説明

車庫及び建物

【課題】車両と壁との衝突による車両又は壁への傷の発生を抑制するのにあたり、外観上好ましくかつ停車時に車両と内壁との間に十分なスペースを確保する。
【解決手段】車庫壁23は、その内壁24に緩衝機能を持たせるべく、少なくとも高さ方向の中間部に緩衝体44を備えている。この緩衝体44を、収縮状態と膨張状態とに切り替え可能としかつ当該膨張状態では内壁24から駐車スペース25側へ突出されるか又は内壁24を駐車スペース25側へ突出させるよう構成した。また、緩衝体44の端部を、内壁24の開放端26から駐車スペース25の外方へ突出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車庫及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物には、自動車等の車両を格納するための車庫が当該建物から独立して又は当該建物の一部を利用して設けられている。このような車庫としては、例えば、車庫出入口を除く駐車スペースの周りを壁が取り囲むことによって形成されてなるものがある。
【0003】
壁によって形成された車庫に車両を駐車したり、あるいは入庫済みの車両に乗降したりする場合、運転者や乗降者の不注意等に起因して車両ボディや車両ドアなどを内壁に衝突させたり擦ったりしてしまうことがある。その場合、車両や内壁に傷がついたり、最悪の場合には、車両や内壁が破損してしまったりすることがあった。
【0004】
そこで、このような事態を回避するために、従来においては、車庫を形成する壁のうち車両が衝突しやすい箇所に対し、弾性材料により形成されたクッション材を取り付けることが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−240915号公報
【特許文献2】実開平7−1218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2のクッション材を用いて壁の破損や傷の発生を防止するには、クッション材に対し、壁面への衝撃を緩和するのに十分な厚みを持たせることが必要になる。しかしながら、クッション材に十分な厚みを持たせると、壁面に取り付けた際にクッション材が駐車スペース側へ常に張り出した状態となるため、外見上クッション材が目立ってしまい、車庫の外観を損ねてしまうおそれがある。
【0006】
また、クッション材が張り出した状態が常に維持されるため、車両の停車時に車両と内壁との隙間を利用する場合(例えば、車両の乗降や通行、車庫内の荷物の搬送など)に、クッション材が障害物となって通行等に支障が生じるおそれもある。
【0007】
特に、住宅等の建物に付属して車庫が設けられている付属車庫の場合、その住宅は一般に敷地に余裕がないことが多く、駐車スペースを限られた狭い空間にしか設定することができない。このため、駐車時や乗降時には車両と内壁との接触や衝突が発生しやすく、これを防止する必要性が高いものといえる。
【0008】
また、付属車庫において、その狭い空間に対しクッション材を更に取り付けるとなると、停車時における車両と内壁との隙間には通行可能な程度の余裕すら設けることができないという事態も生じかねない。
【0009】
その上、付属車庫の場合、車庫が住宅の一部をなしていることから、外観の良し悪しは住人にとって重要な要素となり得る。このため、付属車庫では、建物の美観を保持しつつ壁における傷の発生を防止する必要性が高いものと考えられる。
【0010】
そこで、本発明は、駐車や車両の乗降の際に車両と壁との衝突による車両又は壁への傷の発生を抑制するのにあたり、外観上好ましくかつ停車時に車両と内壁との間に十分なスペースを確保できる車庫及びこれを備えた建物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0012】
本発明は、駐車スペースを囲む内壁が形成されてなる車庫であって、
前記内壁には、収縮状態と膨張状態とに切り替えられかつ当該膨張状態では前記内壁から前記駐車スペース側へ突出されるか又は前記内壁を前記駐車スペース側へ突出させる緩衝体が備えられていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、駐車スペースを囲む内壁に、内壁から駐車スペース側へ突出されるか又は内壁を駐車スペース側へ突出させる緩衝体が備えられている。このため、緩衝体が膨張状態とされた場合には、車両が車庫内面に万一衝突したとしても、車両は先ず緩衝体と衝突されることとなる。そして、この緩衝体により車両と車庫との間の衝撃が緩和される。したがって、車両及び内壁における傷の発生や破損を抑制することができる。
【0014】
また、膨張状態と収縮状態との両形態を取るため、駐車完了時などのように、内壁表面で緩衝機能を発揮させる必要がない場合には、緩衝体を収縮状態とすることにより該緩衝体の駐車スペースへの突出が抑制される。すなわち、緩衝体を、必要な場合にだけ突出させることができる。これにより、外見上緩衝体が目立ちにくくなるため、車両の駐車や乗降の際に車両と壁との衝突による車両又は壁への傷の発生を抑制するのにあたり、外観上好ましい。
【0015】
さらに、駐車完了後などの停車時に緩衝体の駐車スペースへの突出を抑制することにより、停車時に車両と内壁との間に十分なスペースを確保することができる。その結果、車両と内壁との間の隙間を通行等の目的で利用する際に支障が生じるのを抑制することができる。
【0016】
本発明において、前記緩衝体は、前記内壁のうち少なくとも高さ方向の中間部に設けられていることが好ましい。こうすれば、内壁のうち、駐車や車両への乗降の際に車両を衝突させやすい箇所に緩衝体が設けられることとなるため、車両及び壁における傷の発生や破損の抑制を図る上で好適である。
【0017】
本発明において、前記緩衝体は、空気の出し入れによって収縮状態と膨張状態とに切り替えられることが好ましい。こうすることで、緩衝体の収縮状態及び膨張状態を簡単な構成で実現することができる。
【0018】
本発明において、前記緩衝体の一部は、膨張状態とされることにより車庫出入口側における前記内壁の開放端から前記駐車スペースの外方へ突出されることが好ましい。こうすれば、車庫出入口では、緩衝体が駐車スペースの外方へ突出されるため、運転者には緩衝体の端部が車庫の開放端として認識される。これにより、車両の出庫の際には、車両が進行するのにあたり、内壁に接近するのが抑制されるよう車両が誘導されることとなる。その結果、車両が内壁に衝突する可能性をより低減させることができる。
【0019】
また、万一車庫の開放端に車両が接触したとしても、当該部位は緩衝体で構成されていることから車庫の外方向への変位が可能なため、内壁及び車両における傷の発生や破損を抑制することができる。
【0020】
本発明において、前記緩衝体は、水平方向に複数並設されていることが好ましい。こうすれば、緩衝体に迅速な膨張処理を行わせることができる。また、必要箇所の緩衝体のみを膨張させることができ、自由度が高い。さらに、緩衝体の一部が内壁の開放端から駐車スペースの外方に突出された形態では、当該駐車スペースの外方に突出可能な部分と駐車スペース内部に設けられた部分とを必要に応じて個別に膨張させることができる。
