車載用レーダ装置
【課題】 車体とバンパーとの間等の奥行き長さが短い空間に搭載することが可能で、搭載される車両の走行状態などに応じてビーム方向の切替えやスキャンを行うことができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】 レーダモジュール1aは、放射するレーダビームによって車両周辺の障害物を検知し、放射されるレーダビームが誘電体レンズ部2aの境界面に応じて屈折する。移動機構3aは、車両の走行状態に応じて制御部4aによって動作制御され、レーダモジュール1aを放射する出射方向に対して垂直に移動させて、誘電体レンズ部2aが有する凹面の異なる位置等にレーダモジュール1aから放射されるレーダビームを入射させる。これによって、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させることができる。
【解決手段】 レーダモジュール1aは、放射するレーダビームによって車両周辺の障害物を検知し、放射されるレーダビームが誘電体レンズ部2aの境界面に応じて屈折する。移動機構3aは、車両の走行状態に応じて制御部4aによって動作制御され、レーダモジュール1aを放射する出射方向に対して垂直に移動させて、誘電体レンズ部2aが有する凹面の異なる位置等にレーダモジュール1aから放射されるレーダビームを入射させる。これによって、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、より特定的には、車両に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用レーダ装置として、レンズの屈折効果を利用してレーダビームの方向を変化させる技術がある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。これらの技術が用いられる装置は、レーダモジュールを車両のバンパーに設置する場合を想定し、バンパーの形状を変化させて当該バンパーを誘電体レンズとして用いたり、バンパーに直接誘電体レンズを取り付けたりする構造を有している。
【0003】
また、レーザーレーダ装置では、車間距離制御(ACC)システム用にスキャン式レーザーレーダが実用化されている。このスキャン式レーザーレーダは、図21に示すように、レーザダイオード101からレーザを出射し、当該レーザを反射鏡102に入射させ、さらにポリゴンミラー103に反射させるという2段反射によって、レーダビームをスキャンする構造である。さらに、従来のレーザーレーダ装置では、レーザーレーダの一次放射器に対してコリメートレンズを移動させ、一次放射器とコリメートレンズとの距離を可変にすることで、搭載される車速に応じてレーザーレーダ装置から放射されるスキャン範囲を調整するという技術がある(例えば特許文献3)。ここで、コリメートレンズとは、一次放射器から放射されるレーザ光を集約するためのレンズである。
【特許文献1】特許第3419675号公報
【特許文献2】特開2000−292537号公報
【特許文献3】特開2000−75030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車載用レーダ装置では、搭載される車両の走行状態(例えば、車速や交差点やカーブ走行時などの右左折)に応じて、当該レーダ装置から放射されるビームの方向切替えやスキャンを行う技術が開示されていない。
【0005】
また、図21で示したレーザーレーダ装置を用いたスキャン方式では、反射鏡102やポリゴンミラー103を設置する必要がある。また、車速に応じてレーダビーム幅を調整する場合、上記特許文献3で開示されたレーザーレーダ装置では、スキャン範囲を可変にするためにコリメートレンズの焦点距離を移動させる必要がある。しかしながら、レーダ装置を車体とバンパーとの間等の奥行き長さが短い空間に搭載することを想定した場合、反射鏡102、ポリゴンミラー103、コリメートレンズを前後に移動させる機構等を設ける空間が小さいために搭載が困難となり、反射鏡102およびポリゴンミラー103を設置する空間やコリメートレンズを前後に移動させる距離自体を確保できないことも考えられる。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、車体とバンパーとの間等の奥行き長さが短い空間に搭載することが可能で、搭載される車両の走行状態などに応じてビーム方向の切替えやスキャンを行うことができるレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
第1の発明は、車両周辺の物体を検知するレーダ装置である。レーダ装置は、レーダモジュール、誘電体レンズ部、移動機構、および移動制御部を備える。レーダモジュールは、所定の出射方向に対してレーダビームを放射する。誘電体レンズ部は、レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されている。移動機構は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方をレーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる。移動制御部は、車両の走行状態に応じて誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、レーダモジュールと誘電体レンズ部との相対的な位置関係がその方向にレーダビームが出射される位置となるように移動機構を動作制御する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、誘電体レンズ部は、レーダモジュールから入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されている。移動機構は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方を所定の方向に移動させる。移動制御部は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方が所定の方向に往復移動するように移動機構を動作制御する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部のレンズは、車両のバンパーを加工することによって形成される。レーダモジュールは、バンパーの内側空間にレーダビームの出射方向をそのバンパーと対向する方向として配置される。移動機構は、バンパーの外側面に対して平行に、かつ所定の方向にレーダモジュールを移動させる。
【0010】
第4の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部は、車両のバンパーの内側空間においてそのバンパーの内側面に沿って所定の方向に移動可能に構成される。レーダモジュールは、バンパーの内側空間にレーダビームの出射方向をそのバンパーと対向する方向として配置される。移動機構は、誘電体レンズ部をバンパーの内側面に沿って所定の方向に移動させる。
【0011】
第5の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部のレンズは、レーダモジュールからのレーダビームを入射する1つの凹レンズ面を有している。
【0012】
第6の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部のレンズは、所定の方向に並設され、車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有している。
【0013】
第7の発明は、上記第2の発明において、レーダ装置は、車速検出部および舵角検出部を、さらに備えている。車速検出部は、車両の車速を検出して、その車速を示す信号を移動制御部に出力する。舵角検出部は、車両のハンドル舵角を検出して、その舵角を示す信号を移動制御部に出力する。移動制御部は、車速検出部から出力された信号が示す車両の車速および舵角検出部から出力された信号が示す車両の走行方向に基づいて移動機構の動作を制御する。
【0014】
第8の発明は、上記第7の発明において、移動制御部は、車速検出部から出力される信号が第1車速以下の車速を示すとき、所定の方向に移動可能な全範囲に対して往復移動するように移動機構を動作制御する。移動制御部は、車速検出部から出力される信号が第1車速に比べて高速な第2車速より速い車速を示すとき、誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となるように移動機構を動作制御する。移動制御部は、車速検出部から出力される信号が第1車速より速く第2車速以下の車速を示すとき、誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となる位置を含む全範囲の1部に対して往復移動するように移動機構を動作制御する。
【0015】
第9の発明は、周辺の物体を検知するレーダ装置が設置された車両である。レーダ装置は、レーダモジュール、誘電体レンズ部、移動機構、および移動制御部を備える。レーダモジュールは、車両に設けられたバンパーの内側空間に設けられ、所定の出射方向に対してレーダビームを放射する。誘電体レンズ部は、バンパーを加工してまたはバンパーの内側面に沿った近傍に別体で設けられ、レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されている。移動機構は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方をレーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる。移動制御部は、車両の走行状態に応じて誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、レーダモジュールと誘電体レンズ部との相対的な位置関係がその方向にレーダビームが出射される位置となるように移動機構を動作制御する。
【0016】
第10の発明は、周辺の物体を検知するレーダ装置が設置される車両のバンパーである。バンパーは、レンズ部が形成されている。レンズ部は、誘電体材料で構成され、所定のレーダモジュールから出射されるレーダビームを内側面から入射して、その入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射する。レンズ部は、内側面にレーダビームを入射する1つの凹レンズ面、または所定の方向に並設され、車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車載用レーダ装置は、搭載される車両の走行状態に応じてレーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方を移動させて、放射するレーダビームのビーム放射方向を変化させることができる。また、一般的に周辺の物体を検出するためのレーダビームの出射方向は、車両を基準として水平な放射方向となるが、レーダモジュールや誘電体レンズ部の移動方向がビーム出射方向に対して垂直であるため、車両のボディなどに沿った方向となり、レーダモジュールや誘電体レンズ部を移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。また、1つのレーダモジュールを用いるため、低コストで実現できるものである。
【0018】
上記第2の発明によれば、レーダモジュールまたは誘電体レンズ部を所定の方向に往復移動させることによって、出射されるビーム方向を連続的に変化させてビームスキャンを行うことができる。また、車両の走行状態、例えば交差点での右左折時やカーブ走行時等に応じてビームの方向切替えやビームスキャンを行うことができる。このビームスキャンについても、1つのレーダモジュールを用いているため、電子スキャン等に比べ低コストで実現できる。
【0019】
上記第3の発明によれば、搭載される車両の走行状態に応じてレーダモジュールを移動させて、ビームスキャンやビーム放射方向を変化させることができる。また、誘電体レンズ部が車両に備えられたバンパーを加工して形成され、レーダモジュールの移動方向がバンパーに対して平行となるため、レーダモジュールを移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【0020】
上記第4の発明によれば、搭載される車両の走行状態に応じて誘電体レンズ部を移動させて、ビームスキャンやビーム放射方向を変化させることができる。また、誘電体レンズ部が車両に備えられたバンパーと別体で当該バンパーの内側面に沿って移動可能に構成され、誘電体レンズ部の移動方向がバンパーに対して平行となるため、誘電体レンズ部を移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【0021】
上記第5の発明によれば、凹レンズ面を形成することによって容易にビームスキャンやビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部を構成することが可能であり、それらの形状によって出射するビーム放射方向を調整することができる。
【0022】
上記第6の発明によれば、複数の凹面を形成することによって容易にビームスキャンやビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部を構成することが可能であり、それらの形状によって出射するビーム放射方向を調整することができる。
【0023】
上記第7の発明によれば、搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて、ビームスキャンやビーム放射方向を変化させることができる。
【0024】
上記第8の発明によれば、搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて、ビームスキャンする範囲や方向およびビーム放射方向を変化させることができる。
【0025】
また、本発明の車両によれば、上述したレーダ装置を搭載することによって、上述したレーダ装置と同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、本発明のバンパーによれば、上述したレーダ装置の誘電体レンズ部を構成するため、車両にレーダ装置を設置する場合の低コスト化ならびに奥行き面での省スペース化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置について説明する。なお、図1は、当該レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。典型的には、当該レーダ装置は、車両に搭載されて用いられる。
【0028】
図1において、当該レーダ装置は、レーダモジュール1a、誘電体レンズ部2a、移動機構3a、制御部4a、中央処理装置5、車速パルス送信部6、およびハンドル舵角送信部7を有している。レーダモジュール1aは、放射するレーダビームによって車両周辺の障害物を検知する。誘電体レンズ部2aは、後述するレンズ部を含んでおり、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームを境界面で屈折させる。移動機構3aは、レーダモジュール1aがレーダビームを放射する出射方向に対して垂直に当該レーダモジュール1aを移動させ、誘電体レンズ部2aが有するレンズ部にレーダモジュール1aから放射されるレーダビームを入射させる。制御部4aは、中央処理装置5から送信される制御信号に応じて、移動機構3aがレーダモジュール1aを移動させる動作を制御する。車速パルス送信部6は、搭載される車両の車速を示す車速パルス信号を中央処理装置5に出力する。また、ハンドル舵角送信部7は、搭載される車両のハンドル舵角を示すハンドル舵角信号を中央処理装置5に出力する。そして、中央処理装置5は、受け取った車速パルス信号およびハンドル舵角信号に基づいて適切なレーダビームの出射方向やスキャン範囲を設定し、当該出射方向およびスキャン範囲に応じた制御信号を制御部4aへ出力する。
【0029】
このように、当該レーダ装置は、搭載される車両の車速やハンドル舵角に応じて制御部4aが移動機構3aを動作させることによって、レーダビームの出射方向やスキャン範囲を切替えることができる。なお、複数のレーダモジュール1a、誘電体レンズ部2a、移動機構3a、および制御部4aの組をそれぞれ搭載される車両の所定箇所に設置し、中央処理装置5がそれぞれの組を制御してもかまわない。説明を具体的にするために、第1の実施形態では、搭載される車両前方および車両後方のバンパー内にそれぞれ4組ずつ並べて設置し、それぞれのレーダモジュール1aを誘電体レンズ部2aに対して移動させる一例を用いる。そして、車両前方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。また、車両後方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。中央処理装置5が行う詳細な動作制御の内容は、後述する。
【0030】
レーダモジュール1aは、例えばレーザーレーダ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ等の車載用レーダとする。具体的には、レーダモジュール1aは、水平方向に±15°および垂直方向に±10°程度の検知範囲を持つセンサであり、そのサイズが70mm(横)×50mm(縦)×10mm(厚み)程度である。
【0031】
誘電体レンズ部2aは、レーダモジュール1aが移動しながら放射するレーダビームを、そのレーダモジュール1aの位置に応じて出射する方向が変化するように形成されたレンズ部を有している。具体的には、誘電体レンズ部2aは、搭載される車両の前後に固設されているバンパーを加工して形成される。そして、バンパーは、少なくともレンズ部として機能する部位が誘電体材料で形成されている。例えば、誘電体レンズ部2aのレンズ面は、入射側が1つの凹レンズ面やフレネルレンズの形状、あるいは異なるビーム屈折角度を有するくぼみを段階的に組み合わせた形状であり、出射側が平面となった加工形状とする。なお、レーダモジュール1aの初期位置は、そのビーム方向が屈折しない正面となる位置とする。
【0032】
図2は、入射側を1つの凹レンズ面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2aのレンズ部の一例を示す概略断面図である。なお、図2は、誘電体レンズ部2aのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0033】
図2において、誘電体レンズ部2aのレンズ部は、バンパーを加工して形成され、入射側の凹面21aおよび出射側の平面22によって形成される。例えば、レンズ部は、バンパーの内側面の一部を一面レンズで形成される凹レンズ面(凹面21a)になるように加工することによって形成される。
【0034】
レーダモジュール1aから放射されたビームが凹面21aに入射した場合、空気と誘電体レンズ部2a(誘電体材料で形成されたバンパー)との誘電率の違いから、凹面21aおよび平面22において当該ビームが屈折する。なお、図2では、レーダモジュール1aから出射されるビームが凹面21aに入射角が0°に近い値で入射する一例を示している。
【0035】
ここで、レーダモジュール1aから放射されたビームは、凹面21aと平面22で、空気と誘電体レンズ部2aとの誘電率の違いから屈折する。平面22において、誘電体レンズ部2aの屈折率をn1、入射角をθ1、空気の屈折率をn2、出射角をθ2とすると、スネルの法則から、
n1sinθ1=n2sinθ2
が成り立つ。ここで、n1>n2なので、レーダモジュール1aから出射されるビームが誘電体レンズ部2aから空気へ出て行く平面22では、入射角θ1に対して出射角θ2が大きくなる。また、レーダモジュール1aから出射されるビームが空気から誘電体レンズ部2aに入る凹面21aでは、入射角に対して出射角が小さくなる。したがって、レーダモジュール1aから出射されるビームは、凹面21aに対して入射する位置に応じて平面22から出射される方向が変化する。具体的には、凹面21aの中央に入射角が0°に近い値で入射するビームが屈折せずに平面22から出射され、凹面21aの中央から離れると当該離れた距離に応じてビーム方向が広がって平面22から出射される。
【0036】
このように、誘電体レンズ部2aの平面22から出射されるビームの方向が変化し、レーダモジュール1aの位置に応じて、より広範囲にビーム放射することが可能となる。例えば、誘電体レンズ部2aの屈折率n1=1.5、空気の屈折率n2=1.0とすると、15°方向の放射ビームが平面22での出射角が約23°となり、約8°ビームを広げることができる。
【0037】
また、屈折率が大きい媒質(誘電体レンズ部2a)から小さい媒質(空気)にビームが出射される場合、臨界角sinθ=n2/n1(ただし、n1>n2)の条件が存在し、臨界角θを超える角度で平面22にビームが入射すると、ビームが透過せずに平面22で全反射してしまうので、注意する必要がある。本実施形態では、上述の屈折率で考えた場合、臨界角θが約40°となるが、レーダモジュール1aが水平幅±15°のビームを放射するために平面22で全反射しない。
【0038】
なお、上述した説明では、広角側レンズ部がバンパーの内側面の一部を凹レンズ面(凹面21aで示される一面レンズ)になるように加工することによって形成されたが、他の形状でもかまわない。例えば、バンパーの内側面の一部をフレネルレンズの凹レンズ面になるように加工することによって形成してもかまわない。図3は、レンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図である。なお、図2と同様に図3も誘電体レンズ部2aのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0039】
図3において、レンズ部は、バンパーを加工して形成され、入射側の凹面21bおよび出射側の平面22によって形成される。例えば、レンズ部は、バンパーの内側面の一部をフレネルレンズの凹レンズ面(凹面21b)になるように加工することによって形成される。なお、レーダモジュール1aから放射されたビームが凹面21bに入射した後に方向が変化する説明は、上述した凹面21aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
次に、図4および図5を参照して、レーダモジュール1aを水平移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図4は、凹面21a(一面レンズ)で形成された誘電体レンズ部2aを用いてレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図である。図5は、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面21c)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2aを用いてレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図である。例えば、凹面21cは、それぞれ異なった傾斜角度を有する複数のくぼみで形成される。なお、凹面21aは、凹面21b(フレネルレンズ)で形成されてもかまわない。
【0041】
まず、レーダモジュール1a、誘電体レンズ部2a、および移動機構3aの位置関係および動作について説明する。図4および図5において、誘電体レンズ部2aは、車両のバンパーを加工することによって凹面21aまたは21cが形成されている。なお、図5に示す凹面21cは、車両水平方向(つまり、バンパーの長軸方向)に並設され、それぞれバンパー内側に形成されている。移動機構3aは、レーダモジュール1aをバンパー内側空間内で凹面21a内の異なる位置(例えば水平;図示白抜き矢印で示す)、または凹面21cの並設方向(図示白抜き矢印で示す)に沿って移動させる。つまり、移動機構3aは、レーダモジュール1aからのレーダビームを凹面21a内の異なる位置、または凹面21cへ選択的に放射できる位置にレーダモジュール1aを移動させることができる(図4および図5においては、破線で示す)。
【0042】
図4に示すように、移動機構3aが、凹面21a内の異なる位置にレーダモジュール1aがレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを水平移動させた場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが凹面21aに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される。例えば、図4では、異なる5つの放射方向を示すビームRB1〜RB5が示されているが、さらにビーム角度を細分化して外部空間に放射することも可能である。そして、凹面21aは、凹面21aの中央から両端へ入射位置が離れる位置に応じて、レーダモジュール1aから放射されるビームが当該中央から広がる方向に屈折するように加工されている。例えば、凹面21aの中央にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB3)。また、凹面21aの左端近傍にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB1)。そして、凹面21aの右端近傍にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB5)。このように、移動機構3aがレーダモジュール1aを移動させることによって、凹面21aを有する誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3aが凹面21aに対してレーダモジュール1aを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームが少なくとも凹面21a内に入射可能なできるだけ広い範囲を設定するのが好ましい。
【0043】
図5に示すように、凹面21cそれぞれにレーダモジュール1aがレーダビームを放射するように移動機構3aがレーダモジュール1aを並設方向に順次水平移動させた場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが凹面21cそれぞれに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される。例えば、図5では、5つのビームRB1〜RB5が示されているが、さらに多くの凹面21cを形成して、さらにビーム角度が細分化されて外部空間に放射されてもかまわない。そして、両端付近に形成された凹面21cは、レーダモジュール1aから放射されるビームが中央から広がる方向に屈折するように加工されており、中央に行くにしたがって屈折が小さくなるように加工されている。例えば、中央に形成された凹面21c(平面となるため凹面とならない)にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB3)。また、左端に形成された凹面21cにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB1)。そして、右端に形成された凹面21cにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB5)。このように、移動機構3aがレーダモジュール1aを水平移動させることによって、凹面21cを有する誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3aが凹面21cに対してレーダモジュール1aを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームが左端に形成された凹面21cに入射する位置からレーダビームが右端に形成された凹面21cに入射する位置までに設定される。
【0044】
次に、図6を参照して、レーダモジュール1aを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図6(a)は、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面21d)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2aを用いてレーダモジュール1aが垂直移動する動作を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)の水平断面B−Bを図示A方向から見た断面概略図である。図6(c)は、図6(a)の水平断面C−Cを図示A方向から見た断面概略図である。図6(d)は、図6(a)の水平断面D−Dを図示A方向から見た断面概略図である。図6(e)は、図6(a)の水平断面E−Eを図示A方向から見た断面概略図である。図6(f)は、図6(a)の水平断面F−Fを図示A方向から見た断面概略図である。
【0045】
図6(a)において、誘電体レンズ部2aは、車両のバンパーを加工することによって凹面21dが形成され、その一部が図示されている。なお、図6(a)に示す凹面21dは、車両垂直方向(つまり、バンパーの短軸方向)に並設され、それぞれバンパー内側に形成されている。移動機構3a(図示せず)は、レーダモジュール1aをバンパー内側空間内で凹面21dの並設方向(図示白抜き矢印で示す)に沿って移動させる。移動機構3aは、レーダモジュール1aからのレーダビームを凹面21dへ選択的に放射できる位置にレーダモジュール1aを移動させることができる(図6(a)においては、中央の凹面21dへレーダビームを放射できる位置にレーダモジュール1aが配置されている)。
【0046】
図6(b)〜図6(f)に示すように、凹面21dそれぞれにレーダモジュール1aがレーダビームを放射するように移動機構3aがレーダモジュール1aを並設方向に順次垂直移動させた場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが凹面21dそれぞれに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される。例えば、図6では、5つのビームRB1〜RB5が示されているが、さらに多くの凹面21dを形成して、さらにビーム角度が細分化されて外部空間に放射されてもかまわない。そして、上下端付近に形成された凹面21dは、レーダモジュール1aから放射されるビームが左右に広がる方向に屈折するように加工されており、中央に行くにしたがって屈折が小さくなるように加工されている。例えば、中央に形成された凹面21d(平面となるため凹面とはならない)にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB3;図6(d))。また、上端に形成された凹面21dにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB1;図6(b))。そして、下端に形成された凹面21dにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB5;図6(f))。このように、移動機構3aがレーダモジュール1aを垂直移動させることによって、凹面21dを有する誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。ただし、垂直移動の場合、左右にスキャンしながら上下に移動するので、厳密には斜めにスキャンしていることになる。なお、移動機構3aが凹面21dに対してレーダモジュール1aを垂直移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームが上端に形成された凹面21dに入射する位置からレーダビームが下端に形成された凹面21dに入射する位置までに設定される。
【0047】
なお、図4〜図6において、誘電体レンズ部2aを上下方向に屈折するように加工した場合、垂直方向にビームをスキャンすることができる。ただし、図5のように、水平方向にレーダモジュール1aが移動する場合、上下にスキャンしながら左右に動くので、厳密には斜めにスキャンしていることになる。
【0048】
次に、図7を参照して、レーダモジュール1aを移動させることによってビーム方向およびスキャン範囲を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図7は、搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて制御する中央処理装置5の動作を示すフローチャートである。
【0049】
図7において、中央処理装置5は、車速パルス送信部6より車速パルス信号(ステップS51)およびハンドル舵角送信部7よりハンドル舵角信号(ステップS52)を受け取る。そして、中央処理装置5は、受け取った車速パルス信号に基づいて車速を演算し、当該車速が閾値M以下か否か(ステップS53)、および当該車速が閾値N以下か否か(ステップS54)を判断する。ここで、閾値MおよびNは任意の値であり、例えばM=20km/h、N=60km/hである。後述により明らかとなるが、閾値Mは、スキャン範囲を拡大して車両周辺の障害物を検出するか否かを判断するための閾値である。また、閾値Nは、ハンドル舵角方向に応じて所定の方向にビーム方向を固定して相対的に遠くの障害物を検出するか否かを判断するための閾値である。中央処理装置5は、車速≦Mの場合(ステップS53でYes)に処理を次のステップS55に進め、M<車速≦Nの場合(ステップS54でYes)に処理を次のステップS56に進め、N<車速の場合(ステップS53およびS54がいずれもNo)に処理を次のステップS60に進める。
【0050】
ステップS55において、中央処理装置5は、各レーダモジュール1aが上述した移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動するように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに各移動機構3aを往復移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させてレーダモジュール1aを往復移動させる。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速M以下の場合に、各レーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動しながら放射されるビームが誘電体レンズ部2aを通過し、スキャン範囲を拡大して車両周辺の障害物を検出することができる。
【0051】
ステップS56において、中央処理装置5は、上記ステップS52で受け取ったハンドル舵角信号に基づいて車両の進行方向を演算し、当該車両の進行方向が左か否か、当該車両の進行方向が直進か否か、および当該車両の進行方向が右か否かを判断する。
【0052】
車両の進行方向が左の場合、車両の主に左側をビームスキャンするために、中央処理装置5は、レーダモジュール1aが車両に対して左側をビームスキャンするように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS57)。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。そして、制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち左半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち右半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速N以下で進行方向が左の場合にレーダ装置が車両の主に左方向をビームスキャンすることができる。
【0053】
車両の進行方向が直進の場合、車両の主に前後方向をビームスキャンするために、中央処理装置5は、レーダモジュール1aが車両に対して前後方向をビームスキャンするように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS58)。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。そして、制御部4aは、車両の前方および後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについて、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち中央付近をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速N以下で進行方向が直進の場合にレーダ装置が車両の主に前後方向をビームスキャンすることができる。
【0054】
車両の進行方向が右の場合、車両の主に右側をビームスキャンするために、中央処理装置5は、レーダモジュール1aが車両に対して右側をビームスキャンするように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS59)。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。そして、制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち右半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち左半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速N以下で進行方向が右の場合にレーダ装置が車両の主に右方向をビームスキャンすることができる。
【0055】
