車載電源装置、路側電源装置、路車間電力伝送システム
【課題】車載バッテリの充電や放電を行うための路車間における非接触の電力伝送の効率を向上するための技術を提供する。
【解決手段】車側電源装置3は、車両が路側アンテナ10に接近すると、車側アンテナ30の指向面を路側アンテナ10の指向面に向ける。その後車両の進行に合わせて車側アンテナ30の指向面を徐々に後方に向けることで、指向面を路側アンテナ10の指向面へ向けた状態を維持して電力伝送を行う。路側電源装置1は、路側アンテナ10に車両が接近すると、路側アンテナ10の指向面を車側アンテナ30へ向けて正対させる。その後路側アンテナ10の指向面を徐々に前方に向けて車両を追尾し、路側アンテナ10の指向面と車側アンテナ30の指向面とが正対する状態を維持して電力伝送を行う。車両が隣接する次の路側アンテナ10の位置に到達すると、車側電源装置3及び路側電源装置1は互いに対向させるアンテナを切替えて電力伝送を行う。
【解決手段】車側電源装置3は、車両が路側アンテナ10に接近すると、車側アンテナ30の指向面を路側アンテナ10の指向面に向ける。その後車両の進行に合わせて車側アンテナ30の指向面を徐々に後方に向けることで、指向面を路側アンテナ10の指向面へ向けた状態を維持して電力伝送を行う。路側電源装置1は、路側アンテナ10に車両が接近すると、路側アンテナ10の指向面を車側アンテナ30へ向けて正対させる。その後路側アンテナ10の指向面を徐々に前方に向けて車両を追尾し、路側アンテナ10の指向面と車側アンテナ30の指向面とが正対する状態を維持して電力伝送を行う。車両が隣接する次の路側アンテナ10の位置に到達すると、車側電源装置3及び路側電源装置1は互いに対向させるアンテナを切替えて電力伝送を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴現象を利用した非接触の電力伝送により電気自動車と路側電源装置との間で送受電を行う路車間電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及が進むにつれ、従来の内燃エンジン式の自動車とは異なる電気自動車特有の性質に対して不安を覚えるユーザが増えるおそれがある。特に、走行中にバッテリ残量がなくなってしまったり、過充電により電池が破損したりしないかといった、バッテリの充放電に関する不安を持つことが考えられる。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1に記載のような技術が提案されている。特許文献1には、自車両の電力が不足している場合には車両外部から電力の供給を受け、自車両の電力に余裕がある場合には電力を車両外部に供給する技術が開示されている。
【0004】
また、電気自動車の充電に非接触での電力伝送を利用することが盛んに研究されており、とりわけ、磁気共鳴と呼ばれる現象を用いた電力伝送方式が近年注目されている。特許文献2,3には、磁気共鳴を利用した車両用ワイヤレス充電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210843号公報
【特許文献2】特開2010−68632号公報
【特許文献3】特開2005−68657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非接触による電力伝送を行う場合、電力の伝送効率を向上させるためには送受電側双方のアンテナをなるべく近距離で対向させることが肝要である。特に、車両が走行しながら電力を伝送することを想定する場合、車両の移動に合わせてアンテナの向きや位置を高精度に調整する技術が不可欠である。そのような観点において、特許文献1では、電力の伝送効率を向上させるためにアンテナの方向や位置を調整することについて言及されていない。
【0007】
また、特許文献2,3においては、路面に送電用のアンテナを設置し、車体の下部に受電用のアンテナを設置する手法が開示されている。しかしながら、車両が走行しながら電力を伝送することを実現しようとする場合、路面に電力伝送用のアンテナを設置することに対しては以下のような問題がある。
【0008】
走行路面上に電力伝送用のアンテナを設置する場合、その上を走行する様々な車両の荷重に耐え得るようにアンテナを堅牢に作成する必要があり、設置には道路を封鎖しての工事が必要となり、コストや作業性の面で不利である。
【0009】
また、電力の伝送効率を向上するためには、車体下部のアンテナと路面上のアンテナとを高精度で位置合わせする必要があるが、位置合わせには特別な手段が必要である。その点において、特許文献2,3では、アンテナの位置や向きを調整することについて言及されていない。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、車載バッテリの充電や放電を行うための路車間における非接触の電力伝送の効率を向上するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた請求項1に係る発明は、車両に搭載されたバッテリ(二次電池)の充電や放電を行う車載電源装置に関するものである。本発明の車載電源装置は、車側コイルアンテナと、車側駆動手段と、車側通信手段と、車側周波数調整手段と、車側位置検出手段と、車側方向調節手段と、車側送受電制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
車側コイルアンテナは、車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するためのものである。車側駆動手段は、車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更するためのものである。車側通信手段は、車路側方に設置された路側電源装置との間で情報通信を行うためのものである。車側周波数調整手段は、車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する。車側位置検出手段は、路側コイルアンテナの位置を検出するためのものである。車側方向調節手段は、車側位置検出手段により検出した位置に基づき、車側駆動手段を制御して車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する。車側送受電制御手段は、車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている車側コイルアンテナを使って、路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送(送電又は受電)する。
【0013】
本発明の車載電源装置によれば、車路側方に設置された路側コイルアンテナの位置を検出し、自車両に搭載された車側コイルアンテナの送受電面を路側コイルアンテナの方向へ向けることで、磁気共鳴による電力伝送におけるエネルギー損失を低減し、電力の伝送効率を向上できる。特に、車両が走行しながら路側電源装置との間で電力を送受電する際、車両の移動に合わせて車側コイルアンテナの送受電面を路側コイルアンテナの方向へ追従させることができるため、走行しながらでも車載バッテリの充電や放電を効率よく行うことができる。また、車両が路側電源装置の設置された駐車スペースに停止しながら充電等を行う場合、車側コイルアンテナが充電に最適な位置に来るように運転者が車両を正確に停めなくてもよいし、車種による車側コイルアンテナの位置の違い等を考慮する必要もよいため、運転者の負担が軽減する。
【0014】
さらに、路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節することで、電力の伝送効率を向上できる。これにより、路側電源設備による電力伝送サービスを提供するインフラごとに送受電の条件(送受電周波数)が違っていても、それらの路側電源装置との間で磁気共鳴を成立させて電力伝送サービスを確実に利用できる。
【0015】
つぎに、請求項2に記載の車載電源装置は以下の特徴を有する。車側コイルアンテナには、送受電面の中心法線の方向に沿って照準光を照射する光源手段が設けられている。そして、車側方向調節手段は、光源手段からの照準光が当たっている位置と、路側コイルアンテナの送受電面の中心位置との位置関係に基づいて、車側コイルアンテナの送受電面の中心法線軸を路側コイルアンテナの送受電面の中心位置に合わせるように車側コイルアンテナの送受電面の向きを調節する。
【0016】
このように構成することで、車側コイルアンテナを単に路側コイルアンテナの方向に向けるだけでなく、路側コイルアンテナの中心方向に向けて確実に対向させることができ、電力の伝送効率を一層向上できる。
【0017】
つぎに、請求項3に記載の車載電源装置は以下の特徴を有する。自車両の走行計画に関する走行計画情報を取得する走行計画取得手段と、走行計画取得手段により取得した走行計画情報に基づいて自車両のバッテリの蓄電状況を予測し、その予測結果に応じた外部からの受電又は外部への送電の要否を判断する送受電要否判断手段とを更に備える。そして、車側送受電制御手段は、送受電要否判断手段による判断結果に従って、路側電源装置からの受電、又は路側電源装置に対する送電の何れかを選択して実行する。
【0018】
このように構成することで、事前の走行計画(例えば、目的地までの走行距離、走行時間、道路勾配、渋滞状況、積荷の重量変化等、走行時のエネルギー収支に関するもの)に基づくバッテリの蓄電状況の予測結果に応じて、路側電源装置の最適な利用方法を選択できる。例えば、事前の走行計画に基づき、先の経路においてバッテリの蓄電量が不足すると予測した場合には路側電源装置から受電してバッテリを充電し、バッテリの蓄電量に余裕がある又は過剰になると予測した場合には、余分な電力を路側電源装置に対して送電するといった運用が考えられる。
【0019】
ところで、車両が走行しながら路側電源装置との間で電力をやり取りする場合、路側コイルアンテナの設置されたエリアを走行する間、安全かつ効率的に電力伝送をするのに適した走行状態を維持することが肝要である。また、電力伝送に好適な走行状態を維持するにあたっては、なるべく運転者の操作負担を軽減できるようにするのが望ましい。
【0020】
そこで、請求項4に記載の車載電源装置のように、路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、所定の送受電時走行条件に沿うように自車両の状態を制御する車両制御手段を備えるとよい。このように構成することで、運転者の操作負担を低減しつつも路車間の電力伝送に好適な走行状態を維持することが可能になる。
【0021】
例えば、非接触による電力伝送ではコイルアンテナ同士の間隔が長くなる程、時間当たりに伝送される電力が減少する。そのため、電力伝送を効率よく行うという観点では、車側コイルアンテナと路側コイルアンテナとができるだけ接近するように走行するのが望ましい。その反面、車両と路側コイルアンテナとが接近しすぎると接触により車体やコイルアンテナを破損するおそれがある。
【0022】
そこで、請求項5に記載の車載電源装置のように、路側コイルアンテナの設置場所に沿って設けられている送受電時走行範囲上を自車両が走行するように操舵装置の操舵を調節することが考えられる。なお、ここで用いる送受電時走行範囲は、車側コイルアンテナと路側コイルアンテナとが適度に近接し、かつ、車両と路側コイルアンテナとが接触するおそれのない安全距離が維持される走行帯やラインとなっていることが前提となる。このような構成により、運転者の操作負担を低減しつつ、車両と路側コイルアンテナとの距離を路車間の電力伝送に好適な距離に維持することができる。
【0023】
また、請求項6に記載の車載電源装置のように、路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、自車両の前方を先行する他車両との車間距離を所定範囲に維持するように自車両の速度を調節することが考えられる。このようにすることで、路側電源装置との間で電力伝送をするために次々に走行してくる車両同士が安全な車間距離を保つことができる。
【0024】
さらに、請求項7に記載の車載電源装置のように、路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、特定の外装機器を収納状態にすることが考えられる。例えば、車両が路側コイルアンテナに接近して走行する際に、可倒式ドアミラーを収納状態にすることで、ドアミラーを路側設備に接触させるリスクを低減できる。また、車両が路側コイルアンテナに接近して走行する際に、パワーウィンドウを閉めることで乗員の安全を確保できる。
【0025】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項8に係る発明は、車両に搭載された車載電源装置との間で電力伝送を行う路側電源装置に関するものである。本発明の路側電源装置は、路側コイルアンテナと、路側駆動手段と、路側通信手段と、路側周波数調整手段と、路側位置検出手段と、路側方向調節手段と、路側送受電制御手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
路側コイルアンテナは、車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するためのものである。路側駆動手段は、路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更するためのものである。路側通信手段は、車両に搭載された車載電源装置との間で情報通信を行うためのものである。路側周波数調整手段は、路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する。路側位置検出手段は、車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出するためのものである。路側方向調節手段は、路側位置検出手段により検出した位置に基づき、路側駆動手段を制御して路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する。路側送受電制御手段は、路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている路側コイルアンテナを使って、車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送(送電又は受電)する。
【0027】
本発明の路側電源装置によれば、車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出し、路側コイルアンテナの送受電面を車側コイルアンテナの方向へ向けることで、磁気共鳴による電力伝送におけるエネルギー損失を低減し、電力の伝送効率を向上できる。特に、車両が走行しながら路側電源装置との間で電力を送受電する際、車両の移動に合わせて路側コイルアンテナの送受電面を車側コイルアンテナの方向へ追従させることができるため、車両が走行したままでも車載バッテリの充電や放電を効率よく行うことができる。また、車両が路側電源装置の設置された駐車スペースに停止しながら充電等を行う場合、路側コイルアンテナと車側コイルアンテナとの位置関係が充電に最適な状態になるように運転者が車両を正確に停めなくてもよいし、車種による車側コイルアンテナの位置の違い等を考慮する必要もない。
【0028】
さらに、車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節することで、電力の伝送効率を向上できる。これにより、車両ごとに送受電の条件(送受電周波数)が違っていても、それらの車載電源装置との間で磁気共鳴を成立させて電力伝送サービスを確実に提供できる。
【0029】
また、路側コイルアンテナを車路側方に設置することで、通過する車両の荷重に耐える構造を考慮しなくてもよいし、設置工事では車両を通行止めにする必要もなく、路面にコイルアンテナを埋設する構成に対してコストや作業性の面で有利である。
【0030】
つぎに、請求項9に記載の路側電源装置は以下の特徴を有する。すなわち、路側方向調節手段は、車側コイルアンテナの送受信面の方向角に関する情報を取得し、その取得した方向角の情報に基づいて路側コイルアンテナの送受電面を車側コイルアンテナの送受電面に向けて正対させる。
【0031】
このように構成することで、路側コイルアンテナを単に車側コイルアンテナの方向に向けるだけでなく、車側コイルアンテナの方向角に合わせて正対させることができ、電力の伝送効率を一層向上できる。特に、車載電源装置側で車側コイルアンテナの法線を路側コイルアンテナの中心方向に向けて軸合わせする機能を有している場合、車両が走行しながらでも双方のコイルアンテナの送受電面を平行に向けることができ、効率の高い電力伝送を行える。
【0032】
つぎに、請求項10に記載の路側電源装置は以下の特徴を有する。すなわち、車路に沿って配列する複数の路側コイルアンテナと、複数の路側コイルアンテナに対して各個に備えられた複数の路側駆動手段とを備える。また、各路側駆動手段には、路側コイルアンテナの送受電面の方向を車両の走行方向に沿って変えられる追従可動範囲が設定されている。
【0033】
路側方向調節手段は、追従可動範囲内に車側コイルアンテナが入っている路側コイルアンテナを対象に、当該車両の移動に合わせて当該路側コイルアンテナを車側コイルアンテナの方へ向ける追従制御をすると共に、当該車両の移動に伴い路側コイルアンテナの追従可動範囲から車側コイルアンテナの位置が逸脱すると、追従制御の対象を車両の移動方向に隣接する次の路側コイルアンテナに順次交代する。そして、路側送受電制御手段は、追従制御の対象となっている路側コイルアンテナを使って、車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する。
【0034】
このように構成することで、複数の路側コイルアンテナを使って走行する車両の位置に合わせて次々に電力伝送を行うことができる。また、複数の車両が連続して路側電源装置による電力伝送エリアへ進入してくる場合でも、複数の路側コイルアンテナを使って同時に電力伝送を行うことができる。
【0035】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項11に係る発明は、車両に搭載されたバッテリの充電や放電を行う車載電源装置と、車載電源装置との間で電力伝送を行う路側電源装置とからなる路車間電力伝送システムに関するものである。本発明の路車間電力伝送システムによれば、請求項1に記載の車載電源装置及び請求項8に記載の路側電源装置について上述した効果を両得できる。
【0036】
つぎに、請求項12に記載の路車間電力伝送システムによれば、請求項2に記載の車載電源装置及び請求項9に記載の路側電源装置について上述した効果を両得できる。また、請求項13に記載の路車間電力伝送システムによれば、請求項10に記載の路側電源装置について上述した効果と同様の効果を得られる。また、請求項14,15に記載の路車間電力伝送システムによれば、請求項3,4に記載の車載電源装置について上述した効果と同様の効果を得られる。
