説明

車体の衝撃緩衝構造

【課題】車体側方からの衝突による衝撃荷重入力時の乗員の安全性を確保する車体の衝撃緩衝構造を提供する。
【解決手段】中空閉断面形状の左右のルーフサイドレール10、左右のルーフサイドレール10に取り付けられた左右のセンタピラー20、センタピラー20の上端位置に対応してルーフサイドレール10間に架設されたルーフブレース30を備えた車体の衝撃緩衝構造において、センタピラー20は、ルーフサイドレール10の重心Oの高さ位置より上方の位置に車体側方から入力される衝撃荷重Fの荷重入力点Pが設定されるようにルーフサイドレール10に取り付けられ、ルーフブレース30とセンタピラー20との間でルーフサイドレール10の内側面に設けられて衝撃荷重Fをルーフブレース30に伝達する荷重伝達部材40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の衝撃緩衝構造、特に、ルーフブレースが架設された車体の前後方向に延在するルーフサイドレールを左右に備え、かつ左右のルーフサイドレールに結合された左右のセンタピラーを備えた車体の衝撃緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
センタピラーの上端が結合された車体の前後方向に延在する左右のルーフサイドレールの間には、センタピラーの上端の位置に対応してほぼ直線上で車幅方向に延在するルーフブレースが架設されている。かかる構造を備えた車体の側部に衝撃荷重が入力された場合に、この衝撃荷重を緩衝する技術が、種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、側方衝突時にルーフブレースの変形を抑制する車体構造が開示されている。この特許文献1の車体構造を、図6及び図7を用いて説明する。なお、図6及び図7において、矢線INは車室内方、矢線OUTは車室外方を示し、矢線Hは車体上方、矢線Lは車体下方を示す。
【0004】
図6は、特許文献1で開示される従来の車体構造を示すものであって、センタピラー110、ルーフサイドレール120及びルーフブレース130を備えて構成されている。
【0005】
センタピラー110は、車体内側のピラーインナ111及び車体外側のピラーアウタ112を備え、これらピラーインナ111とピラーアウタ112とによって車体上下方向に延在する中空閉断面形状に形成されている。ピラーインナ111とピラーアウタ112との間には、ピラーアウタ112側を補強するピラーアウタリンフォース113が介在されている。
【0006】
ルーフサイドレール120は、車体内側のサイドレールインナ121及び車体外側のサイドレールアウタ122を備え、これらサイドレールインナ121とサイドレールアウタ122とによって車体前後方向に延在する中空閉断面形状に形成される。サイドレールインナ121とサイドレールアウタ122の端縁とが接合されて、車室内方IN側に第1フランジ123が形成され、車室外方OUT側に第2フランジ124が形成される。
【0007】
このルーフサイドレール120の第2フランジ124側において、ピラーインナ111の上端部111aがサイドレールインナ121の下部に接合され、ピラーアウタリンフォース113の上端部113aがサイドレールアウタ122の中間領域に接合されて、センタピラー110がルーフサイドレール120に取り付けられている。
【0008】
これにより、車体側方から衝撃荷重Fが入力されると、図7で示すように、ルーフサイドレール120の第2フランジ124側が車室内方IN側へ変位し、この変位に伴って、ルーフブレース130がルーフサイドレール120の第2フランジ124に対して車室外方OUT側へ相対的に変位するようにルーフサイドレール120の第1フランジ123とルーフブレース130の取付フランジ131とが互いに屈曲変形して、衝撃荷重Fが吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−132923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1によると、側方衝突の際に、センタピラー110からルーフサイドレール120に伝達される衝撃荷重Fは、ピラーインナ111側の上端部111aから伝達される衝撃荷重F1とピラーアウタリンフォース113側の上端部113aから伝達される衝撃荷重F2とに分散して伝達される。これら分散した衝撃荷重Fの入力荷重中心点Pは、ルーフサイドレール120の重心Oより下方となる。
【0011】
