説明

車載緊急通報装置及び緊急通報システム

【課題】センター装置から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりした場合であっても、車載緊急通報装置からセンター装置への緊急通報を完了するまでの時間が遅延してしまうことを未然に回避する。
【解決手段】車載緊急通報装置2は、緊急通報データをセンター装置3に送信した後にセンター装置3から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での緊急通報データをセンター装置3に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上であれば、その音声着信に対して着信応答する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急通報トリガを検出したときに緊急通報データをセンター装置に送信してセンター装置から応答データを受信する車載緊急通報装置及び前記車載緊急通報装置と前記センター装置とを備えてなる緊急通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載緊急通報装置が車両に搭載されると共にセンター装置がサービスセンターに設置され、例えば車両事故が発生したときなどの緊急時に車載緊急通報装置が緊急通報データをセンター装置に送信するように構成されてなる緊急通報システムが供されている(例えば特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第3015337号公報
【特許文献2】特開2001−43469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の緊急通報システムでは、車載緊急通報装置は、緊急通報トリガを検出すると、車両位置情報やユーザ情報を含む緊急通報データをセンター装置に送信し、センター装置は、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信すると、緊急通報データを受信した旨をユーザに通知すべく応答データを車載緊急通報装置に送信し、応答データを車載緊急通報装置に送信してから一定時間が経過した後に、オペレータとユーザとの間で音声通信回線を接続すべく音声着信信号を車載緊急通報装置に送信するように構成されている。
【0004】
ところで、上記した車載緊急通報装置では、緊急通報データをセンター装置に送信した直後からセンター装置から応答データを受信するまでの間は、センター装置との間でのデータ通信を優先すべく音声着信に対して着信拒否するように構成されている。一方、ネットワーク構成の自由度を高めることなどを目的としてデータ通信経路にプロキシサーバが介在されている場合がある。したがって、上記した緊急通報システムのデータ通信経路にプロキシサーバが介在されていると、センター装置では、応答データのプロキシサーバへの送信完了を確認することができるものの、応答データの車載緊急通報装置への送信完了を確認することができない。
【0005】
この場合、センター装置から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりしなければ、図6(a)に示すように、車載緊急通報装置がデータ通信を完了した後にセンター装置から送信された音声着信信号を受信することになるので、その音声着信に対して着信応答することができるものの、一方、センター装置から送信された応答データが例えば電波環境が劣悪であることが原因でデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりすれば、図6(b)に示すように、車載緊急通報装置が音声着信に対して着信拒否している時間帯に(データ通信を完了する前に)センター装置から送信された音声着信信号を受信してしまうことになるので、その音声着信に対して着信応答することができないという問題がある。
【0006】
そして、車載緊急通報装置が音声着信に対して着信応答することができなくなると、センター装置が音声着信信号の送信をリトライしたりデータ通信を完了するまでの時間が遅延したりすることになり、車載緊急通報装置からセンター装置への緊急通報を完了するまでの時間が遅延し、その結果、ユーザがセンター装置からの支援(例えば救急車の出動要請など)を受けるまでの時間が遅延するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センター装置から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりした場合であっても、車載緊急通報装置からセンター装置への緊急通報を完了するまでの時間が遅延してしまうことを未然に回避することができ、ユーザがセンター装置からの支援を適切に受けることができる車載緊急通報装置及び緊急通報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した車載緊急通報装置によれば、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での緊急通報データをセンター装置に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上であれば、その音声着信に対して着信応答する。