説明

車載用情報提示装置

【課題】他の車両の状態に関する情報を容易に得て、他の車両の状態を運転者に対し判りやすく表示する。
【解決手段】CPU7は、車両情報取得部13等により自車両の現在の車載バッテリの状態の情報を取得し、エネルギー消費状態を複数段階(回生中、経済的な走行中、給電中、大きな電力消費中、残存容量が低下した状態)にランク分けして評価する。CPU7は、位置検出部9により検出された自車両の位置、及び評価された自車両の状態のデータを、通信部16により情報センタ15に送信すると共に、情報センタ15において収集された各車両の位置及び状態データを取得する。そして、各車両の位置及び状態データに基づいて、表示装置6に、各車両の位置を地図画面上に該当車両の状態のランクに応じて色分けしたマークで示した他車両状態表示画面を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の運転者が視認可能な位置に各種情報を表示可能な表示装置を備える車載用情報提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に搭載され、乗員(運転者)に情報を提示する情報提示システムとして、特許文献1に開示されたものが知られている。この情報提示システムでは、ダッシュボード上にロボットを設け、このロボットの回転動作、発話動作、発光動作などを組合せることにより、ナビゲーションのルート案内における右折、左折の指示や、左右の接近物に対する注意喚起、ドアの開放を禁止する旨の報知等を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−120181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行中の自動車の運転者(ユーザ)の知りたい情報として、例えば、どの道路を走行すれば快適な(或いは経済的な)走行が可能であるか、また電気自動車においてはどこに行けばバッテリの給電が可能であるか、といった情報がある。この場合、他の車両が、バッテリの給電をしている場所や、快適走行(経済走行)をしている道路が判れば、自車両もそれに追従するなどの情報の利用が可能となる。しかし、上記した従来の車載用情報提示システムにあっては、自車両に関する情報を提示することができるに止まり、例えば自車両の先方や周囲を走行している他の車両が、どのような状態で走行しているのかといった情報を得ることはできなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、他の車両の状態に関する情報を容易に得ることができ、しかも、その際の他の車両の状態を運転者に対し判りやすく表示することができる車載用情報提示装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の車載用情報提示装置は、車室内に運転者により視認可能な表示装置を備えると共に、前記表示装置の情報表示を制御する制御手段を備えるものにおいて、自車両の現在位置を検出する位置検出手段と、自車両の現在の状態を複数段階にランク分けして評価する評価手段と、情報センタとの間での通信を行う通信手段とを具備し、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された自車両の位置、及び、前記評価手段により評価された自車両の状態のデータを、前記通信手段を介して前記情報センタに送信すると共に、該情報センタが収集した各車両の位置及び状態のデータを、前記通信手段を介して取得し、取得した各車両の位置及び状態のデータに基づいて、表示装置に、各車両の位置を地図画面上に該当車両の状態のランクに応じて色分けしたマークで示した他車両状態表示画面を表示するところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0007】
これによれば、位置検出手段により検出された自車両の位置、及び、評価手段により評価(ランク付け)された自車両の状態のデータが、通信手段を介して情報センタに送信されるので、情報センタでは、多数の車両の位置及び状態のデータが収集される。そして、車両の制御手段は、情報センタが収集した各車両の位置及び状態のデータを、通信手段を介して取得し、そのデータに基づき、表示装置に、他車両状態表示画面を表示することができる。
