説明

車載生体情報計測装置

【課題】車内における乗員のより信頼性が高い生体情報を短時間で取得する車載生体情報計測装置を提供する。
【解決手段】走行中の車両の乗員の身体の状態を示す生体情報を計測する生体情報計測部と、前記車両が減速を開始してから停止するまでを検出する車両状態検出部101、車両の停止が検出された後の時間を計時する時間計測部102、計時の後に、乗員の心身に係る生体情報の計測を開始する計測開始時刻と、この計測を終了する計測終了時刻とを算出する計測タイミング算出部103と、計測開始時刻から計測終了時刻の期間に計測された生体情報を使って乗員の身体の状態を示す乗員生体情報を算出する生体情報算出部106と、を車載生体情報計測装置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両に搭載されるナビゲーション装置では、運転者の生体情報を測定し、測定の結果を車両のナビゲーションに用いるものがある。このようなナビゲーション装置の従来技術には、例えば、特許文献1に記載されたナビゲーション装置がある。特許文献1のナビゲーション装置では、血圧、体脂肪、脈拍数、体温を測定するためのセンサを例えば、車両において入力操作を行うリモートコントローラ及びステアリングホイルの少なくとも一方に配置して生体情報を連続的に測定可能にする。そして、測定する生体情報の中でも、血圧、体脂肪等を基礎データとし、基礎データに基づいて運転者の健康状態を判定し、判定結果に応じて施設データを選択して提示するようナビゲーションを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−47196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体情報である血圧等は、運転者の状態(安静時、あるいは緊張時)によって変化する。このため、車両の内部にセンサを配置して、生体情報を連続的に測定する特許文献1に記載された発明は、生体情報をどのようなタイミングで計測するかを定めていないため、必ずしも安静状態の血圧等を測定するものではない。このような特許文献1の発明では、血圧等の測定誤差が大きくなることが問題となる。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車内における乗員のより信頼性が高い生体情報を短時間で取得する車載生体情報計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の車載生体情報計測装置は、走行中の車両の乗員の生体情報を計測する生体情報計測手段、車両が減速を開始してから停止するまでを検出する車両状態検出手段、車両の停止後、乗員の生体情報の計測を開始する計測開始時刻、この計測を終了する計測終了時刻を算出する計測タイミング算出手段、計測開始時刻から計測終了時刻の期間に計測された生体情報を使って乗員の身体の状態を示す乗員生体情報を算出する乗員生体情報算出手段を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本願発明は、血圧等の生体情報を適切に計測できる期間を自動的に設定し、この期間に生体情報を計測しているから、生体情報を繰返し測定することなく高い信頼性の生体情報を得ることができる。このような本願発明によれば、車内における乗員の信頼性の高い生体情報を短時間で取得する車載生体情報計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態1、2に共通の車載生体情報計測装置の機能ブロック図である。
【図2】車両の走行時に取得された車両の速度と生体情報である血圧との関係を実測して得られた図である。
【図3】実施形態1の車載生体情報計測装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】車両の減速度と減速から停止までの時間との一般的な関係を説明するための図である。
【図5】実施形態2の計測開始時間を説明するための図である。
【図6】実施形態3の車載生体情報計測装置を説明するための機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態2及び実施形態3を組み合わせて行った車載生体情報計測装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明に係る実施形態1、実施形態2、実施形態3を説明する。
(実施形態1)
[構成]
図1は、本発明の実施形態1、2に共通の車載生体情報計測装置の機能ブロック図である。本実施形態の車載情報計測装置は、車両の走行状態として車両の減速度及び速度を検出する車両状態検出部101と、車両停止の後の時間を計測する時間計測部102と、時間計測部102による計時の開始後に生体情報の計測を開始する計測開始時刻と、計測を終了する計測終了時刻とを算出する計測タイミング算出部103と、乗員の生体情報を計測する生体情報計測部104と、生体情報計測部104によって計測された生体情報を保存する生体情報保存部105と、計測開始時刻から計測終了時刻までの計測期間に生体情報計測部104によって計測された生体情報を乗員の身体的な状態を示す生体情報とし、この生体情報を使って乗員の状態を示す生体情報(以下、乗員生体状態情報と記す)を算出する生体情報算出部106と、を備えている。計測タイミング算出部103は、計測開始時刻、計測終了時刻を決定するために必要なデータや演算式等を保存する算出用データ保存部103aを備えている。
【0009】
以下、このような各構成について説明する。なお、実施形態1では、生体情報計測装置が生体情報として血圧を計測するものとして各構成を説明するものとする。