一方、N<車速の場合(ステップS53およびS54がいずれもNo)、ステップS60において、中央処理装置5は、上記ステップS52で受け取ったハンドル舵角信号に基づいて車両の進行方向を演算し、当該車両の進行方向が左か否か、当該車両の進行方向が直進か否か、および当該車両の進行方向が右か否かを判断する。N<車速の場合、車両が高速走行していると想定されるので、上述したようなビームスキャンを行うと検出不要な障害物まで検知してしまう可能性がある。そこで、高速走行の場合は、ビーム方向を車両進行方向に応じて切替える。
【0056】
車両の進行方向が左の場合、車両の左方向にある障害物を検出するために、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の左側となる方向がビーム放射方向となるように、制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS61)。具体的には、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の左側となる方向に応じたビーム放射方向を算出し、当該ビーム放射方向に応じたレーダモジュール1aの配置位置を決定する。そして、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の左側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の右側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速Nより速く進行方向が左の場合にレーダ装置が車両のハンドル舵角に応じた方向に固定してビーム放射することができる。
【0057】
車両の進行方向が直進の場合、車両の前後方向にある障害物を検出するために、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の前後方向がビーム放射方向となるように、制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS62)。具体的には、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の前後方向に応じたビーム放射方向を算出し、当該ビーム放射方向に応じたレーダモジュール1aの配置位置を決定する。そして、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。制御部4aは、車両の前方および後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速Nより速く進行方向が直進の場合にレーダ装置が車両のハンドル舵角に応じた前後方向に固定してビーム放射することができる。
【0058】
車両の進行方向が右の場合、車両の右方向にある障害物を検出するために、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の右側となる方向がビーム放射方向となるように、制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS63)。具体的には、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の右側となる方向に応じたビーム放射方向を算出し、当該ビーム放射方向に応じたレーダモジュール1aの配置位置を決定する。そして、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の右側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の左側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速Nより速く進行方向が右の場合にレーダ装置が車両のハンドル舵角に応じた方向に固定してビーム放射することができる。
【0059】
ステップS64において、中央処理装置5は、車両周辺の障害物検知を終了するか否かを判断する。そして、中央処理装置5は、検知を継続する場合、上記ステップS51戻って処理を継続する。一方、中央処理装置5は、検知を終了する場合、当該フローチャートによる処理を終了する。これらの処理により、車速やハンドル舵角に応じてビームスキャンする方向および幅やビーム放射方向を切替えることができる。
【0060】
次に、図8、図9、および図10を参照して、レーダ装置が搭載された車両Cの走行状態に応じた各ビームスキャンおよびビーム放射方向について説明する。なお、図8(a)は、レーダ装置が搭載された車両Cが交差点を左折する際の各ビームスキャンを示す図である。図8(b)は、レーダ装置が搭載された車両Cが交差点を右折する際の各ビームスキャンを示す図である。図9(a)は、レーダ装置が搭載された車両Cが左カーブ道路を走行する際の各ビームスキャンを示す図である。図9(b)は、レーダ装置が搭載された車両Cが車線変更を行う際の各ビームスキャンを示す図である。図10(a)は、レーダ装置が搭載された車両Cが高速走行する際の各ビーム放射方向を示す図である。図10(b)は、レーダ装置が搭載された車両Cが高速で右カーブ道路を走行する際の各ビーム放射方向を示す図である。
【0061】
図8(a)において、車両Cが閾値M以下の低速で交差点を左折する際、車両Cに設置された全てのレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの周囲からは、最も広範囲のビームスキャンBSWによるビームが放射され、車両C周辺の広い範囲を検知する。例えば、車両Cが左折することによる内輪差空間にバイクBiが走行している場合、バイクBiを検知することによってバイクBiが車両Cに巻き込まれる事故を防止することができる。
【0062】
図8(b)において、車両Cが閾値M以下の低速で交差点を右折する際、車両Cに設置された全てのレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの周囲からは、最も広範囲のビームスキャンBSWによるビームが放射され、車両C周辺の広い範囲を検知する。例えば、車両Cが右折時に死角となる空間に自転車Byが横断している場合、自転車Byを検知することによって自転車Byが車両Cと接触する事故を防止することができる。
【0063】
図9(a)において、車両Cが閾値M<車速≦閾値Nで左カーブ道路を走行している際、車両Cの前方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に左側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。また、車両Cの後方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に右側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの前方バンパーからは主に車両の前方左側をスキャン範囲とするビームスキャンBSLおよび車両Cの後方バンパーからは主に車両の後方左側をスキャン範囲とするビームスキャンBSRによるビームが放射され、車両Cの左側空間を主に検知する。
【0064】
図9(b)において、車両Cが閾値M<車速≦閾値Nで右側車線に車線変更する際、車両Cの前方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に右側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。また、車両Cの後方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に左側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの前方バンパーからは主に車両の前方右側をスキャン範囲とするビームスキャンBSRおよび車両Cの後方バンパーからは主に車両の後方右側をスキャン範囲とするビームスキャンBSLによるビームが放射され、車両Cの右側空間を主に検知する。
【0065】
図10(a)において、車両Cが閾値Nより速い高速で直進走行する際、車両Cに設置された全てのレーダモジュール1aが車両の前後方向を固定されたビーム放射方向(例えば、図4〜図6に示すビームRB3)としてビームを放射する。これによって、車両Cの前方バンパーからは車両の前方正面をビーム放射方向とするビームRB3および車両Cの後方バンパーからは車両の後方正面をビーム放射方向とするビームRB3によるビームが放射され、車両Cの前後方正面空間を検知する。
【0066】
図10(b)において、車両Cが閾値Nより速い高速で右カーブ道路を走行している際、車両Cの前方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが車両のハンドル舵角に応じた車両前方右方向をビーム放射方向(例えば、図4〜図6に示すビームRB5)としてビームを放射する。また、車両Cの後方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが車両のハンドル舵角に応じた車両後方右方向をビーム放射方向(例えば、図4〜図6に示すビームRB1)としてビームを放射する。これによって、車両Cの前方バンパーからは車両の前方右方向をビーム放射方向とするビームRB5および車両Cの後方バンパーからは車両の後方右方向をビーム放射方向とするビームRB1によるビームが放射され、車両Cの前後方右側空間を検知する。
【0067】
このように、第1の実施形態に係るレーダ装置では、搭載される車両の走行状態(車速、ハンドル舵角)に応じてレーダモジュールを移動させて、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させることができる。例えば、車両が低速走行時では周辺を広く監視する目的で広範囲のビームスキャンを行うことができる。また、車両が中速走行時ではハンドル舵角で示される車両の進行方向を主にビームスキャンすることができる。さらに、車両が高速走行時では車両の進行方向の遠い位置を監視するためにビーム放射方向を固定して障害物を検知することができる。また、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部が車両に備えられたバンパーを加工して形成され、レーダモジュールの移動方向がバンパーに対して平行であるため、レーダモジュールを移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【0068】
(第2の実施形態)
図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置について説明する。なお、図11は、当該レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。典型的には、当該レーダ装置も、車両に搭載されて用いられる。第1の実施形態ではビームスキャンや放射方向を変えるためにレーダモジュールを移動させたが、第2の実施形態では誘電体レンズ部を移動させる。
【0069】
図11において、当該レーダ装置は、レーダモジュール1b、誘電体レンズ部2b、移動機構3b、制御部4b、中央処理装置5、車速パルス送信部6、およびハンドル舵角送信部7を有している。なお、中央処理装置5、車速パルス送信部6、およびハンドル舵角送信部7については、第1の実施形態の構成と同様であるため、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
レーダモジュール1bは、レーダ装置が搭載される車両に固設され、放射するレーダビームによって車両周辺の障害物を検知する。誘電体レンズ部2bは、後述するレンズ部を含んでおり、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームを境界面で屈折させる。移動機構3bは、レーダモジュール1bがレーダビームを放射する出射方向に対して垂直に誘電体レンズ部2bを移動させ、誘電体レンズ部2bが有するレンズ部にレーダモジュール1bから放射されるレーダビームを入射させる。制御部4bは、中央処理装置5から送信される制御信号に応じて、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを移動させる動作を制御する。
【0071】
このように、当該レーダ装置は、搭載される車両の車速やハンドル舵角に応じて制御部4bが移動機構3bを動作させることによって、レーダビームの出射方向やスキャン範囲を切替えることができる。なお、第1の実施形態と同様に、複数のレーダモジュール1b、誘電体レンズ部2b、移動機構3b、および制御部4bの組をそれぞれ搭載される車両の所定箇所に設置し、中央処理装置5がそれぞれの組を制御してもかまわない。説明を具体的にするために、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に搭載される車両前方および車両後方のバンパー内にそれぞれ4組ずつ並べて設置し、それぞれの誘電体レンズ部2bをレーダモジュール1bに対して移動させる一例を用いる。そして、車両前方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。また、車両後方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。中央処理装置5が行う詳細な動作制御の内容は、後述する。
【0072】
レーダモジュール1bは、レーダモジュール1aと同様に、例えばレーザーレーダ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ等の車載用レーダとする。具体的には、レーダモジュール1bは、水平方向に±15°および垂直方向に±10°程度の検知範囲を持つセンサであり、そのサイズが70mm(横)×50mm(縦)×10mm(厚み)程度である。
【0073】
誘電体レンズ部2bは、レーダモジュール1bが放射するレーダビームを、そのレーダモジュール1bに対する位置に応じて出射する方向が変化するように形成されたレンズ部を有している。具体的には、誘電体レンズ部2bは、搭載される車両の前後に固設されているバンパーと同じ素材(誘電体材料)を加工して形成され、移動機構3bからの駆動力を受けて当該バンパーに沿って移動する。例えば、誘電体レンズ部2bが有するレンズ部は、誘電体レンズ部2bのレンズ面は、入射側が一面レンズである凹レンズ面やフレネルレンズの形状、あるいは異なるビーム屈折角度を有するくぼみを段階的に組み合わせた形状であり、出射側が平面となった加工形状とする。なお、誘電体レンズ部2bの初期位置は、レーダモジュール1bから放射されるビーム方向が屈折しない正面となる位置とする。
【0074】
図12は、入射側を凹レンズ面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2bのレンズ部の一例を示す概略断面図である。なお、図12は、誘電体レンズ部2bのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0075】
図12において、誘電体レンズ部2bレンズ部は、入射側の凹面25aおよび出射側の平面26によって形成される。例えば、レンズ部は、誘電体材料の一部を一面レンズである凹レンズ面(凹面25a)になるように加工することによって形成される。誘電体レンズ部2bは、平面26と搭載されるバンパーの内側平面とを当接して設置される。したがって、平面26とバンパーとの間には、空気層が形成される。なお、誘電体レンズ部2bが内側に設置されるバンパーの外側平面を平面27とする。
【0076】
レーダモジュール1bから放射されたビームが凹面25aに入射した場合、空気と誘電体レンズ部2b(誘電体材料)との誘電率の違いから、凹面25a、平面26、および平面27において当該ビームが屈折する。なお、図12では、レーダモジュール1bから出射されるビームが凹面25aに入射角が0°に近い値で入射する一例を示している。
【0077】
ここで、誘電体レンズ部2bとバンパーとの間に空気層が介在するので、レーダモジュール1bから放射されたビームは、誘電体レンズ部2bを通過した後、当該空気層を通過しさらにバンパーを通過することになる。したがって、レーダモジュール1bから放射されたビームは、凹面25aと平面26および27で、空気、誘電体レンズ部2b、およびバンパーの誘電率の違いから屈折する。バンパーの屈折率をn1、出射角をθ1、空気の屈折率をn2、および誘電体レンズ部2bの屈折率をn3、入射角をθ3とすると、スネルの法則から、
n3sinθ3=n1sinθ1
が成り立つ。つまり、誘電体レンズ部2bの誘電率とバンパーの誘電率とが等しい場合、誘電体レンズ部2bの屈折率n3とバンパーの屈折率n1とが等しくなるため、出射角θ1と入射角θ3とが等しくなる。したがって、入射角θ3を誘電体レンズ部2bの移動によって変化させることによって、バンパーから放射される出射角θ1を変化させることができる。また、誘電体レンズ部2bの誘電率をバンパーの誘電率より大きくした場合、誘電体レンズ部2bの屈折率n3がバンパーの屈折率n1と比較して大きくなるため、出射角θ1を入射角θ3より大きくすることができ、バンパーから放射される方向を広げながら変化させることができる。
【0078】
なお、上述した説明では、誘電体レンズ部2bのレンズ部が凹レンズ面(凹面25aで示される一面レンズ)になるように加工することによって形成されたが、他の形状でもかまわない。例えば、フレネルレンズの凹レンズ面になるように加工することによって形成してもかまわない。図13は、レンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図である。なお、図12と同様に図13も誘電体レンズ部2bのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0079】
図13において、誘電体レンズ部2bのレンズ部は、入射側の凹面25bおよび出射側の平面26によって形成される。例えば、レンズ部は、フレネルレンズの凹面(凹面25b)になるように加工することによって形成される。なお、レーダモジュール1bから放射されたビームが凹面25bに入射した後の説明は、上述した凹面25aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0080】
次に、図14〜図19を参照して、誘電体レンズ部2bを水平移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図14〜図18は、レーダモジュール1bに対して、凹面25a(一面レンズ)で形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図である。図19は、レーダモジュール1bに対して、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面25c)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図である。例えば、凹面25cは、それぞれ異なった傾斜角度を有する複数のくぼみで形成される。なお、凹面25aは、凹面25b(フレネルレンズ)で形成されてもかまわない。
