説明

車体トランクリッド用パネル構造体

【課題】 軽量であると共に、捩り剛性、曲げ剛性及び張り剛性が高い車体トランクリッド用パネル構造体を提供する。
【解決手段】 アウター12とインナー11とがアウター12の端部14をヘム加工して連結され、インナー11はその断面が波型に湾曲して複数個の平行に延びるビードが形成されている。そして、アウター12とインナー11との間には、インナー11のアウター12側の山部に樹脂層13を配置し、この樹脂層13を接着剤としてアウター12とインナー11とが接合されており、アウター12とインナー11とが空間を介して閉断面構造により一体化されている。インナー11には、その周縁部11aを除く中央部11bの全域に、相互に略平行に延びる複数本のビード8が形成されており、断面においては、このビード8は略サイン曲線の波形形状を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ剛性及び張り剛性等の剛性が優れたアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属製の車体トランクリッド用パネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体トランクリッド用パネル構造体として、図5に示すように、外装パネル又は外板等のアウターパネル(以下、単にアウターともいう)52と、内装パネル又は内板等のインナーパネル(以下、単にインナーともいう)51とが組み合わされたパネル構造体が使用されている。このインナー51は、アウター52を補強するために設けられたものであり、機械的方法、溶接又は接着等によりアウター52に結合されている。
【0003】
このトランクリッド用インナー51は、図5に示すように、トランクリッド用パネル50の各部に、軽量化のためのトリム部53が切り欠かれており、ビーム54を有するビーム型インナーである。
【0004】
このパネル構造体のインナー51又はインナー51及びアウター52用の材料として、従来から使用されてきた鋼材とともに、又は鋼材に代わって、近年、軽量化のためにアルミニウム合金が使用されており、特に、高強度で高成形性であるAA又はJIS規格による3000系、5000系、6000系、7000系等のアルミニウム合金板が使用され始めている。特にインナー51は、その傾向が強い。
【0005】
しかしながら,上述の従来のトランクリッド用パネルは、インナー51にビーム型インナーを使用しているため、これを薄板化し軽量化すると、高剛性化できないという難点がある。
【0006】
本件特許出願人は、車体フード用パネル構造体として、インナーパネルの全面にわたって複数本の波型ビードを略平行に設けたものを提案した(特開2003−205866号公報)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−205866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、トランクリッド用パネル構造体としては、未だ、高剛性であると共に、薄板化による軽量化が可能である車体トランクリッド用パネル構造体は提案されていない。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、軽量であると共に、捩り剛性、曲げ剛性及び張り剛性が高い車体トランクリッド用パネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車体トランクリッド用パネル構造体は、車体トランクリッドに使用されるパネル構造体において、アウターパネルとインナーパネルとが空間を介した閉断面構造で結合されており、前記インナーパネルは、周縁部を除いた領域にその断面が波形形状をなす複数本のビードが設けられていることを特徴とする。
【0011】
この車体トランクリッド用パネル構造体において、前記ビードの断面の波型形状は、例えば、サイン曲線又は台形を描いている。また、前記ビードは、例えば、車体トランクリッドの長手方向に対し、平行方向又は斜め方向に延びているか、平面視で同心円状に配列されているものであり、それらの組み合わせにしてもよい。
【0012】
この場合において、前記インナーパネルは、開口率3%以下、孔径3mm以下の吸音効果を有する多数の貫通孔が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1乃至5に係る車体トランクリッド用パネル構造体によれば、車体トランクリッド用パネル構造体のインナーを波形形状に形成することにより、トランクリッド用パネル構造体の張り剛性、曲げ剛性、捩り剛性を向上させることができる。また、インナーの剛性が高まることにより、インナー及びアウターの双方を薄板化することができ、これにより、トランクリッド用パネル構造体を軽量化することができる。