【0008】
この場合、他車両状態表示画面においては、例えば自車両の周辺を走行している各車両の位置及び状態が、地図画面上に、状態のランクに応じて色分けされたマークで表示されるので、ユーザ(運転者)は、表示装置の画面を見ることによって、他の各車両の位置及び状態を容易に知ることができる。このとき、マークが色分けされていることによって、ユーザは、各車両の状態のランクがひと目で分かるようになる。
【0009】
本発明においては、上記した自車両の現在の状態として、車載バッテリのエネルギー消費状態を、評価手段により評価する構成とすることができる(請求項2の発明)。これによれば、ユーザが、他車両状態表示画面を見て、他の車両が車載バッテリに対して給電を受けている場所や、車載バッテリのエネルギー消費状態が良好な状態で他の車両が走行している道路といった、知りたい情報を容易に得ることができるようになり、自車両の走行に関して、その情報を有効に利用することが可能となる。尚、ここでいう「車載バッテリのエネルギー消費状態」には、例えば、回生(ブレーキ)中、経済的な走行中、給電中、加速時や登り坂で大きな電力消費中、残存容量が低下した状態、などがある。
【0010】
このとき、各車両の位置及び状態のデータに、車両の種類が、電気自動車、ハイブリッド車、エンジン車のいずれであるかのデータを含ませ、制御手段が、他車両状態表示画面において、各車両の車両種類を、表示装置に表示させるマークの形状の相違によって表現する構成とすれば(請求項3の発明)、ユーザは、他車両状態表示画面を見て、他の車両の種類を容易に知ることができる。
【0011】
本発明においては、上記した自車両の現在の状態として、走行リスクを評価手段により評価するように構成し、その走行リスクに、運転者の状況及び自車両自体の状況を含む内的なリスクを表す内部情報と、走行環境からなる外的なリスクを表す外部情報とを含ませることができる(請求項4の発明)。これによれば、ユーザは、他車両状態表示画面を見て、各車両がどのような走行リスクをもって走行しているかを容易に知ることができ、自車両の走行に関して、例えば、走行リスクの高い車両がいる道路を避け、各車両が快適に走行している道路を選ぶなど、その情報を有効に利用することが可能となる。
【0012】
尚、より具体的には、「運転者の状況」には、例えば運転者の体調や眠気、初心者であるか等を含ませることができる。「自車両自体の状況」には、例えば車両の整備状況、故障、タイヤの種類や状況等を含ませることができる。「走行環境」には、例えば走行路の渋滞状況、路面の凍結、雨などの天候、走行路の走りやすさ(幅員や折曲状態、坂道等)、昼間か夜間か等を含ませることができる。
【0013】
この場合、マークを、内外の二重の円又は球から構成し、そのうち内側の円又は球が走行リスクのうち内部情報を表現し、外側の円又は球が走行リスクのうち外部情報を表現するようにしても良い(請求項5の発明)。内部情報及び外部情報を区別して表示することができ、ユーザは、各車両の走行リスクの内容を、より詳細に知ることができる。また、マークを、顔を示すものから構成し、走行リスクを顔の表情によって表現するように構成することもできる(請求項6の発明)。各車両の走行リスクをユーザに対し、判りやすく、且つ、親しみをもって表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、要部の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】車室内の運転席部分を示す斜視図
【図3】車載バッテリのエネルギー消費状態の評価に関する処理手順を示すフローチャート
【図4】他車両状態表示画面の表示に関する処理手順を示すフローチャート
【図5】表示装置における他車両状態表示画面の表示例を示すもので、全ランクを表示した様子を示す図(a)及び特定のランクを抽出した様子を示す図(b)
【図6】本発明の第2の実施例を示すもので、走行リスクの評価に関する処理手順を示すフローチャート
