説明

車載式クレーン

【課題】運搬力あるいは揚げ能力を損なうことなく、クレーンを使用するためのコストを最小限に抑えるために、可能な限り重量を小さくし、可能な限り迅速に運転の準備を整えることができるようにする。
【解決手段】本発明は車載式クレーン、特には移動式、自走式、または軌道式クレーンであって、上部構造を備えており、この上部構造は、上部旋回システムの形態で設けられており、上部構造は、竪形のタワーと、このタワーに取り付けられたブームと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載式クレーンに関し、特に、移動式、自走式又はクローラ(crawler)式のクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン技術においては、一方の塔(タワー:tower)型旋回式クレーンあるいはタワー型クレーンと、他方の車載式クレーンという分類区分の間で、一般に区別がなされる。
【0003】
タワー型旋回式クレーンは、通常において格子状骨組の形態で設けられ、基台の上に起立する竪形(バーティカル:vertical)のタワーを有している。この方式のクレーンは、例えば建設現場などでは、軌道系により移動することができるが、道路を通常に通行して移動可能な車両として機能するように設計されているわけではない。一方、車載式クレーンは、自走する路上走行車であり、まさに移動用に設計されたものである。
【0004】
車載式クレーンは、台車を組み込んだ下部キャリッジ(under carriage)と、この下部キャリッジの上で旋回可能で、旋回装置とジブ(jib)とを有する上部キャリッジ(top carriage)と、を備えている。ジブは、箱形の設計に基づく伸縮多段式(テレスコピック:telescopic)のジブである場合もあり、格子状のマスト・ブーム(mast boom)である場合もある。
【0005】
クレーンに対する要求は、ますます厳しくなってきており、荷を吊り上げる高さに対してだけでなく、運搬強さ及び揚げ能力に対しても厳しくなっている。
【0006】
クレーンがますます重要になってきている用途の1つに、風力タービンを建設する用途がある。より高性能の風力タービンを目指す風潮が高まっており、それには、より高さがある部品のみならず、より重量の大きい部品が必要とされるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クレーンを用いて風力タービンを建設する上での問題の中に、建設に伴う資材補給の問題があり、特に、実際上避けることのできない地面への損傷や、高い費用の問題がある。なぜなら、クレーンの全重量が非常に大きいために、大きな風力タービンを建設するために用いられる既存の種類のクレーンを建設する前には、風力タービンの建設現場に重量物を搬入するための個別の輸送が幾度も必要であり、しかも建設現場は、通常、遠隔地にあるからである。
【0008】
本発明の目的は、運搬力あるいは揚げ能力を損なうことなく、クレーンを使用するためのコストを最小限に抑えるために、可能な限り重量を小さくし、可能な限り迅速に運転の準備を整えることができるようにし、それにより風力タービンの建設に特に適した車載式クレーンを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の特徴的な機構に基づいて達成され、特に、車載式クレーンが、竪形のタワーとこのタワー上のジブとを備える上部旋回システムの形態の構造を有している、という事実によって達成される。
【0010】
本発明が提案する概念、すなわち竪形のタワーと嵌め合いにより当該タワーに取り付けられたジブとを有する上部旋回構造に基づく概念は、過去の車載式クレーンに採用されていた構築原理から脱却したものである。この過去の構築原理では、旋回システムが台車の高さに配置され、通常において伸縮多段式であるか又は格子状の骨組みの形態であるマストが、鉛直方向に対して傾斜しており、当該マストには釣り合い錘(カウンターウェイト:counter weight)が設けられており、このカウンターウェイトは、あらゆる動作位置においても、転倒することのないよう必要な安定性を得るために、マストと一緒に回転するようになっていた。これは、クレーン半径と称される。本発明が提案する車載式クレーンの場合には、車載式クレーンに典型的に必要とされていたこのようなクレーン半径が、竪形のタワーのために存在しなくなる。
【0011】
驚くべきことに、本発明が提案する回転しない竪形のタワーに基づく概念は、多くの利点を有することが分かった。特に、クレーン半径が存在せず、重量あるカウンターウェイトの形態を有する釣り合い手段を要しないために、運搬強さ又は揚げ能力に対して全重量が比較的軽いクレーンを得ることができる。このことにより、個々の輸送回数が比較的少ないもので足りるので、移動性に関してプラスの効果がもたらされる。
【0012】
本発明が提案するように上部旋回システムを有する車載式クレーンを設計する際には、必要であれば、タワーを付加的に固定化するか、安定化するための有利な手だてを選択することも可能である。さらに、本発明が提案する上記設計は、タワーを立ち上げるための特に単純な概念をも提供する。これについては、後に詳述する。
【0013】
本発明の有利な実施の形態は、従属請求項、明細書の記載及び図面からも、明らかとなるであろう。
【0014】
好ましくは、ジブはタワーに対して傾斜している。このことは、ジブが水平に延びていること、すなわちタワーに対して垂直に延びていることをも意味するものと解すべきである。
【0015】
好ましくは、ジブはさらに、その長さが調節可能なものであり、かつ/又は、タワーに対するその角度が調節可能なものである。長さの調節を可能にするために、ジブは好ましくは伸縮多段式となっている。
【0016】
別の好ましい実施の形態の一例では、ジブは、特に全体として輸送可能な構成単位の不可欠な部品である。この構成単位は、ジブに加えて、旋回装置、引き込み(ラフィング:luffing)システム、下部ブロックと上部ローラープーリとを有するブロック及びプーリ、及び選択可能なクレーン運転台を、当該設備に要する全ての駆動装置とともに備えている。この点で、ジブを組み込んだ当該構成単位は、上部キャリッジと称される。但し、従来の車載式クレーンでは、「上部キャリッジ」という用語は、嵌め合いによって台車上に直接に取り付けられた構造全体を意味し、台車は下部キャリッジと称されている。
【0017】
本発明が提案しているように、タワーはまた、長さが調節可能であることが望ましい。タワーは、好ましくは伸縮多段式のタワーの形態をなす。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態の別の例では、タワーの自重がカウンターウェイトとして設定される。従来の車載式クレーンでは、マストはクレーン半径に基づく角度をもって常に傾斜しており、カウンターウェイトを設ける必要があり、それによりクレーンの全重量が著しく大きいものとなっていた。しかし、本発明が提案する車載式クレーンの場合には、従来の車載式クレーンとは異なり、このように付加的に設けられるカウンターウェイトは、運搬強さが大きく、あるいは揚げ能力が高い場合であっても、無しで済ますことができる。竪形のタワーは、必要であれば付加的に固定してもよいが、十分に安定していることが分かっている。すなわち、本発明が提案する車載式クレーンの安定性は、タワーの自重によって少なくとも実質的には既に保証されている。竪形のタワーは、車載式クレーンの中心バラスト(ballast)として機能する。
【0019】
本発明が提案する車載式クレーンの特定の寸法によっては、付加的な固定化及び安定化の機構をタワーに対して設けてもよい。これについては、以下に詳述する。しかし、このような機構は、従来の車載式クレーンで用いられるカウンターウェイトを有する場合に比べると、著しく程度が低いとは言え、クレーンの全重量を増すことになる。しかし、特に負荷又は半径が非常に大きいときには、本発明が提案する車載式クレーンについても、1以上の付加的なカウンターウェイトを用いるという選択も採り得る。このようなカウンターウェイトは、ともあれその目的のものであれば、例えば、本発明が提案する車載式クレーンの台車に接続された少なくとも1つの補助車両又は補助クレーンであってもよい。