車両状態検出部101は、車両の走行中の車両の速度、減速度、走行距離を算出する。このような物理量の算出は、図示しない車輪速センサ等を用いて取得するパラメータを使って行う。検出された車両の走行停止や走行開始は、時間計測部102に出力する。また、車両状態検出部101は、検出された速度、減速度、走行距離等から、車両の走行停止(車速が任意の値から0になる)や走行開始(車速が0から所定の値以上になる)の時刻(タイミング)を検出する。
【0010】
時間計測部102は、少なくとも0.1秒単位で時間を計測可能な機能と、計測された時間に関する情報(以下、時間情報と記す)を出力する機能を有している。時間計測部102は、車両状態検出部101によって検出された車両の走行停止と同時に時間計測を開始する。一方、車両が走行開始して車速が0以外になったときには、計測していた時間をリセットする。そして、計測した時間の時間情報を計測タイミング算出部103へ出力する。
【0011】
計測タイミング算出部103は、生体情報計測部104によって測定され、生体情報保存部に蓄積される生体情報を解析する。そして、車両の停止後から生体情報が安静時と大差なくなり、かつ安定した状態(以降、安静状態と記す)に至った時刻と、安静状態が再び安静状態とみなせなくなった時刻とを検出する。そして、車両の停止から乗員が安静状態に至った時刻までの時間を計測開始時間A、車両の停止から乗員が再び安静状態を脱する時刻までの時間を計測終了時間Bに設定する。安静状態を判定するためのデータやパラメータは、算出用データ保存部103aに保存されている。なお、以上の処理における乗員の安静状態の判定については後述する。
【0012】
また、計測タイミング算出部103は、計測開始時間A、計測終了時間Bを生体情報計測部104に出力する。生体情報計測部102は、計測開始時間Aと計測終了時間Bとの間に計測された生体情報を生体情報算出部106に出力し、生体情報算出部106は出力された生体情報に基づいて乗員生体情報を算出する。
【0013】
[計測開始時間A、計測終了時間Bの設定]
図2は、車両の走行時に取得された車両の速度と生体情報である血圧との関係を実測して得られた図である。図2の縦軸は車速201と、車速の減速度202と、乗員の血圧203を示し、横軸は時間を示している。図2のように、血圧は、車両の減速度に伴って上昇し、その後車両が停止すると次第に低下する。図2によれば、血圧は、車両の停止後、計測開始時間Aの経過後に安静状態になり、計測終了時間Bにおいて安静状態から脱することが分かる。
【0014】
ここで、安静状態の定義について説明する。実施形態1でいう乗員の安静状態とは、乗員が室内等で安静な状態にあるときの状態と大差がない状態を指す。生体情報として血圧を用いる実施形態1では、乗員の血圧のばらつきαが、室内等で安静な状態にあるときのばらつきα0以下になる状態を安静状態という。
このような安静状態は、計測開始時間A、計測終了時間Bの算出基準になる。なお、実施形態1では、平均的な安静時の血圧のばらつきα0を実験等によって予め決定しておき、車両の出荷前に車載生体情報計測装置の算出用データ保存部103aに保存しておくものとする。
【0015】
図2に示した例では、車速の減速開始後、減速度の上昇と共に血圧が上昇していることが分かる。車両の停止後、乗員の血圧のばらつきαは安静時のばらつきα0以下の状態、つまり安静状態になる。実施形態1では、車両の停止から血圧が安静状態に達する時刻までに図1に示した時間計測部102によって計時した時間を計測開始時間Aに設定する。
血圧の安静状態は所定の時間持続する。実施形態1では、車両が停止してから安静状態を脱する時刻までに時間計測部102によって計時した時間を計測終了時間Bとする。このように、実施形態1では、実測された生体情報から計測開始時間A、計測終了時間Bを設定することができる。
【0016】
計測タイミング算出部103は、算出用データ保存部103aが保存している血圧のばらつきα0を読み出し、生体情報計測部104が計測した血圧のばらつきαと比較する。そして、比較の結果、血圧のばらつきαが血圧のばらつきα0以下に安定する時刻を検出し、車両状態検出部101が検出した車両の停止から、この時刻に至るまでの時間を計測開始時間Aに設定する。
また、血圧のばらつきαが血圧のばらつきα0以下になった後、再び血圧のばらつきα0より大きくなるまでの時刻を検出する。そして、車両状態検出部101が検出した車両の停止から、この時刻に至るまでの時間を計測終了時間Bに設定する。
【0017】
図中に示した計測期間とは、計測開始時間時刻から計測終了時刻までの期間、つまり計測終了時間B−計測開始時間Aを指す。図1に示した生体情報算出部106は、生体情報計測部104によって計測期間内に計測された血圧を基にして乗員の血圧を統計数値化し、外部に出力する。統計数値化された生体情報を、実施形態1では乗員生体情報と記す。乗員生体情報は、生体情報計測部104によって測定された生体情報ばかりでなく、この生体情報が乗員の安定した生体情報であるか否かをも伝える情報である。
【0018】
生体情報算出部106が行う統計数値化としては、生体情報の安定の程度を示すため、生体情報の平均値やばらつきを示す標準偏差を算出するものであってもよいし、生体情報の最大値、最小値、または他の統計指標を算出するようにしてもよい。また、血圧のばらつきαを評価する統計指標としては、所定の時間間隔の標準偏差を用いることもできる。また、その他の統計指標を用いてばらつきを算出するものであってもよい。
【0019】
