説明

車窓用シールストリップ

本発明における第1実施態様によると、車窓用の多層シールストリップ(11)が提供され、第2実施態様によると該多層シールストリップ(11)を製造するために熱可塑性樹脂を使用することに関する。該シールストリップ(11)は、少なくとも熱可塑性エラストマー製の第1弾性層(12)と第2のより硬質の層(13)とを具備し、該第1層(12)が、車両の構造要素(14)と、シールストリップ(11)に対して摺動可能な窓ガラス(16)の表面(15、15')との間において、密閉機能を発揮し、第2層(13)が、該第1層(12)の可視部の少なくとも全範囲を覆う可視性カバーとして機能し、さらに、該第1層(12)と該第2層(13)が、実質的に該シールストリップ(11)の全長に亘って相互に結合される。また、本発明によるシールストリップ(11)および該シールストリップの使用は、第2層(13)が透明または半透明なポリアミド製であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車窓用シールストリップに関する。本発明によるシールストリップは、熱可塑性エラストマー製の少なくとも1つの第1弾性層と、第2のより硬質の層とを具備する。第1層は、車両の構造要素と、シールストリップに対して摺動可能な窓ガラスの表面との間において、密閉機能を発揮する。第2層は、第1層の可視部の少なくとも全範囲を覆う可視性カバーとして機能する。また、該第1層と該第2層は、実質的にシールストリップ全長に亘って相互に結合される。
【背景技術】
【0002】
車窓用シールストリップは、車両の構造要素と窓ガラスの接合面を確実に密着させることにより、環境の影響、例えば、雨水、汚損物および/または風などから、車内を遮断させるものとして既知である。車両用の窓ガラスがもっぱら直線的(垂直方向または水平方向)に移動可能、折りたたみ可能、あるいは非直線的(例えば、回転的)に摺動可能な場合、特に摺動可能な窓ガラス用のシールストリップ対しては、特殊な要求がされている。これらの要求としては、次の事項が含まれる:封止要素が高弾性で長寿命であること、シールストリップの外観が魅力的であること、および環境の影響に対して顕著な安定性を示すこと。本発明に関連して、動力装置により走行する全ての車両、例えば、自動車、トラック、機関車、鉄道車両および船舶などが車両として挙げられる。本発明の範囲を限定するものではないが、本発明を説明するために、自動車に関する一例について説明する。窓ガラスが少なくとも1つのシールストリップに対して多少なりとも摺動可能な場合、透明、半透明または不透明な、平坦または曲面状の、ガラス製、樹脂(例えばポリカーボネートまたはプレキシグラス(登録商標)=PMMA)製、または適用可能な金属製(例えば、金属薄板のスライド製)の実質的に平面状の全ての構造体を、以下においては、摺動可能な窓ガラスと称する。
【0003】
この種のシールストリップは、米国特許第6422571号B1明細書(添付図1参照)に開示されている。この車窓用シールストリップ1は、熱可塑性エラストマー製(好ましくはEPDMゴム製)の第1弾性層2と、アイオノマー製の第2のより硬質の層3を具備する。弾性層2は、自動車ドアの外部金属板4と、シールストリップに対して摺動可能な側面窓ガラス6の表面5との間において、封止機能を発揮する。より硬質の層3は、弾性層2を覆う可視性カバーとして機能し、光沢のある表面を有する。共押出法を使用して、支持体上に2種類の層を成形させることにより、該2種類の層を、実質的にシールストリップ全長に亘って相互に結合させる。
【0004】
独国特許出願第3901093号C2明細書において、車窓用の別のシールストリップが記載されている。第1シールストリップ1(添付図2A参照)は、自動車の側面ドアにおける窓ガラス5の上縁領域と関連する。該シールストリップ1は、第1弾性層2と第2弾性層3を具備する。弾性層2および3は、自動車ドアの上部フレーム4と、シールストリップ1に対して摺動可能な側面窓ガラス6の表面5との間において、密閉機能を発揮する。外部シールリップ3は、内部シールリップ2に対する可視性外部カバーとして機能する。比較的柔軟なゴム層7を介して、シールリップ2および3は相互に接続しており、これらは、窓ガラス6と表面5'に接触して密閉状態のシールを形成する。さらに、このシールストリップは比較的硬質のゴム製保持リップ8を具備する。この保持リップ8は、シールリップ2と外部シールリップ3の間隔を一定に保持しながら、これらの2種類のシールリップを相互に連結させる。第2のシールストリップ1(添付図2B参照)は、自動車のB支柱領域における窓枠4と側面ドアの窓6との接合部に関与し、該シールストリップ1は、2つのシールリップ(該リップは相互に結合して溝を形成する)を形成する第1弾性層2を具備する。窓ガラス6は、2つのシールリップ2の間にあるこの溝の内部を、実質的に直線的に昇降し、該2つのシールリップが窓ガラスの表面5を永続的に押圧することによりシールを形成させる。この場合、外側に位置するシールリップ2は、窓枠4の構造体4'で覆われる。好ましくは、これらのシールストリップは連続流延法または押出法で製造される。
