説明

車載制御装置

【課題】 一般ユーザ向けで二次元コードを用い、車両における操作を容易とする車載制御装置を提供する。
【解決手段】 文字情報に変換可能な含む二次元画像情報が記録された記録媒体と、二次元画像情報を読み取る読み取り手段と、読み取られた二次元画像情報から文字情報を抽出する抽出手段と、文字情報から、対象となる制御機器に対する制御情報を解析する解析手段と、解析された制御情報を制御機器に送信する制御情報送信手段と、を有することを特徴とする車載制御装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載制御装置に関し、特に二次元コードを用いる車載制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーコードは読み取りの速さと正確さ、操作性の高さなどの特長から、POS(Point Of Sales)システムをはじめとして産業の各分野において広く応用されている。バーコードは黒白バー幅の疎密によって数字、キャラクタなどを表しており、物品等の表面に印刷されて光学的な認識手段により識別され、情報データの自動認識、伝達を行なっている。
【0003】
近年、バーコードが普及し、その便利さが広く認識されるに伴い、「より多くの情報を収納できる」,「より多くの文字種を表現できる」,「より小さなスペースでの印字ができる」などのニーズが高まり、バーコードの桁数を増やしたり、複数のバーコードを並べたりという工夫も施された。しかし、これらの工夫は一方で表示面積の増大,読み取り操作の煩雑化,印刷コストの上昇という問題を引き起こした。そこで、縦、横二方向に情報を持つことで、記録できる情報量を飛躍的に増加させたQRコードのような二次元コードが考案されて、普及しつつある。
【0004】
医療分野においては、診療報酬明細書中に記載される患者情報、医療機関情報、診療情報、診療点数情報のそれぞれをマトリックスコード(二次元コード)に変換し、これを診療報酬明細書に表示することで、医療機関から支払基金に、支払基金から各健康保険組合へと回付される診療報酬明細書を情報処理化し、診療報酬明細書の書式を一切変えることなく、その取扱事務の効率化を図るのに好適な情報処理化した診療報酬明細書およびその分類方法並びにその作成装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0005】
バーコードあるいは二次元コードの応用例としては、二次元コードに予約情報を含ませ、該二次元コード携帯電話機の画面に表示させて駐車場の入庫ゲートで表示された二次元コードを読み取り予約内容の照合を行なう駐車場予約管理システムが考案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、運行管理カードにカルラコード(二次元コードの一種)を用いた運行管理カードシステムが考案されている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平08−339404号公報
【特許文献2】特開2004−264934号公報
【特許文献3】特開平08−138103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の例は医療機関向けのもので、特許文献2,3の例とも、車両には関係するが事業所向けシステムへの応用例であって一般ユーザ向けの応用例はない。
【0009】
上記事情を背景とし、本発明の課題は、一般ユーザ向けで二次元コードを用い、車両における操作を容易とする車載制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための車載制御装置を提供するものである。即ち、請求項1によれば、文字情報に変換可能な含む二次元画像情報が記録された記録媒体と、二次元画像情報を読み取る読み取り手段と、読み取られた二次元画像情報から文字情報を抽出する抽出手段と、文字情報から、対象となる制御機器に対する制御情報を解析する解析手段と、解析された制御情報を制御機器に送信する制御情報送信手段と、を有することを特徴とする車載制御装置として構成される。
【0011】
本発明は、二次元コード等の画像情報を用いて使用者が操作する手順も含めて指示を与えるものである。車載機器を操作する場合、マニュアルを片手に作業する必要があったり、ディスプレイを見ながら何度も操作する必要があって、使用者の立場からすれば面倒極まりない。また、操作の容易さを図ると逆に操作スイッチの数が増えてしまうという問題点もある。本発明では、二次元画像情報に所望の機能を実行するためのスイッチの操作情報(制御情報)が含まれているため、使用者はスイッチを操作する必要はなくなる。機能毎に操作スイッチを準備したり、共用したりする必要がなくなる。
【0012】
画像情報を解析して接続された制御機器に制御情報を送る車載制御機器のみメンテナンス(例えば、接続する制御機器のインターフェースや関連プログラムの追加)を行なえば、車載制御機器に接続する制御機器を選ばないという利点もある。