これにより、緊急通報データをセンター装置に送信してからの経過時間が第1の規定時間(電波環境が良好で遅延が発生しない状況における緊急通報データをセンター装置に送信してからセンター装置から音声着信信号を受信するまでの時間)以上であれば、センター装置から応答データを受信していなくとも、センター装置からの音声着信に対して着信応答することにより、センター装置から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりした場合であっても、車載緊急通報装置からセンター装置への緊急通報を完了するまでの時間が遅延してしまうことを未然に回避することができ、ユーザがセンター装置からの支援を適切に受けることができる。
【0009】
請求項2に記載した車載緊急通報装置によれば、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データ受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での緊急通報データをセンター装置に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上でなければ、その音声着信に対して着信拒否する。これにより、緊急通報データをセンター装置に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上でない間は音声着信に対して着信拒否することにより、緊急通報とは何ら関係ない第三者からの音声着信に対して着信応答してしまってセンター装置からの音声着信に対して着信応答することできなくなくなる状況を未然に回避することができ、センター装置からの音声着信を待機することができる。
【0010】
請求項3に記載した車載緊急通報装置によれば、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での受信電界強度が規定レベル以下であれば、その音声着信に対して着信応答する。これにより、受信電界強度が規定レベル(センター装置から送信された応答データが車載緊急通報装置に遅延することなく到達するレベル)以下の条件では応答データが遅延したり消失したりする可能性が高いことから、受信電界強度が規定レベル以下であれば、センター装置から応答データを受信していなくとも、センター装置からの音声着信に対して着信応答することにより、上記した請求項1に記載したものと同様にして、センター装置から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりした場合であっても、車載緊急通報装置からセンター装置への緊急通報を完了するまでの時間が遅延してしまうことを未然に回避することができ、ユーザがセンター装置からの支援を適切に受けることができる。
【0011】
請求項4に記載した車載緊急通報装置によれば、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データ受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での受信電界強度が規定レベル以下でなければ、その音声着信に対して着信拒否する。これにより、受信電界強度が規定レベル以下でない間は音声着信に対して着信拒否することにより、上記した請求項2に記載したものと同様にして、緊急通報とは何ら関係ない第三者からの音声着信に対して着信応答してしまってセンター装置からの音声着信に対して着信応答することできなくなくなる状況を未然に回避することができ、センター装置からの音声着信を待機することができる。
【0012】
請求項5に記載した車載緊急通報装置によれば、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に当該緊急通報に対して通話済みでない旨を示す未通話応答データを受信すると、その時点から第2の規定時間が経過するまで音声着信信号を受信する旨を待機する。これにより、第2の規定時間(電波環境が良好で遅延が発生しない状況におけるセンター装置から応答データを受信してから音声着信信号を受信するまでの時間)が経過するまで音声着信信号を受信する旨を待機することにより、緊急通報を完了することができる可能性を高めることができる。
【0013】
請求項6に記載した車載緊急通報装置によれば、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に当該緊急通報に対して通話済みである旨を示す通話済み応答データを受信すると、音声着信信号を受信する旨を待機することなく緊急通報トリガを検出する旨を待機する。これにより、音声着信信号を受信する旨を待機することなく緊急通報トリガを検出する旨を待機することにより、次の緊急通報を速やかに検出することができる。
【0014】
