説明

車体後部構造

【課題】車体構造の特性に見合った方法で車体の捩れを抑制して車体剛性の向上を図ることを可能にする。
【解決手段】後部クロスメンバ34の中央部34aと左のリヤフレーム15の前部15aとに渡される左の補強バー(左の補強部材)38と、後部クロスメンバ34の中央部34aと右のリヤフレーム16の前部16aとに渡される右の補強バー(右の補強部材)39と、左右のリヤピラー23,23を経由させ、左右のセンタピラー18,18と左右のリヤダンパハウジング25,25とをそれぞれ繋ぐ左右の前後メンバ27,27と、これらの左右の前後メンバ27,27を繋ぐ上部クロスメンバ36とを備え、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33と上部クロスメンバ36との間に略ハ字状のリヤバルクヘッド51が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のリヤピラーの上部に上部クロスメンバを渡し、左右のリヤフレームに下部クロスメンバを渡し、これらの上部及び下部クロスメンバにリヤバルクヘッドを設けた車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造として、車室の後方からトランクルームの前方部分が位置する車体後部の捩れを防止したものが知られている。
この種の車体後部構造は、車体の捩れ中心を補強するようにしたものであった。
このような、車体後部構造として、左右のリヤピラーの上部に上部クロスメンバ渡し、左右のリヤフレームに下部クロスメンバを渡し、これらの上部及び下部クロスメンバに略V字のリヤバルクヘッドを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車体後部構造は、フロアパネルの中央部に車体前後方向に延びるフロアトンネルと、フロアトンネルに沿って設けられ、フロアトンネルとの間に閉断面を形成するトンネルレインフォースメントと、車体上部にて車幅方向に設けた上部クロスメンバと、この上部クロスメンバの左端部とトンネルレインフォースメントとを連結する左の補強メンバと、上部クロスメンバの右端部とトンネルレインフォースメントとを連結する右の補強メンバとから構成されたものである。
すなわち、V字に配置された左右の補強メンバで、車体の捩れ中心を補強するようにしたものである。
【0004】
例えば、特許文献1の車体後部構造の下部に、車体前方に向けて開口させた略ハ字状の
左右のブレースバー(補強部材)を設けた車体では、車体下方の捩れが抑制されるため、車体の捩れ中心が上方に移動することが知られる。そこで、車体構造の特性に見合った車体の捩れを抑制する対策が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−137137公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体構造の特性に見合った方法で車体の捩れを抑制して車体剛性の向上を図ることができる車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体側方の骨格をなす左右のセンタピラーと、車体後部側方の骨格をなす左右のリヤピラーと、車体前後方向に延ばした左右のサイドシルと、これらの左右のサイドシルの後部からそれぞれ車体後方に延ばした左右のリヤフレームと、これらの左右のリヤフレームに支持される左右のリヤダンパハウジングと、左右のリヤフレームの後方に渡した後部クロスメンバと、左右のリヤフレームの前方に渡した前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)とを備えた車体後部構造において、後部クロスメンバの中央部と左のリヤフレームの前部とに渡される左の補強部材と、後部クロスメンバの中央部と右のリヤフレームの前部とに渡される右の補強部材と、左右のリヤピラーを経由させ、左右のセンタピラーと左右のリヤダンパハウジングとをそれぞれ繋ぐ左右の前後メンバと、これらの左右の前後メンバを繋ぐ上部クロスメンバとを備え、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)と上部クロスメンバとの間に略ハ字状のリヤバルクヘッドが設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、リヤバルクヘッドが、上部クロスメンバ、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)及び左右のリヤピラーの左右のインナパネルで構成される略矩形の開口部を覆うパネルであり、このパネルに略ハ字状の補強ビードが形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体側方の骨格をなす左右のセンタピラーが設けられ、車体後部側方の骨格をなす左右のリヤピラーが設けられ、車体前後方向に左右のサイドシルが延ばされ、これらの左右のサイドシルの後部からそれぞれ車体後方に左右のリヤフレーム延ばされ、これらの左右のリヤフレームに支持される左右のリヤダンパハウジングが設けられ、左右のリヤフレームの後方に後部クロスメンバを渡し、左右のリヤフレームの前方に前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)を渡した。