【0037】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項16,17に係る発明は、車両に搭載されたバッテリの充電や放電を行う車載電源装置と、車載電源装置との間で電力伝送を行う路側電源装置とからなる路車間電力伝送システムに関するものである。
【0038】
請求項16に係る路車間電力伝送システムを構成する車載電源装置は、車側コイルアンテナと、車側通信手段と、車側周波数調整手段と、車側送受電制御手段とを備える。また、路側電源装置は、路側コイルアンテナと、路側駆動手段と、路側通信手段と、路側周波数調整手段と、路側位置検出手段と、路側方向調節手段と、路側送受電制御手段とを備える。すなわち、この路車間電力伝送システムは、路側電源装置側のみ電力伝送用のコイルアンテナを相手側(車両)のコイルアンテナの方向へ向ける機能を有することを特徴とする。
【0039】
一方、請求項17に係る路車間電力伝送システムを構成する車載電源装置は、車側コイルアンテナと、車側駆動手段と、車側通信手段と、車側周波数調整手段と、車側位置検出手段と、車側方向調節手段と、車側送受電制御手段とを備える。また、路側電源装置は、路側コイルアンテナと、路側通信手段と、路側周波数調整手段と、路側送受電制御手段とを備える。すなわち、この路車間電力伝送システムは、車載電源装置側のみ電力伝送用のコイルアンテナを相手側(路側)のコイルアンテナの方向へ向ける機能を有することを特徴とする。
【0040】
この点について、路側及び車側の双方のコイルアンテナをより正確に正対させるという観点においては、路側及び車側双方でコイルアンテナの向きを調節できる構成の方が有利である。その反面、より簡易な構成で比較的高い伝送効率を実現するというコストパフォーマンスの面では、路側電源装置側又は路側電源装置のどちらか一方のみでコイルアンテナの向きを調節する構成の方が有利である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】路車間電力伝送システムの概要を示す説明図である。
【図2】路側電源装置の設置例を示す説明図である。
【図3】路側電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】路側アンテナユニットの駆動機構及び外観を示す説明図である。
【図5】光スポットセンサの具体例を示す説明図である。
【図6】路側アンテナユニットの設置例(2段)を示す説明図である。
【図7】車側電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】車両電源装置の駆動機構を示す説明図である。
【図9】路側・車側アンテナユニットの方向制御の手順を示す説明図である。
【図10】アンテナユニットの方向を調整する方法を示す説明図である。
【図11】アンテナユニットの方向を調整する方法を示す説明図である。
【図12】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図13】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図14】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図15】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図16】路側電源装置による電力伝送制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】車側電源装置による車両制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】車側電源装置による送受電選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】車側電源装置による対策要否確認処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】車両の走行計画の一例を示す説明図である。
【図21】路車間電力伝送システムの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[路車間電力伝送システムの概要]
実施形態の路車間電力伝送システムは、車両が通行できる車路等に沿って設置される路側電源装置1と、車両に搭載される車側電源装置3とからなり、路側電源装置1と車側電源装置3との間で磁気共鳴現象を利用した非接触による電力伝送を行う。
【0043】
図1(a)〜(c)の各図に示すように、車路における車両進行方向に沿って3基の路側アンテナユニット10a,10b,10c(車両進行方向の順にアンテナ1,アンテナ2,アンテナ3とも表記する)が順に配列している。なお、以下の説明においては、個々の路側アンテナユニット10a〜10cを特に区別しない場合、単に路側アンテナユニット10と表記する。また、本実施形態では、3基の路側アンテナユニット10が設置された事例を挙げているが、これより多い(又は少ない)数の路側アンテナユニット10が設置されていてもよい。
【0044】
各路側アンテナユニット10は、磁気共鳴による電力伝送(送電及び受電)用のコイルアンテナや、情報通信用アンテナ、車側アンテナ検知用のセンサ類が一体化されたものであり、電力を送受電するための送受電面と通信を送受信するための通信面とが一つの面に構成された指向面が車路側に向くように設置されている。さらに、各路側アンテナユニット10は、指向面の向きを上下左右方向に変更可能に構成されており、補足対象の車両のアンテナの位置に向けて指向面の方向を変更すると共に、この車両の移動に合わせてこれを追尾するように制御される。
【0045】
一方、車両に搭載される車側電源装置3は、車体外面に設置される車側アンテナユニット30を備える。車側アンテナユニット30は、車載バッテリを充電又は放電するための外部との電力伝送用のコイルアンテナや、情報通信用アンテナ、路側アンテナ検知用のセンサ類が一体化されたものであり、電力伝送及び通信を行う指向面が車体の周囲方向に向くように設置されている。さらに、車側アンテナユニット30は、指向面の向きを変更可能に構成されており、補足対象の路側アンテナユニット10の位置に向けて指向面の方向を変更すると共に、走行しながら路側アンテナユニット10を捕捉し続けるように制御される。
【0046】
路側電源装置1近傍の車路に設けられた電力伝送用走行エリアの路面には、路側電源装置1との電力伝送を行う車両が走行する位置を表示するガイドラインが引かれている。ここでは、車両が比較的早い速度で走行しながら短時間の電力伝送を行う際の走行位置を示すガイドライン(高速用)500aと、比較的遅い速度で走行しながら十分な電力伝送を行う際の走行位置を示すガイドライン(低速用)500bとが設けられた事例を想定している。これにより、路側電源装置1との間で電力伝送を行おうとする車両が、目的に応じたガイドラインに沿って走行することで、電力伝送に適した位置(アンテナ同士の距離)を維持できるようになっている。
【0047】
今、図1(a)に示すように、車側電源装置3を搭載した車両がガイドライン(高速用)500aに沿って路側電源装置1による電力伝送用走行エリアに進入し、最初の路側アンテナユニット10a(アンテナ1)の位置にまで到達した状況を想定する。このとき、車側電源装置3では、車側アンテナユニット30の捕捉範囲内に路側のアンテナ1が入ると、車側アンテナユニット30の指向面における中心法線軸(矢印方向)を路側のアンテナ1の指向面の中央付近に向けるように方向制御が行われる。
【0048】
一方、路側電源装置1では、車両に最も近いアンテナ1の捕捉範囲内に車側アンテナユニット30が入ると、アンテナ1の指向面の中心法線軸(矢印方向)を車側アンテナユニット30の方向へ向けてアンテナ1の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが正対するように方向制御が行われる。
【0049】
路側のアンテナ1と車側アンテナユニット30とが互いに対向した状態において、双方の電力伝送用コイルアンテナを介して、磁気共鳴の成立条件である共鳴周波数の交流電力による非接触の電力伝送を行うことで、電力の伝送効率を向上できる。
【0050】
つぎに、図1(a)に示す状態から車両が進行方向に沿ってやや進んだ状況を図1(b)に示す。車側電源装置3では、車両の進行に合わせて車側アンテナユニット30の指向面を徐々に後方に向けることで、指向面を路側のアンテナ1の指向面の中央付近に向けた状態を維持するように方向制御が行われる。
【0051】
一方、路側電源装置1では、アンテナ1の可動範囲内で捕捉できる位置に車側アンテナユニット30が存在する間、アンテナ1の指向面を徐々に前方に向けて車両を追尾することで、アンテナ1の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが正対する状態を維持するように方向制御が行われる。
【0052】
つぎに、図1(b)に示す状態から車両が進行方向に沿って更に進むことで、車両が次の路側アンテナユニット10b(アンテナ2)の位置に到達した状況を図1(c)に示す。このとき、路側電源装置1はアンテナ1による車両の追尾を終了して、アンテナ2による車両の追尾を開始する。アンテナ2の捕捉範囲内に車側アンテナユニット30が入ると、アンテナ2の指向面の中心法線軸(矢印方向)を車側アンテナユニット30の方向へ向けると共に、アンテナ2の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが正対するように方向制御が行われる。
【0053】
一方、路側電源装置1による追尾がアンテナ1からアンテナ2に切替わると、車側電源装置は3、車側アンテナユニット30の指向面における中心法線軸(矢印方向)を路側のアンテナ2の指向面の中央付近に向けるように方向を切替える。
【0054】
路側のアンテナ2と車側アンテナユニット30とが互いに対向した状態において、双方の電力伝送用コイルアンテナを介して、磁気共鳴の成立条件である共鳴周波数の交流電力による非接触の電力伝送を行う。
【0055】
その後、車両の進行に合わせて路側のアンテナ2と車側アンテナユニット30の双方が互いの指向面が正対するように方向制御を行う。そして、車両が次の路側アンテナユニット10c(アンテナ3)の位置に到達すると、路側電源装置1はアンテナ2による車両の追尾を終了して、アンテナ3による車両の追尾を開始し、車側電源装置3は、車側アンテナユニット30の指向面を路側のアンテナ2の指向面に向けるように方向を切替える。
【0056】
図1(d)は、上述のような一連の動作によって路側電源装置1と車側電源装置3との間で伝送される電力の時間推移を示すグラフである。この図に示すとおり、路側アンテナユニット10及び車側アンテナユニット双方を車両の走行位置に合わせて方向制御することで、個々の路側アンテナユニット10が最大電力で伝送できる期間を延ばすことができる。また、車両の走行位置に応じて、複数の路側アンテナユニット10を順次切替えて電力伝送を行うことができ、高効率の電力伝送が実現する。
【0057】
つぎに、路側電源装置1のバリエーションについて、図2を参照しながら説明する。
図2(a)は、走行レーン型の路側電源装置1の設置例を模式的に示す説明図である。この事例では、路側電源装置1は車路の側方に設置されており、複数の路側アンテナユニット10が走行レーンに沿って一列に配列している。この走行レーン型の路側電源装置1は、車両が走行しながら電力伝送を行うことを目的として設置される設備であり、車側電源装置3を搭載した車両が路側アンテナユニット10群の脇を通過する際に、路側アンテナユニット10と車両側面に設置された車側アンテナユニット30との間で電力伝送が行われる。
【0058】
図2(b)は、スポット型の路側電源装置1の設置例を模式的に示す説明図である。この事例では、路側電源装置1は駐車スペースの脇に設置されており、複数の路側アンテナユニット10が複数方向に向けて支柱に取付けられている。このスポット型の路側電源装置1は、駐車中の車両を対象に電力伝送を行うことを目的として設置される設備である。車側電源装置3を搭載した車両が柱状の路側アンテナユニット10群の周囲に駐車している間、路側アンテナユニット10と車両の前後左右に設置された車側アンテナユニット30の何れかとの間で電力伝送が行われる。
【0059】
また、路側アンテナユニット10は支柱の上下方向に配列している。これにより、車側アンテナユニット30の取付け位置の高い大型車両や、車側アンテナユニット30の取付け位置の低い小型車両等、各車両の車高に応じた高さの車側アンテナユニット30を用いて電力伝送を行うことができるようになっている。
【0060】
[路側電源装置の構成の説明]
つぎに、路側電源装置1の詳細な構成について図3を参照しながら説明する。なお、ここでは、走行する車両を対象に電力伝送を行う走行レーン型の路側電源装置1について説明する。
【0061】
路側電源装置1による電力伝送が行われる電力伝送用走行エリアには、電力伝送を行う車両が走行すべき位置を示すガイドライン500が引かれている。この電力伝送用走行エリアに沿って複数の路側アンテナユニット10が車路に向けて配列している。なお、本実施形態では、3基の路側アンテナユニット10が設置されている事例を想定している。説明の便宜上、個々の路側アンテナユニット10を電力伝送用走行エリアの上流側から順にアンテナ1,アンテナ2,アンテナ3と称する場合もある。
【0062】
アンテナ1の更に上流側の電力伝送用走行エリアの入口には、進入してくる車両を検知して情報通信を行う車両検知器(入口用)11が設置されている。また、アンテナ3の更に下流側の電力伝送用走行エリアの出口には、退出する車両を検知して情報通信を行う車両検知器(出口用)12が設置されている。
【0063】
路側アンテナユニット10は、磁気共鳴による非接触電力伝送を行う電力伝送用コイルアンテナや、電力伝送対象の車両に搭載された車側電源装置3との間で情報通信を行うための通信用アンテナ、車載アンテナの位置や指向方向を検知する車側アンテナ検知センサを一つの指向面に一体化した装置である。路側アンテナユニット10は、車両の進行方向に対して上下及び左右方向に所定範囲内で指向面を回動可能に構成されている。
【0064】
個々の路側アンテナユニット10には、各路側アンテナユニット10の作動を制御するための構成として、アンテナ制御部13、電力伝送処理回路14、路車間通信処理回路15、アンテナ駆動制御部16がそれぞれ付随する。アンテナ制御部13は、制御対象の路側アンテナユニット10の作動を統括制御する情報処理装置である。電力伝送処理回路14は、路側アンテナユニット10内の電力伝送用コイルアンテナを通じて車両との間で電力を送電又は受電する電力装置である。路車間通信処理回路15は、路側アンテナユニット10内の通信用アンテナを通じて車側電源装置3との間で情報通信を行う通信装置である。アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10内の車側アンテナ検知センサによる検知結果や、路車間通信処理回路15からの入力情報、アンテナ制御部13からの制御信号等に応じて、路側アンテナユニット10の指向面の向きを上下左右方向に調節する。
【0065】
通信データ処理部17は、車両検知器(入口用)11、車両検知器(出口用)12及び各アンテナ制御部13と、メイン制御部18との間のデータ通信を中継する通信処理回路である。メイン制御部18は、路側電源装置1が提供する電力伝送サービスに関する諸処理を統括制御する情報処理装置である。また、メイン制御部18は、通信ネットワークを介して別の場所に設置された他の路側電源装置1との間で情報通信可能に構成されている。
【0066】
電力制御部19は、蓄電装置20の状態や電力ルータ22の情報に基づいて車両に対して送受電可能な電力量を把握し、各種制御をするための情報処理装置である。蓄電装置20は、路側アンテナユニット10を介して外部へ送電する電力を蓄えるための電力装置であり、例えば二次電池や、コンデンサ、超電導ループコイル等により構成される。
【0067】
電力変換処理回路21は、電力制御部19からの制御に基づいて電力変換処理を行う電力装置である。この電力変換処理回路21は、各路側アンテナユニット10を介して車両に送電をする際、蓄電装置20及び外部の電源ラインから供給される電力を所定の電圧・電流に電力変換し、各アンテナの電力伝送処理回路14に供給する。また、各路側アンテナユニット10を介して車両から受電をした場合、受電した電力を蓄電装置20に対する充電に適した電圧・電流に電力変換し、蓄電装置20を充電したり、外部の電源ラインに供給するための既定の電圧・電流に電力変換し、電力ルータ22へ供給する。
【0068】
電力ルータ22は、路側電源装置1と、他の路側電源装置や商用電力系統につながる電源ラインとの接続点に設けられる電源装置である。この電力ルータ22は、電力制御部19からの制御に基づいて、外部の電源ラインからの電力の取得と外部の電源ラインに対する電力供給とを適宜切替えて行う。この電源ラインを介して他の路側電源装置1と接続することで、他の路側電源装置1と連携して電力を融通しあうことができる。例えば、ネットワーク経由で外部から電力供給の依頼がある場合には、電力ルータ22のスイッチングを行い、要求先へ電力を送ることもできる。さらに、電力ルータ22のスイッチング部や電源ラインを高温超電導体で形成することで電力損失をなくすことができる。また、蓄電装置20の電力貯蔵量が十分に大きいものであれば、他の路側電源装置1に蓄電電力を供給することも可能になる。
【0069】
記憶部23は、路側電源装置1が動作するための制御プログラムや、電力伝送サービスの提供対象となる車両を認証するための識別情報(車両ID)、車両別の電力伝送量等の諸データを記憶するための記憶装置である。
【0070】
路側電源装置1における各部の動作の概要は次のとおりである。
車両検知器(入口用)11は、DSRC(Dedicated Short Range Communications)等の狭域通信により、電力伝送用走行エリアに進入してくる車両に対する問いかけ信号を限定された範囲内に送信する。そして、この問いかけ信号に応答した車側電源装置3と情報通信を行い、電力伝送用走行エリアに入ってきた車両の(又はユーザ)のIDと車両からのリクエスト(充電あるいは放電)、伝送する電力量などの情報を取得し、各アンテナのアンテナ制御部13及び通信データ処理部17へ送信する。
【0071】
アンテナ制御部13は、車両検知器(入口用)11により受信した車両からのリクエストに応じた電力伝送処理回路14の設定、及び、路車間通信処理回路15と車両との路車間通信に必要な設定を行う。ここで、電力伝送処理回路14に対して行う設定としては、車両への充電を行う(すなわち送電)のか、あるいは車両からの放電を受ける(すなわち受電)のか、電力伝送を行う際の電力の大きさ、路車間の電力伝送用コイルアンテナで磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数や回路インピーダンス、等の諸条件である。
【0072】
路車間通信処理回路15は、アンテナ制御部13によって設定された通信条件に基づき、路側アンテナユニット10の通信用アンテナを介して車側電源装置3との間で情報通信を行う。この情報通信では、主に、路側アンテナユニット10と車載アンテナとを互いに正対させる方向制御に必要な情報の送受信が行われる。
