説明

車体構造

【課題】低コストで車両のバリエーションを増やすことが可能な車体構造を提供する。
【解決手段】車体1のキャビン部2とキャビン部に結合されることで車体の一部を構成する骨格部材7,8との間に介在するインタフェースブラケット5を有する。インタフェースブラケット5には、キャビン部と接合する第1の接合部51、車幅方向に位置して骨格部材と着脱可能に接合する第2の接合部52,53が形成され、キャビン部と第1の接合部51とを溶接し、骨格部材7,8と第2の接合部52,53とを締結して結合することで、骨格部材7,8の一部を構成しながら骨格部材7,8が交換できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のキャビン部と、キャビン部に結合されることで車体の前部を構成する骨格部材とを有する車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部構造体と後部構造体をそれぞれ構成し、これら構造体をキャビン部の前後にそれぞれ直接結合することで車体を構成する車体構造が知られている。この車体構造は、車種に応じて車両デザインが変更されることから、車種に応じた専用設定とされるため、車種毎に専用の製造ラインで組み立てられていることが多い。このような構成の車体構造としては、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−513082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の車体構造においてはキャビン部と前後構造体の互いの接合部が、車種毎に専用設計になっているので、同一車種において、車両グレードに応じて車体剛性やデザインを変更して車両バリエーションを増やそうとしても、接合部の構造がネックとなって専用ラインでの製造となり、低コストで容易に車両のバリエーションを増やすことができない。また、バリエーションを増やすにしても、操縦安定性の観点から車体に対する剛性は要求されるため、車体剛性を確保しながら車両のバリエーションを増やすことは容易なことではなかった。
本発明は、低コストで車両のバリエーションを増やすことが可能な車体構造を提供することを、その目的とする。
本発明は、車体剛性を確保しながらも低コストで車両のバリエーションを増やすことが可能な車体構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、車体のキャビン部と、キャビン部に結合されることで車体の一部を構成する骨格部材とを有する車体構造であって、キャビン部と骨格部材の間に介在し、キャビン部と接合される第1の接合部と、骨格部材と着脱可能に接合される第2の接合部とを備え、キャビン部と骨格部材とに第1の接合部と第2の接合部とをそれぞれ結合することで骨格部材の一部を構成するインタフェースブラケットを有することを特徴としている。
請求項2にかかる発明では、インタフェースブラケットが、第1の接合部がキャビン部に溶接結合され、第2の接合部が骨格部材と締結されることを特徴としている。
請求項3にかかる発明では、骨格部材は、車体前部を構成し、少なくともサスペンションを支持するサスペンション支持部材と、車幅方向に位置するサイドメンバを有し、第2の接合部がサスペンション支持部材と各サイドメンバとを締結する取付部を有することを特徴としている。
請求項4にかかる発明では、第2の接合部と骨格部材は、互いに対向する接合面を有し、各接合面の形状が、外力入力方向に対して交差する方向に延びる第1の面と、第1の面の両端側にそれぞれ位置して外力入力方向に延びる第2および第3の面とでそれぞれ形成され、第1から第3の面を互いに接合して締結部材で結合したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、キャビン部と骨格部材の間に介在し、キャビン部と接合される第1の接合部と、骨格部材と着脱可能に接合される第2の接合部とを備え、キャビン部と骨格部材とに第1の接合部と第2の接合部とをそれぞれ結合することで骨格部材の一部を構成するインタフェースブラケットを有するので、インタフェースブラケットの第1の接合部の形状は維持したまま第2の接合部を骨格部材に対応させて変更することで、異なるデザインの骨格部材を、インタフェースブラケットを介してキャビン部と結合することができる。このため、キャビン部の共有を図れるとともに、製造ライン大幅に変更することなく異なる車種の製造を行えるので、低コストで車両のバリエーションを増やすことができる。
【0007】
本発明によれば、インタフェースブラケットは、第1の接合部側がキャビン部に溶接結合され、第2の接合部側が骨格部材と締結されるので、キャビン側との取り付け剛性を確保しながらも、キャビン部に対する骨格部材の交換が容易になり、低コストで車両のバリエーションを増やすことができる。
【0008】
本発明によれば、骨格部材は、少なくともサスペンションを支持するサスペンション支持部材と、車幅方向に位置するサイドメンバを有して車体前部を構成し、第2の接合部がサスペンション支持部材と各サイドメンバとを締結する取付部を有するので、サスペンション支持部材と各サイドメンバとを容易に交換することができ、作業性が向上する。
【0009】
