説明

車載制御装置

【課題】不揮発性記憶手段へのデータ書き込みが異常となった場合であっても、最新のデータの読み出しを行い、商品性および信頼性の向上を図ることができる車載制御装置を提供する。
【解決手段】EEPROMのバンク2aと、バンク2bとの記憶データを比較し、一致しないと判定されたバンク2aの記憶データのうち、関連性を有さないと判定された記憶データを最新データとしてRAMに読み出す一方、一致しないと判定されたバンク2aの記憶データが関連性を有すると判定された場合であっても、関連性を有すると判定された全ての記憶データが一致しないと判定された場合には、関連性を有すると判定されたバンク2aの記憶データを最新データとしてRAMに読み出すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、演算装置であるCPU、不揮発性のメモリであるEEPROM、および、揮発性のメモリであるRAMを備えた車載制御装置が知られている。この従来の車載制御装置においては、EEPROMへの書き込みが中断して記憶データが異常になると、記憶データをRAMへ呼び出して利用することができなくなるため、システムの立ち上げが不能となり車載制御装置自体を交換する必要が生じていた。
そこで近年、EEPROMに最新面と更新面との2面の記憶領域を設けて交互に書き込み処理を行い、電源断などにより更新面の記憶データに誤りが発生した場合に、最新面の記憶データを用いてシステムの立ち上げを行い、再度更新面の記憶データの更新を行う制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―320301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車載制御装置は、更新面の記憶データの書き込み中に異常が発生して最新面の記憶データでシステムを立ち上げると、更新面に書き込んだ記憶データが再度書き換えられてしまう。例えば、車両の故障フラグや故障データなどのデータが更新面に書き込みされている途中で電源断などにより異常が生じた場合、一旦更新面に書き込まれた故障に係るデータが破棄されてしまうことが考えられる。
【0005】
また、EEPROMに記憶領域を2面設けて一方を主記憶面とし、他方をバックアップ用の記憶面として運用することも可能であるが、この場合、更新中に異常が発生すると、次回、新旧どちらの記憶データが読み出されるのかが不明になる虞がある。具体的には、主記憶面の記憶データを更新しているときに電源断などの異常が生じた場合には、バックアップ用の記憶面に書き込みされた記憶データが電源オン後に読み出され、バックアップ用の記憶面の記憶データを更新しているときに電源断などの異常が生じた場合には、主記憶面に書込まれた最新の更新されたデータが電源オン後に読み出されるため、電源断等の異常発生時におけるデータ更新の進捗に応じて読み出される記憶データの新旧が入れ替わってしてしまうことになる。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不揮発性記憶手段へのデータ書き込みが異常となった場合であっても、最新のデータの読み出しを行い、商品性および信頼性の向上を図ることができる車載制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、不揮発性記憶手段(例えば、実施形態におけるEEPROM2)と、電源が供給されている間のみデータを記憶可能な一時記憶手段(例えば、実施形態におけるRAM3)と、前記電源の供給が開始されたときに前記不揮発性記憶手段から前記一時記憶手段に前記データを読み出して所定のプログラムを実行する制御手段(例えば、実施形態におけるCPU4)とを備える車載制御装置において、前記不揮発性記憶手段は、複数のアドレス毎に予め設定された種別のデータを格納する第1領域(例えば、実施形態におけるバンク2a)と、該第1領域の前記複数のアドレスに対応付けられた複数のアドレスを有し、前記第1領域に格納されるデータと同一のデータを格納する第2領域(例えば、実施形態におけるバンク2b)とを備え、前記制御手段は、前記不揮発性記憶手段に格納された前記第1領域の各アドレスに格納されたデータ及び前記第2領域の各アドレスに格納されたデータの更新を、前記第1領域、前記第2領域の順に行うデータ更新手段(例えば、実施形態におけるデータ更新手段5)と、前記第1領域の各アドレスに格納されたデータと前記第2領域の各アドレスに格納されたデータとが一致するか否かをアドレス毎に判定する一致判定手段(例えば、実施形態における一致判定手段6)と、前記第1領域と前記第2領域とのうち少なくとも一方の領域の一のアドレスに格納されるデータと他のアドレスに格納されるデータとが互いに関連性を有するか否かを判定する関連有無判定手段(例えば、実施形態における関連有無判定手段7)とを備え、前記一致判定手段により一致しないと判定された前記第1領域のデータのうち、前記関連有無判定手段により関連性を有さないと判定されたデータを最新データとして前記一時記憶手段に読み出す一方、前記一致判定手段により一致しないと判定された前記第1領域のデータが前記関連有無判定手段により関連性を有すると判定された場合であっても、関連性を有すると判定された全てのデータが前記一致判定手段により一致しないと判定された場合には、関連性を有すると判定された前記第1領域のデータを最新データとして前記一時記憶手段に読み出すことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記不揮発性記憶手段は、前記第1領域又は第2領域が更新中であるか否かを判定する更新判定手段(例えば、実施形態における更新判定手段8)を備え、前記制御手段は、前記更新判定手段により、前記第1領域が更新中であると判定された場合にのみ、前記一致判定手段および前記関連有無判定手段による各判定を行い、該一致判定手段および関連有無判定手段による判定結果に基づいて前記一時記憶手段への前記データの読み出しを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、データ更新手段によって不揮発性記憶手段に格納されたデータの更新を第1領域、第2領域の順で更新し、この第1領域の各アドレスに格納されたデータおよび第2領域の各アドレスに格納されたデータが一致するか否かを一致判定手段により判定して、第1領域および第2領域の各アドレスのデータが一致しないと判定され、さらに、この一致しないデータが関連性有無判定手段により関連性を有していないと判定された場合に、一致しない第1領域のデータを最新データとして一時記憶手段に読み出すことで、データ更新中に電源断などで更新処理が中断された場合であっても、例えば、故障フラグなど一のアドレスに格納されるデータが既に更新され格納されている場合には、この更新データの読み出しを行うことができるため、装置の商品性および信頼性を向上することができる効果がある。
【0010】
また、一致判定手段により一致しないと判定されたデータが、関連性を有すると判定された場合、すなわち、関連性を有する一のアドレスのデータと他のアドレスのデータの何れか一方のみが更新されているなどの不完全なデータとなっている可能性が高い場合には、第1領域と第2領域とのうち更新が中断されていない方のデータを用いるので、より一層信頼性の向上を図ることができる効果がある。
【0011】
さらに、一致判定手段により一致しないと判定されたデータが関連性を有していると判定された場合であっても、関連性を有しているデータの全てが一致判定手段により一致していないと判定された場合、すなわち、関連性を有している一連のデータが全て更新済みであることが明らかな場合には、関連性を有しているデータを最新データとして一時記憶手段に読み出すことができるので、更新済みのデータの更なる有効利用を図ることができる効果がある。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、一致判定手段および関連有無判定手段による判定処理を、更新判定手段により更新中であると判定された場合にのみ行い、不必要な一致判定手段および関連有無判定手段による判定処理を省略できるので、システムの起動時の負荷を軽減すると共に起動時間を短縮することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における車載制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるEEPROMのバンクおよびアドレスの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態におけるEEPROMの読み込み処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の実施形態における車載制御装置について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施形態の車載制御装置であるECU(Electronic Control Unit)1は、不揮発性メモリであるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)2、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)3、および、演算装置であるCPU(Central Processing Unit)4をそれぞれ備えて構成される。