【図7】他車両状態表示画面の表示に関する処理手順を示すフローチャート
【図8】他車両状態表示画面を三次元表示した様子を示す図(a)、及びマークを説明するための拡大図(b)
【図9】表示装置に走行推奨経路が表示された様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)第1の実施例
以下、本発明を具体化した第1の実施例について、図1ないし図5を参照しながら説明する。尚、本実施例では、本発明を、車両としての電気自動車(或いはプラグインハイブリッド車)に適用している。図示はしないが、電気自動車は、周知のように、車輪を回転駆動する走行用モータを備えると共に、その走行用モータの電源となる例えばリチウムイオン二次電池からなる車載バッテリを備えている。
【0016】
まず、図2は、車両たる乗用車(電気自動車)の運転席1の前部の様子を概略的に示しており、ここで、運転席1の前部には、インストルメントパネル2(以下「インパネ2」と略称する)が設けられている。このインパネ2には、メータ部3が埋込まれるようにして設けられ、その手前側に位置してステアリングホイール4が設けられている。詳しく図示はしないが、前記メータ部3には、スピードメータ、タコメータ、水温計、バッテリ残量計、各種のワーニングランプ等が設けられていると共に、自車両の状態を表示する自車両状態表示部も設けられている。
【0017】
そして、前記インパネ2の中央部(センタコンソール部分)に、本実施例に係る車載用情報提示装置5が組込まれる。この車載用情報提示装置5は、図1にも示すように、例えばカラー液晶ディスプレイからなる表示装置6と、その表示装置6の表示を制御する制御手段たるCPU(コンピュータ)7とを備えて構成される。図1に示すように、前記CPU7には、ユーザが各種の設定や入力操作を行うための操作部8が接続されている。この操作部8は、表示装置6の近傍に設けられたメカスイッチや、表示装置6の画面上に設けられたタッチパネル、更には音声認識装置を含んでいる。
【0018】
図1は、本実施例に係る車載用情報提示装置5(CPU7)及びその周辺部分の電気的構成を概略的に示している。CPU7には、前記表示装置6及び操作部8が接続されていると共に、自車両の現在位置を検出する位置検出手段たる位置検出部9が接続されている。詳しく図示はしないが、この位置検出部9は、GPS衛星からの電波を受信することに基づいて自車両の絶対位置を測位するGPS測位部と、自車両に搭載された方位センサや加速度センサ、車速(距離)センサ等の信号から自車両の走行軌跡(相対位置)を求める推測航法部とを備えて構成されている。
【0019】
また、CPU7には、地図データ取得部10が接続され、例えばハードディスク装置からなる地図データベース11から地図データを取得する。地図データベース11には、例えば日本全土の道路地図データや、それに付随する、各種施設や店舗等の施設データ、道路地図を表示装置6の画面上に再生(描画)するためのデータが含まれている。そして、CPU7には、運転者Dの状態(例えば、心拍数、血圧、発汗、体温など)を検出するための周知の生体センサ等からなる乗員状態検知部12が接続されている。
【0020】
さらに、CPU7には、車両情報(操作情報)を取得するための車両情報取得部13が接続されている。この車両情報取得部13は、例えばCANからなる車載ネットワーク14に接続されている。周知のように、この車載ネットワーク14は、車両に搭載された複数のシステム(各々の制御コンピュータ)間でのネットワークを形成するもので、図示はしないが、エンジンECU、トランスミッションECU、ブレーキECU、ナビゲーションECU等の複数の制御ユニットが相互に接続されると共に、充電監視ECUが接続されている。尚、前記ナビゲーションECUは、ルートガイダンス等の周知のナビゲーション処理を実行する。
【0021】
