説明

車載用レーダ装置

【課題】マルチパスフェージングの発生に類する状況下で、ターゲットの信号強度が急激に小さくなり、測定段階の結果が不安定になっても、車両制御用などの最終的な出力は不安定化させないレーダ装置を得る。
【解決手段】測定部14による各測定ごとのターゲットの位置と相対速度に関わる情報を複数の周期に亘って入力し、時系列で相関があるターゲットを探索しながら、ターゲットの位置および相対速度と、ターゲットの分類と、今回測定周期までの時系列相関成立回数と、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態と、時系列相関の不成立を許容する回数とを含むターゲットの情報セットを生成する時系列相関部16と、ターゲットの情報セットを記憶する記憶部と、ターゲットの情報セットのうち、予め設定された条件を満足するものだけを出力する結果出力部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用レーダ装置に関し、特に、対象となる物体(以下、ターゲットと表記)を検出して、その位置や相対速度を測定する装置であって、測定結果出力の安定化が可能な車載用レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用レーダに対するターゲットの相対位置が特定条件を満足すると、レーダ〜ターゲット間を伝播する電磁波(直接波)と、レーダ〜路面〜ターゲットといった経路を伝播する電磁波(間接波)とが干渉して、いわゆるマルチパスフェージング(以下、マルチパスと略記)が発生し、そのターゲットに関する信号強度は極端に小さくなる。このため、ターゲットが検出されにくく、検出結果が不安定になる。また、検出されたとしても、ターゲットの信号強度が小さく、いわゆるSNR(信号対雑音比)が不十分な状態のため、測定値の誤差ばらつきが増大し、測定ごとの位置変動や相対速度変動が大きくなる。
【0003】
このような状態のターゲットに関する従来技術として、特許文献1がある。この従来技術では、路面からのレーダ取り付け高さ、路面からのターゲット反射点高さ(ここで、当該反射点は、1つの点状反射物体と仮定)、および、レーダの使用周波数から、理論式により、マルチパスの影響を受ける距離範囲を予測する。また、ターゲットがその距離範囲を通過している間(経過時間)は、信号強度が小さいことで、ターゲットが検出されなくても、ターゲットが存在し続けているものとして、検出されなくなる直前のターゲットの距離や相対速度をホールド(保持)するか、あるいは、線形予測した結果を出力し続けるかして、車両の制御を滑らかに行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−34755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の従来技術においては、ターゲットが実際の車両などである場合には、1つのターゲットでも複数の反射点がある、あるいは、ターゲットによって反射点の高さが異なる、といった理由で理論式によるマルチパス領域の推定は容易ではなくなるという問題点があった。
【0006】
なお、マルチパスは、上記の直接波と間接波だけで起きるわけではなく、距離と相対速度がほぼ等しくて、左右方向位置や高さが異なる反射点が2つ以上あれば、発生しうる。例えば、レーダ搭載車(以下、自車と表記)の正面前方を走行している車両に対し、その脇を別車両が追抜くような状況がこれに該当する。従って、従来技術においてマルチパス領域と判定されない場合でも、マルチパスと同様な要因でターゲットの信号強度がある期間急激に小さくなり、これに連動して急にターゲットの検出結果が不安定になったり、測定値の変動が増大することがある。従来技術においては、このようなターゲットが検出されなくなった状態においても、その直前のターゲット情報(距離と相対速度)だけでホールド、あるいは、線形予測するので、自車の加減速による影響で誤差が増大し易く、ターゲットが再び検出状態になった際に、距離や相対速度に差があり、同一ターゲットと見なされない状況が起こりうるという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、測定段階で検出結果や測定精度が急に不安定になっても、車両制御などへの最終的な出力は不安定化させないことを可能にする車載用レーダ装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両に搭載され、検出対象のターゲットに関する情報を出力する車載用レーダ装置であって、予め設定された一定の時間周期で、ターゲットの位置と相対速度とに関わる情報を測定する測定部と、前記測定部による各測定ごとのターゲットの位置と相対速度とに関わる情報を、複数の周期に亘って入力し、時系列で相関があるターゲットを探索しながら、ターゲットに関わる情報を少なくとも1つ以上含むターゲットの情報セットを生成する時系列相関部と、前記ターゲットの情報セットを記憶する記憶部と、前記ターゲットの情報セットに関し、あらかじめ設定された条件を満足するものだけを出力する結果出力部とを備え、前記ターゲットの情報セットは、ターゲットの位置および相対速度と、ターゲットの分類と、今回測定周期までの時系列相関成立回数と、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態と、時系列相関の不成立を許容する回数とを含んでいる車載用レーダ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、車両に搭載され、検出対象のターゲットに関する情報を出力する車載用レーダ装置であって、予め設定された一定の時間周期で、ターゲットの位置と相対速度とに関わる情報を測定する測定部