【0014】
本願請求項6に係る車体トランクリッド用パネル構造体によれば、インナーパネルに、開口率3%以下、孔径3mm以下の吸音効果を有する多数の貫通孔が設けられているので、広帯域吸音特性に優れたトランクリッド用パネル構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明に係る車体トランクリッド用パネル構造体の断面図、図2はその表面形状を示す斜視図である。アウター12とインナー11とがアウター12の端部14をヘム(曲げ)加工して、連結されている。アウター12は緩やかに円弧状に湾曲して成形されており、インナー11はその断面が波型に湾曲して複数個の平行に延びるビードが形成されている。そして、アウター12とインナー11との間には、インナー11のアウター12側の山部に樹脂層13を配置し、この樹脂層13を接着剤としてアウター12とインナー11とが接合されており、アウター12とインナー11とが空間を介して閉断面構造により一体化されている。樹脂層13は、樹脂の特性や種類を選択することにより、制振や消音、衝撃緩衝効果などをもたせることも可能である。また、ヒンジレインフォースメント及びラッチレインフォースメントなどの補強部材によって、局部補強することもできる。
【0016】
図2は、本第1実施形態の車体トランクリッド用パネル構造体のインナー11の波形形状をメッシュで示した斜視図である。図2に示すように、インナー11には、その周縁部11aを除く中央部11bの全域に、相互に略平行に延びる複数本のビード8が形成されており、断面においては、このビード8は略サイン曲線の波形形状を形成している。なお、インナー11の軽量化のために、剛性及び強度を損なわない程度に、この波形形状を形成している箇所に部分的にインナー11をトリミングした切欠き部分を設けてもよい。
【0017】
アウター12又はインナー11の素材として、鋼板、高張力合金等及びアルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム材という)を使用することができるが、軽量なアルミニウム材を用いることが好ましい。このアルミニウム材は、平板状パネルから波形状パネルへのプレス成形は容易であるので、容易にインナーの製造ができる。
【0018】
近年、パネル構造体は、薄板化し軽量化することを求められ、パネル構造体に用いる金属部材には、曲げ剛性、捩り剛性、又は張り剛性(耐デント性)が高いことが求められている。図6及び図7は図2に示すトランクリッド用パネルのインナー11の形態を模式的に示す。曲げ剛性とは、図6に示す支点100で支持されたトランクリッドに対し、曲げ荷重101が印加された場合の剛性をいい、この曲げ荷重101の値に対する荷重点での変位の比で定義される。捩り剛性とは、図7に示すように、捩り荷重102がトランクリッドに印加された場合のトランクリッドの剛性をいい、この捩り荷重102の値に対する荷重点での変位の比で定義される。張り剛性とは、図7に示すように、トランクリッド中央部に集中荷重103が作用したときのトランクリッドの局部剛性であり、張り剛性は、集中荷重103の値に対する荷重点での変位の比で定義される。
【0019】
本実施形態においては、インナー11として、断面が波形形状をなす複数本のビード8が形成されたもの(以下、波形インナーという)を使用しているので、この波形インナー11をアウターパネル12に組み合わせて構成された車体トランクリッド用パネル構造体は、アウター12及びインナー11を薄板化して軽量化しても、波形インナー中央部の凹凸により局部曲げ剛性が極めて高い。また、波型インナーとアウターとの接触面積がインナーが平板状の場合よりも増加し、接合面積が増加するため、アウターからインナーへの荷重伝達が広範囲に分散される。このため、荷重点での変位が抑制され、この結果、張り剛性を従来のビーム型トランクリッド構造体と比較して格段に高めることができる。曲げ剛性は、ビーム型トランクリッド構造体と比較し、波形形状により曲げ剛性向上に有効な断面部面積が増加し、この結果トランクリッドの曲げ剛性が向上する。捩り剛性は、波形トランクリッド構造で採用している閉断面構造が、捩り剛性向上につながり、基本的には従来のビーム型トランクリッド構造体に比較して約2倍の捩り剛性が得られる。
【0020】
