説明

車体構造

【課題】ドア開口枠などの開口枠部を形成する枠骨格の剛性を容易に高めることができる車体構造を提供する。
【解決手段】車体構造10は、前後のドア開口枠23,24を形成するルーフサイドレール28が、アウタパネル41の上下の外フランジ52,53にインナパネル42の上下の内フランジ56,57を溶接で接合されている。ルーフサイドレール28は、上外フランジ52に上内フランジ56が溶接で接合されて上フランジ37が形成され、上フランジ37の先端37aに第1溶接ビード45が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口枠や窓開口枠などの開口枠部を枠骨格で形成し、枠骨格に一対のフランジを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体構造は、ドア開口枠などの開口枠部を形成する複数の枠骨格(サイドシルなど)を備え、複数の枠骨格を組み合わせて構成されている。
このサイドシルは、アウタパネルおよびインナパネル間に補強部材を介在させた状態で、アウタパネルのフランジにインナパネルのフランジが溶接で接合されて閉断面に形成されている。
【0003】
ところで、サイドシルの略中央にはセンタピラーが設けられている。よって、サイドシルに下向きの荷重がかかった場合に、センタピラーを支点にして曲げモーメントが作用することが考えられる。
また、センタピラーに車体外側から荷重がかかった場合に、サイドシルにねじりモーメントが作用することが考えられる。
【0004】
そこで、サイドシルのなかには、アウタパネルおよびインナパネル間に介在させる補強部材をアウタパネルに沿わせ、さらに補強部材を略V字断面に形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−291858号公報
【0005】
特許文献1のサイドシルによれば、補強部材をアウタパネルに沿わせることでアウタパネルを補強することが可能である。
さらに、補強部材を略V字断面に形成することで補強部材の剛性を高めることが可能である。
このように、アウタパネルを補強するとともに、補強部材の剛性を高めることで、サイドシルの剛性を高めることができる。
よって、サイドシルの剛性をねじりモーメントや曲げモーメントに対して高めることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ドア開口枠などの開口枠部は、サイドシルに他の枠骨格(例えば、ルーフサイドレール)を組み合わせて形成されている。
このため、ルーフサイドレールなどの他の枠骨格にも、サイドシルと同様に、比較的大きなねじりモーメントや曲げモーメントが作用することが考えられる。
よって、ルーフサイドレールなどの他の枠骨格も剛性を高める必要がある。
【0007】
しかし、特許文献1の技術は、補強部材をアウタパネルに沿って形成するとともに、補強部材を略V字断面に形成することで、サイドシルの剛性を高めるものである。
よって、この技術をルーフサイドレールなどの他の枠骨格に適用するためには、ルーフサイドレールなどの他の枠骨格に沿わせるとともに、略V字断面に形成した補強部材を新たに用意する必要がある。
【0008】
しかし、ルーフサイドレールなどの他の枠骨格は、サイドシルの断面形状と異なるため、補強部材の一部をアウタパネルに沿わせ、かつ補強部材を略V字断面に形成することが困難な場合がある。
このため、特許文献1の技術では、ドア開口枠などの開口枠部を形成する枠骨格(サイドシルやルーフサイドレールなど)の剛性を高めることは難しいとされていた。
【0009】
本発明は、ドア開口枠などの開口枠部を形成する枠骨格の剛性を容易に高めることができる車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ドア開口枠や窓開口枠などの開口枠部を形成する枠骨格が、車体外側に臨むアウタパネルの一対の外フランジに、車体内側に臨むインナパネルの一対の内フランジを溶接で接合することにより閉断面に形成された車体構造において、前記一対の外フランジの一方に、前記一対の内フランジの一方が溶接で接合されることで一方のフランジが形成され、前記一方のフランジの先端に、前記一方のフランジに対して所定高さの第1溶接ビードが形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記一対の外フランジの他方に、前記一対の内フランジの他方が溶接で接合されることで他方のフランジが形成され、前記他方のフランジの先端に、前記他方のフランジに対して所定高さの第2溶接ビードが形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3において、前記第1溶接ビードの所定高さは、前記一方のフランジに対して1mmを超えるように設定され、前記第2溶接ビードの所定高さは、前記他方のフランジに対して1mmを超えるように設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ドア開口枠などの開口枠部を形成する枠骨格は、枠骨格の一方フランジ先端に、第1溶接ビードが形成されている。
第1溶接ビードは、枠骨格のフランジに対して所定高さに形成されている。
【0014】
第1溶接ビードを所定高さに形成することで、第1溶接ビードの断面積を比較的大きく確保することが可能である。
よって、枠骨格の断面二次モーメントを増すことができるので、曲げモーメントやねじりモーメントに対する枠骨格の剛性を高めることができる。
これにより、車体構造のドア開口枠などを形成する枠骨格に第1溶接ビードを設けるだけで、枠骨格の剛性を容易に高めることができるという利点がある。
【0015】
さらに、第1溶接ビードを一方のフランジの先端に形成することで、枠骨格の主要部位の断面形状を変えることなく枠骨格の剛性を高めることができる。
これにより、例えば、設計の自由度を損なうことなく、枠骨格の剛性を高めることができる。
【0016】
なお、溶接ビードとは、例えば、アーク溶接でフランジ(母材)とフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、フランジ(母材)の表面に肉盛り状態に形成された溶接金属層をいう。
【0017】
請求項2に係る発明では、枠骨格の他方のフランジの先端に、第2溶接ビードが形成されている。