請求項7に記載した緊急通報システムによれば、センター装置は、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信し、その緊急通報に対して通話済みでないと、通話済みでない旨を示す未通話応答データを車載緊急通報装置に送信し、車載緊急通報装置は、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に未通話応答データを受信すると、その時点から第2の規定時間が経過するまで音声着信信号を受信する旨を待機する。これにより、上記した請求項5に記載したものと同様にして、第2の規定時間(電波環境が良好で遅延が発生しない状況におけるセンター装置から応答データを受信してから音声着信信号を受信するまでの時間)が経過するまで音声着信信号を受信する旨を待機することにより、緊急通報を完了することができる可能性を高めることができる。
【0015】
請求項8に記載した緊急通報システムによれば、センター装置は、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信し、その緊急通報に対して通話済みであると、通話済みである旨を示す通話済み応答データを車載緊急通報装置に送信し、車載緊急通報装置は、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に通話済み応答データを受信すると、音声着信信号を受信する旨を待機することなく緊急通報トリガを検出する旨を待機する。これにより、上記した請求項6に記載したものと同様にして、音声着信信号を受信する旨を待機することなく緊急通報トリガを検出する旨を待機することにより、次の緊急通報を速やかに検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。図1は、緊急通報システムの全体構成を機能ブロック図として示している。緊急通報システム1は、車両に搭載されている車載緊急通報装置2と、サービスセンターに設置されているセンター装置3とを備え、それら車載緊急通報装置2とセンター装置3とが携帯電話網4を介して音声通信すると共にプロキシサーバ5を介してデータ通信するように構成されている。
【0017】
車載緊急通報装置2は、制御部6、無線通信部7、計時部8、メモリ部9、操作検出部10、表示部11、音声処理部12及びLAN送受信部13を備えて構成されている。制御部6は、CPUを主体として構成され、車載緊急通報装置2の動作全般を制御する。無線通信部7は、制御部6から接続指令・切断指令を入力すると、携帯電話網4との間で通信回線(音声通信回線及びデータ通信回線)を接続・切断する。計時部8は、制御部6から計時指令を入力すると、計時する。メモリ部9は、ユーザ情報などの各種のメモリ情報を記憶する。操作検出部10は、ユーザが緊急通報ボタンを操作した旨を検出すると、操作検出信号を制御部6に出力する。
【0018】
表示部11は、制御部6から表示指令を入力すると、その表示指令に応じた表示情報を表示する。音声処理部12は、マイクロホン14が入力した送話音声やスピーカ15が出力する受話音声を音声処理する。LAN送受信部13は、車載LANとのインタフェース機能を有し、本実施形態ではナビゲーションシステム16との間で各種の情報を送受信する。この場合、ナビゲーションシステム16は、車両位置情報、車速情報及び距離情報などを車載LANを介して車載緊急通報装置2に送信し、制御部6は、例えばLAN送受信部13がナビゲーションシステム16から受信した車両位置情報やメモリ部9に記憶されているユーザ情報などを含む緊急通報データを無線通信部7からセンター装置3に送信させる。
【0019】
エアバッグシステム17は、エアバッグが展開されると、エアバッグ展開信号を制御部6に出力する。尚、上記した構成において、車載緊急通報装置2は、モジュールの形態で構成されていても良い。また、本実施形態では、エアバッグシステム15がエアバッグ展開信号を出力した旨やユーザが緊急通報ボタンを操作したことにより操作検出部8が操作検出信号を出力した旨を緊急通報トリガとして緊急通報動作を行う。
【0020】
センター装置3は、制御部18、電話通信部19、データ通信部20、操作検出部21、表示部22及び音声処理部23を備えて構成されている。制御部18は、CPUを主体として構成され、センター装置3の動作全般を制御する。電話通信部19は、制御部18から接続指令・切断指令を入力すると、携帯電話網4との間で通信回線(音声通信回線)を接続・切断する。データ通信部20は、制御部18から接続指令・切断指令を入力すると、プロキシサーバ5との間で通信回線(データ通信回線)を接続・切断する。
【0021】
操作検出部21は、サービスセンターに配置されているオペレータが操作した旨を検出すると、操作検出信号を制御部18に出力する。表示部22は、制御部18から表示指令を入力すると、その表示指令に応じた表示情報を表示する。音声処理部23は、マイクロホン24が入力した送話音声やスピーカ25が出力する受話音声を音声処理する。この場合、車載緊急通報装置2とセンター装置3とが両者の間で音声通信回線を接続している状態では、ユーザがマイクロホン14及びスピーカ15を使用すると共にオペレータがマイクロホン24及びスピーカ25を使用することにより、ユーザとオペレータとが通話(会話)することができ、ユーザがオペレータからの支援を受けることができるようになっている。
【0022】
次に、上記した構成の作用について、図2ないし図4を参照して説明する。ここで、図2は、車載緊急通報装置2の制御部6が行う処理をフローチャートとして示しており、図3は、センター装置3の制御部18が行う処理をフローチャートとして示している。
【0023】