と、前記測定部による各測定ごとのターゲットの位置と相対速度とに関わる情報を、複数の周期に亘って入力し、時系列で相関があるターゲットを探索しながら、ターゲットに関わる情報を少なくとも1つ以上含むターゲットの情報セットを生成する時系列相関部と、前記ターゲットの情報セットを記憶する記憶部と、前記ターゲットの情報セットに関し、あらかじめ設定された条件を満足するものだけを出力する結果出力部とを備え、前記ターゲットの情報セットは、ターゲットの位置および相対速度と、ターゲットの分類と、今回測定周期までの時系列相関成立回数と、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態と、時系列相関の不成立を許容する回数とを含んでいる車載用レーダ装置であるので、測定段階で検出結果や測定精度が急に不安定になっても車両制御などへの最終的な出力は不安定化させない効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる車載用レーダ装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係わる車載用レーダ装置におけるターゲットの情報セットの生成と出力の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について、詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の構成を示したブロック図である。
【0012】
図1において、1は車載用レーダ装置、2は車載用レーダ装置に接続された走行速度センサである。
【0013】
車載用レーダ装置1は、図1に示すように、制御部11と、送受信部12と、送受波部13と、測定部14と、記憶部15と、時系列相関部16と、結果出力部17とから構成される。
【0014】
車載用レーダ装置1および走行速度センサ2は、ともに、車両に搭載される。走行速度センサ2は、自車の走行速度を測定する。車載用レーダ装置1は、電磁波を放射し、それがターゲットで反射した反射波を受信して、受信した信号に基づくターゲットに関する測定結果と、走行速度センサ2で測定した自車の走行速度とに基づいて、少なくとも前後方向および左右方向のターゲットの位置と相対速度とを検出する。
【0015】
以下に、車載用レーダ装置1を構成している各構成要素11〜17について説明する。
【0016】
制御部11は、例えば、専用のロジック回路や、汎用のCPU(Central Processing Unit)内のプログラム、あるいは、両者の組み合わせで構成され、以下で述べる車載用レーダ装置1の各構成要素12〜17の動作タイミングなどを制御する。
【0017】
送受信部12と送受波部13では、制御部11の制御により、送受信部12で生成された送信信号が、送受波部13で送信電磁波として空間に放射される。また、制御部11の制御により、放射した送信電磁波がターゲットなどで反射した反射電磁波を送受波部13が受波し、送受信部12がそれを受信信号に変換する。
【0018】
測定部14は、送受信部12から受信信号が入力され、予め設定された一定の時間周期でターゲットの位置と相対速度に関わる情報を測定し、測定結果を出力する。測定部14では、送受信部12からの受信信号の入力のタイミングや、測定部14による測定結果の出力のタイミングが、制御部11で制御される。また、測定部14は、専用のロジック回路や、汎用のCPU、DSP(Digital Signal Processor)内のプログラム、あるいは、これらの組み合わせで構成されている。測定部14は、車載用レーダ装置1で使用されるレーダ方式や測角方式に対応する測定用信号処理を受信信号に対して実施して、ターゲットについて、少なくとも、以下の4つを測定する。
【0019】
・ターゲット個数:Ktgt
・極座標系距離:Dst(i){i=1〜Ktgt}
・極座標系半径方向相対速度:Vlc(i){i=1〜Ktgt}
・極座標系方位角度:Agl(i){i=1〜Ktgt}
【0020】
これらの測定結果は、制御部11の制御により、測定部14から記憶部15へ出力される。記憶部15は、制御部11の制御により、所定の記憶領域にこれらを記憶する。
【0021】
なお、極座標系距離Dst(i)、および、極座標系半径方向相対速度Vlc(i)を測定するため、レーダ方式として公知である、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式や、パルスドップラー方式などが実現できるように、送受信部12は構成され、送受信のタイミングは制御部11で制御される。
【0022】
また、極座標系方位角度Agl(i)を測定するため、送受波部13は、公知であるモノパルス測角方式用に極座標系方位方向について送受電磁波の向きが変えられる機構や、公知であるアレー信号処理測角方式用に複数の送波素子および受波素子を備え、制御部11が、送受電磁波の向きの制御や、複数素子での送波や受波のタイミングなどを制御する。
【0023】
時系列相関部16は、測定部14により得られた各測定ごとのターゲットの位置と相対速度に関わる情報を複数の周期に亘って記憶部15から読み出し、時系列で相関があるターゲットを探索しながら、ターゲットの位置および相対速度と、ターゲットの分類と、j今回測定周期までの時系列相関成立回数と、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態と、時系列相関の不成立を許容する回数とを含むターゲットの情報セットを生成する。ターゲットの情報セットは、制御部11の制御により、記憶部15に記憶される。
【0024】