従って、側方衝突によってセンタピラー110からルーフサイドレール120に入力荷重中心点Pとする衝撃荷重Fが入力され、ルーフサイドレール120に、重心Oを回転軸とした回転モーメントMが作用することとなる。その結果、ルーフサイドレール120を介して衝撃荷重Fをルーフブレース130に伝達してルーフブレース130を圧壊させることができず、衝撃荷重Fを効率的に吸収できないことが懸念される。
【0012】
また、衝撃荷重Fによって、サイドレールインナ121とサイドレールアウタ122とによって形成された中空閉断面形状が潰れ変形することとなる。その結果、ルーフサイドレール120を介して衝撃荷重Fをルーフブレース130に効率的に伝達し、該部で衝撃荷重Fを効率的に吸収できないことが懸念される。
【0013】
更に、ルーフサイドレール120に回転モーメントMが作用することによって、ルーフサイドレール120とルーフブレース130との接合が剥離され、ルーフサイドレール120とルーフブレース130とが分断されてしまう場合もある。その結果、ルーフサイドレール120を介して衝撃荷重Fをルーフブレース130に伝達してルーフブレース130を圧壊させることができず、衝撃荷重Fを効率的に吸収できないことが懸念される。
【0014】
このように、ルーフサイドレール120に回転モーメントMが作用したり、ルーフサイドレール120とルーフブレース130とが分断したりすると、衝撃荷重Fの入力によって乗員に影響を及ぼす可能性が生じることとなる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体側方からの衝突による衝撃荷重入力時の乗員の安全性を確保する車体の衝撃緩衝構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明による車体の衝撃緩衝構造は、車室上方両側に沿って車体前後方向に延在する中空閉断面形状の左右のルーフサイドレール、該左右のルーフサイドレールに取り付けられた車体上下方向に延在する左右のセンタピラー、該左右のセンタピラーの上端位置に対応して前記左右のルーフサイドレールの間に架設されて車幅方向に延在するルーフブレースを備えた車体の衝撃緩衝構造において、前記左右のセンタピラーの取付は、車体側方から衝撃荷重が入力された際に入力荷重中心点が前記左右のルーフサイドレールのそれぞれの重心高さ位置より上方の位置に設定される位置において取り付けられ、前記ルーフブレースと前記左右のセンタピラーとの間で前記左右のルーフサイドレールの内側面に固定されて前記衝撃荷重を前記ルーフブレースに伝達する荷重伝達部材を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、車体側方から入力される衝撃荷重の入力荷重中心点がルーフサイドレールの重心の高さ位置より上方の位置に設定される。従って、ルーフサイドレールの重心高さ位置より上方の位置から衝撃荷重が入力されて、この衝撃荷重がルーフサイドレールの上側から、ルーフサイドレールの内側面に固定された荷重伝達部材に伝達される。この衝撃荷重は、荷重伝達部材を介してルーフブレースに分散伝達される。
【0018】
その結果、ルーフサイドレールに、ルーフサイドレールの重心を中心とした回転モーメントが作用することが抑制されたうえで、ルーフブレースに分散伝達された衝撃荷重によってルーフブレースがその延在方向に圧壊することで衝撃荷重が効率的に吸収される。
【0019】
請求項2に記載の発明による車体の衝撃緩衝構造は、請求項1に記載の車体の衝撃緩衝構造において、前記荷重伝達部材は、前記車体の前方側に配設される前部荷重伝達部材と、該前部荷重伝達部材と間隙を介して前記車体の後方側に配設される後部荷重伝達部材と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、ルーフサイドレールに伝達された衝撃荷重をルーフブレースに分散伝達する荷重伝達部材が、車体前方側及び後方側のそれぞれに設けられていることから、車体側方から入力された衝撃荷重をより効率的にルーフブレースに分散伝達することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明による車体の衝撃緩衝構造は、請求項1または2に記載の車体の衝撃緩衝構造において、前記ルーフサイドレールは、車体内側に位置するサイドレールインナと、車体外側に位置するサイドレールアウタと、該サイドレールアウタと前記サイドレールインナとの間に設けられて前記サイドレールインナと重ね合わせられて前記サイドレールアウタ側を補強するサイドレールアウタリンフォースとを備え、該サイドレールアウタリンフォースと前記サイドレールインナとが重ね合わせられた接合部に前記ルーフブレースが接合され、前記接合部に伝達される前記衝撃荷重に対する抗力を有するビード部が前記サイドレールインナに形成されたことを特徴とする。