車載緊急通報装置2において、制御部6は、緊急通報トリガを検出したか否かを判定しており(ステップS1)、例えばエアバッグシステム15がエアバッグ展開信号を出力したことにより緊急通報トリガを検出した旨を判定すると(ステップS1にて「YES」)、第1のタイマによる計時及び第3のタイマによる計時を開始すると共に、無線通信部7とセンター装置3のデータ通信部20との間でデータ通信回線を接続させ、緊急通報データを無線通信部7からセンター装置3に送信させる(ステップS2)。
【0024】
そして、制御部6は、センター装置3から応答データを無線通信部7が受信したか否かを判定し(ステップS3)、音声着信信号を無線通信部7が受信したか否かを判定すると共に(ステップS4)、第3のタイマにて第3の規定時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。ここでいう第3の規定時間とは、緊急通報データをセンター装置3に送信させてからセンター装置3から応答データ及び音声着信信号を受信する旨を待機する時間(いわゆる通信タイムアウト時間)であり、後述する第1の規定時間よりも長い時間である。
【0025】
センター装置3において、制御部18は、車載緊急通報装置2から緊急通報データをデータ通信部20が受信したか否かを判定しており(ステップS21)、車載緊急通報装置2から緊急通報データをデータ通信部20が受信した旨を判定すると(ステップS21にて「YES」)、その緊急通報に対して通話済みであるか否かを判定する(ステップS22)。
【0026】
ここで、制御部18は、図4にも示すように、その緊急通報に対して通話済みでない旨を判定すると(ステップS22にて「NO」)、その緊急通報に対して通話済みでない旨を示す未通話応答データをデータ通信部20から車載緊急通報装置2に送信させ(ステップS23)、一方、その緊急通報に対して通話済みである旨を判定すると(ステップS22にて「YES」)、その緊急通報に対して通話済みである旨を示す通話済み応答データをデータ通信部20から車載緊急通報装置2に送信させる(ステップS24)。
【0027】
次いで、制御部18は、未通話応答データの車載緊急通報装置2への送信を完了した旨を判定すると(ステップS25にて「YES」)、データ通信部20と車載緊急通報装置2との間で接続させていたデータ通信回線を切断させ、音声着信信号を音声通信部19から車載緊急通報装置2に送信させ(ステップS26)、車載緊急通報装置2から応答信号を受信した(車載緊急通報装置2が着信応答した旨)を条件として、音声通信部19と車載緊急通報装置2との間で音声通信回線を接続させることにより、ユーザとオペレータとを通話可能な状態にさせる(ステップS27)。
【0028】
そして、制御部18は、オペレータとユーザとの通話が終了してオペレータが終話操作した旨を判定すると(ステップS28にて「YES」)、音声通信部19と車載緊急通報装置2との間で接続させていた音声通信回線を切断させ(ステップS29)、上記したステップS21に戻る。尚、通話済み応答データをデータ通信部20から車載緊急通報装置2に送信させた場合には、通話済み応答データの車載緊急通報装置2への送信を完了した旨を判定すると(ステップS30にて「YES」)、上記したステップS26〜S29の処理を行うことなく、上記したステップS21に戻る。
【0029】
さて、これ以降、車載緊急通報装置2が緊急通報データを送信した後に行う処理を説明する。まず、データ通信経路の電波環境が良好である場合を説明する。データ通信経路の電波環境が良好であれば、センター装置3が送信した応答データはプロキシサーバ5を経由するデータ通信経路の途中で何ら遅延したり消失したりすることなく車載緊急通報装置2に到達することになる。
【0030】
したがって、車載緊急通報装置2において、制御部6は、音声着信信号を無線通信部7が受信するよりも先に且つ第3の規定時間が経過するよりも先にセンター装置3から応答データを無線通信部7が受信した旨を判定することになり、応答データを無線通信部7が受信した旨を判定すると(ステップS3にて「YES」)、その受信した応答データが通話済み応答データ及び未通話応答データのうちいずれであるかを判定する(ステップS6)。
【0031】
次いで、制御部6は、その受信した応答データが未通話応答データである旨を判定すると、第2のタイマによる計時を開始し(ステップS7)、音声着信信号を無線通信部7が受信したか否かを判定すると共に(ステップS8)、第2のタイマにて第2の規定時間が経過したか否かを判定する(ステップS9)。ここでいう第2の規定時間とは、電波環境が良好で遅延が発生しない状況におけるセンター装置3から応答データを受信してから音声着信信号を受信するまでの時間である。
【0032】
制御部6は、第2の規定時間が経過するよりも先に音声着信信号を無線通信部7が受信した旨を判定すると(ステップS8にて「YES」)、その音声着信に対して着信応答し(ステップS10)、ユーザとオペレータとを通話可能な状態にさせる。そして、制御部6は、オペレータとユーザとの通話が終了してオペレータが終話操作したことにより、無線通信部7と電話通信部19との間で音声通信回線が切断された旨を判定すると(ステップS11にて「YES」)、上記したステップS1に戻り、次の緊急通報トリガの検出を待機する。
【0033】