また、生体情報として血圧を検出する実施形態1の車両状態検出部101としては、乗員を拘束せずかつ短時間で連続的に血圧を測定するため、指の脈圧から血圧を推定するセンサ等を用いることができる。このようなセンサをステアリングや操作部、乗員の体勢支持部等、乗員の体の一部が届く領域に配置することが考えられる。また、乗車中に乗員の体の少なくとも一部が安全上問題なく拘束可能な場合には、家庭血圧計に代表されるカフ式血圧計を使うことが考えられる。
計測される血圧は、断続的な単一計測値であることと、計測に所要する時間が計測方法や計測機器に応じて変わる。このため、先に示した計測開始時間A、計測終了時間Bは計測方法や計測機器に応じた時間に設定することが望ましい。
【0020】
次に、実施形態1の車載生体情報計測装置の処理を、図3を参照しながら説明する。図3は、実施形態1の車載生体情報計測装置の処理のフローチャートである。実施形態1の処理が開始すると、ステップS301では、生体情報計測部104が、乗員の生体情報の計測を開始する。生体情報保存部105は、計測された生体情報を一時的に保存する。また、ステップS302では、車両状態検出部101が、車両の走行速度を検出することによって車両が走行中であるか否か判断する。走行中でない場合(ステップS302:No)、処理は、車両が走行状態になるまで待機する。
【0021】
また、ステップS302において、車両が走行状態であると判断された場合(ステップS302:Yes)、車両状態検出部101が車両の速度変化を検出する。速度変化から車両の減速度を算出すると、ステップS303では、車両状態検出部101が、さらに車両が減速を継続しているか否かを判断する。減速を中止、すなわち車両が加速または車速を維持した状態であるならば(ステップS303:No)、処理はスタート状態に戻って待機状態を保持する。
【0022】
ステップS303において、車両が減速し続けていると判断された場合(ステップS303:Yes)、ステップS304では、車両状態検出部101が、車両の走行速度を検出して車両が停止したか否かを判断する。車両が停止したと判断されなかった場合(ステップS304:No)、ステップS303に戻って減速を継続しているかを判断する。
ステップS304において車両が停止したと判断した場合(ステップS304:Yes)、ステップS305では、計測タイミング算出部103が、計測開始時間Aと計測終了時間Bとを設定する。
【0023】
より具体的には、ステップS305では、計測タイミング算出部103が、算出用データ保存部103aに予め保存されている安静時の血圧のばらつきα0を読み出し、生体情報計測部104が計測して生体情報保存部105に保存されている血圧のばらつきαをばらつきα0と比較する。そして、車両停止からばらつきαがばらつきα0以下になった時刻までの時間を計測開始時間Aに、計測開始時間Aの経過後、ばらつきαが再びばらつきα0より大きくなった時刻を計測終了時間Bに設定する。
【0024】
ステップS306では、計測タイミング算出部103が、計測開始時間A、計測終了時間Bを生体情報算出部106に出力する。生体情報算出部106は、計測開始時間Aから計測終了時間Bまでの間に生体情報計測部104によって計測された血圧を生体情報保存部105から取得する。ステップS307では、この血圧を統計数値化して最終的な乗員生体情報を算出する。乗員生体情報として算出された最終的な血圧は、乗員に対して表示する。
【0025】
次に、ステップS308では、生体情報計測部104が生体情報の計測を終了するか否か判断する。計測終了の判断は、例えば、車両の図示しない他の制御部から出力するエンジン停止を通知する信号等を受信して行うことができる。計測を終了しない場合(ステップS308:No)、生体情報計測部104は乗員の生体情報を計測し続け、車両状態検出部101が、車両が走行中であるか否か判断する。また、計測を終了すると判断した場合、本フローチャートの処理は終了する(ステップS308:No)。
【0026】
以上説明した実施形態1によれば、実測された乗員の生体情報を使って計測開始時間A、計測終了時間Bを設定することができる。このため、乗員や状況ごとに適正な計測開始時間A、計測終了時間Bを設定することができる。また、実施形態1によれば、このような計測開始時間A、計測終了時間Bの間に計測された生体情報を乗員の生体情報としているから、乗員の状態による生体情報のばらつきを低減して乗員の状態を適正に判定することができる。
【0027】
[動作]
実施形態1では、車両状態検出部101が車両の速度や加速、減速、停止等を検出する。車両状態検出部101が車両の速度から停止を検出すると、生体情報計測部104が生体情報として例えば血圧の計測を開始する。生体情報保存部105は、計測された血圧を順次保存する。計測タイミング算出部は、生体情報保存部105に保存された血圧のばらつきαを予め設定されている安静時の血圧のばらつきα0と比較する。そして、ばらつきαがばらつきα0以下になった時刻を検出し、車両の停止からばらつきαがばらつきα0以下になった時刻までの時間を計測開始時間Aに設定する。また、ばらつきαが再びα0より大きくなった時刻を検出し、車両の停止からばらつきαが再びα0より大きくなった時刻までの時間を計測終了時間Bに設定する。
【0028】
生体情報算出部106は、生体情報保存部105に保存された血圧から、計測期間内に計測された血圧を抽出する。そして、抽出した血圧を使って最終的な出力データである乗員生体情報を生成する。
なお、以上説明した実施形態1では、生体情報計測部104が生体情報計測手段に対応し、車両状態検出部101が車両状態検出手段に対応する、また、計測タイミング算出部103が計測タイミング算出手段に対応し、生体情報算出部106が乗員生体情報算出手段に対応する。
【0029】
[実施形態1の効果]
