説明

車体後部構造

【課題】 各部材の形状精度をより容易に確保できて製造の手間を軽減しつつ車体の剛性向上を図ることができるリヤシート後部の車体構造を得る。
【解決手段】 リヤサスペンションタワー1間に架設されるパーセルメンバ4と、フロアパネル5の後縁部で車幅方向に延設されるシートバックロア6と、車幅方向両端部でパーセルメンバ4とシートバックロア6との間に架設される二枚のシートバックサイドパネル7と、二枚のシートバックサイドパネル7の間でパーセルメンバ4とシートバックロア6との間に架設されるシートバックセンタパネル8と、を設け、シートバックサイドパネル7とシートバックセンタパネル8との境界部を、連続溶接によって接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関し、特に、リヤシート後部の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリヤシート後部の車体構造として、車室と車体後部空間とを仕切るパーティションパネルに車体正面視でV字型となるビードを形成し、剛性の向上を図るものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−229584公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1では、リヤシート後部に、上記V字型のビード等の凹凸形状を有して上下左右に比較的広い一枚のパーティションパネルを取り付ける構造となっており、しかもパーティションパネル周縁の固定部分が多面的な構成となっているため、当該固定部分でパーティションパネルの形状精度を確保するのが難しく、工順規制や精度管理が必要となる分、製造に手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、各部材の形状精度をより容易に確保できて製造の手間を軽減しつつ車体の剛性向上を図ることができるリヤシート後部の車体構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、リヤサスペンションタワー間に架設されるパーセルメンバと、フロアパネルの後縁部に延設されて車幅方向に長い帯状のシートバックロアと、車幅方向両端側で上記パーセルメンバと上記シートバックロアとの間に架設される二枚のシートバックサイドパネルと、上記二枚のシートバックサイドパネルの間で上記パーセルメンバと上記シートバックロアとの間に架設されるシートバックセンタパネルと、を備え、上記シートバックサイドパネルとシートバックセンタパネルとの境界部を、連続溶接によって接合したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パーティションパネルを、上記二枚のシートバックサイドパネルおよびシートバックセンタパネルの三つに分割して構成し、それらシートバックサイドパネルとシートバックセンタパネルとの境界部を連続溶接によって接合し、この連続溶接を施した部分(連続溶接部)で剛性を強化することができる。よって、凹凸形状を有する一枚の広いパーティションパネルを取り付ける場合に比べて、形状精度を確保しやすくなり、組み立ての手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる車体後部構造の斜視図、図2は、車体後部構造の車幅方向中央部を側方から見た断面図(図1のA−A断面図)、図3は、車体後部構造のパーセルメンバ、シートバックセンタパネル、およびシートバックサイドパネルの上側(後側)の境界部(図1のB部)を示す正面図、図4は、車体後部構造のパーセルメンバ、シートバックセンタパネル、およびシートバックサイドパネルの下側(前側)の境界部(図1のC部)を示す正面図、図5は、上記上側の境界部(図1のB部)を示す断面図(図3のD−D断面図)、図6は、上記下側の境界部(図1のC部)を示す断面図(図4のE−E断面図)である。なお、図1において、UPRは車両上方を、FRは車両前後方向前方を示す。
【0008】
車体側縁に設けられる一対のリヤサスペンションタワー1間には、車幅方向に伸びるパーセル2とレインフォースパーセル3とを接合して矩形閉断面を形成してなるパーセルメンバ4が架設されている。
【0009】
一方、フロアパネル5の後端部は斜め上方に向けて傾斜しており、その後側(上側)の端縁には、車幅方向に長い帯状のシートバックロア6が延設されている。本実施形態では、シートバックロア6の下側の端縁と、フロアパネル5の後側の端縁とが、スポット溶接により、複数の接合点12で接合されている。また、このシートバックロア6は、車体側縁で車両前後方向に伸びるサイドメンバ10間に溶接等によって接合され、架設されている。
【0010】
そして、パーセルメンバ4とシートバックロア6との間に、二つのシートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8が架設されている。シートバックサイドパネル7は、車幅方向両端側にそれぞれ設けられており、シートバックセンタパネル8は、その二枚のシートバックサイドパネル7の間に設けられている。
