説明

車載用マイク装置

【課題】自動車の搭乗者の音声を集音するために、自動車室内に設けられている車載用マイク装置において、簡易な構造で、特定の搭乗者の音声を集音する性能を維持しつつ小型化することができるようにする。
【解決手段】マイクロホン30の背面30bが車室側に向くようにマイクロホン30が配置され、助手席側に寄って位置する背面集音口18bがマイクロホン30の背面30bにある背面受音部に直結し、運転席側に寄って位置する正面集音口18aがマイクロホン30の正面30aにある正面受音部に、筐体内を迂回する通路を介して接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の搭乗者の音声を集音するために、自動車室内に設けられている車載用マイク装置、特に単一指向性を有するマイクロホンを備えた車載用マイク装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内において、携帯電話や自動車電話などで通話をする際にハンズフリー通話をすることができるように車載用マイク装置が備えられていることがある。また、この車載用マイク装置はナビゲーションシステムの音声操作にも使用されることがある。
【0003】
一般的に、車載用マイク装置は、特定の方向に感度が良い性能を有する単一指向性のマイクロホンを備えている。これにより、特定の搭乗者の音声をはっきりと捉えることができ、それ以外の搭乗者の音声または車外の騒音などのノイズを低減することができる。例えば、車載用マイク装置は、運転席と助手席との間の天井面にあるオーバーヘッドコンソール部に設けられており、マイクロホンの単一指向性を例えば運転席の方向に設定することで、運転席に着座する搭乗者の音声を感度よく集音することができる。
【0004】
従来の車載用マイク装置の一例について図を用いて説明する。図1は、従来の車載用マイク装置の概略構成を示す断面図であり、図2は、従来のマイクロホンの概略構成を示す断面図である。なお、従来の車載用マイク装置は、運転席に着座する搭乗者の音声を感度よく集音する一方で、助手席に着座する搭乗者の音声をできるだけ排除するような指向性が設定された装置である。
【0005】
車載用マイク装置110は、車室内の例えば天井面に設けられる。車載用マイク装置110は、車室内に固定される筐体120と、これに収容されるマイクロホン130とを有する。筐体120の一部は、車室内の天井面118を形成する。マイクロホン130は単一指向性を有する。このため、マイクロホン130は、感度が良い方向、すなわち音源112がある方向に対して向かい合う側を正面130aと規定し、この正面130aの反対にある側を背面130bと規定している。
【0006】
図1に示すように、車載用マイク装置110に対して紙面右側に音源112が位置し、この音源112は、運転席に着座する搭乗者である。そうすると、車載用マイク装置110に対して紙面左側には助手席に着座する搭乗者が位置することになる。
【0007】
筐体120には、マイクロホン130の正面130aと背面130bとに音が到達するように、車室内の天井面118からマイクロホン130まで音の通路がそれぞれ設けられる。具体的には、天井面118において音源112に近い位置、すなわち運転席側に寄った位置に開口118aを有し、その開口118aとマイクロホン130の正面130aとを接続する正面通路122が設けられる。また、天井面118において音源112から遠い位置、すなわち助手席側に寄った位置に開口118bを有し、その開口118bとマイクロホン130の背面130bとを接続する背面通路124が設けられる。
【0008】
正面通路122と背面通路124とは、一般的にマイクロホン130が有する周波数特性に悪影響を及ぼさない構成になっている。通常、マイクロホン130の背面130bに通じる背面通路124によって音が遅延してしまう。そこで、この遅延を正面通路122でも同様に生じさせる。すなわち、正面通路122が、その距離が背面通路124の距離と等しくなるように形成される。これにより、車載用マイク装置110において、マイクロホン130が有する周波数特性に悪影響を及ぼさずにマイクロホン130を使用することができる。
【0009】