【0081】
まず、レーダモジュール1b、誘電体レンズ部2b、および移動機構3bの位置関係および動作について説明する。図14〜図19において、誘電体レンズ部2bは、車両のバンパーの内側に沿ってその長軸方向に移動可能に設置されており、凹面25aまたは25cが形成されている。なお、図19に示す凹面25cは、車両水平方向(つまり、誘電体レンズ部2bの移動方向であり、バンパーの長軸方向)に並設されている。移動機構3bは、誘電体レンズ部2bをバンパー内側に沿って移動させる。移動機構3bは、誘電体レンズ部1bをバンパー内側空間内で凹面25a内の異なる位置(例えば水平)にレーダモジュール1bから放射されるビームが入射する、または凹面25cの並設方向に沿って移動させる。つまり、移動機構3bは、レーダモジュール1bからのレーダビームを凹面25a内の異なる位置、または凹面25cへ選択的に放射できる位置に誘電体レンズ部2bを移動させることができる。
【0082】
図14〜図18に示すように、移動機構3bが凹面25a内の異なる位置にレーダモジュール1bがレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを水平移動させた場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが凹面25aに入射して異なる方向屈折し、誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。例えば、図14〜図18では、異なる5つの放射方向を示すビームRB1〜RB5が示されているが、さらにビーム角度を細分化して外部空間に放射することも可能である。そして、凹面25aは、凹面25aの中央から両端へ入射位置が離れる位置に応じて、レーダモジュール1bから放射されるビームが当該中央から広がる方向に屈折するように加工されている。例えば、凹面25aの中央にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図16;ビームRB3)。また、凹面25aの左端近傍にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図14;ビームRB1)。そして、凹面25aの右端近傍にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図18;ビームRB5)。このように、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを移動させることによって、凹面25aを有する誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3bがレーダモジュール1bに対して誘電体レンズ部2bを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームが少なくとも凹面25a内に入射可能なできるだけ広い範囲を設定するのが好ましい。
【0083】
図19に示すように、凹面25cそれぞれにレーダモジュール1bがレーダビームを放射するように移動機構3bが誘電体レンズ部2bをそれらの並設方向に順次水平移動させた場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが凹面25cそれぞれに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。例えば、図19では、左方向へ屈折するビームRB1のみが示されているが、図14から図18に示したビーム等と同様にさらに多くの凹面25cを形成して、さらにビーム角度が細分化されたビームを外部空間に放射することも可能である。そして、両端付近に形成された凹面25cは、レーダモジュール1bから放射されるビームが中央から広がる方向に屈折するように加工されており、中央に行くにしたがって屈折が小さくなるように加工されている。例えば、中央に形成された凹面25c(平面となるため凹面とならない)にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。また、左端に形成された凹面25cにレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図19;ビームRB1)。そして、右端に形成された凹面25cにレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。このように、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを水平移動させることによって、凹面25cを有する誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームが左端に形成された凹面25cに入射する位置からレーダビームが右端に形成された凹面25cに入射する位置までに設定される。
【0084】
次に、図20を参照して、誘電体レンズ部2bを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図20は、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面25d)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2bがレーダモジュール1bに対して垂直移動する動作を示す斜視図である。
【0085】
図20において、誘電体レンズ部2bは、車両のバンパーの内側に沿って垂直方向(つまり、バンパーの短軸方向)に移動可能に設置されており、凹面25dが形成され、その一部が図示されている。なお、図20に示す凹面25dは、車両垂直方向に並設され、それぞれバンパー内側を凹として形成されている。移動機構3b(図示せず)は、誘電体レンズ部2bをバンパー内側空間内でバンパーに沿って垂直方向(図示白抜き矢印で示す)に移動させる。移動機構3bは、レーダモジュール1bからのレーダビームを凹面25dへ選択的に放射できる位置に誘電体レンズ部2bを移動させることができる(図20においては、中央の凹面25dへレーダビームを放射できる位置に誘電体レンズ部2bが配置されている)。なお、各凹面25dへ入射した後のビームの屈折については、誘電体レンズ部2bを移動させること以外、図6(b)〜図6(f)を用いて説明した5つのビームRB1〜RB5と同様であるため、ここではこれ以上の説明を省略する。このように、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを垂直移動させることによって、凹面25dを有する誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを垂直移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームが上端に形成された凹面25dに入射する位置からレーダビームが下端に形成された凹面25dに入射する位置までに設定される。
【0086】
なお、図14〜図19において、誘電体レンズ部2bを上下方向に屈折するように加工した場合、垂直方向にビームをスキャンすることができる。
【0087】
誘電体レンズ部2bを移動させることによってビーム方向およびスキャン範囲を切替えるレーダ装置の動作については、図7を用いて説明した第1の実施形態の中央処理装置5の動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0088】
このように、第2の実施形態に係るレーダ装置では、搭載される車両の走行状態(車速、ハンドル舵角)に応じて誘電体レンズ部を移動させて、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させることができる。例えば、車両が低速走行時では周辺を広く監視する目的で広範囲のビームスキャンを行うことができる。また、車両が中速走行時ではハンドル舵角で示される車両の進行方向を主にビームスキャンすることができる。さらに、車両が高速走行時では車両の進行方向の遠い位置を監視するためにビーム放射方向を固定して障害物を検知することができる。また、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部の移動方向がバンパーに対して平行であるため、誘電体レンズ部を移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化や誘電体レンズ部、レーダモジュール、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係るレーダ装置は、省スペース化や車両の状態に応じた検出が可能であり、搭載される車両の周囲の障害物等を検知する装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図
【図2】図1の入射側を凹面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2aのレンズ部の一例を示す概略断面図
【図3】図1の誘電体レンズ部2aのレンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図
【図4】凹面21aで形成された誘電体レンズ部2aを用いて図1のレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図
【図5】異なるビーム屈折角度を有するくぼみを組み合わせて形成された誘電体レンズ部2aを用いて図1のレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図
【図6】図1のレーダモジュール1aを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明するための概略図
【図7】搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて制御する中央処理装置5の動作を示すフローチャート
【図8】レーダ装置が搭載された車両Cが交差点を左折する際、および車両Cが交差点を右折する際の各ビームスキャンを示す図
【図9】レーダ装置が搭載された車両Cが左カーブ道路を走行する際、および車両Cが車線変更を行う際の各ビームスキャンを示す図
【図10】レーダ装置が搭載された車両Cが高速走行する際、および車両Cが高速で右カーブ道路を走行する際の各ビーム放射方向を示す図
【図11】本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図
【図12】図11の入射側を凹面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2bのレンズ部の一例を示す概略断面図
【図13】図11の誘電体レンズ部2bのレンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図
【図14】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図15】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図16】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図17】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図18】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図19】図11のレーダモジュール1bに対して、異なるビーム屈折角度を有するくぼみを組み合わせて形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図20】図11の誘電体レンズ部2bを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明するための図
【図21】従来のレーザーレーダのスキャン方式の概略を示した図
【符号の説明】
【0091】
1…レーダモジュール
2…誘電体レンズ部
21、25…凹面
22、26、27…平面
3…移動機構
4…制御部
5…中央処理装置
6…車速パルス送信部
7…ハンドル舵角送信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、より特定的には、車両に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用レーダ装置として、レンズの屈折効果を利用してレーダビームの方向を変化させる技術がある(例えば特許文献1、特許文献2参照)。これらの技術が用いられる装置は、レーダモジュールを車両のバンパーに設置する場合を想定し、バンパーの形状を変化させて当該バンパーを誘電体レンズとして用いたり、バンパーに直接誘電体レンズを取り付けたりする構造を有している。
【0003】
また、レーザーレーダ装置では、車間距離制御(ACC)システム用にスキャン式レーザーレーダが実用化されている。このスキャン式レーザーレーダは、図21に示すように、レーザダイオード101からレーザを出射し、当該レーザを反射鏡102に入射させ、さらにポリゴンミラー103に反射させるという2段反射によって、レーダビームをスキャンする構造である。さらに、従来のレーザーレーダ装置では、レーザーレーダの一次放射器に対してコリメートレンズを移動させ、一次放射器とコリメートレンズとの距離を可変にすることで、搭載される車速に応じてレーザーレーダ装置から放射されるスキャン範囲を調整するという技術がある(例えば特許文献3)。ここで、コリメートレンズとは、一次放射器から放射されるレーザ光を集約するためのレンズである。
【特許文献1】特許第3419675号公報
【特許文献2】特開2000−292537号公報
【特許文献3】特開2000−75030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車載用レーダ装置では、搭載される車両の走行状態(例えば、車速や交差点やカーブ走行時などの右左折)に応じて、当該レーダ装置から放射されるビームの方向切替えやスキャンを行う技術が開示されていない。
【0005】
また、図21で示したレーザーレーダ装置を用いたスキャン方式では、反射鏡102やポリゴンミラー103を設置する必要がある。また、車速に応じてレーダビーム幅を調整する場合、上記特許文献3で開示されたレーザーレーダ装置では、スキャン範囲を可変にするためにコリメートレンズの焦点距離を移動させる必要がある。しかしながら、レーダ装置を車体とバンパーとの間等の奥行き長さが短い空間に搭載することを想定した場合、反射鏡102、ポリゴンミラー103、コリメートレンズを前後に移動させる機構等を設ける空間が小さいために搭載が困難となり、反射鏡102およびポリゴンミラー103を設置する空間やコリメートレンズを前後に移動させる距離自体を確保できないことも考えられる。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、車体とバンパーとの間等の奥行き長さが短い空間に搭載することが可能で、搭載される車両の走行状態などに応じてビーム方向の切替えやスキャンを行うことができるレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
第1の発明は、車両周辺の物体を検知するレーダ装置である。レーダ装置は、レーダモジュール、誘電体レンズ部、移動機構、および移動制御部を備える。レーダモジュールは、所定の出射方向に対してレーダビームを放射する。誘電体レンズ部は、レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されている。移動機構は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方をレーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる。移動制御部は、車両の走行状態に応じて誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、レーダモジュールと誘電体レンズ部との相対的な位置関係がその方向にレーダビームが出射される位置となるように移動機構を動作制御する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、誘電体レンズ部は、レーダモジュールから入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されている。移動機構は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方を所定の方向に移動させる。移動制御部は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方が所定の方向に往復移動するように移動機構を動作制御する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部のレンズは、車両のバンパーを加工することによって形成される。レーダモジュールは、バンパーの内側空間にレーダビームの出射方向をそのバンパーと対向する方向として配置される。移動機構は、バンパーの外側面に対して平行に、かつ所定の方向にレーダモジュールを移動させる。
【0010】
第4の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部は、車両のバンパーの内側空間においてそのバンパーの内側面に沿って所定の方向に移動可能に構成される。レーダモジュールは、バンパーの内側空間にレーダビームの出射方向をそのバンパーと対向する方向として配置される。移動機構は、誘電体レンズ部をバンパーの内側面に沿って所定の方向に移動させる。
【0011】
第5の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部のレンズは、レーダモジュールからのレーダビームを入射する1つの凹レンズ面を有している。
【0012】
第6の発明は、上記第2の発明において、誘電体レンズ部のレンズは、所定の方向に並設され、車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有している。
【0013】
第7の発明は、上記第2の発明において、レーダ装置は、車速検出部および舵角検出部を、さらに備えている。車速検出部は、車両の車速を検出して、その車速を示す信号を移動制御部に出力する。舵角検出部は、車両のハンドル舵角を検出して、その舵角を示す信号を移動制御部に出力する。移動制御部は、車速検出部から出力された信号が示す車両の車速および舵角検出部から出力された信号が示す車両の走行方向に基づいて移動機構の動作を制御する。