【0013】
また、二次元画像情報が記録された記録媒体と車載制御機器とをケーブル等で接続する必要が無いため、インターフェースの制約が少なく、記録媒体として紙面での印刷物や携帯電話の画面等の多様な媒体を使用することが可能である。車両と直接接続しないことで、ウイルスや故障を予防することができる。さらに、二次元画像情報にパスワードを含めることで、操作者あるいは制御情報の認証を行なうことができ、セキュリティ性を確保することも可能となる。
【0014】
請求項2によれば、本発明の車載制御装置における制御機器は、車両に搭載されるアクチュエータの動作を制御する動作制御手段と、送られてきた制御情報を受信する受信手段と、アクチュエータの動作に関する機能設定情報を記憶する機能設定情報記憶手段とを含み、制御情報には機能設定情報が含まれ、動作制御手段はその機能設定情報に基づいてアクチュエータの動作を制御する構成をとることもできる。本構成によって、専用のコマンド操作を行なうことなく、二次元画像情報を読み取らせるだけで機能設定情報の設定や保存を容易に行なうことが可能となり、使用者の所望の設定を容易に実現でき快適なドライブにも寄与する。
【0015】
請求項3によれば、本発明の車載制御装置における制御機器にはアクチュエータを制御するための制御プログラムを記憶する制御プログラム記憶手段と、送られてきた制御プログラムを記憶されているプログラムと置き換える制御プログラム更新手段とを含み、動作制御手段は置き換えられた制御プログラムに基づいてアクチュエータの動作を制御する構成をとることもできる。
【0016】
上記構成によって、専用のコマンド操作を行なうことなく、例えばディーラーあるいは整備工場から送られてくる二次元画像情報を読み取らせるだけで制御プログラムの更新を容易に行なうことが可能となり、プログラムの保守性が向上する。使用者は制御プログラムの更新のためにディーラーあるいは整備工場へ出向く必要はなく、都合に合わせて制御プログラムの更新を行なうことができるので、整備のために折角の休日に車両を使用できないということはなくなる。また、常に最新かつ最適な制御プログラムが動作するので、快適なドライブにも寄与する。
【0017】
請求項4によれば、本発明の車載制御装置における制御情報にはアクチュエータの駆動を制御するための駆動制御命令が含まれ、動作制御手段は駆動制御命令に基づいてアクチュエータの動作を制御する構成をとることもできる。本構成によって、専用のコマンド操作を行なうことなく二次元画像情報を読み取らせるだけで、常に最新かつ最適な制御方法でアクチュエータを制御することが可能で、快適なドライブにも寄与する。
【0018】
請求項5によれば、本発明の車載制御装に置おける制御機器は車両のドアの施錠および開錠を制御するドアロック制御装置である構成をとることもできる。例えば、身体に障害があって右腕が不自由な運転者が運転席に乗り込んでドアをロックする場合、ドアロックスイッチは概ね車両のドア(即ち、運転者の右側)に位置しているので、体をねじって左手でドアロックスイッチを操作しなければならない。しかし、本発明の構成を用いれば、ドアロック命令(即ち、制御情報)が二次元画像情報として記録された記録媒体(即ち、携帯電話機の画面に表示されたQRコードあるいはQRコードが印刷されたカード)を車内のセンターコンソール(即ち、運転者の左側)付近に設置した読み取り機(即ち、車載カメラ等)に読み取らせてドアをロックさせることで、身体に障害がある運転者でも障害を意識せず車両の運転操作が可能となる。
【0019】
請求項6によれば、本発明の車載制御装置における制御機器は車両の座席における乗員の着座位置を調節する着座位置調節装置である構成をとることもできる。1台の車両を複数で使用する場合、使用者の体格によって着座位置,ハンドル位置,ミラーの位置(いわゆるドライビングポジション)は当然異なる。従来は、乗車のたびに数多くのスイッチを操作して各自の最適位置に調節する必要があったが、本発明の構成では専用のコマンド操作を行なうことなく、二次元画像情報を読み取らせるだけで着座位置の調節を容易に短時間で行なうことが可能となり、常に最適なドライビングポジションでの運転が可能となる。よって、快適なドライブにも寄与し、事故の防止にも寄与する。
【0020】
請求項7によれば、本発明の車載制御装置における制御機器は電子地図上において車両の現在位置から目的地までの経路を設定し、車両を目的地まで誘導する車両用ナビゲーション装置である構成をとることもできる。操作メニューから目的地を名前,電話番号等で検索する方法が主であるが、何階層かのメニューあるいはリストの画面から目的地を探すことは慣れている者でも時間を要する。近年、雑誌等の施設案内記事で該施設のURL(Uniform Resource Locator:統一型情報探索子,一般にホームページアドレスを指すことが多い)をQRコードとして印刷し、QRコード読み取り可能な携帯端末等で読み取ると、該施設のホームページにアクセスすることが可能なようにしているものがある。これと同様に、本構成では、施設の位置情報を含むQRコードを印刷したカードを作成して、該QRコードの情報(施設の位置情報)を車載制御装置で読み取ってナビゲーション装置へ送り、ナビゲーション装置は該QRコードの情報に含まれる施設を目的地として複雑な操作をすることなく案内経路を検索することが可能となる。