図8は、相互に略平行に延びる複数本のビード8が設けられた別のインナーを示す斜視図である。図8において、波型インナー11の表面ほぼ全域に相互に略平行に延びたビード8が形成された車体トランクリッド用パネル構造体が記載されており、このインナーにおいても図2のインナーと同様、パネル構造体の張り剛性、曲げ剛性及び捩り剛性が向上する。なお、図2及び図8において、ビード8は車体の長さ方向に対して略平行に配置されているが、ビード8は車体長手方向に対して所定角度で傾斜していてもよい。
【0021】
図3は、本発明の第2実施形態に係る車体トランクリッド用パネル構造体に用いるインナー15の波形形状をメッシュで示した斜視図である。図3に示すように、インナー15は、その周縁部15aを除くインナー中央部15bの全域に、2組のビード16が形成されている。このビード16は、平面視でロ字形をなす異なる大きさの2本のビードをその中心を同一として配置したものであり、その断面形状は略サイン曲線の波形形状をなしている。このビード16は、ロ字形に限らず、円形又は楕円形でもよく、これらの平面形状のビードを同心的に配置すればよい。なお、インナー15の軽量化のために、剛性及び強度に影響が無い範囲で、この波形形状を形成している箇所に部分的にトリミング部又は切欠き部分を設けてもよい。本実施形態においても、曲げ剛性、張り剛性及び捩り剛性が高いインナーが得られる。
【0022】
図9は、ビード16を平面視でロ字形をなすように設けた別のインナーを示す斜視図である。図9において、インナー15の周縁部15aを除くインナー中央部15bの全域に、平面視でロ字形をなす異なる大きさの2本のビード16がその中心を同一として配置されている。ビード16の断面形状は略サイン曲線の波形形状をなしている。このトランクリッド用パネル構造体においても、図3のパネル構造体と同様、曲げ剛性、張り剛性及び捩り剛性を向上させることができる。ビード16は、ロ字形に限らず、円形又は楕円形でもよく、これらの平面形状のビードを同心的に配置すればよい。
【0023】
図4は、本発明の第3実施形態に係る車体トランクリッド用パネル構造体に用いるインナーの波形形状をメッシュで示した斜視図である。図4に示すように、インナー17の周縁部17aを除くインナー中央部17bに、山18と、1方向に延びる複数本の谷19aと、この谷19aに垂直に交差する複数本の谷19bとが形成されている。山18と谷19aとから形成されるビードと、山18と谷19bとから形成されるビードは夫々断面が略サイン曲線の波型形状をなし、これらの両ビードは相互に垂直に交差している。なお、このインナーは、インナー17の周縁部17aを除くインナー中央部17bの全面に互いに直行する2つの略サイン曲線を描く波が交差してできる格子状の形状にビードを配置した連続する凹凸のある波形を形成したものである。この2種類のビードは、垂直ではなく、適宜の角度、例えば、45度の角度をなして交差するように配置してもよい。また、インナー17の軽量化のために、剛性及び強度に影響の無い範囲で、この波形形状を形成している箇所に部分的にトリミング部又は切欠き部分を設けてもよい。本実施形態においても、曲げ剛性、張り剛性及び捩り剛性が高いインナーが得られる。
【0024】
なお、本発明の車体トランクリッド用パネル構造体のインナーの形状は、そのビード又は凹条の断面形状の波の高さ、波の波長、波の斜面の傾斜角度、波の数(本数)、長さなどの条件は、前述の3つの実施形態の態様に限定されるものではなく、種々のものが可能である。
【0025】
図12乃至図21に、本発明の車体トランクリッド用パネル構造体におけるインナーの変形例を模式的に示す。図12は、インナー1の表面に平面視で略台形のビード8aを形成し、その内側に凹部9を隔てて中心部を囲むように楕円形のビード8bを形成し、このビード8bの中心部に凹部9を設けたものである。
【0026】
図13は、インナー1の表面を上下左右に4分割した4つの領域にそれぞれ楕円形のビード8cを設けたものである。
【0027】
図14は、インナー1の表面を左右に2分割した2つの領域に夫々外側上方から内側下方に向かう線状のビード8dを設け、このビード8dの内側上方と外側下方に夫々前記ビード8dよりも短いビード8eを設けたものである。
【0028】
図15は、インナー1の上部にその幅方向に沿った細長楕円形のビード8fを設け、このビード8fの下部を左右に分割した2つの領域に夫々外側上方から内側下側に向かう略直線状のビード8gを形成し、このビード8gと8fとの間に夫々点状のビード8hを設けたものである。
【0029】
図16は、インナー1の表面にその幅方向に沿って点状のビード8iを夫々6個づつ上下2列に配置したものである。