【0021】
本発明の建物は、上記のいずれかに記載の車庫が設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の建物は、上記いずれかの本発明の車庫を備えている。こうすることで、上述した作用効果を得ることができ、建物としての価値を高めることができる。
【0023】
特に、住宅等の建物の一部を利用して設けられた車庫(付属車庫)の場合、駐車スペースを囲む壁は、車庫が隣接する居室スペースと駐車スペースとを区画する壁にもなり得る。このため、車両による壁の破壊を防止する必要性が高い。したがって、建物本体との境界部位である壁を車両によって破壊してしまうことを防止する観点においても、建物に付随した形態の車庫に本発明の車庫を適用することが好ましい。
【0024】
また、付属車庫を備える建物では、敷地に余裕がないことが多く、駐車スペースを限られた狭い空間にしか設定することができないことから、駐車時や乗降時には車両と内壁との接触や衝突が発生しやすく、これを防止する必要性が高い。
【0025】
加えて、車庫が住宅等の建物の一部を構成していることから、建物における見栄えも重要視されやすい。したがって、外観上の好ましさの観点からも、本発明の車庫を適用するのが好ましい。
【0026】
本発明の建物は、車庫内及び車庫出入口近傍における車両の状況を検知する検知手段と、前記緩衝体を収縮状態と膨張状態とに切り替える切替手段と、前記検知手段により前記車庫内及び前記車庫出入口近傍で前記車両の移動が検知されない場合には前記緩衝体を収縮状態とし、前記車両の移動が検知された場合には前記緩衝体を膨張状態とするよう前記切替手段を制御する切替制御手段と、を備えていることが好ましい。こうすることで、車両が入庫のために車庫に接近した場合には、緩衝体が駐車スペース側へ突出されることとなる。これにより、車両が入庫中に車庫内面に衝突した場合であっても、緩衝体により車庫内面への衝突が緩和される。その結果、車両及び内壁における傷の発生や破損を抑制することができる。
【0027】
上記切替制御手段を備える形態の建物において、前記検知手段は、更に車庫内及び車庫出入口近傍における人の状況を検知するものであり、前記切替制御手段は、前記検知手段により前記車庫内で前記車両が停止されたことが検知されたのち一定時間経過した場合又は前記検知手段により前記車庫内に人が検知された場合には前記緩衝体を収縮状態とするよう前記切替手段を制御することが好ましい。これにより、内壁における緩衝機能をもはや必要としない場合には緩衝体が収縮状態とされるため、停車後の車両と内壁との間に十分なスペースを確保することができる。
【0028】
特に、車庫内に人が検知されたことに起因して緩衝体が収縮状態とされる場合、車両と内壁との間には十分なスペースが形成されているため、降車後の運転者が車両と内壁との間を通行して車庫外へ出るのが容易になる。
【0029】
ここで、一定時間とは、例えば、停車後又はエンジン停止後に運転者が車両ドアを開けるまでの時間や、運転者が降車するまでの時間等の経験値としてもよい。
【0030】
上記切替制御手段を備える形態の建物において、前記切替制御手段は、前記検知手段により前記車庫内に停車中の車両が出庫される又は出庫されると推定される状況が検知された場合には前記緩衝体を膨張状態とし、前記車庫内及び前記車庫出入口近傍に前記車両が検知されなくなった場合には前記緩衝体を収縮状態とするよう前記切替手段を制御することが好ましい。
【0031】
こうすることで、車両の出庫時には、緩衝体により車両と内壁との衝突による傷の発生や損傷を抑制することができる。特に、車両が出庫されると推定される状況として車両ドアが開放されたことを契機として緩衝体が膨張状態とされることが好ましい。また、出庫が完了した場合には緩衝体が駐車スペース側に突出された状態が解除されるため緩衝体が目立ちにくくなり、良好な外観を保持することができる。
【0032】
上記切替制御手段を備える形態の建物において、前記緩衝体の一部は、膨張状態とされることにより前記車庫出入口側における前記内壁の開放端から前記駐車スペースの外方へ突出されるよう構成されており、前記切替制御手段は、前記検知手段により前記車両が出庫される又は出庫されると推定される状況が検知された場合には前記緩衝体の少なくとも一部を膨張状態とすることにより前記内壁の開放端から前記駐車スペースの外方へ該緩衝体の一部が突出されるよう前記切替手段を制御することが好ましい。
【0033】
こうすれば、少なくとも出庫時には、緩衝体が駐車スペースの外方へ突出されるため、出庫時の運転者に対し、実際の内壁の開放端よりも更に外方を車庫の開放端と認識させることができる。その結果、車両と内壁との衝突をより低減させることができる。また、万一車庫の開放端に車両が接触した場合であっても、当該部位は緩衝体で構成されているため、内壁及び車両における傷の発生や破損を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[第1の実施形態]
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、図1は本実施形態の住宅に備えられた車庫の周辺の平面構成を示す平面図であり、図2は車庫を構成する壁(車庫壁)の概略構成を示す断面斜視図である。本実施形態では、住宅として、鋼材を利用した骨組み構造を有する建物を例示しており、この骨組み構造に外壁その他の各種建築材が設けられて構築されている。
【0035】
図1に示すように、住宅10は、車庫20を備えている。車庫20は、住宅10の一階部分に組み込まれることにより住宅10と一体になった所謂インナガレージ(付属車庫)である。車庫20は、およそ地表面に設定される車庫床面21と車庫20の天井面との間であって、かつ両側方及び奥方の三方に設定される車庫壁23の内壁24によって取り囲まれた空間に駐車スペース25が形成されている。また、車庫20の正面には、内壁24の開放端26を挟む空間に車庫出入口28が形成されており、車庫出入口28を通じて車庫20への車両や人の出入りが可能になっている。
【0036】
車庫壁23は、一方の側方に設けられ屋外11と駐車スペース25とを仕切る外壁部23aと、他方の側方及び奥方に設けられ屋内12と駐車スペース25とを仕切る内壁部23bとにより構成されている。以下、車庫壁23(外壁部23a及び内壁部23b)の構成について図2を用いて説明する。なお、以下では、車庫壁23のうち車庫20の側方に設けられている内壁部23bを中心に説明する。
【0037】
図2に示すように、車庫壁23は、基礎29と、下地材30と、壁材40とを備えている。
【0038】
基礎29は、周知の鉄筋コンクリート造であり、車庫床面21の三方(両側方及び奥方)を囲むようにして立設されている。基礎29は、車庫壁23の下部を構成している。詳細には、基礎29は、車庫床面21からの高さがH1に設定されている。この高さH1は、車両Cにおいて内壁24との衝突の可能性が高いとされる複数箇所のうち最も低位置の箇所における車庫床面31からの高さよりも低くなるよう設定されている。具体的には、車両Cの車両バンパよりも低い高さ(例えば、40〜50センチメートル)に設定されている。この設定に際しては、車高が低い(すなわち車両バンパの位置が低い)車両を考慮して高さH1を設定すれば、各種車両に適合させることができる。