尚、制御部6は、その受信した応答データが通話済み応答データである旨を判定すると、上記したステップS7〜S11の処理を行うことなく、上記したステップS1に戻る。また、制御部6は、音声着信信号を無線通信部7が受信するよりも先に第2の規定時間が経過した旨を判定すると(ステップS9にて「YES」)、上記したステップS10,S11の処理を行うことなく、上記したステップS1に戻る。
【0034】
上記した一連の処理により、車載緊急通報装置2は、データ通信経路の電波環境が良好であれば、緊急通報データをセンター装置3に送信した後に、音声着信信号を受信するよりも先にセンター装置3から未通話応答データを受信すると、これ以降、音声着信信号を受信したか否かを判定し、音声着信信号を受信した旨を判定すると、その音声着信に対して着信応答することになる。
【0035】
次に、データ通信経路の電波環境が劣悪である場合を説明する。データ通信経路の電波環境が劣悪であれば、センター装置3が送信した応答データはプロキシサーバ5を経由するデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりする可能性がある。
【0036】
ここで、応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりすると、車載緊急通報装置2において、制御部6は、センター装置3から応答データを無線通信部7が受信するよりも先に且つ第3の規定時間が経過するよりも先に音声着信信号を無線通信部7が受信した旨を判定することになり、音声着信信号を無線通信部7が受信した旨を判定すると(ステップS4にて「YES」)、第1のタイマにて第1の規定時間が経過しているか否かを判定する(ステップS12)。ここでいう第1の規定時間とは、電波環境が良好で遅延が発生しない状況における緊急通報データをセンター装置3に送信させてからセンター装置3から音声着信信号を受信するまでの時間である。
【0037】
次いで、制御部6は、第1の規定時間が経過している旨を判定すると(ステップS12にて「YES」)、その音声着信に対して着信応答し(ステップS13)、ユーザとオペレータとを通話可能な状態にさせる。そして、制御部6は、オペレータとユーザとの通話が終了してオペレータが終話操作したことにより、無線通信部7とセンター装置3の電話通信部19との間で音声通信回線が切断された旨を判定すると(ステップS14にて「YES」)、上記したステップS2に戻る。これに対して、制御部6は、第1の規定時間が経過していない旨を判定すると(ステップS12にて「NO」)、その音声着信に対して着信拒否し(ステップS15)、上記したステップS3に戻る。
【0038】
上記した一連の処理により、車載緊急通報装置2は、データ通信経路の電波環境が劣悪であれば、緊急通報データをセンター装置3に送信した後に、応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、これ以降、第1の規定時間が経過していれば、その音声着信に対して着信応答することになり、一方、第1の規定時間が経過していなければ、その音声着信に対して着信拒否することになる。
【0039】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、車載緊急通報装置2において、緊急通報データをセンター装置3に送信した後にセンター装置3から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での緊急通報データをセンター装置3に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上であれば、その音声着信に対して着信応答するように構成したので、センター装置3から応答データを受信していなくとも、センター装置3からの音声着信に対して着信応答することにより、センター装置3から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりした場合であっても、車載緊急通報装置2からセンター装置3への緊急通報を完了するまでの時間が遅延してしまうことを未然に回避することができ、ユーザがセンター装置3からの支援を適切に受けることができる。
【0040】
また、車載緊急通報装置2において、緊急通報データをセンター装置3に送信した後にセンター装置3から応答データ受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での緊急通報データをセンター装置3に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上でなければ、その音声着信に対して着信拒否するように構成したので、緊急通報データをセンター装置3に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上でない間は音声着信に対して着信拒否することにより、緊急通報とは何ら関係ない第三者からの音声着信に対して着信応答してしまってセンター装置3からの音声着信に対して着信応答することできなくなくなる状況を回避することができ、センター装置3からの音声着信を待機することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図5を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。上記した第1の実施形態は、緊急通報データをセンター装置3に送信してからの経過時間を判定基準として音声着信に対して着信応答するか着信拒否するかを決定する構成であるが、これに対して、第2の実施形態は、受信電界強度を判定基準として音声着信に対して着信応答するか着信拒否するかを決定する構成である。