【0020】
また、本発明が提案するように、安定化システムがタワーに対して設けられる。安定化システムは、好ましくは、タワーの周りに配置された複数の土台安定装置を備えている。
【0021】
タワーと安定化システムの自然重量は、付加的なカウンターウェイトを無用にするように、互いに適合するものであってもよい。
【0022】
本発明の別の好ましい実施の形態の一例では、固定(アンカー:anchor)システムがタワーに対して設けられている。アンカーシステムを用いることによりタワーの曲げ強さを高めることができる。なぜなら、特定の高さにあるタワーに作用するアンカーシステムによって、限界曲げ負荷を1/Lに基づいて計算する場合に考慮されるタワーの実効長さLが減少するからである。
【0023】
アンカーシステムは、好ましくは、タワーの周りに配置された複数のアンカー要素を備えており、その各々は、特定的には、支持線の形態で設けられている。
【0024】
アンカーシステムによって、タワーの耐負荷容量を著しく高めることができるということは、本発明が提案する概念の利点の1つである。なぜなら、下部で回転する構造ではアンカーシステムを用いることが不可能であるのに対し、竪形のタワーを有する本発明の構造では、上部旋回システムの形態が採られているからである。
【0025】
もしもタワーが伸縮多段式のタワーであれば、アンカーシステムはタワーの1以上の段に作用するのが望ましい。ここで、タワーの段は、箱又は段とも称される。アンカーシステムは、タワーの幾つかの段に設けられ、しかもタワーに沿って互いに離れた部位に設けられる方が、特に有利である。なぜなら、それによってタワーの実効的な長さが特に著しく短くなり、タワーが耐えることのできる最大曲げ応力が増大するからである。その場合に、アンカーシステムは、特にタワーの各段の上端領域に作用するようにしてもよく、そうすることで、タワーが収縮する時にも作用することが可能となる。本発明の範囲内で、アンカーシステムは、タワーに沿って互いに離れた様々な位置に作用するように設けることが可能であるが、伸縮多段式ではないタワーに設けることも可能である。
【0026】
本発明の別の実施の形態においては、アンカーシステムが、少なくとも部分的にはタワー安定化システムに接続されている方が、特に有利である。それにより、アンカーシステムとして、地盤に係留する方式又は他の係留方式を、付加的に設けることを要しなくなる。但し、本発明は、タワー安定化システムに接続されたアンカーシステムに代えて、あるいはそれと共に、他のアンカーシステムを使用する可能性を排除するものではない。
【0027】
本発明の別の好ましい実施の形態では、能動的な(アクティブ:active)アンカーシステムがタワーに対して設けられている。この能動的なアンカーシステムは、タワーに作用する負荷による曲げモーメントに応じて、この曲げモーメントを補償するように駆動することが可能である。
【0028】
従って、この種の能動的なアンカーシステムは、特に、クレーンの動作中にタワーに発生する負荷に対して反応することが可能となる。なぜなら、アンカーシステムは、タワーに作用する曲げモーメントが補償されるように駆動されるからである。
【0029】
その場合に、アンカーシステムは、タワーの軸を基準として十字形又は星形の配置で使用されるのが望ましい。但し、アンカーシステムに関して、他の配置あるいは構成も原理上は使用可能である。
【0030】
好ましくは、制御及び/又は調整装置が設けられており、この制御及び/又は調整装置は、クレーンの動作中に必要となるあらゆる補償の度合いと方向とを決定し、それによってアンカーシステムを駆動する。
【0031】
これにより、負荷の大きさの変化と、特にジブが旋回している時に負荷による曲げモーメントの方向に生じる変化との双方に応じて、アンカーシステムを駆動することにより、これらの変化に直ちに対応することが可能となる。
【0032】
制御及び/又は調整装置は、タワーの傾斜を測定するための傾斜センサを有していてもよい。それにより、鉛直方向又はタワーの支持台に対するタワーの軸の傾斜を検出することが可能となる。あるいは、水平方向に対するタワーの頭部又は上部キャリッジの基準平面の傾斜を検出することが可能となる。必要であれば、例えば、地盤の凹凸や土台安定装置の沈み込み等を許容するために、基準となる方向(鉛直又は水平)は補正することが可能である。アンカーシステムは、予め定められたタワーの傾きを常時維持するように駆動してもよく、それにより特に、クレーンの上部キャリッジの支持台が、水平に配向するように設けられることとなる点で、特徴的なものとなる。
【0033】
好ましくは、アンカーシステムは、荷重による曲げモーメントを補償するために、張力によってタワーに作用する。この場合に、アンカーシステムは、一端がタワーに作用し、他端がタワー安定化システムに作用するものであってもよい。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態では、アンカーシステムは、タワーの周りに配置され、互いに独立に駆動可能な複数のアンカー要素を備えている。この構成によれば、アンカーシステムを駆動することにより、クレーンの旋回位置とは無関係に、あらゆる方向に作用する曲げモーメントに対応することが可能となる。複数のアンカー要素は、十字形又は星形であることが望ましい。但し、原理上はあらゆる配置が可能であり、特定的には、アンカーシステムが作用するタワー安定化装置に応じて選択され、例えば「H」字形が選択される。
【0035】
本発明の別の実施の形態では、アンカー要素はタワーに直接に作用するものでなくてもよく、伸縮多段式のタワーの場合であれば、タワーの段に直接に作用するものでなくてもよい。それに代えて、タワーから突出するジブが各アンカー要素に対して設けられ、それにより、アンカー要素はタワーに作用するようにしてもよい。これら複数のジブは、格子の一部を構成するものであってもよい。
【0036】
本発明の特に実際的な実施の形態の1つでは、タワーは伸縮多段式であり、タワー安定化システムは、複数の土台安定装置を備えている。そして、これら複数の土台安定装置は、特に十字形又は星形模様に配置されており、アンカーシステムの複数のアンカー要素の各々は、一端がタワーの段に作用し、他端が土台安定装置に作用する。
【0037】
好ましくは、各アンカー要素は、張力システム、特に、引張シリンダを備えており、張力システムは、アンカー要素とタワーとの間、又は、アンカー要素とタワー安定装置との間に、配置されている。
【0038】
各張力システムは、距離測定システムを備えており、この距離測定システムによって、予め定められた基本位置を基準として、張力システムの位置を測定することが可能となっている。
【0039】
本発明がさらに提案するように、ジブがカウンター・ジブを備えている。このカウンター・ジブは、好ましくは、自身によってタワーに作用する曲げモーメントを変えるように調節可能である。この目的のために特に、カウンター・ジブは、自身の長さが調節可能であってもよく、例えば伸縮多段式であってもよく、及び/又は、タワーに対して自身の角度を調節可能なように構成してもよい。
【0040】
カウンター・ジブを備えることにより、負荷による曲げモーメント、すなわち吊り上げられる負荷を支持するジブを介してタワーに作用する曲げモーメントを、少なくとも部分的には補償することが可能となる。これによって、特に、少なくとも大概的には曲げモーメントのない状態に、タワーが維持される。
【0041】
特に好ましい実施の形態の一例では、制御及び/又は調整装置が設けられ、それによって、カウンター・ジブが、常に負荷によるモーメントの関数として調節可能となっている。その結果、タワーはまた、クレーンが動作する間、ジブの負荷の状況に変化があっても、例えば、長さやタワーに対する角度を調節するなど、ジブの負荷の状況の変化に応じてカウンター・ジブの設定を自動的に変えることにより、常に実質的に曲げモーメントのない状態に維持可能である。
【0042】