(1)実施形態1では、計測タイミング算出部101が乗員の血圧を計測し、乗員が安静状態である期間を検出する。そして、生体情報算出部106はこの期間に計測された血圧を使って乗員生体情報を生成する。
このような構成によれば、乗員が安静状態にある計測期間を自動的に設定し、この間に生体情報を計測することができるので、一度で信頼性の高い生体情報を取得することができる。
【0030】
(2)実施形態1では、計測タイミング算出部101がリアルタイムで乗員の血圧を実測して安静状態の判定を行っている。
このような構成によれば、乗員の体調や車両の挙動によらず適正な計測期間を設定することができる。
(3)実施形態1では、計測タイミング算出部103が、生体情報の平均値やばらつきによって乗員が安静状態にあるか否かを判定する。
このような構成によれば、比較的簡易でありながら高い精度で乗員の状態を判定し、適正な計測期間を設定することができる。
【0031】
[実施形態1の変形例]
(1)実施形態1では、乗員が安静状態であるか否かを乗員の血圧のばらつきによって判定している。しかし、実施形態1はこのような構成に限定されるものでなく、血圧の平均値から乗員が安静状態にあるか否か判定するようにしてもよい。
血圧の平均値から乗員の安静状態を判定する場合、例えば、算出用データ保存部103aに安静状態とみなせる乗員の血圧値β0を保存しておく。そして、計測タイミング算出部103が、生体情報保存部105が保存する乗員の血圧値βと安静状態とみなせる血圧値β0とを比較し、血圧値βと血圧値β0との差異が所定の値以下になる、あるいは血圧値βが血圧値β0以下になる時刻を計測開始時間A、車両が停止してから血圧値βと血圧値β0との差異が再び所定の値以上になる、あるいは血圧値βが血圧値β0より大きくなる時刻を計測終了時間Bに設定する。
【0032】
(2)実施形態1は、血圧のばらつきまたは平均値のいずれか一方を使って乗員の安静状態を判定するものに限定している。しかし、血圧のばらつきと平均値との両方を組み合わせて乗員が安静状態にあるか否かを判定するものであってもよい。また、血圧の平均値に代わる統計値と、所定のばらつきを示す標準偏差または標準偏差に代わる統計値との両方を用いて、乗員が安静状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0033】
(3)実施形態1は、生体情報として血圧を用いるものに限定されるものではなく、生体計測部を用いた乗員の自律神経系の生体情報であればどのような生体情報を用いるものであってもよい。このような生体情報としては、例えば、心電、心拍、呼吸、脈波、皮膚電位、体温の何れかまたはその組み合わせが考えられる。このような生体情報を計測し、生体情報と相関の高い指標を計測することにより、走行中の減速、停止後の乗員の安静状態を検出し、乗員が安静状態にあるときに生体情報を計測することができる車載生体情報計測装置を提供することができる。
【0034】
(実施形態2)
[構成]
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2の車載生体情報計測装置は、実施形態1で図1に示した構成と同様の構成を有している。このため、実施形態2では、車載生体情報計測装置の構成の図示及び説明の一部を略すものとする。
実施形態2の車両状態検出部101は、走行中の車両の減速をも検出する。そして、車両の走行から停止に至るまでの代表減速度を算出する。実施形態2では、代表減速度として、走行中の車両が減速を開始してから停止するまでの平均減速度を用いている。また、車両が減速を開始してから停止するまでの最大減速度や、このような減速度に他の統計処理を行ったデータを用いてもよい。
【0035】
計測タイミング算出部103は、車両状態検出部101から平均減速度を取得する。そして、取得された平均減速度を予め算出用データ保存部103aに保存されているデータに対照し、平均減速度に基づいて計測開始時間Aを設定する。また、実施形態1と同様に、測定された生体情報に基づいて乗員が安静状態を脱する時刻を検出し、車両の停止からこの時刻に至るまでの時間を計測終了時間Bに設定する。
【0036】
生体情報計測部104は、平均減速度に基づいて設定された車両開始時間Aの経過後に生体情報の計測を開始する。そして、生体情報のばらつきに基づいて設定された計測終了時間Bに達するまで生体情報の計測を続ける。生体情報保存部105は、計測された生体情報を一時的に保存する。生体情報算出部106は、保存された生体情報を使って乗員生体情報を生成し、出力する。その他の構成は、実施形態1の構成と同様に動作する。
【0037】
[計測開始時間Aの設定]
図4は、車両の減速度と減速から停止までの時間との一般的な関係を説明するための図である。図4の縦軸は減速度を示し、横軸は時間を示している。縦軸の減速度は加速度によって表されている。車両の平均の減速度Gは、以下の式(1)、(2)によって表される。ただし、式(1)、(2)中に示したV0は車両の初速度(減速開始時の速度)、Vは車両の速度、tは車両が減速を開始してから停止するまでの時間を示している。
V=V0+G・t …式(1)
−G=V0/t …式(2)
【0038】
実施形態2では、車両状態検出部101が上記した図4の関係に基づいて車両の初速度V0と時間tとから減速度Gを求める。さらに、車両の停止後、乗員の血圧が安静状態に達するまでの時間と減速度との関係を予め実験によって求めておき、この実測データに減速度を対照して計測開始時間Aを設定する。
【0039】
図5は、車両走行実験によって得られた実測データに基づいて生成されたデータを示している。図5は、計測開始時間Aと減速度との関係を示すものであって、乗員の生体情報としての血圧が車両の減速に伴って上昇した後、安静状態に至るまでの計測開始時間Aが減速度の大きさに応じて変化することを示している。図5の縦軸は計測開始時間、横軸は車両の減速度Gを示している。
