説明

車載撮影装置

【課題】対向車の前照灯により、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができる車載撮影装置を提供する。
【解決手段】前照灯3の点滅タイミングを発生する信号源1と、前照灯の点滅を制御する照明制御部2と、カメラ5の露光時間を制御するカメラ制御部4を備えて、信号源1は、点灯期間は一定で、所定期間ごとの点灯期間のタイミングを所定の量以上変化させた点滅タイミング信号Saを発生させ、前照灯3は信号源1の発生する点滅タイミング信号Saに同期して点滅し、カメラ5は前照灯3の点灯タイミングに同期して露光するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌の前照灯を制御しながら車外の状況を撮影する車載の撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌に搭載する前照灯の制御方法として、車輌に搭載したカメラで前方を撮影し、撮影した画像の明るさから、前照灯の点灯をパルス制御するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この前照灯の照射システムによれば、カメラにより前照灯の照射量を検出し、前照灯のスイッチング周期を変化させて、光量を調整することができる。
【0004】
また、ウィンカーを照明の補助手段として使用する撮影装置として、ウィンカーの点滅による明暗の変化の影響を受けないよう、ウィンカーが点灯しているタイミングに合わせて画像の取り込みを行うように構成したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この車両周辺視認装置によれば、ウィンカーの点滅による周辺の明暗の影響を受けず、ウィンカーを補助照明手段として車輌の周辺を撮影することができる。
【特許文献1】特開2004−189114号公報
【特許文献2】特開2002−254985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の照射システムは、前照灯のスイッチング周期と、カメラの露光周期の関係を考慮しておらず、スイッチング周期がカメラの露光周期と同期していない場合には、カメラの撮影フレームごとの露光量が不均一になり、画面の明るさが一定にならないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2記載の車輌周辺視認装置は、自車のウィンカーの点滅の影響は受けないが、他の車輌のウィンカーの点滅、あるいは自車または対向車のスイッチングする前照灯に対しては、カメラの露光周期が同期していないため、それらの影響を受け、画面の明るさが一定にならないという問題があった。
【0008】
さらに、車載用のカメラにおいては、対向車の前照灯がカメラの画面に入ると、撮影した画面が白飛びしてしまうか、あるいは自動絞りが対向車の前照灯の明るさに合わせて絞り込まれることにより、対向車の前照灯以外の被写体が暗くなり写らなくなってしまうという眩惑の問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、自車の前照灯の点滅によるカメラ撮影への影響は無く、かつ対向車の前照灯により、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を撮影することができる車載撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車載撮影装置は、所定期間ごとの点灯期間のタイミングを変化させた点滅パターンで点滅する照明装置と、この照明装置の点滅に同期して露光を行うカメラを備えた構成を有する。
【0011】
この構成により、照明装置が所定期間ごとの点灯期間のタイミングを変化させた点滅パターンで点滅し、カメラが照明装置の点滅に同期して露光を行う。したがって、自車の前照灯の点滅の影響はうけず、対向車の前照灯により、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができる。
【0012】
また、本発明の車載撮影装置は、点滅パターンは、一回の点灯時間は固定であり、一定時間を平均した点灯回数が等しいが、点灯するタイミングはそれぞれ異なる複数のパターンを、ランダムに切替えることを特徴とした構成を有する。
【0013】
この構成により、一回の点灯時間は固定であり、一定時間を平均した点灯回数が等しいが、点灯するタイミングはそれぞれ異なる複数のパターンを、ランダムに切替えた点滅パターンで照明装置が点滅する。したがって、自車の前照灯の点滅の影響はうけず、対向車の前照灯により、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、照明装置が所定期間ごとの点灯期間のタイミングを変化させた点滅パターンで点滅し、カメラが照明装置の点滅に同期して露光を行うので、対向車の前照灯により、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の概略ブロック図である。
【0017】
本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置は、図1に示すように、前照灯3の点滅タイミングを発生する信号源1と、照明制御信号Sbにより前照灯3の点滅を制御する照明制御部2と、カメラ制御信号Scによりカメラ5の露光時間を制御するカメラ制御部4と、カメラ5のカメラ出力Sdを表示するモニタ6と、カメラ5のカメラ出力Sdを記録するとともに、記録している画像の再生信号Seをモニタ6に出力する記録部7を備えている。そして、照明制御部2は信号源1の発生する点滅タイミング信号Saに同期して前照灯3の点滅を制御することができ、カメラ制御部4は点滅タイミング信号Saに同期してカメラ5の露光時間を制御できるように構成されている。
【0018】
次に、本実施の形態における車載撮影装置について、その動作を、図2から図5および図8を用いて詳細に説明する。
【0019】
図8は、従来の車載撮影装置の前照灯の点滅タイミングを示すタイミングチャートである。
【0020】
図8において、H期間が前照灯の点灯タイミングを示す。
【0021】