また、ECU1は、車内ネットワークである図示しないCAN(Controller Area Network)に接続され、このCANを介して各種車載センサからの検出結果やセンサ故障に関する情報などが入力されるようになっている。
【0015】
EEPROM2は、電気的にデータ書き換えが可能であるとともに電源供給なしにデータ保持が可能ないわゆる不揮発性メモリであり、アドレス毎にあらかじめ設定された種別の記憶データを格納するバンク2aと、このバンク2aと同様なアドレスが割り当てられて、バンク2aの記憶データと同じ記憶データをバックアップデータとして格納するバンク2bとを備えて構成される。
RAM3は、CPU4により読み出されたEEPROM2のデータを一時保存する。このRAM3に一時保存されたデータはCPU4の演算に供される。
【0016】
図2は、EEPROM2のバンク2aとバンク2bとに設定される各アドレスの一例を示しており、バンク2a,2bには車両のセンサ故障に関する記憶データが格納される。また、図2では図示都合上、各アドレスを、それぞれアドレス「#1」〜「#9」と簡略化して示しており、バンク2a,2bともに、アドレス「#1」にはヨー故障フラグ、アドレス「#2」にはG故障フラグ、アドレス「#3」には舵角故障フラグがそれぞれ格納される。さらに、アドレス「#4」〜「#7」には、のアドレス「#1」〜「#3」に格納された故障フラグのうち、何れか一つが故障状態を示すフラグに更新された時点(以下、故障時と称す)のヨーセンサ、Gセンサ、舵角センサ、車速センサの検出値がそれぞれ格納される。これらアドレス「#4」〜「#7」の記憶データは、それぞれ同一の故障時のセンサ値である必要があるため、互いに関連性を有するデータとして取り扱われる。またアドレス「#8」にはチェックサムの計算結果が格納され、アドレス「#9」には書き換え中フラグが格納される。書き換え中フラグは、当該バンクにおける記憶データの書き換え処理の進捗状況を表すフラグであって、例えば、書き換え中は「1」、書き換え中ではないときには「0」となる。
【0017】
CPU4は、EEPROM2に格納された所定のプログラムをRAM3に読み出して実行するとともに、この所定のプログラムで利用する上述したバンク2aおよびバンク2bに格納された記憶データを適宜RAM3に読み出す。またCPU4は、データ更新手段5、一致判定手段6、関連有無判定手段7、および、更新判定手段8を備えている。これらデータ更新手段5、一致判定手段6、関連有無判定手段7、および、更新判定手段8は、それぞれCPU4で実行されるプログラムにより構成される。
【0018】
データ更新手段5は、EEPROM2に格納された記憶データの更新を行うものであり、記憶データの更新時には、EEPROM2のバンク2aの各アドレスに格納された記憶データ、および、EEPROM2のバンク2bの各アドレスに格納された記憶データをそれぞれ所定の順序で更新する。より具体的には、最初にバンク2aの記憶データの更新を開始するべく「#9」に格納された書き換え中フラグを書き換え中を意味する「1」に書き換え、次いで、各アドレスに格納された記憶データを、例えば、アドレス「#1」〜「#7」の順に従って順次更新して最後にチェックサムを確認し、書き換え中フラグを「0」に戻す。その後、バンク2bの記憶データの更新に移行して、書き換え中フラグを「1」に書き換え、次いで、アドレス「#1」〜「#7」にバンク2aと同一の記憶データを順次格納してチェックサムを確認して書き換え中フラグを「0」に戻す。
【0019】
一致判定手段6は、EEPROM2のバンク2aに格納されている記憶データと、バンク2bに格納されている記憶データとの一致を判定する。具体的には、同じ記憶データが格納されるバンク2aのアドレス「#1」〜「#7」と、バンク2bのアドレス「#1」〜「#7」とに現在格納されている各記憶データを、図2に示すバンク2aのアドレス「#1」とバンク2bのアドレス「#1」とのように、異なるバンクの同一アドレスの記憶データ同士を比較して一致しているか否かを判定する。