【0021】
また、手が不自由あるいは口がきけなくて音声認識機能を使用できない等の身体に障害がある使用者でも、上記カードをQRコード読み取り機に読み取らせさえすれば目的地までの案内経路を検索することが可能となる。
【0022】
請求項8によれば、本発明の車載制御装置における制御情報には車両が給油を行なった際の日時,場所,給油量の少なくとも一つに関する給油情報が含まれ、制御機器は給油情報が送られてきたときの車両の走行距離を取得する走行距離取得手段と、給油情報と取得した走行距離を記憶する給油情報記憶手段と、燃費情報を生成する燃費情報生成手段と、生成された燃費情報を表示する燃費情報表示手段と、を含む構成をとることもできる。
【0023】
上記構成によって、給油の精算時に受け取るレシートに給油情報情報を含むQRコードが印刷されていれば、ガソリン給油量、オイル交換などのメンテナンス情報を、レシートから車載制御装置に直接記憶することが可能となる。よって、手入力による手間を省き入力ミスをなくすことができる。また、メンテナンス情報をデータベースとして保存しておけば、車両の走行状態,整備状態,故障の発生状況を的確に把握することが可能となる。
【0024】
請求項9によれば、本発明の車載制御装置における記録媒体には複数の二次元画像情報が記録され、読み取り手段は複数の二次元画像情報を読み取り可能であって、抽出手段は読み取られた複数の二次元画像情報から文字情報を抽出する構成をとることもできる。本構成によって、例えば一つのQRコードに記録しきれないデータがある場合でも、分割して複数のQRコードに記録して順次読み取らせることが可能となり、複雑な制御あるいは機能を実現できる。
【0025】
請求項10によれば、本発明の車載制御装置は、記録媒体に対する二次元画像情報を作成する二次元画像情報作成手段と、作成された二次元画像情報を記録媒体に送出する送出手段とを含み、記録媒体は送出された二次元画像情報を読み取る記録媒体内読み取り手段を含み記録媒体は読み取られた二次元画像情報に対応した二次元画像情報を提供し、読み取り手段は提供された二次元画像情報を読み取る構成をとることもできる。本構成によって、車両の状態等の条件によって実現できない制御あるいは機能がある場合、その旨を二次元画像情報によって表示し、その状態に対応した命令あるいはデータを要求することが可能となる。これにより、車両の状況に応じた最良の制御を行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一般ユーザ向けで二次元コードを用い、車両における操作を容易とする車載制御装置を提供する目的を、二次元画像情報(QRコード)が記録された記録媒体から該二次元画像情報を読み取り、読み取られた二次元画像情報から対象となる制御機器を制御する構成により実現した。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例である車載制御装置について、図面を参照しながら説明する。図1は車載制御装置の概念を示す図、図2は車両アプリ実行ECU6(図3、詳細は後述)で実行される内部処理の流れの概要である。携帯電話機2等の端末装置(本発明の記録媒体)の表示器に表示されたQRコード(本発明の二次元画像情報)、あるいはカード3(本発明の記録媒体)に印刷されたQRコードを車両1に搭載された車載カメラ4(本発明の読み取り手段)で読み取り、車両アプリ実行ECU6においてQRコードの内容にしたがって車両内のアクチュエータの制御を行なうものである。
【0028】
車両アプリ実行ECU6(本発明の抽出手段,解析手段,制御情報送信手段)は通常のコンピュータとして構成されており、図示しない周知のCPU,ROM,RAM,入出力回路およびこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。CPUは、ROMおよびRAMに記憶されたプログラムおよびデータにより制御を行なう。ROMは、プログラム格納領域とデータ記憶領域とを有している。プログラム格納領域には車両アプリ実行制御プログラムが格納される。データ記憶領域には車両アプリ実行制御プログラムの動作に必要なデータが格納されている。
【0029】
同様に、統括ECU7(図3参照)も通常のコンピュータとして構成され、制御プログラムおよびデータにより制御を行なう。
【0030】