【0014】
第8の発明は、上記第7の発明において、移動制御部は、車速検出部から出力される信号が第1車速以下の車速を示すとき、所定の方向に移動可能な全範囲に対して往復移動するように移動機構を動作制御する。移動制御部は、車速検出部から出力される信号が第1車速に比べて高速な第2車速より速い車速を示すとき、誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となるように移動機構を動作制御する。移動制御部は、車速検出部から出力される信号が第1車速より速く第2車速以下の車速を示すとき、誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となる位置を含む全範囲の1部に対して往復移動するように移動機構を動作制御する。
【0015】
第9の発明は、周辺の物体を検知するレーダ装置が設置された車両である。レーダ装置は、レーダモジュール、誘電体レンズ部、移動機構、および移動制御部を備える。レーダモジュールは、車両に設けられたバンパーの内側空間に設けられ、所定の出射方向に対してレーダビームを放射する。誘電体レンズ部は、バンパーを加工してまたはバンパーの内側面に沿った近傍に別体で設けられ、レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されている。移動機構は、レーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方をレーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる。移動制御部は、車両の走行状態に応じて誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、レーダモジュールと誘電体レンズ部との相対的な位置関係がその方向にレーダビームが出射される位置となるように移動機構を動作制御する。
【0016】
第10の発明は、周辺の物体を検知するレーダ装置が設置される車両のバンパーである。バンパーは、レンズ部が形成されている。レンズ部は、誘電体材料で構成され、所定のレーダモジュールから出射されるレーダビームを内側面から入射して、その入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射する。レンズ部は、内側面にレーダビームを入射する1つの凹レンズ面、または所定の方向に並設され、車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車載用レーダ装置は、搭載される車両の走行状態に応じてレーダモジュールおよび誘電体レンズ部の少なくとも一方を移動させて、放射するレーダビームのビーム放射方向を変化させることができる。また、一般的に周辺の物体を検出するためのレーダビームの出射方向は、車両を基準として水平な放射方向となるが、レーダモジュールや誘電体レンズ部の移動方向がビーム出射方向に対して垂直であるため、車両のボディなどに沿った方向となり、レーダモジュールや誘電体レンズ部を移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。また、1つのレーダモジュールを用いるため、低コストで実現できるものである。
【0018】
上記第2の発明によれば、レーダモジュールまたは誘電体レンズ部を所定の方向に往復移動させることによって、出射されるビーム方向を連続的に変化させてビームスキャンを行うことができる。また、車両の走行状態、例えば交差点での右左折時やカーブ走行時等に応じてビームの方向切替えやビームスキャンを行うことができる。このビームスキャンについても、1つのレーダモジュールを用いているため、電子スキャン等に比べ低コストで実現できる。
【0019】
上記第3の発明によれば、搭載される車両の走行状態に応じてレーダモジュールを移動させて、ビームスキャンやビーム放射方向を変化させることができる。また、誘電体レンズ部が車両に備えられたバンパーを加工して形成され、レーダモジュールの移動方向がバンパーに対して平行となるため、レーダモジュールを移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【0020】
上記第4の発明によれば、搭載される車両の走行状態に応じて誘電体レンズ部を移動させて、ビームスキャンやビーム放射方向を変化させることができる。また、誘電体レンズ部が車両に備えられたバンパーと別体で当該バンパーの内側面に沿って移動可能に構成され、誘電体レンズ部の移動方向がバンパーに対して平行となるため、誘電体レンズ部を移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【0021】
上記第5の発明によれば、凹レンズ面を形成することによって容易にビームスキャンやビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部を構成することが可能であり、それらの形状によって出射するビーム放射方向を調整することができる。
【0022】
上記第6の発明によれば、複数の凹面を形成することによって容易にビームスキャンやビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部を構成することが可能であり、それらの形状によって出射するビーム放射方向を調整することができる。
【0023】
上記第7の発明によれば、搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて、ビームスキャンやビーム放射方向を変化させることができる。
【0024】
上記第8の発明によれば、搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて、ビームスキャンする範囲や方向およびビーム放射方向を変化させることができる。
【0025】
また、本発明の車両によれば、上述したレーダ装置を搭載することによって、上述したレーダ装置と同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、本発明のバンパーによれば、上述したレーダ装置の誘電体レンズ部を構成するため、車両にレーダ装置を設置する場合の低コスト化ならびに奥行き面での省スペース化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置について説明する。なお、図1は、当該レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。典型的には、当該レーダ装置は、車両に搭載されて用いられる。
【0028】
図1において、当該レーダ装置は、レーダモジュール1a、誘電体レンズ部2a、移動機構3a、制御部4a、中央処理装置5、車速パルス送信部6、およびハンドル舵角送信部7を有している。レーダモジュール1aは、放射するレーダビームによって車両周辺の障害物を検知する。誘電体レンズ部2aは、後述するレンズ部を含んでおり、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームを境界面で屈折させる。移動機構3aは、レーダモジュール1aがレーダビームを放射する出射方向に対して垂直に当該レーダモジュール1aを移動させ、誘電体レンズ部2aが有するレンズ部にレーダモジュール1aから放射されるレーダビームを入射させる。制御部4aは、中央処理装置5から送信される制御信号に応じて、移動機構3aがレーダモジュール1aを移動させる動作を制御する。車速パルス送信部6は、搭載される車両の車速を示す車速パルス信号を中央処理装置5に出力する。また、ハンドル舵角送信部7は、搭載される車両のハンドル舵角を示すハンドル舵角信号を中央処理装置5に出力する。そして、中央処理装置5は、受け取った車速パルス信号およびハンドル舵角信号に基づいて適切なレーダビームの出射方向やスキャン範囲を設定し、当該出射方向およびスキャン範囲に応じた制御信号を制御部4aへ出力する。
【0029】
このように、当該レーダ装置は、搭載される車両の車速やハンドル舵角に応じて制御部4aが移動機構3aを動作させることによって、レーダビームの出射方向やスキャン範囲を切替えることができる。なお、複数のレーダモジュール1a、誘電体レンズ部2a、移動機構3a、および制御部4aの組をそれぞれ搭載される車両の所定箇所に設置し、中央処理装置5がそれぞれの組を制御してもかまわない。説明を具体的にするために、第1の実施形態では、搭載される車両前方および車両後方のバンパー内にそれぞれ4組ずつ並べて設置し、それぞれのレーダモジュール1aを誘電体レンズ部2aに対して移動させる一例を用いる。そして、車両前方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。また、車両後方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。中央処理装置5が行う詳細な動作制御の内容は、後述する。
【0030】
レーダモジュール1aは、例えばレーザーレーダ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ等の車載用レーダとする。具体的には、レーダモジュール1aは、水平方向に±15°および垂直方向に±10°程度の検知範囲を持つセンサであり、そのサイズが70mm(横)×50mm(縦)×10mm(厚み)程度である。
【0031】
誘電体レンズ部2aは、レーダモジュール1aが移動しながら放射するレーダビームを、そのレーダモジュール1aの位置に応じて出射する方向が変化するように形成されたレンズ部を有している。具体的には、誘電体レンズ部2aは、搭載される車両の前後に固設されているバンパーを加工して形成される。そして、バンパーは、少なくともレンズ部として機能する部位が誘電体材料で形成されている。例えば、誘電体レンズ部2aのレンズ面は、入射側が1つの凹レンズ面やフレネルレンズの形状、あるいは異なるビーム屈折角度を有するくぼみを段階的に組み合わせた形状であり、出射側が平面となった加工形状とする。なお、レーダモジュール1aの初期位置は、そのビーム方向が屈折しない正面となる位置とする。
【0032】
図2は、入射側を1つの凹レンズ面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2aのレンズ部の一例を示す概略断面図である。なお、図2は、誘電体レンズ部2aのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0033】
図2において、誘電体レンズ部2aのレンズ部は、バンパーを加工して形成され、入射側の凹面21aおよび出射側の平面22によって形成される。例えば、レンズ部は、バンパーの内側面の一部を一面レンズで形成される凹レンズ面(凹面21a)になるように加工することによって形成される。
【0034】
レーダモジュール1aから放射されたビームが凹面21aに入射した場合、空気と誘電体レンズ部2a(誘電体材料で形成されたバンパー)との誘電率の違いから、凹面21aおよび平面22において当該ビームが屈折する。なお、図2では、レーダモジュール1aから出射されるビームが凹面21aに入射角が0°に近い値で入射する一例を示している。
【0035】
ここで、レーダモジュール1aから放射されたビームは、凹面21aと平面22で、空気と誘電体レンズ部2aとの誘電率の違いから屈折する。平面22において、誘電体レンズ部2aの屈折率をn1、入射角をθ1、空気の屈折率をn2、出射角をθ2とすると、スネルの法則から、
n1sinθ1=n2sinθ2
が成り立つ。ここで、n1>n2なので、レーダモジュール1aから出射されるビームが誘電体レンズ部2aから空気へ出て行く平面22では、入射角θ1に対して出射角θ2が大きくなる。また、レーダモジュール1aから出射されるビームが空気から誘電体レンズ部2aに入る凹面21aでは、入射角に対して出射角が小さくなる。したがって、レーダモジュール1aから出射されるビームは、凹面21aに対して入射する位置に応じて平面22から出射される方向が変化する。具体的には、凹面21aの中央に入射角が0°に近い値で入射するビームが屈折せずに平面22から出射され、凹面21aの中央から離れると当該離れた距離に応じてビーム方向が広がって平面22から出射される。
【0036】
このように、誘電体レンズ部2aの平面22から出射されるビームの方向が変化し、レーダモジュール1aの位置に応じて、より広範囲にビーム放射することが可能となる。例えば、誘電体レンズ部2aの屈折率n1=1.5、空気の屈折率n2=1.0とすると、15°方向の放射ビームが平面22での出射角が約23°となり、約8°ビームを広げることができる。
【0037】
また、屈折率が大きい媒質(誘電体レンズ部2a)から小さい媒質(空気)にビームが出射される場合、臨界角sinθ=n2/n1(ただし、n1>n2)の条件が存在し、臨界角θを超える角度で平面22にビームが入射すると、ビームが透過せずに平面22で全反射してしまうので、注意する必要がある。本実施形態では、上述の屈折率で考えた場合、臨界角θが約40°となるが、レーダモジュール1aが水平幅±15°のビームを放射するために平面22で全反射しない。
【0038】
なお、上述した説明では、広角側レンズ部がバンパーの内側面の一部を凹レンズ面(凹面21aで示される一面レンズ)になるように加工することによって形成されたが、他の形状でもかまわない。例えば、バンパーの内側面の一部をフレネルレンズの凹レンズ面になるように加工することによって形成してもかまわない。図3は、レンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図である。なお、図2と同様に図3も誘電体レンズ部2aのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0039】
図3において、レンズ部は、バンパーを加工して形成され、入射側の凹面21bおよび出射側の平面22によって形成される。例えば、レンズ部は、バンパーの内側面の一部をフレネルレンズの凹レンズ面(凹面21b)になるように加工することによって形成される。なお、レーダモジュール1aから放射されたビームが凹面21bに入射した後に方向が変化する説明は、上述した凹面21aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
次に、図4および図5を参照して、レーダモジュール1aを水平移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図4は、凹面21a(一面レンズ)で形成された誘電体レンズ部2aを用いてレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図である。図5は、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面21c)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2aを用いてレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図である。例えば、凹面21cは、それぞれ異なった傾斜角度を有する複数のくぼみで形成される。なお、凹面21aは、凹面21b(フレネルレンズ)で形成されてもかまわない。
【0041】
まず、レーダモジュール1a、誘電体レンズ部2a、および移動機構3aの位置関係および動作について説明する。図4および図5において、誘電体レンズ部2aは、車両のバンパーを加工することによって凹面21aまたは21cが形成されている。なお、図5に示す凹面21cは、車両水平方向(つまり、バンパーの長軸方向)に並設され、それぞれバンパー内側に形成されている。移動機構3aは、レーダモジュール1aをバンパー内側空間内で凹面21a内の異なる位置(例えば水平;図示白抜き矢印で示す)、または凹面21cの並設方向(図示白抜き矢印で示す)に沿って移動させる。つまり、移動機構3aは、レーダモジュール1aからのレーダビームを凹面21a内の異なる位置、または凹面21cへ選択的に放射できる位置にレーダモジュール1aを移動させることができる(図4および図5においては、破線で示す)。
【0042】
図4に示すように、移動機構3aが、凹面21a内の異なる位置にレーダモジュール1aがレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを水平移動させた場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが凹面21aに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される。例えば、図4では、異なる5つの放射方向を示すビームRB1〜RB5が示されているが、さらにビーム角度を細分化して外部空間に放射することも可能である。そして、凹面21aは、凹面21aの中央から両端へ入射位置が離れる位置に応じて、レーダモジュール1aから放射されるビームが当該中央から広がる方向に屈折するように加工されている。例えば、凹面21aの中央にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB3)。また、凹面21aの左端近傍にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB1)。そして、凹面21aの右端近傍にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB5)。このように、移動機構3aがレーダモジュール1aを移動させることによって、凹面21aを有する誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3aが凹面21aに対してレーダモジュール1aを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームが少なくとも凹面21a内に入射可能なできるだけ広い範囲を設定するのが好ましい。
【0043】