図2は本発明の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅タイミングを示すタイミングチャートで、一回の点灯期間の位相を−25%から+25%まで変化させる場合の点灯タイミングを示す図である。
【0022】
図2の例では、図2(C)を基準にして、−25%(図2(A))から+25%(図2(E))まで12.5%ずつ位相を変化させている。
【0023】
信号源1は、図2(A)から図2(E)までの点滅タイミングから一つを、ランダムに順次選択して点滅タイミング信号Saとして照明制御部2およびカメラ制御部4に出力する。
【0024】
対向車の前照灯によるカメラの眩惑状態は、カメラのダイナミックレンジにより発生の条件は異なるが、一例として、前照灯の点灯期間とカメラの露光期間が同じであるとして、対向車の前照灯の点灯期間が、自車のカメラの露光期間の50%を超えると眩惑状態になるとした場合について説明する。
【0025】
図8に示した固定タイミングの点滅タイミングでは、デューティ25で点灯する場合、同じ周期、同じデューティで点灯する他車の前照灯と、点灯期間が50%を超えて重なり、眩惑状態となる確率は、図3に示すように、(a)の点滅タイミングに対して、(b)の位相から(c)の位相までの25%である。また、自車と他車の前照灯の点滅タイミングの位相は、両者の点滅周波数をそれぞれfm、foとすると、fh=|fm-fo|の周波数で変化する。両者の点滅周波数が近い場合にはfhの周波数は低く、一旦眩惑状態に入ると、眩惑状態から抜けるまでに時間がかかる。
【0026】
一方、本実施の形態のように、一回の点灯ごとに、図2(A)から(E)のいずれかのタイミングに変化する前照灯システムの場合、同じ前照灯システムを持つ他車との前照灯と、点灯期間が50%を超えて重なる確率は、やはり25%となる。しかしながら、点滅タイミングが固定の場合と異なり、一回の点灯ごとに25%の確率で眩惑状態か、そうでないかが変化する。
【0027】
すなわち、固定タイミングで前照灯が点滅する場合は、いったん眩惑状態に入ったら、点滅周波数の差により、位相がずれるまで眩惑状態が続くのに対し、前照灯の点滅タイミングが変化するシステムでは、一回の点灯ごとに、眩惑状態か、そうでない状態かが変化するため、連続して撮影している複数枚の画像のうち、約75%の画像は眩惑状態でなく撮影することができる。
【0028】
図4は、固定タイミング(a)で点滅する前照灯と、本実施の形態における点滅のタイミングの一例(b)を比較したものである。なお、図4(b)のタイミングチャートの(A)から(E)は、図2の点滅タイミングの(A)から(E)に対応する。
【0029】
また、(a)、(b)の点灯期間が重なる部分は、網掛けで示している。
【0030】
(b)の3番目の点灯タイミングで(a)と完全に一致する位相の場合、2番目と4番目の位相は、(a)との重なりは50%で、眩惑とならないので1/5枚の画像だけが眩惑となり、残りの画像は眩惑状態でなく撮影することができる。
【0031】
(b)のタイミングがこれよりも僅かにずれた場合は、2番目または3番目のどちらかは(a)との重なりが50%を越えて眩惑となるので、2/5枚の画像だけが眩惑となり、残りの画像は眩惑状態でなく撮影することができる。
【0032】
図5は本実施の形態における車載撮影装置を搭載した車同士の点滅タイミングを比較したもので、図5(a)は、図4(b)と同じ点滅タイミングである。なお、図5のタイミングチャートの(A)から(E)は、図2の点滅タイミングの(A)から(E)に対応する。
【0033】
また、(a)、(b)の点灯期間が重なる部分は、網掛けで示している。
【0034】
この例では、1番目、2番目、5番目の点灯が重なり50%で眩惑は発生しておらず、僅かに位相がずれると、1番目と2番目、または5番目の点灯で重なり50%を越えて2/5枚または1/5枚の画像だけ眩惑状態となり、残りの画像は眩惑状態でなく撮影することができる。
【0035】
このように、本実施の形態における車載撮影装置によれば、対向車の前照灯がカメラの撮影範囲に入っても、眩惑状態が連続することなく、眩惑状態で無い画像も撮影することができ、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができる。
【0036】
また、対向車がない場合は、カメラの露光が自車の前照灯の点灯タイミングと同期しているため、自車の前照灯の点滅の影響を受けることなく、車外の状況を撮影することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、点灯のタイミングを一回ごとに変化させているが、複数回の点灯ごとに位相を変化させてもよく、またデューティ25としているが、デューティを小さくすれば、点灯期間の位相の変化を大きくすることができ、眩惑状態になる可能性を小さくすることができる。
【0038】
また、本実施の形態では、点灯期間の位相を−25%から+25%まで12.5%単位で変化させたが、これに限定されるものではなく、もっと広い範囲で、または、もっと細かい単位で位相を変化させるようにしても良い。
【0039】
さらに、カメラの露光期間は前照灯の点灯時間と同じとしたが、カメラの露光時間は前照灯の点灯時間内であれば前照灯の点灯時間よりも短くても良い。
【0040】
なお、本実施の形態では、照明装置は前照灯としたが、前照灯以外の照明装置でも良い。
【0041】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態における車載撮影装置の概略ブロック図である。
【0042】
本発明の第2の実施の形態における車載撮影装置は、図6に示すように、前照灯3の点滅タイミングのパターンを複数発生するパターン発生部11と、前記パターンから一つのパターンを選択するパターン選択部12と、照明制御信号Sbにより前照灯3の点滅を制御する照明制御部2と、カメラ制御信号Scによりカメラ5の露光時間を制御するカメラ制御部4と、カメラ5のカメラ出力Sdを表示するモニタ6と、カメラ5のカメラ出力Sdを記録するとともに、記録している画像の再生信号Seをモニタ6に出力する記録部7を備えている。そして、照明制御部2は信号源1の発生する点滅タイミング信号Saに同期して前照灯3の点滅を制御することができ、カメラ制御部4は点滅タイミング信号Saに同期してカメラ5の露光時間を制御できるように構成されている。
【0043】