図2において、車両アプリ実行ECU6は読み取った二次元コードの解釈処理(本発明の文字情報の抽出)を行なって、コマンドあるいはデータ(本発明の制御情報)を解析する(S1)。次いで、解析したコマンドあるいはデータに応じた処理を行なうために該当するアクチュエータに指令(処理依頼)を送る。そして、指令が送られたアクチュエータは該指令に応じた動作を行なう。
【0031】
(ドアロック制御の例:コマンド実行機能)
図3を用いて、QRコードにより車両のドアをロックする制御処理を例に挙げてコマンド実行機能について説明する。車両アプリ実行ECU6には画像解析装置61,コマンド解析装置62,コマンド実行装置63,実行可否判断部64が含まれている。また、車両アプリ実行ECU6には車載カメラ4,統括ECU7が接続され、統括ECU7にはドアロックECU8(本発明のドアロック制御装置,受信手段,動作制御手段)が接続されている。
【0032】
画像解析装置61(本発明の抽出手段)は周知の画像処理回路によって構成され、車載カメラ4で撮影したQRコードの画像データを周知の画像解析処理によって文字情報を抽出するもので、抽出された文字情報をCPU(図示せず)に含まれるコマンド解析装置62へ送る。
【0033】
コマンド解析装置62(本発明の解析手段)は画像解析装置61で抽出された文字情報を実行可能なコマンド情報あるいは機能設定情報等に変換するもので、CPU(図示せず)で実行される車両アプリ実行制御プログラムの一部として構成してもよいし、別回路として変換したコマンド情報あるいは機能設定情報等をCPUに送る構成としてもよい。
【0034】
コマンド実行装置63(本発明の制御情報送信手段)はコマンド情報を該当するアクチュエータあるいは外部機器に送出するもので、例えばLAN(Local Area Network)接続用のインターフェース回路等の通信用回路を含んで構成される。
【0035】
実行可否判断部64はコマンドを実行する(外部機器に送出する)ことの妥当性を判断するもので、CPU(図示せず)で実行される車両アプリ実行制御プログラムの一部として構成されている。
【0036】
携帯電話機2にはドアロックを行なうためのQRコードが画像ファイルとして登録されている。QRコードは所定の書式に基づいてパーソナルコンピュータ等で作成して電子メールの添付ファイルとして携帯電話機2に送る。ネットワーク上のサーバからQRコードを携帯電話機2にダウンロードする構成をとってもよい。また、携帯電話機2の代わりにQRコードを印刷したカード3(図1参照)を用いてもよい。
【0037】
まず、携帯電話機2に登録してあるQRコードを携帯電話機2の表示器に表示させて、表示されたQRコードを車載カメラ4で読み取る。このQRコードにはドアをロックする命令が含まれている。読み取られた画像データは、画像解析装置61において文字情報(例えば「ドアロック」)へと変換される。変換された文字情報はコマンド解析装置62によってドアロックECU8で実行可能なコマンド情報(例えば命令コード,本発明の駆動制御命令)に変換される。
【0038】
コマンド実行可否判断部64では、例えば通信回路を含んで構成されるドアロック設定IF(インターフェース)12を介して統括ECU7と通信可能であるかどうか、あるいはドアロック設定IF12があるかどうかを調べ、ドアロック設定IF12が存在して統括ECU7と通信可能である場合にコマンド情報(命令コード)の送信を許可する。
【0039】
統括ECU7は車両アプリ実行ECU6からコマンド情報(命令コード)を受信すると、設定情報変換部71においてドアロックECU8において実行可能な形式に変換してドアロックECU8に送信する。そして、ドアロックECU8は受信したコマンド情報(ドアロック命令)に基づいてアクチュエータを駆動してドアをロックする。
【0040】
なお、ドアのアンロックもドアのアンロック命令が含まれているQRコードを作成することで同様に行なうことができる。さらに、全ドアあるいは選択したドアのロック/アンロックも同様に行なうことができる。
【0041】
QRコードにパスワード情報を付加し、車両アプリ実行ECU6のROMあるいはRAM(ともに図示せず)にもQRコードに付加したものと同じパスワードを記憶してパスワード認証を行なう構成をとってもよい。本構成では、実行可否判断部64においてパスワードが同じかどうかを判断してコマンド情報を実行してもよいかを判断することができる。よってセキュリティ性も確保できる。
【0042】
また、周知の暗号鍵をもちいて文字情報を暗号化してQRコードを作成し、車両アプリ実行ECU6のROMあるいはRAM(ともに図示せず)にも暗号鍵を記憶しておき、暗号化された文字情報を復号する構成を用いてもよい。本構成によって、よりセキュリティ性を上げることができる。無論、パスワード情報を付加する構成と文字情報を暗号化する構成の両方を用いてもよい。
【0043】
(ドライビングポジション調整の例:カスタマイズ機能)