ここで、以下で使用するターゲットの情報セットについて説明する。ターゲットの情報セットは、前回測定用:S0と今回測定用:S1とが存在し、それぞれ同じ種類の情報として、少なくとも以下の情報を、ターゲット個数(前回測定用:KtgtS0、今回測定用:KtgtS1)分有している。
【0025】
・直交座標系前後方向位置:S0_Ry(i)、S1_Ry(j)
・直交座標系左右方向位置:S0_Rx(i)、S1_Rx(j)
・直交座標系前後方向相対速度:S0_Rv(i)、S1_Rv(j)
・時系列相関成立回数:S0_Ns(i)、S1_Ns(j)
・速度によるターゲットの分類:S0_Cv(i)、S1_Cv(j)
・直交座標系前後方向位置変動状態:S0_Fy(i)、S1_Fy(j)
・直交座標系左右方向位置変動状態:S0_Fx(i)、S1_Fx(j)
・直交座標系前後方向相対速度変動状態:S0_Fv(i)、S1_Fv(j)
・時系列相関不成立許容回数:S0_Np(i)、S1_Np(j)
【0026】
ただし、i=1〜KtgtS0、j=1〜KtgtS1、である。
【0027】
結果出力部17は、時系列相関部16で生成されたターゲットの情報セットのうち、あらかじめ設定された条件を満足するものだけを出力する。当該条件の例については後述する。
【0028】
以下、今回測定におけるターゲットの情報セット:S1の生成と出力手順について、記憶部15、時系列相関部16、結果出力部17、走行速度センサ2の動作として、図2のフローチャートを用いて詳細に述べる。
【0029】
なお、制御部11の制御により、測定部14が、前回測定におけるターゲットの情報セット:S0を、記憶部15へ出力し終えた後で、制御部11により、記憶部15、時系列相関部16、結果出力部17、および、走行速度センサ2が制御されて、今回測定におけるターゲットの情報セット:S1の生成と出力が行なわれる。
【0030】
このうち、記憶部15は、メモリ(RAM)やハードディスク等の記憶装置から構成され、時系列相関部16及び結果出力部17は専用のロジック回路や、汎用のCPU、DSP内のプログラム、あるいは、これらの組み合わせで構成される。
【0031】
図2のフローチャートにおいて、まず、ステップS201では、時系列相関部16が、今回測定用のターゲット個数KtgtS1を初期化(KtgtS1=0)する。なお、この時点で、記憶部15には、前回の結果としてKtgtS0の値が記録されている。但し、レーダ装置が起動した直後、測定が行われる前に限ってKtgtS0=0と設定される。
【0032】
次に、ステップS202では、時系列相関部16が、前回測定用のターゲット個数KtgtS0を記憶部15から読み出し、KtgtS0=0か否かを判定し、KtgtS0=0であればステップS203へ進み、KtgtS0≠0であればステップS204へ進む。
【0033】
ステップS203では、時系列相関部16が、測定部14により今回測定したターゲット個数Ktgtを記憶部15から読み出し、当該ターゲット個数Ktgtの回数分だけ、ステップS203a〜ステップS203bの処理を繰り返す。
【0034】
以下、ステップS203a〜ステップS203bの説明では、i=1〜Ktgtであり、i番目のターゲットの今回測定結果:{Dst(i),Vlc(i),Agl(i)}を処理している。
【0035】
ステップS203aでは、時系列相関部16が、下記により、S1の各情報を生成し、記憶部15に記憶する。
【0036】
まず、記憶部15から読み出した、極座標系距離Dst(i)と極座標系方位角度Agl(i)から、直交座標系前後方向位置S1_Ry(KtgtS1)と直交座標系左右方向位置S1_Rx(KtgtS1)を算出して、記憶部15に記憶する。
【0037】
例えば、極座標系方位角度Agl(i)について、自車正面=0[deg]で、進行方向左側がマイナス領域、右側がプラス領域と定義されている場合、直交座標系前後方向位置S1_Ry(KtgtS1)と直交座標系左右方向位置S1_Rx(KtgtS1)を、以下の式で算出する。
【0038】
S1_Ry(KtgtS1)[m]=Dst(i)[m]×cos{ Agl(i)[deg] }
S1_Rx(KtgtS1)[m]=Dst(i)[m]×sin{ Agl(i)[deg] }
【0039】
次に、記憶部15から読み出した、極座標系半径方向相対速度Vlc(i)と極座標系方位角度Agl(i)から、直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)を算出して、記憶部15に記憶する。
【0040】
例えば、極座標系方位角度Agl(i)について、自車正面=0[deg]で、進行方向左側がマイナス領域、右側がプラス領域と定義され、極座標系半径方向相対速度Vlc(i)と直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)について、接近時がマイナスで定義されている場合、次式で直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)を算出する。
【0041】
S1_Rv(KtgtS1)[m/s]=Vlc(i)[m/s]÷cos{ Agl(i)[deg] }
【0042】
次に、時系列相関成立回数S1_Ns(KtgtS1)を初期化(S1_Ns(KtgtS1)=0)して、記憶部15に記憶する。
【0043】
次に、直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)と入力した自車の走行速度センサ2の出力Vsbj1との和を、あらかじめ設定された速度値:Vmovと比較して、速度によるターゲットの分類S1_Cv(KtgtS1)を決定し、記憶部15に記憶する。
【0044】
例えば、直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)について、接近時がマイナスで定義され、