本発明の別の実施の形態の一例では、特に鉢状又はコップ状のタワー取付部が、タワーの下端部に対して設けられており、しかも互いに離れた2台の台車部を接続している。その結果、タワー取付部は、台車の一体的な部品を構成する。タワーが輸送姿勢にある時には、タワーの下端部はタワー取付部から離れているのが望ましい。このようにタワーとタワー取付部とが分離していることによって、タワーを台車上に横倒しにした状態で輸送することが可能となる。
【0043】
また好ましくは、タワー取付部は、タワー安定化システムに接続されている。それにより、タワー取付部は、同時に自身を支持する手段としても用いることが可能となる。
【0044】
また本発明が提案するように、タワーは、自己起立式である。この場合に、本発明の好ましい実施の形態では、タワーを立ち上げる手段として、長さが調節可能な少なくとも2つの調節機構が設けられており、これら少なくとも2つの調節機構は、タワーに沿って互いに離れた複数の部位に作用するようになっている。
【0045】
特に、タワーは、タワーの下端部から離れた部位に作用する第1の調節機構によって、実質的に水平な輸送姿勢から傾斜姿勢へ転換することができ、タワーの下端部の領域に作用する第2の調節機構によって、傾斜姿勢から起立した作業姿勢へ転換することができる。この場合にタワーは、自身の下端部の領域を強制的に案内されるのが望ましく、特に、少なくとも概略的には水平方向に案内されるのが望ましい。
【0046】
本発明が提案する立ち上げの原理によれば、タワーは、台車に対して静止している軸の周りに単に回動するだけでなく、好ましくは、水平方向に延びるような平行移動が、タワーの回動運動に重畳される。このことは、垂直な作業姿勢のために必要かあるいは望ましいタワー下端部の位置を、固定することを要せずして、台車を基準としたタワーの輸送姿勢が、輸送の条件に最適に適合し得ることを意味している。
【0047】
「車載」とある程度表現し得る機構が、タワーの立ち上げのために設けられているという事実があっても、それによって、特に、補助クレーンの形態を有する外部の補助機構の支援を受けることによってタワーを立ち上げる、という選択が排除されるわけではない。このことは、本発明が提案する車載式クレーンが、非常に高い揚げ能力を有するように設計された場合には、特に言えることである。
【0048】
本発明の別の実施の形態の一例では、タワーはジブが嵌め合いにより取り付けられた状態で、立ち上げられるものであってもよい。タワーとジブの寸法に応じて、自力のみで、あるいは、外部の補助機構の支援を得て、タワーはジブが取り付けられた状態で立ち上げることができる。
【0049】
特に好ましくは、本発明の別の実施の形態の場合のように、特に、剛性のある(リジッド:rigid)操舵アームの形態をなす保持機構が設けられており、この保持機構は、タワー上に嵌め合いにより取り付けられた角度調節可能なジブを、立ち上げ作業の間にタワーの傾斜とは無関係に、少なくとも概略水平の姿勢に保持するようになっている。それにより、タワーを立ち上げる過程において、タワーとジブとの間の角度が開いてゆくにも拘わらず、タワーに取り付けられたジブが、台車に対して望ましい姿勢を、少なくともある限度内で維持することを、タワーが実質上自発的に保証することとなる。ジブについてこの望ましい姿勢は、水平姿勢とは異なるものであってもよい。但し、ジブにとっては実質的に水平な姿勢が望ましい。
【0050】
本発明の別の望ましい実施の形態では、一方では特に平床式貨物車両の形態で設けられた台車上に配置されたタワーと、他方ではジブ、特にこのジブを組み込んでいる上部キャリッジとが、各々、路上走行を特に認可された別個の輸送体を備えている。
【0051】
本発明が提案する概念に基づくならば、タワーとジブ又は上部キャリッジとが各々、現行の交通法規を遵守しつつ、全体として路上輸送の認可が得られる大きさであれば、それで足りるということが明らかとなった。タワー安定化システム、タワーアンカーシステム、及び立ち上げ作業を支援するのに用いられる保持機構など、選択可能なものとして付加的に設けられる如何なるクレーン部品も、別の単一の輸送体としてグループ分けすることができる。
【0052】
従って、本発明が提案する車載式クレーンは、運搬能力又は揚げ能力に比して全重量が軽いために、3台の個別の輸送体のみによって、路上輸送することができる。このことは、それぞれの派遣先へ車載式クレーンを輸送することに関与する資材補給の労苦が、最小限に抑えられ、同時に、立ち上げ作業の間、地盤への損傷というリスクを比較的低く抑えつつ、現場で必要とする空間の広さが最小限に抑えられることを意味している。
【0053】
以上の通り、本発明によれば、従来においてクレーンを用いることにより発生していた費用を、特に大型の風力タービンを建設する際に、著しく抑えることが可能となる。
【0054】
以下に、添付された図面を参照しつつ、例に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図2】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図3】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図4】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図5】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図6】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図7a】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図7b】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの実施の形態の一例を示す図である。
【図8】本発明提案の車載式クレーンの別の実施の形態の一例を示す図である。
【図9】図8に例示する車載式クレーンの変形例を示す図である。
【図10】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの別の実施の形態の一例を示す図である。
【図11】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの別の実施の形態の一例を示す図である。
【図12】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの別の実施の形態の一例を示す図である。
【図13】異なる立ち上げ段階にある本発明提案の車載式クレーンの別の実施の形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明により提案される車載式クレーンの一部を3つの異なる角度から見た図である。図1に例示される部分は、路上走行を認可された第1の輸送体の一部であり、この第1の輸送体は、不図示の連結式の貨物自動車と、台車とを備えている。台車は、連結式の貨物自動車に連結可能な前方台車部23aと、後方台車部23bとを有している。2つの台車部23a,23bを互いに接続する鉢状のタワー取付部21が、当該台車に一体的に固定されている。
【0057】
タワー取付部21には、タワー安定化システムを取り付けるための複数の接続ポイント41が設けられている。これについては、後に詳述する。タワー取付部21は、タワー11の下端部を収納するのに用いられる。このタワー11は、図1では、輸送姿勢である横倒しの状態で図示されている。この輸送姿勢でタワー11は、タワー取付部21を跨いで横断的に延び、台車23a、23bの上に横たわっている。
【0058】
タワー11は伸縮多段式であり、ここに一例として図示する実施の形態では、タワーの5本の段部31、33、35を有している。タワーのこれらの段部31、33、35は、箱又は節とも称され、タワー下段部又は外箱35と、4本のタワー内側段部又は内箱31、33とからなる。タワー内側段部31は、最上部に位置し、その自由端部にはヘッド45を有している。このヘッド45上には、ジブを有する構成部品が、嵌め合いにより取り付け可能となっている。この構成部品は、図1には図示されていないが、以下において、上部キャリッジとも称される。
【0059】
2つの調節機構27、29が、タワー11を立ち上げるのに用いられる。調節機構27、29については、後に詳述する。また、タワー11の立ち上げについても、後に詳述する。