【0030】
図17は、インナー1の表面中央部に上下に延びるビード8jを設け、このビード8jの下方からインナー1の左右両側の上部角部に向かうように斜めに延びるビード8kを形成し、上下のビード8jと斜めに延びるビード8kとの間及び斜めに延びるビード8kと下側両角部との間に夫々点状のビード8lを設けたものである。
【0031】
図18は、インナー1の表面を左右に2分割した2領域に夫々上部内側から下部外側に向かう線状のビード8mを設け、このビード8mの上側及び下側をこのビード8mと略平行に延びるビード8mよりも短いビード8nを設けたものである。
【0032】
図19は、インナー1の表面中央部に上下に延びるビード8oを設け、このビード8oの上方端に連結されインナー1の左右両側の下側角部に向かうように斜めに延びるビード8pを形成し、この斜めに延びるビード8pと左右両側の上部角部との間に斜めに延びるビード8pに略平行な線状のビード8q及びこのビード8qに略平行で且つビード8qよりも短いビード8rを設けたものである。
【0033】
図20は、インナー1の中央上部から夫々左右両側の下方角部に向かう略「へ」の字状のビード8sと、このビード8sの下方にほぼ同一形状であってビード8sよりも小さい略「へ」の字状のビード8tと、ビード8sの斜めに延びる部分と左右両側の上部角部との間に設けられビード8sの斜めに延びる部分と夫々略平行に設けられた線状のビード8u及びこれよりも短い線状のビード8vとを設けたものである。
【0034】
図21は、インナー1の上部に平面視で「二」の字状に設けられたビード8wと、このビード8wと左右両側の上部角部との間に設けられ夫々内側上方から外側下方に延びる線状のビード8xと、前記「二」の字状のビード8wの下方に平面視で左右対称に配置され外側上部から内側下部に向かって延びる左右両側の線状のビード8yとを設けたものである。
【0035】
図12乃至図21に示したインナーであっても、上記実施形態と同様、曲げ剛性、張り剛性及び捩り剛性が高いインナー及び車体トランクリッド用パネル構造体が得られる。
【0036】
なお、図12乃至図21は、パネル構造体のインナーにおけるビードの配置を模式的に示したものであり、波の数、波長、波高等を限定するものではない。また、凸部と凹部は張り剛性を維持できるものであればよく、例えば、凸部と凹部とを逆にして凸部を凹部に、凹部を凸部にしたものであってもよい。
【0037】
本発明において、波形形状の断面は、サイン曲線形状に限らず、台形形状、略台形状、折坂形状、スプライン波形状及びこれらの組み合わせ等種々の形状が可能であり、また、サイン曲線を土台とした台形近似の形状又はコーナ部にアール(曲面)を設けてあるもの等にすることもできる。
【0038】
図10(a)乃至(d)は夫々インナーの断面形状を示す図、図11(a)、(b)は、夫々別のインナーの断面形状を示す図である。図10(a)乃至(d)において、夫々断面形状がスプライン曲線状のインナーが記載されている。一般に、スプライン曲線とは、大小曲率の異なる曲線を滑らかにつなぎ合わせて形成される曲線をいう。本発明において、スプライン波形とは、スプライン曲線と同じ意味合いから、略波型波形(略台形を含む)をベースにその上にエンボス形状等の大小曲率の異なる複数の波が重ね合わされてできる波型であると定義される。エンボス形状はインナー及び補強インナー全面に及ぶ場合と、R部等の局部に限定される場合とがある。
【0039】
図11(a)、(b)において、図11(a)には凸部及び凹部の双方が台形形状のインナーの断面形状が示されており、図11(b)には凸部が台形形状、凹部が円弧状のインナーの断面形状が示されている。図10(a)乃至(d)及び図11(a)、(b)に示したような断面形状であっても、曲げ剛性、張り剛性及び捩り剛性が高いインナーが得られる。
【0040】
ビード又は凹条の断面形状の条件は、剛性設計で要求される張り剛性、捩り剛性、又は曲げ剛性の剛性と形成性から適宜選択することができる。しかし、波の高さが10乃至60mm、波長が30乃至200mmの範囲であると、剛性が著しく高く、成形性も優れたインナーを得ることができる。
【0041】
また、インナーをテーラーブランク化するなどして、インナー1の外縁部(外周部)の板厚を中央部の板厚よりも厚くしてインナー又はパネル構造体の曲げ剛性を向上させる別の剛性補強手段と組み合わせてもよい。
【0042】