図5に示すように、凹面21cそれぞれにレーダモジュール1aがレーダビームを放射するように移動機構3aがレーダモジュール1aを並設方向に順次水平移動させた場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが凹面21cそれぞれに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される。例えば、図5では、5つのビームRB1〜RB5が示されているが、さらに多くの凹面21cを形成して、さらにビーム角度が細分化されて外部空間に放射されてもかまわない。そして、両端付近に形成された凹面21cは、レーダモジュール1aから放射されるビームが中央から広がる方向に屈折するように加工されており、中央に行くにしたがって屈折が小さくなるように加工されている。例えば、中央に形成された凹面21c(平面となるため凹面とならない)にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB3)。また、左端に形成された凹面21cにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB1)。そして、右端に形成された凹面21cにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB5)。このように、移動機構3aがレーダモジュール1aを水平移動させることによって、凹面21cを有する誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3aが凹面21cに対してレーダモジュール1aを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームが左端に形成された凹面21cに入射する位置からレーダビームが右端に形成された凹面21cに入射する位置までに設定される。
【0044】
次に、図6を参照して、レーダモジュール1aを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図6(a)は、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面21d)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2aを用いてレーダモジュール1aが垂直移動する動作を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)の水平断面B−Bを図示A方向から見た断面概略図である。図6(c)は、図6(a)の水平断面C−Cを図示A方向から見た断面概略図である。図6(d)は、図6(a)の水平断面D−Dを図示A方向から見た断面概略図である。図6(e)は、図6(a)の水平断面E−Eを図示A方向から見た断面概略図である。図6(f)は、図6(a)の水平断面F−Fを図示A方向から見た断面概略図である。
【0045】
図6(a)において、誘電体レンズ部2aは、車両のバンパーを加工することによって凹面21dが形成され、その一部が図示されている。なお、図6(a)に示す凹面21dは、車両垂直方向(つまり、バンパーの短軸方向)に並設され、それぞれバンパー内側に形成されている。移動機構3a(図示せず)は、レーダモジュール1aをバンパー内側空間内で凹面21dの並設方向(図示白抜き矢印で示す)に沿って移動させる。移動機構3aは、レーダモジュール1aからのレーダビームを凹面21dへ選択的に放射できる位置にレーダモジュール1aを移動させることができる(図6(a)においては、中央の凹面21dへレーダビームを放射できる位置にレーダモジュール1aが配置されている)。
【0046】
図6(b)〜図6(f)に示すように、凹面21dそれぞれにレーダモジュール1aがレーダビームを放射するように移動機構3aがレーダモジュール1aを並設方向に順次垂直移動させた場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが凹面21dそれぞれに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される。例えば、図6では、5つのビームRB1〜RB5が示されているが、さらに多くの凹面21dを形成して、さらにビーム角度が細分化されて外部空間に放射されてもかまわない。そして、上下端付近に形成された凹面21dは、レーダモジュール1aから放射されるビームが左右に広がる方向に屈折するように加工されており、中央に行くにしたがって屈折が小さくなるように加工されている。例えば、中央に形成された凹面21d(平面となるため凹面とはならない)にレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB3;図6(d))。また、上端に形成された凹面21dにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB1;図6(b))。そして、下端に形成された凹面21dにレーダビームを放射するようにレーダモジュール1aを配置した場合、レーダモジュール1aから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射される(ビームRB5;図6(f))。このように、移動機構3aがレーダモジュール1aを垂直移動させることによって、凹面21dを有する誘電体レンズ部2aから外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。ただし、垂直移動の場合、左右にスキャンしながら上下に移動するので、厳密には斜めにスキャンしていることになる。なお、移動機構3aが凹面21dに対してレーダモジュール1aを垂直移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1aから放射されるレーダビームが上端に形成された凹面21dに入射する位置からレーダビームが下端に形成された凹面21dに入射する位置までに設定される。
【0047】
なお、図4〜図6において、誘電体レンズ部2aを上下方向に屈折するように加工した場合、垂直方向にビームをスキャンすることができる。ただし、図5のように、水平方向にレーダモジュール1aが移動する場合、上下にスキャンしながら左右に動くので、厳密には斜めにスキャンしていることになる。
【0048】
次に、図7を参照して、レーダモジュール1aを移動させることによってビーム方向およびスキャン範囲を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図7は、搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて制御する中央処理装置5の動作を示すフローチャートである。
【0049】
図7において、中央処理装置5は、車速パルス送信部6より車速パルス信号(ステップS51)およびハンドル舵角送信部7よりハンドル舵角信号(ステップS52)を受け取る。そして、中央処理装置5は、受け取った車速パルス信号に基づいて車速を演算し、当該車速が閾値M以下か否か(ステップS53)、および当該車速が閾値N以下か否か(ステップS54)を判断する。ここで、閾値MおよびNは任意の値であり、例えばM=20km/h、N=60km/hである。後述により明らかとなるが、閾値Mは、スキャン範囲を拡大して車両周辺の障害物を検出するか否かを判断するための閾値である。また、閾値Nは、ハンドル舵角方向に応じて所定の方向にビーム方向を固定して相対的に遠くの障害物を検出するか否かを判断するための閾値である。中央処理装置5は、車速≦Mの場合(ステップS53でYes)に処理を次のステップS55に進め、M<車速≦Nの場合(ステップS54でYes)に処理を次のステップS56に進め、N<車速の場合(ステップS53およびS54がいずれもNo)に処理を次のステップS60に進める。
【0050】
ステップS55において、中央処理装置5は、各レーダモジュール1aが上述した移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動するように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに各移動機構3aを往復移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させてレーダモジュール1aを往復移動させる。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速M以下の場合に、各レーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動しながら放射されるビームが誘電体レンズ部2aを通過し、スキャン範囲を拡大して車両周辺の障害物を検出することができる。
【0051】
ステップS56において、中央処理装置5は、上記ステップS52で受け取ったハンドル舵角信号に基づいて車両の進行方向を演算し、当該車両の進行方向が左か否か、当該車両の進行方向が直進か否か、および当該車両の進行方向が右か否かを判断する。
【0052】
車両の進行方向が左の場合、車両の主に左側をビームスキャンするために、中央処理装置5は、レーダモジュール1aが車両に対して左側をビームスキャンするように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS57)。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。そして、制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち左半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち右半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速N以下で進行方向が左の場合にレーダ装置が車両の主に左方向をビームスキャンすることができる。
【0053】
車両の進行方向が直進の場合、車両の主に前後方向をビームスキャンするために、中央処理装置5は、レーダモジュール1aが車両に対して前後方向をビームスキャンするように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS58)。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。そして、制御部4aは、車両の前方および後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについて、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち中央付近をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速N以下で進行方向が直進の場合にレーダ装置が車両の主に前後方向をビームスキャンすることができる。
【0054】
車両の進行方向が右の場合、車両の主に右側をビームスキャンするために、中央処理装置5は、レーダモジュール1aが車両に対して右側をビームスキャンするように制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS59)。具体的には、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。そして、制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち右半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲のうち左半分をレーダモジュール1aが往復移動するように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速N以下で進行方向が右の場合にレーダ装置が車両の主に右方向をビームスキャンすることができる。
【0055】
一方、N<車速の場合(ステップS53およびS54がいずれもNo)、ステップS60において、中央処理装置5は、上記ステップS52で受け取ったハンドル舵角信号に基づいて車両の進行方向を演算し、当該車両の進行方向が左か否か、当該車両の進行方向が直進か否か、および当該車両の進行方向が右か否かを判断する。N<車速の場合、車両が高速走行していると想定されるので、上述したようなビームスキャンを行うと検出不要な障害物まで検知してしまう可能性がある。そこで、高速走行の場合は、ビーム方向を車両進行方向に応じて切替える。
【0056】
車両の進行方向が左の場合、車両の左方向にある障害物を検出するために、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の左側となる方向がビーム放射方向となるように、制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS61)。具体的には、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の左側となる方向に応じたビーム放射方向を算出し、当該ビーム放射方向に応じたレーダモジュール1aの配置位置を決定する。そして、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の左側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の右側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速Nより速く進行方向が左の場合にレーダ装置が車両のハンドル舵角に応じた方向に固定してビーム放射することができる。
【0057】
車両の進行方向が直進の場合、車両の前後方向にある障害物を検出するために、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の前後方向がビーム放射方向となるように、制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS62)。具体的には、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の前後方向に応じたビーム放射方向を算出し、当該ビーム放射方向に応じたレーダモジュール1aの配置位置を決定する。そして、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。制御部4aは、車両の前方および後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速Nより速く進行方向が直進の場合にレーダ装置が車両のハンドル舵角に応じた前後方向に固定してビーム放射することができる。
【0058】
車両の進行方向が右の場合、車両の右方向にある障害物を検出するために、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の右側となる方向がビーム放射方向となるように、制御部4aを介して移動機構3aの動作を制御する(ステップS63)。具体的には、中央処理装置5は、ハンドル舵角が示す車両の右側となる方向に応じたビーム放射方向を算出し、当該ビーム放射方向に応じたレーダモジュール1aの配置位置を決定する。そして、中央処理装置5は、制御部4aに移動機構3aを移動させるための制御信号を送信し、その制御信号を受信した制御部4aが移動機構3aを動作させる。制御部4aは、車両の前方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の右側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。また、制御部4aは、車両の後方バンパーに設置されているレーダモジュール1aについては、上記誘電体レンズ部2aに対する移動可能範囲の左側範囲に含まれる上記配置位置でレーダモジュール1aが固定されるように移動機構3aを制御する。そして、中央処理装置5は、処理を次のステップS64に進める。これにより、車両が車速Nより速く進行方向が右の場合にレーダ装置が車両のハンドル舵角に応じた方向に固定してビーム放射することができる。
【0059】
ステップS64において、中央処理装置5は、車両周辺の障害物検知を終了するか否かを判断する。そして、中央処理装置5は、検知を継続する場合、上記ステップS51戻って処理を継続する。一方、中央処理装置5は、検知を終了する場合、当該フローチャートによる処理を終了する。これらの処理により、車速やハンドル舵角に応じてビームスキャンする方向および幅やビーム放射方向を切替えることができる。
【0060】
次に、図8、図9、および図10を参照して、レーダ装置が搭載された車両Cの走行状態に応じた各ビームスキャンおよびビーム放射方向について説明する。なお、図8(a)は、レーダ装置が搭載された車両Cが交差点を左折する際の各ビームスキャンを示す図である。図8(b)は、レーダ装置が搭載された車両Cが交差点を右折する際の各ビームスキャンを示す図である。図9(a)は、レーダ装置が搭載された車両Cが左カーブ道路を走行する際の各ビームスキャンを示す図である。図9(b)は、レーダ装置が搭載された車両Cが車線変更を行う際の各ビームスキャンを示す図である。図10(a)は、レーダ装置が搭載された車両Cが高速走行する際の各ビーム放射方向を示す図である。図10(b)は、レーダ装置が搭載された車両Cが高速で右カーブ道路を走行する際の各ビーム放射方向を示す図である。
【0061】
図8(a)において、車両Cが閾値M以下の低速で交差点を左折する際、車両Cに設置された全てのレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの周囲からは、最も広範囲のビームスキャンBSWによるビームが放射され、車両C周辺の広い範囲を検知する。例えば、車両Cが左折することによる内輪差空間にバイクBiが走行している場合、バイクBiを検知することによってバイクBiが車両Cに巻き込まれる事故を防止することができる。
【0062】
図8(b)において、車両Cが閾値M以下の低速で交差点を右折する際、車両Cに設置された全てのレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの周囲からは、最も広範囲のビームスキャンBSWによるビームが放射され、車両C周辺の広い範囲を検知する。例えば、車両Cが右折時に死角となる空間に自転車Byが横断している場合、自転車Byを検知することによって自転車Byが車両Cと接触する事故を防止することができる。
【0063】
図9(a)において、車両Cが閾値M<車速≦閾値Nで左カーブ道路を走行している際、車両Cの前方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に左側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。また、車両Cの後方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に右側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの前方バンパーからは主に車両の前方左側をスキャン範囲とするビームスキャンBSLおよび車両Cの後方バンパーからは主に車両の後方左側をスキャン範囲とするビームスキャンBSRによるビームが放射され、車両Cの左側空間を主に検知する。
【0064】
図9(b)において、車両Cが閾値M<車速≦閾値Nで右側車線に車線変更する際、車両Cの前方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に右側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。また、車両Cの後方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが上記移動可能範囲全域の主に左側範囲を所定の速度で往復移動してビームスキャンを行う。これによって、車両Cの前方バンパーからは主に車両の前方右側をスキャン範囲とするビームスキャンBSRおよび車両Cの後方バンパーからは主に車両の後方右側をスキャン範囲とするビームスキャンBSLによるビームが放射され、車両Cの右側空間を主に検知する。