【0060】
第1の調節機構27は、ピストン/シリンダ対を有しており、一端が後方台車部23bに回動可能に連結し、他端がタワー下段部35上の下端部からある距離をもった部位、しかも横倒しの輸送姿勢で台車から遠く離れた上面に、回動可能に連結している。
【0061】
第2の調節機構29は、横倒し状態のタワー11と実質的に平行に延びたピストン/シリンダ装置を有している。そのシリンダは、前端部において前方台車部23a上の固定点59に連結している。収縮した状態では、ピストン/シリンダ装置29のピストンの前端部61は、タワー取付部21の後端部の領域内に位置している。図1には図示しないが、くびき型の引張りリンク機構により、ピストンの前端部61は、タワー下端部に接続されており、しかも、図示されている輸送姿勢で、台車に対向する底面に接続されている。従って、ピストンを伸張させることにより、タワー下端部は、タワー取付部21を横切るように後方に引っ張ることができる。これについては、後に詳述する。
【0062】
図1には示していないが、剛性有る操舵アームの形状をなす保持機構が、タワー11を立ち上げる手段として設けられている。それについても同様に、後に詳述する。この操舵アームは、タワー11を立ち上げるときに、その一端がピストン前端部61に取り付けられ、他端がヘッド45上に位置する上部キャリッジを支持する。
【0063】
タワー下端部にはさらに、実質的に水平に延びる強制案内部材43が設けられている。この強制案内部材43は、距離をもって平行に延在する2つのスロットまたは細長状の孔を有している。これらの孔の中には、孔と協働する案内用突起によって、タワー下端部が内側から入っている。
【0064】
図2は、ピストン前端部61に接続された形態での上記操舵アーム25を示している。操舵アーム25は、タワー11と平行に延びており、タワー11が収縮した状態にあるときには、ヘッド45の頭上に突出した端部領域が、上向きに屈曲している。
【0065】
図2は又、4つの伸張可能な土台安定装置17を図示している。この土台安定装置17は、車載式クレーン及びそのタワー11のための星形安定化システムを形成している。
【0066】
土台安定装置17は、既に述べた接続ポイント41において、タワー取付部21に接続されている。タワー取付部21から離れたそれらの端部領域において、土台安定装置17の各々は、一端に安定脚49を有しており、上部に2台のウィンチ47を有している。ウィンチ47は、例えば爪又は例えば留め金の原理に基づく制動機構を有している。ウィンチ47は、タワーアンカーシステムの一部をなすものであり、それについては、後に詳述する。
【0067】
図3は、上部キャリッジ39が嵌め合いにより取り付けられたときの本発明が提案する車載式クレーンを図示している。上部キャリッジ39は、不図示の別の貨物自動車によって輸送されるものであり、路上走行を認可された第2の輸送体と協働する。上部キャリッジ39は、ジブ13を有しており、このジブ13は、伸縮多段式のマストを有している。このマストは、ここに一例として図示する実施の形態では、マストの4本の段部65、67、69、すなわち、下部ブロック及びプーリを有するマスト上段部65、他の2本の内側段部又は内箱67、及びマスト下段部69を有している。マストの下段部69は、引き込み(ラフィング:luffing)装置55及び旋回装置15に接続されている。ここに一例として図示する実施の形態では、上部キャリッジ39は、ジブ13に加えてクレーン運転台53を有している。これは、吊り上げ装置の他に、旋回装置15及び引き込み装置55を運転するための運転装置である。
【0068】
剛性を有する操舵アーム25は、その屈曲した端部領域の自由端において、上部キャリッジ39の後端部領域に回動可能に連結している。
【0069】
図3に示されている姿勢では、上部キャリッジ39は、一端のみがヘッド45に関節構造で連結されており、それにより、軸73の周りに回動可能となっている。その結果、タワー11が立ち上がっているときに、一方の上部キャリッジ39及びジブ13と、他方のタワー11との間で角変位が可能となっている。これについては、後に詳述する。
【0070】
上部キャリッジ39が嵌め合いにより取り付けられた状態でタワー11を立ち上げるために、タワー11は、初めに水平な輸送姿勢から、第1の調節機構27を用いて、図4に示すように、タワー11が例えば鉛直から約45°に傾斜した傾斜姿勢へ変えられる。ここまでは、タワー11が立ち上がる動きは、タワー下端部のための強制案内部材43の一端における軸71の周りの純粋な回動運動である。従って、図4に示す姿勢では、第2の調節機構29は、未だ収縮した状態にある。図4は、引っ張り棒リンク機構すなわちヨーク81を図示しているが、その大半は図1〜図3に図示されている。
【0071】
剛性を有する操舵アーム25は、タワーが立ち上がってゆくときにタワーの傾斜角度が変化するにも拘わらず、ジブ13を少なくとも実質的には水平の姿勢に常時保持する。タワー11の立ち上げに寄与する力とモーメントとを得るために、図4に図示されるジブ13の伸縮多段式のマストの内側段部の束が伸張させられる。その結果、ジブ13又は上部キャリッジ39の重心は、上部キャリッジ39とタワー11との間の回動軸73から離れた前方へ移動する。
【0072】
図5に示す状態で、タワー11は完全に起立した状態にあり、このときタワー11は、鉛直方向に延びている。タワー11は、第2の調節機構29を用いて、ピストンを伸張させることによって、図4に示す傾斜した姿勢から作業姿勢へ移される。その結果、一方では、タワー下端部が引っ張り棒リンク機構すなわちヨーク81によって、タワー取付部21上へと引っ張られる。その後、タワー下端部は、例えばボルト締めによってタワー取付部21に固定される。他方では、剛性を有する操舵アーム25の下端が、同様に、台車の運転方向を基準にした後方に押される。
【0073】
タワー11の立ち上げに能動的に関与する全ての回動軸の互いに相対的な位置と、同じく立ち上げに関与する全ての部材の長さは、発明が提案するように、互いに適合したものとなっている。それにより、タワー11が立ち上げられているときに、タワー11に回動可能に取り付けられた上部キャリッジ39へ、タワー11により操舵アーム25を介して伝えられる制御運動によって、上部キャリッジ39は、立ち上げ作業の全体を通じて、タワーの傾斜角とは無関係に、少なくとも実質的には水平の望ましい姿勢に常時保持される。
【0074】
タワー11が一旦垂直な作業姿勢に移行したならば、図6に示すように、星形のアンカーシステム19が嵌め合いにより取付けられる。伸縮多段式のタワー11が未だ収縮したままの状態で、4台の土台安定装置17の各々について2本の支持線19が、土台安定装置17に取り付けられたウィンチ47に巻き付けられる。これら2本の支持線19の自由端は、それぞれタワーの別の段部に取り付けられ、特に、それぞれについて、タワーの段部の上端縁領域に取り付けられる。
【0075】
支持線19を締め付ける締め付け機構は、土台安定装置17に組み込まれている。
【0076】
上部キャリッジ39を嵌め合いにより取り付けた後に、タワー11が垂直姿勢に移行し、上述の要領で保持及び支持されると、タワー11は、図7aに示すように、剛性の有る操舵アーム25と上部キャリッジ39との間の接続を解放することにより、作業に応じた望ましい作業長さまで伸張可能となる。支持線19は、タワーの高さが増進するのに応じてウィンチ47から繰り出され、その結果、常に張力を有する状態に保持することが可能となる。
【0077】
タワー11が立ち上げられている時と同時に、あるいは、タワー11が作業に応じた作業長に到達した後に、引き込み装置55によってジブ13の伸縮多段式のマストを、伸張させることができ、かつタワー11に相対的な望ましい角度位置へ動かすことができる。それによって、マストの先端を、高さと半径とに関して、望ましい作業位置へ移動させることができる。
【0078】
本発明が提案する車載式クレーンは、このようにして作業準備完了となる。
【0079】
図7bは、本発明が提案する車載式クレーンが、建設すべき風力タービンのタワー57の直近にある場合を概略的に例示する図である。本発明が提案する車載式クレーンの主要な利点は、垂直なタワー11があるために、クレーンを風力タービンのタワー57の比較的近くに設置することができるという点にある。
