説明

車室内構造

【課題】フロントシートとフロアボードとでベッドモードを適用することができる車室内構造を提供する。
【解決手段】フロントシート20とリアシート30とを備えた車両1において、リアシート30は、このリアシート30のシートクッション31上にシートバック32の背面を上にした状態でシートバック32を重ねるとともに、着座状態のリアシート30の位置よりも前方且つ下方に収納可能であり、リアシート30を収納した状態で、フロントシート20をフルリクライニングしたときに荷室3側に配置されたフロアボード40とフロントシート20とで略平らな面になるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内にベッドモードを適用する車室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内にフラット面を形成してベッドモードを適用する構造としては、リアシートバックの背面とサードシートバックの背面をそれぞれ上向きにしてリアシートおよびサードシートを折り畳んだ状態で、リアシートバックとサードシートバックとの間の隙間に掛け板を配置することで、リアシートバックの背面、掛け板、サードシートバックの背面および荷室側のフロアボードによってフラット面を形成する構成が記載されている(特許文献1参照)。
【0003】
他の構造としては、リアシートバックの背面を上向きにしてリアシートを折り畳んだ状態で、リアシートバックの背面に取り付けられたボードを後方に展開し、リアシートバックの背面と、展開したボードと、荷室側に設けられたベッドボードとでフラット面を形成する構成が記載されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−104271号公報
【特許文献2】実用新案登録第3099759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、荷室の前後長が短い車両では、特許文献1および特許文献2に記載のようにリアシートと荷室スペースとでベッドモードを適用しようとすると、ベッドとして使用するには長さが十分確保できないという問題があった。そこで、フロントシートと荷室スペースとでベッドモードを適用しようとすると、フロントシートをリクライニングする際にリアシートが邪魔になって、フロントシートをフルリクライニングすることができず、ベッドモードを適用することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、フロントシートとフロアボードとでベッドモードを適用することが可能な車室内構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フロントシートとリアシートとを備えた車両において、前記リアシートは、シートクッションにシートバックを重ね合わせた状態で、前記リアシートの着座位置から前方且つ下方に収納可能に構成され、前記リアシートを収納した状態で、前記フロントシートをフルリクライニングしたときに、荷室側に配置されたフロアボードと、フルリクライニングした前記フロントシートとで略平らな面にすることを特徴とする。
【0008】
これによれば、シートバックをシートクッションに重ね合わせた状態のリアシートを、着座位置のリアシートに対して前方且つ下方に移動させて収納可能に構成したので、フロントシートをフルリクライニングする際に、リアシートに邪魔されることがなくなり、フロントシートをフルリクライニングすることが可能になる。そして、荷室側に設けられたフロアボードをフルリクライニングしたフロントシートのシートバックと略同じ高さ位置で水平に支持させることにより、フロントシートとフロアボードとで略平らな面にすることができ、フロントシートとフロアボードとでベッドモードを適用することが可能になる。
【0009】
これにより、例えば、車室内の前後長が短い車両においても、フロントシートとフロアボードとで略平らな面を構成することが可能になり、ベッドモードを適用することができる。
【0010】
また、前記フロアボードは、前後に2分割されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、フロアボードを前後に2分割して構成することにより、車室内の前後長が短い車両において、2分割された前側のフロアボードを取り外して移動させることにより、フロアボードに邪魔されることなく、リアシートを着座位置に設定することが可能になる。
【0012】
また、前記フロアボードは、上下方向の複数個所に配置可能であることを特徴とする。
【0013】