左右のリヤピラーを経由させ、左右のセンタピラーと左右のリヤダンパハウジングとをそれぞれ左右の前後メンバで繋ぎ、これらの左右の前後メンバを上部クロスメンバで繋ぐ。
後部クロスメンバの中央部と左のリヤフレームの前部とに渡される左の補強部材と、後部クロスメンバの中央部と右のリヤフレームの前部とに渡される右の補強部材とが設けられた車体では、車体下方の捩れが抑制されるため、車体の捩れ中心が上方に移動することが知られる。そこで、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)と上部クロスメンバとの間に略ハ字状のリヤバルクヘッドを設けることで、車体構造の特性に見合った車体の捩れを抑制する対策を施すことができる。この結果、車体剛性の向上を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、リヤバルクヘッドが、上部クロスメンバ、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)及び左右のリヤピラーの左右のインナパネルで構成される略矩形の開口部を覆うパネルであり、このパネルに略ハ字状の補強ビードが形成されたので、リヤバルクヘッドは1部品で構成することができる。この結果、リヤバルクヘッドの簡素化を図ることができる。
また、パネルに略ハ字状の補強ビードが形成されたので、例えば、リヤバルクヘッドに他の周辺部品を取付けることができる。この結果、リヤバルクヘッドの多機能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車体後部構造の後部上方からの斜視図である。
【図2】図1に示された車体後部構造の後部下方から見た斜視図である。
【図3】図1に示された車体後部構造の正面図である。
【図4】図1に示された車体後部構造の応力集中の模式図である。
【図5】図1に示された車体後部構造の比較検討図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0013】
図1〜図3に示されるように、車体後部構造20は、車体前後方向に延ばした左右のサイドシル13,13と、これらのサイドシル13,13の後端から車体後方へ延出した左右のリヤフレーム15,16と、左右のサイドシル13,13で支持されるフロントフロア17と、このフロントフロア17の中央に前後方向に延ばされたフロアトンネル19と、フロアトンネル19から左右に延ばされ、左右のサイドシル13,13に連結される左右の連結メンバ21,21と、左右のリヤフレーム15,16の前部15a,16aに渡されたミドルクロスメンバ22と、左右のリヤフレーム15,16の後部15b,16bの前方に渡された前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33と、左右のリヤフレーム15,16の後部15b,16bの中間に渡された後部クロスメンバ34と、左右のリヤフレーム15,16の後端部を繋ぐ後端クロスメンバ35と、左右のリヤフレーム15,16の後部外方に設けられた左右のリヤダンパハウジング25,25と、これらの左右のリヤダンパハウジング25,25の前後位置にて左右のリヤフレーム15,16に渡したリヤダンパクロスメンバ41と、リヤダンパハウジング25,25の外方に設けられる左右のリヤホイールハウス26,26と、左のリヤフレーム15の前部15aと後部クロスメンバ34の中央部34aを繋ぐ左の補強バー(左の補強部材)38と、右のリヤフレーム16の前部16aと後部クロスメンバ34の中央部34aを繋ぐ右の補強バー(右の補強部材)39と、左右のサイドシル13,13の後部から立ち上げた左右のセンタピラー18,18と、これらのセンタピラー18,18の後方に設けた左右のリヤピラー23,23と、左右のリヤピラー23,23に渡した上部クロスメンバ(リヤパーセルメンバ)36と、この上部クロスメンバ36で支持されるパーセルシェルフ37と、左右のセンタピラー18,18から左右のリヤピラー23,23を経由させ、左右のリヤダンパハウジング25,25に渡した前後メンバ27,27(一方不図示)と、左右のリヤダンパハウジング25,25から後端クロスメンバ35に渡したリヤホイールハウスアッパメンバ28,28(一方不図示)と、上部クロスメンバ36と前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33とに車体上下方向に渡され、車室12と荷室14とを仕切るリヤバルクヘッド(仕切部材)51とを備える。