【0005】
欧州特許出願公開第1826050号A1明細書において、車窓用シールストリップが開示されている。米国特許第6422571号B1明細書とは対照的に、この明細書は、自動車の側面ドアのシャフト開口部に配設され外部シールストリップ1および内部シールストリップ1'を開示する。側面窓ガラス6は、この開口部を通過して、側面ドア内に隠された窓用シャフトの方に向かって完全に降下する(添付図3参照)。外部シールストリップ1および内部シールストリップ1'は共に、弾性材料製の複合的なシールリップ2を具備する。窓ガラスが完全に降下した場合、これらのシールリップ2は、部分的に相互接触する(図3参照)。窓ガラス6がシャフト方向から外方へと上昇する場合、シールリップ2が窓ガラス6の表面5と接触する。外部シールストリップおよび内部リップは、これらの2つのシールストリップ1、1'のうち、少なくとも1方のシールリップ2が常に可視状態になるように、構造要素4、4'に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6422571号B1明細書
【特許文献2】独国特許出願第3901093号C2明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1826050号A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、車窓用の代替的なシールストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、少なくとも、熱可塑性エラストマー製の1つの第1弾性層と1つの第2のより硬質の層とを具備する車窓用シールストリップに係る、独立請求項1に記載の特徴による第1態様によって達成される。第1層は、車両の構造要素と、シールストリップに対して摺動可能な窓ガラスの表面との間において、密閉機能を発揮する。第2層は、第1層の可視部の少なくとも全範囲を覆う可視性カバーとして機能する。また、該第1層と該第2層は、実質的に、シールストリップ全長に亘って相互に結合される。本発明によるシールストリップは、第2層が透明または半透明なポリアミド製であることによって特徴づけられる。
【0009】
本発明の目的は、製造されるシールストリップが以下の(a)および(b)を具備し、該第1層と該第2層が、実質的にシールストリップ全長に亘って相互に結合した、車窓用の多層シールストリップを製造するための熱可塑性樹脂の使用に係る、独立請求項15に記載の特徴による第2態様によって達成される:
(a)車両の構造要素と、シールストリップに対して摺動可能な窓ガラスの表面との間において、密閉機能を発揮する熱可塑性エラストマー製の第1弾性層、および
(b)第1層の可視部の少なくとも全範囲を覆う可視性カバーとして機能する第2のより硬質の層。本発明による該使用は、第2層が透明または半透明なポリアミド製であることによって特徴づけられる。
【0010】
本発明による更なる特徴と本発明による別の好ましい実施態様は、従属請求項に基づく。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるシールストリップの利点には、以下の事柄が含まれる:
− 既存するプラスチック製シールストリップ(例えば、ポリプロピレン製の外層を有するシールストリップ)と比べて、外部表面の耐引掻性が改良される。
− 所望の光沢および/または滑らかな外部表面をもたらすために、特別な層(例えばポリエステルフィルム層)を必要としないので、先行技術(米国特許第6422571号B1明細書参照)と比べて、光沢のある外部表面の製造が簡単化される。
− 外層として特定のポリアミドを選択することにより、シールストリップの弾性部に対して、非常に良好な紫外線保護性がもたらされる。
− 外層として透明または半透明なポリアミドを使用することにより、高い耐引掻性(例えば、洗車の際の洗車ブラシに関する耐引掻性)、および自動車産業において使用される化学薬品、例えばワックスおよびシャンプーなどに対する良好な耐薬品性がもたらされる。