【0020】
関連性有無判定手段7は、EEPROM2のバンク2aの一のアドレスに格納された記憶データがバンク2aの他のアドレスに格納されたデータと関連性を有するか否かを判定する。ここで、CPU4には、各アドレスの種別、例えばアドレス「#4」〜「#7」には関連するデータを格納する等の情報が予めマスクされており、このアドレスの種別に基づき上記関連性の有無が判定される。なお、バンク2aの記憶データにより関連性の有無を判定する構成に限られず、バンク2bの一のアドレスに格納された記憶データがバンク2bの他のアドレスに格納された記憶データと関連性を有するか否かを判定するようにしてもよく、さらに、バンク2aとバンク2bとの両方の記憶データについて関連性の有無を判定してもよい。
【0021】
更新判定手段8は、上述したEEPROM2のバンク2a、バンク2bが書き換え中(換言すれば、更新中)であるか否かを判定する。具体的には、更新判定手段8は、バンク2aのアドレス「#9」に格納された書き換え中フラグとバンク2bのアドレス「#9」に格納された書き換え中フラグとに基づき、各バンク2a,2bが書き換え中か否かを判定する。例えば、記憶データの書き換え中に、電源断などによって書き換えが中断されると、次回電源投入時に、書き換え中フラグは「1」の状態が維持されているので更新判定手段8によって書き換え中と判定される。
【0022】
この実施形態における車載制御装置1は上述した構成を備えており、次にこの車載制御装置1の動作、特にEEPROM2に格納された記憶データの読み込み処理について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0023】
まずCPU4は、車両のイグニッションがオンされると、EEPROM2のバンク2aのアドレス「#9」の記憶データを読み出し、更新判定手段8によって、書き込み中フラグfaが「1」であるか、すなわちバンク2aが、記憶データの更新中に中断された状態か否かを判定する(ステップS01)。この判定の結果、バンク2aの書き込み中フラグfaが「1」である場合は(ステップS01でYES)、バンク2bのアドレス「#8」に格納されているチェックサムtbが正常か否かを判定する。
【0024】
この判定の結果、チェックサムtbが正常である場合(ステップS02でYES)、CPU4は、一致判定手段6によって、それぞれ対応するバンク2aの各アドレス(#1〜#7)とバンク2bの各アドレス(#1〜#7)とに格納されている記憶データ同士を比較する(ステップS03)。そして、バンク2aのアドレス(#1〜#7)とバンク2bのアドレス(#1〜#7)とのうち記憶データが一致しないアドレスを特定する(ステップS04)。
【0025】
次いで、CPU4は、関連有無判定手段7によって、特定されたバンク2aのアドレスのうち一のアドレスの記憶データが関連性の必要な記憶データか否か、つまり、一のアドレスの記憶データと他のアドレスの記憶データとが、同じ故障時(同時)のデータであるなど、関連性の必要な記憶データか否かを判定する(ステップS05)。
【0026】
この判定の結果、関連性が必要と判定された場合(ステップS05でYES)、この記憶データと関連性を有する全ての記憶データについて、バンク2aの記憶データとバンク2bの記憶データとが一致しないか否かを判定する(ステップS06)。この判定の結果、一致するものがあると判定された場合(ステップS06でNO)は、関連性を有する記憶データの一部だけが更新された状態である可能性があるため、ステップS05で関連性が必要と判定されたアドレスの記憶データについては、更新が完了しているバンク2bの記憶データを正しい記憶データとして設定し(ステップS07)、この記憶データをRAM3に呼び出す。
【0027】
一方、上記判定の結果、関連性の必要が無いアドレスの記憶データであると判定された場合(ステップS05でNO)および関連性が必要な記憶データの全てがバンク2aとバンク2bとで一致しないと判定された場合(ステップS06でYES)には、更新が完了していないバンク2aの最新の記憶データを正しい記憶データとして設定し(ステップS11)、この記憶データをRAM3に呼び出す。
【0028】