インナー及びアウターの材質としては、パネルに通常使用されているアルミニウム合金板及び高張力鋼板などを使用することができるが、樹脂については、材料強度等の特性から、本発明で目的とする剛性を持たせるためには、厚さが極端に厚くなるため、好ましくない。車体の軽量化のためには、アルミニウム合金を使用することが好ましい。本発明においては、波型のビードを形成しているので、高強度のアルミニウム合金を使用しなくても、通常のアルミニウム合金で十分に高剛性化することができる。
【0043】
本発明のインナー及びアウター用のアルミニウム合金としては、通常、この種のパネル用途に使用されるAA又はJIS規格による3000系、5000系、6000系、7000系等の耐力が比較的高い規格のアルミニウム合金板から選択することができる。これらアルミニウム合金板は、圧延加工などの常法により製造され、適調質処理して使用されている。
【0044】
本発明の車体トランクリッド用パネル構造体のインナーには、吸音効果を有する多数の貫通孔を設けることが好ましい。これによって、車体トランクリッド用パネル構造体は広帯域吸音特性に優れたものとなる。空気層を介して接合された2重構造のパネル構造体の一方のパネルに多数の微細な貫通孔を設けることにより、吸音効果が得られることは例えば特開昭61−249878号公報、特開2000−56777号公報、特開2003−50586号公報等に開示されている。
【0045】
ヘルムホルツの共鳴原理に基づく多孔板吸音パネルの簡易式を以下に示す。
【0046】
【数1】

【0047】
(但し、f:周波数、c:音速、β:開口率、t:板厚、b:開口半径(孔径の半分)、d:背後空気層の厚み)
数1によれば、開口率は小さく、孔径は大きく、板厚は厚く、背後吸気層は厚くする程周波数は低下する。ここで、孔径は小さいほど吸音特性が向上し、直径1mm以下で粘性減衰により高い吸音特性が得られるという知見が得られている(H.V.Fuchs and X.Zha: The application of microperforated places as sound absorbers with inherent damping.Acustica,81,107-116(1995)。
【0048】
但し、パンチングによる孔径は生産性及び経済性を考慮すると板厚程度以下にはしにくい。そこで、フードインナーによる吸音条件として板厚をインナー板厚0.8mm、背後吸気層の厚さを30mm、目標とする吸音周波数を1000HZ以下に設定すると、上記数1より、孔径1mmの場合は開口率2%以下で、孔径3mmの場合は開口率約3%以下で、目標周波数を満足することができる。
【0049】
更に上記数式を
【0050】
【数2】

【0051】
と書き換え、孔径と開口率との関係を求め、目標周波数を1000HZ以下、板厚を0.8mmとした場合の孔径と開口率の関係より、背後空気層を30mm以下とすれば、孔径3mm以下、開口率3%以下で目標周波数が得られることが算出される。
【0052】
なお、宇津野(特開2003−50586号公報)によれば、板厚0.5mmの鋼板では、開口率1%で孔径0.5mmの時、1000HZ以下の周波数領域で概略0.5程度の吸音効果が得られ、板厚0.8mmの鋼板では、開口率2%、孔径2mmで同様の効果が得られる。またこのとき、開口率は3%以下、孔径は3mm以下とされる。微細貫通孔の孔径は製造上の一般常識から板厚程度以下の微細な孔をパンチングであけるのはかなり困難であり、大量生産を前提とした場合には、板厚0.5mmの場合の孔径は0.5から3mm程度となり、板厚0.8mmの場合の孔径は0.8mmから3mm程度の範囲に制限される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車体のトランクリッド用パネル構造体であって、インナーを波形形状に形成することにより、トランクリッド用パネル構造体の張り剛性、曲げ剛性、捩り剛性を向上させることができ、これによってインナー及びアウターの双方を薄板化及び軽量化することができるので、各種製造分野、特に自動車製造分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車体トランクリッド用パネル構造体の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車体トランクリッド用パネル構造体のインナーの波形形状をメッシュで示した斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る車体トランクリッド用パネル構造体のインナーの波形形状をメッシュで示した斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る車体トランクリッド用パネル構造体のインナーの波形形状をメッシュで示した斜視図である。