− シールストリップに組み込まれる効果層は、シールストリップの弾性部分と効果的に積層するか、あるいは各々の該弾性部分を覆うと共に、外観を改良する。
− ポリアミド製の外層は、優れた着色能を有する。このため、例えば、該外層が単色ラッカーまたはメタリックラッカーを含む場合であっても、車体色に対してエレガントに調和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
先行技術において既知である車窓用シールストリップと、例示的に選択した本発明によるシールストリップの好ましい実施態様を添付図に模式的に示すが、これらの図は本発明の範囲を限定するものではない。以下に図の説明を記載する。
【図1】図1は、米国特許第6422571号B1明細書において開示されたシールストリップを示す(該図は、該明細書の図3において開示された)。
【図2】図2は、独国特許出願第3901093号C2明細書において開示された2種類のシールストリップを示す(該図は、該明細書の図3および図5において開示された)。
【図3】図3は、欧州特許出願公開第1826050号A1明細書において開示された2種類のシールストリップを示す(該図は、該明細書の図5において開示された)。
【図4】図4は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層と、透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層とを具有する、本発明による第1実施態様におけるシールストリップを示す。
【図5】図5は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層の間に配置された効果層を具有する、本発明による第2実施態様におけるシールストリップを示す。
【図6】図6は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層の間に配置された接着剤層を具有する、本発明による第3実施態様におけるシールストリップを示す。
【図7】図7は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層の間に配置された接着剤層と効果層を具有する、本発明による第4実施態様におけるシールストリップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図4は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層12と、透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層13とを具有する、本発明による第1実施態様におけるシールストリップ11を示す。このシールストリップは、締結レリーフ20を介して該ストリップの締結溝21と嵌合する構造要素14(例えば、車のドアにおける薄板製の異形材)に取り付けられる。構造要素14へシールストリップ11を嵌合させるこの方法に代わり、または該方法に加えて、シールストリップ11の締結レリーフ22(例えば単一のピンまたはピン列)を、構造要素14の対応する開口部23または凹部23に嵌合させてもよい。好ましくは、構造要素14との相互嵌合または片側嵌合は、第1弾性層12を使用しておこなわれる。この弾性層12は、窓ガラス16の表面15と共働して密閉をもたらすシールリップ27を具備してもよい。
【0014】
好ましくは、第2のより硬質の層13は、嵌合させたシールストリップ11の第1縁部24が構造要素14の表面25に可能な限り近接すると共に、第2縁部26が窓ガラス16の表面15に対する間隔が小さくなるように配設される。したがって、この被覆層13は、シールストリップ11のより軟質な弾性保持層12が実質上完全に保護されるように被覆されることを保証する。
【0015】
被覆層13の形態としては、シールストリップ11が嵌合された特定の構造要素14の形状に適合する形態、および/または該構造要素の形態を補足する形態が特に好ましい。好ましくは、この被覆層13に効果顔料(effect pigment)および/または着色剤を含有させることで、特定の構造要素14に対する色調和をもたらすことができる。
【0016】
図5は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層12と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層13の間に配置された効果層17を具有する、本発明による第2実施態様におけるシールストリップ11を示す。この効果層17は、熱可塑性エラストマー製の保持層12を実質的に完全に被覆するので、境をなす被覆層13が透明若しくは半透明なポリアミドから製造される場合においても、該保持層12を外部から視認することはできない。したがって、シールストリップ11の外観は、被覆層13により保護される効果層17によって実質的に決定される。