これによれば、ベッドモードを適用しない場合には、フロアボードの高さをベッドモードの場合よりも低く設定することで、荷室の容積を拡大することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フロントシートとフロアボードとでベッドモードを適用することが可能な車室内構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る車室内構造を適用した車両の車室内を示し、リアシートを着座位置にしたときの斜視図である。
【図2】リアシートを着座位置にしたときの側面図である。
【図3】リアシートを収納位置にしたときの側面図である。
【図4】本実施形態に係る車室内構造を適用した車両の車室内を示し、ベッドモードにしたときの斜視図である。
【図5】ベッドモードにしたときの側面図である。
【図6】ベッドモードにしたときの使用状態を示す側面図である。
【図7】フラットモードにしたときの使用状態を示す側面図である。
【図8】4人乗車でフロアボードを下段にしたときの使用状態を示す側面図である。
【図9】4人乗車でフロアボードを上段にしたときの使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る車室内構造について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係る車室内構造を適用した車両の車室内を示し、リアシートを着座位置にしたときの斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車室内構造が適用される車両1は、フロア10、左右一対のフロントシート20,20、左右一対のリアシート30,30、フロアボード40を備えている。なお、図1では、リアシート30,30のヘッドレストを取り外した状態を図示している。また、本実施形態では、「前」は車両のフロント側、「後」は車両のリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
【0017】
また、車両1は、乗員スペースと荷物スペースとがひとつの空間により形成される、いわゆるワンボックスタイプの車両であり、リアシート30,30の後方に荷室3を備え、荷室3の後端部に形成された開口2を開閉可能なテールゲート(図示省略)を備えている。このテールゲートは、例えば、跳ね上げ式のものであり、その上端部が車両1のルーフ側に図示しないヒンジおよびダンパを介して回動自在(開閉自在)に取り付けられている。
【0018】
左右一対のフロントシート20,20は、運転席および助手席であり、それぞれ、座面を構成するシートクッション21と、背もたれを構成するシートバック22と、シートバック22の上端に着脱可能なヘッドレスト23と、を備えている。また、フロントシート20,20の脚部20a,20aは、フロア10にボルトによって締結されている。
【0019】
また、フロントシート20は、シートバック22の下端がシートクッション21の後端に対して回動可能に連結されるとともに、シートバック22の傾斜角度を段階的に調整可能に構成されている。また、フロントシート20は、前側に向いているシートバック22の表面22a(図2参照)が上向きとなるようにフルリクライニング可能(図4および図5参照)に構成されている。フロントシート20をフルリクライニングすることにより、シートクッション21の表面21aと、シートバック22の表面22aとで、略平らな面にすることができる。
【0020】
また、フロントシート20,20は、ベンチシートであり、右側のシートクッション21が、左側のシートクッション21よりも車幅方向に長く形成されており、左側のシートクッション21の側面と右側のシートクッション21の側面とが接して、左右のシートクッション21,21の表面21a,21aが面一になるように形成されている。また、左右のシートバック22,22の間には、アームレスト24が回動可能に設けられるとともに、左側のシートバック22の表面22aと右側のシートバック22の表面22aとアームレスト24の表面24aとが面一になるように形成されている。
【0021】
左右一対のリアシート30,30は、それぞれ、座面を構成するシートクッション31と、背もたれを構成するシートバック32と、シートバック32の上端に着脱可能なヘッドレスト(図示省略)と、シートクッション31の下部に取り付けられた前脚部33と、シートバック32の下部に取り付けられた後脚部34,35と、を備えている。なお、図1のリアシート30は、着座位置(着座状態)を図示している。
【0022】
