説明

車体前部構造および連結部材

【課題】車両前面衝突時にダッシュパネルが車室側に後退することをより一層抑制することができる車体前部構造を得る。
【解決手段】車両前部のエンジンルーム1と、その後方の車室2と、を仕切るダッシュパネル3と、前記ダッシュパネル3の車両前方に配置されたエンジン18のインテークマニホールド19と、前記ダッシュパネル3の上方で車幅方向に架設されたエアボックス11と、前記ダッシュパネル3およびエアボックス11の双方に接続された連結部材14とを有し、前記連結部材14の少なくとも一部と前記インテークマニホールド19とが車幅方向にオーバーラップしている車体前部構造において、当該連結部材14を介して、車両前面衝突時にダッシュパネル3が受ける衝撃をエアボックス11に伝達すると共に、ダッシュパネル3の剛性を高めてインテークマニホールド19を破断させやすくし、ダッシュパネル3が車室2側に後退するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造および連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前面衝突時にダッシュパネルが車室側に後退するのを抑制する車体前部構造として、特許文献1に開示されるものが知られている。
【0003】
この特許文献1では、エンジン本体とダッシュパネルとの間にサージタンクとインテークマニホールドとを有するエンジンの吸気通路を配置する一方、ダッシュパネルには突部を設け、車両前面衝突した場合に、この突部を吸気通路に突き当ててサージタンクとインテークマニホールドとに分割して、サ−ジタンクがダッシュパネルを押圧するのを抑制し、以て、ダッシュパネルが車室側に後退するのを抑制している。
【特許文献1】特開昭62−20718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる構造では、サージタンクの後方移動は抑制できるものの、分割されたインテークマニホールドは後方へ移動可能である。そのため、ダッシュパネルがインテークマニホールドによる押圧を受け、ダッシュパネルの車室側への後退を十分に抑制することができなくなる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、車両前面衝突時にダッシュパネルが車室側に後退することをより一層抑制することができる車体前部構造および連結部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車体前部構造にあっては、車両前部のエンジンルームと、その後方の車室と、を仕切るダッシュパネルと、前記ダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジンのインテークマニホールドと、前記ダッシュパネルの上方で車幅方向に架設されたエアボックスと、前記ダッシュパネルおよびエアボックスの双方に接続された連結部材とを有し、前記連結部材の少なくとも一部と前記インテークマニホールドとが車幅方向にオーバーラップしていることを特徴とする。
【0007】
本発明の連結部材にあっては、車両前部のエンジンルームとその後方の車室とを仕切るダッシュパネルに接続された一方の端部と、前記ダッシュパネルの上方で車幅方向に架設されたエアボックスに接続された他方の端部とを有し、その少なくとも一部が、前記ダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジンのインテークマニホールドの少なくとも一部と、車幅方向にオーバーラップしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連結部材の少なくとも一部とインテークマニホールドとが車幅方向にオーバーラップする位置で、該連結部材がダッシュパネルおよびエアボックスの双方に接続しているため、車両前面衝突時にダッシュパネルがインテークマニホールドから受ける荷重を連結部材を介してエアボックスに伝達することができると共に、ダッシュパネルの剛性がインテークマニホールドに対して相対的に向上してインテークマニホールドを破断させやすくなる。これらにより、ダッシュパネルの後退をより一層抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、縦断面を、水平面に垂直で、車両前後方向と平行な断面と定義する。また、インテークマニホールドにおける吸気流れ方向上流側および吸気流れ方向下流側を、単に上流側、下流側と記す。また、図中、FRは車両前後方向前方を、UPは車両上方を示す。
【0010】
(第1実施形態)図1は、本発明の実施形態にかかる車体前部構造を示す分解斜視図、図2は、連結部材の拡大斜視図、図3は、車体前部構造を示す正面図、図4は、車体前部構造を示す縦断面図、図5は、車体前部構造を示す平面図(図4のA−A断面を含む)、図6は、車体前部構造のインテークマニホールドを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面Bを示す図、図7は、車両前面衝突時における車体前部構造の縦断面図である。
【0011】