【0039】
基礎29の上端には、水平方向全体に延びる下地材30が配設されている。下地材30は、軽量鉄骨材からなる溝形形状の下地フレーム31を備えている。下地フレーム31は、基礎29の上に配置され鉛直方向に延びる縦枠31aと、縦枠31a間に配置され水平方向に延びる横枠31bとから構成されており、両者が溶接等で連結されている。また、内壁24の開放端26には、軽量鉄骨材からなる断面矩形状の角柱37が配設されている。
【0040】
下地フレーム31の横枠31bの上面には、床材36が水平方向に延びた状態で配設されており、室内12における床面を構成している。縦枠31aの屋内12側の側面には、高さ方向に延びる木レンガ32がタッピングネジ等により取り付けられている。この木レンガ32の屋内12側の側面には、高さ方向に延びる木フレーム33がタッピングネジ等により取り付けられている。さらに、木フレーム33の屋内12側の側面には、石膏ボード34がタッピングネジ等により取り付けられている。そして、この石膏ボード34により居室の内壁が形成されている。また、石膏ボード34と下地フレーム31との間には、例えば防湿層付きのグラスウールにて構成される断熱材35が介装されている。
【0041】
縦枠31a及び横枠31bの駐車スペース25側の側面には、壁材40が取り付けられている。壁材40は、基礎29の上方に駐車スペース25に面した状態で設けられている。具体的には、壁材40は、駐車スペース25側の側面が基礎29よりも駐車スペース25側に位置するよう縦枠31a及び横枠31bに固定されており、その駐車スペース25側の側面において基礎29の駐車スペース25側の側面とともに内壁24を形成している。
【0042】
壁材40は、その一部が外装パネル41で構成されている。外装パネル41は、例えば窯業系サイディング等の外装材により構成された硬質性の矩形平板である。外装パネル41は、内壁24の上部を構成している。具体的には、外装パネル41は、車庫床面21から高さH2よりも上方に配置されている。この高さH2は、車両Cにおいて内壁24との衝突の可能性が高いとされる複数箇所のうち、最も高位置の箇所における車庫床面21からの高さよりも高くなるよう設定されている。より具体的には、車両ドアの最外部の上端を超える高さ(例えば、100センチメートル)に設定されている。この設定に際しては、車高が高い(すなわち車両ドアの位置が高い)車両を考慮して高さH2を設定すれば、各種車両に適合させることができる。
【0043】
壁材40のうち外装パネル41以外の部分、すなわち外装パネル41と基礎29との間には、緩衝機能を備える緩衝用パネル42が設けられている。具体的には、緩衝用パネル42は、車庫床面21から高さH1と高さH2との間の領域に設けられており、この領域において水平方向の全体に亘って配置されている。このように、緩衝用パネル42を内壁24に対し全周配置させることにより、外装パネル41と緩衝用パネル42との境界を目立ちにくくするとともに、緩衝用パネル42の持つ機能を駐車スペース25の全域にて発揮させることができる。
【0044】
緩衝用パネル42は、硬質性の矩形平板である基板45を備えており、この基板45の一側面が下地フレーム31にタッピングネジ等により取り付けられている。これにより、緩衝用パネル42は、下地材30に対して支持されている。基板45の駐車スペース25側の側面には、駐車スペース25側から内壁24への衝撃を緩和する緩衝体44が接着剤等により取り付けられている。
【0045】
緩衝体44は、例えばポリ塩化ビニルやポリ酢酸ビニル、ゴム等などの柔軟性材料からなる中空体である。具体的には、緩衝体44は、その中空部44aの体積を増減させることにより壁の奥行き方向に伸縮自在になっている。また、緩衝体44は、屋内12側の側面が基板45に固定されており、駐車スペース25側の側面ではその動きが許容されている。したがって、緩衝体44は、内壁24から見て奥方の側面が下地材30に固定されたまま、その手前側の側面を中空部44aの体積に応じて内壁24に対する垂直方向に相対移動されることとなる。
【0046】
緩衝体44は、緩衝体44を収縮状態と膨張状態とに切り替える切替装置46とチューブ等を介して連結されている。切替装置46は、中空部44aに対して空気の出し入れを行う。具体的には、例えばポンプやコンプレッサ等のように加圧機能と減圧機能とを同時に又は別個に備えた1又は複数の装置で構成されている。これにより、緩衝体44は、収縮状態と膨張状態とに切り替えられ、壁の奥行き方向に伸縮されることとなる。切替装置46は、外部から視認不能に設けられていることが好ましい。例えば、図2に示すように車庫壁23の内部に設けられていてもよいし、あるいは、車庫20内や屋内12に外部から遮蔽された状態で設けられていてもよい。
【0047】
緩衝体44の表面には、外装パネル41と同一の模様及び色彩が付された擬似パネル43が取り付けられており、緩衝用パネル40の最表面を構成している。擬似パネル42は、例えばウレタン樹脂、ABS樹脂などの柔軟性材料により形成された矩形平板である。このため、車両Cが緩衝用パネル40に衝突された場合には、車両Cへの傷の発生等を抑制することができる。また、内壁24において平坦な形状を保持させることができる。
【0048】
かかる構成の緩衝用パネル42の動作、特に緩衝体44の動作について説明する。図3は、緩衝体44の動作を説明する図1のA−A断面図である。車庫壁23は、図3(a)に示すように、内壁24に緩衝機能を要しない通常時には、中空部44aに空気が導入されておらず収縮状態となっている。この状態では、外装パネル41と緩衝用パネル42とは面一の状態が保持されている。
【0049】
この状態において、切替装置46により中空部44aへ空気が導入されると、中空部44aの体積が増加されることにより緩衝体44が膨張することとなる。このとき、緩衝体44の奥方側の側面が下地材30に対して固定されておりかつ擬似パネル43が取り付けられた手前側の側面はその動きが許容されているため、緩衝体44は、図3(b)に示すように、手前側の側面が駐車スペース25側へ移動する。これに伴い、擬似パネル43も駐車スペース25に突出される。
【0050】
その後、切替装置46により中空部44aの空気が吸引されると、中空部44aの体積が減少されることにより緩衝体44が車庫壁23の奥行き方向に収縮し、これに伴い擬似パネル43が緩衝体44の収縮方向と同じ方向に移動する。そして、緩衝体44の中空部44aが膨張前の体積と同じになったところで切替装置46による吸引を停止させると、図3(c)に示すように、外装パネル41と緩衝用パネル42との面一の状態が再び形成されることとなる。
【0051】
図2の説明に戻り、緩衝用パネル42は、複数のパネル片49が水平方向に並設されている。これにより、中空部44aへの空気の導入時には、より容積の小さい複数の中空部44aに対して空気の導入が行われることとなるため、迅速な膨張処理が可能となる。