前脚部33は、例えば、左右一対の棒状の脚部33a,33aと、脚部33a,33a間において左右方向(車幅方向)に延びる補強部33bとで略H型に組み合わされて構成されている。脚部33a,33aの上端は、シートクッション31の下面に回動可能に連結されるとともに、脚部33aの下端は、フロア10上に固定された固定部33c,33cに回動可能に連結されている。
【0023】
後脚部34は、細長板状に形成され、上部がシートバック32の左側面の下部に固定され、後脚部34の下部がフロア10上に固定された固定部34aに回動可能に連結されている。後脚部35は、シートバック32の右側面の下部に固定され、後脚部35の下部がフロア10上に設けられた固定部35a(図4参照)に回動可能に連結されている。また、右側のリアシート30についても、シートバック32の右側面の下部に後脚部34、左側面の下部に後脚部35を備えて、左側のリアシート30と同様に後脚部34,35が固定部(不図示)に回動可能に連結されている。
【0024】
また、リアシート30は、シートクッション31の後端とシートバック32の下端とがアーム30aを介して回動可能に連結されており、着座位置(図2参照)と収納位置(図3参照)との間で移動可能となるように構成されている。なお、リアシート30の収納方法の詳細については後記する。
【0025】
フロアボード40は、ベッドモード時の床面、荷物積載モード時の床面として使用されるものであり、第1ボード41と、第2ボード42とで前後に2分割されて構成されている。
【0026】
第1ボード41は、荷室3の左右のサイドライニング3a間の幅と略同一に形成され、横長四角形状を呈するように構成されている。また、第1ボード41は、左側面に一対のフック41a,41bが間隔を置いて左側方に突設されている。なお、図1では、左側面のフック41a,41bのみを図示しているが、右側面も同様にして一対のフック41a,41b(図4参照)が間隔を置いて右側方に突設されている。このように、第1ボード41にフック41a,41bを設けることにより、リアシート30を着座位置にしたときに、第1ボード41をサイドライニング3a(車体側)の支持部4f,4g(図3参照)に支持できるように構成されている。
【0027】
第2ボード42は、荷室3の左右のサイドライニング3a間の幅と略同一に形成され、横長四角形状を呈するように構成されている。また、第2ボード42は、前後方向の寸法が第1ボード41よりも長く形成されている(図4および図5参照)。なお、第2ボード42の前後方向の長さは、リアシート30,30を着座位置に設定したときに、リアシート30,30の後方に形成された荷室3の床面を構成できる寸法に設定されている。
【0028】
なお、第1ボード41および第2ボード42は、ベッドとして使用する場合および荷室として使用する場合に乗員や荷物の荷重に耐えられるように、合成樹脂製の板材に金属製の補強材を組み込むなどして構成されている。
【0029】
荷室3の右側面のサイドライニング3aには、第2ボード42を上段で支持するための支持部4a,4bが突出して形成されている。この支持部4a,4bは、前後に間隔を置いて形成され、第2ボード42の右端縁部の下面を支持する水平な支持面4a1,4b1を有している。また、各支持部4a,4b(支持面4a1,4b1)の前後方向の長さは、車両1を4人乗車上段モードとして使用したときに(図9参照)、第2ボード42を前後方向に移動させたときに、第2ボード42が支持部4a,4bから外れない寸法に設定されている。
【0030】
また、サイドライニング3aには、支持部4a,4bに第2ボード42を支持させたときに、第2ボード42の右側面が当接する当接面4cが前後方向に沿って形成されている。なお、荷室3の左側のサイドライニング3aについても、前記と同様に支持部および当接面が形成されている。
【0031】
これにより、支持部4a,4bによって第2ボード42を安定して支持できるとともに、第2ボード42の左右側面が当接面4cに当接することにより、第2ボード42が左右方向にがたつくのを防止することができる。なお、支持部4a,4bの形状については、第2ボード42を支持できる形状であれば、本実施形態に限定されるものではなく、例えば前後方向に連続した支持面を有する支持部であってもよい。
【0032】
図2はリアシートを着座位置にしたときの側面図である。
図2に示すように、フロア10は、車室内の床面を構成するものであって、前方から後方に向けて順に、フロントフロア11、ミッドフロア12、リアフロア13を備えている。
【0033】
フロントフロア11の前部には、左右一対のフロントシート20,20が配置されている。フロントフロア11の後部およびミッドフロア12には、左右一対のリアシート30,30が配置されている。リアフロア13の上方は、リアシート30を着座位置に設定したときに、荷室3(荷物スペース)として機能する。これら、フロントフロア11、ミッドフロア12およびリアフロア13は、ボルト、溶接などによって互いに固定されている。