前記充電監視ECUは、前記車載バッテリの充電を制御すると共に、車載バッテリの出力電圧や出力電流などを監視して残存容量(SOC)を常時検出し、例えばメータ部の所定欄に表示するように構成されている。これにて、後述するように、CPU7は、車両情報取得部13及び車載ネットワーク14を介して、充電監視ECUからの車載バッテリの状態等のデータを取得し、自車両の現在の状態として、車載バッテリのエネルギー消費状態を判断(評価)するようになっている。尚、CPU7は、車載ネットワーク14を介して、各種車載センサの情報、例えばエンジン回転数情報、アクセル開度情報、車速情報、シフトポジション情報、走行距離情報、時刻情報、イグニッションのオン・オフ情報等も得るようになっている。
【0022】
そして、CPU7には、外部の情報センタ15との間で無線通信を行う通信手段としての通信部16が接続されている。通信部16としては、DSRC、携帯電話機、無線LAN、DCMなど様々なものを採用することができる。後述するように、車載用情報提示装置5(CPU7)は、通信部16を介して、情報センタ15に対し、自車両の位置及び状態データを送信すると共に、情報センタ15から配信される、自車位置近傍の多数の各車両の位置及び状態データを受信(取得)することが可能に構成されている。
【0023】
このとき、詳しく図示はしないが、前記情報センタ15は、コンピュータを主体として構成されたサーバや、そのサーバに接続され前記通信部16との間での通信が可能な通信装置、最新の各車両の位置及び状態データを記憶する記憶装置、地図データベースなどを備えて構成される。情報センタ15は、多数の他の車両17との間で無線通信を行い、各車両の位置及び状態データを収集するようになっている。
【0024】
さて、次の作用説明でも述べるように、前記CPU7は、そのソフトウエア的構成により、前記車両情報取得部13等により自車両の現在の走行状態を表すデータを取得し、その状態を複数段階にランク分けして評価する。従って、CPU7が評価手段としての機能も有している。尚、このとき、車両の現在の状態を評価する際の判断材料(しきい値等)を、情報センタ15から通信によって得ることにより、各車両で統一された一定基準で判断(評価)がなされるようになる。
【0025】
具体的には、本実施例では、CPU7は、充電監視ECUからの車載バッテリの状態等のデータを取得すると共に、各種車載センサから自車両の走行状態のデータを取得し、自車両の現在の状態として、車載バッテリのエネルギー消費状態を、例えば、次の5段階のランクで評価する。即ち、車載バッテリのエネルギー消費状態が、回生(ブレーキ)中、経済的な走行中、給電中、加速時や登り坂等での大きな電力消費中、残存容量が低下した状態、の5段階である。
【0026】
そして、CPU7は、前記位置検出部9により検出された自車両の位置、及び、評価された自車両の状態のデータ(「位置及び状態データ」という)を、通信部16により情報センタ15に送信する。これと共に、該情報センタ15において収集された各車両の位置及び状態データを、通信部16により取得する。更に、CPU7は、取得した各車両の位置及び状態データに基づいて、表示装置6に、各車両の位置を地図画面上に該当車両の状態のランクに応じて色分けしたマークMで示した他車両状態表示画面(図5参照)を表示する。
【0027】
この場合、図5(a)に示すように、他車両状態表示画面では、例えば、自車両の位置Pを画面の中央下寄り部分に表示し且つ自車両の走行方向を画面の上向きにして、設定されている地図縮尺に応じた所定範囲の二次元の道路地図(俯瞰図)上に、例えば各車両の位置を示す円形のマークMが表示される。そして、該当車両の状態のランクに応じてマークMが色分けされて表示される。また、本実施例では、表示装置6の他車両状態表示画面において、ユーザの操作部8の操作により、特定ランクの車両のマークMのみを、抽出して表示させることもできる(図5(b)参照)。
【0028】
尚、他車両状態表示画面では、自車両の位置を中心として表示したり、北を上向きにして道路地図を表示したりしても良い。操作部8を操作して、表示される道路地図の縮尺を変更することも可能である。上記したように、自車両の状態(ランク)は、メータ部3の自車両状態表示部にも、上記と同じ色によって表示される。
【0029】
次に、上記のように構成された車載用情報提示装置5の作用について、図3ないし図5も参照して述べる。図3のフローチャートは、CPU7が実行する、自車両の車載バッテリのエネルギー消費状態の評価(判断)及び情報センタ15へのデータ送信の処理手順を示している。また、図4のフローチャートは、CPU7が実行する、他車両状態表示画面の表示の処理手順を示している。