【0042】
すなわち、車載緊急通報装置2において、制御部6は、緊急通報トリガを検出した旨を判定すると(ステップS1にて「YES」)、上記した第1の実施形態で説明した第1のタイマによる計時を開始することなく、第3のタイマによる計時を開始すると共に、無線通信部7とセンター装置3のデータ通信部20との間でデータ通信回線を接続させ、緊急通報データを無線通信部7からセンター装置3に送信させる(ステップS31)。
【0043】
次いで、制御部6は、センター装置3から応答データを無線通信部7が受信するよりも先に且つ第3の規定時間が経過するよりも先に音声着信信号を無線通信部7が受信した旨を判定すると(ステップS4にて「YES」)、受信電界強度が規定レベル以下であるか否かを判定する(ステップS32)。ここでいう規定レベルとは、センター装置3から送信された応答データが車載緊急通報装置2に遅延することなく到達するレベルである。
【0044】
そして、制御部6は、受信電界強度が規定レベル以下である旨を判定すると(ステップS32にて「YES」)、その音声着信に対して着信応答し(ステップS13)、これに対して、受信電界強度が規定レベル以下でない旨を判定すると(ステップS32にて「NO」)、その音声着信に対して着信拒否する(ステップS15)。
【0045】
以上に説明した処理により、車載緊急通報装置2は、データ通信経路の電波環境が劣悪であれば、緊急通報データをセンター装置3に送信した後に、応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、これ以降、受信電界強度が規定レベル以下であれば、その音声着信に対して着信応答することになり、一方、受信電界強度が規定レベル以下でなければ、その音声着信に対して着信拒否することになる。
【0046】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、車載緊急通報装置2において、緊急通報データをセンター装置3に送信した後にセンター装置3から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での受信電界強度が規定レベル以下であれば、その音声着信に対して着信応答するように構成したので、受信電界強度が規定レベル以下の条件下では応答データが遅延したり消失したりする可能性が高いことから、センター装置3から応答データを受信していなくとも、センター装置3からの音声着信に対して着信応答することにより、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、センター装置3から送信された応答データがデータ通信経路の途中で遅延したり消失したりした場合であっても、車載緊急通報装置2からセンター装置3への緊急通報を完了するまでの時間が遅延してしまうことを未然に回避することができ、ユーザがセンター装置3からの支援を適切に受けることができる。
【0047】
また、車載緊急通報装置2において、緊急通報データをセンター装置3に送信した後にセンター装置3から応答データ受信するよりも先に音声着信信号を受信すると、その時点での受信電界強度が規定レベル以下でなければ、その音声着信に対して着信拒否するように構成したので、受信電界強度が規定レベル以下でない間は音声着信に対して着信拒否することにより、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、緊急通報とは何ら関係ない第三者からの音声着信に対して着信応答してしまってセンター装置3からの音声着信に対して着信応答することできなくなくなる状況を回避することができ、センター装置3からの音声着信を待機することができる。
【0048】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
車載緊急通報装置は、その一部がナビゲーションシステムの構成要件から構成されていても良い。緊急通報トリガとして、エアバッグシステムからのエアバッグ展開信号やユーザが緊急通報ボタンを操作したことによる操作検出部8からの操作検出信号の他に、他の信号を適用する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す機能ブロック図
【図2】車載緊急通報装置が行う処理を示すフローチャート
【図3】センター装置が行う処理を示すフローチャート
【図4】全体の処理を示すシーケンス図
【図5】本発明の第2の実施形態を示すもので、車載緊急通報装置が行う処理を示すフローチャート
【図6】従来を示すもので、全体の処理を示すシーケンス図
【符号の説明】
【0050】
図面中、1は緊急通報システム、2は車載緊急通報装置、3はセンター装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急通報トリガを検出したときに緊急通報データをセンター装置に送信し、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信したときに応答データを車載緊急通報装置に送信するセンター装置と共に緊急通報システム内で用いられる車載緊急通報装置であって、
緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信したときに、その時点での緊急通報データをセンター装置に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上である場合には、その音声着信に対して着信応答することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車載緊急通報装置において、
緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データ受信するよりも先に音声着信信号を受信したときに、その時点での緊急通報データをセンター装置に送信してからの経過時間が第1の規定時間以上でない場合には、その音声着信に対して着信拒否することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項3】
緊急通報トリガを検出したときに緊急通報データをセンター装置に送信し、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信したときに応答データを車載緊急通報装置に送信するセンター装置と共に緊急通報システム内で用いられる車載緊急通報装置であって、
緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データを受信するよりも先に音声着信信号を受信したときに、その時点での受信電界強度が規定レベル以下である場合には、その音声着信に対して着信応答することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項4】
請求項3に記載した車載緊急通報装置において、
緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から応答データ受信するよりも先に音声着信信号を受信したときに、その時点での受信電界強度が規定レベル以下でない場合には、その音声着信に対して着信拒否することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載した車載緊急通報装置において、
緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に当該緊急通報に対して通話済みでない旨を示す未通話応答データを受信した場合には、その時点から第2の規定時間が経過するまで音声着信信号を受信する旨を待機することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項6】
請求項5に記載した車載緊急通報装置において、
緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に当該緊急通報に対して通話済みである旨を示す通話済み応答データを受信した場合には、音声着信信号を受信する旨を待機することなく緊急通報トリガを検出する旨を待機することを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項7】
緊急通報トリガを検出したときに緊急通報データをセンター装置に送信する車載緊急通報装置と、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信したときに応答データを車載緊急通報装置に送信するセンター装置とを備えた緊急通報システムであって、
センター装置は、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信したときに、その緊急通報に対して通話済みでない場合には、通話済みでない旨を示す未通話応答データを車載緊急通報装置に送信し、
車載緊急通報装置は、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に未通話応答データを受信した場合には、その時点から第2の規定時間が経過するまで音声着信信号を受信する旨を待機することを特徴とする緊急通報システム。
【請求項8】
請求項7に記載した緊急通報システムにおいて、
センター装置は、車載緊急通報装置から緊急通報データを受信したときに、その緊急通報に対して通話済みである場合には、通話済みである旨を示す通話済み応答データを車載緊急通報装置に送信し、
車載緊急通報装置は、緊急通報データをセンター装置に送信した後にセンター装置から音声着信信号を受信するよりも先に通話済み応答データを受信した場合には、音声着信信号を受信する旨を待機することなく緊急通報トリガを検出する旨を待機することを特徴とする緊急通報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−15678(P2008−15678A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184470(P2006−184470)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】