【0034】
フロントフロア11の後部には、リアシート30の前脚部33を回動可能に連結する固定部33cが配置されるとともに、その上方にリアシート30のシートクッション31の一部が位置している。
【0035】
ミッドフロア12は、フロントフロア11の後端から上方へ傾斜して延びる傾斜面12aと、傾斜面12aの上端から後方へ水平に延びる水平面12bと、を有している。この傾斜面12aおよび水平面12bには、リアシート30を回動可能に連結するための固定部34aがボルト(不図示)によって締結されている。このように、ミッドフロア12の水平面12bは、フロントフロア11よりも上方に位置している。また、リアシート30のシートバック32に固定された後脚部34は、シートクッション31から下方に延びて配置され、固定部34aに回動可能に連結されている。また、リアシート30のシートクッション31の表面31aは、フロントシート20のシートクッション21の表面21aと略同じ高さになるように構成されている。
【0036】
リアフロア13は、車両後方に向けて下がる傾斜面13aを有している。なお、傾斜面13aの後端部には、傾斜面13a上に収納された荷物が車外に落ちるのを防止するためのストッパ50が設けられている。このストッパ50は、車幅方向に延びる略板形状を呈し、図2に示す側面視においてL字状に形成されている。
【0037】
なお、ストッパ50は、図1に示すように、その垂直部50aが車両1の後部の開口2の縁部に沿って形成されるとともに、水平部50bが垂直部50aの上端から前方へ延びて形成されている。また水平部50bの左右端部には、外側方に突出する突出部50b1、50b1が形成されている。また、垂直部50aの下端部は、車体側に設けられた図示しない係合手段によって保持されている。なお、サイドライニング3aは、開口2の近傍において内方に突出している。これにより、水平部50bの突出部50b1、50b1が、第2ボード42とサイドライニング3aの突出部分との間に形成された隙間に挿入されることによって、第2ボード42の後端部と水平部50bの前端部とが当接し、第2ボード42が前後方向にがたつくのを防止するようになっている。
【0038】
本実施形態に係るリアシート30は、図2に示す着座位置から前方且つ下方に移動させることで、リアシート30を収納位置に設定(いわゆる、ダイブダウン)可能に構成されている。
【0039】
すなわち、図2に示すリアシート30の着座位置において、例えばリアシート30の着座状態を解除する図示しないレバーを操作して、シートバック32を前方へ傾動させることにより、前脚部33の上端部がシートクッション31に対して回動するとともに前脚部33の下端部が固定部33cに対して回動し、さらに後脚部34が固定部34aに対して回動する。
【0040】
このとき、シートバック32が、シートクッション31上に向けて倒れ込みながら、シートクッション31が前方へ移動するとともに降下する。そして、シートバック32の背面32aが上向きの状態で、シートクッション31上にシートバック32が接するようにして重なり、前脚部33が略水平に倒れ込んで、シートクッション31がフロントフロア11上に接する状態になる。また、シートバック32の下部に固定されている後脚部34の背面34bも、シートバック32の背面32aが上向きのとき略水平になる。
【0041】
これにより、リアシート30は、図2に示す着座位置(着座状態)から図3に示す収納位置(収納状態)に至り、リアシート30のシートバック32の背面32aの高さ位置がフロントシート20のシートクッション21の表面21aよりも低い位置、換言すると、フロントシート20をフルリクライニングしたときにフロントシート20のシートバック22の背面22bがリアシート30(シートバック32の背面32a)と接触しない位置になり、フロントシート20がフルリクライニング可能な状態になる。
【0042】
図3はリアシートを収納位置にしたときの側面図である。
図3に示すように、車両1の荷室3側のサイドライニング3aには、前記した第2ボード42を支持する支持部4a,4bとともに支持部4dが形成されている。この支持部4dは、支持部4a,4bよりも下方に位置し、第2ボード42の右端縁部の下面を支持する支持面4d1を有している。また、支持部4dの支持面4d1は、前後方向に連続して形成されている。なお、支持部4dの形状については、第2ボード42を水平に支持できるものであれば、本実施形態の形状に限定されるものではなく、支持部4a,4bのように一部に形成されていてもよい。