【0030】
即ち、図3のフローチャート(自車両の位置及び状態データの送信処理)において、CPU7は、ステップS1にて、車両情報取得部13により、充電監視ECUからの車載バッテリの状態等のデータを取得すると共に、各種車載センサから自車両の走行状態のデータを取得する。次のステップS2では、車載バッテリのエネルギー消費状態を判断(評価)する。この場合、車載バッテリのエネルギー消費状態は、例えば回生(ブレーキ)中、経済的な走行中、給電中、加速時や登り坂等での大きな電力消費中、残存容量が低下した状態、の5段階のランクで評価される。
【0031】
そして、ステップS3では、位置検出部9により検出された自車両の位置、及び、5段階のランクで評価された自車両の状態のデータ(位置及び状態データ)を、通信部16を介して情報センタ15に送信する。情報センタ15では、走行中(或いは給電中)の多数の車両からの位置及び状態データを受信することにより、各車両の位置及び状態データを収集する。
【0032】
次に、図4のフローチャート(他車両状態表示画面の表示処理)において、CPU7は、ステップS4にて、該情報センタ15において収集された各車両の位置及び状態データを、通信部16により取得する。そして、ステップS5にて、取得した各車両の位置及び状態データに基づいて、表示装置6に他車両状態表示画面(図5参照)を表示する。
【0033】
この場合、図5(a)に示すように、車両の状態(車載バッテリのエネルギー消費状態)が、回生(ブレーキ)中の場合は、青色(図5では便宜上、マークMの中に数字の「1」を付す)、経済的な走行中の場合は、緑色(図5では便宜上、マークMの中に数字の「2」を付す)、給電中の場合は、黄色(図5では便宜上、マークMの中に数字の「3」を付す)、加速時や登り坂等での大きな電力消費中の場合はオレンジ色(図5では便宜上、マークMの中に数字の「4」を付す)、残存容量が低下した状態の場合には、赤色(図5では便宜上、マークMの中に数字の「5」を付す)の色付けがなされる。
【0034】
これにて、表示装置6の他車両状態表示画面においては、自車両の周辺を走行している各車両の位置及び状態が、地図画面上に、状態のランクに応じて色分けされたマークMで表示されるので、ユーザ(運転者)は、表示装置6の他車両状態表示画面を見ることによって、各車両の位置及び車載バッテリの状態を容易に知ることができる。このとき、マークMが色分けされていることによって、ユーザは、各車両の状態のランクがひと目で分かるようになる。また、ユーザが操作部8の操作により、例えば図5(b)に示すように、特定ランクの車両のマークMのみ、例えば給電中を示す黄色(図5では数字の「3」)を、抽出して表示させることもできる。
【0035】
従って、ユーザは、この表示装置6の他車両状態表示画面を参考にして、マークMが緑色(図5では数字の「2」)で表示されている経済的な走行ができている車両が多い道路を選んで自分も走行したり、あるいは、マークMの色が黄色(図5では数字の「3」)で表示されている他の車両17が給電中の場所を知ることができて自車両もそこに向ったりする等、知りたい情報を容易に得ることができるようになり、自車両の走行に関して、その情報を有効に利用することが可能となる。
【0036】
このように本実施例の車載用情報提示装置5によれば、自車両の位置及び状態データを情報センタ15に送信すると共に、情報センタ15から多数の他の車両17の位置及び状態データを得ることができる。そして、そのデータに基づき、表示装置6に、地図画面上の車両の位置を、状態のランクに応じて色分けしたマークMで示した他車両状態表示画面を表示するようにした。従って、本実施例によれば、多数の他の車両17の状態に関する情報、この場合車載バッテリのエネルギー消費状態の情報を容易に得ることができ、しかも、その際の他の車両の状態を運転者に対し判りやすく表示することができるという優れた効果を奏する。
【0037】