【0073】
電力伝送処理回路14は、アンテナ制御部13により設定された磁気共鳴の共鳴周波数に合わせて電力伝送用コイルアンテナ回路のインピーダンスを調節し、この電力伝送用コイルアンテナを通じて車両との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する。車両に対して送電を行う場合、電力変換処理回路21から供給される電力を共鳴周波数の交流電力に変換し、電力伝送用コイルアンテナから出力する。一方、車両から受電する場合、電力伝送用コイルアンテナによって車両側から出力された交流電力を受信し、電力変換処理回路21へ供給する。
【0074】
通信データ処理部17は、車両から受信した電力伝送の諸条件に関するリクエスト項目をメイン制御部18へ送る。そして、メイン制御部18は、どのような態様で電力伝送に対応できるかを診断した診断データの作成を電力制御部19に対して依頼する。ここで、電力制御部19は、蓄電装置20の状態や電力ルータ22の情報に基づいて車両に対して送受電可能な電力量を把握し、診断データとして出力する。
【0075】
出力された診断データは、メイン制御部18から通信データ処理部17を介して車両検知器(入口用)11へ伝送され、車両検知器(入口用)11から車両へ送信される。診断データを受信した車両では、この診断データに基づいて、どの程度の充電又は放電が可能かといった情報が表示装置に表示される。車両の乗員(ユーザ)は、その診断データを見ることによって、この路側電源装置1を利用するか否かを選択できる。
【0076】
路側アンテナユニット10には、アンテナの指向面の向きを変えるための駆動機構が設けられている。この駆動機構は、図4(a)に示すとおり、車載アンテナの取付高さに応じて路側アンテナユニット10の向きを上下(ピッチ)方向に動かすためのアクチュエータ161や、車両の進行方向に応じて路側アンテナユニット10の向きを左右(ヨー)方向に動かすためのアクチュエータ162、これらの動力を伝達するためのギア類、ピッチ方向及びヨー方向の回転角を計測する回転角センサ(ロータリエンコーダ)163等により構成されている。アンテナ駆動制御部16は、アンテナの角度が指定されると、回転角センサ163の計測結果に基づき、アクチュエータ161,162を駆動し、迅速に指定された角度に路側アンテナユニット10をセットする。
【0077】
アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10の駆動部を制御し、車載アンテナの位置や方向に合わせてアンテナの指向面の向きを変化させる方向制御を行う。まず、アンテナ駆動制御部16は、車両の進入が検知されると、その対象車両を迎える方向に路側アンテナユニット10の指向面を最大回転角まで回転させ、対象車両を待ち受ける。そして、路側アンテナユニット10の車側アンテナ検知センサによって車載アンテナが検知されると、アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10と車載アンテナとを正対させる。その後、路側アンテナユニット10と車載アンテナとを対面させた状態を維持するように、アンテナの指向面の向きを車両の移動に合わせて変化させる。
【0078】
また、車載アンテナに対する対向と追従を精度よく行うために、フィードバック制御や推測制御等の手法を用いてもよい。フィードバック制御としては、磁界センシングを用いる手法が挙げられる。この場合、アンテナの指向面に複数配置した磁界センサによりアンテナ表面の磁界分布を計測し、アンテナの中央に最も強い磁界が位置するようにアンテナの指向面を向ける制御をすることが考えられる。また、推測制御の手法としては、路車間通信により取得した車速や進行方向等の情報に基づいて、車両の未来位置を推測し、その推測した位置に車両が到達するタイミングに合わせてアンテナの指向面を向ける制御をすることが考えられる。
【0079】
車載アンテナの位置及び方向を検知するためのセンサとして、路側アンテナユニット10の指向面はスポット光センサ110が設けられている(図4(a)参照)。このスポット光センサ110は、車載アンテナ側からアンテナの指向方向を示す照準光として照射される指向性の高いスポット光(あるいは電磁波)をアンテナの指向面上で受光した位置を検知するためのセンサである。その構造は、多数のセンサがアンテナの指向面上に縦横の格子状に配置されたセンサ集合体や、薄い面状の半導体光センサにより、スポット光が照射された座標を検知するものである。
【0080】
なお、路側アンテナユニット10の指向面には、図4(b)に示すとおり、アンテナの位置を車両側で容易に認識できるようにするための検出パターン(位置検出用マーク101、センタークロス102、コイル位置マーク103)がマーキングされている。これらのマークは、夜間でもカメラで撮影可能なように夜間は発光するようにしてもよい。あるいは、外部照明によりアンテナの指向面を照らすようにしてもよい。車両側においてこれらの検出パターンを車載カメラ等により認識することで、路側アンテナユニット10の概略位置や角度が特定され、路側アンテナユニット10の中心方向に向けて指向性のスポット光が照準光として照射される。
【0081】
スポット光センサ110により検知された照射位置(指向面上の座標)は、路車間通信処理回路15を通じて車側電源装置3に対して通知される。車側電源装置3では、路側電源装置1から通知されたスポット光の照射位置に基づき、路側アンテナユニット10の中心にスポット光が位置するように車載アンテナの指向面の角度が調節される。
【0082】
そして、車両側のアンテナ角度の調整の結果、スポット光が路側アンテナユニット10の中央に照射されるようになると、車載アンテナの指向面の法線ベクトルがどちらを向いているかが車両側から通知される。路側電源装置1のアンテナ制御部13は、車載アンテナの法線ベクトル情報を受信すると、その法線ベクトル情報に基づき、アンテナ駆動制御部16を通じて路側アンテナユニット10の指向面が車載アンテナの指向面と平行になるように角度調節を行う。
【0083】
つぎに、路側アンテナユニット10に設けられるスポット光センサ110の構成事例について、図5を参照しながら説明する。
図5(a)は、二次元グリッド配置光センサで構成されたスポット光センサ110の構成を示す図である。この二次元グリッド配置光センサは、点状の光センサ111を指向面上に設定されたXY座標に対応させて格子状に配置したものである。これにより、スポット光を検知した光センサ111に割当てられたXY座標を取得することで、スポット光の照射位置を特定できる。なお、光センサ111の配置については、電力伝送用コイルアンテナによる電力伝送のための磁束を減衰させないように、配置パターンを磁場解析などで調節するとよい。
【0084】
図5(b)は、面状の半導体二次元光センサで構成されたスポット光センサ110の構成を示す図である。この半導体二次元光センサは、光を受けることでその部分の導電性が変化する半導体物質の層115を、SnO2やITO(Indium Titanium Oxide)等の非磁性の透明導電膜116で挟み込んだ基板の両面に表側電極112、裏側電極113及び電路114を設けたものである。表側電極112及び裏側電極113は、それぞれ指向面上に設定されたXY座標に対応させて配置されており、それぞれの電極から延びる電路114が指向面上に格子状に配置されている。
【0085】
この半導体二次元光センサのスポット光が当たっている位置において半導体物質層115の導電性が変化すると、その位置に対応する表側電極112と裏側電極113との間の抵抗値(印加電圧)が変化する。この変化が生じた電極に割当てられた位置座標によって、スポット光が当たっている位置を特定できるようになっている。
【0086】
図5(b)に示す半導体二次元光センサの構造では、光を受けることでその部分が非電導性から電導性に変化する半導体物質を利用しており、スポット光の照射を受けることでその位置で表側と裏側が導通する。高速で各表側電極112と裏側電極113とを走査して導通を検知することで、スポット光の照射位置の座標を計測できる。
【0087】
つぎに、路側アンテナユニット10の設置方法の変形例について、図6を参照しながら説明する。
図6(a)は、上下2段式の路側アンテナユニット及びその駆動機構の概略構成を示す説明図である。この事例では、2基の路側アンテナユニット10が上下方向に連ねて設置されている。2基の路側アンテナユニット10のうち、上段側が車高の高い大型車両向けのアンテナであり、下段側が車高の低い小型・普通車向けのアンテナユニットである。
【0088】
上下各路側アンテナユニット10には、アンテナの指向面方向を変化させるための駆動機構(アクチュエータ161,162、回転角センサ163)がそれぞれ設けられており、それぞれのアンテナの方向をアンテナ駆動制御部16が個別に制御できるようになっている。
【0089】
さらに、上下の各路側アンテナユニット10には、車載アンテナの位置及び方向を検知するためのセンサとして、カメラ120がそれぞれ設けられている。これにより、上下何れかの路側アンテナユニット10のうち、カメラ120によって検知した車載アンテナの高さに近い方のアンテナを用いて電力伝送を行うことができるようになっている。また、このカメラ120を用いて、車載アンテナ側にマーキングされた検出パターンを撮像し、その形状の変化を解析することで、路車間のアンテナの対向度合いを判定することもできる。
【0090】
図6(b)に示すとおり、上下各路側アンテナユニット10の指向面には、アンテナの位置を車両側で容易に認識できるようにするための検出パターンがそれぞれマーキングされている。車両側においてこれらの検出パターンを車載カメラ等により認識することで、上下各路側アンテナユニット10の概略位置を特定できるようになっている。
【0091】
[車側電源装置の構成の説明]
つぎに、車側電源装置3の詳細な構成について図7を参照しながら説明する。図7(a)は、車側電源装置3の概略構成を示すブロック図であり、図7(b)は、車側アンテナユニット30の正面外観を示す図である。
【0092】
車側アンテナユニット30は、磁気共鳴による非接触電力伝送を行う電力伝送用コイルアンテナや、路側電源装置1との間の近距離無線通信や、外部の情報センタとの間の遠距離無線通信、他車両との車車間通信を行うための通信用アンテナ、電力伝送用コイルアンテナの中央に設けられ、アンテナの指向方向(電力伝送用コイルアンテナの中央法線方向)を指し示すスポット光を照射するスポット光照射部を一つの指向面に一体化した装置である。この車側アンテナユニット30は、車体の周囲方向に向けて(ここでは、車体の側面を想定している)設置され、取付面に対して上下及び左右方向に所定範囲内で指向面の向きを変更可能に構成されている。なお、図7(a)に示す事例では、1基の車側アンテナユニット30が設置されている事例を想定しているが、複数の車側アンテナユニット30が車体の側面、前面、後面、上面の各面にそれぞれ設置されていてもよい。
【0093】
目標アンテナ検知センサ31は車載カメラ等からなり、その撮像画像から電力伝送の目標となる路側アンテナの位置を検出するためのものである。アンテナ駆動機構32は、車側アンテナユニット30の指向面の向きを上下左右方向に変更するための機構である。このアンテナ駆動機構32は、図8に示すとおり、路側アンテナの取付高さに応じて車側アンテナユニット30の向きを上下(ピッチ)方向に動かすためのアクチュエータ321や、車側アンテナユニット30の向きを進行方向に沿って左右(ヨー)方向に動かすためのアクチュエータ322、これらの動力を伝達するためのギア類、ピッチ方向及びヨー方向の回転角を計測する回転角センサ(ロータリエンコーダ)323等により構成されている。アンテナ駆動制御部36は、アンテナの角度が指定されると、回転角センサ323の計測結果に基づき、アクチュエータ321,322を駆動し、迅速に指定された角度に車側アンテナユニット30をセットする。
【0094】
電力伝送処理回路33は、車側アンテナユニット30内の電力伝送用コイルアンテナを通じて路側電源装置1との間で電力を送電又は受電する電力装置である。この電力伝送処理回路33は、路車間の電力伝送用コイルアンテナで磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、電力伝送用コイルアンテナの回路のインピーダンスを調節し、送受電を行う。電力変換処理回路34は、電力伝送用コイルアンテナを介して外部から受電した電力を蓄電装置40の充電に適した電圧(大きさ、波形)に変更する。また、車側アンテナユニット30を介して外部に送電をする際、蓄電装置40から供給される電力を所定の電圧、電流、周波数に変換し、電力伝送処理回路33に供給する。無線による電力伝送では、いくつかの伝送周波数を使用することが想定されており、それぞれの周波数に応じた電力変換処理を行う。また、蓄電装置40の二次電池をセル単位で充電及び放電制御できるようにすることで、各セル間のコンディションを均衡化し、蓄電装置40が安定して機能できるようにする。
【0095】
無線通信部35は、車側アンテナユニット30内の通信用アンテナを通じて路側電源装置1や、外部の情報通信センタ、他車両との間で情報通信を行う通信装置である。アンテナ駆動制御部36は、目標アンテナ検知センサ31による検知結果や、無線通信部35からの入力情報、メイン制御部38からの制御信号等に応じてアンテナ駆動機構32を駆動し、車側アンテナユニット30の指向面の向きを上下左右方向に調節する。
【0096】
メイン制御部38は、車側電源装置3が行う充放電管理に関する諸処理を統括制御する情報処理装置である。また、メイン制御部38は、車載通信ネットワークを介して各種車載機器46との間で情報通信可能に構成されており、これにより、自動走行、周辺車両との車間制御や隊列走行、可倒式ドアミラーやパワーウィンドウ等の機器操作、ナビゲーション情報の取得等といった、各種走行制御や機器制御を行う。
【0097】
電力制御部39は、電力変換処理回路34の動作を制御するための情報処理装置である。この電力制御部39は、蓄電状態監視部41からの情報に基づいて蓄電状態を判定し、電力変換処理回路34における電力変換処理のオン/オフ制御を行うと共に、電力変換処理回路34が最適に動作するように電力変換処理のパラメータを設定する。蓄電装置40は、車両の走行や車載機器の動作に使用される電力を蓄えるための二次電池からなる電力装置である。蓄電状態監視部41は、蓄電装置40の蓄電状態(蓄電量、異常の有無)を監視するための装置であり、二次電池の各セルの状態を監視し、各セルの電圧バランスや温度に異常がある場合には電力制御部39に情報を提供する。
【0098】
位置検出部42は、自車両の現在地を検出するための装置である。本実施形態では、GPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Navigation Satellite System)等を利用して現在地を測位する衛星測位機能や、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等を用いて走行方向を推測する推測航法機能、カメラを用いて路面上のラインや周辺の構造物、標識等を撮像し、現在位置を高精度で計測する機能を有するものを想定している。
【0099】
表示部43は、ユーザに対して各種情報を提示するモニタ等の表示装置である。この表示部43には、利用可能な路側電源装置1の位置、路側電源装置1との電力伝送状況、二次電池の蓄電状況、航続距離、その他ユーザに有用な情報が表示される。記憶部44は、車側電源装置3が動作するための制御プログラムや、電気料金の収受に関連する諸データを記憶するための記憶装置である。走行情報入力部45は、車速センサや加速度センサ、操舵角センサ等による検知情報を取得し、メイン制御部38へ入力するための入力装置である。
【0100】
なお、車側アンテナユニット30の指向面には、図7(b)に示すとおり、アンテナの位置を外部から容易に画像認識できるようにするための検出パターン(位置検出用マーク301、センタークロス302、コイル位置マーク303)がマーキングされている。これらのマーキングは、人の目には見えないが赤外線カメラ等で検出できる塗料や表面処理を施し、車両の外観を損なわないようにすることもできる。路側電源装置1側においてこれらの検出パターンをカメラ等により認識することで、車側アンテナユニット30の概略位置や角度が特定される。
【0101】
車側電源装置3の動作の概要は次のとおりである。
メイン制御部38は、無線通信部35を通じて外部の情報センタから路側電源装置1の位置情報を取得する。あるいは、図示しない車載ナビゲーション装置等の情報端末に記憶されている地図データから路側電源装置1の位置情報を取得してもよい。利用可能な路側電源装置1の位置情報が見つかると、メイン制御部38は、その路側電源装置1の位置を対象に周知のナビゲーション装置と同様の経路案内を実施する。例えば、自車両が目的の路側電源装置1まで100m手前の地点まで到達したと判定した場合、「前方100mに路側電源装置がある」旨のメッセージをユーザに対して報知する。また、自車両が目的の路側電源装置1に接近すると、電力伝送及びその料金収受のための処理を開始する。
【0102】
メイン制御部38は、位置検出部42により自車両の現在地を測定し、路側電源装置1の電力伝送用走行エリアに接近すると、目標アンテナ検知センサ31により路側アンテナの探索を開始する。路側アンテナユニット10には位置検出のためのマーキング(図4(b)参照)が施されているため、画像認識により容易に路側アンテナを発見できる。また、撮像した位置検出用マーク101の形状を解析し、路側アンテナが車路に対してどのような角度に向いているかを判定する。
【0103】
一方、車両が電力伝送用走行エリアの入口に設置されている車両検知器(入口用)11の通信圏内に入ると、無線通信部35を通じて車両検知器(入口用)11との狭域通信(DSRC)による路車間通信が開始される。なお、霧等で視界が悪く目標アンテナ検知センサ31により路側アンテナが未検出であっても、車両検知器(入口用)11との路車間通信が開始されることで、路側アンテナへの接近が検知される。
【0104】
つぎに、メイン制御部38は、無線通信部35を通じて車両検知器(入口用)11との間で所定の通信を行う。ここでは、自車両側のリクエストを送信し、それに対する回答を受信する。ここで、路側電源装置1からの回答内容を承諾できない場合は、処理を中止し電力伝送用走行エリアから退出することもできる。路側電源装置1との間で電力伝送を行う場合、共鳴周波数等の電力伝送条件を路側電源装置1に合わせる。
【0105】
つぎに、検知した路側アンテナの位置や指向方向に合わせて、路側アンテナ及び車側アンテナユニット30の指向面同士が確実に正対するように方向制御を行う。このとき、車側アンテナユニット30内の通信用アンテナと、路側アンテナユニット10内の通信用アンテナとを介して、高速で制御データの交換が行われる。
【0106】
車側アンテナユニット30の方向制御では、まず、スポット光照射部からアンテナの指向方向に向けて照射されるスポット光が路側アンテナのコイル中央に位置するように、アンテナの指向面の方向を調節する。なお、スポット光照射部からのスポット光で路側アンテナのコイルの中央を狙うためには、車両の速度や振動量に応じた車側アンテナユニット30の方向修正が必要である。