本実施形態にかかる車体前部構造は、エンジン18等が収容されるエンジンルーム1とその後方に設けられた車室2とを仕切るダッシュパネル3と、当該ダッシュパネル3の上方に設けられ、ダッシュパネル3よりも上側かつ前側で車幅方向に延びるエアボックス11と、ダッシュパネル3およびエアボックス11の双方に接続される金属製の連結部材14と、を備える。
【0012】
ダッシュパネル3は、図4および図5に示すように、エンジンルーム1の後端部に設けられた縦壁として、金属製のダッシュアッパ4とダッシュロア5とを備える。ダッシュロア5は、前側部材6と後側部材7とを備えており、これら前側部材6と後側部材7との間に形成された間隙には、騒音を抑制するための吸音材8が介装されている。
【0013】
また、本実施形態では、前側部材6の上端部は略水平方向前方に折曲されて取付フランジ部6aが形成されており、この取付フランジ部6aを後述するエアボックスロア12の後端縁下面に接合させることでダッシュパネル3とエアボックス11とを接合させている。
【0014】
さらに、本実施形態では、図1に示すように、ダッシュロア5の中央部を車両前後方向後側に膨出させて上下に伸びる補強部9を設け、これにより、ダッシュロア5の剛性を高めている。このとき、ダッシュロア5の補強部9には、図5に示すように、後方に凹む凹部9aが形成される。
【0015】
この補強部9は、エンジン18の車両前後方向後方で上下方向に延設させ、車両前面衝突時のエンジン18の後退によってダッシュパネル3が押圧される領域P(図1)を上下に貫通させてある。
【0016】
さらに、本実施形態では、補強部9の上端部9bをエアボックス11に接続させている。
【0017】
エアボックス11は、図4に示すように、エアボックス11の底壁および前壁を構成するエアボックスロア12と、ダッシュロア5の上方に延設され、エアボックス11の後壁を構成するダッシュアッパ4と、当該エアボックスロア12およびダッシュアッパ4の上部を覆い、エアボックス11の上壁を構成する被覆部材(図示せず)と、を備え、これらエアボックスロア12、ダッシュアッパ4および被覆部材(図示せず)によって形成された空洞内に、車室2内へ導入する外気を取り入れるようにしたものである。
【0018】
このエアボックスロア12は、図4に示すように、底壁部12bに前壁部12cを接合することで形成されている。そして、底壁部12bの後端部はクランク状に折曲されて取付フランジ部12aが形成されており、上述したように、当該取付フランジ部12aの下面にダッシュパネル3の取付フランジ部6aを接合させている。また、前壁部12cの上端部は前方かつ下方に斜めに折曲されて斜壁部12dが形成されており、この斜壁部12d上にフロントガラス13が載置されている。
【0019】
連結部材14は、図1および図2に示すように、水平片部14aと、一対の側壁部14d,14dが形成された傾斜片部14bと、垂直片部14cと、を備えている。そして、一対の側壁部14d,14dは、図4に示すように、側面視でダッシュロア5とエアボックス11とがなす隅部に対応した形状をしている。
【0020】
さらに、本実施形態では、水平片部14aには取付フランジ部15aが、側壁部14dには取付フランジ部15bおよび取付フランジ部15cが、垂直片部14cには取付フランジ部15dがそれぞれ設けられている。そして、取付フランジ部15aおよび取付フランジ部15bをエアボックス11に、取付フランジ部15cおよび取付フランジ部15dをダッシュパネル3にスポット溶接することで、連結部材14を直接ダッシュパネル3およびエアボックス11に接続している。
【0021】
また、本実施形態では、取付フランジ部15cの一方をダッシュロア5の補強部9にスポット溶接している。すなわち、連結部材14の側壁部14dの一方を補強部9の凹部9a内に入り込ませることで、補強部9の剛性をさらに高めている。さらに、取付フランジ部15dを、凹部9aの両縁間に架設させた状態でダッシュロア5に接合している。そして、かかる構成により、ダッシュロア5と取付フランジ部15dによって閉断面が形成されることとなり、補強部9の剛性をより一層高めている。
【0022】
このとき、図4に示すように、連結部材14の水平片部14aがエアボックスロア12の底壁部12bの下面前端部に、連結部材14の垂直片部14cがダッシュロア5に接続されるとともに、連結部材14の傾斜片部14bに設けた側壁部14dが、ダッシュロア5とエアボックス11とがなす隅部に配置されることになり、エアボックス11の支持剛性が高められ、さらにはフロントガラス13の支持剛性が高められることとなる。
【0023】
さらに、図3に示すように、連結部材14の少なくとも一部と後述するインテークマニホールド19とが車幅方向にオーバーラップするように、当該連結部材14を接合させている。
【0024】
なお、本実施形態では、先ず連結部材14をダッシュパネル3にスポット溶接し、その後にエアボックス11にスポット溶接することで、連結部材14をダッシュパネル3およびエアボックス11に接続している。
【0025】
一方、エンジンルーム1では、エンジン18が横置きに配置されており、このエンジン18の車両前後方向後方に、樹脂製のインテークマニホールド19が配設されている。すなわち、インテークマニホールド19は、エンジン18とダッシュパネル3との間で、ダッシュパネル3に対向するように配置されることになる。
【0026】