|S1_Rv(KtgtS1)+Vsbj1|≧ Vmov
の場合は、速度によるターゲットの分類S1_Cv(KtgtS1)を、地面に対して移動しているターゲット(移動ターゲット)とし、
|S1_Rv(KtgtS1)+Vsbj1|< Vmov
の場合は、速度によるターゲットの分類S1_Cv(KtgtS1)を、地面に対して停止しているターゲット(停止ターゲット)とする。
【0045】
次に、直交座標系前後方向位置変動状態S1_Fy(KtgtS1)を初期化(S1_Fy(KtgtS1)=0)して、記憶部15に記憶する。
また、直交座標系左右方向位置変動状態S1_Fx(KtgtS1)を初期化(S1_Fx(KtgtS1)=0)して、記憶部15に記憶する。
また、直交座標系前後方向相対速度変動状態S1_Fv(KtgtS1)を初期化(S1_Fv(KtgtS1)=0)して、記憶部15に記憶する。
また、時系列相関不成立許容回数S1_Np(KtgtS1)を初期化(S1_Np(KtgtS1)=Ndef)して、記憶部15に記憶する。
ここで、Ndefはあらかじめ設定された回数である。
【0046】
ステップS203bでは、時系列相関部16が、今回測定におけるターゲット個数KtgtS1をインクリメント(KtgtS1=KtgtS1+1)する。インクリメントの結果、KtgtS1>Ktgtとなったら、ステップS203の処理を終了し、ステップS206に進む。
【0047】
一方、ステップS204では、時系列相関部16が、記憶部15から読み出したKtgtS0の回数分だけ、ステップS204a〜ステップS204iまでを繰り返す。以下、ステップS204a〜ステップS204iの説明では、i=1〜KtgtS0であり、i番目の前回測定情報セット:S0を処理している。
【0048】
ステップS204aでは、時系列相関部16が、後述するステップS204b4の判定で使用される選択用暫定最小値:Tmpを、十分大きな値(ステップS204b3で算出される結果より十分大きな値):Emaxで初期化(Tmp=Emax)し、また、情報セット候補番号:Cndに無効値を設定(Cnd=0)する。
【0049】
ステップS204bでは、時系列相関部16が、測定部14により今回測定したターゲット個数Ktgtを記憶部15から読み出し、当該Ktgtの回数分だけ、ステップS204b1〜ステップS204b6までを繰り返す。
【0050】
以下、ステップS204b1〜ステップS204b6までの説明では、j=1〜Ktgtであり、j番目の今回測定結果:{Dst(j),Vlc(j),Agl(j)}を処理している。
【0051】
ステップS204b1では、時系列相関部16が、あらかじめ設定された所定の測定周期(時間間隔)に基づく線形予測により、前回観測の情報セット:S0から以下の3つの予測値{SpRy(i),SpRx(i),SpRv(i)}を算出する。
【0052】
まず、記憶部15から読み出した前回測定の直交座標系前後方向位置S0_Ry(i)と直交座標系前後方向相対速度S0_Rv(i)から予測して、今回測定における直交座標系前後方向予測位置:SpRy(i)を算出する。例えば、直交座標系前後方向相対速度S0_Rv(i)について、接近時がマイナスで定義されている場合、次式で算出する。
【0053】
SpRy(i)[m]=S0_Ry(i)[m]+S0_Rv(i)[m/s]×測定周期[s]
【0054】
次に、記憶部15から読み出した前回測定の直交座標系左右方向位置S0_Rx(i)から予測して、今回測定における直交座標系左右方向予測位置:SpRx(i)を算出する。例えば、次式で算出する。
【0055】
SpRx(i)[m]=S0_Rx(i)[m]
【0056】
次に、記憶部15から読み出した前回測定の直交座標系前後方向相対速度S0_Rv(i)から予測して、今回測定における直交座標系前後方向予測相対速度:SpRv(i)を算出する。例えば、直交座標系前後方向相対速度S0_Rv(i)について、接近時がマイナスで定義されている場合、次式で算出する。
【0057】
SpRv(i)[m/s]=S0_Rv(i)[m/s]
【0058】
また、以下の3つの値{Ry(j),Rx(j),Rv(j)}を算出する。記憶部15から読み出した極座標系距離Dst(j)と極座標系方位角度Agl(j)とから、仮の直交座標系前後方向位置:Ry(j)と仮の直交座標系左右方向位置:Rx(j)を算出する。例えば、極座標系方位角度Agl(j)について、自車正面=0[deg]で、進行方向左側がマイナス領域、右側がプラス領域と定義されている場合、以下の式で算出する。
【0059】
Ry(j)[m]=Dst(j)[m]×cos{ Agl(j)[deg] }
Rx(j)[m]=Dst(j)[m]×sin{ Agl(j)[deg] }
【0060】
次に、記憶部15から読み出した極座標系半径方向相対速度Vlc(j)と極座標系方位角度Agl(j)とから、仮の直交座標系前後方向相対速度:Rv(j)を算出する。例えば、極座標系方位角度Agl(j)について、自車正面=0[deg]で、進行方向左側がマイナス領域、右側がプラス領域と定義され、極座標系半径方向相対速度Vlc(j)と直交座標系前後方向相対速度Rv(j)とについて、接近時がマイナスで定義されている場合、次式で算出する。
【0061】
Rv(j)[m/s]=Vlc(j)[m/s]÷cos{ Agl(j)[deg] }
【0062】
次に、これらの得られた値について、以下の組み合わせで差の大きさを算出する。
【0063】
δy=|SpRy(i)−Ry(j)|
δx=|SpRx(i)−Rx(j)|
δv=|SpRv(i)−Rv(j)|
【0064】
ステップS204b2では、時系列相関部16が、ステップS204b1で算出した差の大きさδy、δx、δvに関して、以下の条件を全て満足しているかを判定し、満足していれば、ステップS204b3に進み、それ以外であれば、ステップS204b6に進む。