【0014】
上部クロスメンバ(リヤパーセルメンバ)36は、詳細には左右のリヤピラー23,23を経由させた前後メンバ(クォータロアメンバ)27,27に支持させたものである。
左右のサイドシル13,13は、車体前後方向に直線的に配置される。
左右のリヤフレーム15,16は、前部15a,16aが車体内方に湾曲形成されるとともに、車体上方に湾曲形成される。また、後部15b,16bが直線的に形成される。
【0015】
左右の補強バー(左右のブレース)38,39は、前方を開口させたハの字状に斜めに配置される左右の補強部材である。補強バー38,39は、閉断面構造にて高強度に構成される。
【0016】
上部クロスメンバ36、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33及び左右のリヤピラー23,23の左右のインナパネル24,24で略矩形の開口部52が形成される。リヤバルクヘッド(仕切部材)51は、略矩形の開口部52を仕切る部材であるとともに、車体剛性を向上させる部材である。
【0017】
リヤバルクヘッド(仕切部材)51は、本体パネル56と、上部クロスメンバ36に結合される左右の上部結合部53,53と、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33に結合される左右の下部結合部54,54及び中央下部結合部55と、左右のリヤホイールハウス26,26に結合される左結合部57及び右結合部58と、上部結合部53と左結合部57との間に設けられた左の補強ビード61,61と、上部結合部53と右結合部58との間に設けられた右の補強ビード62,62と、左右の補強ビード61,61,62,62の上部外方に設けられ、ハーネスや電装部品の組付け作業用の左右の切り欠き64,64と、左右の補強ビード61,61,62,62間で上部に設けられ、ハーネスや電装部品の組付け作業用の中央孔65と、左右の補強ビード61,61,62,62間で下部に設けられ、ハーネスや電装部品の組付け作業用の左右の中央切り欠き66,66とからなる。
【0018】
図4に示されたように、上記車体後部構造20を有する車両では、リヤバルクヘッド51の設置部分において、応力が集中する部分はエリアS1,S2であることが実験的に求められている。さらに、エリアS1,S2は上方に開口したハ字状に現れることも実験的に確認されている。そこで、応力集中部位であるエリアS1,S2の強度を高めることで、効率的なボディ剛性の向上を図ることができることが予想される。
【0019】
図5(a)において、比較例の車体後部構造100が示され、車体後部構造100は、車体の下部に、図2に示された前方を開放させたハ字状の左右の補強バー(左右の補強部材)38,39が設けられたものではない。車体後部構造100では、車体中心線廻りの車体捩れ中心C1が車体上下方向に関してほぼ中央付近に位置することが実験により求められている。さらに、車体後部構造100では、応力が集中するエリアT1〜T4が車体捩れ中心C1を基点としてX字状に現れることが知られている。
【0020】
図5(b)において、実施例の車体後部構造20が示され、車体後部構造20は、後部クロスメンバ34(図2参照)の中央部34aと左のリヤフレーム15の前部15aとに左の補強バー(左の補強部材)38が渡され、後部クロスメンバ34の中央部34aと右のリヤフレーム16の前部16aとに右の補強バー(右の補強部材)39が渡されたものである。
【0021】
車体後部構造20では、車体下方の捩れが抑制されるため、車体の捩れ中心C2が上方に移動することが実験により求められている。さらに、車体後部構造20では、応力が集中するエリアS1,S2が車体捩れ中心C2を基点としてハ字状に現れることが知られている(図4参照)。
【0022】
図3に示されたように、左右の補強ビード61,61,62,62は、図4に示される応力が集中するエリアS1,S2に設けられる略ハ字状に形成された強度向上部分である。
【0023】
車体後部構造20では、車体側方の骨格をなす左右のセンタピラー18,18が設けられ、車体後部側方の骨格をなす左右のリヤピラー23,23が設けられ、車体前後方向に左右のサイドシル13,13が延ばされ、これらの左右のサイドシル13,13の後部からそれぞれ車体後方に左右のリヤフレーム15,16延ばされ、これらの左右のリヤフレーム15,16に支持される左右のリヤダンパハウジング25,25が設けられ、左右のリヤフレーム15,16の後方に後部クロスメンバ34を渡し、左右のリヤフレーム15,16の前方に前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33を渡した。