尚、上記第1の実施例では、電気自動車やハイブリッド車における車載バッテリの状態を評価(判断)するようにしたが、それらに加えて、エンジン車(ガソリン、ディーゼル)も共存するような場合には、各車両の位置及び状態データに、車両の種類が、上記3種類のうちいずれであるかのデータを含ませても良い。この場合、他車両状態表示画面において、各車両の車両種類を、マークの形状の相違によって、例えば電気自動車は円、ハイブリッド車は楕円、エンジン車は四角、のように表現することができる。これにより、ユーザは、他車両状態表示画面を見て、他の車両の種類をも容易に知ることができる。
【0038】
(2)第2の実施例
次に、本発明の第2の実施例について、図6ないし図9を参照して説明する。尚、この第2の実施例においても、図1及び図2に示した車載用情報提示装置5、情報センタ15等のハードウエア構成については、上記第1の実施例と共通する。従って、上記第1の実施例と同一部分については、同一符号を付し、新たな図示や詳しい説明を省略し、以下、第1の実施例と異なる点を中心に説明する。
【0039】
この第2の実施例が上記第1の実施例と異なるところは、自車両の現在の状態として、走行リスクを評価(判断)するようにした点にある。ここで、走行リスクとは、運転者Dにとっての運転のストレスの大きさの度合を表すもので、走行リスクが大きいほど、運転のストレスが大きいものとなる。本実施例では、走行リスクには、運転者Dの状況及び自車両自体の状況を含む内的なリスクを表す内部情報と、走行環境からなる外的なリスクを表す外部情報とが含まれる。
【0040】
尚、より具体的には、「運転者Dの状況」には、例えば運転者Dの体調や眠気(集中力)、運転初心者であるか等が含まれる。「自車両自体の状況」には、例えば車両の整備状況(安全系のセンサの稼働状況)、故障、タイヤの種類や状況等が含まれる。「走行環境」には、例えば走行路の渋滞状況、路面の凍結、雨などの天候、走行路の走りやすさ(幅員や折曲状態、坂道等)、昼間か夜間か等が含まれる。
【0041】
図6のフローチャートは、自車両の走行中に、評価手段及び制御手段としてのCPU7が実行する、走行リスクの評価(判断)及び情報センタ15へのデータ送信の処理手順を示している。本実施例では、CPU7は、まずステップS11にて、乗員状態検知部12や車両情報取得部13等から、検出した運転者Dの生体情報(例えば、心拍数、血圧、発汗、体温など)や、車両自体の状況の情報を取得する。ステップS12では、例えば通信部16を介して外部(道路交通情報センタ等)から走行環境に関する情報を取得する。
【0042】
次のステップS13では、取得された情報から走行リスクの算出が行なわれる。この走行リスクの算出は、例えば、運転者Dの脈拍や血圧が正常範囲内であれば、リスク値を0とし、正常範囲から外れていれば、リスク値を1にする、また、車両のメンテナンスが一定期間以上行なわれていないときには、リスク値を1にする、といったように、各項目について、リスクを数値にして評価する。走行環境の場合も、渋滞度合に応じてリスク値を高める、路面の凍結や降雨があればリスク値を1にする等により、リスク値が求められる。このようなリスクを、複数の各項目について評価し、リスク値の合計を算出することにより、走行リスクが求められる。尚、各項目に関して、リスク値に重み付けをしても良いことは勿論である。
【0043】
ステップS14では、求められたリスク値の合計を、しきい値と比較することにより、例えば走行リスクを「リスク1」〜「リスク5」の5段階のランク分けで評価する。「リスク1」が、走行リスクが最も小さく、数値が大きくなるほど、走行リスクが大きいものとなる。本実施例では、この走行リスクは、内部情報(運転者Dの状況によるリスクと自車両自体の状況によるリスクを加えたもの)、及び、外部情報(走行環境に関するリスク)の夫々について、5段階にランク分けして求められる。
【0044】
ステップS15では、位置検出部9により検出された自車両の位置、及び、5段階のランクで評価された自車両の状態(走行リスク)のデータを、通信部16を介して情報センタ15に送信する。情報センタ15では、走行中の多数の車両からの位置及び状態データを受信することにより、各車両の位置及び走行リスク(内部情報及び外部情報)のデータを収集する。
【0045】