【0043】
また、サイドライニング3aには、支持部4a,4bの支持面4a1,4b1と略同じ高さ位置に、第1ボード41のフック41a,41bを支持する凹形状の支持部4e,4fが形成されている。支持部4e,4fは、上部が開放した形状であり、フック41a,41bを支持部4e,4fの上方から挿入することにより、フック41a,41bの周面を支持するように構成されている。
【0044】
また、サイドライニング3aには、支持部4fの上方且つ後方に、第1ボード41のフック41aを支持する凹形状の支持部4gが形成されている。この支持部4gは、支持部4fとともに第1ボード41を支持するものであり、リアシート30を着座位置に設定したときに、リアシート30のシートバック32の背面32aに沿って第1ボード41を支持できるように構成されている。
【0045】
また、サイドライニング3aには、支持部4fの下方で支持部4dの支持面4d1と略同じ高さ位置に凹形状の支持部4hが形成されている。この支持部4hは、下段モード時に第1ボード41のフック41bを支持するものである。なお、第1ボード41のフック41aは、図示しない支持部によって支持されるように構成されている。
【0046】
このように本実施形態に係る車室内構造が適用された車両1では、リアシート30を図2に示す着座位置から図3に示す収納位置に移動させることで、フロントシート20,20をフルリクライニング可能な状態にする。
【0047】
図4は本実施形態に係る車室内構造を適用した車両の車室内を示し、ベッドモードにしたときの斜視図である。
図4に示すように、フロアボード40の第1ボード41の左右のフック41a,41bをサイドライニング3aの支持部4e,4fに掛止させて、第1ボード41を略水平な状態に支持させる。なお、第1ボード41の左側のフック41a,41bについても同様にして図示しない支持部に掛止させて第1ボード41を略水平な状態に支持させる。また、第2ボード42を第1ボード41の後方に配置するとともに、第1ボード41の後端面41cと第2ボード42の前端面42aとを接近させた状態で、第2ボード42を支持部4a,4bに支持させる。
【0048】
そして、フロントシート20からヘッドレスト23を取り外し、シートバック22の表面22aが上向きとなるようにフロントシート20をフルリクライニングして、フロントシート20のシートクッション21とシートバック22とで略平らな面を構成する。
【0049】
図5はベッドモードにしたときの側面図である。
図5に示すように、フロントシート20のシートクッション21の表面21aと、フロントシート20のシートバック22の表面22aと、第1ボード41(フロアボード40)の上面41dと、第2ボード42(フロアボード40)の上面42bとで、略水平、かつ、略平らな面が構成されるようになっている。また、アームレスト24を、フロントシート20,20のシートバック22,22間に配置して、シートバック22の表面22aとアームレスト24の表面24a(図4参照)とを面一の状態にする。このようにして、リアシート30を収納位置に移動させた状態において、フロントシート20,20とフロアボード40とでベッドモードを適用することが可能になる。
【0050】
また、車両1をベッドモードにした場合、第1ボード41をフック41a,41bを介してサイドライニング3a(車体側)に支持するようにしているので、第1ボード41が前後に移動するのを防止することができ、第1ボード41を安定して支持することができる。また、第2ボード42は、第1ボード41と同じ高さ位置に設定されているので(図5参照)、第2ボード42の前端面42a(図5参照)が第1ボード41の後端面41c(図5参照)に突き当たることで、第2ボード42の前方への移動が規制される。なお、第2ボード42の後端面42b(図5参照)は、図示しないテールゲートによって後方への移動が規制される。
【0051】
図6はベッドモードにしたときの使用状態を示す側面図である。
図6に示すように、ベッドモードとして使用する場合には、例えば、フロントシート20側に乗員Hの下半身が位置し、フロアボード40側に乗員Hの上半身が位置するようにして仰向けで足を伸ばした状態で横になることができる。また、ベッドモードとした場合であっても、第2ボード42とリアフロア13との間を荷物スペースとして使用することができる。また、リアフロア13に傾斜面13aが形成されているので、ベッドモードのときの荷物スペースを拡大できる。
【0052】
次に、本実施形態に係る車室内構造が適用された車両1のベッドモード以外のシートアレンジについて図7ないし図9を参照して説明する。図7はフラットモードにしたときの使用状態を示す側面図、図8は4人乗車でフロアボードを下段にしたときの使用状態を示す側面図、図9は4人乗車でフロアボードを上段にしたときの使用状態を示す側面図である。