【0065】
δy<εy
δx<εx
δv<εv
【0066】
ここで、εy、εx、εvはあらかじめ設定された許容誤差値である。
【0067】
ステップS204b3では、時系列相関部16が、差の大きさから選択用評価値:Estを、例えば各差の二乗和で、算出する。
【0068】
Est=(δy×δy)+(δx×δx)+(δv×δv)
【0069】
ステップS204b4では、時系列相関部16が、選択用評価値Estと選択用暫定最小値Tmpとを比較する。その結果、Est<Tmpであれば、ステップS204b5に進む。一方、Est≧Tmpであれば、ステップS204b6に進む。
【0070】
ステップS204b5では、時系列相関部16が、Tmpの値を選択用評価値Estで置き換え(Tmp=Est)るとともに、情報セット候補番号Cndに、処理中である今回測定結果の番号:j(j番目のターゲット)を設定(Cnd=j)する。
【0071】
ステップS204b6は、条件分岐の行き先としてだけのステップであり、何もしない。
【0072】
このようにして、Ktgtの回数分だけ、ステップS204b1〜ステップS204b6までの処理を繰り返し、Ktgtの回数分が終了したら、ステップS204cに進む。
【0073】
ステップS204cでは、時系列相関部16が、情報セット候補番号Cndが無効値か否かを判定し、無効値でなければ(Cnd≠0であれば)、ステップS204dへ進む。一方、情報セット候補番号Cndが無効値であれば(Cnd=0であれば)、ステップS204fへ進む。
【0074】
ステップS204dでは、時系列相関部16が、処理中であるi番目の前回測定の情報セットS0と、Cnd(=j)番目の今回測定結果とで、線形予測が成立したとして、i番目のS0と、Cnd(=j)番目の今回測定結果の情報と、自車の走行速度センサ2出力Vsbj1とに基づいて、以下の処理を行ない、KtgtS1番目のS1の情報を算出、設定し、記憶部15に記憶する。
【0075】
ステップS204b1で算出した結果である、Ry(Cnd=j)、Ry(Cnd=j)、Ry(Cnd=j)、SpRy(i)、SpRx(i)、SpRv(i)から、直交座標系前後方向位置S1_Ry(KtgtS1)、直交座標系左右方向位置S1_Rx(KtgtS1)、直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)を算出し、記憶部15に記憶する。例えば、以下の式で算出する。
【0076】
S1_Ry(KtgtS1)=(1−α)×Ry(Cnd)+α×SpRy(i)
S1_Rx(KtgtS1)=(1−β)×Rx(Cnd)+β×SpRx(i)
S1_Rv(KtgtS1)=(1−γ)×Rv(Cnd)+γ×SpRv(i)
【0077】
ただし、α、β、γは、0以上1未満の定数である。
【0078】
S0_Ns(i)に任意の値を加えて、新たな時系列相関成立回数S1_Ns(KtgtS1)とし、記憶部15に記憶する。例えば、次式のように、上記任意の値として、1を加える。
【0079】
S1_Ns(KtgtS1)=S0_Ns(i)+1
【0080】
また、ステップS204b1で算出した差の大きさδy、δx、δvを、それぞれ、前回測定の変動状態に追加して、以下の情報に記録し、記憶部15に記憶する。
【0081】
S1_Fy(KtgtS1)←{S0_Fy(i)とδy}
S1_Fx(KtgtS1)←{S0_Fx(i)とδx}
S1_Fv(KtgtS1)←{S0_Fv(i)とδv}
【0082】
ただし、各変動状態は、最新の測定結果L回分のみを記憶し、それ以前の状態は記憶しないようにして、有限回の結果のみを記憶する。例えば、各変動状態をL次元の情報格納用配列として用意し、いわゆる循環的にδy、δx、δvを格納する。
【0083】
時系列相関部16は、直交座標系前後方向相対速度S1_Rv(KtgtS1)と自車の走行速度センサ2出力Vsbj1、あるいは、S1_Rv(KtgtS1)とVsbj1と直交座標系前後方向相対速度S0_Rv(i)とにより、地面に対する速度に基づいて、ターゲットを分類する。すなわち、地面に対して移動している(移動ターゲット)、または、地面に対して停止している(停止ターゲット)などに分類し、その分類結果を、速度によるターゲットの分類S1_Cv(KtgtS1)に設定し、記憶部15に記憶する。例えば、下記2つの条件をともに満足した場合のみ、地面に対して停止しているターゲット(停止ターゲット)とする。
【0084】
|S1_Rv(KtgtS1)+Vsbj1|<Vmov
|S0_Rv(i)+Vsbj1|<Vmov
【0085】
それ以外は地面に対して移動しているターゲット(移動ターゲット)とする。
【0086】
また、各変動状態に基づいて、時系列相関不成立許容回数S1_Np(KtgtS1)を設定し、記憶部15に記憶する。例えば、速度によるターゲットの分類S1_Cv(KtgtS1)から地面に対して移動しているターゲットと分類され、直交座標系左右方向位置S1_Rx(KtgtS1)から自車と同じ車線内と判定された場合において、直交座標系前後方向位置変動状態S1_Fy(KtgtS1)のL回分記録中、Ny{q}回で差の大きさδyがあらかじめ設定された前後方向位置変動差:Wy[m]未満であり、かつ、S1_Fx(KtgtS1)のL回分記録中、Nx{q}回で差の大きさδxがあらかじめ設定された左右方向位置変動差:Wx[m]未満であれば、以下の通りとする。
【0087】
時系列相関不成立許容回数S1_Np(KtgtS1)=あらかじめ設定された回数:Nyx{q}
【0088】
すなわち、前方で地面に対して移動しているターゲットの前後および左右方向の位置変動が小さい場合、そのターゲットは自車とほぼ同じ動きをしており、そのターゲットが突然存在しなくなることはないとする。