【0107】
そして、スポット光照射部からのスポット光が路側アンテナのコイル中央に位置する状態で安定したとき、アンテナの指向面の法線ベクトルを算出し、その方向角の値を路側電源装置1へ通知する。なお、法線ベクトルは、グローバル座標系でもローカル座標系でもよく、車側アンテナユニット30の方向角を、走行情報入力部45からの入力情報に基づく車両の進行方向等で補正したものを算出する。また、将来の走行軌跡が曲線になる場合、その走行経路情報を路側電源装置1側へ併せて通知することで、路側電源装置1側でその後の角度補正を推測できるようになる。そして、その通知された法線ベクトルの値に基づいて、上述のとおり路側電源装置1で路側アンテナの方向調節が行われることで、路側アンテナ及び車側アンテナユニット30の指向面同士が正対する。この状態において電力伝送用コイルアンテナを介して電力伝送を行うことで、伝送効率を向上できる。
【0108】
路側電源装置1から受電、あるいは路側電源装置1へ放電した電力量は電力制御部39により監視される。電力制御部39は、設定量になったら電力伝送処理を停止し、メイン制御部38に完了信号を送信する。一方、設定量の電力伝送が完了しないまま最後の路側アンテナを通過したことが検知された場合、メイン制御部38に結果(伝送した電力量)を通知する。
【0109】
電力伝送用走行エリアの出口にて、メイン制御部38は、電力伝送の結果を無線通信部35に送り、通信用アンテナを介して路側電源装置1の車両検知器(出口用)12へ送信する。並行して路側電源装置1の車両検知器(出口用)12から電力伝送の結果を受信し、メイン制御部38はその整合性を確認する。そして、その結果に応じた情報提示画面を表示部43に表示する。情報提示画面の表示内容としては、路側電源装置1のエリア名称、伝送電力量(対応航続距離)、伝送効率、料金情報(課金/還元金情報)等があり、また、何かエラーなどがあれば表示する。
【0110】
[アンテナ方向制御の概要]
つぎに、路側電源装置1と車側電源装置3とが連携して互いのアンテナユニットの指向面を正対させる方向制御の手順について、図9を参照しながら説明する。ここでいう正対とは、単純に面と面とが向き合うだけでなく、車両側の電力伝送用コイルの中心法線と、路側の電力伝送用コイルの中心法線とが空間で直接的に衝突するような状態が望ましい。このような状態を達成するために、以下のような手順で方向制御を行う。
【0111】
ステップ1:図9(a)参照
車両が路側アンテナユニット10に接近すると、車側電源装置3側では、車側アンテナユニット30の指向面を進行方向前方に向け、目標アンテナ検知センサ(カメラ)31で目標となる路側アンテナユニット10を撮影すると共に、スポット光照射部からアンテナの指向方向に延びるスポット光の照射を開始する。そして、撮像画像からスポット光の照射位置を計測し、路側アンテナユニット10のコイル中央に描かれたセンタークロスを照射ターゲットにして、計測したスポット光の照射位置に応じてアンテナ駆動機構を32を作動させる。このようにして、目標となる路側アンテナユニット10のコイル中央付近にスポット光が当たるように車側アンテナユニット30の方向を調節する。なお、電力伝送用走行エリアを凹凸のない平坦な路面にしておけば、路側アンテナユニット10のコイル中央付近をスポット光で狙うことは容易である。
【0112】
ステップ2:図9(b)参照
路側電源装置1側では、アンテナ面に設けられたスポット光センサ110により、車側アンテナユニット30から放出されているスポット光の照射位置を計測する。計測の結果、スポット光の照射位置がコイル中央からずれている場合、そのずれ量を路側アンテナユニット10の通信用アンテナを通じて車両側へ通知する。車側電源装置3側では、通知されたずれ量の情報を基に、スポット光が路側アンテナユニット10のコイル中央に位置するように、車側アンテナユニット30の方向を調節する。
【0113】
ステップ3:図9(c)参照
路側電源装置1側では、路側アンテナユニット10のコイル中央にスポット光が安定して検知されるようになると、車側電源装置3からアンテナの方向角(アンテナの方線ベクトル)の情報を路側アンテナユニット10の通信用アンテナを通じて受信する。そして、アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10の方向角を車側アンテナユニット30の方向角に対向する値に設定し、その設定どおりにアクチュエータを作動させ、路側アンテナユニット10の方向を調節する。これにより、路側アンテナユニット10の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが平行になり、アンテナ同士が確実に正対する。その後、図9(c)に記した(1)→(2)→(3)の順で示すとおり、車両の移動に合わせて、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方が互いのアンテナユニットを追尾するように方向調整をして、アンテナ同士が正対した状態を維持する。この様な制御を行うことで電力伝送効率が大きくなる。
【0114】
なお、ステップ3において、車側電源装置3が路側電源装置1に対して送信するアンテナの方向角(アンテナの方線ベクトル)は、車側電源装置3のアンテナ駆動機構32における角度センシングの結果から計測される。このとき、車両が電力伝送用走行エリアに沿って引かれたガイドラインに対して斜め方向に走行している場合、車側電源装置3で計測された方向角と、路側アンテナユニット10側から見た車側アンテナユニット30の実際の方向角とにずれが生じる。電力伝送用走行エリアの入口では、ガイドラインに沿って(すなわち、路側アンテナユニット10と所定定距離を隔てて)走行するように、車両に対して進行方向が指示される。しかし、手動運転の場合は、指示通り走行できない場合もある。
【0115】
そこで、図10に示すように、車側電源装置3では、ガイドラインに対する車両の進行方向のずれ角に基づいてアンテナの方向角を補正する。具体的には、ガイドラインに対する車両の進行方向のずれ角を、ステアリング角や画像認識によるライン検知等から計測し、その計測結果に基づいてアンテナの方向角を補正する。路側電源装置1に対しては、補正したアンテナ方向角を送信する。
【0116】
つぎに、カメラによる撮像画像に基づくアンテナの方向調整の方法について、図11を参照しながら説明する。上述したように、路側アンテナユニット10及び車側アンテナユニット30の指向面には、それぞれ位置検出用のマーキングが施されている車側電源装置3側のカメラで路側アンテナユニット10を撮像した場合、あるいは、路側電源装置1側のカメラで車側アンテナユニット30を撮像した場合、何れの場合においても撮像画像における位置検出用マークの形状の歪み具合で自身のアンテナの修正方向を検知できるようになっている。対向相手のアンテナの撮像画像において、位置検出マークの形状が高さ方向に歪んでいる場合、対向相手のアンテナが上下(ピッチ)方向に傾いているため、これに合わせて自身のアンテナの方向角(X軸)を補正する。また。対向相手のアンテナの撮像画像において、位置検出マークの形状が横幅方向に歪んでいる場合、対向相手のアンテナが左右(ヨー)方向に傾いているため、これに合わせて自身のアンテナの方向角(Y軸)を補正する。
【0117】
[路車間電力伝送処理の説明]
つぎに、路側電源装置1と車側電源装置3とが連携して実行する路車間電力伝送処理の処理シーケンスについて、図12〜15のラダーチャートに基づいて説明する。
【0118】
(1)車両検知器(入口用)11−車側電源装置3間の処理シーケンス
図12は、路側電源装置1の車両検知器(入口用)11と、車側電源装置3のメイン制御部38との間で行われる処理シーケンスを示すラダーチャートである。
【0119】
図12に示すとおり、まず、車側電源装置3のメイン制御部38は、自車両の現在地を測定すると共に利用可能な路側電源装置1の位置を確認し、自車両が路側電源装置1の電力伝送用走行エリアに接近したと判定すると、充放電準備処理を開始する(S200)。
【0120】
一方、路側電源装置1の車両検知器(入口用)11は、通過車両の有無を問合せるためのポーリング信号を常時送信している(S100)。ポーリング信号には、路側電源装置1の識別情報である路側IDが含まれる。
【0121】
車両が車両検知器(入口用)11による通信圏内に入ると、メイン制御部38は無線通信部35を通じてポーリング信号を受信する。メイン制御部38は、受信したポーリング信号に対する応答として、自車両の識別情報である車両IDや路側電源装置1に対する要求内容等を含むリクエスト情報を車両検知器(入口用)11へ送信する(S201)。なお、車両IDは、車載器の識別情報や、車載器に挿入された記憶メディアに記録されたユーザの識別情報等、料金決済に必要な情報でもよい。また、路側電源装置1に対する要求内容には、自車両への充電要求か、それとも自車両からの放電要求かを示す充放電区分、充放電する電力量の要求値等の情報が含まれる。なお、路側電源装置1に対する要求内容の決定方法については後述する。
【0122】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3からリクエスト情報を受信すると、そこに含まれる車両IDと、記憶部23に格納されている認証用の車両IDとを照合し、当該車両を認識する(S101)。つぎに、その認識した車両に対して、車両情報送信依頼と路側IDとを含むレスポンスを送信する(S102)。
【0123】
メイン制御部38は、車両情報送信依頼と路側IDとを含むレスポンスを受信すると、当該路側電源装置1へ送信するために必要な車両情報を準備する(S202)。この車両情報とは、具体的に、車両に搭載された充電放電装置の仕様(例えば、世界的に標準化されたカテゴリー番号、対応可能な伝送電力の範囲や伝送周波数帯域(すなわち、共鳴周波数の調節可能範囲)等)や、車両の速度や位置等の走行情報等が含まれたものである。そして、S202で準備した車両情報と自車両の車両IDとを含むレスポンスを車両検知器(入口用)11へ送信する(S203)。
【0124】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3から車両情報と車両IDとを含むレスポンスを受信すると、当該車両からの要求内容と車両情報とを通信データ処理部17へ送信する(S103)。通信データ処理部17へ送信された各情報は、個々の路側アンテナユニット10に付随するアンテナ制御部13やメイン制御部18へ送られ、それぞれ処理される。各アンテナ制御部13は、充放電の要求内容と車両情報とに基づき、車側電源装置の仕様に合った共鳴周波数及び伝送電力等、充放電に関する条件を設定し、その設定した条件に合わせて各アンテナの電力伝送処理回路14を調節する。メイン制御部18は、車両からの要求内容を満たせるか否かを迅速に算定し、要求内容に適した車両の走行方法に関する条件を準備する。具体的には、要求どおりの電力伝送を達成するのに適した走行速度、アンテナとの接近距離、アンテナ同士の対向度合いの精度等の諸条件を設定する。
【0125】
なお、通信データ処理部17は、車両検知器(入口用)11により検知された車両ID等を分類ラベルとして、車両検知器(入口用)11により車側電源装置3から受信した各情報に時間情報を付加してこれを記憶する。なお、各アンテナと車両間で送受信される通信データは、この車両IDを検索メインキーとするデータレコードとして記憶しておく。このデータレコードは、XML(Extensible Markup Language)のようなタグ付きデータとすると、後のデータ処理を行いやすくなる。
【0126】
つぎに、車両検知器(入口用)11は、アンテナ制御部13及びメイン制御部18で設定された、充放電及び走行方法に関する諸条件を通信データ処理部を通じて受領し、それらの条件に沿って走行及び充放電を行うように依頼する(電力伝送条件設定依頼送信、S104)。
【0127】
メイン制御部38は、車両検知器(入口用)11からの電力伝送条件設定依頼を受信すると、その電力伝送条件の内容を確認する(S204)。そして、その依頼内容を自車両の状況に照らして、路側電源装置1側から提案の電力伝送条件を適用可能であるか否かを判断する(S205)。適用可能であると判断した場合(S205:YES)、路側電源装置1側から提案の電力伝送条件に従って自車両側の各種条件を設定する(S206)。具体的には、依頼内容における充放電に関する条件(共鳴周波数及び伝送電力等)に合わせて電力伝送処理回路33を調節する。また、依頼内容における走行方法に関する条件(車速、アンテナとの接近距離、アンテナの対向度合いの精度等)に合わせて自動走行の制御内容を設定する。そして、提案された電力伝送条件に対する了承通知を車両検知器(入口用)11へ送信する(S207)。
【0128】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3から電力伝送条件に対する了承通知を受信すると、その旨を通信データ処理部17へ通知する(S105)。この了承通知は、通信データ処理部17からメイン制御部18に通知される。メイン制御部18は、合意がなされた電力伝送条件に沿って電力制御部19のスケジューリングを行う。すなわち、路側電源装置1の電力伝送用走行エリアでは、複数の車両が同時期に電力伝送を行う可能性があるため、各車両に対する車両検知及び電力伝送が正確に行えるように電力制御部19に対する送受電のタイムスケジュールを策定する。スケジューリングの結果は、通信データ処理部17を介して各アンテナのアンテナ制御部13に対して通知されると共に、車両に対しても送信される。
【0129】
一方、メイン制御部38がS205において否定判定をした場合(S205:NO)、すなわち、路側電源装置1側から提案の電力伝送条件を適用できないと判定した場合、電力伝送条件の変更依頼を送信するか否かによって処理を分岐する(S208)。変更依頼を送信する場合(S208:YES)、その時点で適用可能な内容の電力伝送条件に変更するための設定変更依頼を車両検知器(入口用)11へ送信する(S209)。変更依頼を送信しない場合(S208:NO)、路車間電力伝送処理を中止する(S210)。
【0130】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3から設定変更依頼を受信すると、その旨を通信データ処理部17へ通知する(S103)。この設定変更依頼は、通信データ処理部17からメイン制御部18に通知される。メイン制御部18は、設定変更依頼の内容に基づき、その時点で可能な処理を車両側に提案するための新たな電力伝送条件を設定する。例えば、電力伝送用走行エリアを通過するまでの時間において、本路側電源装置1単独で要求された電力量の電力伝送を行えない場合、車両の走行速度を遅く設定したり、本路側電源装置1とは別の場所にある他の路側電源装置1との間で電力伝送を行うといった代替案を策定する。車両検知器(入口用)11は、メイン制御部18で設定された代替案を通信データ処理部を通じて受領し、その代替案に沿って走行及び充放電を行うように依頼するための電力伝送条件設定依頼を再度送信する(S104)。
【0131】
その後、車両検知器(入口用)11は、車両が電力伝送用走行エリアの入口を通過したと判定した場合(S106:YES)、通信データ処理部17に対して通過連絡を行う(S107)。この通過連絡は、通信データ処理部17から各アンテナのアンテナ制御部13及びメイン制御部18へと通知される。
【0132】
(2)各路側アンテナユニット10−車側電源装置3間の処理シーケンス
つぎに、図13,14は、路側電源装置1の各アンテナ制御部13と、車側電源装置3のメイン制御部38との間で行われる処理シーケンスを示すラダーチャートである。この処理シーケンスは、先述の車両検知器(入口用)11−車側電源装置3間の処理シーケンスが終了した後に実行される。
【0133】
図13に示すように、まず、路側電源装置1のアンテナ制御部13は、車両検知器(入口用)11から、検知した車両の認識情報と当該車両の入口通過情報とを受信すると、自身の制御対象である路車間通信処理回路15による当該指定車両との通信準備を行うと共に、自身の制御対象である路側アンテナユニット10の指向面を、接近する指定車両を迎える最大角度にセットする(S300)。例えば、図3に示すように指定車両が電力伝送用走行エリアの右方向から接近する場合には、路側アンテナユニット10の指向面を右方向の最大可動範囲まで方向転換する。その状態で、車側電源装置3からのスポット光の照射を検知するまで待つ(S301)。
【0134】
一方、車側電源装置3のメイン制御部38は、目標アンテナ検知センサ(カメラ)31による撮像画像から、進行方向前方の路側アンテナユニット10の設置側に向けて捕捉対象となる路側アンテナユニットを探索する(S400)。そして、捕捉対象の路側アンテナユニット10を発見した場合(S401:YES)、目標アンテナ検知センサ(カメラ)31により検出した当該アンテナの位置に基づき、車側アンテナユニット30の指向面を捕捉対象の路側アンテナユニット10の方向へ向けると共に、スポット光照射部により車側アンテナユニット30の指向方向を指し示すスポット光の照射を開始する(S402)。
【0135】
アンテナ制御部13は、路側アンテナユニット10の指向面にあるスポット光センサ110によってスポット光の照射を検知すると(S301:YES)、そのアンテナの指向面上における照射位置を計測する(S302)。計測の結果、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央(センターマーク)からずれている場合、そのずれ量を路車間通信処理回路15及び路側アンテナユニット10の通信用アンテナを通じて車側電源装置3に通知する。アンテナ制御部13は、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に安定的に固定(ロック)されるまでの間、スポット光の照射位置の計測とその計測結果の通知を繰返す(S303)。
【0136】
なお、路側アンテナユニット10の車側アンテナ検知センサ等により指定車両が検知された時点で、当該路側アンテナユニット10に付属の電力伝送処理回路14は、予め設定された共鳴周波数及び伝送電力で電力伝送用コイルアンテナによる所定の電力伝送(送電/受電)を開始する。また、同じタイミングで、車側電源装置3の電力伝送処理回路33は、予め設定された共鳴周波数及び伝送電力で電力伝送用コイルアンテナによる所定の電力伝送(受電/送電)を開始する。
【0137】
一方、車側電源装置3のメイン制御部38は、路側アンテナユニット10からスポット光の照射位置の情報を受信すると、この情報を基に、スポット光が目標のコイルアンテナの中央(センターマーク)に位置するように、車側アンテナユニット30の角度を調節する(S403)。角度調節の後、再度受信した照射位置の情報に基づき、スポット光の照射位置が目標のコイルアンテナの中央に位置するか否かを判定する(S404)。依然としてスポット光の照射位置が目標のコイルアンテナの中央からずれている場合は(S404:NO)、再びアンテナの角度調節を繰返す(S403)。角度調節の結果、スポット光の照射位置が目標のコイルアンテナの中央に移動した場合(S404:YES)、アンテナ角度の微調整により目標のコイルアンテナの中央にスポット光が当たる状態を維持する追尾調整(ロック)を行う(S405)。ここで、スポット光の照射位置を目標のコイルアンテナの中央に固定できている場合(S406:YES)、ロック完了を通知するためのアンテナロック情報を目標の路側アンテナユニット10に対して送信する(S408)。一方、スポット光の照射位置を目標のコイルアンテナの中央に固定できていない場合(S406:NO)、S405の追尾調整を繰返し行う。