第2溶接ビードは、枠骨格のフランジに対して所定高さに形成されている。
【0018】
第2溶接ビードを所定高さに形成することで、第2溶接ビードの断面積を比較的大きく確保することが可能である。
よって、枠骨格の断面二次モーメントをさらに増すことができるので、曲げモーメントやねじりモーメントに対する枠骨格の剛性をさらに高めることができる。
これにより、車体構造のドア開口枠などを形成する枠骨格に第2溶接ビードを設けるだけで、枠骨格の剛性を容易に高めることができるという利点がある。
【0019】
さらに、第2溶接ビードを他方のフランジの先端に形成することで、枠骨格の主要部位の断面形状を変えることなく枠骨格の剛性を高めることができる。
これにより、例えば、設計の自由度を損なうことなく、枠骨格の剛性をさらに高めることができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、第1溶接ビードの所定高さを、枠骨格のフランジに対して1mmを超えるように設定した。また、第2溶接ビードの所定高さを、枠骨格のフランジに対して1mmを超えるように設定した。
第1、第2の溶接ビードの所定高さを、枠骨格のフランジに対して1mm未満に小さくすると、第1、第2の溶接ビードの断面積が小さくなる。
【0021】
このため、枠骨格の断面二次モーメントを大きく確保することが難しくなり、枠骨格の剛性を増すことができない。
そこで、第1、第2の溶接ビードの所定高さを、フランジに対して1mmを超えるように設定した。
【0022】
第1、第2の溶接ビードの所定高さが枠骨格のフランジに対して1mmを超えるように設定することで、第1、第2の溶接ビードの断面積を比較的大きく確保することが可能である。
よって、枠骨格の断面二次モーメントを増すことができるので、曲げモーメントやねじりモーメントに対する枠骨格の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る車体構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
車体構造10は、左右のフロントサイドフレーム12やサブフレーム13などで形成されたフロントボディ11と、フロントボディ11の後端下部から車体後方に向けて延出されたアンダボディ15と、アンダボディ15の左右側に設けられた左右のサイドボディ16,17と、左右のサイドボディ16,17間に設けられたルーフ19と、左右のサイドボディ16,17の後端部に渡って設けられたリヤエンドパネル21とを備えている。
【0024】
左サイドボディ16は、前後のドア開口枠(開口枠部)23,24を備えている。
前後のドア開口枠23,24は、フロントボディ11の左後端部に設けられたフロントピラー(枠骨格)26と、フロントピラー26の下端部26aから車体後方に延出されたサイドシル(枠骨格)27と、フロントピラー26の上後端部26bから車体後方に延出されたルーフサイドレール(枠骨格)28と、ルーフサイドレール28の略中央部28aからサイドシル27の略中央部27aに向けて延出されたセンタピラー(枠骨格)31と、ルーフサイドレール28およびサイドシル27の各後端部28b,27bに渡って設けられたリヤピラー(枠骨格)32とを備えている。
【0025】
具体的には、前ドア開口枠23は、フロントピラー26と、サイドシル27の前半分部と、ルーフサイドレール28の略前半部と、センタピラー31とで形成されている。
後ドア開口枠24は、センタピラー31と、サイドシル27の後半分部と、ルーフサイドレール28の略後半部と、リヤピラー32とで形成されている。
【0026】
フロントピラー26は、フロントボディ11の左後端部に略鉛直に設けられたロアピラー部34と、ロアピラー部34の上端部からルーフサイドレール28の前端部まで延出されたアッパピラー部35とを備えている。
【0027】
なお、右サイドボディ17は、左サイドボディ16と左右対称の部材であり、以下左サイドボディ16について説明して右サイドボディ17の説明を省略する。
つぎに、ルーフサイドレール28の構成を図2〜図3に基づいて詳しく説明する。
【0028】
図2は図1の2−2線断面図、図3は図2の3部拡大図である。
ルーフサイドレール28は、車体外側に臨むアウタパネル41と、車体内側に臨むインナパネル42と、アウタパネル41およびインナパネル42間に介在された補強部材(スチフナ)43と、上フランジ(一方のフランジ)37に設けられた第1溶接ビード45と、下フランジ(他方のフランジ)38に設けられた第2溶接ビード46とを備えている。
【0029】
アウタパネル41は、アウタパネル本体51と、アウタパネル本体51の上端部に設けられた上外フランジ(一対の外フランジの一方)52と、アウタパネル本体51の下端部に設けられた下外フランジ(一対の外フランジの他方)53とを有する。
【0030】
上外フランジ52は、アウタパネル本体51の上端部から車体中心(車体内側)に向けて略水平に張り出された張出片である。
下外フランジ53は、アウタパネル本体51の下端部から下方に向けるとともに、車体外側に向けて下り勾配に張り出された張出片である。
【0031】
インナパネル42は、インナパネル本体55と、インナパネル本体55の上端部に設けられた上内フランジ(一対の内フランジの一方)56と、インナパネル本体55の下端部に設けられた下内フランジ(一対の内フランジの他方)57とを有する。
【0032】
上内フランジ56は、インナパネル本体55の上端部から車体中心(車体内側)に向けて略水平に張り出された張出片である。
下内フランジ57は、インナパネル本体55の下端部から下方に向けるとともに、車体外側に向けて下り勾配に張り出された張出片である。
【0033】
補強部材43は、補強部材本体61と、補強部材本体61の上端部に設けられた上補強フランジ62と、補強部材本体61の下端部に設けられた下補強フランジ63とを有する。
【0034】
上補強フランジ62は、補強部材本体61の上端部から車体中心(車体内側)に向けて略水平に張り出された張出片である。
下補強フランジ63は、補強部材本体61の下端部から下方に向けるとともに、車体外側に向けて下り勾配に張り出された張出片である。
【0035】
アウタパネル41の上外フランジ52およびインナパネル42の上内フランジ56間に補強部材43の上補強フランジ62が挟持された状態でスポット溶接されることで、それぞれのフランジ52,56,62が一体に接合されている。