【0017】
好ましくは、この効果層17が、効果顔料および/または着色剤を含有することで、特定の構造要素14に対する色調和をもたらすことができる。
【0018】
しかしながら、効果層17は発光層若しくは燐光層を具備してもよく、あるいは該効果層自体をこの種の層にしてもよい。さらに、被覆層は、例えば一般的な照明条件に応じて、効果層の効果顔料および/または着色剤と共働する効果性の顔料および/または着色剤および/または発光顔料を含有してもよい。シールリップ27(図4参照)の代わりまたはシールリップ27に加えて、摩擦域を低減させるセットバック28を、窓ガラス16の表面15と第1弾性層12の間に設けてもよい。
【0019】
図6は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層12と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層13の間に配置された接着剤層18を具有する、本発明による第3実施態様におけるシールストリップ11を示す。これ以外の点については、この実施態様は、広範囲にわたって第1実施態様に相当する(図4参照)。さらに、保持層12は、好ましくは、窓ガラス16の表面15と該保持層12の間の接触域の全域に広がる滑り摩擦低減層19を具有してもよい。
【0020】
図7は、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層12と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層13の間に配置された接着剤層18と効果層17を具有する、本発明による第4実施態様におけるシールストリップ11を示す。この接着剤層18は、実質的に、熱可塑性エラストマー製の保持層12を完全に被覆する。効果層17は保持層12および接着剤層18を、実質的に完全に被覆するので、該効果層と境をなす被覆層13が透明若しくは半透明なポリアミドから製造される場合においても、該保持層12を外部から視認することはできない。したがって、シールストリップ11の外観は、実質的に、被覆層13により保護される効果層17によって決定される。好ましくは、この効果層17が効果性顔料および/または着色剤を含有することで、特定の構造要素14に対する色調和がもたらされる。
【0021】
しかしながら、効果層17は発光層若しくは燐光層を具備してもよく、あるいは該効果層自体をこの種の層にしてもよい。さらに、被覆層は、例えば一般的な照明条件に応じて、効果層の効果性顔料および/または着色剤と共働する効果性の顔料および/または着色剤および/または発光顔料を含有してもよい。シールリップ27(図4参照)の代わりまたはシールリップ27に加えて、滑り摩擦低減層19を、窓ガラス16の表面15と第1弾性層12の間に設けてもよい。
【0022】
好ましくは、本発明によるシールストリップ11は、押出法、特に共押出法で製造される。また、別の方法として、特に、幾何学的に複雑な形状のシールストリップ11を製造するためには、例えば、多成分射出成型法も使用できる。あるいは、貼合せ法も適当である。
【実施例】
【0023】
実施例における、本発明による多層異形材に関する種々の変形例は、ノキアマイレファ(NOKIA MAILLEFER)社製の共押出装置により製造した。対応する層に対して供給されるプラスチック材料(粒状物)で充填された対応する押出機から、各々のプラスチック材料を多層ダイヘッドへ供給した。粒状物は、押出機内で溶融させた後、対応するダイヘッドの流路へ溶融物として供給した。連続的に押出された多層構造の異形材は、常套の装置を用いて冷却され、1分当り5mの速度で引き出された。三種類の実施例において使用した材料を示す以下の表1において、第1層は、後の使用に際して窓ガラス16に対面する弾性層12に相当し、反対側に位置する透明なポリアミド製の層13は、後の使用において視認される。
【0024】
【表1】

【0025】