【0040】
図5によれば、減速度Gが大きくなるほど測定開始時間Aが長くなるように設定することが分かる。また、減速度Gが横軸に示した減速度Gmin以下である場合、乗員が感じる減速度の差異が小さいことを考慮して、計測開始時間Aに0(図中に計測開始時間A0と記す)を含めている。つまり、車両の減速度がGmin以下である場合、車両の停止直後から乗員の生体条が取得可能になる。
【0041】
また、減速度Gが横軸に示した減速度Gmax以上である場合、車両が急停止としてパニックブレーキ等の事態が想定される。しかし、減速度Gが減速度Gmax以上になると、乗員が受ける負荷は変わらないと考えることができる。また、パニックブレーキ等のブレーキ操作による車両の停止直後に乗員の大きな血圧上昇が見られても、その後安静状態に至るまでの時間に変化がないと考えられる。このため、実施形態2では、減速度Gが減速度Gmax以上である場合、計測開始時間Aを一定の計測開始時間値A1としてもよい。
【0042】
なお、実施形態2では、車両の減速度が車両の重量やブレーキ特性等により変化することも考慮して、減速度Gmaxを設定し、対応する計測開始時間を設定すればよい。
また、実施形態2では、走行中に車両が減速して一時的に停止する場合を想定して計測開始時間値A1を設定したとしても、この計測開始時間値A1が、必要な計測開始時間より長いことが考えられる。このため、実施形態2では、減速度が所定の値以下である場合にのみ計測開始時間Aと計測終了時間Bとの間の計測期間に計測された生体情報を使って乗員生体情報を算出するようにしてもよい。
【0043】
また、図5に示した実測データでは、計測開始時間Aと、減速開始から停止までの代表減速度(平均減速度、最大限速度、またはその他の統計処理を行った減速度の代表値)との関係が、式(3)として示す1次式によって表される。なお、式(3)において、γ、σは定数である。
A=γ・G+σ (Gmin≦G≦Gmax) …式(3)
実施形態2では、式(2)、(3)に示した関係を図1に示した算出用データ保存部103aに式、あるいはテーブル等の形式で保存しておく。そして、車両状態検出部101によって検出された車両が減速を開始してから停止するまでにかかる時間tから式(2)の関係を使って減速度Gを求め、減速度Gから式(3)の関係を使って計測開始時間Aを算出する。
【0044】
ただし、実施形態2は、計測開始時間Aと減速度Gとが式(3)によって表される関係を有するものに限定されるものではなく、より詳細な実測データを用い、他の多項式等の関係式で求まるものであってもよい。どのような関係式を使った場合にも、実施形態2が、乗員が安静状態にあるときの生体情報を測定するため、減速度に応じて計測開始時間Aを変化させることについては変わらない。
【0045】
[計測終了時間B]
次に、実施形態2の計測終了時間Bの決定について説明する。なお、実施形態2の計測終了時間Bは、実施形態1と同様に、車両の停止後、乗員の血圧のばらつきαが安静状態の血圧のばらつきα0以下になっている時間とする。実施形態2では、生体情報保存部105に保存されている血圧のばらつきαが、計測開始時間A経過後、生体情報保存部105に保存されている生体情報の血圧のばらつきα0より大きくなる時刻を検出する。そして、車両の停止から検出された時刻までの時間を計測終了時間Bに設定する。
【0046】
[動作]
実施形態2の車載生体情報計測装置では、車両状態検出部101が車両の減速開始を検出する。このとき、車両状態検出部101は、車両の初速度V0と車両が停止するまでの時間tとに基づいて平均の減速度Gを算出する。計測タイミング算出部103は、減速度Gを図5に示した実測データに対照し、減速度Gに対応する測定開始時間Aを設定する。生体情報計測部104は、設定開始時間Aの経過後に生体情報として血圧の計測を開始する。生体情報保存部105は、計測された血圧を一時的に保存する。
【0047】
計測タイミング算出部103は、算出用データ保存部103aから血圧のばらつきα0を読み出して生体情報保存部105に保存された血圧のばらつきαと比較する。そして、ばらつきαがばらつきα0より大きくなった時刻を検出し、車両の停止からこの時刻に至るまでの時間を計測終了時間Bに設定する。
生体情報算出部106は、計測タイミング算出部103から計測開始時間A、計測終了時間Bを取得する。そして、生体情報保存部105に保存されている血圧から計測期間内に計測された血圧を使って最終的な乗員生体情報を生成し、出力する。
【0048】
以上説明した実施形態2において、車両状態検出部101が、減速度検出手段に対応する。また、実施形態1と同様に、生体情報計測部104が生体情報計測手段に対応し、車両状態検出部101が車両状態検出手段に対応する、また、計測タイミング算出部103が計測タイミング算出手段に対応し、生体情報算出部106が乗員生体情報算出手段に対応する。
【0049】
[実施形態2の効果]
(1)実施形態2は、計測タイミング算出部103が減速度を図5に示した式(3)の関係に対照するだけで計測開始時間Aを設定することができる。
このような構成により、実施形態2は、生体情報を測定、解析することなく計測開始時間Aを設定することができるので、実施形態1よりも簡易、かつ短時間に計測開始時間Aを設定することができる。
(2)また、実施形態2は、実施形態1の効果の(1)の効果をも有するものである。
【0050】
[実施形態2の変形例]