一体に接合されたフランジ52,56,62で上フランジ37が形成されている。
【0036】
アウタパネル41の下外フランジ53およびインナパネル42の下内フランジ57間に補強部材43の下補強フランジ63が挟持された状態でスポット溶接されることで、それぞれのフランジ53,57,63が一体に接合されている。
一体に接合されたフランジ53,57,63で下フランジ38が形成されている。
よって、ルーフサイドレール28は、アウタパネル41とインナパネル42との間に補強部材43が介在された状態で一体に閉断面に形成されている。
【0037】
上フランジ37の先端37aに第1溶接ビード45が形成されている。
第1溶接ビード45は、例えば、アーク溶接で上フランジ37の先端37aとフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、上フランジ37の先端37aの表面に肉盛り状態に形成された溶接金属層である。
この第1溶接ビード45は、上フランジ37に対して所定高さHに形成されるとともに、所定幅Wに形成されている。
【0038】
下フランジ38の先端38aに第2溶接ビード46が形成されている。
第2溶接ビード46は、例えば、アーク溶接で下フランジ38の先端38aとフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、下フランジ38の先端38aの表面に肉盛り状態に形成された溶接金属層である。
この第2溶接ビード46は、第1溶接ビード45と同様に、下フランジ38に対して所定高さHに形成されるとともに、所定幅Wに形成されている。
【0039】
第1溶接ビード45を上フランジ37の先端37aに形成し、第2溶接ビード46を下フランジ38の先端38aに形成した。
よって、ルーフサイドレール28の主要部位の断面形状を変えることなくルーフサイドレール28の剛性を高めることができる。
これにより、例えば、設計の自由度を損なうことなく、ルーフサイドレール28の剛性を高めることができる。
【0040】
さらに、第1、第2の溶接ビード45,46は、所定高さHが1mmを超えるように設定されている。
加えて、第1、第2の溶接ビード45,46は、所定幅Wが3mmを超えるように設定されている。
第1、第2の溶接ビード45,46の所定高さHを1mmを超えるように設定し、所定幅Wを3mmを超えるように設定した理由はつぎの通りである。
すなわち、第1、第2の溶接ビード45,46の所定高さHを1mm未満に小さくすると、第1、第2の溶接ビード45,46の断面積が小さくなる。
同様に、第1、第2の溶接ビード45,46の所定幅Wを3mm未満に小さくすると、第1、第2の溶接ビード45,46の断面積が小さくなる。
【0041】
第1、第2の溶接ビード45,46の断面積が小さくなるため、ルーフサイドレール28の断面二次モーメントを大きく確保することが難しくなり、ルーフサイドレール28の剛性を増すことはできない。
そこで、第1、第2の溶接ビード45,46の所定高さHを1mmを超えるように設定し、かつ、所定幅Wを3mmを超えるように設定して、ルーフサイドレール28の断面二次モーメントを増すようにした。
【0042】
ここで、第1溶接ビード45は、中立軸線X1−X1に対して距離L1と比較的大きく離れている。また、第2溶接ビード46は、中立軸線X1−X1に対して距離L2と比較的大きく離れている。
このように、第1、第2の溶接ビード45,46を中立軸線X1−X1に対して比較的大きく離すことで、第1、第2の溶接ビード45,46の断面二次モーメントを大きく確保することができる。
よって、ルーフサイドレール28の断面二次モーメントを一層増すことができる。
【0043】
このように、ルーフサイドレール28の断面二次モーメントを増すことができるので、曲げモーメントやねじりモーメントに対するルーフサイドレール28の剛性を高めることができる。
これにより、ルーフサイドレール28に第1、第2の溶接ビード45,46を設けるだけで、ルーフサイドレール28の剛性を容易に高めることができる。
【0044】
なお、断面二次モーメントは、曲げモーメントについて考えるとき、中立軸線X1−X1に対する断面二次モーメントを用いる。
一方、ねじりモーメントについて考えるとき、軸心G1に対する断面二次モーメントを用いる。
軸心G1に対する断面二次モーメントも、第1、第2の溶接ビード45,46を軸心G1から比較的大きく離すことで一層増すことができる。
【0045】
つぎに、車体構造10のルーフサイドレール28に曲げモーメントやねじりモーメントが作用した例を図4〜図5および図6のグラフに基づいて説明する。
図4は第1実施の形態に係るルーフサイドレールに曲げモーメントが作用した例を示す説明図である。
ルーフサイドレール28は略中央部28aがセンタピラー31で支持されている。
また、フロントピラーは、アッパピラー部35の前端部35aがロアピラー部34で支持されている。
そして、アッパピラー部35は、後端部(すなわち、上後端部26b)がルーフサイドレール28の前端部28cに一体に連結されている。
【0046】
ところで、フロントピラー(すなわち、アッパピラー部35、ロアピラー部34)は、ルーフサイドレール28と同様に、閉断面に形成され、一対のフランジの先端部に第1、第2の溶接ビード(図示せず)がそれぞれ設けられている。
よって、アッパピラー部35は、ルーフサイドレール28と同様に断面二次モーメントを増して、曲げモーメントに対する剛性を高めることができる。
【0047】
以下、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35に作用する曲げモーメントの理解を容易にするために、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35のそれぞれの断面二次モーメントIを同じとして説明する。
断面二次モーメントIは、中立軸線X1−X1(図2参照)に対する断面二次モーメントである。
【0048】
図4に示すように、ルーフサイドレール28の前端部28cに荷重F1が作用した場合、
ルーフサイドレール28に曲げモーメントM1が作用する。
M1=F1×L3
ルーフサイドレール28に曲げモーメントM1が作用することで、前端部28cの下辺(図2に示す第2溶接ビード46側の辺)に引張応力σ1が作用し、前端部28cの上辺(図2に示す第1溶接ビード45側の辺)に引張応力σ2が作用する。
