説明

車載用GPSアンテナ

【課題】車のフロントガラス等の傾斜した面に配設され、天頂方向の利得が優れている車載用GPSアンテナ10を提供する。
【解決手段】GPS右旋円偏波信号の1波長の実効長でGPS右旋円偏波信号を受信でき、第1の給電電極16とグランド電極18を有する第1のループアンテナエレメント14と、第1のループアンテナエレメント14の外側を囲んで、第2の給電電極24を有してグランド電極18を共用する第2のループアンテナエレメント22と、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pに、一端を接続したGPS右旋円偏波信号の1/4波長の実効長のポールアンテナエレメント26とを、1つの平面上に配設し、これを第1のループアンテナエレメント14の第1の給電電極16とグランド電極18が設けられた側を上側に位置させるように、車の傾斜した面に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車のフロントガラス等の傾斜した面に配設されて、天頂方向の利得が優れている車載用GPSアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用のGPSアンテナにあっては、従前は平面パッチアンテナがダッシュボード上に配設されていた。この平面パッチアンテナは、平面に対して鉛直方向の利得に優れており、天頂方向から送信されるGPS信号の受信に好適である。しかるに、平面パッチアンテナのダッシュボード上の配設は、車内のインテリアを損ない易いという不具合があった。そこで、フロントガラスに貼り付けて配設するフイルムタイプのアンテナが車載用のGPSアンテナとして使用されるようになってきた。特開2006−186488号公報(特許文献1)には、1枚のフイルム上に、第1の給電電極とグランド電極を有する第1のループ状のGPSアンテナと、これを外側で囲むように配設されていて第2の給電電極を有しグランド電極を共用してデジタルテレビ放送信号を受信する第2のループ状のアンテナとを備えた統合アンテナが示されている。また、特開2009−118268号公報(特許文献2)には、1枚のフイルム上に、第1の給電電極とグランド電極を有するループ状のGPSアンテナと、これを外側で囲むように配設された無給電のループ素子を設けたアンテナが示されている。上記のフイルム状のアンテナは、いずれも車両の傾斜したフロントガラスに配設されて使用される。
【特許文献1】特開2006−186488号公報
【特許文献2】特開2009−118268号公報
【0003】
特許文献1に示された技術は、ループ状のGPSアンテナを外側で囲むように配設されたDTVアンテナのループを設けることで、GPS信号を受信するGPSアンテナの利得を改善している。そして、特許文献2に示された技術は、ループ状のGPSアンテナを外側で囲むように配設された無給電のループ素子を設けることで、GPS信号を受信するGPSアンテナの利得を改善している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1および特許文献2記載のいずれの技術にあっても、ダッシュボード上に配設された平面パッチアンテナに比べると利得が低い傾向にあるため、利得の更なる向上が望まれている。特に、GPS信号は天頂方向(垂直上方向)から送信されることから、天頂方向の利得に優れていることが望ましい。すなわち、フイルムタイプのGPSアンテナにあっては、傾斜したフロントガラスに配設されるため、天頂方向となる、フイルム面に対して鉛直方向から斜め上方において利得に優れていることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、車のフロントガラス等の傾斜した面に配設されて、天頂方向の利得が優れている車載用GPSアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の車載用GPSアンテナは、GPS右旋円偏波信号の1波長の実効長で前記GPS右旋円偏波信号を受信でき、第1の給電電極とグランド電極を有する第1のループアンテナエレメントと、前記第1のループアンテナエレメントの外側を囲んで、第2の給電電極を有するとともに前記グランド電極を共用する第2のループアンテナエレメントと、前記第2のループアンテナエレメント上の前記第2の給電電極と前記グランド電極から同じ実効長にある中間点または前記中間点から前記GPS右旋円偏波信号のn/2波長(nは整数)の実効長だけずれた位置に一端を接続した前記GPS右旋円偏波信号の1/4波長の実効長を有するポールアンテナエレメントとを、1つの平面上に配設してアンテナを形成し、このアンテナを前記第1のループアンテナエレメントの前記第1の給電電極と前記グランド電極が設けられた側を上側に位置させるように、車の傾斜した面に配設して構成されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の車載用GPSアンテナにあっては、第1のループアンテナエレメントを囲む第2のループアンテナエレメント上の第2の給電電極とグランド電極から同じ実効長にある中間点または中間点からGPS右旋円偏波信号のn/2波長(nは整数)の実効長だけずれた位置に、GPS右旋円偏波信号の1/4波長の実効長を有するポールアンテナエレメントの一端を接続することで、第2のループアンテナエレメント上の第2の給電電極とグランド電極から同じ実効長にある中間点が電流最大点となり、車の傾斜した面に配設することにより、天頂方向の利得が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の車載用GPSアンテナの第1実施例の構造を示す平面図である。図2は、本発明の車載用GPSアンテナの第1実施例を車のフロントガラスに配設した状態を示す図である。図3は、第2のループアンテナエレメントの電流分布を示し、(a)は本発明の第1実施例の状態であり、(b)はポールアンテナエレメントが設けられていない従来の状態である。図4は、本発明の車載用GPSアンテナの第1実施例の利得の測定状態を示す図である。図5は、図4の測定状態で測定された指向特性図である。