図4を用いて、QRコードによりドライビングポジションを調整する処理を例に挙げてカスタマイズ機能について説明する。なお、本構成は図3で説明した構成の変形例であるため、同一の符号を用いて説明する。また、図3と同様の動作をする部分(例えば車両アプリ実行ECU6)の詳細な説明は割愛する。
【0044】
チルテレ(チルト&テレスコピック・ステアリング、以下、チルテレと略称)ECU10(本発明の着座位置調節装置,受信手段,機能設定情報記憶手段,動作制御手段)はハンドルの位置や角度を自由に変えることのできるハンドル装置の制御装置で、車両アプリ実行ECU6と同様に通常のコンピュータとして構成されている。チルトステアリングとは、ハンドルの上下の角度を、テレスコピックステアリングとは、運転者とハンドルの間の距離を前後方向に調節するものである。これにより、シートのリクライニング機構と合わせて、運転者の身長や体格、好みに合わせてより最適なドライビングポジションを実現することができる。
【0045】
シートECU9(本発明の着座位置調節装置,受信手段,機能設定情報記憶手段,動作制御手段)は例えば電動シートのように、シートの前後位置,高さ,リクライニングの角度,座面の角度を調節するための制御装置で、車両アプリ実行ECU6と同様に通常のコンピュータとして構成されている。これにより、チルト&テレスコピック・ステアリングと合わせて、運転者の身長や体格、好みに合わせてより最適なドライビングポジションを実現することができる。
【0046】
携帯電話機2の表示器に表示されたQRコードあるいはカードに印刷されたQRコードを車載カメラ4で読み取る。QRコードには乗員の体格に関するデータ(身長,体重,股下長,腕の長さ,座高など)が含まれている。
【0047】
車両アプリ実行ECU6は、画像解析装置61により車載カメラ4で撮影したQRコードの画像データから文字情報を抽出し、コマンド解析装置62で該抽出された文字情報を実行可能なコマンド情報(チルテレ設定コマンド,シート設定コマンド等)およびコマンド実行用パラメータ等に変換し、先の乗員の体格に関するデータとともにコマンド実行装置63からチルテレ設定IF15,シート設定IF16を介して統括ECU7へ送る。
【0048】
統括ECU7はその制御プログラムによって、設定情報変換部71において乗員の体格に関するデータから最適なステアリング位置およびシート位置を算出し、ステアリング位置設定コマンドおよびステアリング位置設定パラメータ,シート位置設定コマンドおよびシート位置設定パラメータを生成して、それぞれシートECU9,チルテレECU10へ送る。
【0049】
シートECU9,チルテレECU10は受信した設定コマンドおよび設定パラメータの内容に基づいてアクチュエータを駆動してステアリングおよびシートの位置を調整する。
【0050】
QRコードにステアリング位置設定コマンドおよびステアリング位置設定パラメータ,シート位置設定コマンドおよびシート位置設定パラメータを含む構成をとってもよい。また、ドライビングポジションを調整処理の対象に電動ドアミラー,電動ルームミラーを含めてもよい。
【0051】
(燃費情報表示の例:メンテナンス機能)
図5を用いて、QRコードにより燃費情報の算出・表示を行なう制御処理を例に挙げてメンテナンス機能について説明する。QRコードは給油所で給油を行なった際に給油日時,給油場所,油の種類,給油量,料金を含む給油情報を含んでレシート5(本発明の記録媒体)に印刷される。
【0052】
車両アプリ実行ECU6(本発明の走行距離取得手段)は、画像解析装置61により車載カメラ4で撮影したレシート5に印刷されたQRコードの画像データから文字情報を抽出し、コマンド解析装置62で該抽出された文字情報を実行可能なコマンド情報(走行距離管理コマンド等)に変換し、先の給油情報とともにコマンド実行装置63から給油情報記憶IF14を介して統括ECU7へ送る。
【0053】
また、走行距離取得IF13を介して給油時の走行距離情報を統括ECU7へ送る。走行距離の取得方法は例えば以下のような方法がある。
(1)給油時に車両アプリ実行ECU6に接続された図示しない入力部から走行距離を入力して統括ECU7へ送る。
(2)レシート5に印刷されたQRコードを車載カメラ4で撮影した際に、車両アプリ実行ECU6に接続された図示しないメータECU(計器パネルの表示制御を行なうもので、走行距離,水温等のデータを保持している)から、走行距離情報を読み出して統括ECU7へ送る。
【0054】
統括ECU7(本発明の燃費情報生成手段)はその制御プログラムによって、受信したコマンド情報,給油情報,走行距離情報を、走行距離管理部72を介して車内DB(データベース)73(本発明の給油情報記憶手段)に記憶する。また、車内DB73に記憶されている前回給油時の給油情報と今回給油時の給油情報とから、前回給油時から今回給油時までの走行距離を求め、該走行距離と今回の給油量とから燃費を求めて車内DB73に記憶する。また、月間,週間等の任意の期間における、走行距離,走行回数,燃費,料金等の走行統計情報を求めて車内DB73に記憶する。