σ1=M1/Z1
但し:Z1=I/e1(e1は図2参照)
σ2=M1/Z2
但し:Z2=I/e2(e2は図2参照)
【0049】
ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35の断面二次モーメントIは大きく確保されているので、前端部28cに作用する引張応力σ1や引張応力σ2を小さく抑えることができる。
これにより、ルーフサイドレール28が曲げモーメントM1で変性することを抑えることができる。
すなわち、曲げモーメントM1に対するルーフサイドレール28の剛性を高めることができる。
【0050】
図5(a),(b)は第1実施の形態に係るルーフサイドレールにねじりモーメントが作用した例を示す説明図である。
(a)はセンタピラー31に荷重F2が作用した例を示し、(b)はロアピラー部34に荷重F3が作用した例を示す。
なお、(a),(b)においては、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35に作用するねじりモーメントの理解を容易にするために、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35の断面二次モーメントIを同じとして説明する。
断面二次モーメントIは、軸心G1(図2参照)に対する断面二次モーメントである。
【0051】
(a)において、センタピラー31に荷重F2が作用した場合、
ルーフサイドレール28の略中央部28aにねじりモーメントT1が作用する。
T1=F2×L4
略中央部28aにねじりモーメントT1が作用することで、せん断応力τ1が作用する。
τ1=T1/Z
但し:Z=I/ρ1(ρ1:軸心G1(図2参照)から任意点までの半径)
【0052】
ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35の断面二次モーメントIは大きく確保されているので、せん断応力τ1を小さく抑えることができる。
これにより、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35がねじりモーメントT1で変性することを抑えることができる。
すなわち、ねじりモーメントT1に対するルーフサイドレール28およびアッパピラー部35の剛性を高めることができる。
【0053】
(b)において、ロアピラー部34に荷重F3が作用した場合、
アッパピラー部35の前端部35aにねじりモーメントT2が作用する。
T2=F3×L5
前端部35aにねじりモーメントT2が作用することで、せん断応力τ2が作用する。
τ2=T2/Z
但し:Z=I/ρ1(ρ1:軸心(図2参照)から任意点までの半径)
【0054】
ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35の断面二次モーメントIは大きく確保されているので、せん断応力τ2を小さく抑えることができる。
これにより、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35がねじりモーメントT2で変性することを抑えることができる。
すなわち、ねじりモーメントT2に対するルーフサイドレール28およびアッパピラー部35の剛性を高めることができる。
【0055】
図6は第1実施の形態に係るルーフサイドレールの剛性増加率を示すグラフである。
縦軸は枠骨格の剛性増加率(%)を示し、横軸は曲げモーメント、ねじりモーメントを示す。
なお、図2に示すルーフサイドレール28のアウタパネル41、インナパネル42および補強部材43の板厚を4.8mmとした。また、アッパピラー部35のアウタパネル、およびインナパネルおよび補強部材(図示せず)の板厚を3.6mmとした。
さらに、図2に示すルーフサイドレール28に設けた第1、第2の溶接ビード45,46の所定高さHを1mm、第1、第2の溶接ビード45,46の所定幅Wを3mmとした。
【0056】
加えて、図2に示すアッパピラー部35に設けた第1、第2の溶接ビード(図示せず)の所定高さHを1mm、第1、第2の溶接ビードの所定幅Wを3mmとした。
そして、ルーフサイドレール28やアッパピラー部35を、第1、第2の溶接ビード45,46を備えていない従来のルーフサイドレールやアッパピラー部の剛性と比較した。
【0057】
図4で説明したように、ルーフサイドレール28に第1、第2の溶接ビード45,46を設けることで、曲げモーメントM1に対するルーフサイドレール28の剛性を高めることができる。
ここで、前述したように、ルーフサイドレール28の各パネルの板厚を4.8mm、アッパピラー部35の各パネルの板厚を3.6mm、第1、第2の溶接ビードの所定高さHを1mm、所定幅Wを3mmとした。
【0058】
この条件において、グラフG1に示すように、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35は、第1、第2の溶接ビード45,46を備えていない従来のルーフサイドレールやアッパピラー部に対して剛性を2.4%高めることができる。
【0059】
一方、図5(a)で説明したように、ルーフサイドレール28に第1、第2の溶接ビード45,46を設けることで、ねじりモーメントT1に対するルーフサイドレール28の剛性を高めることができる。
ここで、前述したように、ルーフサイドレール28の各パネルの板厚を4.8mm、アッパピラー部35の各パネルの板厚を3.6mm、第1、第2の溶接ビードの所定高さHを1mm、所定幅Wを3mmとした。
【0060】
この条件において、グラフG2に示すように、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35は、第1、第2の溶接ビード45,46を備えていない従来のルーフサイドレールに対して剛性を1.2%高めることができる。
【0061】
また、図5(b)で説明したように、アッパピラー部35に第1、第2の溶接ビードを設けることで、ねじりモーメントT2に対するアッパピラー部35の剛性を高めることができる。
ここで、前述したように、ルーフサイドレール28の各パネルの板厚を4.8mm、アッパピラー部35の各パネルの板厚を3.6mm、第1、第2の溶接ビードの所定高さHを1mm、所定幅Wを3mmとした。
【0062】