【0052】
パネル片49は、内壁24を形成する内周部パネル片49aと、内壁24側の一部から外壁27側の一部に亘って配置されることにより内壁24の開放端26を形成する外端部パネル片49bとから構成されている。内周部パネル片49aは、上述したように基板45と緩衝体44と擬似パネル43とから構成されており、硬質性の基板45によって平板形状が保持されている。これに対し、外端部パネル片49bは、図4に示すように、裏面に弾性体47が設けられている。なお、図4は図2のB−B断面図を示す。
【0053】
具体的には、弾性体47は、例えば外端部パネル片49bの裏面に取り付けられた板バネ等であり、その中間位置でL字状に屈曲している。図4(a)に示すように、弾性体47は、内壁24に緩衝機能を発揮させる必要のない通常時には、屈曲位置が内壁24の開放端26に略一致するよう配置されている。そして、内周部パネル片49aに隣接する端部から屈曲位置までの裏面が、内壁24の開放端26に配設された角柱37の駐車スペース25側の側面に固定されている。これにより、外端部パネル片49bが下地材30に対して支持されている。
【0054】
これに対し、外壁27の一部を構成する部分の裏面は下地材30に固定されていない。詳細には、弾性体47は、外端部パネル片49bにおいて内壁24を構成しない側面、すなわち内壁24の開放端26からはみ出た部分の裏面が角柱37の外壁27側の側面に当接されている。これにより、外端部パネル片49bは、通常時においては弾性体47の形状に付随してその中間位置で屈曲されることで、開放端26からはみ出た部分の裏面が角柱37の外壁27側の側面に当接されており、その姿勢をL字形状に定めている。このとき、外端部パネル片49bの中空部44aは、屈曲位置の両側方において連通された状態が保持されている。
【0055】
弾性体47は、外端部パネル片49bの中空部44aに空気が導入されることで平板形状とされる。具体的には、中空部44aへの加圧により緩衝体44が平板形状を取ろうとするのに付随して、弾性体47は、その弾性力に抗して下地フレーム31から離間する。そして、弾性体47のうち内壁24からはみ出た部分が屈曲部位を中心として回動し、その端部を外壁27から内壁24までの途中位置へ移動させる。このとき、弾性体47が略平板形状とされるのが好ましい。その結果、外端部パネル片49bは、内周部パネル片49aとは反対側の端部48が駐車スペース25の外方へ突出されることとなる。
【0056】
内壁24の開放端26における緩衝用パネル42の動作を、図4を用いて説明する。車庫壁23は、内壁24に緩衝機能を発揮させる必要のない通常時には、図4(a)に示すように、中空部44aに空気が導入されておらず収縮状態となっている。この状態では、外端部パネル片49bは、内壁24の開放端26からはみ出した部分の裏面が角柱37の外壁27側の側面に当接されている。これにより、外端部パネル片49bは、その中間位置で屈曲され開放端26における角部を形成することとなる。
【0057】
この状態において、切替装置46により中空部44aへ空気が導入されると、中空部44aの体積が増加されることにより緩衝体44が膨張される。このとき、外端部パネル片49bは、内壁24の開放端26からはみ出た部分が固定されていないことから駐車スペース25の外方での動きが許容され、図4(b)に示すように、緩衝体44の屈曲状態が解除されるようその姿勢を変更する。そして、緩衝体44の動きに付随して弾性体47がその弾性力に抗して角柱37から離間する。その結果、外端部パネル片49bは、端部48が駐車スペース25の外方へ突出されることとなる。
【0058】
その後、切替装置46により中空部44aの空気が吸引されると、中空部44aの体積が減少することにより緩衝体44が収縮される。これにより、外端部パネル片49bでは、その端部48を角柱37から離間させる方向への力が解除される。そして、図4(c)に示すように、外端部パネル片49bは、弾性体47の弾性力により駐車スペース25の外方に位置する部分の側面が角柱37の外壁27側の側面に当接され、L字状に屈曲した状態が再び形成されることとなる。
【0059】
かかる構成の緩衝用パネル42は、車両Cと人との状況に応じて収縮状態と膨張状態とに切り替えられる。この様子を図5及び図6に示す。ここで、図5は入庫時における緩衝体44の動作を説明する説明図であり、図6は出庫時における緩衝体44の動作を説明する説明図である。
【0060】
車庫20においては、車両と人との状況を把握するための手段として、図5及び図6に示すように監視カメラ51と赤外線センサ52とが車庫20内に取り付けられている。具体的には、監視カメラ51は、車庫20の奥方に取り付けられており、車庫20内及び車庫出入口28近傍の画像を撮影可能になっている。赤外線センサ52は、車庫出入口28近傍を検知範囲とする出入口センサ52aと、車庫20内の中間部を検知範囲とする車庫センサ52bとを備えている。
【0061】
図5及び図6に示すように、監視カメラ51及び赤外線センサ52は、切替装置46とともに、これらを制御する切替制御装置53と電気的に接続されている。切替制御装置53は、マイクロコンピュータを備えており、監視カメラ51を駆動したり、赤外線センサ52での検知結果を取得したりする。また、監視カメラ51により取得された画像に対し画像処理を施すことにより人及び車両の状況を判断したり、該判断に基づいて切替装置46を駆動させたりする。すなわち、切替制御装置53は、緩衝体44における収縮状態と膨張状態との切り替えを制御する。以下に、緩衝用パネル42の動作について詳細に説明する。なお、切替制御装置53は、車庫20や住宅10、あるいは住宅10の外部等に設けることができる。
【0062】
まず、車両Cの入庫時における緩衝用パネル42の動作の概要について図5を用いて説明する。車庫20内に車両Cを格納させる前の状態では、緩衝用パネル42は、内周部パネル片49aと外端部パネル片49bとが共に収縮状態となっている。このため、図5(a)に示すように、内壁24は平坦になっている。つまり、緩衝用パネル42と外装パネル41とが面一の状態を保持している(図3(a)参照)。
【0063】
この状態で車庫出入口28近傍に車両Cの移動が検知されると、図5(b)に示すように、各内周部パネル片49aが膨張状態に切り替わり、内壁24が駐車スペース25側へ突出される(図3(b)参照)。内周部パネル片49aは、車両ドア及び車両バンパを内壁24に衝突させやすい箇所(高さH1からH2の間の領域)に設けられている。このため、万一車両Cを内壁24に衝突させた場合であっても、車両Cは、緩衝機能を有する緩衝用パネル片49aに衝突されることとなる。これにより、車両Cと車庫壁23との衝撃が緩和される。
【0064】
また、図5(c)に示すように、各内周部パネル片49aの膨張状態は、車庫Cの入庫が完了して車両ドアが開いた場合にも維持されている。こうすることで、運転者Dが車両ドアを開けた場合に、万一内壁24に車両ドアを衝突させた場合であっても、その衝撃が緩和され、車両C及び内壁24の損傷等を抑制することができる。
【0065】