【0138】
つぎに、アンテナ駆動機構32における回転角の検出値に基づき、アンテナの指向面の法線ベクトルを算出する(S408)。そして、路面のガイドラインの画像認識結果等に基づき、自車両の進行方向のずれによる法線ベクトルの補正の要否を判定する(S409)。補正が不要な場合(S409:NO)、S408で算出した法線ベクトルの値を目標の路側アンテナユニット10に対して送信する(S411)。一方、補正が必要な場合(S409:YES)、ガイドラインに対する自車両の進行方向のずれに基づいて補正値を算出し、補正した法線ベクトルの値を算出し(S410)、補正した法線ベクトルの値を目標の路側アンテナユニット10に対して送信する(S411)。
【0139】
アンテナ制御部13は、車側電源装置3からアンテナロック情報を受信すると、スポット光センサ110によってスポット光の照射位置を計測し、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に固定されているか否かを判定する(S304)。スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に固定されていないと判定した場合(S304:NO)、S303で再びスポット光の照射位置情報を車側電源装置3に通知して、車側アンテナユニット30の方向調節をさせる。一方、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に固定されていると判定した場合(S304:YES)、車側電源装置3から受信した法線ベクトルの値に合わせて路側アンテナユニット10の指向面の角度を調節し、路側アンテナユニット10の方向角を車側アンテナユニット30の方向角に対向する位置に合わせる(S305)。これにより、路側アンテナユニット10の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが平行になり、アンテナ同士が確実に正対する。
【0140】
つぎに、図14に示すとおり、アンテナ制御部13は、路側アンテナユニット10の現在の角度が規定値(=最大角度到達前)よりも大きくなっているか否かを判定する(S306)。アンテナ角度が規定値以下である場合(S306:NO)、S301(図13)の処理へ戻る。一方、アンテナ角度が規定値よりも大きくなっている場合(S306:YES)、指定車両が本路側アンテナユニット10の追従可動範囲から離脱間近であることを通知するための車両通過目前通知を通信データ処理部17へ送信する(S307)。この車両通過目前通知を受信した通信データ処理部17は、指定車両が次に到達する路側アンテナユニット10のアンテナ制御部13に対して通信準備指令を出す。
【0141】
つぎに、アンテナ制御部13は、本路側アンテナユニット10の追従可動範囲から離脱間近であることを車両に対して通知するためのアンテナ通過予告情報を、車側電源装置3へ送信する(S308)。そして、追従制御の結果、路側アンテナユニット10の現在の角度が最大値よりも大きくなっているか否かを判定する(S309)。アンテナ角度が最大値以下である場合(S309:NO)、当該路側アンテナユニット10による追従制御及び電力伝送を継続する。一方、アンテナ角度が最大値よりも大きくなっている場合(S309:YES)、電力伝送完了を出力する(S310)。この時点で、当該路側アンテナユニット10による車両に対する電力伝送を終了する。そして、本路側アンテナユニット10による電力伝送の完了、及び次のアンテナに関する情報を車側電源装置3へ送信する(S311)。
【0142】
そして、アンテナ制御部13は、本路側アンテナユニット10が最後尾ではない場合(S312:NO)、電力伝送処理の主体を次のアンテナに切替える(S313)。これにより、指定車両が次に通過する路側アンテナユニット10のアンテナ制御部13により、本処理シーケンスによる追従制御及び電力伝送が実行される。あるいは、本路側アンテナユニット10が最後尾である場合(S314:NO)、本処理シーケンスの完了を通信データ処理部17に通知する(S414)。この完了通知は、通信データ処理部17からメイン制御部18に通知される。
【0143】
一方、車側電源装置3のメイン制御部38は、目標の路側アンテナユニット10からアンテナ通過予告情報を受信すると、次の目標となる路側アンテナユニット10の位置を探索して、アンテナの方向切替準備をする(S412)。そして、目標の路側アンテナユニット10から電力伝送完了及び次のアンテナに関する情報を受信すると、現在目標としている路側アンテナユニット10が最後尾であるか否かによって処理を分岐する(S413)。現在目標としている路側アンテナユニット10が最後尾でない場合(S413:NO)、次の目標となる路側アンテナユニット10に向けてアンテナの方向切替を行い(S414)、S403(図13)の処理へ戻る。一方、現在目標としている路側アンテナユニット10が最後尾である場合(S413:YES)、電力伝送処理結果(充放電した電力量等)を集計する(S415)。
【0144】
(3)車両検知器(出口用)12−車側電源装置3間の処理シーケンス
つぎに、図15は、路側電源装置1の車両検知器(出口用)12と、車側電源装置3のメイン制御部38との間で行われる処理シーケンスを示すラダーチャートである。この処理シーケンスは、先述の各路側アンテナユニット10−車側電源装置3間の処理シーケンスが終了した後に実行される。
【0145】
図15に示すとおり、路側電源装置1の車両検知器(出口用)12は、通過車両の有無を問合せるためのポーリング信号を常時送信している(S500)。ポーリング信号には、当該路側電源装置1の路側IDが含まれる。
【0146】
車両が車両検知器(出口用)12による通信圏内に入ると、車側電源装置3のメイン制御部38は無線通信部35を通じてポーリング信号を受信する。メイン制御部38は、受信したポーリング信号に対する応答として、自車両の車両ID及び電力伝送結果を示す情報等を含むレスポンス情報を車両検知器(出口用)12へ送信する(S600)。この電力伝送結果には、車両側で充放電した電力量の集計結果を示す情報が含まれる。
【0147】
車両検知器(出口用)12は、車側電源装置3からレスポンス情報を受信すると、そこに含まれる車両IDと、記憶部23に格納されている認証用の車両IDとを照合し、当該車両を認識する(S501)と共に、通信データ処理部17を通じてこのレスポンス情報をメイン制御部18へ送信する。
【0148】
路側電源装置1のメイン制御部18は、通信データ処理部17を通じて車両のレスポンス情報を受信すると、その内容を確認する(S700)。そして、通信データ処理部17を通じて確認結果を示す情報を車両検知器(出口用)12へ送信する(S701)。この確認結果を示す情報には、当該路側電源装置1の路側ID、該当車両の車両ID、電力伝送の良否判定結果、路側電源装置1が当該車両との間で送受電した電力量の集計結果等の情報が含まれる。車両検知器(出口用)12は、通信データ処理部17を通じて受信した確認結果を当該車側電源装置3へ送信する。
【0149】
車側電源装置3のメイン制御部38は、車両検知器(出口用)12から確認結果通知を受信すると、その情報内容を表示部43に表示する(S601)。そして、自車両の車両IDを含む確認結果受領応答を車両検知器(出口用)12へ送信する(S602)。
【0150】
つぎに、路側電源装置1のメイン制御部18は、当該車両に対して実行した電力伝送に係る料金を計算し(S702)、通信データ処理部17を通じてその料金情報を車両検知器(出口用)12へ送信する。車両検知器(出口用)12は、メイン制御部18から受信した料金情報を当該車側電源装置3へ送信する。なお、料金は、車両に対して送受電した電力量に応じて決定される。例えば、車両に送電した場合はその電力量に応じて課金され、車両から受電した場合はその電力量に応じた料金が還元される。
【0151】
車側電源装置3のメイン制御部38は、車両検知器(出口用)12から料金情報を受信すると、その料金内容を表示部43に表示し(S603)、自車両の車両IDを含む料金情報受領応答を車両検知器(出口用)12へ送信する(S604)。そして、今回の電力伝送の集計結果及び料金等の情報を記憶部44に記録する(S605)。その後、当該路側電源装置1との処理シーケンスを完了し、通信を停止する(S606)。
【0152】
一方、車両検知器(出口用)12は、車側電源装置3から料金情報受領応答を受信する(S502:YES)と、通信データ処理部17を通じて応答があった旨をメイン制御部18へ通知する(S503)。この通知を受けたメイン制御部18は、記憶部23に今回の電力伝送の集計結果及び料金等の情報を該当する車両IDに対応付けて記録する(S703)。また、それらの記録情報は、通信ネットワークを通じて遠隔地にある料金収受センタ等に送られる。
【0153】
[路側電源装置が実行する処理の説明]
つぎに、路側電源装置1の各アンテナ制御部13が、電力伝送用走行エリアを走行する指定車両との間で電力伝送を行う際に実行する電力伝送制御処理の手順について、図16のフローチャートに基づき説明する。この処理は、先述の路側アンテナユニット10−車側電源装置3間の処理シーケンス(図13,14)に対応してアンテナ制御部13が電力伝送を行う処理である。
【0154】
アンテナ制御部13は、まず、車両進行方向の1つ手前のアンテナ制御部13から制御情報を受信した場合(S800:YES)、この制御情報を記憶すると共に、その制御情報の内容(例えば、アンテナ角度)から指定車両の接近度合いを判定する(S801)。つぎに、接近度合いの判定結果に基づき指定車両の検知を行う(S802)。一方、車両進行方向の1つ手前のアンテナ制御部13から制御情報を受信しない場合(S800:NO)、指定車両の検知を行う(S802)。なお、指定車両の検知は、例えば路側アンテナユニット10の通信用アンテナによる近距離無線通信の可否に基づいて判定したり、路側アンテナユニット10の車側アンテナ検知センサによる検知結果に基づいて判定する。
【0155】
S802で指定車両を検知していない場合(S802:NO)、S800の処理へ戻る。一方、対処車両を検知した場合(S802:YES)、路車間通信処理回路15による近距離無線通信により、対処車両との間で情報交換を行う(S803)。ここでは、先述の車両検知器(入口用)11−車側電源装置3間の処理シーケンス(図12)において決定した電力伝送条件の確認や、車両からの車速制御情報や現在位置情報の取得を行う。
【0156】
つぎに、S804では、指定車両に対する他車両による追越しや割込みの有無によって処理を分岐する。他車両による追越しや割込みの有無は、例えば、車両検知器(入口用)11からの他車両に関する車両認識情報や通過情報、手前のアンテナ制御部13からの通過情報、自アンテナ制御部13による他車両の検知結果や情報交換等に基づいて推定する。
【0157】
指定車両に対する追越しや割込みがないと判定した場合(S804:YES)に進むS805では、電力伝送処理回路14及びアンテナ駆動制御部16に対する電力伝送準備を行う。ここでは、予め決められた指定車両との電力伝送条件(共鳴周波数、伝送電力)を電力伝送処理回路14に適用すると共に、指定車両の位置情報や速度制御情報に基づいて電力の送信方向やアンテナを車両に追従させる角速度を設定し、アンテナ駆動制御部16に対して適用する。あるいは、手前のアンテナ制御部13からの制御情報を記憶している場合は、その制御情報(アンテナ角度、追従角速度等)の条件を本アンテナのアンテナ駆動制御部16に対して適用する。
【0158】
つぎに、設定した追従角速度で路側アンテナユニット10を回転させて指向面を指定車両に追従させながら、電力伝送用コイルアンテナによる電力伝送を行うと共に、現在のアンテナ角度、追従角速度、指定車両の位置、通信条件等の情報を含む制御情報を、次のアンテナ制御部13へ送信する(S806)。アンテナの回転角度が所定の最大値未満である間(S807:NO)、S806の処理を継続する。そして、アンテナの回転角度が所定の最大値に到達した場合(S807:YES)、電力伝送を停止すると共に次の車両に対する準備(例えば、アンテナ角度のリセットや通信設定)をする(S808)。その後、S800の処理へ戻る。
【0159】
一方、S804において指定車両に対する追越しや割込みがあると判定した場合(S804:NO)に進むS809では、この追越し又は割込みをする車両(以下、次車両)に対応する電力伝送条件の設定変更、及び電力伝送準備が間に合うか否かを判定する。次車両に対する設定変更及び電力伝送準備が間に合うと判定した場合(S809:YES)、この次車両に対応する電力伝送条件に設定変更すると共に、次車両に対する電力伝送準備をする(S810)。準備後、S806の処理へ移行して次車両に対する電力伝送を開始する。
【0160】
一方、次車両に対する設定変更及び電力伝送準備が間に合わないと判定した場合(S809:NO)、この次車両に対する電力伝送を中止すると共に、電力伝送の中止に関する警報を次車両に対して送信し、さらに、次のアンテナ制御部13に対して次車両に関する車両情報(車速制御情報、現在位置情報等)を送信する(S811)。その後、S800の処理へ戻る。
【0161】
[車側電源装置が実行する処理の説明]
つぎに、車両が電力伝送用走行エリアを走行する際に車側電源装置3のメイン制御部38が実行する車両制御処理の手順について、図17のフローチャートに基づき説明する。この処理は、自車両が走行経路上の路側電源装置1に接近した時点から、この路側電源装置1との電力伝送が完了するまでの期間において実行される。
【0162】
メイン制御部38は、まず、現在位置及び走行経路上にある路側電源装置1の設置位置を確認し、電力伝送の準備を開始する(S900)。つぎに、路側電源装置1の車両検知器(入口用)11から受信した電力伝送条件の内容を確認する(S901)。先述のとおり、電力伝送条件には、充放電したい電力量や、要求どおりの電力伝送を達成するのに適した走行速度、適切なアンテナとの接近距離等の推奨条件が含まれている。そこで、S902では、この推奨条件の内容に応じて処理を分岐する。
【0163】
S902の分岐において適度な電力伝送を行う処理を選択した場合(S902:程々に電力伝送したい)、路側電源装置1の高速用ガイドライン500a(図1参照)に沿って自動走行する高速用ガイドライン認識自動走行モードに移行する(S903)。この走行モーでは、車載カメラによる撮像画像からの画像認識等で高速用ガイドライン500aの位置を認識する(S904)。そして、車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上から逸脱している場合(S904:YES)、車載通信ネットワークを介して車両の操舵装置を制御し、自車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上にくるように方向修正する(S905)。
【0164】
同時に、ミリ波レーダや車載カメラ、車車間通信等により電力伝送用走行エリアにおいて自車両の進行方向前方を走行する先行車両を探知する(S906)。そして、先行車両が存在する場合(S906:YES)、車載通信ネットワークを介して車両のアクセルやブレーキを制御し、検知した先行車両との車間距離を適切に保つ車間距離制御を開始する(S907)。
【0165】
つぎに、S908では路側電源装置1との間の電力伝送が完了したか否かを判定し、電力伝送が継続中の場合(S908:NO)、S903の処理へ戻り、電力伝送が完了した場合(S908:YES)、本処理を終了する(S909)。
【0166】
一方、S902の分岐において可能な限り多くの電力伝送を行う処理を選択した場合(S902:できるだけ多く電力伝送したい)、路側電源装置1の低速用ガイドライン500b(図1参照)に沿って自動走行して路側アンテナユニット10との所定の近接距離を維持する低速用ガイドライン認識自動走行モードに移行する(S910)。この走行モーでは、まず、車載通信ネットワークを通じて可倒式ドアミラー及びパワーウィンドウを制御し、可倒式ドアミラーを収納状態にすると共に路側電源装置1に面する側のパワーウィンドウを閉める(S911)。また、車載カメラによる撮像画像からの画像認識等で低速用ガイドライン500bの位置を認識する(S912)。車両の走行位置が低速用ガイドライン500b上から逸脱している場合(S912:YES)、車載通信ネットワークを介して車両の操舵装置を制御し、自車両の走行位置が低速用ガイドライン500b上にくるように方向修正する(S913)。
【0167】
同時に、ミリ波レーダや車載カメラ、車車間通信等により電力伝送用走行エリアにおいて自車両の進行方向前方を走行する先行車両を探知する(S914)。そして、先行車両が存在する場合(S914:YES)、車載通信ネットワークを介して車両のアクセルを制御し、検知した先行車両との車間距離を適切に保つ車間距離制御を開始する(S915)。
【0168】
つぎに、S916では路側電源装置1との間の電力伝送が完了したか否かを判定し、電力伝送が継続中の場合(S916:NO)、S910の処理へ戻り、電力伝送が完了した場合(S916:YES)、本処理を終了する(S917)。
【0169】
一方、S902の分岐において高速走行のまま少量の電力伝送を行う処理を選択した場合(S902:高速走行で少しでもよいから電力伝送したい)、まず、ミリ波レーダや車載カメラ、車車間通信等により高速用ガイドライン500a上を先行する車両を探知する(S918)。そして、高速用ガイドライン500a上に先行車両が存在しない場合(S918:YES)、S919の処理へ移行する一方、先行車両が存在する場合(S918:NO)、本処理を終了する。
【0170】
高速用ガイドライン500a上に先行車両が存在しない場合に進むS919では、路側電源装置1の高速用ガイドライン500aに沿って自動走行する高速用ガイドライン認識自動走行モードに移行する。この走行モーでは、車載カメラによる撮像画像からの画像認識等で高速用ガイドライン500aの位置を認識する(S920)。そして、車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上から逸脱している場合(S920:YES)、車載通信ネットワークを介して車両の操舵装置を制御し、自車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上にくるように方向修正する(S921)。
【0171】
つぎに、S922では路側電源装置1との間の電力伝送が完了したか否かを判定し、電力伝送が継続中の場合(S922:NO)、S918の処理へ戻り、電力伝送が完了した場合(S922:YES)、本処理を終了する(S923)。
【0172】