このインテークマニホールド19は、エンジン18のシリンダ毎に設けられた管状の複数のブランチ部20と、これらのブランチ部20の上流側端部20cを集結させた管状のコレクタ部21とを備えている。ブランチ部20の下流側端部(インテークマニホールド19のエンジン18との接続側端部)20bは、複数のブランチ部20について一体化された取付フランジ22を介してエンジン18のシリンダヘッド23の背面に接続されている。
【0027】
ブランチ部20は、略U字状に屈曲形成されて、U字の開口24側が前方に向けられると共に、上流側端部20cが上側、下流側端部20bが下側となるように配置されている。そして、下流側端部20bには脆弱部20aが設けられている。本実施形態では、下流側端部20bの周壁20dの肉厚を段差状に薄く形成することで、脆弱部20aを形成している。具体的には、図6に示すように、下流側端部20bの上側の周壁20dの外周面側に段差20eを設け、周壁20dの肉厚を上部に向けて段差状に薄くすることで、インテークマニホールド19に脆弱部20aを形成している。このような構成とすることで、脆弱部20aを基点としてその上部が前方に向けて折れ曲がりやすいインテークマニホールド19を得ることができる。
【0028】
以上の構成による本実施形態において、車両前面衝突が生じた場合には、車体の変形に伴ってエンジン18とインテークマニホールド19とが車両後方へ移動し、図4および図5に一点鎖線で示すように、インテークマニホールド19(ブランチ部20)の後端部がダッシュパネル3に当たる。さらに、エンジン18およびインテークマニホールド19が車両後方へ移動しようとすると、当該インテークマニホールド19がダッシュパネル3から反力を受け、図7に示すように、脆弱部20aを基点に前方に折れ曲がる。
【0029】
このとき、インテークマニホールド19(またはエンジン18)からダッシュパネル3に対して車両前後方向後方に押圧力が印加され、さらに、ダッシュロア5とエアボックス11とを斜めに接続する連結部材14によって、当該連結部材14から引っ張り荷重がエアボックス11に印加される。
【0030】
以上の本実施形態によれば、連結部材14の少なくとも一部とインテークマニホールド19とが車幅方向にオーバーラップする位置で、該連結部材14がダッシュパネル3およびエアボックス11の双方に接続しているため、車両前面衝突時に後退したインテークマニホールド19から押圧されてダッシュパネル3が受けた荷重を、連結部材14を介してエアボックス11に伝達することができると共に、ダッシュパネル3の剛性がインテークマニホールド19に対して相対的に向上してインテークマニホールド19を破断させやすくなる。これらにより、ダッシュパネル3が車室2側に後退するのを抑制することができて、ひいては、車室2内に設定するクラッシュ長を短くすることができる分、車室2内のレイアウト自由度が増加するという利点もある。
【0031】
また、本実施形態によれば、連結部材14をスポット溶接することでダッシュパネル3およびエアボックス11の双方に接続しているため、連結部材14の接合強度の調整を容易に行うことができる。また、連結部材14を直接ダッシュパネル3およびエアボックス11の双方に接続しているため、連結部材14の部品点数の増加を抑えてコスト的に有利に得ることができる上、車体前部構造の軽量化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、ダッシュパネル3に補強部9を設けて、ダッシュパネル3の剛性を高めたため、ダッシュパネル3の車室2側への後退をより抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態においては、連結部材14の側壁部14dの一方を補強部9の凹部9a内に入り込ませたので、補強部9の剛性を高められる。さらに取付ブラケット15dを凹部9aの両縁間に架設させた状態でダッシュパネル3の補強部9に接合させることによって閉断面構造を形成したため、補強部9の剛性をさらに高めてダッシュパネル3の変形をより一層抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、エンジン18の後退によってダッシュパネル3が押圧される領域Pを上下に貫通するように補強部9を設けることで、エンジン18からの押圧力を補強部9に直接的に作用させ、補強部9によるダッシュパネル3の補強効果を増大させている。
【0035】
そして、この補強部9の上端部9bをエアボックス11に接続することで、エンジン18からの押圧力を補強部9からその上端部を介してエアボックス11に分散して、ダッシュパネル3の車室2側への後退をより一層抑制することができる。
【0036】
また、上述したように、補強部9に連結部材14を接続しているため、エンジン18からの押圧力を、補強部9および連結部材14を介してエアボックス11により確実に伝達することができ、その分、ダッシュパネル3の車室2側への後退をより一層抑制することができる。
【0037】
連結部材14の水平片部14aがエアボックスロア12の底壁部12bの下面前端部に、連結部材14の垂直片部14cがダッシュロア5に接続されるとともに、連結部材14の傾斜片部14bに設けた側壁部14dが、ダッシュロア5とエアボックス11とがなす隅部に配置されることになり、エアボックス11の支持剛性が高められ、さらにはフロントガラス13の支持剛性が高められる。
【0038】