次に、単一指向性のマイクロホン130について図2を用いて説明する。マイクロホン130は、マイクハウジング132と、振動板138と、遅延板140とを有する。マイクハウジング132は、音源112の音を受音するため、二つの孔が形成されている。すなわち、正面130aに正面受音部134が、背面130bに背面受音部136がそれぞれ形成されている。マイクハウジング132の内部に、振動板138と遅延板140とが設けられている。具体的には、振動板138が正面130a側に、遅延板140が背面130b側に配置されている。振動板138は、マイクロホン本体であり、音源112の音を捉える板である。遅延板140は、背面受音部136から侵入する音が振動板138に到達するのを遅らせる板であり、この板には音が通る遅延孔140aが形成されている。また、背面130bの内部側には、増幅素子142とコンデンサ144とが配置され、その裏面、すなわち背面130bの外部側には、電源供給と信号出力とを兼用する電極146が配置される。また、その外部側には、電極146と外部基板との間を結ぶケーブル(図示せず)が接続される。
【0010】
この構成により、感度が良い方向、すなわち運転席であり音源112がある方向から正面通路122、正面受音部134を通って振動板138に伝達する音は、はっきりと捉えることができる。一方、感度が良い方向以外の方向、例えば助手席がある方向から背面通路124、背面受音部136を通って遅延板140を介して振動板138に伝達する音は、正面受音部134に回りこんで振動板138に伝達する音に相殺される。したがって、このように構成される車載用マイク装置110においては、運転席に着座する搭乗者の音声をはっきりと捉えることができる。一方で、助手席に着座する搭乗者などの音声はマイクロホン130内にて相殺されて、できるだけ排除される。
【0011】
下記特許文献1においては、自動車の搭乗者の音声を集音するために、車室内の天井面のオーバーヘッドコンソールに単一指向性マイクロホンを備えた車載用マイク装置が記載されている。
【0012】
【特許文献1】特開2007−168686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のような従来の車載用マイク装置110においては、マイクロホン130が有する周波数特性に悪影響を及ぼさないようにするために、正面通路122と背面通路124の距離を等しくする必要がある。そうすると、正面通路122に対してある程度のスペースが必要になってしまい、車載用マイク装置110の小型化が困難であるという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、簡易な構造で、特定の搭乗者の音声を集音する性能を維持しつつ装置の小型化を図ることができる車載用マイク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、車室内に固定される筐体と、筐体に収容された単一指向性のマイクロホンと、を備え、前記マイクロホンは、正面受音部と背面受音部とを含むマイクハウジングと、マイクハウジングの正面側に設けられた振動板と、背面側に設けられた遅延板とを有し、集音したい音源と排除したい音源との間に設けられた車載用マイク装置において、前記マイクロホンは、背面が車室側に向くように配置され、筐体は、集音したい音源側に寄って位置する正面集音口と、排除したい音源側に寄って位置する背面集音口とを有し、前記背面集音口が前記マイクロホンの背面受音部に直結し、前記正面集音口が前記マイクロホンの正面受音部に、筐体内を迂回する通路を介して接続されることを特徴とする。
【0016】
また、マイクハウジングの正面には、電源供給用と信号出力用のケーブルが接続されていることを特徴とする。
【0017】
また、遅延板は、マイクロホンの背面側に複数枚設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車載用マイク装置によれば、簡易な構造で、特定の搭乗者の音声を集音する性能を維持しつつ装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る車載用マイク装置の実施形態について、図に従って説明する。図3は、本実施形態の車載用マイク装置10の概略構成を示す図である。本実施形態においては、一例として、車室内の天井面に設けられた車載用マイク装置を挙げ、この車載用マイク装置について説明する。なお、本発明は、車室内の天井面に設けられた車載用マイク装置に限らず、車室内の搭乗者の音声を集音するために車室内の天井面以外、例えばインストルメントパネルに設けられた車載用マイク装置にも適用できる。
【0020】
車載用マイク装置10は、筐体14と、これの蓋であって、車室内の天井の一部となる下部パネル16とを有する。下部パネル16には、車室内にある音源12から発生した音を筐体14の内部に透過させる集音口18が複数形成されている。下部パネル16の内側、すなわち筐体14の内部には、通路形成部材20と、マイクロホン30と、基板50とが収容される。
【0021】