そして、車両Cから運転者Dが降りると、入庫が完了したと推定される状況が検知されたものとして、図5(d)に示すように、内周部パネル片49aが収縮状態に切り替わる。これにより、内周部パネル片49aは、駐車スペース25側から内壁24に向かって移動し、外装パネル41と面一の状態を再び形成する(図3(c)参照)。その結果、車両Cと内壁24との間に隙間が十分に形成されるため、運転者Dが車庫20から外部へ移動するのが容易となる。
【0066】
次に、車両Cの出庫時における緩衝用パネル42の動作の概要について図6を用いて説明する。図6(a)に示すように、車庫20内に車両Cが停車された状態では、内周部パネル片49aと外端部パネル片49bとが共に収縮状態とされることにより、内壁24が面一の状態になっている(図3(a)参照)。これにより、車両Cと内壁24との間には十分な隙間が形成されている。
【0067】
この状態で人(運転者D)が乗車することが検知されると、図6(b)に示すように、各内周部パネル片49aが膨張状態に切り替わり、内周部パネル片49aが駐車スペース25側へ突出されることとなる。このため、運転者Dが車両ドアを開けた際に万一内壁24に車両ドアを衝突させた場合であっても、車両ドアと緩衝用パネル49aとが衝突されるだけであることから、車両C及び内壁24の損傷等を抑制することができる。
【0068】
ここで、人の乗車を検知するには、例えば人が車両ドアに接触したことや、人が車両ドア近傍に所定時間(例えば数秒)以上停止したことなど、車両ドアを開ける前の動作であることが好ましい。運転者Dが車両ドアを開ける前に緩衝体44を膨張状態とすることができるからである。
【0069】
そして、運転者Dが車両Cに乗り込み、車両Cが移動すると、図6(c)に示すように、内周部パネル片49aが膨張状態とされたまま外端部パネル片49bが膨張状態に切り替わり、外端部パネル片49bの端部48が駐車スペース25の外方へ突出される(図4(b)参照)。このため、運転者Dには端部48が車庫20の縁端部と認識されるため、運転者Dが端部48を目標位置として車両Cを移動させることで、車両Cの軌道は、端部48が突出されていない場合に比べ、車庫20における本来の角部(内壁24の開放端26)よりも駐車スペース25の外方に向かって描かれることとなる。その結果、車両Cと車庫壁23との衝突を抑制することができる。
【0070】
また、図6(d)に示すように、車両Cの出庫中には内周部パネル片49aと外端部パネル片49bとの膨張状態が維持される。このため、図6(e)に示すように、万一車両Cが車庫20の縁端部と接触した場合であっても、その接触部位は外端部パネル片49bで構成されているため、当該接触部位が側方に屈曲される。これにより、車庫壁23への衝撃が緩和されることとなり、その結果、車庫壁23及び車両Cにおける傷の発生や破損を抑制することができる。また、外端部パネル片49aの表面は柔軟性材料からなるため、車両Cに傷も発生しにくい。
【0071】
その後、車庫20から車両Cが出庫して車両Cが検知されなくなると、図6(f)に示すように、内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bが収縮状態に切り替わる。これにより、内周部パネル片49aが駐車スペース25側から壁の奥行き方向に移動して外装パネル41と面一の状態が再び形成される(図3(c)参照)。また、外端部パネル片49bの駐車スペース25の外方に位置する部分が弾性力により外壁27側に移動され、外端部パネル片49bがL字状に屈曲された状態が再び形成されることとなる(図4(c)参照)。
【0072】
次に、切替制御装置53により実行される緩衝体切替処理についてフローチャートに基づいて説明する。図7は、切替制御装置53のマイクロコンピュータによって実行される緩衝体切替処理のフローチャートである。この処理は、所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0073】
緩衝体切替処理では、まず、赤外線センサ52により車庫20内又は車庫出入口28近傍に物体が検知されたか否かを判定する(ステップS101)。物体が検知されない場合(図5(a)又は図6(f)の場合)には(ステップS101でNo)、必要に応じて切替装置46を駆動させて内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bを収縮状態とする(ステップS109)。
【0074】
一方、物体が検知された場合には(ステップS101でYes)、フラグFがゼロか否かを判定する(ステップS102)。ここで、フラグFとは、監視カメラ51による撮像を開始したか否かを示すものであり、ゼロの場合には監視カメラ51による撮像が未だ開始されていないことを示し、値1の場合には監視カメラ51による撮像が開始されていることを示す。そして、フラグFがゼロの場合には(ステップS102でYes)、監視カメラ51を駆動させて車庫20内及び車庫出入口28近傍の撮像を開始し、フラグFを値1にセットする(ステップS103)。一方、フラグFが値1の場合には(ステップS102でNo)、監視カメラ51による撮像が既に開始されているため、監視カメラ51に対して新たに駆動開始の指令を行うことなく、ステップS104に移行する。
【0075】
続いて、監視カメラ51の画像処理を行うことにより、赤外線センサ52により検知された対象が車両Cか否かを判定する(ステップS104)。車両Cでない場合には(ステップS104でNo)、車庫20内又は車庫出入口28近傍に人が存在するものと推定されるが、車庫20内には車両Cがないため、その人物は運転する意思がないものと判断し、ステップS109に進み、内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bを収縮状態とする。
【0076】
車両Cの場合には(ステップS104でYes)、監視カメラ51により撮像された画像を処理することで車両Cが入庫中か否かを判定する(ステップS105)。車両Cが入庫中の場合には(ステップS105でYes)、必要に応じて切替装置46を駆動させることにより、内周部パネル片49aを膨張状態とし外端部パネル片49bを収縮状態とする(ステップS111)。このような状況としては、図5(b)及び(c)が該当する。なお、このルーチンでは、車両Cが停止されたのち運転者Dが降車するまでを入庫中と判定する。
【0077】
そして、このルーチンを繰り返し実行するうちに車両Cの入庫が完了し運転者Dが降車すると、ステップS105で入庫中でないと判定されたのち(ステップS105でNo)、車両Cが出庫中か否かを判定する(ステップS106)。ここでは出庫中でないことから(ステップS106でNo)、次に画像処理により車庫20内に人が存在するか否かを判定する(ステップS107)。運転者Dが降車した場合を考えていることから、ここでは人が検知され(ステップS107でYes)、続いて当該人が乗車する場面であるか否かを判定する(ステップS108)。運転者Dは乗車する場面ではないことから(ステップS108でNo)、ステップS109に進み、内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bを収縮状態とする。こうして、車両Cの入庫が完了し運転者Dが降車することにより、緩衝用パネル42は通常時の状態、すなわち内壁24が面一の状態に戻る(図5(d)参照)。
