説明

車体前部構造

【課題】車輪逃げ部の剛性をより一層好適に確保することが簡単にできる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、右フロントサイドフレーム12の外壁58側に右車輪逃げ部27が形成されている。右車輪逃げ部27は、外壁58に凹み61を形成したものである。凹み61の下部61aに、内壁59に向けて隆起した下外壁ビード66を、車体前後方向に向けて延ばした状態で形成し、内壁59に下外壁ビード66に向けて隆起した下内壁ビード76を形成し、下内壁ビード76に下外壁ビード66を当接させた状態で、接合部位106を、例えばスポット溶接で固着したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体前部構造に係り、特に、左旋回あるいは右旋回した車輪がフロントサイドフレームに干渉することを防ぐ車輪逃げ部を設けた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体前部構造は、左右のフロントサイドフレームを車体前後方向に延ばし、左フロントサイドフレームの外側に左前輪が配置されるとともに、右フロントサイドフレームの外側に右前輪が配置されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−108863号公報
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図9は従来の基本構成を説明する図である。
車体前部構造200は、左右のフロントサイドフレーム201,201を車体前後方向に延ばし、これらのフロントサイドフレーム201,201の略中央部に車体前後方向に向けて上側ビード202,202および下側ビード203,203をそれぞれ延ばし、左右のフロントサイドフレーム201,201間にエンジン・ミッションユニット205を配置し、左フロントサイドフレーム201の外側に左側前輪206を配置するとともに、右フロントサイドフレーム201の外側に右側前輪206を配置したものである。
【0004】
車体前部構造200によれば、左右のフロントサイドフレーム201,201に車体前後方向に向けてビード202…,203…を設けることで、左右のフロントサイドフレーム201,201の座屈強度を調整することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体前部構造200は、左右側の前輪206,206を旋回操作した際に、左右側の前輪206,206が左右のフロントサイドフレーム201,201にそれぞれ干渉しないように、左右のフロントサイドフレーム201,201に前輪206,206の車輪逃げ部(すなわち、凹部)が形成されている。
【0006】
この車輪逃げ部の剛性を確保するために、車輪逃げ部にビード202…,203…を形成している。
この車輪逃げ部の剛性をより一層好適に確保することが好ましく、剛性を簡単に高めることができる技術の実用化が望まれている。
【0007】
本発明は、車輪逃げ部の剛性をより一層好適に確保することが簡単にできる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、閉断面構造のフロントサイドフレームの外壁側に車輪を配置し、この車輪が左旋回あるいは右旋回した際に、フロントサイドフレームに干渉することを防ぐために前記外壁に車輪逃げ部を形成した車体前部構造において、前記車輪逃げ部は、車輪の形状に対応させて凹みを形成し、この凹みに内壁に向けて隆起した外壁ビードを車体前後方向に向けて延ばし、前記フロントサイドフレームの内壁に前記外壁ビードに向けて隆起した内壁ビードを形成し、この内壁ビードに外壁ビードを当接させた状態で固着したことを特徴とする。
【0009】
ここで、フロントサイドフレームに車輪逃げ部として凹みを形成することで、フロントサイドフレームのうち、車輪逃げ部を形成した閉断面構造は、その他の閉断面構造と比べて幅が薄くなる。
そこで、請求項1において、車輪逃げ部に外壁ビードを形成し、フロントサイドフレームの内壁に内壁ビードを形成し、内壁ビードに外壁ビードを当接させて固着するようにした。
よって、外壁ビードを内壁ビードに当接させて接合するだけで、車輪逃げ部を内壁に簡単に一体化し、車輪逃げ部の剛性を一層好適に確保することができる。