【0055】
車両アプリ実行ECU6は図示しない操作部の操作により、車内DB73に記憶された走行統計情報の演算指示を行なうことが可能である。また、車内DB73に記憶された走行統計情報を読み出してディスプレイ11(本発明の燃費情報表示手段)に表示することも可能である。図5の例では給油毎の燃費11aと総走行距離11bが表示されている。ディスプレイ11はカラー液晶表示器により構成される。図示しない操作部を含んだタッチパネル式のカラー液晶表示器を用いてもよい。
【0056】
(ナビゲーション装置との接続例:コマンド実行機能,カスタマイズ機能)
車両アプリ実行ECU6をナビゲーション装置と接続する例について説明する。ナビゲーション装置は、周知の地磁気センサ,ジャイロスコープ,距離センサ,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機などを含む位置検出器,カラー液晶表示器と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられた表示装置および操作入力部,地図データ,制御プログラムおよび制御プログラム実行時に用いるデータ等が記憶されたハードディスク装置,メモリ等の記憶部,車内の他の機器との通信を行なう車内LAN通信部,車外のネットワークに接続して通信を行なうためのネットワーク通信部,制御プログラムによって上記各部の入出力動作の制御を行なう制御部を含んで構成される。
【0057】
ナビゲーション装置は、運転者が表示装置上に表示されるメニューから操作入力部によって目的地を入力すると、GPS受信機から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な経路を求める処理が行われる。そして、表示装置上の道路地図に誘導経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示装置あるいはスピーカによって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。
【0058】
なお、ナビゲーション装置の機能および動作については周知のものであるため、詳細な説明は割愛する。
【0059】
上述したカスタマイズ機能により、車載カメラ4から読み込んだQRコードによってナビゲーション装置の機能設定を変更することや目的地の設定を行うことが可能である。例えば、QRコードに目的地設定コマンドと目的地(施設)の名称,場所,概要等の目的地データを記憶させ、該データを携帯電話機2に転送する、あるいはカード3に印刷する。そして、画像解析装置61により車載カメラ4で撮影した、携帯電話機2の表示器に表示されたあるいはカード3に印刷されたQRコードの画像データから文字情報を抽出し、コマンド解析装置62で該抽出された文字情報を実行可能なコマンド情報(目的地設定コマンド)およびコマンド実行用パラメータ(目的地の位置情報)等に変換し、先の給油情報とともにコマンド実行装置63から車内LAN通信部を介してナビゲーション装置へ送る。
【0060】
ナビゲーション装置は受信したコマンド情報(目的地設定コマンド)を解析し、およびコマンド実行用パラメータが目的地の位置情報であるかどうかを判定し、コマンド実行用パラメータが目的地の位置情報である場合は、上述のように車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な経路を求める処理を行なう。
【0061】
(プログラムアップデート:カスタマイズ機能)
図4を用いて、QRコードによりドライビングポジションを調整する処理を例に挙げてカスタマイズ機能について説明したが、カスタマイズ機能によってECUのプログラムをアップデートすることも可能である。即ち、コマンド情報がプログラムアップデートコマンド,コマンド実行用パラメータがアップデート対象となるECUおよびアップデートするプログラムデータとなる。つまり、QRコードにはプログラムアップデートコマンド,プログラムデータが記憶される。
【0062】
車両アプリ実行ECU6において、車載カメラ4から読み込んだQRコードによって得られるコマンド情報がプログラムアップデートコマンドである場合、コマンド実行用パラメータからアップデート対象となるECUを判別する。アップデート対象となるECUがシートECU9(図4参照)である場合は、シート設定IFを介して統括ECU7にコマンド情報およびコマンド実行用パラメータを送る。
【0063】
統括ECU7(本発明の制御プログラム記憶手段,制御プログラム更新手段)はコマンド情報およびコマンド実行用パラメータを受信すると、コマンド情報およびコマンド実行用パラメータを一時的に記憶し、シートECU9がプログラムアップデート可能な状態かどうか確認する。プログラムアップデート可能な状態とは、例えばイグニッションスイッチがオフ状態かつシフトレバーがパーキングの位置にある状態(運転操作に支障をきたさない状態)である。プログラムアップデート可能な状態を判定するためのパラメータ入力(イグニッションスイッチ入力等)は統括ECU7に接続されている。車両が駐車時に所定のスイッチ操作によりプログラム設定モードに移行する方法を用いてもよい。