本発明によれば、第2の接合部と骨格部材は、互いに対向する接合面を有し、各接合面の形状が、外力入力方向に対して交差する方向に延びる第1の面と、第1の面の両端側にそれぞれ位置して外力入力方向に延びる第2および第3の面とでそれぞれ形成され、第1から第3の各面を互いに接合して締結部材で結合するので、第1の面により入力荷重を受けることで、第2および第3の面を締結する締結部材に対する入力荷重を軽減する。このため、第2の接合部と骨格部材との接合部における締結箇所が低減し、作業時間の短縮、部品点数の低減と軽量化を図れ、より低コストで車両のバリエーションを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である車体構造の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の特徴的構成となるインタフェースブラケットを備えた車体前部構造の概略を示す分解斜視図である。
【図3】インタフェースブラケットと骨格部材の結合部分の拡大図である。
【図4】インタフェースブラケットと骨格部材の結合部分の構成例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車体構造に関する実施の形態について図面を用いて説明する。図1において、車体1は、キャビン部2と、キャビン部2の前部2Aに結合される前部構造体3と、キャビン部2の前部2Aと前部構造体3との間に介在させたインタフェースブラケット5で構成されている。
【0012】
キャビン部2の前部2Aと前部構造体3との間にインタフェースブラケット5を介在させるのは、キャビン部2を変更することなく、車両のフロント周りのデザインや構造を変更するためである。車両の印象はフロント周りのデザインを変更することで異なって見えるので、同一車種であっても異なるバリエーションを展開する際に、キャビン部2の共用化を図れ、製造ライン大幅に変更することなく製造できる。このため、バリエーション展開するための新たな製造ラインを設ける必要がなくなり、生産コストの低減につながる。別な見方をすると、現状の製造ラインを効率的に活用することにつながる。また、キャビン部2の共用化を図れることは、居住性や衝突時の荷重に対する強度を確保したまま新たな車両のバリエーションを展開できるため、製造ラインの設計や車体1の設計時間の短縮を図れて開発コストが低減し、最終的には車両のコストを低減することができる。
【0013】
本形態では、前部2Aと前部構造体3との間にインタフェースブラケット5を介在させているが、車体構造としては、キャビン部2の後部と図示しない後部構造体の間にインタフェースブラケット5を介在させてもよいし、前部2Aと前部構造体3と、キャビン部2の後部と後部構造体の間にそれぞれインタフェースブラケット5を介在させてキャビン部2と前後構造体を結合して車体1を構成してもよい。
【0014】
前部構造体3は、車幅方向Wに位置し、図示しない左右フンロトサスペンションを支持するサスペンション支持部材となるスプリングハウスパネル30,31と、スプリングハウスパネル30,31の下方に位置するサイドメンバ32,33とを備えている。スプリングハウスパネル30,31の上部は、フロントアッパメンバ34の両端に結合されている。サイドメンバ32,33はフロントロアメンバ35によって連結されている。これら前部構造体3のうち、スプリングハウスパネル30とサイドメンバ32及びスプリングハウスパネル31とサイドメンバ33とがそれぞれ一体的に形成されて骨格部材7,8を構成している。
【0015】
なお、スリングハウスパネル30とサイドメンバ32及びスプリングハウスパネル31とサイドメンバ33とは、それぞれ個別な形態であってもよく、この場合、スプリングハウスパネル30,31とサイドメンバ32,33のそれぞれが骨格部材を構成することになる。
【0016】
インタフェースブラケット5は、図2に示すように、車幅方向Wに延びてキャビン部2と接合される第1の接合部51と、車幅方向Wに位置し、前部構造体3を構成する骨格部材7,8の接合部37,38と着脱可能に結合する第2の接合部52,53とを備えている。
【0017】
第1の接合部51は、断面コの字形状であって、キャビン部2の前部2Aを構成するダッシュパネル2Cの前部と接合する基部51Aと、基部51Aと連続し、ダッシュパネル2Cの両側面2C1,2C2に向かって屈曲形成され、フロンピラー11A,11B(図2参照)の下方に位置する両側面2C1,2C2と接合する側部51B,51Cとを備えている。本形態においてインタフェースブラケット5は、これら基部51Aと側部51B,51Cとをそれぞれダッシュパネル2Cと両側面2C1,2C2とに溶接して結合されるため、その材質はダッシュパネル2Cと同一の材質とされている。本形態において、キャビン部2及びインタフェースブラケット5はスチール製である。
【0018】
第2の接合部52,53は、基部51Aから下方に向かって延びていて、図3に示すように、左右の骨格部材7、8の接合部37,38とそれぞれ締結される。このため、第2の接合部52,53と接合部37,38には、互いに対向するように接合面52A,53Aと接合面37A,38Aがそれぞれ形成されている。接合面52A,53Aと接合面37A,38Aの縁部には、取付部となる取付孔54,55と取付孔56,57がそれぞれ形成されている。これら各取付孔には、接合面37A,38A側から締結部材となるボルト59がそれぞれ挿通され、接合面52A,53A側に配されるナット60に締め込むことで、接合面52A,53Aと接合面37A,38Aとが締結される。つまり、インタフェースブラケット5は、キャビン部2の前部2Aを構成するダッシュパネル2Cに第1の接合部51を溶接して結合するとともに、骨格部材7,8に第2の接合部52,53を締結することで、骨格部材7,8の一部を構成することになる。
【0019】