【0022】
この発明によると、サイドレールインナに、接合部に伝達される衝撃荷重に対する抗力を有するビード部が形成されていることから、車体側方から入力される衝撃荷重に対するルーフサイドレールの抗力が増大する。従って、サイドレールアウタリンフォース、サイドレールインナ及びルーフブレースの接合部の破断が抑制され、衝撃荷重をルーフブレースに効率的に分散伝達することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明による車体の衝撃緩衝構造は、請求項1または2に記載の車体の衝撃緩衝構造において、前記ルーフサイドレールは、車体内側に位置するサイドレールインナと、車体外側に位置するサイドレールアウタと、該サイドレールアウタと前記サイドレールインナとの間に設けられて前記サイドレールインナと重ね合わせられて前記サイドレールアウタ側を補強するサイドレールアウタリンフォースとを備え、該サイドレールアウタリンフォースと前記サイドレールインナとが重ね合わせられた接合部に前記ルーフブレースが接合され、前記接合部に伝達される前記衝撃荷重に対する抗力を有するビード部が前記サイドレールアウタリンフォースに形成されたことを特徴とする。
【0024】
この発明によると、サイドレールアウタリンフォースに、接合部に伝達される衝撃荷重に対する抗力を有するビード部が形成されていることから、車体側方から入力される衝撃荷重に対するルーフサイドレールの抗力が増大する。従って、サイドレールアウタリンフォース、サイドレールインナ及びルーフブレースの接合部の破断が抑制され、衝撃荷重をルーフブレースに効率的に分散伝達することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る車体の衝撃緩衝構造によれば、車体側方から入力される衝撃荷重の入力荷重中心点が、ルーフサイドレールの重心の高さ位置より上方の位置に設定される。従って、ルーフサイドレールの重心高さ位置より上方の位置から衝撃荷重が荷重伝達部材に入力されることから、ルーフサイドレールに、ルーフサイドレールの重心を中心とした回転モーメントが作用することが抑制されたうえで、荷重伝達部材を介して衝撃荷重がルーフブレースに効率的に分散伝達される。これにより、ルーフブレースがその延在方向に圧壊することで車体側方から入力された衝撃荷重が効率的に吸収され、車体側方からの衝突による衝撃荷重入力時の乗員の安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の概略を説明する図5のI−I線断面図である。
【図2】本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の要部斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の作用を説明する図である。
【図5】本実施の形態の車体の衝撃緩衝構造が適用される車体の概略を説明する図である。
【図6】従来の車体の衝撃緩衝構造の概略を説明する図である。
【図7】同じく、従来の車体の衝撃緩衝構造の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜5に基づいて説明する。なお、図1〜図5において、矢線Hは車体上方、矢線Lは車体下方、矢線INは車室内方、矢線OUTは車室外方を示し、矢線Fは車体前方、矢線Rは車体後方を示す。
【0028】
まず、図5に基づいて、本実施の形態の車体の衝撃緩衝構造が適用される車体の概略について説明する。図示のように、車体1は、車室2への出入り口となるフロントドア開口部3が形成される。車体1は、車室2の上方両側に沿って、車体1の前後方向に延在する左右のルーフサイドレール10が配設され、車室2の下方両側に沿って、車体1の前後方向に延在する左右のサイドシル5が配設される。フロントドア開口部2の後端において、上端がルーフサイドレール10に結合するとともに下端がサイドシル5に結合して上下方向に延在するセンタピラー20が配置される。ルーフサイドレール10に結合するセンタピラー20の上端の位置に対応して、左右のルーフサイドレール10の間にルーフブレースであるセンタブレース30が架設されて、車幅方向に延在する。