【0053】
図7に示すフラットモードの場合には、リアシート30を収納位置にした状態(ダイブダウンした状態)において、第1ボード41のフック41bを支持部4h(図3参照)に掛止させるとともに、リアシート30の後脚部34の背面34b上に第1ボード41を載置することにより、第1ボード41を下段の位置において略水平に支持させることができる。また、第2ボード42を支持部4dに支持させることにより、第2ボード42を下段の位置において水平に支持させる。このように、第1ボード41および第2ボード42を下段に設定することにより、リアシート30のシートバック32の背面32aと、第1ボード41の上面41dと、第2ボード42の上面42bと、を荷物スペースの床面として使用することができ、フロントシート20の後方全体を荷物スペースとして確保することができる。
【0054】
これにより、複数の大型の荷物Q1,Q2や、長尺な荷物(不図示)を搭載することが可能になる。また、リアシート30のシートバック32の背面32aと、第1ボード41の上面41dと、第2ボード42の上面42bと、を略平面に構成できるので、荷物Q1,Q2などを安定して積載することが可能になる。
【0055】
図8に示す4人乗車下段モードの場合には、リアシート30を着座位置にした状態、すなわち4人乗車可能な状態において、第2ボード42を支持部4dに支持させて、第2ボード42を下段に配置する。これにより、4人乗車モードであっても、背の高い荷物Q3などを搭載することが可能になる。
【0056】
なお、図8に示すように、4人乗車で第2ボード42を下段にした場合には、第1ボード41のフック41aを支持部4gに掛止させ、フック41bを支持部4fに掛止させることができる。これにより、第1ボード41を着座位置のシートバック32の背面32aに沿うようにして配置することができる。これにより、第1ボード41を車両1から降ろして保管するなどの煩雑な作業が不要になる。
【0057】
図9に示す4人乗車上段モードの場合には、リアシート30を着座位置にした状態、すなわち4人乗車可能な状態において、第2ボード42を支持部4a,4bに支持させて、第2ボード42を上段に配置する。これにより、4人乗車モードであっても、荷物Q4,Q5を上下に分けて収納することが可能になる。このように、上下に分けて収納可能としたことにより、重ねて積載することが難しい荷物Q4,Q5であっても、荷物Q4,Q5を重ねずに収納することができる。なお、下段の荷物Q5は、リアフロア13の傾斜面13a上に収納されているが、ストッパ50が設けられているので、荷物Q5がストッパ50によって車外に落下するのを防止できるようになっている。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る車室内構造が適用された車両1によれば、シートクッション31上にシートバック32の背面32aを上にした状態でシートバック32が重ねられたリアシート30を、着座状態のリアシート30の位置よりも前方且つ下方に収納可能に構成するとともに、リアシート30を収納した状態で、フロントシート20をフルリクライニングしたときにフロアボード40(第1ボード41および第2ボード42)とフロントシート20とで略平らな面になるように構成したので(図6参照)、フロントシート20をリクライニングする際にリアシート30に邪魔されることなくフロントシート20をフルリクライニングすることが可能になる。そして、荷室3側に設けられたフロアボード40(第1ボード41および第2ボード42)をフルリクライニングしたフロントシート20のシートバック22と略同じ高さ位置で車体側に水平に支持させることにより、フロントシート20とフロアボード40とで略平らな面を構成することができ、フロントシート20とフロアボード40とでベッドモードを適用することが可能になる。これにより、例えば、荷室3の前後長が短い車両(例えば、いわゆる軽自動車)においても、フロントシート20とフロアボード40とで略平らな面を構成することができ、車室内においてベッドとして使用することが可能になる。
【0059】
また、フロアボード40を第1ボード41と第2ボード42とで前後に2分割したことにより、第1ボード41を取り外して別の場所に移動させることができ、リアシート30を着座位置にすることが可能になる(図8、図9参照)。つまり、車室内の前後長が短い(荷室3の前後長が短い)場合、フロアボード40が分割されていない一枚物であると、フロアボード40が上段の位置のままでは、リアシート30を着座位置に設定することができなくなるが、本実施形態に係る車両1では、フロアボード40を前後2分割の構成にすることにより、リアシート30を着座位置にすることが可能になる。