つぎに、車側電源装置3のメイン制御部38が実行する送受電選択処理の手順について、図18のフローチャートに基づき説明する。この処理は、自車両が走行中における所定のタイミング(所定走行距離ごと、又は所定時間ごと)で実行される。
【0173】
メイン制御部38は、まず、対策要否確認処理を実行する(S1000)。この処理では、現在の蓄電状況と今後の走行計画における電力消費量等から、過充電対策又は過消費対策の要否を設定する。なお、この対策要否確認処理の詳細な内容については後述する。
【0174】
つぎに、S1001では、S1000の対策要否確認処理の結果に応じて処理を分岐する。ここでは、過充電対策又は過消費対策が「要」と設定された場合(S1001:YES)、S1002の処理へ移行し、何れの対策も「不要」と設定された場合(S1001:NO)、S1000の処理へ戻る。
【0175】
過充電対策又は過消費対策が「要」と設定された場合に進むS1002では、必要な対策に応じた対処手段の選択と、対処として必要な送受電量の確認をする。具体的には、必要な送受電量の大きさに応じて、自車両内で自己処理するか、周辺の他車両又は計画経路上の路側電源装置1と共同で処理するかを決定する。対処すべき送受電量が小さい場合、自車両で対処可能であると判定する。また、対処すべき送受電量が大きい場合、自車両周辺で無線電力伝送が可能な他車両、又は計画経路上の路側電源装置1を探索し、他車両又は路側電源装置1との共同による対処の可否を判定する。
【0176】
S1002での処理の結果、自車両で対処可能であると判定した場合、S1003をYESへ進み、自車両内充放電処理にて対処する(S1004)。具体的には、バッテリの充電が必要な場合、車載発電機により発電した電力によりバッテリの充電をする。あるいは、バッテリの放電が必要な場合、車載機器によりバッテリの電力を消費する。
【0177】
一方、S1002での処理の結果、他車両と共同で対処可能であると判定した場合、S1004をYESへ進み、車車間充放電処理にて対処する(S1007)。具体的には、バッテリの充電が必要な場合、共同で対処可能な他車両他車両から車側アンテナユニット30を通じて無線受電する。あるいは、バッテリの放電が必要な場合、共同で対処可能な他車両他車両に対して車側アンテナユニット30を通じて無線送電する。共同で対処可能な他車両との間で電力伝送を行う場合、その車両と隊列を組んで走行しながら行う。なお、車車間での電力伝送は本発明の要点ではないので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0178】
一方、S1002での処理の結果、計画経路上の路側電源装置1と共同で対処可能であると判定した場合、S1008をYESへ進み、路車間充放電処理にて対処する(S1009)。具体的には、バッテリの充電が必要な場合、計画経路上の路側電源装置1から車側アンテナユニット30を通じて無線受電する。あるいは、バッテリの放電が必要な場合、計画経路上の路側電源装置1に対して車側アンテナユニット30を通じて無線送電する。なお、路側電源装置1との電力伝送についての詳細は先述のとおりである。
【0179】
つぎに、S1005では、S1004,S1007,S1009の各処理の結果、必要な対処が完了したか否かを判定する。対処が完了した場合(S1005:YES)、S1000の処理へ戻り、対処が完了していない場合(S1005:NO)、S1003の処理へ戻る。
【0180】
一方、S1002での処理の結果、自車両内での自己対処、あるいは他車両や路側電源装置1との共同による対処の何れの対処も不可能であると判定した場合、S1008をNOへ進み、自車両に対する充放電が可能な他の場所への案内や、自車両との間で無線電力伝送が可能な他車両の探索を行い(S1010)、本処理を終了する。
【0181】
つぎに、車側電源装置3のメイン制御部38が実行する対策要否確認処理の手順について、図19のフローチャートに基づき説明する。この処理は、先述の送受電選択処理(図18)のS1000で実行される処理である。
【0182】
メイン制御部38は、まず、所定の対策要否判定タイミングが到来したか否かを判定する(S1100)。対策要否判定タイミングは、例えば走行距離又は時間で規定される。
対策要否判定タイミングが到来した場合(S1100:YES)、蓄電装置40における現在の蓄電状況、及び今後の走行計画における電力消費量と発電可能な電力量とを確認する(S1101)。
【0183】
ここでいう走行計画とは、図20に示すように、例えば出発地から目的地までの走行経路、走行経路の勾配や標高の変化、渋滞状況、走行経路上の経由地点で予定される荷物や乗員の積み下ろしによる重量変化、走行経路上に設置された路側電源装置1の位置等、走行時のエネルギー収支に関する情報が網羅された情報である。この走行計画は、車両の走行開始前に予め車側電源装置3の記憶部44に登録しておくか、車載ナビゲーション装置(図示なし)において設定された経路案内情報をメイン制御部38が車載通信ネットワークを介して取得する。そして、メイン制御部38は、予め設定された走行計画に基づく車両のエネルギー収支の予測から、電力の消費や発電のスケジュールを算定する。
【0184】
図19のフローチャート説明に戻る。つぎに、S1102では、S1001の処理の結果、走行計画に沿った走行によって許容範囲を超える過充電が行われる可能性があるか否かを判定する。過充電の可能性がある場合(S1102:YES)、過充電対策を「要」に設定すると共に、現在時刻及び位置を記録し(S1103)、本処理を終了する。
【0185】
一方、S1102で過充電の可能性がないと判断した場合(S1102:NO)、つぎに、走行計画に沿った走行によって許容範囲を超える過消費になる可能性があるか否かを判定する(S1104)。過消費の可能性がある場合(S1104:YES)、過消費対策を「要」に設定すると共に、現在時刻及び位置を記録し(S1105)、本処理を終了する。一方、S1104で過消費の可能性がないと判断した場合(S1104:NO)、対策を「不要」に設定し(S1106)、本処理を終了する。
【0186】
[別実施形態]
つぎに、本発明の別実施形態について、図21を参照しながら説明する。先述の実施形態では、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方がアンテナユニットを駆動させてアンテナの指向面を互いに対向させる構成について説明した。ここでは、路側電源装置1側のアンテナを固定とし、車側電源装置3側のアンテナのみを駆動させる事例について説明する。
【0187】
図21(a)は、路側アンテナユニット10a(アンテナ1〜4)を、アンテナの指向面を車両の進行方向に対して平行した状態で配列した実施形態を示す。この事例では、各路側アンテナユニット10aの指向面の方向は固定されており、車側電源装置3がアンテナの指向面を路側アンテナユニット10aの方向に向けて駆動させながら、互いに調整した共鳴周波数による電力伝送を行う。
【0188】
図21(b)は、路側アンテナユニット10b(アンテナ1〜3)を、アンテナの指向面を車両の進行方向に対してそれぞれ個別に傾斜させた状態で配列した実施形態を示す。この事例においても、各路側アンテナユニット10bの指向面の方向は固定されており、車側電源装置3がアンテナの指向面を路側アンテナユニット10bの方向に向けて駆動させながら、互いに調整した共鳴周波数による電力伝送を行う。
【0189】
図21(a),(b)の事例においても、図中のグラフに示すとおり、ある特定ポイントで送電電力が一時的に最大値となるが、他の場所では送電電力は最大値よりも小さくなる。その結果、1回の伝送電力量は、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方でアンテナユニットを駆動させる場合の送電電力量よりも小さくなる。しなしながら、路側電源装置1側において、アンテナを駆動するための機構や車側アンテナユニット30の方向角を検知するための構成を省略できるため、設備に係るコストの面で有利である。
【0190】
あるいは、図21に示す別実施形態の他に、路側電源装置1側のアンテナのみを駆動させ、車側電源装置3側のアンテナを固定とする構成であってもよい。その場合、車側アンテナユニット30の指向面の方向は固定されており、路側電源装置1は、車両の走行位置に合わせて各路側アンテナユニット10の指向面を車側アンテナユニット30の指向面に追従させながら、互いに調整した共鳴周波数による電力伝送を行う。
【0191】
このような構成においても、1回の伝送電力量は、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方でアンテナユニットを駆動させる場合の送電電力量よりも小さくなる。しなしながら、車側電源装置3側において、アンテナを駆動するための機構や路側アンテナユニット10の方向角を検知するための構成を省略できるため、車載設備に係るコストの面で有利である。
【0192】
[効果]
上記実施形態の路車間電力伝送システムによれば、以下のような効果を奏する。
(1)路側電源装置1及び車側電源装置3の双方で、互いに電力伝送用のアンテナユニットの指向面が正対するように方向制御を行うことで、磁気共鳴による電力伝送におけるエネルギー損失を低減し、電力の伝送効率を向上できる。特に、車両が走行しながら電力伝送を行う際、車両の移動に合わせて互いのアンテナユニットの指向面を追尾することができるため、走行しながらでも車載バッテリの充電や放電を効率よく行うことができる。
【0193】
(2)路側電源装置1及び車側電源装置3の双方で、互いに電力伝送用コイルアンテナによる磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数を合致させることができる。これにより、設計仕様に応じて様々な電力伝送の条件を持つ装置間で磁気共鳴を成立させて電力伝送サービスを効率よく利用できる。
【0194】
(3)車側電源装置3は、推奨される電力伝送条件に応じた走行モードを選択し、それに応じた車両の自動制御を行うことができる。例えば、伝送する電力量に応じて推奨される走行位置を示すガイドラインに沿って車両が走行するようにステアリング制御を行うことで、車両と路側アンテナユニット10距離を適切な距離に維持したまま走行することができる。また、電力伝送用走行エリアを走行する先行車両との車間距離を所定範囲に維持するように自車両の速度を調節することで、電力伝送用走行エリアを次々に走行してくる車両同士が安全な車間距離を保つことができる。
【0195】
(4)路側電源装置1は、走行する車両の位置に合わせて複数の路側アンテナユニット10の制御を次々に切替えながら連続して電力伝送を行うことができる。また、複数の車両が連続して電力伝送用走行エリアへ進入してくる場合でも、複数の路側アンテナユニット10を使って順次電力伝送を行うことができる。
【0196】
[実施形態の構成と特許請求の範囲に記載の構成との対応]
上記実施形態の路車間電力伝送システムの各部構成と、特許請求の範囲に記載の構成との対応は次のとおりである。
【0197】
(1)路側電源装置1について
路側アンテナユニット10(電力伝送用コイルアンテナ)が路側コイルアンテナに相当する。アクチュエータ161,162が路側駆動手段に相当する。車両検知器11及び路車間通信処理回路15が、車側通信手段に相当する。アンテナ制御部14及び電力伝送処理回路14が、路側周波数調整手段及び路側送受電制御手段に相当する。路側アンテナユニット10(車側アンテナ検知センサ)が路側位置検出手段に相当する。アンテナ制御部13及びアンテナ駆動制御部16が、路側方向調節手段に相当する。
【0198】
(2)車側電源装置3について
車側アンテナユニット30(電力伝送用コイルアンテナ)が車側コイルアンテナに相当する。アンテナ駆動機構32が車側駆動手段に相当する。無線通信部35が車側通信手段に相当する。電力伝送処理回路33及びメイン制御部38が、車側周波数調整手段及び車側送受電制御手段に相当する。目標アンテナ検知センサ31が車側位置検出手段に相当する。アンテナ駆動制御部36及びメイン制御部38が、車側方向調節手段に相当する。車側アンテナユニット30(スポット光照射部)が光源手段に相当する。メイン制御部38が、走行計画取得手段、送受電要否判断手段及び車両制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0199】
1…路側電源装置、10…路側アンテナユニット、11…車両検知器(入口用)、車両検知器(出口用)、13…アンテナ制御部、14…電力伝送処理回路、15…路車間通信処理回路、16…アンテナ駆動制御部、17…通信データ処理部、18…メイン制御部、19…電力制御部、20…蓄電装置、21…電力変換処理回路、22…電力ルータ、23…記憶部、101…位置検出用マーク、102…センタークロス、103…コイル位置マーク、110…スポット光センサ、111…光センサ、112…表側電極、113…裏側電極、114…電路、115…半導体物質層、116…透明導電膜、120…カメラ、161,162…アクチュエータ、163…回転角センサ、500…ガイドライン。
【0200】
3…車側電源装置、30…車側アンテナユニット、31…目標アンテナ検知センサ(カメラ)、32…アンテナ駆動制御部、34…電力伝送処理回路、35…通信データ処理回路、36…アンテナ駆動制御部、38…メイン制御部、39…電力制御部、40…蓄電装置、41…蓄電状態監視部、42…位置検出部、43…表示部、44…記憶部、45…走行情報入力部、301…位置検出用マーク、302…センタークロス、303…コイル位置マーク、321,322…アクチュエータ、323…回転角センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴現象を利用した非接触の電力伝送により電気自動車と路側電源装置との間で送受電を行う路車間電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及が進むにつれ、従来の内燃エンジン式の自動車とは異なる電気自動車特有の性質に対して不安を覚えるユーザが増えるおそれがある。特に、走行中にバッテリ残量がなくなってしまったり、過充電により電池が破損したりしないかといった、バッテリの充放電に関する不安を持つことが考えられる。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1に記載のような技術が提案されている。特許文献1には、自車両の電力が不足している場合には車両外部から電力の供給を受け、自車両の電力に余裕がある場合には電力を車両外部に供給する技術が開示されている。
【0004】
また、電気自動車の充電に非接触での電力伝送を利用することが盛んに研究されており、とりわけ、磁気共鳴と呼ばれる現象を用いた電力伝送方式が近年注目されている。特許文献2,3には、磁気共鳴を利用した車両用ワイヤレス充電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210843号公報
【特許文献2】特開2010−68632号公報
【特許文献3】特開2005−68657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非接触による電力伝送を行う場合、電力の伝送効率を向上させるためには送受電側双方のアンテナをなるべく近距離で対向させることが肝要である。特に、車両が走行しながら電力を伝送することを想定する場合、車両の移動に合わせてアンテナの向きや位置を高精度に調整する技術が不可欠である。そのような観点において、特許文献1では、電力の伝送効率を向上させるためにアンテナの方向や位置を調整することについて言及されていない。
【0007】
また、特許文献2,3においては、路面に送電用のアンテナを設置し、車体の下部に受電用のアンテナを設置する手法が開示されている。しかしながら、車両が走行しながら電力を伝送することを実現しようとする場合、路面に電力伝送用のアンテナを設置することに対しては以下のような問題がある。
【0008】
走行路面上に電力伝送用のアンテナを設置する場合、その上を走行する様々な車両の荷重に耐え得るようにアンテナを堅牢に作成する必要があり、設置には道路を封鎖しての工事が必要となり、コストや作業性の面で不利である。
【0009】
また、電力の伝送効率を向上するためには、車体下部のアンテナと路面上のアンテナとを高精度で位置合わせする必要があるが、位置合わせには特別な手段が必要である。その点において、特許文献2,3では、アンテナの位置や向きを調整することについて言及されていない。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、車載バッテリの充電や放電を行うための路車間における非接触の電力伝送の効率を向上するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた請求項1に係る発明は、車両に搭載されたバッテリ(二次電池)の充電や放電を行う車載電源装置に関するものである。本発明の車載電源装置は、車側コイルアンテナと、車側駆動手段と、車側通信手段と、車側周波数調整手段と、車側位置検出手段と、車側方向調節手段と、車側送受電制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
車側コイルアンテナは、車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するためのものである。車側駆動手段は、車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更するためのものである。車側通信手段は、車路側方に設置された路側電源装置との間で情報通信を行うためのものである。車側周波数調整手段は、車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する。車側位置検出手段は、路側コイルアンテナの位置を検出するためのものである。車側方向調節手段は、車側位置検出手段により検出した位置に基づき、車側駆動手段を制御して車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する。車側送受電制御手段は、車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている車側コイルアンテナを使って、路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送(送電又は受電)する。
【0013】
本発明の車載電源装置によれば、車路側方に設置された路側コイルアンテナの位置を検出し、自車両に搭載された車側コイルアンテナの送受電面を路側コイルアンテナの方向へ向けることで、磁気共鳴による電力伝送におけるエネルギー損失を低減し、電力の伝送効率を向上できる。特に、車両が走行しながら路側電源装置との間で電力を送受電する際、車両の移動に合わせて車側コイルアンテナの送受電面を路側コイルアンテナの方向へ追従させることができるため、走行しながらでも車載バッテリの充電や放電を効率よく行うことができる。また、車両が路側電源装置の設置された駐車スペースに停止しながら充電等を行う場合、車側コイルアンテナが充電に最適な位置に来るように運転者が車両を正確に停めなくてもよいし、車種による車側コイルアンテナの位置の違い等を考慮する必要もよいため、運転者の負担が軽減する。