【0064】
シートECU9がプログラムアップデート可能な状態である場合には、統括ECU7はシートECU9へコマンド情報およびコマンド実行用パラメータを送る。シートECU9は通常の動作モードからプログラム書き換えモードに移行し、コマンド実行用パラメータのプログラムデータに含まれる先頭アドレスおよび末尾アドレスで示される領域を受信したプログラムに置き換える。
【0065】
車両アプリ実行ECU6が、統括ECU7を介してシートECU9からプログラムアップデートの状況を取得して、ディスプレイ11に表示するようにしてもよい。また、本発明の実施の形態全般において、ディスプレイ11の他にスピーカを接続して音声メッセージによる報知を行なってもよい。
【0066】
本発明の実施の形態で説明した以外のECUを接続する場合は、統括ECU7に該ECUとの通信を行なうインターフェースを設け、必要に応じて車両アプリ実行ECU6との間にもインターフェースを設け、さらに統括ECU7の制御プログラムに該ECUとの通信プログラムを追加すればよい。このとき、上述のプログラムアップデート機能を利用して、統括ECU7の制御プログラムをアップデートする方法をとってもよい。同様に車両アプリ実行ECU6のプログラムもアップデート可能である。
【0067】
上述した本発明の実施の形態において、複数のQRコードを連続して読み込んで所定の制御を行なうことも可能である。例えば、1枚目のQRコードにコマンド情報が記録され、2枚目以降のQRコードにコマンド実行用パラメータが記録されるものである。また、複数組のコマンド情報およびコマンド実行用パラメータが順次記録されていてもよい。最後のQRコードにEOF(End Of File)のようなコマンドの終了を表した情報を含めるようにしてもよい。EOF専用のQRコードを用意してもよい。
【0068】
上記の方法では、車載カメラ4で順次QRコードを読み取り、画像解析装置61でEOFを検出した場合にコマンド解析装置62に読み取ったデータを送る。逐次読み取ったデータを送ってもよい。以降の処理は前述の実施例と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。また、QRコードを読み取った際に、次のQRコードの表示を促すための音声,ディスプレイ11による報知を行なってもよい。
【0069】
また、車両アプリ実行ECUでQRコードを作成可能とし、ディスプレイ11に表示させるようにしてもよい。この構成により、携帯電話機2等の記録媒体と対話式でコマンドを実行することが可能となる。例えば、QRコードを読み取り可能な携帯電話機2を用いて複数のQRコードで構成されるコマンドを実行する場合は以下のようになる。
【0070】
まず、携帯電話機2でQRコードを表示させて車載カメラ4に読み取らせる。車載カメラ4で読み取ったQRコードを画像解析装置61およびコマンド解析装置62で順次解析して、次に必要なコマンド実行用パラメータを要求するためのコマンドを含むQRコードを生成する。生成したQRコードをディスプレイ11に表示させて、携帯電話機2で読み取る。
【0071】
携帯電話機2では読み取ったQRコードに対応した、コマンド実行用パラメータ等を含むQRコードを表示する。
【0072】
上記の処理では、乗員は携帯電話機2を車載カメラ4にかざしているだけでよいので、操作負荷は増えないという利点がある。また、コマンド解析装置62が二次元画像情報作成手段、ディスプレイ11が送出手段、携帯電話機2が記録媒体内読み取り手段に相当する。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の車載制御装置の概念を示す図。
【図2】車両アプリ実行ECUで実行される内部処理の流れの概要を示す図。
【図3】コマンド実行機能を説明するための図。
【図4】カスタマイズ機能を説明するための図。
【図5】メンテナンス機能を説明するための図。
【符号の説明】
【0075】
1 車両
2 携帯電話機(記録媒体,記録媒体内読み取り手段)
3 カード(記録媒体)
4 車載カメラ(読み取り手段)
5 レシート(記録媒体)
6 車両アプリ実行ECU(抽出手段,解析手段,制御情報送信手段,走行距離取得手段)
7 統括ECU(燃費情報生成手段)
8 ドアロックECU(ドアロック制御装置:受信手段,機能設定情報記憶手段,動作制御手段,制御プログラム記憶手段,制御プログラム更新手段)
9 シートECU(着座位置調節装置:受信手段,機能設定情報記憶手段,動作制御手段,制御プログラム記憶手段,制御プログラム更新手段)
10 チルテレECU(着座位置調節装置:受信手段,機能設定情報記憶手段,動作制御手段,制御プログラム記憶手段,制御プログラム更新手段)