【0011】
ここで、図2に示すように、パーセルメンバ4の前面、シートバックセンタパネル8(シートバックサイドパネル7)、シートバックロア6、およびフロアパネル5の後面は、平面的に連設される。よって、これらの位置合わせあるいは接合をより容易に行うことができる。
【0012】
シートバックサイドパネル7の上側の端縁は、パーセル2(パーセルメンバ4)の下側の端縁とスポット溶接によって接合されており、また、シートバックサイドパネル7の下側の端縁は、シートバックロア6の上側の端縁とスポット溶接によって接合されている。また、シートバックサイドパネル7の車室外側の端縁は、ホイルハウス11の側面にスポット溶接等によって接合されている。
【0013】
一方、シートバックセンタパネル8の上側の端縁は、パーセルメンバ4の下側の端縁とスポット溶接によって接合されており、また、シートバックセンタパネル8の下側の端縁は、シートバックロア6の上側の端縁とスポット溶接によって接合されている。
【0014】
そして、これらシートバックサイドパネル7とシートバックセンタパネル8とは、その境界部において、連続溶接(例えばレーザ溶接等)によって直線的に接合されている。連続溶接することで、この部分は板厚が増し、剛性が増大することになる。すなわち、この連続溶接部9は、パーセルメンバ4とシートバックロア6との間に架設された補強部材として機能する。なお、本実施形態では、連続溶接部9を正面視で逆ハの字型に形成し、車体のねじれ剛性を高めてある。
【0015】
そして、図3に示すように、連続溶接部9の上端9aは、シートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8とパーセルメンバ4との接合点12の中心線c1(複数の接合点12の中心同士を結ぶ線)より上側に位置している。一方、図4に示すように、連続溶接部9の下端9bは、シートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8とシートバックロア6との接合点12(第二の接合点)の中心線c2(複数の接合点12の中心同士を結ぶ線;第二の中心線)より下側に位置している。
【0016】
すなわち、この連続溶接は、上記二つの中心線c1,c2を跨ぐように、つまり、中心線c1に対してシートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8の外縁側(上端縁側)となる位置9aから、中心線c2に対してシートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8の外縁側(下端縁側)となる位置9bまでの区間で、施されている。こうすることで、二つの中心線c1,c2間に、連続溶接によって剛性が強化されていない区間が無くなり、パーセルメンバ4とシートバックロア6とを、剛性が強化された連続溶接部9によってより確実に締結し、当該連続溶接部9による補強効果をより確実に得ることができる。
【0017】
また、図5から、上記構成により、中心線c1上に連続溶接部9が出現し、中心線c1に沿ったシートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8とパーセルメンバ4との接合も強化されることがわかる。この場合、中心線c1上に連続溶接部9が無ければ、当該連続溶接部9に隣接する二つの接合点12間の部材はパーセルメンバ4のみとなり、他の部分に比べて剛性が低くなってしまうが、本実施形態によれば、そのような剛性低下は生じない。
【0018】
同様に、図6から、上記構成により、中心線c2上に連続溶接部9が出現し、中心線c2に沿ったシートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8とシートバックロア6との接合が強化されることがわかる。なお、この場合は、連続溶接部9に隣接する接合点12でも、シートバックサイドパネル7、シートバックセンタパネル8、およびシートバックロア6の三つの部材を接合し、これら三つの部材の締結強度の強化を図るのに加えて、連続溶接部9によって締結強度をより一層向上している。
【0019】
以上の本実施形態によれば、パーティションパネルを、上記二枚のシートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8の三つに分割して構成し、それらシートバックサイドパネル7とシートバックセンタパネル8との境界部を連続溶接によって接合し、当該連続溶接を施した部分(連続溶接部9)で剛性を強化することができる。よって、凹凸形状を有する広い一枚のパーティションパネルを用いた場合に比べて、形状精度を確保しやすくなり、組み立ての手間を軽減することができる。
【0020】