図2において、図1と同一の番号を付したものは、図1に示すものと同一のものを示している。したがって、これらのものについては、その詳細な説明を省略し、異なる点のみを説明する。
【0044】
次に、本実施の形態における車載撮影装置について、その動作を、図7を用いて詳細に説明する。
【0045】
図7は、本実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅パターンを示すタイミングチャートである。
【0046】
図7に示すように、一回あたりの点灯時間が同じで、一定時間Tの中での平均点灯回数が等しい点滅パターンの場合、点滅の周波数が、人間が知覚できる周波数、およそ30ヘルツから60ヘルツよりも早い場合、人間には点滅が識別できず、一定の明るさが続いていると感じられる。このような点滅パターンをランダムに選択し、この点滅パターンに同期させてカメラの露光を行えば、人間には前照灯の照明の点滅を感じさせることなく、眩惑状態が連続しない車載撮影装置を得ることができる。
【0047】
このように、本実施の形態における車載撮影装置によれば、運転者には前照灯の点滅を感じさせることなく、対向車の前照灯がカメラの撮影範囲に入っても、眩惑状態が連続することなく、眩惑状態で無い画像も撮影することができ、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができる。
【0048】
また、対向車がいない場合は、カメラの露光が自車の前照灯の点灯タイミングと同期しているため、自車の前照灯の点滅の影響を受けることなく、車外の状況を撮影することができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、一定時間Tに点灯のタイミングを3回としているが、点灯回数は何回でも良く、またパターン数もいくつでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる車載撮影装置は、対向車の前照灯により、自車の車載カメラが眩惑される期間を減らし、車外の状況を確認することができ、自動車に搭載するモニタカメラや、ドライブレコーダなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の概略ブロック図
【図2】(A)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の−25%位相を変化させた前照灯の点滅タイミングのタイムチャート (B)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の−12.5%位相を変化させた前照灯の点滅タイミングのタイムチャート (C)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の標準の位相の前照灯の点滅タイミングのタイムチャート (D)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の+12.5%位相を変化させた前照灯の点滅タイミングのタイムチャート (E)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の+25%位相を変化させた前照灯の点滅タイミングのタイムチャート
【図3】(a)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の標準の位相の前照灯の点滅タイミングのタイムチャート (b)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の標準の位相の前照灯の点滅タイミングと点灯期間が位相遅れ側で50%重なる点滅タイミングのタイムチャート (c)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の標準の位相の前照灯の点滅タイミングと点灯期間が位相進み側で50%重なる点滅タイミングのタイムチャート
【図4】(a)従来の車載撮影装置の前照灯の点滅の固定タイミングのタイムチャート (b)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅タイミングのタイムチャート
【図5】(a)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅タイミングのタイムチャート (b)本発明の第1の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅タイミングの位相がずれたときのタイムチャート
【図6】本発明の第2の実施の形態における車載撮影装置の概略ブロック図
【図7】(a)本発明の第2の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅パターンの第1例のタイムチャート (b)本発明の第2の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅パターンの第2例のタイムチャート (c)本発明の第2の実施の形態における車載撮影装置の前照灯の点滅パターンの第3例のタイムチャート
【図8】従来の車載撮影装置の前照灯の点滅タイミングのタイムチャート
【符号の説明】
【0052】
1 信号源
2 照明制御部
3 前照灯
4 カメラ制御部
5 カメラ
6 モニタ
7 記録部
11 パターン発生部
12 パターン選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間ごとの点灯期間のタイミングを変化させた点滅パターンで点滅する照明装置と、この照明装置の点滅に同期して露光を行うカメラを備えた車載撮影装置。
【請求項2】
前記照明装置の点滅パターンは、1回の点灯時間は固定であり、一定時間を平均した点灯回数が等しいが、点灯するタイミングはそれぞれ異なる複数のパターンを、ランダムに切替えることを特徴とする請求項1に記載の車載撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−273299(P2008−273299A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116982(P2007−116982)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】