【0078】
一方、運転者Dが車庫20内に停止中の車両Cを出庫させる場合(図6(a)参照)、入庫中でもなく、未だ出庫中でもないため、ステップS105及びS106で否定判定がなされる(ステップS105でNo、ステップS106でNo)。その後のステップS107及びS108では、運転者Dが車庫20内におり(ステップS107でYes)、更にその運転者Dは乗車する場面であることから(ステップS108でYes)、ステップS111へ進み、内周部パネル片49aを膨張状態として外端部パネル片49bを収縮状態とする(図6(b)参照)。ここで、人が乗車する場面であることは、例えば、画像処理によって人が車両ドアに触れたことが検知された場合や、人が車両ドア近傍に所定時間(例えば数秒)以上停止したことが検知された場合などとしてもよい。あるいは、車庫センサ52bで物体が所定時間検知された場合としてもよい。
【0079】
そして、乗車が完了して車両が動き出し出庫中となった場合には(ステップS106でYes)、内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bを膨張状態とする(ステップS110,図6(c)〜(e)参照)。その後、本ルーチンを繰り返し実行するうちに車両Cが車庫20から遠ざかり赤外線センサ52によって車両C及び人が検知されなくなると(ステップS101でNo)、ステップS109へ進み、内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bを収縮状態とする(図6(f)参照)。
【0080】
なお、ステップS109で内周部パネル片49a及び外端部パネル片49bを収縮状態とした後は、フラグFが値1か否かを判定し(ステップS112)、フラグFがゼロの場合には(ステップS112でNo)そのまま本ルーチンを終了する。これに対し、フラグFが値1の場合には(ステップS112でYes)、監視カメラ51による撮像を停止させたのちフラグFをゼロにリセットし(ステップS113)本ルーチンを終了する。
【0081】
以上の構成により、以下に示す有利な効果が得られる。
【0082】
車庫壁23は、駐車や乗降の際に車両Cを衝突させやすい箇所に緩衝体44が備えられているため、緩衝体44を膨張状態とすることにより内壁24に緩衝機能を持たせることができる。これにより、車両Cが内壁24に万一衝突した場合であっても、緩衝体44により車両Cと内壁24との間の衝撃が緩和される。したがって、車両C及び内壁24における傷の発生や破損を抑制することができる。また、万一車両Cを内壁24に衝突させた場合であっても、その表面は柔軟性材料からなる擬似パネル43で構成されているため、傷の発生や破損等を確実に抑制することができる。
【0083】
また、緩衝体44は、膨張状態と収縮状態との両形態を取るため、駐車完了時などのように内壁24に緩衝機能が必要とされない場合には緩衝体44を駐車スペース25側に突出させないようにすることができる。これにより、緩衝体44が設けられていることが外見上認識されにくいため、車両Cの駐車や乗降の際に車両と壁との衝突による車両又は壁への傷の発生を抑制するのにあたり、外観上好ましい状態を維持することができる。特に、車庫壁23では、緩衝体44の収縮状態では、外装パネル41と緩衝用パネル42とが面一の状態を保持するため、外観上より好ましい。
【0084】
さらに、駐車完了後などの停車時に緩衝体44を駐車スペース25へ突出させないことにより、停車時に車両Cと内壁24との間に十分なスペースを確保することができる。これにより、車両Cと内壁24との間の隙間を通行等に利用する場合に支障が生じるのを抑制することができる。
【0085】
緩衝用パネル42は、複数のパネル片49で構成されているため、緩衝体44を迅速に膨張状態とすることができる。また、必要箇所のパネル片49だけを膨張させることも可能であることから、緩衝体44における無駄な動きを省くことができる。
【0086】
パネル片49のうち、外端部パネル片49bは、緩衝体44が膨張状態とされることにより端部48が駐車スペース25の外方へ突出されるため、運転者Dに対して端部48を車庫20の開放端として認識させることができる。これにより、車両Cが内壁24の開放端26から離れて出庫されるよう車両Cを誘導することができる。その結果、車両Cが外端部パネル片49b以外の壁面に衝突するのを回避することができる。また、万一外端部パネル片49bの端部48と車両Cとが衝突した場合であっても、該端部48はその表面が柔軟性材料で構成されている上、車両出入口28の幅を広げる方向に屈曲可能なため、車両C又は壁への傷の発生を抑制することができる。
【0087】
また、緩衝体44における収縮状態と膨張状態との切り替えは、空気の出し入れによって行うため、緩衝体44の収縮状態及び膨張状態を簡単な構成で実現することができる。
【0088】
さらに、緩衝体44は、車庫20内及び車庫出入口28近傍の車両Cや人の状況に応じて切替制御装置53により収縮状態と膨張状態とに切り替えられるため、内壁24への衝突の危険性が高い場合には内壁24に緩衝機能を持たせるとともに、衝突の危険性が低い場合には車両Cと内壁24との間に十分なスペースを確保するのを優先させることができる。このように、緩衝機能の付与とスペース確保とを両立させることができる。
【0089】
また、入庫時において運転者Dが降車した際には緩衝体44を収縮状態とするため、車両Cと内壁24との間には十分なスペースが確保される。これにより、運転者Dは、車両Cから降りた後の動作をスムーズに行うことができる。
【0090】
さらに、車両ドアの開閉時には緩衝用パネル42が駐車スペース25側へ突出されているため、運転者Dは緩衝用パネル42の表面を目標位置として車両ドアを開閉することにより、車両ドアを車庫壁23の硬質部分に衝突させるのを確実に回避させることができる。
【0091】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、上記第1の実施形態と壁材40の構成が異なる。具体的には、上記第1の実施形態のように緩衝体44が車庫壁23の内部に設けられているのではなく、外装パネル41の表面に取り付けられている。以下、壁材40を中心に説明する。
【0092】
図8は、本実施形態の車庫壁23における図1のA−A断面図である。図8(a)に示すように、車庫壁23の壁材40は、その全体が外装パネル41で構成されている。
【0093】
外装パネル41には、車庫床面21から高さH1と高さH2との間の領域の表面に緩衝体44が取り付けられている。具体的には、緩衝体44は、駐車スペース25側の側面の動きが許容された状態で屋内12側の側面が外装パネル41の表面に固定されている。このため、緩衝体44の中空部44aに空気等が導入された場合には、図8(b)に示すように、緩衝体44の駐車スペース25側の側面が内壁24から駐車スペース25に向かって突出されることとなる。