材料の説明を以下に示す。例示する3種類の実施例において、マスターバッチ状態の金属顔料(略称MB:ポリマー中に分散した顔料粒子のコンセントレートとして当業者に既知である)を、いずれの場合も、特に優れた外観をもたらす層を形成する透明なポリアミドに添加した。しかしながら、効果性の顔料および/または添加剤を含有しない透明若しくは半透明なポリアミドに関するあらゆる実施態様も、当然ながら、本発明の範囲に含まれることに注意すべきである。従って、例示される3種類の実施例を限定的に理解すべきではなく、該実施例は、2層、3層および4層構造に関する変形例を表す。表1に明記される実施例BおよびCにおいては、同一の透明ポリアミドから成り効果顔料を含有しない被覆層13が、効果層の上に共押出される。この結果、視覚による奥行き効果が増強されると共に、極めて滑らかな表面が得られる。
【0026】
使用した金属顔料のマスターバッチ「シルバーPA、等級1」および「シルバーPA、等級2」は、透明ポリアミド中に分散させたアルミニウム粒子のコンセントレートである。
【0027】
本発明における実施例において、対応する層の材料に関連して選択された押出機の温度を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
選択された2種類の金属顔料の等級により、共押出された試料に関する視覚効果は異なるものとなった。すなわち、等級1のアルミニウム微粒子を用いる場合、車両の車体色(シルバー)と極めて類似する均一な着色が得られるので、ラッカー代替品として使用することができる。一方、等級2の幾分粗いアルミニウムフレークを使用する場合、視覚的な奥行き効果が増加した。
【0030】
実施例において使用した材料および本発明に対して一般的に適した材料の更なる説明を以下に記載する。
【0031】
グリルアミド(登録商標)TR90[スイス国、ドーマット/エムスのエムスーヘミ(EMS-CHEMIE)社製]は、透明なポリアミドPA MACM12である。該商品名に続けて識別子「UV」が記載される場合、ポリアミド成形材料が紫外線安定剤を更に含有することを意味する。ポリアミドのより詳細な説明は、以下に記載する。
【0032】
アドマー(登録商標)[日本国、三井化学社製]は、接着性改質ポリマーである。アドマーQB510型は、無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレンである。このような材料または別の適当な材料から成る接着剤層18は、選択した熱可塑性エラストマーとポリアミドが直接相互に接着しない場合に、中間層として使用される(実施例C;図6および図7参照)。
【0033】
サントプレン(登録商標)[アドバンスド・エラストマー・システムズ社製(Advanced Elastomer Systems)]は、熱可塑性合成ゴムである。この種の一般的な合成ゴムは、EPDMエラストマーとポリプロピレンの混合物またはアロイ(ポリプロピレン(PP)マトリックス中に加硫および/または架橋したEPDM)である。これらの一般的な合成ゴムには、ポリアミドと接着させるために接着剤物質から成る中間層を必要とするサントプレン101−80(実施例C参照)が含まれる。ポリアミドと直接的に接着するサントプレンの型合成ゴムは、製品番号の後に更に識別子PAを付すことによって表記される(例えば、サントプレン191−85PA;実施例AおよびB参照)。好ましくは、このような接着性を改良したサントプレン−「PA」型の合成ゴムは、一定量のポリアミドを含有する(図4および図5も参照)。製品の識別表示中の「PA」の直前に付記される2桁の数字は、ショアー硬度に該当する。
【0034】
全ての熱可塑性エラストマーが、本発明による車窓用シールストリップ11に関連する成分として考慮される。本発明において、「熱可塑性エラストマー」という表現は、熱可塑性的に加工可能な全てのエラストマー組成物および、例えばTPV(例えばサントプレン)などの架橋ポリマー粒子を含有する熱可塑的に加工可能な全てのエラストマー組成物を意味する。好ましくは、熱可塑性エラストマーは以下のものを含む群から選択される:TPE-OまたはTPO(オレフィンに基づく熱可塑性エラストマー、例えば、EPMまたはEPDM);TPE-VまたはTPV(熱可塑性オレフィンのホモポリマー若しくはコポリマー中に架橋ゴムを含有する熱可塑性加硫ゴム;好ましくは、このブレンドは動的加硫(動的硬化)された混合物、特に、PP/加硫(硬化)EPDM混合物、例えばサントプレン型ブレンドである);TPE−UまたはTPU(ウレタンに基づく熱可塑性エラストマー、例えばデスモパン);TPE-EまたはTPC(熱可塑性コポリエステルエラストマー、例えばハイトレル);TPE-SまたはTPS(スチレンブロックコポリマー、例えばSBS、SEBS、SEPS、SEEPSおよびMBSなど、例えばセプトン)および/またはTPE-AまたはTPA(熱可塑性コポリアミドエラストマー、例えば、PEBA)。しかしながら、PP/加硫(硬化)EPDMおよびSEBSが好ましく、PP/加硫(硬化)EPDMが特に好ましい。