【0014】
さらに、路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節することで、電力の伝送効率を向上できる。これにより、路側電源設備による電力伝送サービスを提供するインフラごとに送受電の条件(送受電周波数)が違っていても、それらの路側電源装置との間で磁気共鳴を成立させて電力伝送サービスを確実に利用できる。
【0015】
つぎに、請求項2に記載の車載電源装置は以下の特徴を有する。車側コイルアンテナには、送受電面の中心法線の方向に沿って照準光を照射する光源手段が設けられている。そして、車側方向調節手段は、光源手段からの照準光が当たっている位置と、路側コイルアンテナの送受電面の中心位置との位置関係に基づいて、車側コイルアンテナの送受電面の中心法線軸を路側コイルアンテナの送受電面の中心位置に合わせるように車側コイルアンテナの送受電面の向きを調節する。
【0016】
このように構成することで、車側コイルアンテナを単に路側コイルアンテナの方向に向けるだけでなく、路側コイルアンテナの中心方向に向けて確実に対向させることができ、電力の伝送効率を一層向上できる。
【0017】
つぎに、請求項3に記載の車載電源装置は以下の特徴を有する。自車両の走行計画に関する走行計画情報を取得する走行計画取得手段と、走行計画取得手段により取得した走行計画情報に基づいて自車両のバッテリの蓄電状況を予測し、その予測結果に応じた外部からの受電又は外部への送電の要否を判断する送受電要否判断手段とを更に備える。そして、車側送受電制御手段は、送受電要否判断手段による判断結果に従って、路側電源装置からの受電、又は路側電源装置に対する送電の何れかを選択して実行する。
【0018】
このように構成することで、事前の走行計画(例えば、目的地までの走行距離、走行時間、道路勾配、渋滞状況、積荷の重量変化等、走行時のエネルギー収支に関するもの)に基づくバッテリの蓄電状況の予測結果に応じて、路側電源装置の最適な利用方法を選択できる。例えば、事前の走行計画に基づき、先の経路においてバッテリの蓄電量が不足すると予測した場合には路側電源装置から受電してバッテリを充電し、バッテリの蓄電量に余裕がある又は過剰になると予測した場合には、余分な電力を路側電源装置に対して送電するといった運用が考えられる。
【0019】
ところで、車両が走行しながら路側電源装置との間で電力をやり取りする場合、路側コイルアンテナの設置されたエリアを走行する間、安全かつ効率的に電力伝送をするのに適した走行状態を維持することが肝要である。また、電力伝送に好適な走行状態を維持するにあたっては、なるべく運転者の操作負担を軽減できるようにするのが望ましい。
【0020】
そこで、請求項4に記載の車載電源装置のように、路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、所定の送受電時走行条件に沿うように自車両の状態を制御する車両制御手段を備えるとよい。このように構成することで、運転者の操作負担を低減しつつも路車間の電力伝送に好適な走行状態を維持することが可能になる。
【0021】
例えば、非接触による電力伝送ではコイルアンテナ同士の間隔が長くなる程、時間当たりに伝送される電力が減少する。そのため、電力伝送を効率よく行うという観点では、車側コイルアンテナと路側コイルアンテナとができるだけ接近するように走行するのが望ましい。その反面、車両と路側コイルアンテナとが接近しすぎると接触により車体やコイルアンテナを破損するおそれがある。
【0022】
そこで、請求項5に記載の車載電源装置のように、路側コイルアンテナの設置場所に沿って設けられている送受電時走行範囲上を自車両が走行するように操舵装置の操舵を調節することが考えられる。なお、ここで用いる送受電時走行範囲は、車側コイルアンテナと路側コイルアンテナとが適度に近接し、かつ、車両と路側コイルアンテナとが接触するおそれのない安全距離が維持される走行帯やラインとなっていることが前提となる。このような構成により、運転者の操作負担を低減しつつ、車両と路側コイルアンテナとの距離を路車間の電力伝送に好適な距離に維持することができる。
【0023】
また、請求項6に記載の車載電源装置のように、路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、自車両の前方を先行する他車両との車間距離を所定範囲に維持するように自車両の速度を調節することが考えられる。このようにすることで、路側電源装置との間で電力伝送をするために次々に走行してくる車両同士が安全な車間距離を保つことができる。
【0024】
さらに、請求項7に記載の車載電源装置のように、路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、特定の外装機器を収納状態にすることが考えられる。例えば、車両が路側コイルアンテナに接近して走行する際に、可倒式ドアミラーを収納状態にすることで、ドアミラーを路側設備に接触させるリスクを低減できる。また、車両が路側コイルアンテナに接近して走行する際に、パワーウィンドウを閉めることで乗員の安全を確保できる。
【0025】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項8に係る発明は、車両に搭載された車載電源装置との間で電力伝送を行う路側電源装置に関するものである。本発明の路側電源装置は、路側コイルアンテナと、路側駆動手段と、路側通信手段と、路側周波数調整手段と、路側位置検出手段と、路側方向調節手段と、路側送受電制御手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
路側コイルアンテナは、車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するためのものである。路側駆動手段は、路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更するためのものである。路側通信手段は、車両に搭載された車載電源装置との間で情報通信を行うためのものである。路側周波数調整手段は、路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する。路側位置検出手段は、車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出するためのものである。路側方向調節手段は、路側位置検出手段により検出した位置に基づき、路側駆動手段を制御して路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する。路側送受電制御手段は、路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている路側コイルアンテナを使って、車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送(送電又は受電)する。
【0027】
本発明の路側電源装置によれば、車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出し、路側コイルアンテナの送受電面を車側コイルアンテナの方向へ向けることで、磁気共鳴による電力伝送におけるエネルギー損失を低減し、電力の伝送効率を向上できる。特に、車両が走行しながら路側電源装置との間で電力を送受電する際、車両の移動に合わせて路側コイルアンテナの送受電面を車側コイルアンテナの方向へ追従させることができるため、車両が走行したままでも車載バッテリの充電や放電を効率よく行うことができる。また、車両が路側電源装置の設置された駐車スペースに停止しながら充電等を行う場合、路側コイルアンテナと車側コイルアンテナとの位置関係が充電に最適な状態になるように運転者が車両を正確に停めなくてもよいし、車種による車側コイルアンテナの位置の違い等を考慮する必要もない。
【0028】
さらに、車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節することで、電力の伝送効率を向上できる。これにより、車両ごとに送受電の条件(送受電周波数)が違っていても、それらの車載電源装置との間で磁気共鳴を成立させて電力伝送サービスを確実に提供できる。
【0029】
また、路側コイルアンテナを車路側方に設置することで、通過する車両の荷重に耐える構造を考慮しなくてもよいし、設置工事では車両を通行止めにする必要もなく、路面にコイルアンテナを埋設する構成に対してコストや作業性の面で有利である。
【0030】
つぎに、請求項9に記載の路側電源装置は以下の特徴を有する。すなわち、路側方向調節手段は、車側コイルアンテナの送受信面の方向角に関する情報を取得し、その取得した方向角の情報に基づいて路側コイルアンテナの送受電面を車側コイルアンテナの送受電面に向けて正対させる。
【0031】
このように構成することで、路側コイルアンテナを単に車側コイルアンテナの方向に向けるだけでなく、車側コイルアンテナの方向角に合わせて正対させることができ、電力の伝送効率を一層向上できる。特に、車載電源装置側で車側コイルアンテナの法線を路側コイルアンテナの中心方向に向けて軸合わせする機能を有している場合、車両が走行しながらでも双方のコイルアンテナの送受電面を平行に向けることができ、効率の高い電力伝送を行える。
【0032】
つぎに、請求項10に記載の路側電源装置は以下の特徴を有する。すなわち、車路に沿って配列する複数の路側コイルアンテナと、複数の路側コイルアンテナに対して各個に備えられた複数の路側駆動手段とを備える。また、各路側駆動手段には、路側コイルアンテナの送受電面の方向を車両の走行方向に沿って変えられる追従可動範囲が設定されている。
【0033】
路側方向調節手段は、追従可動範囲内に車側コイルアンテナが入っている路側コイルアンテナを対象に、当該車両の移動に合わせて当該路側コイルアンテナを車側コイルアンテナの方へ向ける追従制御をすると共に、当該車両の移動に伴い路側コイルアンテナの追従可動範囲から車側コイルアンテナの位置が逸脱すると、追従制御の対象を車両の移動方向に隣接する次の路側コイルアンテナに順次交代する。そして、路側送受電制御手段は、追従制御の対象となっている路側コイルアンテナを使って、車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する。
【0034】
このように構成することで、複数の路側コイルアンテナを使って走行する車両の位置に合わせて次々に電力伝送を行うことができる。また、複数の車両が連続して路側電源装置による電力伝送エリアへ進入してくる場合でも、複数の路側コイルアンテナを使って同時に電力伝送を行うことができる。
【0035】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項11に係る発明は、車両に搭載されたバッテリの充電や放電を行う車載電源装置と、車載電源装置との間で電力伝送を行う路側電源装置とからなる路車間電力伝送システムに関するものである。本発明の路車間電力伝送システムによれば、請求項1に記載の車載電源装置及び請求項8に記載の路側電源装置について上述した効果を両得できる。
【0036】
つぎに、請求項12に記載の路車間電力伝送システムによれば、請求項2に記載の車載電源装置及び請求項9に記載の路側電源装置について上述した効果を両得できる。また、請求項13に記載の路車間電力伝送システムによれば、請求項10に記載の路側電源装置について上述した効果と同様の効果を得られる。また、請求項14,15に記載の路車間電力伝送システムによれば、請求項3,4に記載の車載電源装置について上述した効果と同様の効果を得られる。
【0037】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項16,17に係る発明は、車両に搭載されたバッテリの充電や放電を行う車載電源装置と、車載電源装置との間で電力伝送を行う路側電源装置とからなる路車間電力伝送システムに関するものである。
【0038】
請求項16に係る路車間電力伝送システムを構成する車載電源装置は、車側コイルアンテナと、車側通信手段と、車側周波数調整手段と、車側送受電制御手段とを備える。また、路側電源装置は、路側コイルアンテナと、路側駆動手段と、路側通信手段と、路側周波数調整手段と、路側位置検出手段と、路側方向調節手段と、路側送受電制御手段とを備える。すなわち、この路車間電力伝送システムは、路側電源装置側のみ電力伝送用のコイルアンテナを相手側(車両)のコイルアンテナの方向へ向ける機能を有することを特徴とする。
【0039】
一方、請求項17に係る路車間電力伝送システムを構成する車載電源装置は、車側コイルアンテナと、車側駆動手段と、車側通信手段と、車側周波数調整手段と、車側位置検出手段と、車側方向調節手段と、車側送受電制御手段とを備える。また、路側電源装置は、路側コイルアンテナと、路側通信手段と、路側周波数調整手段と、路側送受電制御手段とを備える。すなわち、この路車間電力伝送システムは、車載電源装置側のみ電力伝送用のコイルアンテナを相手側(路側)のコイルアンテナの方向へ向ける機能を有することを特徴とする。
【0040】
この点について、路側及び車側の双方のコイルアンテナをより正確に正対させるという観点においては、路側及び車側双方でコイルアンテナの向きを調節できる構成の方が有利である。その反面、より簡易な構成で比較的高い伝送効率を実現するというコストパフォーマンスの面では、路側電源装置側又は路側電源装置のどちらか一方のみでコイルアンテナの向きを調節する構成の方が有利である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】路車間電力伝送システムの概要を示す説明図である。
【図2】路側電源装置の設置例を示す説明図である。
【図3】路側電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】路側アンテナユニットの駆動機構及び外観を示す説明図である。
【図5】光スポットセンサの具体例を示す説明図である。
【図6】路側アンテナユニットの設置例(2段)を示す説明図である。
【図7】車側電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】車両電源装置の駆動機構を示す説明図である。
【図9】路側・車側アンテナユニットの方向制御の手順を示す説明図である。
【図10】アンテナユニットの方向を調整する方法を示す説明図である。
【図11】アンテナユニットの方向を調整する方法を示す説明図である。
【図12】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図13】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図14】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図15】路車間電力伝送処理の手順を示すラダーチャートである。
【図16】路側電源装置による電力伝送制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】車側電源装置による車両制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】車側電源装置による送受電選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】車側電源装置による対策要否確認処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】車両の走行計画の一例を示す説明図である。
【図21】路車間電力伝送システムの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[路車間電力伝送システムの概要]
実施形態の路車間電力伝送システムは、車両が通行できる車路等に沿って設置される路側電源装置1と、車両に搭載される車側電源装置3とからなり、路側電源装置1と車側電源装置3との間で磁気共鳴現象を利用した非接触による電力伝送を行う。
【0043】
図1(a)〜(c)の各図に示すように、車路における車両進行方向に沿って3基の路側アンテナユニット10a,10b,10c(車両進行方向の順にアンテナ1,アンテナ2,アンテナ3とも表記する)が順に配列している。なお、以下の説明においては、個々の路側アンテナユニット10a〜10cを特に区別しない場合、単に路側アンテナユニット10と表記する。また、本実施形態では、3基の路側アンテナユニット10が設置された事例を挙げているが、これより多い(又は少ない)数の路側アンテナユニット10が設置されていてもよい。
【0044】
各路側アンテナユニット10は、磁気共鳴による電力伝送(送電及び受電)用のコイルアンテナや、情報通信用アンテナ、車側アンテナ検知用のセンサ類が一体化されたものであり、電力を送受電するための送受電面と通信を送受信するための通信面とが一つの面に構成された指向面が車路側に向くように設置されている。さらに、各路側アンテナユニット10は、指向面の向きを上下左右方向に変更可能に構成されており、補足対象の車両のアンテナの位置に向けて指向面の方向を変更すると共に、この車両の移動に合わせてこれを追尾するように制御される。
【0045】
一方、車両に搭載される車側電源装置3は、車体外面に設置される車側アンテナユニット30を備える。車側アンテナユニット30は、車載バッテリを充電又は放電するための外部との電力伝送用のコイルアンテナや、情報通信用アンテナ、路側アンテナ検知用のセンサ類が一体化されたものであり、電力伝送及び通信を行う指向面が車体の周囲方向に向くように設置されている。さらに、車側アンテナユニット30は、指向面の向きを変更可能に構成されており、補足対象の路側アンテナユニット10の位置に向けて指向面の方向を変更すると共に、走行しながら路側アンテナユニット10を捕捉し続けるように制御される。
【0046】
路側電源装置1近傍の車路に設けられた電力伝送用走行エリアの路面には、路側電源装置1との電力伝送を行う車両が走行する位置を表示するガイドラインが引かれている。ここでは、車両が比較的早い速度で走行しながら短時間の電力伝送を行う際の走行位置を示すガイドライン(高速用)500aと、比較的遅い速度で走行しながら十分な電力伝送を行う際の走行位置を示すガイドライン(低速用)500bとが設けられた事例を想定している。これにより、路側電源装置1との間で電力伝送を行おうとする車両が、目的に応じたガイドラインに沿って走行することで、電力伝送に適した位置(アンテナ同士の距離)を維持できるようになっている。
【0047】
今、図1(a)に示すように、車側電源装置3を搭載した車両がガイドライン(高速用)500aに沿って路側電源装置1による電力伝送用走行エリアに進入し、最初の路側アンテナユニット10a(アンテナ1)の位置にまで到達した状況を想定する。このとき、車側電源装置3では、車側アンテナユニット30の捕捉範囲内に路側のアンテナ1が入ると、車側アンテナユニット30の指向面における中心法線軸(矢印方向)を路側のアンテナ1の指向面の中央付近に向けるように方向制御が行われる。