【0009】
図1および図2において、車載用GPSアンテナ10は、1枚の略矩形のフイルム12上に配設されている。GPS右旋円偏波信号(以下、GPS信号と称する。)の1波長の実効長の長さを有する略正方形の第1のループアンテナエレメント14が略正方形の1つの隅部をループの開口端部とし、この開口端部が透明なフイルム12の1長辺に向けて配設され、ループの開口端部に第1の給電電極16とグランド電極18が設けられる。この第1のループアンテナエレメント14内には、第1の給電電極16からGPS信号の5/8波長の距離の位置に略1/4波長の長さの摂動素子20が設けられて、GPS信号が受信できるように構成されている。かかるGPS信号受信用のループアンテナは公知の技術である。そして、この第1のループアンテナエレメント14の外側でこれを囲むようにGPS信号の略3波長の実効長の長さを有する矩形の第2のループアンテナエレメント22が、矩形の各辺が矩形のフイルム12の各辺と略平行となるように配設されている。そして、第1のループアンテナエレメント14の開口端部に臨む位置で第2のループアンテナエレメント22の開口端部が設けられ、第2のループアンテナエレメント22の開口端部の一方に第2の給電電極24が設けられ他方が第1のループアンテナエレメント14のグランド電極18に接続されて、グランド電極18が第1のループアンテナエレメント14と第2のループアンテナエレメント22で共用される。さらに、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置に、GPS信号の1/4波長の実効長の長さを有するポールアンテナエレメント26の一端が接続されている。このポールアンテナエレメント26は、第2のループアンテナエレメント22の外側で第1のループアンテナエレメント14の開口端部と反対側に向けて配設されている。第1のループアンテナエレメント14と第2のループアンテナエレメント22は、第1の給電電極16とグランド電極18が設けられた開口端部と、第2のループアンテナエレメント2の中間点pを通過する線で、略線対称である。第1のループアンテナエレメント14と第2のループアンテナエレメント22およびポールアンテナエレメント26は、透明なフイルム12上に導電箔等が適宜な方法で配設されて形成されれば良い。
【0010】
かかる構成の車載用GPSアンテナ10が、傾斜したフロントガラス28の上縁部に貼着されて配設される。略矩形のフイルム12上に前述のごとき位置関係で、第1のループアンテナエレメント14および第2のループアンテナエレメント22を配設するのは、フイルム12の長辺をフロントガラス28の上縁に沿って貼着することで、車載用GPSアンテナ10を第1のループアンテナエレメント14の第1の給電電極16とグランド電極18が設けられた側を上側に位置させて容易に配設できるようにするためである。第1のループアンテナエレメント14の第1の給電電極16とグランド電極18を上側に容易かつ確実に位置させ得るならば、フイルム12との相対的な位置関係は上記構造に何ら限られるものでない。
【0011】
本発明の車載用GPSアンテナ10にあっては、ポールアンテナエレメント26を設けることで、第2のループアンテナエレメント2の中間点pが、図3(a)に示すごとく、電流最大点となる。このポールアンテナエレメント26を設けられていな従来構造では、第2のループアンテナエレメント2の中間点pは、図3(b)に示すごとく、電圧最大点となる。そこで、第2のループアンテナエレメント22に重畳する電流分布が相違し、この電流分布の相違による影響から指向性が変化すると考えられる。本発明の車載用GPSアンテナ10を図4に示す測定状態で指向性を測定したところ、図5に示すごとき、指向特性が得られた。図5において、実線は本発明の特性を示し、破線はポールアンテナエレメント26を省いた従来構造の特性である。図5から明らかなように、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。したがって、図2に示すごとく、傾斜したフロントガラス28に配設することで天頂方向の利得が向上し、GPS信号の受信性能が向上し得る。なお、第1実施例は、0Deg側で特に利得が向上しているため、スポーツカーのようなフロントガラスの傾斜が小さい(水平側に大きく傾いている)タイプの車に最適である。
【0012】
次に、本発明の第2実施例を図6および図7を参照して説明する。図6は、本発明の車載用GPSアンテナの第2実施例の構造を示す平面図である。図7は、図6の第2実施例の測定された指向特性図である。図6において、図1および図2と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0013】
