説明

車載レーダ装置

【課題】 車両取付時の放射軸調整が容易な車載レーダ装置を提供する。
【解決手段】 レーダ放射軸L1とレーザポインタ光軸L2の水平座標が略一致するように、レーダ装置1にレーザポインタ7を一体的に固定する。このときに生じたレーダ放射軸L1と光軸L2との水平方向のズレ角は角度記憶手段4に記憶しておく。レーダ装置1は、目標物に向けて発したレーダの反射波より、水平角度算出手段3で目標物の水平角度位置を算出し、さらに、この算出した水平角度位置を、角度記憶手段4に記憶しておいた角度値を用いて補正する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に取り付ける際にレーダ放射軸の調整が容易な車載レーダ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、レーダ装置を車両に取り付ける際の放射軸調整は、車軸上に置いた目標物の反射波を受信し、その受信電力をモニタすることにより行なっていた。図5に従来のレーダ装置の軸調整方法を示す。図5において、レーダ装置1は車両11に取り付けられ、図示せぬ調整機構により、その放射方向を変えることが可能である。
【0003】車両11の車軸上には目標物14が設置されており、この目標物14に向けてレーダ装置1よりビーム6が放射される。目標物14からの反射波はレーダ装置1にて受信され、その受信電力はモニタ装置15にて確認できる。図5に示す従来のレーダ装置1は、マルチビーム方式の測角機能をもつレーダ装置であり、そのレーダ放射軸L1はセンタービームの受信電力が最大となる水平角度位置となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように従来は、モニタ装置15にてセンタービームの受信電力を確認しながら、受信電力が最大となるようにレーダ装置1の水平角度位置を調整して、レーダ放射軸L1と車軸L3との軸合わせを行なっていた。しかしながら、受信電力がピークとなる位置では受信電力の変化が少ないため、モニタ装置15で確認しながらの軸調整は大変困難であった。
【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両取付時の放射軸調整が容易な車載レーダ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を採用している。請求項1の発明は、レーダを発するレーダ発信部と、可視光を発する可視光発信部とを備え、これらレーダ発信部と可視光発信部とが、レーダ放射軸と光軸の水平座標を一致させた状態で一体的に固定されていることを特徴としている。
【0007】このような構成では、可視光発信部の光軸を調整すれば、レーダ発信部のレーダ放射軸も光軸と同じ方向を向くように調整されるため、目視することのできないレーダの放射軸調整を目視することのできる可視光を用いて容易に行うことができる。
【0008】請求項2の発明は、レーダを発するレーダ発信部と、可視光を発する可視光発信部とが、レーダ放射軸と光軸の水平座標を略一致させた状態で一体的に固定されてなり、前記レーダ放射軸と前記光軸の水平方向のズレ角を記憶する角度記憶手段と、前記レーダ発信部から目標物に向けて発したレーダの反射波より前記目標物の水平角度位置を算出する水平角度算出手段と、前記角度記憶手段に記憶された角度値を用いて、前記水平角度算出手段で算出された前記目標物の水平角度位置を補正する水平角度補正手段とを備えることを特徴としている。
【0009】このような構成では、水平角度算出手段で算出した目標物の水平角度位置を、予め角度記憶手段に記憶しておいたズレ角の角度値を用いて補正するので、レーダ発信部と可視光発信部とを一体的に固定する際に、レーダ放射軸と光軸とを厳密に軸合わせする必要がなくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の一実施の形態による車載ミリ波レーダ装置について説明する。図1は、本実施の形態による車載ミリ波レーダ装置(以下、単に「レーダ装置」と略記する。)の全体構成図を示している。レーダ装置1は、目標物の水平角度位置を検知する機能を持っており、アンテナ(レーダ発信部)2から目標物に向けてミリ波(レーダ)を送信し、その反射波を受信して、水平角度算出手段3により目標物の水平角度位置を算出する。
【0011】レーダ装置1には、レーダ放射軸L1とレーザポインタ光軸L2の水平座標が略一致するように、レーザポインタ(可視光発信部)7が一体的に取り付けられている。レーザポインタ7は、駆動回路8による制御によってレーザダイオード9で可視光を発生させ、更にこの可視光をレンズ10でビーム幅を絞ったうえで、レーダ放射軸方向に照射する。
【0012】レーダ装置1は、角度記憶手段4により、予めレーダ放射軸L1とレーザポインタ光軸L2とのズレ角を記憶している。この角度値を用いて、レーダ装置1の水平角度補正手段5は、水平角度算出手段3により算出された目標物の水平角度を補正し、レーザポインタ光軸L2を基準とした目標物の水平角度位置を算出する。
【0013】このように、本実施の形態によるレーダ装置1にあっては、レーダ装置1を車両11に取り付ける際、車軸L3に対するレーダ放射軸L1の調整は、目に見えるレーザポインタ光軸L2を調整することで可能となる。
【0014】次に、図1に示すレーダ装置1の動作例について説明する。レーダ装置1は、上記の通り目標物の水平角度位置を検知する機能を有するが、ここでは、その測角方式としてマルチビーム方式を用いた場合を説明する。アンテナ2からは、水平角度方向に一定の間隔をおいて複数のビーム6が発っせられ、これらのビーム6はスイッチ等により切り換え可能になっている。レーダ装置1は、各ビーム6における目標物からの反射波を受信し、それらの受信レベルにより、水平角度算出手段3で目標物の水平角度位置を算出する。
