送信し、最寄りの充電ステーションまでの必要充電量を算出することも可能となる。
【0032】
また、車両間充電装置101と無線基地局401との間の無線通信手段は、携帯電話ネットワークに限らず、また各車両の識別情報の取得は、電力線通信に限らない。
【0033】
尚、本実施の形態では、電気自動車を対象として説明したが、電力を動力源とした機器、装置を含む車両であればよい。また車両とは、車輪のついた乗り物でり、例えば自動車、自動二輪車である。
【0034】
本実施の形態により、電気自動車を使用していてバッテリ不足となった場合、充電ステーションや自宅までの電気を手軽に他車より補えるだけでなく、自動決済により金銭トラブルも防止することができる。
【0035】
以上、本実施の形態では、車両から他の車両に充電を行う車両間充電システムが開示されている。この車両間充電システムの充電制御部は、充電を行う(電力を供給する)車両である充電車両に関しての識別情報と認証情報とを取得し、充電される(電力が供給される)車両である被充電車両に関しての識別情報と認証情報とを取得し、取得した識別情報と認証情報のそれぞれを、この車両間充電システムのサーバに送信する。サーバは、充電制御部から送信された識別情報と認証情報とをそれぞれ取得し、これらの識別情報と認証情報を用いて認証を行い、認証結果を充電制御部に送信する。また充電制御部は、サーバから認証結果を受信し、認証結果が良である場合、充電車両から被充電車両への電力供給を開始する。
【0036】
また、車両間充電システムの充電制御部は、無線通信機能を有する携帯端末を含んだ構成であり、携帯端末の無線通信機能を用いてサーバとデータ通信を行うことを特徴とする。
【0037】
また、車両間充電システムのサーバは、充電車両から被充電車両への充電量に応じた料金を、充電車両、被充電車両の各所有者へ決済する決済処理部を有する。
【符号の説明】
【0038】
1 車両間充電システム、101 車両間充電装置、102 被充電車両検知部、103 充電車両検知部、104 スイッチ部、105 電力計測部、106 制御部、107 入力部、108 表示部、109 無線通信部、110 RAM、111 アンテナ、201 被充電車両、301 充電車両、401 無線基地局、501 交換機、601 IP網、701 管理サーバ、702 データベース、703 決済処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する車両である充電車両と電力が供給される車両である被充電車両のそれぞれの識別情報と認証情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された各車両の識別情報と認証情報を用いて認証を行う認証部と、
前記認証部による認証結果に基づいて前記充電車両から前記被充電車両への充電を行う充電制御部と、
を備える車両間充電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−23907(P2012−23907A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161177(P2010−161177)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】