さらに、連結部材14の水平片部14aをエアボックスロア12の底壁部12bの下面前端部に、連結部材14の垂直片部14cをダッシュロア5に接続するとともに、連結部材14の傾斜片部14bに設けた側壁部14dを、ダッシュロア5とエアボックス11とがなす隅部に配置させたため、エアボックス11の支持剛性を高め、さらにはフロントガラス13の支持剛性を高めることができて、フロントガラス13の振動に起因するこもり音の発生を抑制することができるという利点もある。
【0039】
また、本実施形態によれば、インテークマニホールド19に脆弱部20aを設けたため、車両前面衝突時にインテークマニホールド19を折曲させ、ダッシュパネル3が押圧された際に受ける荷重を吸収することができるため、ダッシュパネル3が車室2側に後退するのを更に抑制することができる。この際、連結部材14をインテークマニホールド19に接触させるようにすれば、インテークマニホールド19をより確実に破断することができる。
【0040】
さらに、この場合、脆弱部20aを下流側端部20b、すなわち、エンジン18からダッシュパネル3側に張り出すインテークマニホールド19の根元部に相当するエンジン18との接続側端部に設け、当該折曲が生じたときにインテークマニホールド19のほぼ全体がエンジン18に対して剛結されない状態となるようにすることで、ダッシュパネル3に対して実質的に押圧力が作用する状態となるまでのエンジン18の後退許容量を拡大することができ、その分、車両前面衝突時にエンジン18からダッシュパネル3に押圧力が作用する状態になりにくい車体前部構造を得ることができる。
【0041】
また、インテークマニホールド19は下流側端部20bを下側とし上流側端部20cを上側として、開口24側が車両前方に向いた略U字状に屈曲形成され、下流側端部20bの上側の周壁20dに脆弱部20aが設けられているので、折曲が生じたときにインテークマニホールド19の少なくとも一部をエンジン18上方の空間に回転移動させることができ、エンジン18からダッシュパネル3に対して、更に、押圧力が作用する状態になりにくい車体前部構造を得ることができる。
【0042】
一方、下流側端部20bの上側の周壁20dの外周面側に段差20eを設け、周壁20dの肉厚を上部に向けて段差状に薄くすることで、インテークマニホールド19に脆弱部20aを形成しているため、当該脆弱部20aを簡易に形成することができるだけでなく、周壁20dの外周面側を段差状に薄くすることで形成したので、内周面に段差形状を形成する必要が無く、インテークマニホールド19内を流れるエアーに対して悪影響を及ぼすことも無い。
【0043】
(第2実施形態)図8は、本発明の実施形態にかかる車体前部構造を示す分解斜視図、図9は、車体前部構造を示す縦断面図、図10は、車体前部構造を示す平面図(図9のC−C断面を含む)、図11は、車両前面衝突時における車体前部構造の縦断面図である。なお、本実施形態にかかる車体前部構造は、上記第1実施形態にかかる車体前部構造と同様の構成要素を備える。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0044】
本実施形態にかかる車体前部構造は、エンジン18等が収容されるエンジンルーム1とその後方に設けられた車室2とを仕切るダッシュパネル3と、当該ダッシュパネル3の上方に設けられ、ダッシュパネル3よりも上側かつ前側で車幅方向に延びるエアボックス11Aと、ダッシュパネル3およびエアボックス11Aの双方に接続される連結部材14Aと、を備える。
【0045】
本実施形態におけるエアボックス11Aは、エアボックスロア12Aの底壁部12bAと前壁部12cAとが一体に形成されている点で、上記第1実施形態のエアボックス11と異なっている。そして、底壁部12bAの後端部をクランク状に折曲させて取付フランジ部12aAを形成して当該取付フランジ部12aの下面にダッシュパネル3の取付フランジ部6aを接合させているとともに、前壁部12cAの上端部を前方かつ下方に斜めに折曲させて斜壁部12dAを形成して当該斜壁部12dA上にフロントガラス13を載置している。
【0046】
また、本実施形態では、補強部9を、金属製のレインフォース10によってさらに補強している。具体的には、レインフォース10を、天壁部10aと、その上下両側で対をなす上壁部10bおよび下壁部10cと、を備える略コ字状断面形状とし、それら上壁部10bおよび下壁部10cの形状を凹部9aの形状に合わせて台形状として、図9に示すように、上壁部10bおよび下壁部10cを凹部9a内に挿入し、かつ、天壁部10aを凹部9aの両縁間に架設させた状態で、レインフォース10をダッシュロア5に接合している。かかる構成により、ダッシュロア5とレインフォース10によって閉断面が形成される。
【0047】
そして、本実施形態における連結部材14Aは、図8および図9に示すように、金属製の帯状の板状部材をクランク状に折曲してなるものである。また、図10に示すように、短手方向両端部をそれぞれ断面略鉤状となるように折曲して剛性を高めてある。
【0048】
そして、この連結部材14Aの長手方向両端部をそれぞれダッシュパネル3およびエアボックス11Aに接合することで、この連結部材14Aを介してダッシュパネル3とエアボックス11Aとを接続させている。
【0049】