図6に示す第2実施例で、図1および図2に示す第1実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置からGPS信号の1/2波長だけ両側に離れた位置に、第2のループアンテナエレメント22の長辺と平行に内側に向けて、GPS信号の1/4波長の実効長を有する2本のポールアンテナエレメント32、32の一端がそれぞれ接続されたことにある。2本のポールアンテナエレメント32、32の一端がそれぞれ接続されることで、接続された位置はそれぞれ電流最大点となり、その点から1/2波長の位置にある中間点pの位置も電流最大点となる。そして、第1実施例と同様に、第2実施例の車載用GPSアンテナ30の指向性を測定したところ、図7に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第2実施例は、0Degから−90Degの中間付近で特に利得が向上しているため、セダンのような車に最適である。
【0014】
さらに、本発明の第3実施例を図8および図9を参照して説明する。図8は、本発明の車載用GPSアンテナの第3実施例の構造を示す平面図である。図9は、図8の第3実施例の測定された指向特性図である。図8において、図1と図2と図6と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0015】
図8に示す第3実施例で、図6に示す第2実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置からGPS信号の1/2波長だけ離れた片側の位置に、第2のループアンテナエレメント22の長辺と平行に内側に向けて、GPS信号の1/4波長の実効長を有する1本のポールアンテナエレメント42の一端が接続されたことにある。1本のポールアンテナエレメント42の一端が接続されることで、接続された位置は電流最大点となり、その点から1/2波長の位置にある中間点pの位置も電流最大点となる。そして、第1実施例と同様に、第3実施例の車載用GPSアンテナ40の指向性を測定したところ、図9に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第3実施例は、0Deg側および−90Deg側で特に利得が向上しているため、スポーツカーのようなフロントガラスの傾斜が小さい(水平側に大きく傾いている)タイプの車およびワンボックスカーのようなフロントガラスの傾斜が大きい(垂直側に近い傾きの)タイプの車のいずれにも最適である。
【0016】
また、本発明の第4実施例を図10および図11を参照して説明する。図10は、本発明の車載用GPSアンテナの第4実施例の構造を示す平面図である。図11は、図10の第4実施例の測定された指向特性図である。図10において、図1と図2と図6と図8と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0017】
図10に示す第4実施例で、図8に示す第3実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置からGPS信号の1/2波長だけ離れた他方の片側の位置に、第2のループアンテナエレメント22の長辺と平行に内側に向けて、GPS信号の1/4波長の実効長を有する1本のポールアンテナエレメント52の一端が接続されたことにある。1本のポールアンテナエレメント52の一端が接続されることで、接続された位置は電流最大点となり、その点から1/2波長の位置にある中間点pの位置も電流最大点となる。そして、第1実施例と同様に、第4実施例の車載用GPSアンテナ50の指向性を測定したところ、図11に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第4実施例は、0Deg側および−90Deg側で特に利得が向上しているため、第3実施例と同様に、スポーツカーのようなフロントガラスの傾斜が小さい車およびワンボックスカーのようなフロントガラスの傾斜が大きい車のいずれにも最適である。
【0018】
また、本発明の第5実施例を図12および図13を参照して説明する。図12は、本発明の車載用GPSアンテナの第5実施例の構造を示す平面図である。図13は、図12の第5実施例の測定された指向特性図である。図12において、図1と図2と図6と図8と図10と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0019】
図12に示す第5実施例で、図1および図2に示す第1実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置からGPS信号の1波長だけ両側に離れた位置に、第2のループアンテナエレメント22の長辺と平行に内側に向けて、GPS信号の1/4波長の実効長を有する2本のポールアンテナエレメント62、62の一端がそれぞれ接続されたことにある。2本のポールアンテナエレメント62、62の一端がそれぞれ接続されることで、接続された位置はそれぞれ電流最大点となり、それらの点から1波長の位置にある中間点pの位置も電流最大点となる。そして、第5実施例の車載用GPSアンテナ60の指向性を測定したところ、図13に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第5実施例は、0Deg側から−90Deg側の全体に渡って大きく利得が向上しているため、配設されるフロントガラスの傾斜角度に関わらずに受信性能を大きく向上させることができる。