【0029】
次に、本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造について説明する。なお、本実施の形態において、車体の両側部に形成された車体の衝撃緩衝構造はいずれも同じ構造であることから、車体の左側部に形成された車体の衝撃緩衝構造を例として説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の概略を説明する図5のI−I線断面図、図2は、本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の斜視図である。図示のように、本実施の形態では、車体前後方向に延在するルーフサイドレール10の重心Oよりも上方の位置に、車体1の側方から入力される衝撃荷重の入力荷重中心点Pが設定されるように、センタピラー20がルーフサイドレール10に結合している。更に、本実施の形態では、ルーフサイドレール10の車室内方IN側であって、入力荷重中心点Pの上方の位置において、左右のルーフサイドレール10の間にセンタブレース30が架設される。このセンタブレース30とルーフサイドレール10との間で、ルーフサイドレール10の延在方向と交差する車幅方向に亘って延在する荷重伝達部材となるセパレータ40が、ルーフサイドレール10の内側面に配設されている。
【0031】
次に、本実施の形態の各部の具体的構成について説明する。
【0032】
ルーフサイドレール10は、サイドレールインナ11及びサイドレールアウタ12を備えるとともに、サイドレールインナ11と重ね合わせられるサイドレールアウタリンフォース13を備え、サイドレールインナ11とサイドレールアウタリンフォース13とによって形成された中空閉断面形状内にセパレータ40が配設されて形成される。
【0033】
サイドレールインナ11は、車体前後方向に延在するインナ基部11a、インナ基部11aの車室内方IN側の端部から車体上方Hに折曲して形成された側部11b、側部11bから車室内方INに向かって傾斜して折曲して形成された連続部11c、連続部11cから更に車室内方INに向かって折曲する接合部となる取付フランジ11dを有する。これら側部11b、連続部11c及び取付フランジ11dによって、車幅方向の断面形状が凹状であって車体前後方向に伸長するビード部14Aが形成される。
【0034】
サイドレールインナ11は、更に、インナ基部11aの車室外方OUT側の端部から車室外方OUT側に折曲して形成された側部11e、側部11eから車体下方Lに向かって傾斜して折曲する取付フランジ11fを有する。サイドレールインナ11は、これらインナ基部11a、側部11b、連続部11c、取付フランジ11d、側部11e及び取付フランジ11fを有して、断面略ハット状に一体形成される。
【0035】
サイドレールアウタ12は、車体前後方向に延在するアウタ基部12a、アウタ基部12aの両端から車体下方Lに向かって折曲する両側部12bを有して、断面略ハット状に一体形成される。
【0036】
サイドレールアウタリンフォース13は、車体前後方向に延在するとともにサイドレールインナ11のインナ基部11aと対向するリンフォース基部13a、リンフォース基部13aの車室内方IN側の端部から車体下方Lに向かって傾斜して折曲して形成された側部13b、側部13bから車室内方INに向かって折曲して形成されるとともにサイドレールインナ11の取付フランジ11dと結合する接合部となる取付フランジ13cを有する。側部13bには、車幅方向の断面形状が凸状のビード部14Bが形成される。
【0037】
サイドレールアウタリンフォース13は、更に、リンフォース基部13aの車室外方OUT側の端部から車体下方Lに向かって折曲して形成された側部13d、側部13dから車室外方OUT側に傾斜して折曲して形成されて後述するピラーインナ21に連続するとともにサイドレールインナ11の取付フランジ11fと結合する取付フランジ13eを有する。サイドレールアウタリンフォース13は、これらリンフォース基部13a、側部13b、取付フランジ13c、側部13d及び取付フランジ13eを有して、断面略ハット状に一体形成される。
【0038】
図3は、本実施の形態に係る車体の衝撃緩衝構造の要部斜視図である。図3及び図2で示すように、セパレータ40は、ルーフサイドレール10内で車体前方F側に配設される前部荷重伝達部材となる前部セパレータ41、及びルーフサイドレール10内で車体後方R側に配設される後部荷重伝達部材となる後部セパレータ42を備える。
【0039】