また、本実施形態では、ブラケット17を用いて連結部材14Aをエアボックス11Aに取り付けている。具体的には、図8および図9に示すように、金属製の矩形板状部材を折曲することで天壁部17aと垂下壁部17bとを有する側面視で略L字状のブラケット17を形成し、当該天壁部17aをエアボックスロア12Aの底壁部12bAの下面前端部に接合している。そして、連結部材14Aの上端部に形成された貫通穴25に挿通させたボルトを、ブラケット17に設けたウェルドナット17cに締結することで、連結部材14Aとブラケット17とを接続している。
【0050】
一方、連結部材14Aの下端部に形成された貫通穴16aに挿通させたボルトを、レインフォース10に設けたウェルドナット10dに締結することで、連結部材14Aとレインフォース10とを接続している。これにより、連結部材14Aはレインフォース10を介してダッシュロア5の補強部9に接合される。尚、このレインフォース10との接続部である、連結部材14Aの下端部とインテークマニホールド19とが車幅方向にオーバーラップする位置に配置されている。さらに、本実施形態では、連結部材14Aに形成された貫通穴16aの下方には差込突起16bを設ける一方、レインフォース10のウェルドナット10dの下方には差込穴10eを設け、この差込突起16bを差込穴10eに差し込むようにしており、これにより、連結部材14Aの位置決めおよび仮保持がなされ、取り付け作業をより容易に行えるようにしている。
【0051】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、連結部材14Aの前端部をエアボックスロア12Aの底壁部12bAの下面前端部に接続する一方、連結部材14Aの後端部をレインフォース10に接続することで、連結部材14Aを、ダッシュロア5とエアボックス11とがなす隅部に斜めに取り付け、エアボックス11Aの支持剛性を高め、さらにはフロントガラス13の支持剛性を高めている。
【0052】
以上の本実施形態によれば、補強部9にレインフォース10を接合したので剛性を高められる。さらに当該レインフォース10を凹部9aの両縁間に架設させた状態でダッシュパネル3の補強部9に接合させることによって閉断面構造を形成したため、補強部9の剛性をさらに高めてダッシュパネル3の変形をより一層抑制することができる。その上、このレインフォース10に連結部材14を接続して連結部材14Aをレインフォース10を介して前記補強部9に接続することで、連結部材14の接続部分の剛性を高めて、より一層確実に衝突荷重をエアボックスへと伝達させることができる。
【0053】
さらに、連結部材14Aをエアボックス11Aの前部に接続し、ダッシュロア5とエアボックス11Aとの隅部に斜めに架設したため、エアボックス11Aの支持剛性を高め、さらにはフロントガラス13の支持剛性を高めることができて、フロントガラス13の振動に起因するこもり音の発生を抑制することができるという利点もある。
【0054】
以上、本発明にかかる車体前部構造の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0055】
例えば、連結部材の形状、配置、材質等は種々に変更することができるし、補強部も帯状の板状部材とする等、種々に変更可能である。
【0056】
また、インテークマニホールドの脆弱部は、スリット追加、振動溶着による接ぎ手化等、様々な方法で設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車体前部構造を示す分解斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる連結部材の拡大斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる車体前部構造を示す正面図。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる車体前部構造を示す縦断面図。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる車体前部構造を示す平面図(図4のA−A断面を含む)。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる車体前部構造のインテークマニホールドを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)の断面Bを示す図。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる車両前面衝突時における車体前部構造の縦断面図。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる車体前部構造を示す分解斜視図。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる車体前部構造を示す縦断面図。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる車体前部構造を示す平面図(図9のC−C断面を含む)。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる車両前面衝突時における車体前部構造の縦断面図。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジンルーム
