説明

車体後部構造

【課題】サイドメンバー近傍の配置スペースを狭めることなく、重量増加を抑制することができる車体後部構造を提供する。
【解決手段】前端がサイドメンバー3の前側屈曲部7よりも車両前方側に結合され、後端はサイドメンバー3の前側屈曲部7から後側屈曲部11に至る傾斜部9に結合されたレインフォース21と、サイドメンバー3の傾斜部9の内方に収容されたバルクヘッド29と、レインフォース21の後端の後方に対向配置され、サスペンションメンバー35をサイドメンバー3に支持する取付部材37とを備え、車体に後方から入力した荷重が、サスペンションメンバー35から取付部材37を介してレインフォース21の後端に伝達されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。更に詳しくは、車体の後部に配設されたサイドメンバーとサスペンションメンバーのサイドメンバーへの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体後部に左右一対のサイドメンバーが前後方向に沿って延設され、該サイドメンバーに下側から取付部材を介してサスペンションメンバーが取り付けられた車体構造を有する車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このサイドメンバーの後部には、側面視が略への字状に屈曲した曲折部が設けられており、該曲折部を補強するために曲折部を上側から覆うように補強パネルを接合している。
【特許文献1】実開平2−44508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の車体後部構造では、曲折部の上部が補強パネルによって突出するため、サイドメンバー近傍における他の部品の配置スペースが狭まるという問題があった。また、補強パネルが大型になるため、重量が大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、サイドメンバー近傍の配置スペースを狭めることなく、重量増加を抑制することができる車体後部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車体後部構造は、その前部から前側屈曲部を境にして後方斜め上方に屈曲して延び、後側屈曲部を境にして略水平状に屈曲する左右一対のサイドメンバーと、前記サイドメンバーの内方に結合されて車両前後方向に沿って延び、前端がサイドメンバーの前側屈曲部よりも車両前方側に結合され、後端はサイドメンバーの前側屈曲部から後側屈曲部に至る傾斜部に結合されたレインフォースと、前記サイドメンバーの傾斜部の内方に結合されたバルクヘッドと、前記レインフォースの後端の後方に対向配置され、サスペンションメンバーをサイドメンバーに支持する取付部材とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車体後部構造によれば、車両が後面衝突を起こし、サスペンションメンバーの取付部材が前方移動してレインフォースの後端に当たったとき、衝突荷重がこのレインフォースを介して車体に伝達される。
【0008】
ここで、レインフォースとバルクヘッドは、サイドメンバーの外方に突出することなくサイドメンバーの内方に配置されているため、サイドメンバー近傍の配置スペースを狭まることがない。さらに、レインフォースが小さくてすむため、重量増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
図1は本発明の実施形態による車体後部を側方から見た断面図、図2は図1を斜め前方から見た斜視図である。
【0011】
車体後部1には、車両前後方向に沿って延びるサイドメンバー3が左右一対に配設されている。該サイドメンバー3は、車両前方側に配置されて略水平状に延びる前部5と、該前部5の後端に連続して形成され、前部5の後端から後方斜め上方に向けて屈曲する前側屈曲部7と、該前側屈曲部7の後端から後方斜め上方に向けて略直線状に延びる傾斜部9と、該傾斜部9の後端から略水平状に屈曲する後側屈曲部11と、該後側屈曲部11の後端から略水平状に延びる後部13と、が連続して一体に形成されている。
【0012】
また、サイドメンバー3は、上方が開放された断面略ハット状に形成されている。具体的には、略水平状に延びる底面部15と、該底面部15の左右両端から上方に屈曲して延びる側面部17と、該側面部17の上端から左右両側に向けて屈曲して延びる接合フランジ部19と、から一体に形成されている。
【0013】