この条件において、グラフG3に示すように、ルーフサイドレール28およびアッパピラー部35は、第1、第2の溶接ビード45,46を備えていない従来のルーフサイドレールに対して剛性を1.2%高めることができる。
【0063】
なお、図6のグラフにおいては、ルーフサイドレール28の各パネルの板厚を4.8mm、アッパピラー部35の各パネルの板厚を3.6mmとし、第1、第2の溶接ビード45,46の所定高さHを1mm、所定幅Wを3mmとした例について説明したが、板厚、高さH、幅Wはこれに限定するものではない。
例えば、第1、第2の溶接ビード45,46の所定幅Wを6mmとすることで、図6に示すグラフG1,G2,G3と比較して剛性を一層高めることができる。
【0064】
図2〜図6では、ルーフサイドレール28やアッパピラー部35に第1、第2の溶接ビード45,46を設けた例について説明したが、サイドシル27にも同様に第1、第2の溶接ビード45,46が設けられている。
以下、サイドシル27の構成を図7に基づいて詳しく説明する。
【0065】
図7は図1の7−7線断面図である。
サイドシル27は、車体外側に臨むアウタパネル71と、車体内側に臨むインナパネル72と、アウタパネル71およびインナパネル72間に介在された補強部材(スチフナ)73と、上フランジ(一方のフランジ)67に設けられた第1溶接ビード75と、下フランジ(他方のフランジ)68に設けられた第2溶接ビード76とを備えている。
【0066】
アウタパネル71は、アウタパネル本体81と、アウタパネル本体81の上端部に設けられた上外フランジ(一対の外フランジの一方)82と、アウタパネル本体81の下端部に設けられた下外フランジ(一対の外フランジの他方)83とを有する。
【0067】
上外フランジ82は、アウタパネル本体81の上端部から上方に向けて張り出された張出片である。
下外フランジ83は、アウタパネル本体81の下端部から下方に向けて張り出された張出片である。
【0068】
インナパネル72は、インナパネル本体85と、インナパネル本体85の上端部に設けられた上内フランジ(一対の内フランジの一方)86と、インナパネル本体85の下端部に設けられた下内フランジ(一対の内フランジの他方)87とを有する。
【0069】
上内フランジ86は、インナパネル本体85の上端部から上方に向けて張り出された張出片である。
下内フランジ87は、インナパネル本体85の下端部から下方に向けて張り出された張出片である。
【0070】
補強部材73は、補強部材本体91と、補強部材本体91の上端部に設けられた上補強フランジ92と、補強部材本体91の下端部に設けられた下補強フランジ93とを有する。
【0071】
上補強フランジ92は、補強部材本体91の上端部から上方に向けて張り出された張出片である。
下補強フランジ93は、補強部材本体91の下端部から下方に向けて張り出された張出片である。
【0072】
アウタパネル71の上外フランジ82およびインナパネル72の上内フランジ86間に補強部材73の上補強フランジ92が挟持された状態でスポット溶接されることで、それぞれのフランジ82,86,92が上フランジ67に一体に接合されている。
アウタパネル71の下外フランジ83およびインナパネル72の下内フランジ87間に補強部材73の下補強フランジ93が挟持された状態でスポット溶接されることで、それぞれのフランジ83,87,93が下フランジ68に一体に接合されている。
よって、サイドシル27は、アウタパネル71とインナパネル72との間に補強部材73が介在された状態で一体に閉断面に形成されている。
【0073】
上フランジ67の先端67aに第1溶接ビード75が形成されている。
第1溶接ビード75は、例えば、アーク溶接で上フランジ67の先端67aとフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、上フランジ67の先端67aの表面に肉盛り状態に形成された溶接金属層である。
この第1溶接ビード75は、上フランジ67に対して所定高さHに形成されるとともに、所定幅Wに形成されている。
【0074】
下フランジ68の先端68aに第2溶接ビード76が形成されている。
第2溶接ビード76は、例えば、アーク溶接で下フランジ68の先端68aとフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、下フランジ68の先端68aの表面に肉盛り状態に形成された溶接金属層である。
この第2溶接ビード76は、第1溶接ビード75と同様に、下フランジ68に対して所定高さHに形成されるとともに、所定幅Wに形成されている。
【0075】
第1溶接ビード75を上フランジ67の先端67aに形成し、第2溶接ビード76を下フランジ68の先端68aに形成した。
よって、サイドシル27の主要部位の断面形状を変えることなくサイドシル27の剛性を高めることができる。
これにより、例えば、設計の自由度を損なうことなく、サイドシル27の剛性を高めることができる。
【0076】
さらに、第1、第2の溶接ビード75,76は、第1、第2の溶接ビード45,46と同様に、所定高さHが1mmを超えるように設定されている。
加えて、第1、第2の溶接ビード75,76は、第1、第2の溶接ビード45,46と同様に、所定幅Wが3mmを超えるように設定されている。
第1、第2の溶接ビード75,76の所定高さHを1mmを超えるように設定し、所定幅Wを3mmを超えるように設定した理由は、第1、第2の溶接ビード45,46と同じである。
【0077】
ここで、第1溶接ビード75は、図2に示す第2溶接ビード45と同様に、中立軸線X2−X2に対して距離L6と比較的大きく離れている。また、第2溶接ビード76は、中立軸線X2−X2に対して距離L7と比較的大きく離れている。
このように、第1、第2の溶接ビード75,76を中立軸線X2−X2に対して比較的大きく離すことで、第1、第2の溶接ビード75,76の断面二次モーメントを大きく確保することができる。
よって、サイドシル27の断面二次モーメントを一層増すことができる。
【0078】
このように、サイドシル27の断面二次モーメントを増すことができるので、曲げモーメントやねじりモーメントに対するサイドシル27の剛性を高めることができる。
これにより、サイドシル27に第1、第2の溶接ビード75,76を設けるだけで、サイドシル27の剛性を容易に高めることができる。
【0079】