これにより、フロントサイドフレームのうち、幅の狭い閉断面構造の剛性を、その他の幅の広い閉断面構造の剛性と等しくできる。
なお、ビードとは、例えば、板材などの部材を補強するために板材に形成した隆起部をいう。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、車輪逃げ部を内壁に一体化することが可能になり、車輪逃げ部の剛性を一層好適に確保することが簡単にできるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。
【0012】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
車体前部構造10は、前車体フレーム10Aを構成する左右のフロントサイドフレーム11,12を所定間隔をおいて車体前後方向に延ばし、左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11の後端11aから左フロアフレーム13を車体後方に延ばし、右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)12の後端12aから右フロアフレーム14を車体後方に延ばし、左右のフロントサイドフレーム11,12間にエンジン・ミッションユニット15を横向きに配置し、左右のフロントサイドフレーム11,12の下部にフロントサブフレーム16を取り付け、フロントサブフレーム16にエンジン・ミッションユニット15を搭載するとともに、左右のフロントサイドフレーム11,12にエンジン・ミッションユニット15を取り付けたものである。
【0013】
左フロントサイドフレーム11は、左前フレーム部材21を車体前後方向に水平に延ばし、左前フレーム部材21の後端21aから左後フレーム部材22を車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように水平に延ばしたものである。
左フロントサイドフレーム11は、上下の面51,52、外壁53および内壁54で閉断面構造に形成されている。
【0014】
右フロントサイドフレーム12は、右前フレーム部材25を車体前後方向に水平に延ばし、右前フレーム部材25の後端25aから右後フレーム部材26を車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように水平に延ばしたものである。
右フロントサイドフレーム12は、上下の面56,57、外壁58および内壁59で閉断面構造に形成されている。
【0015】
左前フレーム部材21の下部に左前取付ブラケット28を設け、右前フレーム部材25の下部に右前取付ブラケット29を設ける。
左前取付ブラケット28に、フロントサブフレーム16の左前端部16aがボルト止めされ、右前取付ブラケット29に、フロントサブフレーム16の右前端部16bがボルト止めされている。
【0016】
左前フレーム部材21は、主要部位を幅W1とし、後端21aを幅W2としたものである。幅W1と幅W2との関係は、W1>W2が成立する。
左後フレーム部材22は、前端22aが幅W2に形成されている。
左前フレーム部材21の後端21aおよび左後フレーム部材22の前端22aを幅W2と小さくすることで、左側前輪(車輪)20aが右旋回した際に、左側前輪20aの前端部が、前端22aに干渉しないように左車輪逃げ部(車輪逃げ部)24を確保する。
【0017】
この前端22aに、エンジン・ミッションユニット15のミッション部31がミッションマウント部33を介して取り付けられている。
なお、左側前輪20aは、左フロントサイドフレーム11の外壁53側に配置されている。
【0018】
右前フレーム部材25は、主要部位を幅W1とし、後端25aを幅W2としたものである。幅W1と幅W2との関係は、W1>W2が成立する。
右後フレーム部材26は、前端26aが幅W2に形成されている。
右前フレーム部材25の後端25aおよび右後フレーム部材26の前端26aを幅W2と小さくすることで、右側前輪(車輪)20bが左旋回した際に、右側前輪20bの前端部が、前端26aに干渉しないように右車輪逃げ部(車輪逃げ部)27を確保する。
【0019】
この前端26aに、エンジン・ミッションユニット15のエンジン部32がエンジンマウント部34を介して取り付けられている。