【0035】
まず、ポリアミド(PA)およびこれらの命名法に関して注意すべきことは、PAは、ISO1874−1:1992(E)規格による国際規格に従ってそれぞれ識別されていることである。ホモポリアミドおよびコポリアミドに関して規格化された表記(後者の場合、各成分の略称の間に斜線を有する)は、この規格において説明されている。さらに、該規格は最終頁において、数字の代わりに文字を使用することにより略記された一部のモノマーに関する略称を含む(例えば、MACMなど)。略称「LC」はラクタムを表す:例えば「LC12」はラクタム12を表し、それはラウリンラクタムと同義である。数字は、関連するモノマーの炭素原子数を表す。
【0036】
直鎖状の脂肪族ポリアミド、例えばPA6、PA66、PA6とPA66から成る混合物、PA610、PA612、PA1010、PA11,PA12およびCoPA6/12が、半透明なポリアミドとして挙げられ、これらを適当な加工条件および/または冷却条件および/または充分に薄い層厚の選択により、半透明層若しくは透明層が得られる。
【0037】
透明なポリアミドは、非晶質または微晶質であってもよい。これらは、脂肪族、脂環式および/または芳香族のモノマーから合成され、この種のポリアミドにはホモポリアミドとコポリアミドが含まれる。本発明との関連において、「透明なポリアミド」には、非晶質ポリアミドに加えて、完全な非晶質ではないが、光の波長よりも小さいために、肉眼では観察することができない結晶を有する微晶質構造に起因して透明であるポリアミドも含まれる。以下のものを含む群から選択される透明なポリアミドが好ましい:ホモポリアミド、PA MACM 12、PA PACM 12、PA MACM14およびPA PACM 14;コポリアミド、PA MACM/PACM 12、PA MACMI/12、PA MACMI/MACMT/12、PA MACM/PACM 14、PA MACM9/109、PA MACM10/1010、PA MACM12/1012およびPA MACM14/1014;ならびに記載したポリアミドの混合物および半透明なポリアミドとの混合物。PA MACM12およびPA MACMI/MACMT/12、ならびにこれらの混合物および半透明なポリアミドとの混合物からなる群から選択される透明なポリアミドが特に好ましい。ポリアミドPA MACM 12は、上述した商品名グリルアミド(登録商標)TR90として入手でき、請求項4の範囲に含まれる組成物であるポリアミドPA MACMI/MACMT/12は、商品名グリルアミド(登録商標)TR60(スイス、ドーマット/エムスのエムスーヘミ社製)として入手できる。
【0038】
本発明との関連において、「効果顔料」は、ポリマーマトリックス中に存在する不溶性粒子として定義される。本発明によるシールストリップにおける該顔料の種類、大きさ、ならびに電流濃度若しくは電流分布に応じて、このような効果顔料は、入射する電磁波(特に可視波長域における電磁波、UVまたはIRおよび/またはNIR域における電磁波)を少なくとも部分的に反射、散乱または吸収し、あるいは、電磁波に何らかの影響を及ぼす。
【0039】
燐光物質は受動的な照明系であり、下記の文献においては、該物質は、物理的な発光処理および/または燐光処理で活性化させた後に暗闇内で何時間も発光する機能素子であるとして記載されている。「プラスチックは、暗闇内で光を発生する」(ウォルフォートおよびヴェットシュタイン著、「技術展望(Technishe Rundschau)」、第19巻、2006年)。発光性の顔料(例えば、アルミン酸ストロンチウムに基づく顔料)は、発光性プラスチックまたは残光性プラスチック内へ混合される。薄い厚みのこの種の燐光性プラスチック層は、スイス国、トイフェンのRCトリテック社の説明書に(上述の「技術展望」に記載されている論文参照)従って製造してもよく、および/または該プラスチック層を、共押出法若しくは多成分射出成形法を使用することによって目的物内へ導入してもよい。該詳説に記載されている例示的な用途は、とりわけ、ドアハンドル、避難経路システムまたはハイキング用水筒の発光性カバーであり、該詳説中には、シールストリップおよび特定のポリマーに関する記載は開示されていない。
【0040】