前部セパレータ41は、車幅方向に延在する側面視略二山状に形成された基部41a、基部41aの上縁から車体後方Rに湾曲して基部41aの上縁に沿って延在する連続部41b、連続部41bの車室内方IN側、車室外方OUT側及び車室内方IN側と車室外方OUT側との間において、連続部41bから車体後方R側に向かって互いに間隙を介して突出する第1フランジ41c、第2フランジ41d及び第3フランジ41eをそれぞれ有する。更に、基部41aの下縁に沿って車幅方向に延在して車体前方F側に屈曲する当接フランジ41fを有する。
【0040】
一方、後部セパレータ42は、車幅方向に延在する側面視略台形状に形成された基部42a、基部42aの車室内方IN側において車体後方R側に湾曲して基部42aの上縁に沿って延在する第1連続部42b、第1連続部42bから車室外方OUT側に向かって延在するとともに基部42aの上縁に沿って延在する第2連続部42c、第1連続部42bから車体上方H側に突出する側面視略三角形状に形成された突部側面42d、突部側面42dの上縁及び第2連続部42cの上縁から車体後方R側に向かって突出して車室内方IN側から車室外方OUT側に向かって延在する第1フランジ42e及び第1フランジ42eと間隙を介して形成された第2フランジ42fを有する。更に、基部42aの下縁に沿って車幅方向に延在して車体前方F側に屈曲する当接フランジ42gを有する。
【0041】
前部セパレータ41の第1フランジ41c、第2フランジ41d及び第3フランジ41eが、サイドレールアウタリンフォース13の内側面にスポット溶接等によって結合され、前部セパレータ41に対して車体後方R側において後部セパレータ42の第1フランジ42e及び第2フランジ42fがサイドレールアウタリンフォース13の内側面にスポット溶接等によって結合される。
【0042】
図1及び図2で再度示すように、上記構成を有するサイドレールインナ11とサイドレールアウタリンフォース13とが結合されてサイドレール部材10Aが形成され、このサイドレール部材10Aの取付フランジ11f、13e側が車体下方L側に傾斜するように配置されるとともに、サイドレールアウタリンフォース13の外側面に近接してこの外側面を覆うようにサイドレールアウタ12が取り付けられて、ルーフサイドレール10が形成される。このような構成のルーフサイドレール10の重心は、実質的に、サイドレール部材10Aの重心Oに設定される。
【0043】
一方、サイドレール部材10Aのサイドレールアウタリンフォース13の内側面には、前部セパレータ41及び後部セパレータ42が配設され、中空閉断面形状に形成されたサイドレール部材10A内において、前部セパレータ41の当接フランジ41f及び後部セパレータ42の当接フランジ42gが、サイドレールインナ11の内側面と間隙を介してサイドレールインナ11と対向する。
【0044】
センタピラー20は、ピラーインナ21及び図示しないピラーアウタを備えるとともに、ピラーインナ21と重ね合わせられるピラーアウタリンフォース23を備えて形成される。ピラーインナ21は、サイドレールアウタリンフォース13の取付フランジ13eから連続して車体上下方向に延在して形成される。
【0045】
ピラーアウタリンフォース23は、車体上下方向に延在するリンフォース基部23a、リンフォース基部23aの両端から車室内方IN側に折曲して形成された側部23bを有して断面略コ字状に一体形成される。
【0046】
ピラーアウタリンフォース23の上端部には、上端部フランジ24が形成される。この上端部フランジ24は、リンフォース基部23aの上端から車室内方IN側に折曲して形成された稜線24aを介して車体前後方向に延在する上部フランジ24b、車体前方F側の側部23bの上端において側部23bから離反する方向に折曲して形成された側部フランジ24c、車体後方R側の側部23bの上端において側部23bから離反する方向に折曲して形成された側部フランジ24dを有し、これら上部フランジ24b、側部フランジ24c及び24dが連続して一体に形成される。
【0047】
このピラーアウタリンフォース23の上端部フランジ24の上部フランジ24bがサイドレールアウタリンフォース13のリンフォース基部13aの外側面に当接し、側部フランジ24c及び24dが、サイドレールアウタリンフォース13の側部13dに当接する。これにより、センタピラー20を介してルーフサイドレール10に入力される衝撃荷重Fの入力荷重中心点Pを通って車体前後方向に延在する稜線24aが、車体前後方向に延在するルーフサイドレール10の重心Oの上方に位置するように設定される。