なお、右側前輪20bは、右フロントサイドフレーム12の外壁58側に配置されている。
【0020】
ところで、上述したように、左後フレーム部材22は、車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように延ばされ、さらに、右後フレーム部材26は、車体後方に向けて徐々に車体中心23に近づけるように延ばされている。
これにより、左右の後フレーム部材22,26のうち、エンジン・ミッションユニット15の後方の部位(以下、「後方部位」と称す)22b,26bで略ハ字状の衝撃吸収部35を形成する。
【0021】
衝撃吸収部35を構成する左側の後方部位22bに、車体中心23に向けて突出させた左中央取付ブラケット37を備える。
さらに、衝撃吸収部35を構成する右側の後方部位26bに、車体中心23に向けて突出させた右中央取付ブラケット38を備える。
【0022】
左中央取付ブラケット37に、左連結部材43aおよび左取付ベース部43bを介して、フロントサブフレーム16のうち、エンジン・ミッションユニット15の後方の左取付部位16eが切り離し可能に連結されている。
右中央取付ブラケット38に、右連結部材45aおよび右取付ベース部45bを介して、フロントサブフレーム16のうち、エンジン・ミッションユニット15の後方の右取付部位16fが切り離し可能に連結されている。
【0023】
左フロアフレーム13は、左後フレーム部材22の後端11aから車体後方に向けて途中まで下り勾配に延ばし、途中の部位から車体後方に向けて水平に延ばした部材である。
右フロアフレーム14は、右後フレーム部材26の後端12aから車体後方に向けて途中まで下り勾配に延ばし、途中の部位から車体後方に向けて水平に延ばした部材である。
【0024】
左フロアフレーム13の車体中心23側に左後取付ブラケット41を設け、右フロアフレーム14の車体中心23側に右後取付ブラケット42を設ける。
左右のフロアフレーム13,14に、ダッシュロアクロスメンバー44が掛け渡されている。このダッシュロアクロスメンバー44に、左右の後取付ブラケット41,42の後部が一体的に設けられている。
【0025】
ここで、前述した前車体フレーム10Aは、主に、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のフロアフレーム13,14およびダッシュロアクロスメンバー44で構成されている。
【0026】
左後取付ブラケット41に、フロントサブフレーム16の左後端部16cがボルト止めされている。さらに、ダッシュロアクロスメンバー44の左端部44aに、左ブラケット17がボルト止めされている。左ブラケット17は、左後端部16cに取り付けられている。
【0027】
また、右後取付ブラケット42に、フロントサブフレーム16の右後端部16dがボルト止めされている。さらに、ダッシュロアクロスメンバー44の右端部44bに、右ブラケット18がボルト止めされている。右ブラケット18は、右後端部16dに取り付けられている。
これにより、前車体フレーム10Aの下部に、フロントサブフレーム16が取り付けられている。
【0028】
フロントサブフレーム16は、左右のサブフレーム部46,47を、それぞれ左右のフロントサイドフレーム11,12に沿わせ、左右のサブフレーム部46,47の前端部を前サブクロスメンバー48で一体に連結し、左右のサブフレーム部46,47の後端部近傍を後サブクロスメンバー49で一体に連結した略矩形状枠体である。
【0029】
ここで、左右のフロントサイドフレーム11,12は左右対称の部材であり、以下、右フロントサイドフレーム12について説明し、左フロントサイドフレーム11の説明を兼ねる。
【0030】
図3は本発明に係る車体前部構造と前側車輪との関係を示す斜視図であり、右側前輪20bが左旋回した状態を示す。
右フロントサイドフレーム12は、右前フレーム部材25の後縁25bと、右後フレーム部材26の前縁26cとを突き合わせて、突き合わせた部位をレーザ溶接で接合して接合部94とすることで、右前フレーム部材25および右後フレーム部材26を一体化したものである。
【0031】
右フロントサイドフレーム12の外壁58側に右車輪逃げ部27が形成されている。
右車輪逃げ部27は、外壁58に凹み61を形成したものである。
これにより、右前フレーム部材25うち、右側前輪20bの前側上部に臨む部位、すなわち右前フレーム部材25の後端25aを幅W2と小さくする。