本発明における特定の変形例においては、シールストリップの第2層に用いる、透明または半透明なポリアミドに発光顔料を配合させることを含む。発光性の層が、効果層としてシールストリップ11に組み込まれるか、あるいは別の効果層(例えば、発光顔料を有する被覆層13および該層の下方に位置し、金属顔料を含有する効果層17)と併用して組み込まれる場合、シールストリップは、好ましくは共押出法または多成分射出成形法で製造される。すでに製造した第2層13に対して、発光性および/または燐光性の層を貼合せ法により装着し、次いで、該層の下方に、接着性が改質されることもある第1弾性層12をインサート射出する方法は、より多くの作業工程を必要とするが、利用することができる。また、このインサート射出成形過程において、少なくとも1つの滑り摩擦低減層19も、製造されるシールストリップ11に結合させてもよい。
【0041】
市販の添加剤、例えば安定剤(例えば熱安定剤および紫外線安定剤および/または紫外線吸収剤)、耐衝撃性改良材、軟化剤、滑剤、色素剤(着色剤、着色顔料)、効果性顔料および補強剤、などを、視覚的な印象が妨げられない範囲で、必要に応じてポリアミドに添加してもよい。紫外線安定剤(特に、外部に配設されるシールストリップの光安定性を向上させるために添加される)、滑剤(耐引掻性を更に増加させるために添加される)、効果顔料(高品質の外観をもたらすために添加される)、発光(燐光)着色剤および着色顔料(装飾用、または暗闇での安全性に関わる光効果用に添加される)が特に好ましい。
【0042】
前述の全ての実施例は、層の良好な相互接着性を示す。透明なポリアミドから成る表面層は耐候性と耐引掻性を有し、該層の外観は極めて魅力的であり、装飾的でもある。また、該層は、効果顔料、着色顔料および/または金属顔料、並びに着色剤の作用により有利に強化される。
【0043】
同一の参照番号は、全ての場合に詳細に記載されていなくても、対応する成分および材料を示す。明細書および/または図面に開示された実施態様の組み合わせであって、当業者に導かれる該組合せも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
先行技術
1 外部シールストリップ
1' 内部シールストリップ
2 第1弾性層
3 第2のより硬質の層
4、4' 構造要素
5、5' 窓ガラスの表面
6 窓ガラス
本発明
11 シールストリップ
12 第1弾性層;保持層
13 第2のより硬質の層;被覆層
14 構造要素
15、15' 窓ガラスの表面
16 窓ガラス
17 効果層
18 接着剤層
19 滑り摩擦低減層
20 14の締結レリーフ
21 11の締結溝
22 11の締結レリーフ
23 14の開口部または凹部
24 11の第1縁部
25 14の表面
26 11の第2縁部
27 シールリップ
28 セットバック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー製の少なくとも1つの第1弾性層(12)と、第2のより硬質の層(13)とを具備し、
該第1層(12)が、車両の構造要素(14)と、シールストリップ(11)に対して摺動可能な窓ガラス(16)の表面(15、15')との間において、密閉機能を発揮し、
該第2層(13)が、該第1層(12)の可視部の少なくとも全範囲を覆う可視性カバーとして機能し、ならびに
該第1層(12)と該第2層(13)が、実質的に該シールストリップ(11)の全長に亘って相互に結合される、車窓用シールストリップ(11)であって、
該第2層(13)が透明または半透明なポリアミド製であることを特徴とする該シールストリップ(11)。
【請求項2】
ポリアミドが透明であって、以下のものを含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシールストリップ(11):
ホモポリアミド;PA MACM 12、PA PACM 12、PA MACM14およびPA PACM 14、
コポリアミド;PA MACM/PACM 12、PA MACMI/12、PA MACMI/MACMT/12、PA MACM/PACM 14、PA MACM9/109、PA MACM10/1010、PA MACM12/1012およびPA MACM14/1014、ならびに該ポリアミドの混合物およびこれらと半透明なポリアミドとの混合物。
【請求項3】
透明なポリアミドが以下のものを含む群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のシールストリップ(11):
PA MACM 12、PA MACMI/MACMT/12、およびこれらの混合物並びにこれらと半透明なポリアミドとの混合物。
【請求項4】
PA MACMI/MACMT/12において、該MACMI成分が30〜45wt%の範囲であり、該MACMT成分が30〜45wt%の範囲であり、LC12成分が40〜10wt%の範囲である(ただし、コポリアミド中のこれら3種類の成分の合計は100wt%である)ことを特徴とする請求項3に記載のシールストリップ(11)。