(1)実施形態2では、計測終了時間Bの設定は血圧のばらつきを基準に判定するものに限定している。しかし、血圧のばらつきに代わる判定基準としては、例えば、車両の停止後の血圧が考えられる。血圧を使って安静状態の判定をする場合、実施形態1と同様に、血圧値βと、生体情報保存部105に予め保存されている安静時の血圧値β0との差異が所定の範囲以内、または血圧値βが血圧値β0以下に到達する時間を計測終了時間Bに設定する。
【0051】
(2)実施形態2は、上記した血圧値βに代えて血圧の平均値を含めた統計値を使っても乗員の安静状態の血圧を測定することができる。さらに、実施形態2は、安静状態を考慮した計測開始時間Aと計測終了時間Bを設定するために、乗員の血圧の平均値もしくは平均値に代わる統計値とばらつきを示す標準偏差、もしくは標準偏差に代わる統計値を予め保存されている安静状態の血圧と比較するようにしてもよい。
【0052】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3の車載生体情報計測装置は、生体情報保存部を個人ごとに複数設け、各個人の生体情報を各々対応する生体情報保存部に保存するようにしたものである。
[構成]
図6は、実施形態3の車載生体情報計測装置を説明するための機能ブロック図である。図6中に示した構成のうち、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。実施形態3の車載生体情報計測装置は、車両状態検出部101、時間計測部102、計測タイミング算出部103、生体情報計測部104、生体情報保存部605、生体情報算出部106を備えている。さらに、図6に示した車載生体情報計測装置は、乗員個人を特定するための個人認証部602を備えている。
【0053】
生体情報保存部605は、個人ごとに設けられた生体情報保存部605a、605b、605cを備えている。個人認証部602は、車両に設けられたID情報を入力するための構成(例えば指紋認証やIDナンバーを入力する操作部)から出力されたID情報を受け取って個人を特定する。生体情報保存部605a〜605cの各々は、生体情報計測部104によって個人認証が行われた直後に計測された生体情報のうち、自身に対応する生体情報を保存する。
【0054】
実施形態3の計測タイミング算出部103は、生体情報に基づいて計測開始タイミングA、計測終了タイミングBを算出するようにしてもよいし、車両の減速度Gを使って計測開始タイミングA、計測終了タイミングBを算出するようにしてもよい。車両の減速度Gを使って計測開始タイミングA、計測終了タイミングBを算出する場合、生体情報保存部605a〜605cに保存された生体情報を図5に示した関係に反映させるようにγやσの定数を調整することもできる。
【0055】
また、生体情報に基づいて計測開始タイミングA、計測終了タイミングBを算出する場合、実施形態3では、安静状態の血圧のばらつきα0や安静状態の血圧値β0に代えて、生体情報保存部605a〜605cに保存されている血圧値β1や血圧のばらつきとα1と比較する。血圧値β1、ばらつきα1は、測定された生体情報のうち、乗員が安静状態であると考えられるときの血圧またはばらつきである。
【0056】
そして、計測タイミング算出部103は、乗員の血圧のばらつきがα1以下になる、または血圧が血圧値β1と等しいか血圧値β1以下になるまでの時刻を検出する。そして、車両の停止から検出された時刻までの時間を計測開始時間Aに設定する。また、計測タイミング算出部103は、車両の停止から乗員の血圧のばらつきがα1より大きくなる、または血圧が血圧値β1より大きくなるまでの時間を計測終了時間Bに設定する。
【0057】
このような実施形態3によれば、個人の特質を反映した血圧や血圧のばらつきを使って計測開始時間A、計測終了時間を設定することができる。
また、実施形態3は、以上説明したように、個人認証部602を使って各個人の生体情報を複数の生体情報保存部605a〜605cに振り分けるものに限定されるものではない。例えば、車両の中に個人選択ボタンを設置し、乗員が乗車中に個人選択のボタンを押下するようにしてもよい。このような構成では、以後、別の個人に対応する個人選択ボタンが押下されない限り、生体情報計測部104によって計測された生体情報データが同一の個人のものとして保存される。
【0058】
さらに、実施形態3では、車両状態検出部101から出力される車両の速度や減速度、停止時間等の車両情報を生体情報保存部105に生体情報とともに記憶し、車両情報の傾向や特性から各個人を特定することも考えられる。そして、特定された個人と、その個人が乗車中に計測された生体情報とを対応付けることによって生体情報を個人別に分類してもよい。また、生体情報計測部104が、計測した生体情報を保存するメモリとして生体情報保存部605a〜605cのいずれかを選択するメモリ選択機能を搭載するものであってもよい。
【0059】
実施形態3では、生体情報保存部605a〜605cに保存された過去の生体情報を基にして、計測タイミング算出部103が計測開始時間A及び計測終了時間Bを算出する。そして、生体情報算出部106は、計測開始時間Aと計測終了時間Bとの間の計測期間に計測された生体情報を使って各乗員の乗員生体情報を算出する。実施形態3によれば、個々の乗員別に計測開始時間A及び計測終了時間Bを設定することができる。このことから、実施形態3では、乗員の個人差を考慮した安静状態の血圧を測定することが可能なる。
【0060】
次に、実施形態2、実施形態3を組み合わせた処理の例を、図7を参照して説明する。
図7は、実施形態2及び実施形態3を組み合わせて行った車載生体情報計測装置のフローチャートである。このフローチャートでは、計測開始時間Aを車両の減速度から図5に示した式(3)の関係を使って算出する。また、個人認証部602等によって認証された乗員個人を特定し、計測された生体情報を個人ごとに保存しておくものとする。