【0089】
このとき、Ny{q},Nx{q},Nyx{q}に関して、q>1として組合わせ方を複数通り用意してもよい。また、例えば、
S1_Cv(KtgtS1)から、地面に対して停止しているターゲットと分類され、
S1_Rx(KtgtS1)から、自車と同じ車線内と判定された場合において、
S1_Fx(KtgtS1)のL回分記録中、Nx{q}回で差の大きさδxがあらかじめ設定された左右方向位置変動差:Wx[m]未満であり、かつ
S1_Fv(KtgtS1)のL回分記録中、Nv{q}回で差の大きさδvがあらかじめ設定された前後方向相対速度変動差:Wv[m/s]未満であれば、
S1_Np(KtgtS1)=あらかじめ設定された回数:Nxv{q}
とする。
【0090】
すなわち、前方で地面に対して停止しているターゲットの左右方向位置および相対速度の変動が小さい場合、自車はそのターゲットに向かって接近しており、そのターゲットが突然存在しなくなることはないとする。
【0091】
このとき、Nx{q},Nv{q},Nxv{q}に関して、q>1として組合わせ方を複数通り用意してもよい。
【0092】
なお、S1_Np(KtgtS1)を設定する際、S1_Np(KtgtS1)<S0_Np(i)の場合、
S1_Np(KtgtS1)=S0_Np(i)
として、
複数測定周期に亘って時系列相関が成立していれば、今回以前に得られた時系列相関不成立許容回数のうち最も大きな値を採用するようにしてもよい。
【0093】
また、S1_Np(KtgtS1)を回数で直接設定するのではなく、いったん許容する直交座標系前後方向位置間隔:Ryyとして設定し、次式のようにその時の相対速度によって回数を設定してもよい。
【0094】
S1_Np(KtgtS1)={Ryy[m]÷S1_Rv(KtgtS1)[m/s]}÷ 測定周期[s]
【0095】
ステップS204eでは、時系列相関部16が、KtgtS1をインクリメント(KtgtS1=KtgtS1+1)する。インクリメントの結果、KtgtS1>KtgtS0となったら、ステップS204の処理を終了し、ステップS205に進む。
【0096】
一方、ステップS204fでは、時系列相関部16が、S0_Np(i)から任意の値だけ減らし、仮の時系列相関不成立許容回数:Npとする。例えば、次式のように1を減じる。
【0097】
Np=S0_Np(i)−1
【0098】
ステップS204gでは、時系列相関部16が、ステップS204fで得られたNpと、あらかじめ設定された回数:Nbとを比較する。比較の結果、Np(KtgtS1)>Nbであれば、ステップS204hに進む。一方、Np(KtgtS1)≦Nbであれば、ステップS204iに進む。
【0099】
ステップS204hでは、時系列相関部16が、処理中であるi番目の前回測定の情報セットS0について、今回の測定結果では時系列相関が成立しなかったが、ターゲットは存在するとして、S0の情報とVsbj1、Vsbj0に基づいて、KtgtS1番目のS1の情報を算出、設定し、記憶部15に記憶する。
【0100】
まず、ステップS204fで得たNpをS1_Np(KtgtS1)として(S1_Np(KtgtS1)=Np)、
記憶部15に記憶する。
【0101】
その他の情報については、例えば以下の処理を行なう。
【0102】
S1_Ry(KtgtS1)とS1_Rv(KtgtS1)については、S1_Cv(KtgtS1)=S0_Cv(i)の情報から、ターゲットの分類によって異なる方法で算出し、記憶部15に記憶する。
【0103】
地面に対して移動しているターゲットの場合、Vsbj1と、記憶部15から読み出した前回測定におけるVsbj0の差を、あらかじめ設定された自車速変動値:Vdffと比較し、|Vsbj1−Vsbj0|<Vdffであれば、以下のように、ステップS204b1で得た線形予測結果をそのまま採用する。
【0104】
S1_Ry(KtgtS1)=SpRy(i)
S1_Rv(KtgtS1)=SpRv(i)
【0105】
一方、|Vsbj1−Vsbj0|≧Vdffであれば、以下の式で算出する。
【0106】
S1_Rv(KtgtS1)=SpRv(i)−{Vsbj1−Vsbj0}
S1_Ry(KtgtS1)=S0_Ry(i)+S1_Rv(KtgtS1)×測定周期[s]
【0107】
また、地面に対して停止しているターゲットであれば、Vsbj1とステップ204b1(S204b1)で得た線形予測結果を利用して、S1_Rv(KtgtS1)を算出して、自車の加減速による変化に対応させる。例えば、次式を使用する。
【0108】
S1_Rv(KtgtS1)={SpRv(i)+Vsbj1}÷2
S1_Ry(KtgtS1)=S0_Ry(i)+S1_Rv(KtgtS1)×測定周期[s]
【0109】
残りのS1_Rx(KtgtS1)、S1_Ns(KtgtS1)、S1_Cv(KtgtS1)、S1_Fy(KtgtS1)、S1_Fx(KtgtS1)、S1_Fv(KtgtS1)に関しては、例えばS0の情報をそのまま継承し、記憶部15に記憶する。
【0110】
S1_Rx(KtgtS1)=S0_Rx(i)
S1_Ns(KtgtS1)=S0_Ns(i)
S1_Cv(KtgtS1)=S0_Cv(i)
S1_Fy(KtgtS1)=S0_Fy(i)
S1_Fx(KtgtS1)=S0_Fx(i)
S1_Fv(KtgtS1)=S0_Fv(i)
【0111】
ステップS204iでは、時系列相関部16が、処理中であるi番目の前回測定の情報セットS0について、実際にターゲットが存在しないとして、次回以降の情報セットに残らないようにする。
【0112】
ステップS205では、時系列相関部16が、KtgtS1を記憶部15に記憶する。
【0113】