【0020】
また、本発明の第6実施例を図14および図15を参照して説明する。図14は、本発明の車載用GPSアンテナの第6実施例の構造を示す平面図である。図15は、図14の第6実施例の測定された指向特性図である。図14において、図1と図2と図6と図8と図10と図12と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0021】
図14に示す第6実施例で、図1および図2に示す第1実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置に、GPS信号の1/4波長の実効長を有する1本のポールアンテナエレメント72の一端が、第2のループアンテナエレメント22の短辺と平行に内側に向けて接続され、さらにその途中で90度折り曲げられたことにある。1本のポールアンテナエレメント72の一端が接続されることで、接続された位置は電流最大点となる。そして、第1実施例と同様に、第2実施例の車載用GPSアンテナ70の指向性を測定したところ、図15に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第6実施例は、−90Deg側で特に利得が向上しているため、ワンボックスカーのようなフロントガラスの傾斜が大きい車に最適である。
【0022】
また、本発明の第7実施例を図16および図17を参照して説明する。図16は、本発明の車載用GPSアンテナの第7実施例の構造を示す平面図である。図17は、図16の第7実施例の測定された指向特性図である。図16において、図1と図2と図6と図8と図10と図12と図14と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0023】
図16に示す第7実施例で、図12に示す第5実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置からGPS信号の1波長だけ離れた片側の位置に、第2のループアンテナエレメント22の長辺と平行に内側に向けて、GPS信号の1/4波長の実効長を有する1本のポールアンテナエレメント82の一端が接続されたことにある。1本のポールアンテナエレメント82の一端が接続されることで、接続された位置は電流最大点となり、その点から1波長の位置にある中間点pの位置も電流最大点となる。そして、第5実施例と同様に、第7実施例の車載用GPSアンテナ80の指向性を測定したところ、図17に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第7実施例は、0Deg側から−90Deg側までの全体に渡って大きく利得が向上しているため、配設されるフロントガラスの傾斜角度に関わらずに受信性能を大きく向上させることができる。
【0024】
また、本発明の第8実施例を図18および図19を参照して説明する。図18は、本発明の車載用GPSアンテナの第8実施例の構造を示す平面図である。図19は、図18の第8実施例の測定された指向特性図である。図18において、図1と図2と図6と図8と図10と図12と図14と図16と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0025】
図18に示す第8実施例で、図16に示す第7実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント22上で、第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pの位置からGPS信号の1波長だけ離れた他方の片側の位置に、第2のループアンテナエレメント22の長辺と平行に内側に向けて、GPS信号の1/4波長の実効長を有する1本のポールアンテナエレメント92の一端が接続されたことにある。1本のポールアンテナエレメント92の一端が接続されることで、接続された位置は電流最大点となり、その点から1波長の位置にある中間点pの位置も電流最大点となる。そして、第7実施例と同様に、第8実施例の車載用GPSアンテナ90の指向性を測定したところ、図19に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。なお、第8実施例は、0Deg側で特に利得が向上しているため、スポーツカーのようなフロントガラスの傾斜が小さい車に最適である。
【0026】
上述の第1実施例ないし第8実施例に示すごとく、第2のループアンテナエレメント22の実効長がGPS信号の略3波長の構造にあっては、GPS信号の1/4波長の実効長を有するポールアンテナエレメントの一端が、第2のループアンテナエレメント22上の第2の給電電極24とグランド電極18から同じ実効長にある中間点pまたはこの中間点pからGPS信号の1/2波長または1波長だけ離れた位置に接続されることで、中間点pの位置が電流最大点となり、いずれの構造にあっても0Degから−90Degに渡り利得が向上している。中間点pが電流最大点となれば良いことから、ポールアンテナエレメントの一端が中間点pまたは中間点pからn/2波長(nは整数、但し中間点pから第2のループアンテナエレメント22の実効長の1/2を超えない範囲でnは設定される。)だけ離れた位置に接続されれば良いことが容易に理解されるであろう。
【0027】