【0061】
図7に示した処理では、先ず、ステップS701において、車両状態検出部101が、走行中の車両の走行速度を検出し、車両が走行中であるか否か判断する。ステップS701において、車両が走行中でないと判断すると(ステップS701:No)、処理は車両が走行するまで待機する。また、車両状態検出部101は、車両が走行中であると判断すると(ステップS701:Yes)、ステップS702において、車両の速度変化や減速度から車両が減速を開始し、継続しているか否か判断する。ステップS702において車両が減速を継続していないと判断すると(ステップS702:No)、処理は車両が継続して減速するまで待機する。
【0062】
ステップS702において車両が継続して減速していると判断すると(ステップS702:Yes)、ステップS703では、車両状態検出部101が、車両の走行速度を検出し、車両が停止したか否かを判断する。ここで、車両が停止していないと判断した場合には、ステップS702に戻って車両が減速を開始、継続しているかを判断する。
【0063】
ステップS703において、車両状態検出部101は、車両が停止したと判断すると、ステップS704では、車両状態検出部101が、車両が減速を開始してから停止するまでの平均の減速度を、式(2)を使って算出する。そして、算出された減速度を計測タイミング算出部103に出力する。ステップS705では、計測タイミング算出部103が、減速度が所定の減速度a以下であるか否か判断する。そして、減速度が所定の減速度a以下でない(減速度が減速度aより大きい)と判断した場合には(ステップS705:Yes)、計測開始時間Aを設定する処理を行うことなく(計測開始時間Aを0に設定する)車両の走行を判定する処理に戻る。
【0064】
また、計測タイミング算出部103は、ステップS705において、減速度が減速度aよりも大きいと判断した場合には(ステップS705:No)、図5に示した関係を使って計測開始時間Aを設定する。続いて、ステップS706では、計測タイミング算出部103が、生体情報保存部605に保存されている生体情報を使って計測終了時間Bを設定する。なお、本フローチャートに示した例では、個人認証部602によって乗員が特定されているものとし、特定された個人に対応する生体情報保存部605a〜605cの個人情報が計測終了時間Bの設定に利用される。
【0065】
次に、ステップS707、S708において、生体情報計測部104が、設定された計測開始時間Aの経過と共に生体情報である血圧等を計測し、計測終了時間Bの経過と共に計測を終了する。ステップS709では、生体情報算出部106は、計測された生体情報、または計測された生体情報に統計的な情報を付加した情報を乗員生体情報として算出する。
【0066】
さらに、本フローチャートで示す処理では、ステップS710において、計測タイミング算出部103が、生体情報保存部605に保存されている過去の生体情報を参照し、計測された生体情報が安静状態のものであるか否かを判断する。この判断は、生体情報が血圧である場合、例えば、計測された血圧の平均値が過去の血圧の平均値β1以下であるか、または計測された血圧のばらつきが過去の血圧のばらつきα1以下であるかによって実現できる。
【0067】
ステップS710において、生体情報算出部106は、計測された生体情報が乗員の安静状態のものであると判断すると(ステップS710:Yes)、ステップS711において、生体情報保存部605が、乗員個人に対応した生体情報保存部605a〜605cのいずれかに計測された生体情報を保存する。また、ステップS710において、計測タイミング算出部103が、計測された生体情報が乗員の安静状態のものでないと判断すると(ステップS710:No)、計測された生体情報を保存することなく車両の走行を判断する処理に戻る。
以上の処理を繰り返し行うことで、過去の生体情報に関するデータが蓄積され、個人に対応したより信頼性が高い安静状態の生体情報を測定する車載生体情報計測装置を実現することができる。
【0068】
[動作]
実施形態3の車載生体情報計測装置では、車両状態検出部101が車両の減速開始を検出する。このとき、車両状態検出部101は、車両の初速度V0と車両が停止するまでの時間tとに基づいて平均の減速度Gを算出する。計測タイミング算出部103は、減速度Gを図5に示した実測データに対照し、減速度Gに対応する測定開始時間Aを設定する。生体情報計測部104は、設定開始時間Aの経過後に生体情報として血圧の計測を開始する。生体情報保存部605は、計測された血圧を一時的に保存する。
【0069】
計測タイミング算出部103は、生体情報保存部605a〜605cのいずれかから乗員個人の安静時の血圧のばらつきα1を読み出して生体情報保存部105に保存された血圧のばらつきαと比較する。そして、ばらつきαがばらつきα1より大きくなった時刻を検出し、車両の停止からこの時刻に至るまでの時間を計測終了時間Bに設定する。
生体情報算出部106は、計測タイミング算出部103から計測開始時間A、計測終了時間Bを取得する。そして、生体情報保存部605に一時的に保存されている血圧から計測期間内に計測された血圧を使って最終的な乗員生体情報を生成し、出力する。
【0070】
また、実施形態3では、計測タイミング算出部103が生体情報保存部605に保存されている血圧が乗員の安静時のものであるとみなせるか否か判断する。そして、安静時とみなせる場合に限り、この血圧を対応する個人の生体情報保存部605a〜605cのいずれかに保存する。