前記サイドメンバー3の内方には、レインフォース21が収納配置されている。このレインフォース21は、サイドメンバー3に沿って車両前後方向に延設されており、前端に設けられた縦壁23と、該縦壁23の上端から後方に延びる底壁25と、縦壁23の左右両端から屈曲して前方に延びると共に、底壁25の左右両端から屈曲して上方に延びるフランジ27とから一体に形成されている。このように、レインフォース21は、底壁25と左右のフランジ27,27から断面略コ字状に形成され、このフランジ27がサイドメンバー3の側面部17に接合されることによって、レインフォース21はサイドメンバー3に結合している。なお、本実施形態では、後述するバルクヘッド29もレインフォース21に一体に形成されているが、バルクヘッド29はレインフォース21と別体に構成しても良い。前記縦壁23は、サイドメンバー3の前部5の前端近傍に配置され、サイドメンバー3の底面部15、側面部17に略直交している。底壁25の前端部分は、サイドメンバー3の側面部17の上部に接合されており、後端部分は、サイドメンバー3の傾斜部9の底面部15に接合されている。
【0014】
また、レインフォース21の後端には、バルクヘッド29が一体に形成されている。つまり、該バルクヘッド29は、サイドメンバー3の傾斜部9に配設されており、サイドメンバー3の底面部15と側面部17の双方に略直交する板材であり、バルクヘッド29を介してサイドメンバー3内部の空間を画成している。また、バルクヘッド29には、左右両側にフランジ31,31が形成されており、該フランジ31,31がサイドメンバー3の側面部17に接合されている。
【0015】
そして、サイドメンバー3の後側屈曲部11の下部には、取付ブラケット33が固定されており、サスペンションメンバー35の前端は、取付部材37を介して前記サイドメンバー3の取付ブラケット33に支持されている。この取付部材37は、サスペンションメンバー35の前端に設けられた円筒状のカラー39と、該カラー39の上面の中央部上方に突出して取付ブラケット33に係止された支軸41と、取付ブラケット33の下面とカラー39の上面との間に介装されたスペーサ43とを備えている。また、サイドメンバー3の前側屈曲部7と支軸41の下端とは、連結ブラケット45を介して連結されている。
【0016】
図1に示すように、取付部材37は、レインフォース21の後端及びバルクヘッド29の双方に対向して配置されている。
【0017】
次いで、図1に示したレインフォース21、バルクヘッド29、取付部材37を配置する部位の位置関係を図3を用いて説明する。
【0018】
まず、各寸法を説明する。円筒状のカラー39の直径をRとし、カラー39の高さをZとする。カラー39の上面の前端をAとし、このAから前方に向けて水平に移動させてサイドメンバー3の底面部15に当たった点をBとする。このB点からサイドメンバー3の底面部15に沿って斜め下方に距離Z分だけ移動した点をCとする。さらに、カラー39の上面の中央部をDとし、このDを通り、サイドメンバー3の底面部15と直交する点をEとする。
【0019】
以上の場合、カラー39の上面の上下方向位置は、サイドメンバー3の前側屈曲部7の下面よりも上方側に配置することが好ましい。また、支軸41の中心(即ち、D点)は、後側屈曲部11の後端からR分だけ後方側の点よりも前側に配置することが好ましい。そして、バルクヘッド29は、EとCとの間に配置することが好ましい。
【0020】
図4は、本発明の実施形態による車体後部に車両後方から衝突荷重が入力されたときの変形状態を示す側面図である。
【0021】
車両が後面衝突を起こすと、図4の矢印に示すように、サスペンションメンバー35とサイドメンバー3とに前方に向かう衝突荷重が入力される。サスペンションメンバー35の取付部材37は前方に移動すると、該取付部材37は、サイドメンバー3におけるレインフォース21の後端に対応する部位に当たる。これにより、レインフォース21の底壁25を介して衝突荷重がサイドメンバー3の前部5から車体側に伝達される。また、サイドメンバー3には、バルクヘッド29が配設されているため、取付部材37がサイドメンバー3に突き当たった場合でも、サイドメンバー3の断面が潰れて変形することを抑制される。
【0022】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
【0023】
前記バルクヘッド29は、前記レインフォース21の後端又はそれよりも後方側に配置すると共に、前記取付部材37は、前記レインフォース21の後端及びバルクヘッド29の双方の後方側に対向配置している。従って、車両が後面衝突を起こし、サスペンションメンバー35に車両前方に向かって入力された衝突荷重は、取付部材37を介してレインフォース21の後端及びバルクヘッド29の双方に伝達されるため、衝突エネルギーを更に効率的に吸収することができる。また、レインフォース21とバルクヘッド29が長手方向に並設されるため、それぞれのレインフォース21とバルクヘッド29が効率的に衝突エネルギーを吸収することができる。
【0024】
また、前記バルクヘッド29は、前記レインフォース21の後端に一体に形成しているため、バルクヘッド29とレインフォース21とが一体となって衝突エネルギーを吸収することができる。
【0025】
そして、前記サイドメンバー3は、上方側が開放された断面略ハット状に形成され、前記レインフォース21は、左右のフランジ27,27が上方に屈曲した断面略コ字状に形成され、これらの左右のフランジ27,27が、前記サイドメンバー3の側面部17に接合されている。このため、サイドメンバー3の前側屈曲部7を補強することができ、更に効率的に衝突エネルギーを吸収することができる。