【0024】
左右のリヤピラー23,23を経由させ、左右のセンタピラー18,18と左右のリヤダンパハウジング25,25とをそれぞれ左右の前後メンバ27,27で繋ぎ、これらの左右の前後メンバ27,27を上部クロスメンバ36で繋ぐ。
【0025】
後部クロスメンバ34の中央部34aと左のリヤフレーム15の前部15aとに渡される左の補強バー(左の補強部材)38と、後部クロスメンバ34の中央部34aと右のリヤフレーム16の前部16aとに渡される右の補強バー(右の補強部材)39とが設けられた車体では、車体下方の捩れが抑制されるため、車体の捩れ中心が上方に移動することが知られる。そこで、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33と上部クロスメンバ36との間に略ハ字状のリヤバルクヘッド51を設けることで、車体構造の特性に見合った車体の捩れを抑制する対策を施すことができる。この結果、車体剛性の向上を図ることができる。
【0026】
リヤバルクヘッド51は、上部クロスメンバ36、前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)33及び左右のリヤピラー23,23の左右のインナパネル24,24で構成される略矩形の開口部52を覆うパネルであり、このパネルに略ハ字状の左右の補強ビード61,61,62,62が形成されたので、リヤバルクヘッド51は1部品で構成することができる。この結果、リヤバルクヘッド51の簡素化を図ることができる。
【0027】
また、パネルに略ハ字状の左右の補強ビード61,61,62,62が形成されたので、例えば、リヤバルクヘッド51に他の周辺部品を取付けることができる。この結果、リヤバルクヘッド51の多機能化を図ることができる。
【0028】
尚、本発明に係る車体後部構造は、図3に示すように、リヤバルクヘッド51に補強ビード61,61,62,62が設けられたが、これに限るものではなく、補強ビード該当部位にスチフナを併用するものであってもよい。
本発明に係る車体後部構造は、図3に示すように、左右に2本ずつの左の補強ビード61,61及び右の補強ビード62,62が設けられたが、補強ビードの数は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る車体後部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0030】
10…車両、13…サイドシル、15,16…左右のリヤフレーム、18…センタピラー、20…車体後部構造、23…リヤピラー、24…インナパネル、25…リヤダンパハウジング、27…前後メンバ(クォータロアメンバ)、33…前部クロスメンバ(下部クロスメンバ)、34…後部クロスメンバ、36…上部クロスメンバ(リヤパーセルメンバ)、38,39…左右の補強バー(左右の補強部材)、51…リヤバルクヘッド、52…開口部、61,62…左右の補強ビード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側方の骨格をなす左右のセンタピラーと、車体後部側方の骨格をなす左右のリヤピラーと、車体前後方向に延ばした左右のサイドシルと、これらの左右のサイドシルの後部からそれぞれ車体後方に延ばした左右のリヤフレームと、これらの左右のリヤフレームに支持される左右のリヤダンパハウジングと、左右のリヤフレームの後方に渡した後部クロスメンバと、左右のリヤフレームの前方に渡した前部クロスメンバと、を備えた車体後部構造において、
前記後部クロスメンバの中央部と前記左のリヤフレームの前部とに渡される左の補強部材と、前記後部クロスメンバの中央部と前記右のリヤフレームの前部とに渡される右の補強部材と、前記左右のリヤピラーを経由させ、前記左右のセンタピラーと前記左右のダンパハウジングとをそれぞれ繋ぐ左右の前後メンバと、これらの左右の前後メンバを繋ぐ上部クロスメンバとを備え、
前記前部クロスメンバと前記上部クロスメンバとの間に略ハ字状のリヤバルクヘッドが設けられたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤバルクヘッドは、前記上部クロスメンバ、前記前部クロスメンバ及び左右のリヤピラーの左右のインナパネルで構成される略矩形の開口部を覆うパネルであり、このパネルに略ハ字状の補強ビードが形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−247610(P2010−247610A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98030(P2009−98030)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】