【0048】
センタブレース30は、その取付位置が入力荷重中心点Pよりも上方位置となるように、取付部30aにおいてルーフサイドレール10の取付フランジ11d、13cに重ね合わせられて取り付けられる。センタブレース30の下方にはブレースブラケット31が配設され、センタブレース30の上方には、ルーフパネル32が配設される。
【0049】
次に、車体1の側方から他の車体等が衝突した場合の車体の衝撃緩衝構造の作用について、図4及び図1に基づいて説明する。
【0050】
車体1の側方から他の車体が衝突すると、フロントドアを介して、センタピラー20に衝撃荷重Fが入力される。センタピラー20に入力された衝撃荷重Fは、入力荷重中心点Pを通って車体前後方向に延在する稜線24aを介してルーフサイドレール10のサイドレール部材10Aに伝達される。このとき、ルーフサイドレール10に入力される衝撃荷重Fの入力荷重中心点Pは、車体前後方向に延在するルーフサイドレール10の重心Oの上方位置となる。
【0051】
従って、上端部フランジ24からサイドレール部材10Aに衝撃荷重Fが入力されても、サイドレール部材10Aに、重心Oを回転軸とした回転モーメントが作用することが極めて抑制される。サイドレール部材10Aに回転モーメントが作用することが抑制されたうえで、衝撃荷重Fの入力により、中空閉断面形状のサイドレール部材10Aが、サイドレール部材10Aの延在方向と交差する方向に圧壊する。すなわち、中空閉断面形状に形成されたサイドレール部材10Aが潰れ変形することによって、衝撃荷重Fが吸収される。
【0052】
一方、サイドレール部材10Aの中空閉断面形状の内部には、前部セパレータ41及び後部セパレータ42が配設されていることから、サイドレール部材10Aの潰れ変形が進行すると、前部セパレータ41の当接フランジ41fがサイドレールインナ11の内側面に当接し、後部セパレータ42の当接フランジ42gがサイドレールインナ11の内側面に当接する。
【0053】
これにより、上端部フランジ24からサイドレールアウタリンフォース13に入力された衝撃荷重Fは、前部セパレータ41の基部41a及び後部セパレータ42の基部42aを介してサイドレールインナ11に伝達される。サイドレールインナ11に伝達された衝撃荷重Fは、ブレースブラケット31及びセンタブレース30に分散伝達され、この衝撃荷重Fによって、車幅方向に延在するブレースブラケット31及びセンタブレース30がその延在方向で圧壊変形することで、衝撃荷重Fが効率的に吸収される。
【0054】
特に、前部セパレータ41の当接フランジ41f及び後部セパレータ42の当接フランジ42gがサイドレールインナ11の内側面と間隙を介して対向することから、セパレータ40の存在によってもサイドレール部材10Aの圧壊変形が阻害されることがなく、衝撃荷重Fを吸収することができる。その一方で、サイドレール部材10Aの潰れ変形が進行すると、当接フランジ41f、42gがサイドレールインナ11の内側面に当接することから、衝撃荷重Fをセンタブレース30に伝達してその延在方向に圧壊させることによって、衝撃荷重Fを効率的に吸収することができる。
【0055】
サイドレールインナ11には、側部11b、連続部11c及び取付フランジ11dによって、車幅方向の断面形状が凹状となるビード部14Aが形成されていることから、衝撃荷重Fの入力に対するサイドレール部材10Aの車幅方向の抗力が増大されている。従って、ビード部14Aを構成する取付フランジ11dが折曲点で変形することが抑制されることから、スポット溶接等により結合された取付フランジ13cとセンタブレース30の取付部30aとが破断することが抑制される。これにより、衝撃荷重Fが効率的にセンタブレース30に伝達される。
【0056】
同様に、サイドレールアウタリンフォース13には、車幅方向の断面形状が凸状となるビード部14Bが形成されていることから、衝撃荷重Fの入力に対するサイドレール部材10Aの車幅方向の抗力が増大されている。従って、上記同様、ビード部14Bを構成する取付フランジ13cが折曲点で変形することが抑制されることから、スポット溶接等により結合された取付フランジ13cとセンタブレース30の取付部30aとが破断することが抑制される。これにより、衝撃荷重Fが効率的にセンタブレース30に伝達される。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、サイドレールインナ11に、側部11b、連続部11c及び取付フランジ11dによってビード部14Aが形成され、サイドレールアウタリンフォース13の側部13bにビード部14Bが形成された場合を例として説明したが、サイドレールインナ11のインナ基部11aに、車体前後方向に延在するビード部を形成してもよい。すなわち、ルーフサイドレール10における剛性が要求される部分に、適宜ビード部を形成することができる。