【0065】
図10(a)において、車両Cが閾値Nより速い高速で直進走行する際、車両Cに設置された全てのレーダモジュール1aが車両の前後方向を固定されたビーム放射方向(例えば、図4〜図6に示すビームRB3)としてビームを放射する。これによって、車両Cの前方バンパーからは車両の前方正面をビーム放射方向とするビームRB3および車両Cの後方バンパーからは車両の後方正面をビーム放射方向とするビームRB3によるビームが放射され、車両Cの前後方正面空間を検知する。
【0066】
図10(b)において、車両Cが閾値Nより速い高速で右カーブ道路を走行している際、車両Cの前方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが車両のハンドル舵角に応じた車両前方右方向をビーム放射方向(例えば、図4〜図6に示すビームRB5)としてビームを放射する。また、車両Cの後方バンパーに設置されるレーダモジュール1aが車両のハンドル舵角に応じた車両後方右方向をビーム放射方向(例えば、図4〜図6に示すビームRB1)としてビームを放射する。これによって、車両Cの前方バンパーからは車両の前方右方向をビーム放射方向とするビームRB5および車両Cの後方バンパーからは車両の後方右方向をビーム放射方向とするビームRB1によるビームが放射され、車両Cの前後方右側空間を検知する。
【0067】
このように、第1の実施形態に係るレーダ装置では、搭載される車両の走行状態(車速、ハンドル舵角)に応じてレーダモジュールを移動させて、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させることができる。例えば、車両が低速走行時では周辺を広く監視する目的で広範囲のビームスキャンを行うことができる。また、車両が中速走行時ではハンドル舵角で示される車両の進行方向を主にビームスキャンすることができる。さらに、車両が高速走行時では車両の進行方向の遠い位置を監視するためにビーム放射方向を固定して障害物を検知することができる。また、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部が車両に備えられたバンパーを加工して形成され、レーダモジュールの移動方向がバンパーに対して平行であるため、レーダモジュールを移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化やレーダモジュール、誘電体レンズ部、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【0068】
(第2の実施形態)
図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置について説明する。なお、図11は、当該レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。典型的には、当該レーダ装置も、車両に搭載されて用いられる。第1の実施形態ではビームスキャンや放射方向を変えるためにレーダモジュールを移動させたが、第2の実施形態では誘電体レンズ部を移動させる。
【0069】
図11において、当該レーダ装置は、レーダモジュール1b、誘電体レンズ部2b、移動機構3b、制御部4b、中央処理装置5、車速パルス送信部6、およびハンドル舵角送信部7を有している。なお、中央処理装置5、車速パルス送信部6、およびハンドル舵角送信部7については、第1の実施形態の構成と同様であるため、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
レーダモジュール1bは、レーダ装置が搭載される車両に固設され、放射するレーダビームによって車両周辺の障害物を検知する。誘電体レンズ部2bは、後述するレンズ部を含んでおり、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームを境界面で屈折させる。移動機構3bは、レーダモジュール1bがレーダビームを放射する出射方向に対して垂直に誘電体レンズ部2bを移動させ、誘電体レンズ部2bが有するレンズ部にレーダモジュール1bから放射されるレーダビームを入射させる。制御部4bは、中央処理装置5から送信される制御信号に応じて、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを移動させる動作を制御する。
【0071】
このように、当該レーダ装置は、搭載される車両の車速やハンドル舵角に応じて制御部4bが移動機構3bを動作させることによって、レーダビームの出射方向やスキャン範囲を切替えることができる。なお、第1の実施形態と同様に、複数のレーダモジュール1b、誘電体レンズ部2b、移動機構3b、および制御部4bの組をそれぞれ搭載される車両の所定箇所に設置し、中央処理装置5がそれぞれの組を制御してもかまわない。説明を具体的にするために、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に搭載される車両前方および車両後方のバンパー内にそれぞれ4組ずつ並べて設置し、それぞれの誘電体レンズ部2bをレーダモジュール1bに対して移動させる一例を用いる。そして、車両前方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。また、車両後方のバンパー内に設けられる4組のうち、両端の2組はコーナに設置される。中央処理装置5が行う詳細な動作制御の内容は、後述する。
【0072】
レーダモジュール1bは、レーダモジュール1aと同様に、例えばレーザーレーダ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ等の車載用レーダとする。具体的には、レーダモジュール1bは、水平方向に±15°および垂直方向に±10°程度の検知範囲を持つセンサであり、そのサイズが70mm(横)×50mm(縦)×10mm(厚み)程度である。
【0073】
誘電体レンズ部2bは、レーダモジュール1bが放射するレーダビームを、そのレーダモジュール1bに対する位置に応じて出射する方向が変化するように形成されたレンズ部を有している。具体的には、誘電体レンズ部2bは、搭載される車両の前後に固設されているバンパーと同じ素材(誘電体材料)を加工して形成され、移動機構3bからの駆動力を受けて当該バンパーに沿って移動する。例えば、誘電体レンズ部2bが有するレンズ部は、誘電体レンズ部2bのレンズ面は、入射側が一面レンズである凹レンズ面やフレネルレンズの形状、あるいは異なるビーム屈折角度を有するくぼみを段階的に組み合わせた形状であり、出射側が平面となった加工形状とする。なお、誘電体レンズ部2bの初期位置は、レーダモジュール1bから放射されるビーム方向が屈折しない正面となる位置とする。
【0074】
図12は、入射側を凹レンズ面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2bのレンズ部の一例を示す概略断面図である。なお、図12は、誘電体レンズ部2bのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0075】
図12において、誘電体レンズ部2bレンズ部は、入射側の凹面25aおよび出射側の平面26によって形成される。例えば、レンズ部は、誘電体材料の一部を一面レンズである凹レンズ面(凹面25a)になるように加工することによって形成される。誘電体レンズ部2bは、平面26と搭載されるバンパーの内側平面とを当接して設置される。したがって、平面26とバンパーとの間には、空気層が形成される。なお、誘電体レンズ部2bが内側に設置されるバンパーの外側平面を平面27とする。
【0076】
レーダモジュール1bから放射されたビームが凹面25aに入射した場合、空気と誘電体レンズ部2b(誘電体材料)との誘電率の違いから、凹面25a、平面26、および平面27において当該ビームが屈折する。なお、図12では、レーダモジュール1bから出射されるビームが凹面25aに入射角が0°に近い値で入射する一例を示している。
【0077】
ここで、誘電体レンズ部2bとバンパーとの間に空気層が介在するので、レーダモジュール1bから放射されたビームは、誘電体レンズ部2bを通過した後、当該空気層を通過しさらにバンパーを通過することになる。したがって、レーダモジュール1bから放射されたビームは、凹面25aと平面26および27で、空気、誘電体レンズ部2b、およびバンパーの誘電率の違いから屈折する。バンパーの屈折率をn1、出射角をθ1、空気の屈折率をn2、および誘電体レンズ部2bの屈折率をn3、入射角をθ3とすると、スネルの法則から、
n3sinθ3=n1sinθ1
が成り立つ。つまり、誘電体レンズ部2bの誘電率とバンパーの誘電率とが等しい場合、誘電体レンズ部2bの屈折率n3とバンパーの屈折率n1とが等しくなるため、出射角θ1と入射角θ3とが等しくなる。したがって、入射角θ3を誘電体レンズ部2bの移動によって変化させることによって、バンパーから放射される出射角θ1を変化させることができる。また、誘電体レンズ部2bの誘電率をバンパーの誘電率より大きくした場合、誘電体レンズ部2bの屈折率n3がバンパーの屈折率n1と比較して大きくなるため、出射角θ1を入射角θ3より大きくすることができ、バンパーから放射される方向を広げながら変化させることができる。
【0078】
なお、上述した説明では、誘電体レンズ部2bのレンズ部が凹レンズ面(凹面25aで示される一面レンズ)になるように加工することによって形成されたが、他の形状でもかまわない。例えば、フレネルレンズの凹レンズ面になるように加工することによって形成してもかまわない。図13は、レンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図である。なお、図12と同様に図13も誘電体レンズ部2bのレンズ部中心を横断する面を断面としているが、ビームが広がる様子を明確にするために断面を白抜き領域で示している。
【0079】
図13において、誘電体レンズ部2bのレンズ部は、入射側の凹面25bおよび出射側の平面26によって形成される。例えば、レンズ部は、フレネルレンズの凹面(凹面25b)になるように加工することによって形成される。なお、レーダモジュール1bから放射されたビームが凹面25bに入射した後の説明は、上述した凹面25aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0080】
次に、図14〜図19を参照して、誘電体レンズ部2bを水平移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図14〜図18は、レーダモジュール1bに対して、凹面25a(一面レンズ)で形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図である。図19は、レーダモジュール1bに対して、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面25c)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図である。例えば、凹面25cは、それぞれ異なった傾斜角度を有する複数のくぼみで形成される。なお、凹面25aは、凹面25b(フレネルレンズ)で形成されてもかまわない。
【0081】
まず、レーダモジュール1b、誘電体レンズ部2b、および移動機構3bの位置関係および動作について説明する。図14〜図19において、誘電体レンズ部2bは、車両のバンパーの内側に沿ってその長軸方向に移動可能に設置されており、凹面25aまたは25cが形成されている。なお、図19に示す凹面25cは、車両水平方向(つまり、誘電体レンズ部2bの移動方向であり、バンパーの長軸方向)に並設されている。移動機構3bは、誘電体レンズ部2bをバンパー内側に沿って移動させる。移動機構3bは、誘電体レンズ部1bをバンパー内側空間内で凹面25a内の異なる位置(例えば水平)にレーダモジュール1bから放射されるビームが入射する、または凹面25cの並設方向に沿って移動させる。つまり、移動機構3bは、レーダモジュール1bからのレーダビームを凹面25a内の異なる位置、または凹面25cへ選択的に放射できる位置に誘電体レンズ部2bを移動させることができる。
【0082】
図14〜図18に示すように、移動機構3bが凹面25a内の異なる位置にレーダモジュール1bがレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを水平移動させた場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが凹面25aに入射して異なる方向屈折し、誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。例えば、図14〜図18では、異なる5つの放射方向を示すビームRB1〜RB5が示されているが、さらにビーム角度を細分化して外部空間に放射することも可能である。そして、凹面25aは、凹面25aの中央から両端へ入射位置が離れる位置に応じて、レーダモジュール1bから放射されるビームが当該中央から広がる方向に屈折するように加工されている。例えば、凹面25aの中央にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図16;ビームRB3)。また、凹面25aの左端近傍にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図14;ビームRB1)。そして、凹面25aの右端近傍にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図18;ビームRB5)。このように、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを移動させることによって、凹面25aを有する誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3bがレーダモジュール1bに対して誘電体レンズ部2bを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームが少なくとも凹面25a内に入射可能なできるだけ広い範囲を設定するのが好ましい。
【0083】
図19に示すように、凹面25cそれぞれにレーダモジュール1bがレーダビームを放射するように移動機構3bが誘電体レンズ部2bをそれらの並設方向に順次水平移動させた場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが凹面25cそれぞれに入射して異なる方向へ屈折し、誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。例えば、図19では、左方向へ屈折するビームRB1のみが示されているが、図14から図18に示したビーム等と同様にさらに多くの凹面25cを形成して、さらにビーム角度が細分化されたビームを外部空間に放射することも可能である。そして、両端付近に形成された凹面25cは、レーダモジュール1bから放射されるビームが中央から広がる方向に屈折するように加工されており、中央に行くにしたがって屈折が小さくなるように加工されている。例えば、中央に形成された凹面25c(平面となるため凹面とならない)にレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが正面方向に誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。また、左端に形成された凹面25cにレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが左方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される(図19;ビームRB1)。そして、右端に形成された凹面25cにレーダビームを放射するように誘電体レンズ部2bを配置した場合、レーダモジュール1bから放射されるビームが右方向へ屈折して誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射される。このように、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを水平移動させることによって、凹面25cを有する誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを水平移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームが左端に形成された凹面25cに入射する位置からレーダビームが右端に形成された凹面25cに入射する位置までに設定される。
【0084】
次に、図20を参照して、誘電体レンズ部2bを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明する。なお、図20は、異なるビーム屈折角度を有するくぼみ(凹面25d)を組み合わせて形成された誘電体レンズ部2bがレーダモジュール1bに対して垂直移動する動作を示す斜視図である。
【0085】
図20において、誘電体レンズ部2bは、車両のバンパーの内側に沿って垂直方向(つまり、バンパーの短軸方向)に移動可能に設置されており、凹面25dが形成され、その一部が図示されている。なお、図20に示す凹面25dは、車両垂直方向に並設され、それぞれバンパー内側を凹として形成されている。移動機構3b(図示せず)は、誘電体レンズ部2bをバンパー内側空間内でバンパーに沿って垂直方向(図示白抜き矢印で示す)に移動させる。移動機構3bは、レーダモジュール1bからのレーダビームを凹面25dへ選択的に放射できる位置に誘電体レンズ部2bを移動させることができる(図20においては、中央の凹面25dへレーダビームを放射できる位置に誘電体レンズ部2bが配置されている)。なお、各凹面25dへ入射した後のビームの屈折については、誘電体レンズ部2bを移動させること以外、図6(b)〜図6(f)を用いて説明した5つのビームRB1〜RB5と同様であるため、ここではこれ以上の説明を省略する。このように、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを垂直移動させることによって、凹面25dを有する誘電体レンズ部2bからバンパーを介して外部空間へ放射されるビームが左右に屈折するため、水平方向にビームをスキャンすることができる。なお、移動機構3bが誘電体レンズ部2bを垂直移動することができる移動可能範囲は、レーダモジュール1bから放射されるレーダビームが上端に形成された凹面25dに入射する位置からレーダビームが下端に形成された凹面25dに入射する位置までに設定される。