ステップS206では、結果出力部17が、記憶部15から読み出したKtgtS1の回数分だけ、ステップS206a〜ステップS206cまでを繰り返す。以下、ステップS206a)〜ステップS206c)の説明では、i=1〜KtgtS1であり、i番目の今回測定情報セット:S1を扱っている。
【0114】
ステップS206aでは、結果出力部17が、記憶部15からS1を読み出し、あらかじめ設定された条件を満足すれば、ステップS206bへ進む。一方、満足しなければステップS206cへ進む。なお、例えば、下記を条件とする。
【0115】
S1_Ns(i)>{あらかじめ設定された回数:Nout}
【0116】
ステップS206bでは、結果出力部17が、処理中であるS1のうち、車両制御に必要な情報としてあらかじめ決められている情報を制御部11の制御で出力する。例えば、S1_Ry(i)、S1_Rx(i)、S1_Rv(i)を出力する。この出力は、例えば車両制御用の別装置(図示せず)に入力され、車両の制御に利用される。
【0117】
ステップS206cでは、条件分岐の行き先としてだけのステップであり、何もしない。
【0118】
ステップS207では、結果出力部17による出力が終了した後、制御部11が、S1を、次回測定における前回測定の情報セットとするため、記憶部15に記憶されているKtgtS0とS0の情報をいったんクリア(再初期化)し、KtgtS0にKtgtS1の値を格納し、S1の情報をS0の記憶領域にコピーしてから、S1の情報をクリア(再初期化)する。
【0119】
ステップS208では、時系列相関部16が、Vsbj1を、次回測定における Vsbj0とするため、以下の処理を行い、制御部11の制御により、Vsbj0とVsbj1を記憶部15に記憶する。
【0120】
Vsbj0=Vsbj1
Vsbj1←クリア(再初期化)
【0121】
以上のように、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、一定の時間周期でターゲットの位置と相対速度に関わる情報を測定する測定部14と、レーダ搭載車両の走行速度を測定する走行速度センサ2と、各測定ごとのターゲットの位置と相対速度に関わる情報を複数の周期に亘って入力し、時系列で相関があるターゲットを探索しながら、ターゲットの位置および相対速度と、ターゲットの分類と、今回測定周期までの時系列相関成立回数と、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態と、時系列相関の不成立を許容する回数とを含む、ターゲットの情報セットを生成する時系列相関部16と、ターゲットの情報セットを記憶する記憶部15と、ターゲットの情報セットに関してあらかじめ設定された条件を満足するものだけを出力する結果出力部17とを備えている。この構成により、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、今回以前の複数測定周期に亘る時系列相関で得られる情報セットが、あらかじめ設定された条件を満足すれば、測定段階では不検出となるターゲットでも、車両制御用の最終結果では出力を続けることができる。従って、本実施の形態に係る車載用レーダ装置よれば、測定段階で検出結果や測定精度が急に不安定になっても、車両制御などへの最終的な出力は不安定化させない効果を奏し、車両の制御などを滑らかに行うことができる。これにより、マルチパスフェージングの発生時だけでなく、例えば、自車の正面前方を走行している車両に対し、その脇を別車両が追い抜くなどして、マルチパスフェージングと同様な要因でターゲットの信号強度がある期間急激に小さくなり、これに連動して急にターゲットの検出結果が不安定になったりした場合にも、ターゲットの測定結果出力を安定化させることが可能である。
【0122】
また、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、時系列相関部16が、今回の測定周期でターゲットが検出されなくなった場合、検出されなくなる直前の測定周期におけるターゲット情報セットの時系列相関の不成立を許容する回数があらかじめ設定された回数より大きければ、ターゲットが存在するとして、検出されなくなる直前の測定周期におけるターゲット情報セットのターゲットの位置と相対速度、および、レーダ搭載車両の走行速度とに基づき、今回の測定周期におけるターゲットの位置と相対速度を算出するようにした。これにより、測定段階では不検出となるターゲットについて、不検出になる直前の位置と相対速度、および、自車速度に基づき、最終結果で出力する位置と相対速度とを算出することができる。
【0123】
また、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、記憶部15が、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態として、前後方向位置の変動状態、左右方向位置の変動状態、前後方向相対速度の変動状態を、今回以前の複数測定周期分、記録するようにした。これにより、情報セットに含まれるターゲット情報の変動状態として、前後方向位置、左右方向位置、相対速度の変動状態を複数測定周期分記録することができる。
【0124】
また、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、時系列相関部16が、時系列相関の不成立を許容する回数を、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態に基づいて設定するようにした。これにより、情報セットに含まれるターゲット情報の変動結果に基づき、測定段階では不検出だが、最終結果で出力を続ける期間の長さを、ターゲットごとに設定することができる。
【0125】