【0080】
図8は、例として上述した実施の形態から変形された車載式クレーンを図示するものである。この変形は、付加的なカウンター・ジブ37が設けられている点にある。ジブ13と同様に、カウンター・ジブ37は伸縮多段式のマストを有しており、その角度は、引き込み装置75によりタワー11に対して調節可能となっている。カウンター・ジブ37には更に、そのマストの先端からブロックプーリを介して吊り下げられているバラスト77が設けられている。
【0081】
バラスト77を有するカウンター・ジブ37は、吊り上げ荷を運搬するジブ13を介してタワー11に作用する、荷重による曲げモーメントを、対応する逆方向モーメントによって補償することのできるように寸法が決められている。カウンター・ジブ37は、その長さと角度とを調節することが可能であるために、ジブの側における変動する荷重とモーメントの状況に適応することが可能である。
【0082】
本発明が提案する車載式クレーンは、ジブ13に作用する瞬間的な荷重又は瞬間的なモーメントを、適切なセンサー系を用いて測定する装置を備え、それに基づいて、タワー11を、少なくとも大概的には曲げモーメントのない状態、すなわち、実質的に垂直方向のみの圧縮荷重が印加される状態に保持するように、カウンター・ジブ37を調節するのが望ましい。それにより、カウンター・ジブ37についての設定を、実際上の遅延無しで変えることにより、ジブ側の変化に対応することが可能となる。
【0083】
図9に例示する車載式クレーンは、図8に例示したものとは、単に、付加的な支持線79が、ジブ13とカウンター・ジブ37との間に設けられている点においてのみ異なっている。支持線79の長さは、ジブ17とカウンター・ジブ37との間の角度の関数として変えることができ、カウンター・ジブ37上の別個のブロックプーリによって変えることが可能である。支持線79は、引き込み装置55、75に作用する負荷を緩和する。
【0084】
本発明が提案する車載式クレーンの半径は、各吊り上げ作業に要する大きさに制限することができ、それゆえに、竪形のタワー11があるために必要最小限の大きさに制限することができる。従って、本発明が提案する車載式クレーンは、従来のクレーンが必要としたクレーン半径に従うことを要しない。このことによって、タワー11の自重を中心バラストとして用いて、従来の車載式クレーンに用いられる通常のカウンターウェイトを、少なくとも部分的には無用とすることが可能となる。そして、必要であれば、比較的軽いカウンターウェイトのみを、タワー11の安定化システム17に設けることが可能である。本発明が提案する上部旋回の方式は、許容曲げモーメントの観点から、タワー11の耐負荷容量を高めることのできる支持線19を提供することができ、それにより付加的なカウンターウェイトを余計なものとすることができる。竪形のタワー11それ自体によって、起立状態の安定性が既に達成されているために、タワー11の安定化システム17のために、仮に必要であったとしても、カウンターウェイトは比較的軽いもので足りる。
【0085】
以下に説明する例外的な相違点を除いて、本発明が提案する車載式クレーンについて、図10〜図13に例示する他の実施の形態は、例として上述した実施の形態に対応するものである。従って、対応する構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0086】
例として上述した車載式クレーンの実施の形態で設けられていた剛性の有る操舵アーム25は、実施の形態の他の例では、別の保持システム、すなわち、平行に延びる2本の支持ケーブル87に置き換えられる。支持ケーブル87は、上部キャリッジ39の後端部領域とタワー11の下端部との間に張られている。支持ケーブル87が、タワー11の立ち上げ時に機能する仕方は、剛性の有る操舵アーム25の場合と同じである。支持ケーブル87により、上部キャリッジ39は、立ち上げ作業の全体を通じて、すなわちタワーの傾斜角とは無関係に、少なくとも実質的には水平な望ましい姿勢に常時保持される。
【0087】
上述した実施の形態と比べた別の相違点は、支持線19の方式である。この別の実施の形態では、能動的な十字形の支持線19が設けられている。この支持線は、4つの別個のアンカー要素19を備えており、このアンカー要素19は、例えば折り畳み可能な支持棒の形態をなしている。図10に例示するように折り畳まれた輸送形態では、各支持棒19は、土台安定装置17の上に設けられている。
【0088】
支持棒19の一端は、土台安定装置17の自由端に設けられた引張シリンダ85に接続されている。各支持棒19の他端は自由となっており、クレーンを立ち上げる過程で、格子部材の形態を有するジブ83によって、タワー上段部31に取り付けられる(図11)。タワー11が一旦伸張されると(図12)、今や完全に展開され、引き延ばされた支持棒19はそれぞれ、タワー上段部31に取り付けられた格子状ジブ83と、協働する土台安定装置17に搭載された引張シリンダ85との間で、動くことになる。
【0089】
引張シリンダ85を動作させることにより、支持棒19と格子状ジブ83とを介して、タワー11の上端に張力が印加することができる。この張力は、一致した方向に互いに関連し合う格子状ジブ−土台安定装置の対83、17によって予め定められた方向に、タワー11を「引っ張る」ように作用する。個々の支持棒19が十字形または星形に配置されているために、タワー11は任意の方向に引っ張ることが可能となっている。引張シリンダ85は互いに個別に駆動することが可能であり、その結果、引張シリンダ85によってタワー11に作用する全ての張力を重ね合わせることにより、特に予め定められた張力を、大きさおよび方向に関して選択的に、タワー11に印加することが可能である。
【0090】
本発明においては、タワー11に張力を印加ことが可能であるために、クレーンの作動中にタワー11に作用する、負荷による曲げモーメントを補償することができる。
【0091】
図示を略しているが、この目的のために制御及び/又は調整装置が設けられる。それによって、引張シリンダ85を互いに独立に駆動することができる。引張シリンダ85は、好ましくは上部キャリッジ39の中央油圧システムに接続される。図10〜図13に図示した実施の形態とは異なり、引張シリンダ85は、支持棒19の上端に、すなわち支持棒19と、協働する格子状ジブ83の自由端との間に、それぞれ配置してもよい。これにより、引張シリンダ85と上部キャリッジ39の油圧系統との接続が簡素化される。
【0092】
制御及び/又は調整装置はさらに、クレーンが動作している際に実際のタワーの傾斜状態を測定可能な傾斜センサを、引張シリンダ85のために有している。傾斜センサは、好ましくは上部キャリッジ39上に搭載される。その場合には、制御及び/又は調整装置は、上部キャリッジの支持台の水平な配向を達成すべく機能するように設計される。各引張シリンダ85には、距離計測システムが設けられる。このシステムは、引張シリンダ85のゼロ位置が、上部キャリッジ39の上記水平配向に対応することを保証することによって、傾斜センサによって自動的に動きを特定するための基準点としての役割を果たす「ゼロ位置」を、常時見出すことが可能となっている。
【0093】
本発明が提案する能動的なアンカーシステムは、タワー11に作用する負荷による曲げモーメントの変化によって引き起こされるタワーの傾斜の変化に、直ちに対応するようになっている。この場合に、傾斜センサは、自身と関係のある傾斜の変化を、中央制御及び/又は調整装置に通知する。対応する姿勢検出信号は、傾斜の変化の量と方向とに基づいて、引張シリンダ85のために計算されて、送信される。それに基づいて、タワー11を反対方向に「引っ張る」ように、引張シリンダ85が駆動される。
【0094】
タワーの傾斜の変化は、負荷の大きさの変化、上部キャリッジ39のジブ13の傾斜の変化、及び/又は上部キャリッジ39の回転位置の変化によって生じる。
【0095】
本発明が提案する補償制御システムは、たとえ上部キャリッジ39が回転している場合であっても、補償する方向への必要な変化を引き起こすのに十分に迅速に動作する。なぜなら、引張シリンダ85は、迅速な姿勢制御の動きをもたらすために、ある程度、「実時間」で駆動されるからである。