図4に、図3のA−A線による断面図を示す。通路形成部材20は、下部パネル16の集音口18から侵入する音源12の音をマイクロホン30に導く通路を有する。通路形成部材20には、マイクロホン30(図中、破線で示す)が配置される。次に説明するがマイクロホン30には正面30aと背面30bが規定されている。本実施形態における車載用マイク装置10においては、マイクロホン30の正面30aが図中の上側に向くように通路形成部材20に配置されることを特徴とする。言い換えれば、マイクロホン30の背面30bが車室側に向くように配置され、通常のマイクロホンの配置方向とは逆に配置されることを特徴とする。
【0022】
マイクロホン30について、図5を用いて説明する。マイクロホン30は、単一指向性を有する。このため、マイクロホン30は、一般的に、感度が良い方向、すなわち音源がある方向に対して向かい合う側を正面30aと規定し、この正面30aの反対にある側を背面30bと規定している。
【0023】
マイクロホン30は、マイクハウジング32と、振動板38と、第一及び第二遅延板40,41とを有する。マイクハウジング32は、音源12の音を受音するため、二つの孔が形成されている。すなわち、正面30aに正面受音部34が、背面30bに背面受音部36がそれぞれ形成されている。マイクハウジング32の内部に、振動板38と第一及び第二遅延板40,41とが設けられている。具体的には、振動板38は正面30a側に、遅延板40,41は背面30b側に配置されている。なお、本実施形態においては遅延板が2枚から構成される場合について説明したが、この構成に限らず、遅延板が1枚のみで構成されることもできるし、遅延板が3枚以上から連なるように構成されることもできる。
【0024】
振動板38は、マイクロホン本体であり、音源12の音を捉える板である。第一及び第二遅延板40,41は、背面受音部36から侵入する音が振動板38に到達するのを遅らせる板である。第一遅延板40には音を通す第一遅延孔40aが、第二遅延板41には音を通す第二遅延孔41aがそれぞれ形成されている。背面受音部36と第一及び第二遅延孔40a,41aは、正面30aから背面30bに向かう方向に対してずれて設けられている。これにより、マイクハウジング32の内部において、背面受音部36から振動板38までを結ぶ距離が、第二遅延孔41a、そして第一遅延孔40aを通過することで長くなるので、背面受音部36から侵入する音が振動板38に到達する時間を遅らせることができる。
【0025】
また、マイクロホン30の正面30aの内部側には、増幅素子42とコンデンサ44と含む電気部品が配置される。また、正面30aの外部側には、マイクロホン30への電源供給とマイクロホン30からの信号出力とを兼用する電極46が配置される。また、正面30aの外面には、電極46と基板50との間を結ぶケーブル(図示せず)が接続される。
【0026】
図4に戻り、通路形成部材20の集音口18は、音源12側、すなわち運転席側に寄っている開口を正面集音口18aと、それとは逆に助手席側に寄っている開口を背面集音口18bに分けることができる。通路形成部材20は、正面集音口18aとマイクロホン30の正面30aの正面受音部34とを接続する正面通路22を有する。また、通路形成部材20は、背面集音口18bとマイクロホン30の背面30bの背面受音部36とを接続する背面通路24を有する。背面通路24は、背面集音口18bから背面受音部36に向かい直線的に、比較的短く形成される。なお、背面集音口18bと背面受音部36を直結するようにし、背面通路24を無くすこともできる。これにより、筐体14を平板状にすることができ、車載用マイク装置10の天井内に向かう奥行き寸法を小さくすることができる。結果として、車載用マイク装置10を小型化することができる。
【0027】
一方、正面通路22は、正面集音口18aから断面L状に屈曲して正面30aに到達するよう、すなわち音が迂回して正面受音部34に到達するよう形成される。よって、正面通路22は背面通路24より長く形成される。なお、通路形成部材20より図中の上方、すなわち車室天井の内側には、基板50(図中、破線で示す)が位置し、この基板50が正面通路22の一部を構成する。
【0028】
車載用マイク装置10の動作について説明する。まず、感度が良い方向、すなわち運転席側の音源12のある方向から音を集音する場合について説明する。
【0029】
音源12の音は、下部パネル16の集音口18から筐体14の内部に入り、正面通路22と背面通路24を通る。正面通路22を通過した音は、正面受音部34からマイクハウジング32の内部に侵入し、振動板38に到達する。一方、背面通路24を通過した音は、背面受音部36からマイクハウジング32の内部に侵入し、第一及び第二遅延板40,41を通過して振動板38に到達する。ここで、音源12から振動板38に到達するまでの距離は、正面通路22を通るルートと背面通路24を通るルートとでほぼ等しい。そして、背面通路24を通るルートにおいては、マイクハウジング32内で第一及び第二遅延板40,41を通過し、音が遅延する。したがって、正面通路22を通る音の方が早く振動板38に到達して、マイクロホン30は音源12の音を集音することができる。