【0060】
また、フロアボード40を上下方向の複数個所に配置可能、すなわち第1ボード41のフック41a,41bを支持部4e,4fに掛止させて支持させるとともに第2ボード42を支持部4a,4bに掛止させて支持させる上段モードと、第1ボード41のフック41bを支持部4hに支持させるとともに第2ボード42を支持部4dに支持させる下段モードとに設定可能にすることで、ベッドモードを適用しない場合に、フロアボード40を下段モードに設定することで、荷物スペースを拡大することが可能になる(図7参照)。
【0061】
また、フロアボード40を2分割する構成と、フロアボード40を上下複数個所に配置可能にする構成とを組み合わせることによって、リアシート30を着座位置に設定して、4人乗車モードにした場合において、第2ボード42を支持部4dに支持させて下段に設定することにより、第2ボード42を支持部4a,4bに支持させて上段に設定する場合よりも、荷物スペースを拡大することができる(図8参照)。
【0062】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、車室内構造を適用する車両のタイプとしてワンボックスタイプに限定されるものではなく、乗員スペースと荷物スペースとがひとつのスペースからなる車両であれば、ハッチバック、ステーションワゴン、ミニバン、SUVなど各種タイプの車両に適用することができる。
【0063】
また、リアシート30を着座位置から収納位置に設定する構成については、シートバック32を折畳みつつシートクッション31が前方且つ下方へ移動させるような構成に限定されるものではなく、リアシート30をダイブダウンさせることが可能なものであれば、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、シートバック32をシートクッション31上に折畳んだ後に、リアシート30を前方且つ下方へ移動させるような構成を備えたものであってもよい。
【0064】
また、テールゲートは、跳ね上げ式のものに限定されず、左右の一方にヒンジを備えて、テールゲートを左開きまたは右開きとする構成であってもよい。
【0065】
また、フロアボード40は、2分割のものに限定されず、3分割以上であってもよい。また、分割せずに、折畳み式のものであってもよい。
【0066】
また、フロアボード40(第1ボード41、第2ボード42)を上段と下段の2段に配置する構成に限定されるものではなく、上段、中段、下段のように3段に配置する構成であってもよく、4段以上に配置する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
3 荷室
4a,4b,4d 支持部
4e,4f,4g,4h 支持部
10 フロア
11 フロントフロア
12 ミッドフロア
13 リアフロア
13a 傾斜面
20 フロントシート
21 シートクッション
21 表面
22 シートバック
22a 表面
30 リアシート
31 シートクッション
32 シートバック
32a 背面
33 前脚部
34 後脚部
40 フロアボード
41 第1ボード
41a,41b フック
42 第2ボード
50 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントシートとリアシートとを備えた車両において、
前記リアシートは、シートクッションにシートバックを重ね合わせた状態で、前記リアシートの着座位置から前方且つ下方に収納可能に構成され、
前記リアシートを収納した状態で、前記フロントシートをフルリクライニングしたときに、荷室側に配置されたフロアボードと、フルリクライニングした前記フロントシートとで略平らな面にすることを特徴とする車室内構造。
【請求項2】
前記フロアボードは、前後に2分割されていることを特徴とする請求項1に記載の車室内構造。
【請求項3】
前記フロアボードは、上下方向の複数個所に配置可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車室内構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111992(P2013−111992A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256836(P2011−256836)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】