以上説明した実施形態3において、生体情報保存部605a〜605cが生体情報保存手段に対応する。また、実施形態1と同様に、生体情報計測部104が生体情報計測手段に対応し、車両状態検出部101が車両状態検出手段に対応する、また、計測タイミング算出部103が計測タイミング算出手段に対応し、生体情報算出部106が乗員生体情報算出手段に対応する。
【0071】
[実施形態3の効果]
(1)実施形態3は、生体情報保存部605a〜605cが、乗員ごとに生体情報を保存しておき、保存された生体情報を乗員に対応して計測期間の設定に使用することができる。
このような構成によれば、乗員の個人的な身体の特性や体質等によらず安静状態を適切に判断することができる。
(2)実施形態3は、計測タイミング算出部103が乗員が安静状態であると判断した場合に限り、計測された生体情報を保存して後の計測期間の設定に使用することができる。
このような構成によれば、各乗員の安静状態時の生体情報だけを蓄積し、各乗員の安静状態を判断するリファレンス情報として信頼性の高い情報を生成することができる。
(3)また、実施形態3は、実施形態1の効果の(1)の効果をも有するものである。
【0072】
[実施形態3の変形例]
(1)実施形態3は、図7のフローチャートのステップS704において、平均の減速度を算出するものに限定している。しかし、平均減速度に代えて最大減速度や加速度指標に順ずる統計値を算出し、このような値を使って計測開始時間Aを設定することも考えられる。なお、このように構成する場合、算出用データ保存部103aには、最大減速度や加速度指標に順ずる統計値と計測開始時間Aとの関係を示すデータを保存しておくのは言うまでもない。
(2)さらに、以上説明したフローチャートのステップS705において、所定の減速度aをGmaxに設定し、減速度がGmax以下である場合にのみ計測開始時間Aを設定してもよい。そして、減速度がGmaxより大きい場合には、計測開始時間Aを一定の計測開始時間A1に設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
101 車両状態検出部
102 時間計測部
103 計測タイミング算出部
103a 算出用データ保存部
104 生体情報計測部
104 生体情報計測部
105 生体情報保存部
106 生体情報算出部
602 個人認証部
605、605a、605b、605c 生体情報保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の生体情報を計測する生体情報計測手段と、
前記車両の減速からの停止を検出する車両状態検出手段と、
前記車両状態検出手段によって車両の停止が検出された後、前記乗員の生体情報の計測を開始する計測開始時刻及び当該計測を終了する計測終了時刻を算出する計測タイミング算出手段と、
前記計測開始時刻から前記計測終了時刻の期間に前記生体情報計測手段によって計測された生体情報に基づいて前記乗員の身体の状態を示す乗員生体情報を算出する乗員生体情報算出手段と、を備えたことを特徴とする車載生体情報計測装置。
【請求項2】
前記計測タイミング算出手段は、前記生体情報計測手段によって計測された生体情報に基づいて前記計測開始時刻及び前記計測終了時刻を算出することを特徴とする請求項1に記載の車載生体情報計測装置。
【請求項3】
前記車両の減速度を検出する減速度検出手段を備え、
前記計測タイミング算出手段は、前記減速度検出手段によって検出された減速度に基づいて前記計測開始時刻を算出することを特徴とする請求項1に記載の車載生体情報計測装置。
【請求項4】
前記計測タイミング算出手段は、前記減速度検出手段によって検出した減速度が大きい場合、小さい場合に比べて前記計測開始時刻をより遅らせることを特徴とする請求項3に記載の車載生体情報計測装置。
【請求項5】
前記計測タイミング算出手段は、前記減速度検出手段によって検出した減速度が予め設定されている最低減速度以下のとき、計測開始時刻を予め設定されている最短時刻に設定することを特徴とする請求項3に記載の車載生体情報計測装置。
【請求項6】
前記乗員生体情報算出手段は、前記生体情報計測手段により計測した乗員の生体情報の平均値にかかる値または前記生体情報のばらつきにかかる条件によって乗員が安静状態であるか否か判断し、乗員が安静状態であると判断されたときに計測した生体情報を使って前記乗員生体情報を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車載生体情報計測装置。
【請求項7】
前記生体情報計測手段によって計測された前記生体情報を保存する生体情報保存手段をさらに備え、
前記生体情報保存手段は、複数の乗員の各々について前記生体情報を保存する複数の保存領域を含み、
前記計測タイミング算出手段は、前記生体情報保存手段の前記複数の保存領域のうち、前記車両に乗車している乗員の生体情報に基づいて前記計測開始時刻及び前記計測終了時刻を算出することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の車載生体情報計測装置。
【請求項8】
前記生体情報は、自律神経系の生体情報であり、血圧、心電、心拍、呼吸、脈波、皮膚電位、体温のいずれか1つを少なくとも含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車載生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−170635(P2012−170635A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35957(P2011−35957)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】