【0032】
右前フレーム部材25の後端25aを幅W2と小さくすることで、右側前輪20bが左旋回した際に、右側前輪20bの前側上部が外壁58に干渉することを防ぐ。
なお、右後フレーム部材26の前端26aも幅W2に形成されている。
右車輪逃げ部27の構成については、図4、図5で詳しく説明する。
【0033】
図4は本発明に係る車体前部構造の右フロントサイドフレームを示す斜視図、図5は本発明に係る車体前部構造の右フロントサイドフレームを示す分解斜視図である。
右前フレーム部材25は、前外側部材63と、前内側部材64を、一例としてスポット溶接で接合することで閉断面構造に形成した部材である。
【0034】
前外側部材63は、前外壁58aに、右車輪逃げ部27の凹み61を形成し、凹み61に、前内壁59aに向けて隆起した上下の外壁ビード(外壁ビード)65,66を車体前後方向に向けて延ばしたものである。
【0035】
また、前外側部材63は、凹み61の前側の外壁上縁63aに沿って外側に折り曲げた溶接代68を備え、凹み61の後側の外壁上縁63bに沿って内側に折り曲げた折曲部69を備え、この折曲部69から上方に向けて延ばした溶接代71を備える。
さらに、前外側部材63は、外壁下縁63cに沿って内側に折り曲げた折曲部72を備え、この折曲部72から下方に向けて延ばした溶接代73を備える。
【0036】
前内側部材64は、前内壁59aに、上下の外壁ビード65,66に向けて隆起した上下の内壁ビード(内壁ビード)75,76を形成したものである。
また、前内側部材64は、前内壁59aの上縁64aに外側に向けて折り曲げた上面56aを備え、前内壁59aの下縁64bに外側に向けて折り曲げた前下面57aを備える。
【0037】
前上面56aは、前外壁58aの凹み61に対応させて、上面凹み77を形成し、上面凹み77の縁から上方に向けて延ばした溶接代78を備える。
前下面57aは、前外壁58aの凹み61に対応させて、下面湾曲凹み79を形成し、下面湾曲凹み79の縁から下方に向けて延ばした溶接代81を備える。
【0038】
溶接代68と上面56の溶接代74とをスポット溶接で接合し、溶接代71と溶接代78とをスポット溶接で接合する。
さらに、溶接代73と溶接代81とをスポット溶接で接合する。
これにより、閉断面構造の右前フレーム部材25が形成される。
【0039】
右後フレーム部材26は、後外側部材83と、後内側部材84を、一例としてスポット溶接で接合することで閉断面構造に形成した部材である。
【0040】
後外側部材83は、後外壁58bの上縁に沿って内側に折り曲げた折曲部86を備え、この折曲部86から上方に向けて延ばした溶接代87を備え、後外壁58bの下縁に沿って内側に折り曲げた折曲部88を備え、この折曲部88から下方に向けて延ばした溶接代89を備える。
【0041】
後内側部材84は、後内壁59bの上縁に外側に向けて折り曲げた後上面56bを備え、後上面56bの縁から上方に向けて延ばした溶接代91を備え、後内壁59bの下縁に外側に向けて折り曲げた後下面57bを備え、後下面57bの縁から下方に向けて延ばした溶接代92を備える。
【0042】
溶接代86と溶接代91とをスポット溶接で接合し、かつ、溶接代89と溶接代92とをスポット溶接で接合する。
これにより、閉断面構造の右後フレーム部材26が形成される。
右後フレーム部材26の前縁26cを、右前フレーム部材25の後端縁25bに突き合わせ、突き合わせた部位をレーザ溶接で接合して接合部94とすることにより右フロントサイドフレーム12を得る。
【0043】
なお、上述した前後の上面56a,56bは、上面56の構成部材であり、前後の下面57a,57bは、下面57の構成部材である。
さらに、上述した前後の外壁58a,58bは、外壁58の構成部材であり、前後の内壁59a,59bは、内壁59の構成部材である。
【0044】
右フロントサイドフレーム12の外壁58に、接合部94を跨ぐように取付ブラケット95が配置されている。
取付ブラケット95の前部位95aが、接合部94の前部位96に接合されている。さらに、取付ブラケット95の後部位95bが接合部94の後部位97に接合されている。
【0045】
取付ブラケット95は、車体に搭載する部品としてブレーキチューブ98を支える部材である。