なお、断面二次モーメントは、曲げモーメントについて考えるとき、中立軸線X2−X2に対する断面二次モーメントを用いる。
一方、ねじりモーメントについて考えるとき、軸心G2に対する断面二次モーメントを用いる。
軸心G2に対する断面二次モーメントも、第1、第2の溶接ビード75,76を軸心G2から比較的大きく離すことで一層増すことができる。
【0080】
つぎに、車体構造10のサイドシル27に曲げモーメントやねじりモーメントが作用した例を図8〜図9に基づいて説明する。
なお、図8〜図9においては、サイドシル27に作用する曲げモーメントやねじりモーメントの理解を容易にするために、サイドシル27の断面二次モーメントおよび断面係数をルーフサイドレール28と同じとして説明する。
【0081】
図8は第1実施の形態に係るサイドシルに曲げモーメントが作用した例を示す説明図である。
サイドシル27は、前端部27cがロアピラー部34で支持されるとともに、略中央部27aがセンタピラー31で支持されている。
【0082】
図8に示すように、サイドシル27の前半部29に荷重F4が作用した場合、
サイドシル27の前半部29に曲げモーメントM2が作用する。
M2=F4×L8
前半部29に曲げモーメントM2が作用することで、前半部29の下辺(図7に示す第2溶接ビード76側の辺)に引張応力σ3が作用し、前半部29の上辺(図7に示す第1溶接ビード75側の辺)に引張応力σ4が作用する。
【0083】
σ3=M2/Z1
但し:Z1=I/e3
I:中立軸線X2−X2(図7参照)に対する断面二次モーメント
e3:図7参照
【0084】
σ4=M2/Z2
但し:Z2=I/e4
I:中立軸線X2−X2(図7参照)に対する断面二次モーメント
e4:図7参照
【0085】
サイドシル27の断面二次モーメントIは大きく確保されているので、サイドシル27の前半部29に作用する引張応力σ3や引張応力σ4を小さく抑えることができる。
これにより、サイドシル27の前半部29が曲げモーメントM2で変性することを抑えることができる。
すなわち、曲げモーメントM2に対するサイドシル27の前半部29の剛性を高めることができる。
【0086】
図9(a),(b)は第1実施の形態に係るサイドシルにねじりモーメントが作用した例を示す説明図である。
(a)はセンタピラー31に荷重F5が作用した例を示し、(b)はロアピラー部34に荷重F6が作用した例を示す。
【0087】
(a)において、センタピラー31に荷重F5が作用した場合、
サイドシル27の前半部29(略中央部27a側)にねじりモーメントT3が作用する。
T3=F5×L9
サイドシル27の前半部29にねじりモーメントT3が作用することで、せん断応力τ3が作用する。
【0088】
τ3=T3/Z
但し:Z=I/ρ2
:軸心G2(図7参照)に対する断面二次モーメント
ρ2:軸心G2(図7参照)から任意点までの半径
【0089】
サイドシル27の前半部29の断面二次モーメントIは大きく確保されているので、せん断応力τ3を小さく抑えることができる。
これにより、サイドシル27の前半部29がねじりモーメントT3で変性することを抑えることができる。
すなわち、ねじりモーメントT3に対するサイドシル27の前半部29の剛性を高めることができる。
【0090】
(b)において、ロアピラー部34に荷重F6が作用した場合、
サイドシル27の前半部29(前端部27c側)にねじりモーメントT4が作用する。
T4=F6×L10
サイドシル27の前半部29にねじりモーメントT4が作用することで、せん断応力τ4が作用する。
τ4=T4/Z
但し:Z=I/ρ2
:軸心G2(図7参照)に対する断面二次モーメント
ρ2:軸心G2(図7参照)から任意点までの半径
【0091】
サイドシル27の前半部29の断面二次モーメントIは大きく確保されているので、せん断応力τ4を小さく抑えることができる。
これにより、サイドシル27の前半部29がねじりモーメントT4で変性することを抑えることができる。
すなわち、ねじりモーメントT4に対するサイドシル27の前半部29の剛性を高めることができる。
【0092】
つぎに、第2〜第3の実施の形態を図10〜図11に基づいて説明する。なお、第2〜第3の実施の形態において、第1実施の形態の車体構造10と同一類似の構成部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0093】
図10は本発明に係る車体構造(第2実施の形態)のルーフサイドレールを示す断面図である。
第2実施の形態のルーフサイドレール100は、上フランジ(一方のフランジ)101に第1溶接ビード102を設け、図示しない下フランジ(他方のフランジ)に第2溶接ビードを設けたもので、その他の構成は第1実施の形態のルーフサイドレール28と同じである。
【0094】
ルーフサイドレール100は、アウタパネル41と、インナパネル42と、補強部材43と、上フランジ101に設けられた第1溶接ビード102と、下フランジ(図示せず)に設けられた第2溶接ビード(図示せず)とを備えている。
【0095】
アウタパネル41の上外フランジ52に対して補強部材43の上補強フランジ62が間隔Sをおいて配置されている。
また、補強部材43の上補強フランジ62に対してインナパネル42の上内フランジ56が間隔Sをおいて配置されている。
【0096】
上外フランジ52および上補強フランジ62の間隔Sのうち、フランジ52,62の先端側を上側溶接ビード104で埋めることで、上外フランジ52および上補強フランジ62が上側溶接ビード104で接合されている。
上側溶接ビード104は、例えば、アーク溶接でフランジ52,62の先端側とフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、フランジ52,62間にブリッジ状に渡された溶接金属層である。
【0097】
また、上補強フランジ62および上内フランジ56の間隔Sのうち、フランジ62,56の先端側を下側溶接ビード105で埋めることで、上補強フランジ62および上内フランジ56が下側溶接ビード105で接合されている。
下側溶接ビード105は、例えば、アーク溶接でフランジ62,56の先端側とフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、フランジ62,56間にブリッジ状に渡された溶接金属層である。
【0098】
ここで、上側溶接ビード104および下側溶接ビード105で、第1溶接ビード102が形成されている。