次に、図7のフローチャートは、CPU7が実行する、他車両状態表示画面の表示の処理手順を示している。即ち、ステップS16では、情報センタ15において収集された各車両の位置及び走行リスクのデータを、通信部16により取得する。そして、ステップS17にて、取得した各車両の位置及び走行リスクのデータに基づいて、表示装置6に他車両状態表示画面(図8(a)参照)を表示する。自車両の走行リスク(ランク)は、メータ部3の自車両状態表示部に表示される。
【0046】
図8(a)では、表示装置6に、道路地図及び各車両の位置を示すマークMを、自車両から見た状態の三次元表示した場合を例示している。上記第1の実施例と同様に、他車両状態表示画面を二次元(俯瞰図)表示しても良く、ユーザの操作によって二次元と三次元との表示切替えが可能な構成とすることができる。ここで、前記マークMは、図8(b)に示すように、内外の二重の球体I、E(三次元表示の場合)から構成される。内側の球体Iが、内部情報(運転者状況及び車両状況を含むリスク)を表し、外側の球体Eが、外部情報(走行環境のリスク)を表す。そして、内側の球体Iの内部、及び、外側の球体Eの内部(球体Iとの間の空間)が、走行リスクのランクに応じて色分けして表示される。二次元表示の場合は、球が円に変更される。
【0047】
具体的には、例えば、走行リスクがリスク1の場合は、青色(図8、図9では便宜上、マークMの中に数字の「1」を付す)、リスク2の場合は、緑色(図8、図9では便宜上、マークMの中に数字の「2」を付す)、リスク3の場合は、黄色(図8、図9では便宜上、マークMの中に数字の「3」を付す)、リスク4の場合はオレンジ色(図8、図9では便宜上、マークMの中に数字の「4」を付す)、リスク5の場合には、赤色(図8、図9では便宜上、マークMの中に数字の「5」を付す)の色付けがなされる。
【0048】
更に、本実施例では、図8(b)に示すように、マークMには、外側の球体Eの表面に、左右の目及び口が記されて人の顔を示す如き状態となっている。これにて、マークMの顔の表情(笑顔、泣き顔、眠い顔など)によって走行リスクを表現するようにしたり、あるいは、顔(目)の向きによって、該当車両が別の車両と通信をしている等、その方向に関心、関連があることを表現したりすることができる。
【0049】
次のステップS18では、ユーザに対し、走行推奨経路を提案するかどうかが判断される。この判断は、例えば、ナビゲーションECUにおいて、ユーザにより目的地が既に設定されている場合や、目的地が設定されてはいないが、目的地の方向が容易に予測される場合などに、走行推奨経路を提案すると判断される。走行推奨経路を提案すると判断された場合には(ステップS18にてYes)、次のステップS19にて、表示装置6に推奨経路の表示が行なわれる。
【0050】
この推奨経路の提案は、自車両の走行方向に関して、走行リスクの低い車両、例えば、リスク1(青)及びリスク2(緑)が多く走行している道路を選択する(特に外部情報を優先する)といったことによりなされる。これにより、現在、各車両が快適に走行している道路を推奨経路とすることができる。表示装置6の画面に推奨経路を表示するにあたっては、例えば、図9に示すように、自車両(位置P)の近傍の道路地図を平面図(俯瞰図)で表示し、それに重ねて、走行推奨経路を白色の円Cのつながりによって表現することができる。この場合、走行を続けていくと、時間経過に伴い途中で走行推奨経路が変更になるケースがあることは勿論である。
【0051】
これにて、ユーザ(運転者)は、表示装置6の他車両状態表示画面を見ることによって、各車両の位置及び走行リスクの状態を容易に知ることができる。このとき、マークMが色分けされていることによって、ユーザは、各車両の走行リスクのランクがひと目で判るようになる。走行リスクをマークMの顔の表情によって表現するようにすれば、各車両の走行リスクをユーザに対し、より判りやすく、且つ、親しみをもって表示することができる。従って、ユーザは、この表示装置6の他車両状態表示画面を参考にして、自車両の走行に関して、例えば、走行リスクの高い車両がいる道路を避け、各車両が快適に走行している道路を選ぶなど、その情報を有効に利用することが可能となる。
【0052】