【図5】従来のビーム型インナーの形状を示す斜視図である。
【図6】トランクリッド構造体への曲げ荷重条件を示す斜視図である。
【図7】トランクリッド構造体への捩り荷重条件を示す斜視図である。
【図8】本発明の別の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の別の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明のインナーの断面形状の一例を示す図である。
【図11】本発明のインナーの断面形状の一例を示す図である。
【図12】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図13】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図14】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図15】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図16】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図17】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図18】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図19】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図20】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【図21】本発明におけるインナーの変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1、11、15、17;インナー
1a、11a、15a、17a;インナー周縁部
1b、11b、15b、17b;インナー中央部
2、12;アウター
8、8a〜8y、16;ビード
9;凹部
13;樹脂層
14;アウター端部
18;山
19a、19b;谷
50;車体トランクリッド用パネル
51;インナー
52;アウター
53;トリム部
54;ビーム
100;支点
101;曲げ荷重
102;捩り荷重
103;集中荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体トランクリッドに使用されるパネル構造体において、アウターパネルとインナーパネルとが空間を介した閉断面構造で結合されており、前記インナーパネルは、周縁部を除いた領域にその断面が波形形状をなす複数本のビードが設けられていることを特徴とする車体トランクリッド用パネル構造体。
【請求項2】
前記ビードの断面の波型形状が、サイン曲線又は台形を描いていることを特徴とする請求項1に記載の車体トランクリッド用パネル構造体。
【請求項3】
前記ビードは、車体トランクリッドの長手方向に対し、平行方向又は斜め方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体トランクリッド用パネル構造体。
【請求項4】
前記ビードは、平面視で同心円状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体トランクリッド用パネル構造体。
【請求項5】
前記ビードは、車体トランクリッドの長手方向に対し、平行方向又は斜め方向に延びている部分と、平面視で同心円状に配列されている部分とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体トランクリッド用パネル構造体。
【請求項6】
前記インナーパネルは、開口率3%以下、孔径3mm以下の吸音効果を有する多数の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車体トランクリッド用パネル構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−281926(P2006−281926A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102715(P2005−102715)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】