この取付ブラケット95は、外壁58に溶接するベース101と、ベース101の下端から外側に向けて水平に張りだした張出部102と、張出部102の前片とベース101の前片に連結した補強片103とからなる。
【0046】
ベース101は、略矩形状に形成され、上辺中央に凹みが形成されている。ベース101の前部位95aを、右前フレーム部材25のうち、接合部94近傍の部位(接合部の前部位)96に、一例としてスポット溶接で接合する。
また、ベース101の後部位95bを、右後フレーム部材26の接合部94近傍の部位(接合部の後部位)97に、一例としてスポット溶接で接合する。
【0047】
張出部102は、略三角形状に形成され、中央に取付孔102aが形成されている。
取付孔102aに、ブレーキチューブ98の雄ねじ(図示せず)を差し込み、張出部102から突出したねじ部にナット104をねじ結合する。
ナット104と雄ねじの頭部(図示せず)とで張出部102を挟持して、張出部102にブレーキチューブ98を取り付ける。
【0048】
ブレーキチューブ98は、図4に示す矢印の如く油圧を伝えるものである。この油圧でブレーキシリンダ(図示せず)を操作し、ブレーキシリンダでブレーキシューを押し出し、ブレーキシューでブレーキディスクを制動させる。
【0049】
右車輪逃げ部27は、前上面56aに上面凹み77を形成し、前下面57aに下面湾曲凹み79を形成し、前外壁58aの一部を上面凹み77および下面湾曲凹み79に倣わせることで凹み61とし、この凹み61の下部61aを、右側前輪20b(図3参照)の形状に対応させて深く形成したものである。
【0050】
さらに、右車輪逃げ部27は、凹み61の下部61aに、内壁59に向けて隆起した下外壁ビード(外壁ビード)66を、車体前後方向に向けて延ばした状態で形成し、内壁59に下外壁ビード66に向けて隆起した下内壁ビード(内壁ビード)76を形成し、下内壁ビード76に下外壁ビード66を当接させた状態で、接合部位106を、例えばスポット溶接で固着したものである。
【0051】
加えて、右車輪逃げ部27は、凹み61のうち、下外壁ビード66の上方に下外壁ビード65を備える。
【0052】
図6は本発明に係る図4の6−6線断面図である。
取付ブラケット95を接合部94に跨がらせて配置する。この状態で、接合部94の前部位96、すなわち、右前フレーム部材25の接合部94近傍に、ベース101の前部位95aをスポット溶接する。
さらに、接合部94の後部位97、すなわち、右後フレーム部材26の接合部94近傍に、ベース101の後部位95bをスポット溶接する。
【0053】
これにより、接合部94を取付ブラケット95で補強することが可能になり、接合部94の強度を簡単に調整することができる。
加えて、取付ブラケット95を接合部94の補強部材として兼用することで、接合部94を補強するために新たな補強部材を設ける必要がない。
【0054】
図7は本発明に係る図4の7−7線断面図である。
右車輪逃げ部27の凹み61は、上部61bを略鉛直状に形成し、上部61bの下端から溶接代73まで下降するとともに、車体中心23(図2参照)に向けて徐々に近づけるように形成する。
【0055】
そして、凹み61の下部61aを、前内壁59aに近接させる。これにより、下部61aの下外壁ビード66を、前内壁59aの下内壁ビード76に当接させることが可能になる。
下外壁ビード66および下内壁ビード76を、一例としてスポット溶接することで固着する。
【0056】
これにより、下内壁ビード76に下外壁ビード66を当接させて接合するだけの簡単な作業で、右車輪逃げ部27を前内壁59aに一体化することが可能になる。
したがって、右車輪逃げ部27の剛性をより一層好適に確保することができる。
【0057】
また、凹み61を、上部61bの下端から溶接代73まで下降するとともに、車体中心23(図2参照)に向けて徐々に近づけることで、凹み61の中央部61cおよび下部61aを、右側前輪20bの前側上部に略倣わせるように形成する。
これにより、凹み61を必要な部位のみ小さくすることが可能になり、右フロントサイドフレーム12の剛性を十分に確保することができる。
【0058】
次に、車体前部構造10の作用を図8に基づいて説明する。
図8(a),(b)は本発明に係る車体前部構造に衝撃荷重がかかった際の荷重の伝達を説明する図である。
(a)において、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端11b,12bに、衝撃荷重Fが車体後方に向けて矢印の如くかかる。