【0030】
次に、助手席側の方向からの音をできるだけ排除する場合について説明する。
【0031】
助手席側の音は、下部パネル16の集音口18から筐体14の内部に入り、正面通路22と背面通路24を通る。正面通路22を通過した音は、正面受音部34からマイクハウジング32の内部に侵入し、振動板38に到達する。一方、背面通路24を通過した音は、背面受音部36からマイクハウジング32の内部に侵入し、第一及び第二遅延板40,41を通過して振動板38に到達する。ここで、助手席側にある音源から振動板38に到達するまでの距離は、正面通路22を通るルートのほうが背面通路24を通るルートよりはるかに長い。そして、背面通路24を通るルートにおいては、マイクハウジング32内で第一及び第二遅延板40,41を通過し、音が遅延する。したがって、第一及び第二遅延板40,41により音が遅延する効果と、正面通路22を通ることで音が遅延する効果とが同等になるようにすることにより、助手席側の音源からの音を振動板38で相殺することができる。その結果、助手席側の方向からの音をできるだけ排除することができる。
【0032】
本実施形態においては、運転席に集音したい音源があり、助手席に排除したい音源がある場合について説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、助手席に集音したい音源があり、運転席に排除したい音源がある場合にも適用できる。つまり、集音したい音源と排除したい音源との中間に車載用マイク装置10を配置し、集音したい音源側に正面集音口18aを、排除したい音源側に背面集音口18bを設けることにより、集音したい音源の音を感度よく捉えることができるとともに、排除したい音源の音をできるだけ排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の車載用マイク装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】従来のマイクロホンの概略構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態の車載用マイク装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3のA−A線による断面図である。
【図5】図3のB−B線による断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 車載用マイク装置、12 音源、18a 正面集音口、18b 背面集音口、30 マイクロホン、30a 正面、30b 背面、32 マイクハウジング、34 正面受音部、36 背面受音部、38 振動板、40,41 遅延板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に固定される筐体と、
筐体に収容された単一指向性のマイクロホンと、
を備え、
前記マイクロホンは、正面受音部と背面受音部とを含むマイクハウジングと、マイクハウジングの正面側に設けられた振動板と、背面側に設けられた遅延板とを有し、
集音したい音源と排除したい音源との間に設けられた車載用マイク装置において、
前記マイクロホンは、背面が車室側に向くように配置され、
筐体は、集音したい音源側に寄って位置する正面集音口と、排除したい音源側に寄って位置する背面集音口とを有し、
前記背面集音口が前記マイクロホンの背面受音部に直結し、
前記正面集音口が前記マイクロホンの正面受音部に、筐体内を迂回する通路を介して接続される、
ことを特徴とする車載用マイク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用マイク装置において、
マイクハウジングの正面には、電源供給用と信号出力用のケーブルが接続されていることを特徴とする車載用マイク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載用マイク装置において、
遅延板は、マイクロホンの背面側に複数枚設けられていることを特徴とする車載用マイク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−208493(P2009−208493A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50498(P2008−50498)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】