2 車室
3 ダッシュパネル
9 補強部
9a 凹部
9b 上端部
10 レインフォース
11 エアボックス
14 連結部材
14d 側壁部
18 エンジン
19 インテークマニホールド
20a 脆弱部
20b 下流側端部(接続側端部)
20c 上流側端部
20d 周壁
20e 段差
24 開口
P 押圧される領域(押圧される部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のエンジンルームと、その後方の車室と、を仕切るダッシュパネルと、
前記ダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジンのインテークマニホールドと、
前記ダッシュパネルの上方で車幅方向に架設されたエアボックスと、
前記ダッシュパネルおよびエアボックスの双方に接続された連結部材とを有し、
前記連結部材の少なくとも一部と前記インテークマニホールドとが車幅方向にオーバーラップしていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記連結部材を、前記エアボックスの前部に接続したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記連結部材を、スポット溶接により前記ダッシュパネルおよびエアボックスの双方に接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記連結部材に側壁部を設け、当該側壁部を前記ダッシュパネルおよびエアボックスの双方にスポット溶接したことを特徴とする請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記ダッシュパネルに、上下に伸びる補強部を設け、当該補強部に前記連結部材を接続したことを特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記補強部の上端部を前記エアボックスに接続したことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記補強部は前記ダッシュパネルを車両前後方向後側に膨出させて形成したことを特徴とする請求項5または6に記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記補強部はレインフォースにより補強されていることを特徴とする請求項5〜7のうち何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項9】
前記補強部は車両後方に凹む凹部を有し、前記レインフォースは前記凹部の両縁間に架設させた状態で前記ダッシュパネルの補強部に接合していることを特徴とする請求項8に記載の車体前部構造。
【請求項10】
前記連結部材は前記レインフォースを介して前記補強部に接続されたことを特徴とする請求項8または9に記載の車体前部構造。
【請求項11】
前記補強部の少なくとも一部を、車両前面衝突により後退したエンジンによって前記ダッシュパネルが押圧される部位に配設したことを特徴とする請求項5〜10のうち何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項12】
前記インテークマニホールドに脆弱部を設けたことを特徴とする請求項1〜11のうち何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項13】
前記脆弱部は前記インテークマニホールドの前記エンジンとの接続側端部に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の車体前部構造。
【請求項14】
前記インテークマニホールドは前記接続側端部を下側とし上流側端部を上側として、開口側が車両前方に向いた略U字状に屈曲形成され、当該接続側端部の上側の周壁に前記脆弱部を設けたことを特徴とする請求項13に記載の車体前部構造。
【請求項15】
前記脆弱部は前記インテークマニホールドの周壁の肉厚を段差状に薄くすることにより形成されていることを特徴とする請求項12〜14のうち何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項16】
前記脆弱部は前記インテークマニホールドの周壁の外周面側に段差を設け、該周壁の肉厚を薄くすることにより形成されていることを特徴とする請求項15に記載の車体前部構造。
【請求項17】
車両前部のエンジンルームとその後方の車室とを仕切るダッシュパネルに接続された一方の端部と、
前記ダッシュパネルの上方で車幅方向に架設されたエアボックスに接続された他方の端部とを有し、
その少なくとも一部が、前記ダッシュパネルの車両前方に配置されたエンジンのインテークマニホールドの少なくとも一部と、車幅方向にオーバーラップしていることを特徴とする連結部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−153314(P2007−153314A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275591(P2006−275591)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】