次いで、バンク2aおよびバンク2bの上述した記憶データの関連性を判定する処理が全てのアドレスに対して行われたか(換言すれば、スキャン終了か)否かを判定する(ステップS08)。この判定の結果、スキャンが終了していないと判定された場合は、上述したステップS05の処理に戻り上述した処理を繰り返す。すなわち、上記ステップS05の判定を行ったアドレスの次のアドレスの記憶データが関連性を必要とするか判定し、関連性の有無に応じてバンク2aの記憶データ又はバンク2bの記憶データをRAM3に呼び出す。
【0029】
一方、上述した記憶データの関連性を判定する処理が全てのアドレスに対して行われたと判定された場合は(ステップS08でYES)、上述した一連の処理を一旦終了する。
【0030】
また、ステップS01の処理において、バンク2aのアドレス「#9」に格納された書き換えフラグfaが「0」の場合、すなわちバンク2aが更新中ではない場合(ステップS01でNO)、バンク2aのアドレス「#8」に格納されたチェックサムtaが正常か否かを判定する(ステップS09)。
【0031】
この判定の結果、チェックサムtaが正常と判定された場合(ステップS09でYES)、バンク2aのデータは全て正常に更新が終了しているので、バンク2aの全てのアドレスの記憶データを正しい記憶データとして設定し(ステップS10)、この記憶データをRAM3に呼び出す。一方、上記判定の結果、チェックサムtaが正常ではないと判定された場合は(ステップS09でNO)、書き込みが終了しているにもかかわらずバンク2aの記憶データが正常ではないので、EEPROM2の故障と判定して(ステップS12)、例えば、EEPROM2の故障状態をユーザに報知する処理などを行い、上述した一連の処理を一旦終了する。
【0032】
さらに、バンク2aの書き込み中フラグfaが「1」でチェックサムtbが正常ではないと判定された場合も(ステップS02でNO)、バンク2aの記憶データとバンク2bの記憶データがともに正常ではなく、どちらの記憶データも利用できないため、EEPROM2の故障と判定して(ステップS12)、例えば、EEPROM2の故障状態をユーザに報知する処理などを行い、上述した一連の処理を一旦終了する。
【0033】
したがって、上述した実施形態の車載制御装置1によれば、データ更新手段5によってEEPROM2に格納された記憶データの更新をバンク2a、バンク2bの順序で更新し、バンク2aの各アドレスに格納された記憶データおよびバンク2bの各アドレスに格納された記憶データを一致判定手段6(ステップS04)により一致するか否か判定して、バンク2aおよびバンク2bの各アドレスの記憶データが一致しないと判定され、さらに、この一致しない記憶データが他のアドレスに格納された記憶データと関連性を有していないと関連性有無判定手段7(ステップS05)により判定された場合に、この一致しないバンク2aの記憶データを最新データとしてRAM3に読み出すことができるため、記憶データの更新中に電源断などで更新処理が中断された場合であっても、関連性を有さない故障フラグなど一のアドレスに格納される記憶データが既に更新されバンク2aに格納されている場合には、このアドレスの最新の故障に係る記憶データの読み出しを行うことができ、この結果、装置の信頼性向上を図ることができる。
【0034】
また、一致判定手段6により一致しないと判定された記憶データが、関連性を有すると判定された場合、すなわち、関連性を有するバンク2aの一のアドレスのデータと他のアドレスのデータの何れか一方のみが更新されているなどの不完全なデータとなっている可能性が高い場合には、バンク2aとバンク2bとのうち更新が中断されていない方のデータを用いるので、より一層信頼性の向上を図ることができる。
【0035】
さらに、一致判定手段6により一致しないと判定された記憶データが関連性を有していると判定された場合であっても、関連性を有している記憶データの全てが一致していないと判定される場合、すなわち、関連性を有している一連の記憶データが全て更新済みであることが明らかな場合には、関連性を有している記憶データを最新データとしてRAM3に読み出すことができるので、更新済みの記憶データの更なる有効利用を図ることができる。
【0036】
そして、一致判定手段6および関連有無判定手段7による判定処理を、更新判定手段8により更新中であると判定された場合にのみ行い、不必要な一致判定手段6および関連有無判定手段7による判定処理を省略できるので、システムの起動時の負荷を軽減すると共に起動時間を短縮することができる。