【0096】
もしもジブ13が、土台安定装置−格子状ジブの対17、83の上方にある場合には、タワー11に作用する張力は、実際上、対角線上の反対側の土台安定装置−格子状ジブの対17、83の間に張られた棒19のみによって、反対方向に印加される。この場合、隣接する2つの引張シリンダ85はそれぞれ、実質的に横方向の安定性を付与する機能のみを果たすこととなる。一方、もしも上部キャリッジ39のジブ13が、2本の支持線の間にある場合には、後方にある2台の引張シリンダ85は、その時の曲げモーメントを補償するために、ともにタワー11を引っ張るように動作しなければならない。これら2台の引張シリンダ85が引っ張る力は、結果として発生する張力が、曲げモーメントを少なくとも減らし、上部キャリッジ39を予め定められた望ましい姿勢へ、少なくとも実質的には戻すように、大きさが決められなければならない。
【0097】
従って、荷重による曲げモーメントを補償するために本発明が提案するこの方法は、タワー11の周りに配置され、互いに独立に駆動することのできる複数の能動的な支持機構17、19、83、85を用いることにより、効を奏する。
【0098】
例として示した実施の形態では、支持棒リンク機構19は、剪断接合の要領で折り畳まれる。輸送モードにある支持線のために、あらゆる構成を選択することができる。
【0099】
支持棒あるいは棒リンク機構の代わりに、支持ケーブルを設けることも可能である。
【0100】
格子状ジブ83は、例えば不図示の補助クレーンを用いて、タワー上段部31に固定してもよい。
【0101】
図13は、上に例示した実施の形態による本発明提案の車載式クレーンについて、可能な輸送形態の1つを例示している。必要な輸送体は4台のみである。その1台は上部キャリッジ39を輸送し、別の1台はタワー11を輸送し、残る2台は2台の土台安定装置17を輸送する。これらの土台安定装置17には、協働する支持棒19と格子状ジブ83とが含まれている。
【0102】
本発明は、以上の通り、車載式クレーンを提案するものであり、当該車載式クレーンは、その運搬力と揚げ能力に対して全重量が低く、広い空間を要せず、従って、比較的迅速かつ簡単に路上輸送し、現場で動作の準備を整えることができるものである。それによって、クレーンの使用に要するコストを、大きく削減することができる。
【0103】
その設計に関し、特に部品の寸法と重量に関して、本発明が提案する車載式クレーンは、原理上は、あらゆる要請に適合するように拡縮することができる。本発明が提案する車載式クレーンは、好ましくは、風力タービンを建設するのに適するように設計される。
【0104】
既存の風力タービンを建設する場合であって、羽根中心の高さ約85〜100mであって、吊り上げるべき荷が最大約52tである場合には、ある実施の形態の可能性ある一例では、タワー11の重量は約60tとなり、その長さは伸張状態で約70mとなる。また、上部キャリッジ39の重量は約60tとなり、そのジブ13の長さは伸張状態で約60mとなる。星形の安定化システム17の安定化のための幅、すなわち、土台安定装置の伸張状態での長さは、各々約18mである。
【0105】
既に存在する計画によれば、未来の風力タービンでは、羽根中心の高さが約145mであり、240tもの重量の荷を吊り上げる必要がある。このような風力タービンは、本発明が提案する車載式クレーンを用いて、上述した設計や拡縮に基づいて、何ら問題なく建設することが可能である。もしも必要であれば、図8又は図9を参照して説明したカウンター・ジブ37を組み込んだ変形例を用いてもよい。
【0106】
本発明の好ましい態様を、以下に述べる。
[1]特に移動式、自走式又はクローラ式のクレーンである車載式クレーンであって、 竪形のタワー11)と当該タワー(11)に取り付けられたジブ(13)とを備えた上部旋回システムの形態で設けられた上部構造を備えている、ことを特徴とする車載式クレーン。
[2]前記ジブ(13)は前記タワー(11)に対して傾斜している、ことを特徴とする第1の態様に記載の車載式クレーン。
[3]前記ジブ(13)は、長さが調節可能であり、好ましくは、伸縮多段式であり、かつ/又はその角度がタワー(11)に対して調節可能である、ことを特徴とする第1又は第2の態様に記載の車載式クレーン。
[4]前記タワー(11)は、長さが調節可能であり、好ましくは伸縮多段式であることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[5]前記タワー(11)の固有の重量が、カウンターウェイトとして設定されていることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
【0107】
[6]安定化システム(17)がタワー(11)に対して設けられ、前記安定化システムは、好ましくは前記タワー(11)の周りに配置された複数の土台安定装置を備えることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[7]前記タワー(11)の固有の重量と前記安定化システム(17)とが、付加的なカウンターウェイトを要しないように、互いに適合している、ことを特徴とする第6の態様に記載の車載式クレーン。
[8]アンカーシステム(19)がタワー(11)に対して設けられ、前記アンカーシステムは、好ましくは、前記タワー(11)の周りに配置された複数のアンカー要素を備えることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[9]前記タワー(11)は伸縮多段式であり、前記アンカーシステム(19)はタワーの1以上の段部(31、33、35)に作用する、ことを特徴とする第8の態様に記載の車載式クレーン。
[10]前記アンカーシステム(19)は、少なくとも部分的に、タワー安定化システム(17)に係留されている、ことを特徴とする第8又は第9の態様に記載の車載式クレーン。
【0108】
[11]能動的なアンカーシステム(19)が前記タワー(11)に対して設けられており、前記能動的なアンカーシステムは、前記タワー(11)に作用する負荷による曲げモーメントの関数として、前記曲げモーメントを補償するように駆動可能であることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[12]前記アンカーシステム(19)は、前記タワーの軸を基準として十字形又は星形に配置されている、ことを特徴とする第11の態様に記載の車載式クレーン。
[13]制御及び/又は調整装置が設けられており、当該制御及び/又は調整装置は、必要な補償の度合いと方向とを常時測定し、それによって前記アンカーシステム(19)を駆動することを特徴とする、第11又は第12の態様に記載の車載式クレーン。
[14]前記制御及び/又は調整装置は傾斜センサを有する、ことを特徴とする第13の態様に記載の車載式クレーン。
[15]前記アンカーシステム(19)は、前記負荷による曲げモーメントを補償するために、引張力によって前記タワー(11)に作用する、ことを特徴とする第11から第14の態様の何れかに記載の車載式クレーン。
【0109】
[16]前記アンカーシステム(19)は、一方では前記タワー(11)に作用し、他方では前記タワー安定化システム(17)に作用する、ことを特徴とする第11から第15の態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[17]前記アンカーシステムは、前記タワー(11)の周りに配置され、互いに独立に駆動可能な複数のアンカー要素(19)を備えている、ことを特徴とする第11から第16の態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[18]前記タワー(11)から突出するジブ(83)が、各アンカー要素(19)に対して設けられ、前記ジブ(83)は、好ましくは、格子状部品の形態で設けられており、前記ジブ(83)によって前記アンカー要素(19)が前記タワー(11)に作用する、ことを特徴とする第17の態様に記載の車載式クレーン。