また、本実施形態によれば、シートバックサイドパネル7とシートバックセンタパネル8との連続溶接が、複数の接合点12の中心同士を結ぶ中心線c1を超えて、当該シートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8の外縁側となる位置まで施されているため、剛性の弱い部分を介在させることなく連続溶接部9がパーセルメンバ4に繋がり、これらの間でより確実に応力を伝達することができるようになる。よって、かかる構成によれば、車体剛性をより確実に向上させることができる。
【0021】
また、本実施形態によれば、シートバックサイドパネル7とシートバックセンタパネル8との連続溶接が、スポット溶接の複数の接合点12を結ぶ中心線c2を超えて、当該シートバックサイドパネル7およびシートバックセンタパネル8の外縁側となる位置まで施されているため、剛性の弱い部分を介在させることなく連続溶接部9がシートバックロア6に繋がり、これらの間でより確実に応力を伝達することができるようになる。よって、かかる構成によれば、車体剛性をより確実に向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、二つの連続溶接部9によってパーセルメンバ4とシートバックロア6とが締結されているため、それら二つの連続溶接部9の間の領域(シートバックセンタパネル8)に、トランクスルーあるいは軽量化を目的とした開口部13(図1)を形成したとしても、その部分で剛性が大きく低下することはない。また、開口部13の有無や開口部13の形状等に合わせてシートバックセンタパネル8のみ仕様を変更し、シートバックサイドパネル7やその他の部材は共用することができるため、パーティションパネル全体を変更する場合に比べて仕様変更を容易にかつ安価に行うことができる。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかる車体後部構造の斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかる車体後部構造の車幅方向中央部を側方から見た断面図(図1のA−A断面図)。
【図3】本発明の実施形態にかかる車体後部構造のパーセルメンバ、シートバックセンタパネル、およびシートバックサイドパネルの上側(後側)の境界部(図1のB部)を示す正面図。
【図4】本発明の実施形態にかかる車体後部構造のパーセルメンバ、シートバックセンタパネル、およびシートバックサイドパネルの下側(前側)の境界部(図1のC部)を示す正面図。
【図5】上記上側(後側)の境界部(図1のB部)を示す断面図(図3のD−D断面図)。
【図6】上記下側(前側)の境界部(図1のC部)を示す断面図(図4のE−E断面図)。
【符号の説明】
【0025】
1 (リヤ)サスペンションタワー
4 パーセルメンバ
5 フロアパネル
6 シートバックロア
7 シートバックサイドパネル
8 シートバックセンタパネル
9 連続溶接部
12 接合点(または第二の接合点)
c1 中心線
c2 (第二の)中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤサスペンションタワー間に架設されるパーセルメンバと、
フロアパネルの後縁部に延設されて車幅方向に長い帯状のシートバックロアと、
車幅方向両端側で前記パーセルメンバと前記シートバックロアとの間に架設される二枚のシートバックサイドパネルと、
前記二枚のシートバックサイドパネルの間で前記パーセルメンバと前記シートバックロアとの間に架設されるシートバックセンタパネルと、
を備え、
前記シートバックサイドパネルとシートバックセンタパネルとの境界部を、連続溶接によって接合したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記シートバックサイドパネルおよびシートバックセンタパネルと、前記パーセルメンバとは、当該パーセルメンバの長手方向に沿って並ぶ複数の接合点でスポット溶接によって接合されており、
前記シートバックサイドパネルとシートバックセンタパネルとの連続溶接が、前記複数の接合点の中心同士を結ぶ中心線を超えて、当該シートバックサイドパネルおよびシートバックセンタパネルの外縁側となる位置まで施されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記シートバックサイドパネルおよびシートバックセンタパネルと、前記シートバックロアとは、当該シートバックロアの長手方向に沿って並ぶ複数の第二の接合点でスポット溶接によって接合されており、
前記シートバックサイドパネルとシートバックセンタパネルとの連続溶接が、前記複数の第二の接合点の中心同士を結ぶ第二の中心線を超えて、当該シートバックサイドパネルおよびシートバックセンタパネルの外縁側となる位置まで施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−160031(P2006−160031A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352934(P2004−352934)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】