【0094】
また、緩衝体44の表面には、擬似パネル43が取り付けられている。これにより、緩衝体44が取り付けられていることに起因した外観上の違和感を低減させることができる。
【0095】
以上の構成により、以下に示す有利な効果が得られる。
【0096】
緩衝体44は、外装パネル41の表面に取り付けられているため、切替装置46の配置箇所を適宜選択することにより(例えば駐車スペース25のいずれか)、既存の車庫壁23に対して内壁24における緩衝機能を後から付与することができる。また、外装パネル41の表面に取り付ければよいため、内壁24に対して緩衝機能を簡単にかつ容易に付与することができる。
【0097】
さらに、壁材40は、外装パネル41で構成することができるため、内壁24に緩衝機能を持たせるにあたり、壁の強度を十分に保持することができる。
【0098】
[他の実施形態]
なお、以上説明した第1の実施形態及び第2の実施形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0099】
・上記第1の実施形態では、入庫時に緩衝体44を収縮状態から膨張状態に切り替える契機を、車庫出入口28近傍で車両Cが移動したこととしたが(図5(b)参照)、車両Cが入庫されると推定される状況であればその形態は特に限定しない。例えば、車両Cのエンジン音が検知されたことや車両Cに搭載された車載装置から要求信号を受信したことなどを契機として緩衝体44を収縮状態から膨張状態に切り替えてもよい。
【0100】
同様に、入庫時に緩衝体44を膨張状態から収縮状態に切り替える契機についても、入庫が完了した又は完了したと推定される状況であれば特に限定しない。具体的には、上記第1の実施形態では、車庫20内で車両Cが停止されたのち車庫20内に人が検知された場合、すなわち運転者Dが降車したことを契機として緩衝体44を膨張状態から収縮状態に切り替えたが(図5(d)参照)、これの代わりに又はこれとともに、例えば車両Cのエンジンが停止されたことを契機として緩衝体44を膨張状態から収縮状態に切り替えてもよい。こうすれば、運転者Dが降車する際に緩衝体44を確実に収縮状態とすることができる。その結果、運転者Dの降車時には、車両Cと内壁24との間に十分なスペースが設けられるため、運転者Dが降車を容易に行うことができる。
【0101】
また、車両Cが停止してから所定時間経過したことを契機としてもよい。あるいは、運転者Dが車両ドアを開閉したことや車両ドアロックがなされたこと、車両Cが所定時間以上停止したこと等を契機としてもよい。
【0102】
入庫時と同様に、出庫時においても、緩衝体44の収縮状態と膨張状態とを切り替えるための契機は特に限定しない。具体的には、出庫時に緩衝体44を収縮状態から膨張状態に切り替える契機を、人の乗車が検知されたこととしたが(図6(b)参照)、車両Cが出庫される又は出庫されると推定される状況であればその形態は特に限定しない。例えば、車両ドアロックが解除されたことをその契機としてもよい。こうすれば、運転者Dが車両ドアを開ける前に緩衝体44を確実に膨張状態とすることができる。その結果、運転者Dが車両ドアを開ける際には内壁24において緩衝機能が発揮されているため、車両Cと内壁24との衝突に起因した、内壁24及び車両Cでの傷の発生や破損を抑制する上で好適である。
【0103】
また、車両ドアが開いたこと、エンジン始動がなされたこと、車両Cが移動を開始したこと等をその契機としてもよい。あるいは、車庫20内又は車両Cに緩衝体44の収縮状態と膨張状態とを切り替えるスイッチを設け、該スイッチが押下されたことを契機として緩衝体44の状態を切り替えるものとしてもよい。
【0104】
同様に、出庫時に緩衝体44を膨張状態から収縮状態に切り替える契機についても、出庫が完了したと推定される状況であれば特に限定しない。具体的には、上記第1の実施形態では、車庫20内又は車庫出入口28近傍に車両Cが存在しなくなったこととしたが(図6(f)参照)、例えば、車両Cのエンジン音が検知されなくなったことや車両Cに搭載された車載装置から要求信号を受信しなくなったことなどを契機として緩衝体44を膨張状態から収縮状態としてもよい。
【0105】
・上記第1の実施形態では、車両の状況及び人の状況を判断するのにあたり、赤外線センサ52で車庫20内又は車庫出入口28近傍で物体が検知されたことに起因して監視カメラ51による撮像を開始し、その画像処理の結果に基づいて車両の状況及び人の状況を判断したが、この形態に限定しない。例えば、画像処理によるものではなく、複数のセンサによる検知結果を用いて行ってもよい。具体的は、人感センサ(赤外線センサ)や金属センサ、距離センサ等を壁材40の水平方向に所定間隔ごとにそれぞれ多数並設する。こうすれば、センサ間での検知状況から物体の移動や停止、あるいは物体の速度等を検知することができる。また、金属センサを用いれば、その動きの起因が車両か人かを判定することができる。さらに、車両の格納時における車両ドアの位置に人感センサを配置することで、車両の乗降を検知してもよい。あるいは、距離センサによって車両ドアの接近状況を検知することで、車両ドアの開閉状況を判断してもよい。
【0106】
・上記第1の実施形態では、外端部パネル片49bは、出庫時のみ駐車スペース25の外方へ突出されたが、入庫時にも駐車スペース25の外方へ突出されてもよい。こうすることで、車両Cと内壁24との衝突による傷の発生や損傷をより確実に低減させることができる。
【0107】
・上記第1の実施形態では、内周部パネル片49aは、入庫時及び出庫時に駐車スペース25側へ突出されたが、出庫時には突出されないようにしてもよい。出庫時であれば、内壁24に車両Cを衝突させる可能性が少ないからである。こうすることにより、切替装置46の無駄な動作を低減させることができる。
【0108】
・上記第1の実施形態では、外端部パネル片49bは、内壁24の一部と外壁27の一部とを構成し該外壁27を構成する部分が該外壁27から車庫20の正面に向かって突出されたが、緩衝体44の端部が駐車スペース25の外方へ突出されるものであればこの形態に限定しない。例えば、外端部パネル片49bは、その端部48を駐車スペース25に挿入させた状態で中間位置において屈曲されていてもよい。この場合、緩衝体44を膨張状態に切り替えることにより、外端部パネル片49bは、端部48が駐車スペース25からその外方へ突出される。したがって、この場合であっても、上記と同様の効果を得ることができる。なお、外端部パネル片49bが障害物として認識されない点や外観が良好である点等において、上記第1の実施形態が好ましい。
【0109】
・上記第1の実施形態において、パネル片49を構成する基板45は、各々の車庫壁23において連続した1の部材であってもよい。この場合であっても、緩衝体44は複数で構成されているため、上記と同様の効果を得ることができる。また、緩衝用パネル42を、複数のパネル片49で構成するのではなく、車庫壁23において連続した1の部材で構成されていてもよい。こうすることで、部品数を低減させることができる。
【0110】