このような車体構造によると、キャビン部2と骨格部材7,8の間に、キャビン部2と接合される第1の接合部51と、車幅方向に位置して各骨格部材と着脱可能に接合される第2の接合部52,53とを備えたインタフェースブラケット5が介在し、インタフェースブラケット5の第1の接合部51とキャビン部2とを溶接して締結し、インタフェースブラケット5の第2の接合部52,53と骨格部材7,8とをボトル59とナット60でそれぞれ締結して結合することで車体1の前方が構成される。インタフェースブラケット5の第1の接合部51の形状は、従来形状を維持したまま、第2の接合部52,53を骨格部材7,8に対応させて変更することで、異なるデザインの骨格部材7,8を含む前部構造体3を、インタフェースブラケット5を介してキャビン部2と結合することができる。このため、異なるデザインの骨格部材を有する前部構造体を、インタフェースブラケット5を介してキャビン部2と結合することで、キャビン部2の共有を図れるため、製造ラインを大幅に変更することなく異なる車種の製造を行え、低コストで車両のバリエーションを増やすことができる。インタフェースブラケット5は、第1の接合部51がキャビン部2に溶接結合され、第2の接合部52,53が骨格部材7,8とそれぞれ締結されるので、キャビン部2との取り付け剛性を確保しながらも、キャビン部2に対する骨格部材7,8の交換が容易になり、低コストで車両のバリエーションを増やすことができる。また、第2の接合部52,53と骨格部材7,8とをボルト59とナット60で締結するので、修理時などにおいても骨格部材7,8の交換を容易に行え、作業性が向上する。
【0020】
上記形態において、骨格部材7,8と第2の接合部52,53とは、図3に示すように、ボルト59とナット60により両者を締め込むことで締結している。このため、特に、サスペンションが取り付けられて外部入力方向となる車両上下方向Zに延びる両者の接合面52A,53Aと接合面37A,38Aには、ボルトせん断方向への入力を、接合面を締め込む締結力、すなわち両接合面が合わさっている結合面61の摩擦力で負担しているため、締結箇所が多くなる傾向となる。
【0021】
しかし、図4に示すように、互いに対向するインタフェースブラケット5の接合面52A,53Aと骨格部材7,8の接合面37A,38Aの形状を、車両上下方向Zに対して交差する車両前後方向Yに延びる第1の面52A1,53A1及び第1の面37A1,38A1と、第1の面の両端側、すなわち車両前後方向にそれぞれ位置して車両上下方向Zに延びる第2の面52A2,53A2と第2の面37A2,38A2および第3の面52A3,53A3と第3の面37A3,38A3を有するクランク形状にそれぞれ形成し、各面を互いに接合して、第1の面から第3の面をそれぞれボルト59とナット60で締結して結合するようにしてもよい。
【0022】
このような構成とすると、第1の面52A1,53A1及び第1の面37A1,38A1により入力荷重を受けることになるので、第2および第3の面を締結するボルト59とナット60に対する入力荷重が軽減される。このため、第2の接合部52,53と骨格部材7,8との接合部における締結箇所が低減し、製造ラインでの作業時間や修理時の作業時間の短縮、部品点数の低減と軽量化を図れ、より低コストで車両のバリエーションを増やすことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 車体
2 キャビン部
3 前部構造体
5 インタフェースブラケット
7,8 骨格部材
30,31 サスペンション支持部材
32,33 サイドメンバ
37A,38A 骨格部材の接合面
37A1,38A1 第1の面
37A2,38A2 第2の面
37A3,38A3 第3の面
51 第1の接合部
52,53 第2の接合部
52A,53A 第2の接合部の接合面
52A1,53A1 第1の面
52A2,53A2 第2の面
52A3,53A3 第3の面
54,55 取付部
59 締結部材
Z 外力入力方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のキャビン部と、前記キャビン部に結合されることで前記車体の一部を構成する骨格部材とを有する車体構造であって、
前記キャビン部と前記骨格部材の間に介在し、前記キャビン部と接合される第1の接合部と、前記骨格部材と着脱可能に接合される第2の接合部とを備え、前記キャビン部と前記骨格部材とに第1の接合部と第2の接合部とをそれぞれ結合することで前記骨格部材の一部を構成するインタフェースブラケットを有することを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記インタフェースブラケットは、第1の接合部が前記キャビン部に溶接結合され、第2の接合部が前記骨格部材と締結されることを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記骨格部材は、車体前部を構成し、少なくともサスペンションを支持するサスペンション支持部材と、車幅方向に位置するサイドメンバを有し、
前記第2の接合部は、前記サスペンション支持部材と各サイドメンバとを締結する取付部を有することを特徴とする請求項1または2記載の車体構造。
【請求項4】
前記第2の接合部と前記骨格部材は、
互いに対向する接合面を有し、各接合面の形状が、外力入力方向に対して交差する方向に延びる第1の面と、前記第1の面の両端側にそれぞれ位置して外力入力方向に延びる第2および第3の面とでそれぞれ形成され、
前記第1から第3の面を互いに接合して締結部材で結合したことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234888(P2010−234888A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83199(P2009−83199)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】