【0086】
なお、図14〜図19において、誘電体レンズ部2bを上下方向に屈折するように加工した場合、垂直方向にビームをスキャンすることができる。
【0087】
誘電体レンズ部2bを移動させることによってビーム方向およびスキャン範囲を切替えるレーダ装置の動作については、図7を用いて説明した第1の実施形態の中央処理装置5の動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0088】
このように、第2の実施形態に係るレーダ装置では、搭載される車両の走行状態(車速、ハンドル舵角)に応じて誘電体レンズ部を移動させて、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させることができる。例えば、車両が低速走行時では周辺を広く監視する目的で広範囲のビームスキャンを行うことができる。また、車両が中速走行時ではハンドル舵角で示される車両の進行方向を主にビームスキャンすることができる。さらに、車両が高速走行時では車両の進行方向の遠い位置を監視するためにビーム放射方向を固定して障害物を検知することができる。また、ビームスキャン方向および範囲やビーム放射方向を変化させる誘電体レンズ部の移動方向がバンパーに対して平行であるため、誘電体レンズ部を移動させる距離自体を充分に確保できる。したがって、レーダ装置の低コスト化や誘電体レンズ部、レーダモジュール、および移動機構を設置する奥行き面での省スペース化を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係るレーダ装置は、省スペース化や車両の状態に応じた検出が可能であり、搭載される車両の周囲の障害物等を検知する装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図
【図2】図1の入射側を凹面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2aのレンズ部の一例を示す概略断面図
【図3】図1の誘電体レンズ部2aのレンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図
【図4】凹面21aで形成された誘電体レンズ部2aを用いて図1のレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図
【図5】異なるビーム屈折角度を有するくぼみを組み合わせて形成された誘電体レンズ部2aを用いて図1のレーダモジュール1aを水平移動させる移動機構3aの動作を示す車両上方から見た概略図
【図6】図1のレーダモジュール1aを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明するための概略図
【図7】搭載される車両の車速およびハンドル舵角に応じて制御する中央処理装置5の動作を示すフローチャート
【図8】レーダ装置が搭載された車両Cが交差点を左折する際、および車両Cが交差点を右折する際の各ビームスキャンを示す図
【図9】レーダ装置が搭載された車両Cが左カーブ道路を走行する際、および車両Cが車線変更を行う際の各ビームスキャンを示す図
【図10】レーダ装置が搭載された車両Cが高速走行する際、および車両Cが高速で右カーブ道路を走行する際の各ビーム放射方向を示す図
【図11】本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図
【図12】図11の入射側を凹面とした加工形状を有する誘電体レンズ部2bのレンズ部の一例を示す概略断面図
【図13】図11の誘電体レンズ部2bのレンズ部をフレネルレンズで構成した一例を示す概略断面図
【図14】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図15】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図16】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図17】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図18】図11のレーダモジュール1bに対して、凹面25aで形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図19】図11のレーダモジュール1bに対して、異なるビーム屈折角度を有するくぼみを組み合わせて形成された誘電体レンズ部2bを水平移動させる移動機構3bの動作を示す車両上方から見た概略図
【図20】図11の誘電体レンズ部2bを垂直移動させることによってビーム方向を切替えるレーダ装置の動作について説明するための図
【図21】従来のレーザーレーダのスキャン方式の概略を示した図
【符号の説明】
【0091】
1…レーダモジュール
2…誘電体レンズ部
21、25…凹面
22、26、27…平面
3…移動機構
4…制御部
5…中央処理装置
6…車速パルス送信部
7…ハンドル舵角送信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の物体を検知するレーダ装置であって、
所定の出射方向に対してレーダビームを放射するレーダモジュールと、
前記レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成された誘電体レンズ部と、
前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方を前記レーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる移動機構と、
前記車両の走行状態に応じて前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、前記レーダモジュールと前記誘電体レンズ部との相対的な位置関係が当該方向に前記レーダビームが出射される位置となるように前記移動機構を動作制御する移動制御部とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記誘電体レンズ部は、前記レーダモジュールから入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、前記車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されており、
前記移動機構は、前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方を前記所定の方向に移動させ、
前記移動制御部は、前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方が前記所定の方向に往復移動するように前記移動機構を動作制御することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記誘電体レンズ部のレンズは、前記車両のバンパーを加工することによって形成され、
前記レーダモジュールは、前記バンパーの内側空間に前記レーダビームの出射方向を当該バンパーと対向する方向として配置され、
前記移動機構は、前記バンパーの外側面に対して平行に、かつ前記所定の方向に前記レーダモジュールを移動させることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記誘電体レンズ部は、前記車両のバンパーの内側空間において当該バンパーの内側面に沿って前記所定の方向に移動可能に構成され、
前記レーダモジュールは、前記バンパーの内側空間に前記レーダビームの出射方向を当該バンパーと対向する方向として配置され、
前記移動機構は、前記誘電体レンズ部をバンパーの内側面に沿って前記所定の方向に移動させることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記誘電体レンズ部のレンズは、前記レーダモジュールからのレーダビームを入射する1つの凹レンズ面を有していることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記誘電体レンズ部のレンズは、前記所定の方向に並設され、前記車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有していることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記レーダ装置は、
前記車両の車速を検出して、当該車速を示す信号を前記移動制御部に出力する車速検出部と、
前記車両のハンドル舵角を検出して、当該舵角を示す信号を前記移動制御部に出力する舵角検出部とを、さらに備え、
前記移動制御部は、前記車速検出部から出力された信号が示す前記車両の車速および前記舵角検出部から出力された信号が示す前記車両の走行方向に基づいて前記移動機構の動作を制御することを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記移動制御部は、
前記車速検出部から出力される信号が第1車速以下の車速を示すとき、前記所定の方向に移動可能な全範囲に対して前記往復移動するように前記移動機構を動作制御し、
前記車速検出部から出力される信号が前記第1車速に比べて高速な第2車速より速い車速を示すとき、前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が前記舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となるように前記移動機構を動作制御し、
前記車速検出部から出力される信号が前記第1車速より速く前記第2車速以下の車速を示すとき、前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が前記舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となる位置を含む前記全範囲の1部に対して前記往復移動するように前記移動機構を動作制御することを特徴とする、請求項7に記載のレーダ装置。
【請求項9】
周辺の物体を検知するレーダ装置が設置された車両であって、
前記レーダ装置は、
前記車両に設けられたバンパーの内側空間に設けられ、所定の出射方向に対してレーダビームを放射するレーダモジュールと、
前記バンパーを加工してまたは前記バンパーの内側面に沿った近傍に別体で設けられ、前記レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成された誘電体レンズ部と、
前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方を前記レーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる移動機構と、
前記車両の走行状態に応じて前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、前記レーダモジュールと前記誘電体レンズ部との相対的な位置関係が当該方向に前記レーダビームが出射される位置となるように前記移動機構を動作制御する移動制御部とを備える、車両。
【請求項10】
周辺の物体を検知するレーダ装置が設置される車両のバンパーであって、
誘電体材料で構成され、所定のレーダモジュールから出射されるレーダビームを内側面から入射して、当該入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、前記車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射するレンズ部が形成され、
前記レンズ部は、前記内側面にレーダビームを入射する1つの凹レンズ面、または前記所定の方向に並設され、前記車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有することを特徴とする、バンパー。
【請求項1】
車両周辺の物体を検知するレーダ装置であって、
所定の出射方向に対してレーダビームを放射するレーダモジュールと、
前記レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成された誘電体レンズ部と、
前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方を前記レーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる移動機構と、
前記車両の走行状態に応じて前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、前記レーダモジュールと前記誘電体レンズ部との相対的な位置関係が当該方向に前記レーダビームが出射される位置となるように前記移動機構を動作制御する移動制御部とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記誘電体レンズ部は、前記レーダモジュールから入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、前記車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成されており、
前記移動機構は、前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方を前記所定の方向に移動させ、
前記移動制御部は、前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方が前記所定の方向に往復移動するように前記移動機構を動作制御することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記誘電体レンズ部のレンズは、前記車両のバンパーを加工することによって形成され、
前記レーダモジュールは、前記バンパーの内側空間に前記レーダビームの出射方向を当該バンパーと対向する方向として配置され、
前記移動機構は、前記バンパーの外側面に対して平行に、かつ前記所定の方向に前記レーダモジュールを移動させることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記誘電体レンズ部は、前記車両のバンパーの内側空間において当該バンパーの内側面に沿って前記所定の方向に移動可能に構成され、
前記レーダモジュールは、前記バンパーの内側空間に前記レーダビームの出射方向を当該バンパーと対向する方向として配置され、
前記移動機構は、前記誘電体レンズ部をバンパーの内側面に沿って前記所定の方向に移動させることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記誘電体レンズ部のレンズは、前記レーダモジュールからのレーダビームを入射する1つの凹レンズ面を有していることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記誘電体レンズ部のレンズは、前記所定の方向に並設され、前記車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有していることを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記レーダ装置は、
前記車両の車速を検出して、当該車速を示す信号を前記移動制御部に出力する車速検出部と、
前記車両のハンドル舵角を検出して、当該舵角を示す信号を前記移動制御部に出力する舵角検出部とを、さらに備え、
前記移動制御部は、前記車速検出部から出力された信号が示す前記車両の車速および前記舵角検出部から出力された信号が示す前記車両の走行方向に基づいて前記移動機構の動作を制御することを特徴とする、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記移動制御部は、
前記車速検出部から出力される信号が第1車速以下の車速を示すとき、前記所定の方向に移動可能な全範囲に対して前記往復移動するように前記移動機構を動作制御し、
前記車速検出部から出力される信号が前記第1車速に比べて高速な第2車速より速い車速を示すとき、前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が前記舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となるように前記移動機構を動作制御し、
前記車速検出部から出力される信号が前記第1車速より速く前記第2車速以下の車速を示すとき、前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向が前記舵角検出部から出力される信号が示す車両の進行方向となる位置を含む前記全範囲の1部に対して前記往復移動するように前記移動機構を動作制御することを特徴とする、請求項7に記載のレーダ装置。
【請求項9】
周辺の物体を検知するレーダ装置が設置された車両であって、
前記レーダ装置は、
前記車両に設けられたバンパーの内側空間に設けられ、所定の出射方向に対してレーダビームを放射するレーダモジュールと、
前記バンパーを加工してまたは前記バンパーの内側面に沿った近傍に別体で設けられ、前記レーダモジュールから入射するレーダビームの位置に応じて異なった角度に屈折させて出射するレンズが形成された誘電体レンズ部と、
前記レーダモジュールおよび前記誘電体レンズ部の少なくとも一方を前記レーダモジュールのレーダビーム出射方向に対して垂直に移動させる移動機構と、
前記車両の走行状態に応じて前記誘電体レンズ部から出射するレーダビームの方向を決定し、前記レーダモジュールと前記誘電体レンズ部との相対的な位置関係が当該方向に前記レーダビームが出射される位置となるように前記移動機構を動作制御する移動制御部とを備える、車両。
【請求項10】
周辺の物体を検知するレーダ装置が設置される車両のバンパーであって、
誘電体材料で構成され、所定のレーダモジュールから出射されるレーダビームを内側面から入射して、当該入射するレーダビームの位置が所定の方向に移動することに応じて、前記車両の水平方向に対して異なった角度に屈折させて出射するレンズ部が形成され、
前記レンズ部は、前記内側面にレーダビームを入射する1つの凹レンズ面、または前記所定の方向に並設され、前記車両の水平方向に対して異なった角度にそれぞれ屈折させる複数の凹面を有することを特徴とする、バンパー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−145399(P2006−145399A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336331(P2004−336331)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]