[19]前記タワー(11)は伸縮多段式であり、前記タワー安定化システムは、複数の土台安定装置(17)を備えており、前記タワー安定化システムは、特に、十字形又は星形に配置されており、前記アンカーシステムの複数のアンカー要素(19)の各々は、一方でタワーの段部(31)に作用し、他方で土台安定装置(17)に作用する、ことを特徴とする第11から第18の態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[20]各アンカー要素(19)は、引張機構(85)、特に、引張シリンダを備えており、前記引張機構(85)は、前記アンカー要素(19)と前記タワー(11)との間、又は、前記アンカー要素(19)とタワー安定装置(17)との間に、配置されている、ことを特徴とする第17から第19の態様の何れかに記載の車載式クレーン。
【0110】
[21]各引張機構(85)は、距離測定システムを備えており、当該距離測定システムによって、予め定められた基本位置に対する前記引張機構(85)の位置を測定することが可能となっている、ことを特徴とする第20の態様に記載の車載式クレーン。
[22]前記ジブ(13)はカウンター・ジブ(37)を備えており、当該カウンター・ジブ(37)は、好ましくは、自身によってタワー(11)に作用する曲げモーメントを変えるように調節可能であり、特に、自身の長さが調節可能であって、好ましくは伸縮多段式であり、及び/又は、前記タワー(11)に対して自身の角度を調節可能であることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[23]負荷による曲げモーメントが、前記カウンター・ジブ(37)によって補償可能であり、好ましくは、前記タワー(11)が少なくとも大概的には曲げモーメントのない状態となるように補償可能であって、好ましくは制御及び/又は調整装置が設けられており、それによって前記カウンター・ジブ(37)が、各瞬間の負荷によるモーメントに応じて調節可能である、ことを特徴とする第22の態様に記載の車載式クレーン。
[24]特定的には鉢状又はコップ状のタワー取付部(21)が、前記タワー(11)の下端部に対して設けられており、前記タワー取付部(21)は、互いに離れた2台の台車部(23a、23b)を接続するものであり、前記タワー(11)が輸送姿勢にある時に、前記タワー(11)の下端部は前記タワー取付部(21)から離れていることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[25]前記タワー取付部(21)は、タワー安定化システム(17)に接続されている、ことを特徴とする第24の態様に記載の車載式クレーン。
【0111】
[26]前記タワー(11)は、自己起立式であることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[27]前記タワー(11)を立ち上げるために、長さが調節可能な少なくとも2つの調節機構(27、29)を備えており、当該少なくとも2つの調節機構(27、29)は、タワー(11)に沿って互いに離れた複数の位置に作用することを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[28]前記タワー(11)は、前記タワー下端部から離れた部位に作用する第1の調節機構(27)によって、実質的に水平な輸送姿勢から傾斜姿勢へ移行することができ、前記タワー下端部の領域に作用する第2の調節機構(29)によって、前記傾斜姿勢から起立した作業姿勢へ移行することができ、前記タワー(11)は、好ましくは、それ自体の下端部の領域において強制的に案内されることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[29]前記タワー(11)は、前記ジブ(13)が嵌め合いにより取り付けられた状態、特に上部キャリッジ(39)が前記ジブ(13)を組み込んだ状態で、立ち上げ可能であることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
[30]特にリジッドな操舵アームの形態をなす保持機構(25)が設けられており、前記保持機構(25)は、前記タワー(11)上に嵌め合いにより取り付けられた角度調節可能なジブ(13)を、前記立ち上げの作業の間に前記タワーの傾斜とは無関係に、少なくとも概略水平の姿勢に保持することを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
【0112】
[31]一方では特に平床式の貨物車両の形態である台車(23a、23b)上に配置された前記タワー(11)と、他方では前記ジブ(13)、特に当該ジブ(13)を組み込んでいる上部キャリッジ(39)とが、各々、路上走行を特に認可された輸送体を備えていることを特徴とする、先行する態様の何れかに記載の車載式クレーン。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、運搬力あるいは揚げ能力を損なうことなく、可能な限り重量を小さくし、可能な限り迅速に運転の準備を整えることができるようにすることを企図した、車載式クレーンとして、有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
11 タワー
13 ジブ
15 旋回装置
17 安定化システム、土台安定装置
19 アンカーシステム、支持線、支持棒
21 タワー取付部
23a 前方台車部
23b 後方台車部
25 保持機構、リジッドな操舵アーム
27 第1の調節機構
29 第2の調節機構
31 タワー上段部
33 タワーの中間段部
35 タワー下段部
37 カウンター・ジブ
39 上部キャリッジ
41 接続ポイント
43 強制案内部材
45 ヘッド
47 ブレーキ機構付きウィンチ
49 安定脚
53 運転台
55 引き込み装置
57 風力タービンのタワー
59 固定点
61 ピストン前端部
65 マスト上段部
67 ジブ・マストの中間段部
69 マスト下段部
71 タワー下端部の回動軸
73 ジブとタワーとの間の回動軸
75 引き込み装置
77 バラスト
79 アンカーシステム
81 引張棒リンク機構、ヨーク
83 能動的アンカーシステムのためのジブ
85 引張機構、引張シリンダ
87 支持ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪形のタワー(11)と当該タワー(11)に取り付けられたジブ(13)とを備えた上部旋回システムの形態で設けられた上部構造を備え、
タワー取付部(21)が、前記タワー(11)の下端部に対して設けられており、前記タワー取付部(21)は、互いに離れた2台の台車部(23a、23b)を接続するものであり、前記タワー(11)が輸送姿勢にある時に、前記タワー(11)の下端部は前記タワー取付部(21)から離れている、
ことを特徴とする車載式クレーン。
【請求項2】
前記ジブ(13)は前記タワー(11)に対して傾斜している、ことを特徴とする請求項1記載の車載式クレーン。
【請求項3】
前記ジブ(13)は、伸縮多段式およびその角度がタワー(11)に対して調節可能の少なくとも何れか一方である、ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載式クレーン。
【請求項4】
前記タワー(11)は伸縮多段式である、ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項5】
前記タワー(11)の固有の重量がカウンターウェイトとして設定されている、ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項6】
安定化システム(17)がタワー(11)に対して設けられ、前記安定化システムは、前記タワー(11)の周りに配置された複数の土台安定装置を備える、ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項7】
前記タワー(11)の固有の重量と前記安定化システム(17)とが、付加的なカウンターウェイトを要しないように互いに適合している、ことを特徴とする請求項6記載の車載式クレーン。
【請求項8】
アンカーシステム(19)がタワー(11)に対して設けられ、前記アンカーシステムは、前記タワー(11)の周りに配置された複数のアンカー要素を備える、ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項9】