【0037】
また、故障の発生を示すヨー故障フラグ、G故障フラグ、および、舵角故障フラグについては、バンク2aがイグニッションOFFなどにより書き込み中になっても、書き込みを終えたものについてはイグニッションON時にRAM3に呼び出すことが可能となるので、故障検出の信頼性向上を図ることができる。また、単にバンク2aの書き込み中にイグニッションOFFなどにより中断しただけではEEPROM2の故障と判定されないので、EEPROM2の修理交換の頻度を抑制することができる。
【0038】
なお、上述した実施形態の車載制御装置1では、ヨー故障フラグ、G故障フラグ、舵角故障フラグなどの故障フラグなど、故障に関する記憶データを格納するEEPROM2について説明したが、故障以外の記憶データを格納する不揮発性記憶手段を備える車載制御装置にも適用可能である。
【0039】
また、故障時に検出される車載センサの各検出値を関連性がある記憶データとする一例について説明したが、この構成に限られず、任意の関連性を設定して、記憶データの関連性の有無を判定するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、不揮発性記憶手段としてEEPROM2を用いる場合について説明したが、不揮発性記憶手段であればよく、EEPROMに限られるものではない。
【符号の説明】
【0040】
2 EEPROM(不揮発性記憶手段)
2a バンク(第1領域)
2b バンク(第2領域)
3 RAM(一時記憶手段)
4 CPU(制御手段)
5 データ更新手段
6 一致判定手段
7 関連有無判定手段
8 更新判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性記憶手段と、
電源が供給されている間のみデータを記憶可能な一時記憶手段と、
前記電源の供給が開始されたときに前記不揮発性記憶手段から前記一時記憶手段に前記データを読み出して所定のプログラムを実行する制御手段とを備える車載制御装置において、
前記不揮発性記憶手段は、
複数のアドレス毎に予め設定された種別のデータを格納する第1領域と、
該第1領域の前記複数のアドレスに対応付けられた複数のアドレスを有し、前記第1領域に格納されるデータと同一のデータを格納する第2領域とを備え、
前記制御手段は、
前記不揮発性記憶手段に格納された前記第1領域の各アドレスに格納されたデータ及び前記第2領域の各アドレスに格納されたデータの更新を、前記第1領域、前記第2領域の順に行うデータ更新手段と、
前記第1領域の各アドレスに格納されたデータと前記第2領域の各アドレスに格納されたデータとが一致するか否かをアドレス毎に判定する一致判定手段と、
前記第1領域と前記第2領域とのうち少なくとも一方の領域の一のアドレスに格納されるデータと他のアドレスに格納されるデータとが互いに関連性を有するか否かを判定する関連性有無判定手段とを備え、
前記一致判定手段により一致しないと判定された前記第1領域のデータのうち、前記関連有無判定手段により関連性を有さないと判定されたデータを最新データとして前記一時記憶手段に読み出す一方、前記一致判定手段により一致しないと判定された前記第1領域のデータが前記関連有無判定手段により関連性を有すると判定された場合であっても、関連性を有すると判定された全てのデータが前記一致判定手段により一致しないと判定された場合には、関連性を有すると判定された前記第1領域のデータを最新データとして前記一時記憶手段に読み出すことを特徴とする車載制御装置。
【請求項2】
前記不揮発性記憶手段は、前記第1領域又は第2領域が更新中であるか否かを判定する更新判定手段を備え、
前記制御手段は、前記更新判定手段により、前記第1領域が更新中であると判定された場合にのみ、前記一致判定手段および前記関連有無判定手段による各判定を行い、該一致判定手段および関連有無判定手段による判定結果に基づいて前記一時記憶手段への前記データの読み出しを行うことを特徴とする請求項1に記載の車載制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−118682(P2011−118682A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275692(P2009−275692)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】