【0058】
上記実施の形態では、セパレータ40が、前部セパレータ41及び後部セパレータ42を有する場合を例として説明したが、前部あるいは後部のいずれか一方のみでもよく、または2以上のセパレータを配設してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 車体
10 ルーフサイドレール
10A サイドレール部材
11 サイドレールインナ
11a インナ基部
12 サイドレールアウタ
13 サイドレールアウタリンフォース
13a リンフォース基部
14A、14B ビード部
20 センタピラー
21 ピラーインナ
23 ピラーアウタリンフォース
23a リンフォース基部
24 上端部フランジ
24a 稜線
30 センタブレース(ルーフブレース)
40 セパレータ(荷重伝達部材)
41 前部セパレータ(前部荷重伝達部材)
42 後部セパレータ(後部荷重伝達部材)
F 衝撃荷重
O 重心
P 入力荷重中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室上方両側に沿って車体前後方向に延在する中空閉断面形状の左右のルーフサイドレール、該左右のルーフサイドレールに取り付けられた車体上下方向に延在する左右のセンタピラー、該左右のセンタピラーの上端位置に対応して前記左右のルーフサイドレールの間に架設されて車幅方向に延在するルーフブレースを備えた車体の衝撃緩衝構造において、
前記左右のセンタピラーの取付は、
車体側方から衝撃荷重が入力された際に入力荷重中心点が前記左右のルーフサイドレールのそれぞれの重心高さ位置より上方の位置に設定される位置において取り付けられ、
前記ルーフブレースと前記左右のセンタピラーとの間で前記左右のルーフサイドレールの内側面に固定されて前記衝撃荷重を前記ルーフブレースに伝達する荷重伝達部材を備えることを特徴とする車体の衝撃緩衝構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部材は、
前記車体の前方側に配設される前部荷重伝達部材と、
該前部荷重伝達部材と間隙を介して前記車体の後方側に配設される後部荷重伝達部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車体の衝撃緩衝構造。
【請求項3】
前記ルーフサイドレールは、
車体内側に位置するサイドレールインナと、車体外側に位置するサイドレールアウタと、該サイドレールアウタと前記サイドレールインナとの間に設けられて前記サイドレールインナと重ね合わせられて前記サイドレールアウタ側を補強するサイドレールアウタリンフォースとを備え、
該サイドレールアウタリンフォースと前記サイドレールインナとが重ね合わせられた接合部に前記ルーフブレースが接合され、
前記接合部に伝達される前記衝撃荷重に対する抗力を有するビード部が前記サイドレールインナに形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体の衝撃緩衝構造。
【請求項4】
前記ルーフサイドレールは、
車体内側に位置するサイドレールインナと、車体外側に位置するサイドレールアウタと、該サイドレールアウタと前記サイドレールインナとの間に設けられて前記サイドレールインナと重ね合わせられて前記サイドレールアウタ側を補強するサイドレールアウタリンフォースとを備え、
該サイドレールアウタリンフォースと前記サイドレールインナとが重ね合わせられた接合部に前記ルーフブレースが接合され、
前記接合部に伝達される前記衝撃荷重に対する抗力を有するビード部が前記サイドレールアウタリンフォースに形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体の衝撃緩衝構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218660(P2012−218660A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88918(P2011−88918)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】