・上記実施形態では、緩衝体44における収縮状態と膨張状態との切り替えを空気の出し入れによって実現したが、空気以外の手段、例えば液体や油等を利用して実現してもよい。
【0111】
・上記第1の実施形態では、緩衝用パネル42は、基板45と緩衝体44と擬似パネル43とで構成したが、緩衝体44を有していれば基板45及び擬似パネル43は必ずしも必要でない。緩衝体44が収縮状態及び膨張状態でその表面を駐車スペース25に面した姿勢を保持することができれば、基板45を設けなくても上記効果を得ることができる。
【0112】
また、緩衝用パネル42に擬似パネル43を設けず、緩衝体44の駐車スペース25側の側面が緩衝用パネル42の表面を構成していてもよい。この場合であっても、緩衝体44が柔軟性材料で構成されていることから、車両Cが内壁24に衝突した際には車両C及び内壁24での傷の発生等を抑制することができる。このとき、緩衝体44の表面には、外装パネル41と同一の模様・色彩が施されているのが好ましい。
【0113】
・上記第1及び第2の実施形態では、緩衝体44は内壁24の高さ方向の中間位置に設けたが、中間位置とともに基礎29や内壁24の上部にも設けてもよい。こうすれば、車両Cと内壁24との衝突による壁等の破損を内壁24の広範囲で抑制できる。このとき、緩衝体44は、内壁24側から外壁27側の側面に亘って取り付けられていてもよい。こうすれば、基礎29や内壁24の上部においても車庫壁23の角部が緩衝体44で覆われるため、基礎29や車両Cの損傷を抑制する点でより好適である。
【0114】
・上記第1の実施形態では、緩衝用パネル42を全周配置したが、水平方向の一部に設けてもよい。この場合、車両Cを内壁24に衝突させる可能性が非常に高い箇所だけに設けるのが好ましい。具体的には、車庫20の側方の車庫壁23に対しては、停車時に車両ドアを衝突させやすい箇所(例えば、奥行き方向の中間位置)のみに設けてもよい。また、車庫20の奥方の車庫壁23に対しては、入庫中に車両バンパを衝突させやすい箇所(例えば、幅方向の中間位置)のみに設けてもよい。こうすることにより、複雑な構成を有する箇所を低減できる上、外観を良好にしつつ壁の強度を十分に保持することができる。
【0115】
・上記実施形態では、インナガレージに適用した場合について説明したが、建物から独立して設けられた車庫に適用してもよい。また、車庫20は、側方又は奥方のいずれかに壁を有していればよく、側方又は奥方に壁を有さない車庫や、天井を有さない車庫等に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】住宅に備えられた車庫の平面構成を示す平面図。
【図2】第1の実施形態における車庫壁の概略構成を示す断面斜視図。
【図3】第1の実施形態における緩衝体の動作を説明する図1のA−A断面図。
【図4】開口部における緩衝用パネルの動作を説明する第2のA−A断面図。
【図5】入庫時における緩衝体の動作を説明する説明図。
【図6】出庫時における緩衝体の動作を説明する説明図。
【図7】緩衝体切替処理を説明するフローチャート。
【図8】第2の実施形態における緩衝体の動作を説明する図1のA−A断面図。
【符号の説明】
【0117】
10…住宅、20…車庫、23…車庫壁、24…内壁、25…駐車スペース、26…開放端、28…車庫出入口、44…緩衝体、46…切替装置、49…パネル片、51…検出手段としての監視カメラ、52…検出手段としての赤外線センサ、53…切替制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車スペースを囲む内壁が形成されてなる車庫であって、
前記内壁には、収縮状態と膨張状態とに切り替えられかつ当該膨張状態では前記内壁から前記駐車スペース側へ突出されるか又は前記内壁を前記駐車スペース側へ突出させる緩衝体が備えられていることを特徴とする車庫。
【請求項2】
前記緩衝体は、前記内壁のうち少なくとも高さ方向の中間部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車庫。
【請求項3】
前記緩衝体は、空気の出し入れによって収縮状態と膨張状態とに切り替えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の車庫。
【請求項4】
前記緩衝体の一部は、膨張状態とされることにより車庫出入口側における前記内壁の開放端から前記駐車スペースの外方へ突出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車庫。
【請求項5】
前記緩衝体は、水平方向に複数並設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車庫。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車庫が設けられていることを特徴とする建物。
【請求項7】
車庫内及び車庫出入口近傍における車両の状況を検知する検知手段と、
前記緩衝体を収縮状態と膨張状態とに切り替える切替手段と、
前記検知手段により前記車庫内及び前記車庫出入口近傍で前記車両の移動が検知されない場合には前記緩衝体を収縮状態とし、前記車両の移動が検知された場合には前記緩衝体を膨張状態とするよう前記切替手段を制御する切替制御手段と、
を備えていることを特徴とする請求項6に記載の建物。
【請求項8】
前記検知手段は、更に車庫内及び車庫出入口近傍における人の状況を検知するものであり、
前記切替制御手段は、前記検知手段により前記車庫内で前記車両が停止されたことが検知されたのち一定時間経過した場合又は前記検知手段により前記車庫内に人が検知された場合には前記緩衝体を収縮状態とするよう前記切替手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の建物。
【請求項9】
前記切替制御手段は、前記検知手段により前記車庫内に停車中の車両が出庫される又は出庫されると推定される状況が検知された場合には前記緩衝体を膨張状態とし、前記車庫内及び前記車庫出入口近傍に前記車両が検知されなくなった場合には前記緩衝体を収縮状態とするよう前記切替手段を制御することを特徴とする請求項7又は8に記載の建物。
【請求項10】
前記緩衝体の一部は、膨張状態とされることにより前記車庫出入口側における前記内壁の開放端から前記駐車スペースの外方へ突出されるよう構成されており、
前記切替制御手段は、前記検知手段により前記車両が出庫される又は出庫されると推定される状況が検知された場合には前記緩衝体の少なくとも一部を膨張状態とすることにより前記内壁の開放端から前記駐車スペースの外方へ該緩衝体の一部が突出されるよう前記切替手段を制御することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−127224(P2009−127224A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301147(P2007−301147)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】