【0026】
さらに、前記レインフォース21の前部は、サイドメンバー3の側面部17の上部に結合され、後部はサイドメンバー3の傾斜部9の底面部15に結合されている。このため、レインフォース21の前部における閉断面構造の断面係数が大きくなり、更に効率的に衝突エネルギーを吸収することができる。
【0027】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、本発明の技術思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
【0028】
例えば、前記実施形態では、バルクヘッド29はレインフォース21の後端に一体形成したが、図5に示すように、バルクヘッド51をレインフォース53と分離させて、レインフォース53の後端53aから後方側に離間させて設けても良い。
【0029】
また、図6に示すように、バルクヘッド51をレインフォース53と分離させると共に、レインフォース53の後端よりも前側に配置し、バルクヘッド51をレインフォース53と交差させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態による車体後部を側方から見た断面図である。
【図2】図1を斜め前方から見た斜視図である。
【図3】図1における位置関係を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態による車体後部に車両後方から衝突荷重が入力されたときの変形状態を示す側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態による車体後部を側方から見た断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態による車体後部を側方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…車体後部
3…サイドメンバー
5…前部
7…前側屈曲部
9…傾斜部
11…後側屈曲部
13…後部
15…底面部
17…側面部
19…接合フランジ部
21,53…レインフォース
23…底壁
23…縦壁
27…フランジ
29,51…バルクヘッド
31…フランジ
33…取付ブラケット
35…サスペンションメンバー
37…取付部材
39…カラー(取付部材)
41…支軸(取付部材)
43…スペーサ(取付部材)
45…連結ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に車両前後方向に沿って左右一対に配設されると共に、その前部から前側屈曲部を境にして後方斜め上方に屈曲して延び、後側屈曲部を境にして略水平状に屈曲するサイドメンバーと、
前記サイドメンバーの内方に結合されて車両前後方向に沿って延び、前端がサイドメンバーの前側屈曲部よりも車両前方側に結合され、後端はサイドメンバーの前側屈曲部から後側屈曲部に至る傾斜部に結合されたレインフォースと、
前記サイドメンバーの傾斜部の内方に結合されたバルクヘッドと、
前記レインフォースの後端の後方に対向配置され、サスペンションメンバーをサイドメンバーに支持する取付部材とを備え、
車体に後方から入力した荷重が、前記サスペンションメンバーから取付部材を介してレインフォースの後端に伝達されるように構成したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記バルクヘッドは、前記レインフォースの後端又はそれよりも後方側に配置すると共に、前記取付部材は、前記レインフォースの後端及びバルクヘッドの双方の後方側に対向配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記バルクヘッドは、前記レインフォースの後端に一体に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記サイドメンバーは、上方側が開放された断面略ハット状に形成され、前記レインフォースは、左右のフランジが上方に屈曲した断面略コ字状に形成され、これらの左右のフランジが、前記サイドメンバーの側面部に接合されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記レインフォースの前部は、サイドメンバーの側面部の上部に結合され、後部はサイドメンバーの傾斜部の底面部に結合されたことを特徴とする請求項4に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−18052(P2010−18052A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177864(P2008−177864)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】