【0059】
(b)において、下外壁ビード66を下内壁ビード76(図7参照)に接合して、図7に示すように右車輪逃げ部27を前内壁59aに一体化し、右車輪逃げ部27の剛性をより一層好適に確保した。
これにより、右フロントサイドフレーム12のうち、右車輪逃げ部27を備えた幅の狭い閉断面構造の剛性を、その他の幅の広い閉断面構造の剛性と等しくできる。
【0060】
加えて、接合部94を取付ブラケット95で補強して、接合部94の強度を調整した。
このように、右車輪逃げ部27の剛性をより一層好適に確保し、さらに、接合部94の強度を調整することで、衝撃荷重Fを、右フロントサイドフレーム12を介してメインフレーム(図示せず)に効率よく伝える。
【0061】
同様に、衝撃荷重Fを、左フロントサイドフレーム11((a)参照)を介してメインフレーム(図示せず)に効率よく伝える。
これにより、メインフレームで衝撃荷重Fを好適に吸収することができる。
【0062】
なお、前記実施の形態では、下外壁ビード66を下内壁ビード76に接合して右車輪逃げ部27を前内壁59aに一体化し、かつ、接合部94を取付ブラケット95で補強して接合部94の強度を調整した例について説明したが、下外壁ビード66を下内壁ビード76に接合するだけでも、メインフレームで衝撃荷重Fを好適に吸収することは可能である。
【0063】
また、前記実施の形態では、凹み61の下部61aを、前内壁59aに近接させて、下部61aの下外壁ビード66を、前内壁59aの下内壁ビード76に接合する例について説明したが、これに限らないで、上下の外壁ビード65,66を上下の内壁ビード75,76にそれぞれ接合することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、旋回した車輪がフロントサイドフレームに干渉することを防ぐ車輪逃げ部を備えた車体前部構造への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造と前側車輪との関係を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造の右フロントサイドフレームを示す斜視図である。
【図5】本発明に係る車体前部構造の右フロントサイドフレームを示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係る図4の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る図4の7−7線断面図である。
【図8】本発明に係る車体前部構造に衝撃荷重がかかった際の荷重の伝達を説明する図である。
【図9】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0066】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、20a…左側前輪(車輪)、20b…右側前輪(車輪)、24…左車輪逃げ部(車輪逃げ部)、27…右車輪逃げ部(車輪逃げ部)、53,58…外壁、59…内壁、61…凹み、61a…下部、66…下外壁ビード(外壁ビード)、76…下内壁ビード(外壁ビード)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面構造のフロントサイドフレームの外壁側に車輪を配置し、この車輪が左旋回あるいは右旋回した際に、フロントサイドフレームに干渉することを防ぐために前記外壁に車輪逃げ部を形成した車体前部構造において、
前記車輪逃げ部は、車輪の形状に対応させて凹みを形成し、この凹みに内壁に向けて隆起した外壁ビードを車体前後方向に向けて延ばし、
前記フロントサイドフレームの内壁に前記外壁ビードに向けて隆起した内壁ビードを形成し、
この内壁ビードに外壁ビードを当接させた状態で固着したことを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−213187(P2006−213187A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28120(P2005−28120)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】