前記タワー(11)は伸縮多段式であり、前記アンカーシステム(19)はタワーの1以上の段部(31、33、35)に作用する、ことを特徴とする請求項8記載の車載式クレーン。
【請求項10】
前記アンカーシステム(19)は、少なくとも部分的に、タワー安定化システム(17)に係留されている、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の車載式クレーン。
【請求項11】
能動的なアンカーシステム(19)が前記タワー(11)に対して設けられており、前記能動的なアンカーシステムは、前記タワー(11)に作用する負荷による曲げモーメントの関数として、前記曲げモーメントを補償するように駆動可能である、ことを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項12】
前記アンカーシステム(19)は、前記タワーの軸を基準として十字形又は星形に配置されている、ことを特徴とする請求項11記載の車載式クレーン。
【請求項13】
制御装置及び調整装置の少なくとも何れか一方が設けられており、当該制御装置及び調整装置の少なくとも何れか一方は、必要な補償の度合いと方向とを常時測定し、それによって前記アンカーシステム(19)を駆動する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の車載式クレーン。
【請求項14】
前記制御装置及び調整装置の少なくとも何れか一方は傾斜センサを有する、ことを特徴とする請求項13記載の車載式クレーン。
【請求項15】
前記アンカーシステム(19)は、前記負荷による曲げモーメントを補償するために、引張力によって前記タワー(11)に作用する、ことを特徴とする請求項11から14の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項16】
前記アンカーシステム(19)は、一方では前記タワー(11)に作用し、他方では前記タワー安定化システム(17)に作用する、ことを特徴とする請求項11から15の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項17】
前記アンカーシステムは、前記タワー(11)の周りに配置され、互いに独立に駆動可能な複数のアンカー要素(19)を備えている、ことを特徴とする請求項11から16の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項18】
前記タワー(11)から突出するジブ(83)が、各アンカー要素(19)に対して設けられ、前記ジブ(83)は、格子状部品の形態で設けられており、前記ジブ(83)によって前記アンカー要素(19)が前記タワー(11)に作用する、ことを特徴とする請求項17記載の車載式クレーン。
【請求項19】
前記タワー(11)は伸縮多段式であり、前記タワー安定化システムは、複数の土台安定装置(17)を備えており、前記タワー安定化システムは、十字形又は星形に配置されており、前記アンカーシステムの複数のアンカー要素(19)の各々は、一方でタワーの段部(31)に作用し、他方で土台安定装置(17)に作用する、ことを特徴とする請求項11から18の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項20】
各アンカー要素(19)は、引張機構(85)を備えており、前記引張機構(85)は、前記アンカー要素(19)と前記タワー(11)との間、又は、前記アンカー要素(19)とタワー安定装置(17)との間に、配置されている、ことを特徴とする請求項17から19の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項21】
各引張機構(85)は、距離測定システムを備えており、当該距離測定システムによって、予め定められた基本位置に対する前記引張機構(85)の位置を測定することが可能となっている、ことを特徴とする請求項20記載の車載式クレーン。
【請求項22】
前記ジブ(13)はカウンター・ジブ(37)を備えており、当該カウンター・ジブ(37)は、自身によってタワー(11)に作用する曲げモーメントを変えるように調節可能であり、伸縮多段式および前記タワー(11)に対して自身の角度を調節可能、の少なくとも何れか一方である、ことを特徴とする請求項1から21の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項23】
負荷による曲げモーメントが、前記カウンター・ジブ(37)によって補償可能であり、制御装置及び調整装置の少なくとも何れか一方が設けられており、それによって前記カウンター・ジブ(37)が、各瞬間の負荷によるモーメントに応じて調節可能である、ことを特徴とする請求項22記載の車載式クレーン。
【請求項24】
前記タワー取付部(21)はタワー安定化システム(17)に接続されている、ことを特徴とする、請求項1記載の車載式クレーン。
【請求項25】
前記タワー(11)は自己起立式である、ことを特徴とする請求項1から24の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項26】
前記タワー(11)を立ち上げるために、長さが調節可能な少なくとも2つの調節機構(27、29)を備えており、当該少なくとも2つの調節機構(27、29)は、タワー(11)に沿って互いに離れた複数の位置に作用する、ことを特徴とする請求項1から25の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項27】
前記タワー(11)は、前記タワー下端部から或る距離をもって離間した部位に作用する第1の調節機構(27)によって、水平な輸送姿勢から傾斜姿勢へ移行することができ、前記タワー下端部の領域に作用する第2の調節機構(29)によって、前記傾斜姿勢から起立した作業姿勢へ移行することができ、前記タワー(11)は、それ自体の下端部の領域において強制的に案内される、ことを特徴とする請求項1から26の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項28】
前記タワー(11)は、前記ジブ(13)が嵌め合いにより取り付けられた状態、上部キャリッジ(39)が前記ジブ(13)を組み込んだ状態で、立ち上げ可能である、ことを特徴とする請求項1から27の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項29】
リジッドな操舵アームの形態をなす保持機構(25)が設けられており、前記保持機構(25)は、前記タワー(11)上に嵌め合いにより取り付けられた角度調節可能なジブ(13)を、前記立ち上げの作業の間に前記タワーの傾斜とは無関係に、水平の姿勢に保持する、ことを特徴とする請求項1から28の何れかに記載の車載式クレーン。
【請求項30】
一方では平床式の貨物車両の形態である台車(23a、23b)上に配置された前記タワー(11)と、他方では前記ジブ(13)を組み込んでいる上部キャリッジ(39)とが、各々、路上走行を認可された輸送体を備えている、ことを特徴とする請求項1から29の何れかに記載の車載式クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−184204(P2011−184204A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−119956(P2011−119956)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2007−543778(P2007−543778)の分割
【原出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(507182025)マニトウォク・クレイン・グループ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group Germany GmbH
【Fターム(参考)】