11 ディスプレイ(燃費情報表示手段,送出手段)
12 ドアロック設定IF
13 走行距離取得IF
14 給油情報記憶IF
15 チルテレ設定IF
16 シート設定IF
61 画像解析装置(抽出手段)
62 コマンド解析装置(解析手段,二次元画像情報作成手段)
63 コマンド実行装置(制御情報送信手段)
64 実行可否判断部
71 設定情報変換部
72 走行距離管理部
73 車内DB(データベース:給油情報記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字情報に変換可能な二次元画像情報が記録された記録媒体と、
前記二次元画像情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取られた二次元画像情報から前記文字情報を抽出する抽出手段と、
前記文字情報から、対象となる制御機器に対する制御情報を解析する解析手段と、
前記解析された制御情報を前記制御機器に送信する制御情報送信手段と、
を有することを特徴とする車載制御装置。
【請求項2】
前記制御機器は、前記車両に搭載されるアクチュエータの動作を制御する動作制御手段と、前記送られてきた制御情報を受信する受信手段と、前記アクチュエータの動作に関する機能設定情報を記憶する機能設定情報記憶手段とを含み、
前記制御情報には前記機能設定情報が含まれ、
前記動作制御手段はその機能設定情報に基づいてアクチュエータの動作を制御するものである請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項3】
前記制御機器には前記アクチュエータを制御するための制御プログラムを記憶する制御プログラム記憶手段と、前記送られてきた制御プログラムを前記記憶されているプログラムと置き換える制御プログラム更新手段とを含み、
前記動作制御手段は前記置き換えられた制御プログラムに基づいてアクチュエータの動作を制御するものである請求項2に記載の車載制御装置。
【請求項4】
前記制御情報には前記アクチュエータの駆動を制御するための駆動制御命令が含まれ、
前記動作制御手段は前記駆動制御命令に基づいてアクチュエータの動作を制御するものである請求項2または3に記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記制御機器は車両のドアの施錠および開錠を制御するドアロック制御装置である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項6】
前記制御機器は車両の座席における乗員の着座位置を調節する着座位置調節装置である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項7】
前記制御機器は電子地図上において車両の現在位置から目的地までの経路を設定し、車両を前記目的地まで誘導する車両用ナビゲーション装置である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項8】
前記制御情報には車両が給油を行なった際の日時,場所,給油量の少なくとも一つに関する給油情報が含まれ、
前記制御機器は前記給油情報が送られてきたときの前記車両の走行距離を取得する走行距離取得手段と、
前記給油情報と前記取得した走行距離を記憶する給油情報記憶手段と、
燃費情報を生成する燃費情報生成手段と、
前記生成された燃費情報を表示する燃費情報表示手段と、
を含むものである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項9】
前記記録媒体には複数の前記二次元画像情報が記録され、
前記読み取り手段は前記複数の二次元画像情報を読み取り可能であって、
前記抽出手段は前記読み取られた複数の二次元画像情報から前記文字情報を抽出するものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項10】
前記記録媒体に対する二次元画像情報を作成する二次元画像情報作成手段と、
前記作成された二次元画像情報を前記記録媒体に送出する送出手段とを含み、
前記記録媒体は前記送出された前記二次元画像情報を読み取る記録媒体内読み取り手段を含み
前記記録媒体は前記読み取られた二次元画像情報に対応した前記二次元画像情報を提供し、
前記読み取り手段は前記提供された二次元画像情報を読み取るものである請求項1ないし9のいずれか1項に記載の車載制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−151266(P2006−151266A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346856(P2004−346856)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】