このように本実施例によれば、多数の他の車両17の状態に関する情報、この場合走行リスクを容易に得ることができ、しかも、その際の他の車両の状態を運転者に対し判りやすく表示することができるという優れた効果を奏する。また、特に本実施例では、マークMは、内部情報を示す内側の球体Iと、外部情報を示す外側の球体Eとから構成されるので、各車両の走行リスクをより詳細に知ることができる。更に本実施例では、走行リスクの低い車両が多く走行している経路を、推奨経路として提示するようにしたので、ユーザにとっての利便性をより高めることができる。
【0053】
尚、上記第1の実施例では特に説明しなかったが、表示装置6に他車両状態表示画面を表示する際、画面の一部に、現在の車載バッテリの残存容量で継続して走行が可能な範囲を、立体的な地図により表示するようにしても良い。その他、本発明は、上記した各実施例に限定されるものではなく、例えば、ハードウエア構成や、更にはランク分けの段階の数や表示するマークの形状や色などについても、様々な変更が可能である等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0054】
図面中、1は運転席、2はインストルメントパネル、3はメータ部、5は情報提示装置、6は表示装置、7はCPU(制御手段、評価手段)、9は位置検出部(位置検出手段)、15は情報センタ、16は通信部(通信手段)、Mはマークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に運転者により視認可能な表示装置を備えると共に、前記表示装置の情報表示を制御する制御手段を備える車載用情報提示装置において、
自車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
自車両の現在の状態を複数段階にランク分けして評価する評価手段と、
情報センタとの間での通信を行う通信手段とを具備し、
前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された自車両の位置、及び、前記評価手段により評価された自車両の状態のデータを、前記通信手段を介して前記情報センタに送信すると共に、該情報センタが収集した各車両の位置及び状態のデータを、前記通信手段を介して取得し、
取得した各車両の位置及び状態のデータに基づいて、前記表示装置に、前記各車両の位置を地図画面上に該当車両の状態のランクに応じて色分けしたマークで示した他車両状態表示画面を表示することを特徴とする車載用情報提示装置。
【請求項2】
前記評価手段は、自車両の現在の状態として、車載バッテリのエネルギー消費状態を評価することを特徴とする請求項1記載の車載用情報提示装置。
【請求項3】
前記各車両の位置及び状態のデータには、車両の種類が、電気自動車、ハイブリッド車、エンジン車のいずれであるかのデータが含まれ、
前記制御手段は、各車両の車両種類を、前記表示装置に表示させるマークの形状の相違によって表現することを特徴とする請求項2記載の車載用情報提示装置。
【請求項4】
前記評価手段は、自車両の現在の状態として、走行リスクを評価するように構成され、前記走行リスクには、運転者の状況及び自車両自体の状況を含む内的なリスクを表す内部情報と、走行環境からなる外的なリスクを表す外部情報とが含まれることを特徴とする請求項1記載の車載用情報提示装置。
【請求項5】
前記マークは、内外の二重の円又は球からなり、そのうち内側の円又は球が前記走行リスクのうち内部情報を表現し、外側の円又は球が前記走行リスクのうち外部情報を表現することを特徴とする請求項4記載の車載用情報提示装置。
【請求項6】
前記マークは、顔を示すマークからなり、前記走行リスクを顔の表情によって表現することを特徴とする請求項4又は5記載の車載用情報提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207941(P2012−207941A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71798(P2011−71798)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】