【請求項5】
半透明なポリアミドが以下のものを含む群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシールストリップ(11):
PA6、PA66、PA6およびPA66から成る混合物、PA610、PA612、PA1010、PA11、PA12およびCoPA6/12。
【請求項6】
透明または半透明なポリアミドが紫外線に対して安定化され、および/または滑剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項7】
熱可塑性エラストマーが以下のものを含む群から選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシールストリップ(11):
TPO、TPV、TPU、TPC、TPSおよびTPA、好ましくはPP/加硫(硬化)EPDMまたはSEBS。
【請求項8】
少なくとも第1層(12)または第2層(13)の接着性を改質させたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項9】
効果層(17)が、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層(12)と透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層(13)との間に配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項10】
効果層(17)が、透明または半透明なポリアミドと、以下のものを含む群から単独または組合せて選択される顔料若しくは着色剤とを含有することを特徴とする請求項9に記載のシールストリップ(11):
効果顔料、着色顔料および金属顔料、着色剤、および発光顔料。
【請求項11】
接着剤層(18)が、熱可塑性エラストマー製の第1弾性層(12)と、
(a)透明若しくは半透明なポリアミド製の第2のより硬質の層(13)との間に配置されるか、あるいは
(b)効果層(17)との間に配置される
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項12】
動力車の側面窓用の内在的または外在的なシャフトシール、特に自動車の窓用の外部シャフトシールとして使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項13】
動力車、特に自動車の上方窓枠における側面窓用のシールとして使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項14】
動力車、特に自動車の窓枠側面における側面窓用の嵌合シールとして使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のシールストリップ(11)。
【請求項15】
以下の(a)および(b)を具備し、該第1層(12)と該第2層(13)が、実質的に、シールストリップ(11)の全長に亘って相互に結合される、車窓用の多層シールストリップ(11)を製造するための熱可塑性樹脂の使用であって、第2のより硬質の層(13)が透明または半透明なポリアミド製であることを特徴とする該使用:
(a)車両の構造要素(14)と、シールストリップ(11)に対して摺動可能な窓ガラス(16)の表面(15、15')との間において、密閉機能を発揮する熱可塑性エラストマー製の第1弾性層(12)、および
(b)該第1層(12)の可視部の少なくとも全範囲を覆う可視性カバーとして機能する第2のより硬質の層(13)。
【請求項16】
シールストリップ(11)を製造するために、押出法、射出成型法、貼合せ法、好ましくは共押出法または多成分射出成形法を使用することを特徴とする、請求項15に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−521840(P2011−521840A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511984(P2011−511984)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056940
【国際公開番号】WO2009/146742
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505343930)エムス−パテント アクチエンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】