よって、上外フランジ52および上内フランジ56間に上補強フランジ62が介在された状態で、それぞれのフランジ52,56,62が第1溶接ビード102で一体に接合されている。
一体に接合したフランジ52,56,62で上フランジ101が形成されている。
そして、上フランジ101の先端101aには第1溶接ビード102が設けられている。
【0099】
上側溶接ビード104や下側溶接ビード105は、それぞれ高さH1に形成されている。高さH1は、高さHの半分に設定されている。
よって、第1溶接ビード102は、上側溶接ビード104の高さH1に下側溶接ビード105の高さH1を加えて所定高さHに形成されている。
また、上側溶接ビード104および下側溶接ビード105は、それぞれ所定幅Wに形成されている。よって、第1溶接ビード102は所定幅Wに形成されている。
【0100】
図示しない第2溶接ビードは、第1溶接ビード102と同様に、所定高さHに形成されるとともに、所定幅Wに形成されている。
【0101】
第1、第2の溶接ビード102は、第1、第2の溶接ビード45,46と同様に、所定高さHが1mmを超えるように設定されている。
また、第1、第2の溶接ビード102は、第1、第2の溶接ビード45,46と同様に、所定幅Wが3mmを超えるように設定されている。
【0102】
第1、第2の溶接ビード102の所定高さHを1mmを超えるように設定し、所定幅Wを3mmを超えるように設定することで、第1、第2の溶接ビード45,46と同様に、ルーフサイドレール100の断面二次モーメントを増すことができる。
ルーフサイドレール100の断面二次モーメントを増すことで、曲げモーメントやねじりモーメントに対するルーフサイドレール100の剛性を高めることができる。
【0103】
これにより、ルーフサイドレール100に第1、第2の溶接ビード102を設けるだけで、ルーフサイドレール100の剛性を容易に高めることができる。
すなわち、第2実施の形態のルーフサイドレール100によれば、第1実施の形態のルーフサイドレール28と同様の効果を得ることができる。
【0104】
図11は本発明に係る車体構造(第3実施の形態)のルーフサイドレールを示す断面図である。
第3実施の形態のルーフサイドレール110は、上フランジ(一方のフランジ)101に一対の第1溶接ビード112,113を設け、図示しない下フランジ(他方のフランジ)に一対の第2溶接ビードを設けたもので、その他の構成は第2実施の形態のルーフサイドレール100と同じである。
【0105】
ルーフサイドレール110は、アウタパネル41と、インナパネル42と、補強部材43と、上フランジ101に設けられた一対の第1溶接ビード112,113と、下フランジ(図示せず)に設けられた一対の第2溶接ビード(図示せず)とを備えている。
【0106】
上外フランジ52および上補強フランジ62の間隔Sは、フランジ52,62の先端側が上側先端溶接ビード114で埋められ、上側先端溶接ビード114に対して所定のピッチPの箇所が上側中央溶接ビード115で埋められている。
これにより、上側先端溶接ビード114および上側中央溶接ビード115で上外フランジ52および上補強フランジ62が接合されている。
【0107】
上側先端溶接ビード114および上側中央溶接ビード115は、例えば、アーク溶接でフランジ52,62の先端側とフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、フランジ52,62間にブリッジ状に渡された溶接金属層である。
【0108】
また、上補強フランジ62および上内フランジ56の間隔Sは、フランジ62,56の先端側が下側先端溶接ビード117で埋められ、下側先端溶接ビード117に対して所定のピッチPの箇所が下側中央溶接ビード118で埋められている。
これにより、下側先端溶接ビード117および下側中央溶接ビード118で上補強フランジ62および上内フランジ56が接合されている。
【0109】
下側先端溶接ビード117および下側中央溶接ビード118は、例えば、アーク溶接でフランジ62,56の先端側とフィラーワイヤ(溶加材)とを溶融させて、フランジ62,56間にブリッジ状に渡された溶接金属層である。
【0110】
ここで、一対の第1溶接ビード112,113のうち、一方の第1溶接ビード112が、上側先端溶接ビード114および下側先端溶接ビード117で形成されている。
また、一対の第1溶接ビード112,113のうち、他方の第1溶接ビード113が、上側中央溶接ビード115および下側中央溶接ビード118で形成されている。
【0111】
よって、上外フランジ52および上内フランジ56間に上補強フランジ62が介在された状態で、それぞれのフランジ52,56,62が一対の第1溶接ビード112,113で一体に接合されている。
一体に接合したフランジ52,56,62で上フランジ101が形成されている。
そして、上フランジ101には、先端101aに一方の第1溶接ビード112が設けられ、一方の第1溶接ビード112から所定のピッチPをおいた位置に他方の第1溶接ビード113が設けられている。
【0112】
上側先端溶接ビード114、上側中央溶接ビード115、下側先端溶接ビード117および下側中央溶接ビード118は、それぞれ高さH1に形成されている。高さH1は、高さHの半分に設定されている。
よって、一対の第1溶接ビード112,113は、それぞれ所定高さHに形成されている。
【0113】
さらに、上側先端溶接ビード114、上側中央溶接ビード115、下側先端溶接ビード117および下側中央溶接ビード118は、それぞれ所定幅Wに形成されている。
よって、一対の第1溶接ビード112,113は、それぞれ所定幅Wに形成されている。
【0114】
図示しない一対の第2溶接ビードは、一対の第1溶接ビード112,113と同様に、それぞれの第2溶接ビードが、所定高さHに形成されるとともに、所定幅Wに形成されている。
【0115】
一対の第1溶接ビード112,113、および一対の第2溶接ビードは、第2実施の形態の第1、第2の溶接ビード102と同様に、それぞれの所定高さHが1mmを超えるように設定されている。
また、一対の第1溶接ビード112,113、および一対の第2溶接ビードは、第2実施の形態の第1、第2の溶接ビード102と同様に、それぞれの所定幅Wが3mm程度に設定されている。
【0116】