さらに、本発明の第9実施例を図20および図21を参照して説明する。図20は、本発明の車載用GPSアンテナの第9実施例の構造を示す平面図である。図21は、図20の第9実施例の測定された指向特性図である。図20において、図1と図2と図6と図8と図10と図12と図14と図16と図18と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0028】
図20に示す第9実施例で、図1および図2に示す第1実施例と相違するところは、第2のループアンテナエレメント122の実効長を、GPS信号の略2波長としたことにある。第9実施例の車載用GPSアンテナ100の指向性を測定したところ、図21に示すごとく、0Degから−90Degに渡り利得が向上している。特に0Deg側で利得が大きく向上しているため、スポーツカーのようなフロントガラスの傾斜が小さい車に最適である。発明者らは、さらに第2のループアンテナエレメントの実効長を、GPS信号の3.5波長として、その指向性を測定したところ、第1実施例と同様な利得の改善が見られた。
【0029】
なお、GPS信号を受信するための第1のループアンテナエレメント14は、摂動素子20を有するものに限られず、特許文献1に記載されるような第1のループアンテナエレメント14に近接させて無給電素子を設けた構造等であっても良い。また、第2のループアンテナエレメント22、122は、実施例のごとき矩形に限られず、円形や楕円形であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の車載用GPSアンテナの第1実施例の構造を示す平面図である。
【図2】本発明の車載用GPSアンテナの第1実施例を車のフロントガラスに配設した状態を示す図である。
【図3】第2のループアンテナエレメントの電流分布を示し、(a)は本発明の第1実施例の状態であり、(b)はポールアンテナエレメントが設けられていない従来の状態である。
【図4】本発明の車載用GPSアンテナの第1実施例の利得の測定状態を示す図である。
【図5】図4の測定状態で測定された指向特性図である。
【図6】本発明の車載用GPSアンテナの第2実施例の構造を示す平面図である。
【図7】図6の第2実施例の測定された指向特性図である。
【図8】本発明の車載用GPSアンテナの第3実施例の構造を示す平面図である。
【図9】図8の第3実施例の測定された指向特性図である。
【図10】本発明の車載用GPSアンテナの第4実施例の構造を示す平面図である。
【図11】図10の第4実施例の測定された指向特性図である。
【図12】本発明の車載用GPSアンテナの第5実施例の構造を示す平面図である。
【図13】図12の第5実施例の測定された指向特性図である。
【図14】本発明の車載用GPSアンテナの第6実施例の構造を示す平面図である。
【図15】図14の第6実施例の測定された指向特性図である。
【図16】本発明の車載用GPSアンテナの第7実施例の構造を示す平面図である。
【図17】図16の第7実施例の測定された指向特性図である。
【図18】本発明の車載用GPSアンテナの第8実施例の構造を示す平面図である。
【図19】図18の第8実施例の測定された指向特性図である。
【図20】本発明の車載用GPSアンテナの第9実施例の構造を示す平面図である。
【図21】図20の第9実施例の測定された指向特性図である。
【符号の説明】
【0031】
10、30、40、50、60、70、80、90、100 車載用GPSアンテナ
12 フイルム
14 第1のループアンテナエレメント
16 第1の給電電極
18 グランド電極
20 摂動素子
22、122 第2のループアンテナエレメント
24 第2の給電電極
26、32、42、52、62、72、82、92 ポールアンテナエレメント
28 フロントガラス
p 中間点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS右旋円偏波信号の1波長の実効長で前記GPS右旋円偏波信号を受信でき、第1の給電電極とグランド電極を有する第1のループアンテナエレメントと、前記第1のループアンテナエレメントの外側を囲んで、第2の給電電極を有するとともに前記グランド電極を共用する第2のループアンテナエレメントと、前記第2のループアンテナエレメント上の前記第2の給電電極と前記グランド電極から同じ実効長にある中間点または前記中間点から前記GPS右旋円偏波信号のn/2波長(nは整数)の実効長だけずれた位置に一端を接続した前記GPS右旋円偏波信号の1/4波長の実効長を有するポールアンテナエレメントとを、1つの平面上に配設してアンテナを形成し、このアンテナを前記第1のループアンテナエレメントの前記第1の給電電極と前記グランド電極が設けられた側を上側に位置させるように、車の傾斜した面に配設して構成したことを特徴とする車載用GPSアンテナ。
【請求項2】
請求項1記載の車載用GPSアンテナにおいて、前記アンテナを車のフロントガラスに配設して構成したことを特徴とする車載用GPSアンテナ。
【請求項3】
請求項1記載の車載用GPSアンテナにおいて、前記アンテナを1枚のフイルムの平面上に配設して構成したことを特徴とする車載用GPSアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−109295(P2011−109295A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260663(P2009−260663)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】