また、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、時系列相関部16が、ターゲットの情報セットに含まれるターゲットの分類として、地面に対する速度に基づく移動ターゲットと停止ターゲットとを設け、これらターゲットの分類によって時系列相関の不成立を許容する回数の設定方法が異なるようにした。これにより、測定段階では不検出だが最終結果で出力を続ける期間の長さの設定方法を、情報セットに含まれるターゲットの分類によって変えることができる。
【0126】
また、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、時系列相関部16が、時系列相関が連続して成立している測定周期中は、今回以前の測定周期における最大の時系列相関の不成立を許容する回数を、今回の測定周期における時系列相関の不成立を許容する回数とするようにした。これにより、連続する測定周期で時系列相関が成立している場合、測定段階では不検出だが最終結果で出力を続ける期間の長さを、今回以前で連続中に得られた最大値で設定することができる。
【0127】
また、本実施の形態に係る車載用レーダ装置は、時系列相関部16が、時系列相関の不成立を許容する回数を設定する際に、はじめは前後方向位置の間隔として設定し、この間隔と、ターゲットの相対速度と、測定周期とに基づいて、当該回数を算出するようにした。これにより、測定段階では不検出だが最終結果で出力を続ける期間の長さ、位置の間隔とターゲットの相対速度、観測周期とで、時系列相関の不成立を許容する回数を算出することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 車載用レーダ装置、2 走行速度センサ、11 制御部、12 送受信部、13 送受波部、14 測定部、15 記憶部、16 時系列相関部、17 結果出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、検出対象のターゲットに関する情報を出力する車載用レーダ装置であって、
予め設定された一定の時間周期で、ターゲット個数、極座標系距離、極座標系半径方向相対速度、極座標系方位角度を、ターゲット情報として測定する測定部と、
前記車両に設けられた走行速度センサによって検知された自車の走行速度を入力するとともに、前記測定部による各測定ごとのターゲット情報を複数の周期に亘って入力し、時系列で相関があるターゲットを探索しながら、ターゲットの位置および相対速度と、ターゲットの分類と、今回測定周期までの時系列相関成立回数と、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態と、時系列相関の不成立を許容する回数とを含むターゲットの情報セットを生成する時系列相関部と、
前記ターゲットの情報セットを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記ターゲットの情報セットに関し、あらかじめ設定された条件を満足するものだけを出力する結果出力部と
を備えたことを特徴とする車載用レーダ装置。
【請求項2】
前記時系列相関部は、今回測定周期でターゲットが検出されなかった場合、検出されなくなる直前の測定周期におけるターゲットの情報セットの時系列相関の不成立を許容する回数が予め設定された回数より大きければ、ターゲットが存在するとして、検出されなくなる直前の測定周期におけるターゲットの情報セットのターゲットの位置と相対速度、および、自車の走行速度とに基づき、今回の測定周期におけるターゲットの位置と相対速度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用レーダ装置。
【請求項3】
前記記憶部は、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態として、前後方向位置の変動状態、左右方向位置の変動状態、前後方向相対速度の変動状態を、今回以前の所定の複数測定周期分、記録する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載用レーダ装置。
【請求項4】
前記時系列相関部は、時系列相関の不成立を許容する回数を、今回以前の測定におけるターゲット情報の変動状態に基づいて設定する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車載用レーダ装置。
【請求項5】
前記時系列相関部は、前記ターゲットの情報セットに含まれる前記ターゲットの分類として、地面に対する移動または停止の別に基づいて分類される移動ターゲットと停止ターゲットとを設定し、これらターゲットの分類によって時系列相関の不成立を許容する回数の設定方法が異なる
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車載用レーダ装置。
【請求項6】
前記時系列相関部は、時系列相関が連続して成立している測定周期中は、今回以前の測定周期における最大の時系列相関の不成立を許容する回数を、今回の測定周期における時系列相関の不成立を許容する回数とする
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車載用レーダ装置。
【請求項7】
前記時系列相関部は、時系列相関の不成立を許容する回数を設定する際に、はじめは前後方向位置の間隔として設定し、この間隔と、ターゲットの相対速度と、測定周期とに基づいて回数を算出する
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車載用レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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