第3実施の形態のルーフサイドレール110によれば、第2実施の形態のルーフサイドレール100と比較して断面積を大きく確保し、断面二次モーメントを一層増すことができる。
ルーフサイドレール110の断面二次モーメントを増すことで、曲げモーメントやねじりモーメントに対するルーフサイドレール110の剛性を一層高めることができる。
具体的には、曲げモーメントやねじりモーメントに対するルーフサイドレール110の剛性を、図6のグラフに示すG1,G2,G3と略同様まで高めることができる。
【0117】
これにより、ルーフサイドレール110に一対の第1溶接ビード112,113および一対の第2溶接ビードを設けるだけで、ルーフサイドレール110の剛性を容易に高めることができる。
すなわち、第3実施の形態のルーフサイドレール110によれば、第2実施の形態のルーフサイドレール100と同様の効果を得ることができる。
【0118】
なお、前記第1〜第3の実施の形態では、枠骨格(ルーフサイドレール28やサイドシル27)の上下のフランジに第1、第2の溶接ビードをそれぞれ備えた例について説明したが、これに限らないで、枠骨格の上下のフランジのうち、一方のフランジのみに溶接ビードを備えることも可能である。
一方のフランジのみに溶接ビードを備えた場合でも、第1〜第3の実施の形態と同様に、枠骨格の剛性を容易に高めることができる。
【0119】
また、前記第1〜第3の実施の形態では、本発明を、アウタパネル41,71およびインナパネル42,72間に補強部材43,73を備えたサイドシル27やルーフサイドレール28等の枠骨格に適用した例について説明したが、これに限らないで、アウタパネル41,71およびインナパネル42,72のみで形成した枠骨格(すなわち、補強部材43,73を備えていない枠骨格)に適用することも可能である。
【0120】
さらに、前記第1〜第3の実施の形態では、開口枠部を形成する枠骨格として前後のドア開口枠23,24について例示したが、これに限らないで、前後の窓開口枠、トランクリッド開口枠などの他の開口枠部を形成する枠骨格に適用することも可能である。
【0121】
また、前記第1〜第3の実施の形態で示した前後のドア開口枠23,24、フロントピラー26、サイドシル27、ルーフサイドレール28、センタピラー31、リヤピラー32、上フランジ37,67,101、下フランジ38,68、アウタパネル41,71、インナパネル42,72、第1溶接ビード45,75、102,112,113、第2溶接ビード46,76、上外フランジ52,82、下外フランジ53,83、上内フランジ56,86、下内フランジ57,87の形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、ドア開口枠や窓開口枠などの開口枠部を枠骨格で形成し、枠骨格に一対のフランジを備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明に係る車体構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】第1実施の形態に係るルーフサイドレールに曲げモーメントが作用した例を示す説明図である。
【図5】第1実施の形態に係るルーフサイドレールにねじりモーメントが作用した例を示す説明図である。
【図6】第1実施の形態に係るルーフサイドレールの剛性増加率を示すグラフである。
【図7】図1の7−7線断面図である。
【図8】第1実施の形態に係るサイドシルに曲げモーメントが作用した例を示す説明図である。
【図9】第1実施の形態に係るサイドシルにねじりモーメントが作用した例を示す説明図である。
【図10】本発明に係る車体構造(第2実施の形態)のルーフサイドレールを示す断面図である。
【図11】本発明に係る車体構造(第3実施の形態)のルーフサイドレールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0124】
10…車体構造、23…前ドア開口枠(開口枠部)、24…後ドア開口枠(開口枠部)、26…フロントピラー(枠骨格)、27…サイドシル(枠骨格)、28…ルーフサイドレール(枠骨格)、31…センタピラー(枠骨格)、32…リヤピラー(枠骨格)、37,67,101…上フランジ(一方のフランジ)、38,68…下フランジ(他方のフランジ)、41,71…アウタパネル、42,72…インナパネル、45,75、102,112,113…第1溶接ビード、46,76…第2溶接ビード、52,82…上外フランジ(一対の外フランジの一方)、53,83…下外フランジ(一対の外フランジの他方)、56,86…上内フランジ(一対の内フランジの一方)、57,87…下内フランジ(一対の内フランジの他方)、H…所定高さ、W…所定幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口枠や窓開口枠などの開口枠部を形成する枠骨格が、車体外側に臨むアウタパネルの一対の外フランジに、車体内側に臨むインナパネルの一対の内フランジを溶接で接合することにより閉断面に形成された車体構造において、
前記一対の外フランジの一方に、前記一対の内フランジの一方が溶接で接合されることで一方のフランジが形成され、
前記一方のフランジの先端に、前記一方のフランジに対して所定高さの第1溶接ビードが形成されたことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記一対の外フランジの他方に、前記一対の内フランジの他方が溶接で接合されることで他方のフランジが形成され、
前記他方のフランジの先端に、前記他方のフランジに対して所定高さの第2溶接ビードが形成されたことを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記第1溶接ビードの所定高さは、前記一方のフランジに対して1mmを超えるように設定され、
前記第2溶接ビードの所定高さは、前記他方のフランジに対して1mmを超えるように設定されたことを特徴とする請求項2記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−184568(P2009−184568A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27929(P2008−27929)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】