【0015】図3に、目標物の水平角度位置θTと、各ビーム6の目標物に対する受信電力との関係を示す。式(1)に示すように、目標物の水平角度位置θTは、図3R>3に基づいて、各ビーム6の指向方向(θ1〜θ5)に対応する受信電力(Pr1〜Pr5)で重み付けし、平均化することで求める。
【0016】レーダ装置1のレーダ放射軸L1は、センタービームの指向方向θ3であり、このレーダ放射軸L1を基準に目標物の水平角度位置が算出される。また、レーダ装置1には、ビーム幅を絞った可視光を照射するレーザポインタ7が取り付けられているため、駆動回路8によりレーザダイオード9から可視光を発生することで、レンズ10によりビーム幅を絞った可視光がレーダ放射軸方向に照射されることは上述の通りである。
【0017】図4に、レーダ放射軸L1と、レーザポインタ光軸L2との関係を示す。レーダ装置1のレーダ放射軸L1と、レーザポインタ7のレーザポインタ光軸L2とは、概ね同じ方向に設定されているが、その取り付け誤差により、レーダ放射軸L1とレーザポインタ光軸L2との間にはズレ角θaが生じることがある。このズレ角θaは予め測定されており、図1の角度記憶手段4に記憶されている。水平角度補正手段5は、角度記憶手段4に記憶されたズレ角θaの角度値を用いて、水平角度算出手段3により算出された目標物の水平角度を補正し、レーザポインタ光軸L2を基準とした目標物の水平角度位置を算出する。
【0018】図2に、レーダ装置1の車両取り付け時における放射軸調整方法を示す。車両11は、予め車軸L3が調整用スクリーン12の中心に向くように置かれている。また、レーダ装置1は車両11に取り付けられ、図示せぬ調整機構により、その放射方向を変えることが可能になっている。調整用スクリーン12上には、レーザポインタ7から照射された可視光のレーザスポット13が映し出されているが、車軸L3とレーザポインタ光軸L2との間に一定のズレ角θbが生じているため、レーザスポット13は調整用スクリーン12の中心にはない。
【0019】レーダ装置1の放射軸調整は、このレーザスポット13が調整用スクリーン12の中心点と一致するように行う。従って、レーダ装置1の放射軸調整は、目に見えないミリ波によらず、目に見える可視光を用いてレーザポインタ光軸L2を調整することで容易に行うことができる。また、角度記憶手段4に記憶しておいたズレ角θaの角度値を用いて、水平角度算出手段4で算出した目標物の水平角度位置5を補正するため、レーダ装置1にレーザポインタ7を一体的に固定する際に、レーダ放射軸L1と光軸L2とを厳密に軸合わせする必要もなくなる。
【0020】なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、レーダ装置1から発するレーダを、ミリ波とは周波数および波長の異なる電波とすることが可能である。また、レーダ装置1とレーザポインタ7とを一体的に固定した際に、レーダ放射軸1とレーザポインタ光軸2の水平座標を一致させることができれば、水平角度補正手段5による水平角度位置の補正処理は不要となる。
【0021】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)レーダ装置に、レーダ放射軸方向を示す可視光発信部が取り付けられているので、車両取付時に行うレーダ放射軸の調整作業は、目に見えるレーザポインタの光軸を調整することで、容易かつ正確に行うことができる。
【0022】(2)レーダ装置に、レーダ放射軸と光軸とのズレ角を記憶する角度記憶手段と、その角度値を基に目標物の水平角度位置を補正する水平角度補正手段とが設けられているので、レーダ発信部と可視光発信部とを一体的に固定する際に、レーダ放射軸と光軸との厳密な軸合わせを不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態による車載ミリ波レーダ装置を示す構成図である。
【図2】 図1の車載ミリ波レーダ装置による軸調整方法を示す図である。
【図3】 目標物の水平角度位置と、その反射受信電力との関係を示す図である。
【図4】 レーダ放射軸とレーザポインタ光軸との関係を示す図である。
【図5】 軸調整方法の一従来例を示す図である。
【符号の説明】
2 アンテナ(レーダ発信部)
3 水平角度算出手段
4 角度記憶手段
5 水平角度補正手段
7 レーザポインタ(可視光発信部)
L1 レーダ放射軸
L2 レーザポインタ光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レーダを発するレーダ発信部と、可視光を発する可視光発信部とを備え、これらレーダ発信部と可視光発信部とが、レーダ放射軸と光軸の水平座標を一致させた状態で一体的に固定されていることを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項2】 レーダを発するレーダ発信部と、可視光を発する可視光発信部とが、レーダ放射軸と光軸の水平座標を略一致させた状態で一体的に固定されてなり、前記レーダ放射軸と前記光軸の水平方向のズレ角を記憶する角度記憶手段と、前記レーダ発信部から目標物に向けて発したレーダの反射波より前記目標物の水平角度位置を算出する水平角度算出手段と、前記角度記憶手段に記憶された角度値を用いて、前記水平角度算出手段で算出された前記目標物の水平角度位置を補正する水平角度補正手段とを備えることを特徴とする車載レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−349937(P2001−349937A)
【公開日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−174267(P2000−174267)
【出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】