【0048】
一方、路側電源装置1では、車両に最も近いアンテナ1の捕捉範囲内に車側アンテナユニット30が入ると、アンテナ1の指向面の中心法線軸(矢印方向)を車側アンテナユニット30の方向へ向けてアンテナ1の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが正対するように方向制御が行われる。
【0049】
路側のアンテナ1と車側アンテナユニット30とが互いに対向した状態において、双方の電力伝送用コイルアンテナを介して、磁気共鳴の成立条件である共鳴周波数の交流電力による非接触の電力伝送を行うことで、電力の伝送効率を向上できる。
【0050】
つぎに、図1(a)に示す状態から車両が進行方向に沿ってやや進んだ状況を図1(b)に示す。車側電源装置3では、車両の進行に合わせて車側アンテナユニット30の指向面を徐々に後方に向けることで、指向面を路側のアンテナ1の指向面の中央付近に向けた状態を維持するように方向制御が行われる。
【0051】
一方、路側電源装置1では、アンテナ1の可動範囲内で捕捉できる位置に車側アンテナユニット30が存在する間、アンテナ1の指向面を徐々に前方に向けて車両を追尾することで、アンテナ1の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが正対する状態を維持するように方向制御が行われる。
【0052】
つぎに、図1(b)に示す状態から車両が進行方向に沿って更に進むことで、車両が次の路側アンテナユニット10b(アンテナ2)の位置に到達した状況を図1(c)に示す。このとき、路側電源装置1はアンテナ1による車両の追尾を終了して、アンテナ2による車両の追尾を開始する。アンテナ2の捕捉範囲内に車側アンテナユニット30が入ると、アンテナ2の指向面の中心法線軸(矢印方向)を車側アンテナユニット30の方向へ向けると共に、アンテナ2の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが正対するように方向制御が行われる。
【0053】
一方、路側電源装置1による追尾がアンテナ1からアンテナ2に切替わると、車側電源装置は3、車側アンテナユニット30の指向面における中心法線軸(矢印方向)を路側のアンテナ2の指向面の中央付近に向けるように方向を切替える。
【0054】
路側のアンテナ2と車側アンテナユニット30とが互いに対向した状態において、双方の電力伝送用コイルアンテナを介して、磁気共鳴の成立条件である共鳴周波数の交流電力による非接触の電力伝送を行う。
【0055】
その後、車両の進行に合わせて路側のアンテナ2と車側アンテナユニット30の双方が互いの指向面が正対するように方向制御を行う。そして、車両が次の路側アンテナユニット10c(アンテナ3)の位置に到達すると、路側電源装置1はアンテナ2による車両の追尾を終了して、アンテナ3による車両の追尾を開始し、車側電源装置3は、車側アンテナユニット30の指向面を路側のアンテナ2の指向面に向けるように方向を切替える。
【0056】
図1(d)は、上述のような一連の動作によって路側電源装置1と車側電源装置3との間で伝送される電力の時間推移を示すグラフである。この図に示すとおり、路側アンテナユニット10及び車側アンテナユニット双方を車両の走行位置に合わせて方向制御することで、個々の路側アンテナユニット10が最大電力で伝送できる期間を延ばすことができる。また、車両の走行位置に応じて、複数の路側アンテナユニット10を順次切替えて電力伝送を行うことができ、高効率の電力伝送が実現する。
【0057】
つぎに、路側電源装置1のバリエーションについて、図2を参照しながら説明する。
図2(a)は、走行レーン型の路側電源装置1の設置例を模式的に示す説明図である。この事例では、路側電源装置1は車路の側方に設置されており、複数の路側アンテナユニット10が走行レーンに沿って一列に配列している。この走行レーン型の路側電源装置1は、車両が走行しながら電力伝送を行うことを目的として設置される設備であり、車側電源装置3を搭載した車両が路側アンテナユニット10群の脇を通過する際に、路側アンテナユニット10と車両側面に設置された車側アンテナユニット30との間で電力伝送が行われる。
【0058】
図2(b)は、スポット型の路側電源装置1の設置例を模式的に示す説明図である。この事例では、路側電源装置1は駐車スペースの脇に設置されており、複数の路側アンテナユニット10が複数方向に向けて支柱に取付けられている。このスポット型の路側電源装置1は、駐車中の車両を対象に電力伝送を行うことを目的として設置される設備である。車側電源装置3を搭載した車両が柱状の路側アンテナユニット10群の周囲に駐車している間、路側アンテナユニット10と車両の前後左右に設置された車側アンテナユニット30の何れかとの間で電力伝送が行われる。
【0059】
また、路側アンテナユニット10は支柱の上下方向に配列している。これにより、車側アンテナユニット30の取付け位置の高い大型車両や、車側アンテナユニット30の取付け位置の低い小型車両等、各車両の車高に応じた高さの車側アンテナユニット30を用いて電力伝送を行うことができるようになっている。
【0060】
[路側電源装置の構成の説明]
つぎに、路側電源装置1の詳細な構成について図3を参照しながら説明する。なお、ここでは、走行する車両を対象に電力伝送を行う走行レーン型の路側電源装置1について説明する。
【0061】
路側電源装置1による電力伝送が行われる電力伝送用走行エリアには、電力伝送を行う車両が走行すべき位置を示すガイドライン500が引かれている。この電力伝送用走行エリアに沿って複数の路側アンテナユニット10が車路に向けて配列している。なお、本実施形態では、3基の路側アンテナユニット10が設置されている事例を想定している。説明の便宜上、個々の路側アンテナユニット10を電力伝送用走行エリアの上流側から順にアンテナ1,アンテナ2,アンテナ3と称する場合もある。
【0062】
アンテナ1の更に上流側の電力伝送用走行エリアの入口には、進入してくる車両を検知して情報通信を行う車両検知器(入口用)11が設置されている。また、アンテナ3の更に下流側の電力伝送用走行エリアの出口には、退出する車両を検知して情報通信を行う車両検知器(出口用)12が設置されている。
【0063】
路側アンテナユニット10は、磁気共鳴による非接触電力伝送を行う電力伝送用コイルアンテナや、電力伝送対象の車両に搭載された車側電源装置3との間で情報通信を行うための通信用アンテナ、車載アンテナの位置や指向方向を検知する車側アンテナ検知センサを一つの指向面に一体化した装置である。路側アンテナユニット10は、車両の進行方向に対して上下及び左右方向に所定範囲内で指向面を回動可能に構成されている。
【0064】
個々の路側アンテナユニット10には、各路側アンテナユニット10の作動を制御するための構成として、アンテナ制御部13、電力伝送処理回路14、路車間通信処理回路15、アンテナ駆動制御部16がそれぞれ付随する。アンテナ制御部13は、制御対象の路側アンテナユニット10の作動を統括制御する情報処理装置である。電力伝送処理回路14は、路側アンテナユニット10内の電力伝送用コイルアンテナを通じて車両との間で電力を送電又は受電する電力装置である。路車間通信処理回路15は、路側アンテナユニット10内の通信用アンテナを通じて車側電源装置3との間で情報通信を行う通信装置である。アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10内の車側アンテナ検知センサによる検知結果や、路車間通信処理回路15からの入力情報、アンテナ制御部13からの制御信号等に応じて、路側アンテナユニット10の指向面の向きを上下左右方向に調節する。
【0065】
通信データ処理部17は、車両検知器(入口用)11、車両検知器(出口用)12及び各アンテナ制御部13と、メイン制御部18との間のデータ通信を中継する通信処理回路である。メイン制御部18は、路側電源装置1が提供する電力伝送サービスに関する諸処理を統括制御する情報処理装置である。また、メイン制御部18は、通信ネットワークを介して別の場所に設置された他の路側電源装置1との間で情報通信可能に構成されている。
【0066】
電力制御部19は、蓄電装置20の状態や電力ルータ22の情報に基づいて車両に対して送受電可能な電力量を把握し、各種制御をするための情報処理装置である。蓄電装置20は、路側アンテナユニット10を介して外部へ送電する電力を蓄えるための電力装置であり、例えば二次電池や、コンデンサ、超電導ループコイル等により構成される。
【0067】
電力変換処理回路21は、電力制御部19からの制御に基づいて電力変換処理を行う電力装置である。この電力変換処理回路21は、各路側アンテナユニット10を介して車両に送電をする際、蓄電装置20及び外部の電源ラインから供給される電力を所定の電圧・電流に電力変換し、各アンテナの電力伝送処理回路14に供給する。また、各路側アンテナユニット10を介して車両から受電をした場合、受電した電力を蓄電装置20に対する充電に適した電圧・電流に電力変換し、蓄電装置20を充電したり、外部の電源ラインに供給するための既定の電圧・電流に電力変換し、電力ルータ22へ供給する。
【0068】
電力ルータ22は、路側電源装置1と、他の路側電源装置や商用電力系統につながる電源ラインとの接続点に設けられる電源装置である。この電力ルータ22は、電力制御部19からの制御に基づいて、外部の電源ラインからの電力の取得と外部の電源ラインに対する電力供給とを適宜切替えて行う。この電源ラインを介して他の路側電源装置1と接続することで、他の路側電源装置1と連携して電力を融通しあうことができる。例えば、ネットワーク経由で外部から電力供給の依頼がある場合には、電力ルータ22のスイッチングを行い、要求先へ電力を送ることもできる。さらに、電力ルータ22のスイッチング部や電源ラインを高温超電導体で形成することで電力損失をなくすことができる。また、蓄電装置20の電力貯蔵量が十分に大きいものであれば、他の路側電源装置1に蓄電電力を供給することも可能になる。
【0069】
記憶部23は、路側電源装置1が動作するための制御プログラムや、電力伝送サービスの提供対象となる車両を認証するための識別情報(車両ID)、車両別の電力伝送量等の諸データを記憶するための記憶装置である。
【0070】
路側電源装置1における各部の動作の概要は次のとおりである。
車両検知器(入口用)11は、DSRC(Dedicated Short Range Communications)等の狭域通信により、電力伝送用走行エリアに進入してくる車両に対する問いかけ信号を限定された範囲内に送信する。そして、この問いかけ信号に応答した車側電源装置3と情報通信を行い、電力伝送用走行エリアに入ってきた車両の(又はユーザ)のIDと車両からのリクエスト(充電あるいは放電)、伝送する電力量などの情報を取得し、各アンテナのアンテナ制御部13及び通信データ処理部17へ送信する。
【0071】
アンテナ制御部13は、車両検知器(入口用)11により受信した車両からのリクエストに応じた電力伝送処理回路14の設定、及び、路車間通信処理回路15と車両との路車間通信に必要な設定を行う。ここで、電力伝送処理回路14に対して行う設定としては、車両への充電を行う(すなわち送電)のか、あるいは車両からの放電を受ける(すなわち受電)のか、電力伝送を行う際の電力の大きさ、路車間の電力伝送用コイルアンテナで磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数や回路インピーダンス、等の諸条件である。
【0072】
路車間通信処理回路15は、アンテナ制御部13によって設定された通信条件に基づき、路側アンテナユニット10の通信用アンテナを介して車側電源装置3との間で情報通信を行う。この情報通信では、主に、路側アンテナユニット10と車載アンテナとを互いに正対させる方向制御に必要な情報の送受信が行われる。
【0073】
電力伝送処理回路14は、アンテナ制御部13により設定された磁気共鳴の共鳴周波数に合わせて電力伝送用コイルアンテナ回路のインピーダンスを調節し、この電力伝送用コイルアンテナを通じて車両との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する。車両に対して送電を行う場合、電力変換処理回路21から供給される電力を共鳴周波数の交流電力に変換し、電力伝送用コイルアンテナから出力する。一方、車両から受電する場合、電力伝送用コイルアンテナによって車両側から出力された交流電力を受信し、電力変換処理回路21へ供給する。
【0074】
通信データ処理部17は、車両から受信した電力伝送の諸条件に関するリクエスト項目をメイン制御部18へ送る。そして、メイン制御部18は、どのような態様で電力伝送に対応できるかを診断した診断データの作成を電力制御部19に対して依頼する。ここで、電力制御部19は、蓄電装置20の状態や電力ルータ22の情報に基づいて車両に対して送受電可能な電力量を把握し、診断データとして出力する。
【0075】
出力された診断データは、メイン制御部18から通信データ処理部17を介して車両検知器(入口用)11へ伝送され、車両検知器(入口用)11から車両へ送信される。診断データを受信した車両では、この診断データに基づいて、どの程度の充電又は放電が可能かといった情報が表示装置に表示される。車両の乗員(ユーザ)は、その診断データを見ることによって、この路側電源装置1を利用するか否かを選択できる。
【0076】
路側アンテナユニット10には、アンテナの指向面の向きを変えるための駆動機構が設けられている。この駆動機構は、図4(a)に示すとおり、車載アンテナの取付高さに応じて路側アンテナユニット10の向きを上下(ピッチ)方向に動かすためのアクチュエータ161や、車両の進行方向に応じて路側アンテナユニット10の向きを左右(ヨー)方向に動かすためのアクチュエータ162、これらの動力を伝達するためのギア類、ピッチ方向及びヨー方向の回転角を計測する回転角センサ(ロータリエンコーダ)163等により構成されている。アンテナ駆動制御部16は、アンテナの角度が指定されると、回転角センサ163の計測結果に基づき、アクチュエータ161,162を駆動し、迅速に指定された角度に路側アンテナユニット10をセットする。
【0077】
アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10の駆動部を制御し、車載アンテナの位置や方向に合わせてアンテナの指向面の向きを変化させる方向制御を行う。まず、アンテナ駆動制御部16は、車両の進入が検知されると、その対象車両を迎える方向に路側アンテナユニット10の指向面を最大回転角まで回転させ、対象車両を待ち受ける。そして、路側アンテナユニット10の車側アンテナ検知センサによって車載アンテナが検知されると、アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10と車載アンテナとを正対させる。その後、路側アンテナユニット10と車載アンテナとを対面させた状態を維持するように、アンテナの指向面の向きを車両の移動に合わせて変化させる。
【0078】
また、車載アンテナに対する対向と追従を精度よく行うために、フィードバック制御や推測制御等の手法を用いてもよい。フィードバック制御としては、磁界センシングを用いる手法が挙げられる。この場合、アンテナの指向面に複数配置した磁界センサによりアンテナ表面の磁界分布を計測し、アンテナの中央に最も強い磁界が位置するようにアンテナの指向面を向ける制御をすることが考えられる。また、推測制御の手法としては、路車間通信により取得した車速や進行方向等の情報に基づいて、車両の未来位置を推測し、その推測した位置に車両が到達するタイミングに合わせてアンテナの指向面を向ける制御をすることが考えられる。
【0079】
車載アンテナの位置及び方向を検知するためのセンサとして、路側アンテナユニット10の指向面はスポット光センサ110が設けられている(図4(a)参照)。このスポット光センサ110は、車載アンテナ側からアンテナの指向方向を示す照準光として照射される指向性の高いスポット光(あるいは電磁波)をアンテナの指向面上で受光した位置を検知するためのセンサである。その構造は、多数のセンサがアンテナの指向面上に縦横の格子状に配置されたセンサ集合体や、薄い面状の半導体光センサにより、スポット光が照射された座標を検知するものである。
【0080】
なお、路側アンテナユニット10の指向面には、図4(b)に示すとおり、アンテナの位置を車両側で容易に認識できるようにするための検出パターン(位置検出用マーク101、センタークロス102、コイル位置マーク103)がマーキングされている。これらのマークは、夜間でもカメラで撮影可能なように夜間は発光するようにしてもよい。あるいは、外部照明によりアンテナの指向面を照らすようにしてもよい。車両側においてこれらの検出パターンを車載カメラ等により認識することで、路側アンテナユニット10の概略位置や角度が特定され、路側アンテナユニット10の中心方向に向けて指向性のスポット光が照準光として照射される。
【0081】
スポット光センサ110により検知された照射位置(指向面上の座標)は、路車間通信処理回路15を通じて車側電源装置3に対して通知される。車側電源装置3では、路側電源装置1から通知されたスポット光の照射位置に基づき、路側アンテナユニット10の中心にスポット光が位置するように車載アンテナの指向面の角度が調節される。
【0082】
そして、車両側のアンテナ角度の調整の結果、スポット光が路側アンテナユニット10の中央に照射されるようになると、車載アンテナの指向面の法線ベクトルがどちらを向いているかが車両側から通知される。路側電源装置1のアンテナ制御部13は、車載アンテナの法線ベクトル情報を受信すると、その法線ベクトル情報に基づき、アンテナ駆動制御部16を通じて路側アンテナユニット10の指向面が車載アンテナの指向面と平行になるように角度調節を行う。
【0083】
つぎに、路側アンテナユニット10に設けられるスポット光センサ110の構成事例について、図5を参照しながら説明する。
図5(a)は、二次元グリッド配置光センサで構成されたスポット光センサ110の構成を示す図である。この二次元グリッド配置光センサは、点状の光センサ111を指向面上に設定されたXY座標に対応させて格子状に配置したものである。これにより、スポット光を検知した光センサ111に割当てられたXY座標を取得することで、スポット光の照射位置を特定できる。なお、光センサ111の配置については、電力伝送用コイルアンテナによる電力伝送のための磁束を減衰させないように、配置パターンを磁場解析などで調節するとよい。
【0084】
図5(b)は、面状の半導体二次元光センサで構成されたスポット光センサ110の構成を示す図である。この半導体二次元光センサは、光を受けることでその部分の導電性が変化する半導体物質の層115を、SnO2やITO(Indium Titanium Oxide)等の非磁性の透明導電膜116で挟み込んだ基板の両面に表側電極112、裏側電極113及び電路114を設けたものである。表側電極112及び裏側電極113は、それぞれ指向面上に設定されたXY座標に対応させて配置されており、それぞれの電極から延びる電路114が指向面上に格子状に配置されている。
【0085】
この半導体二次元光センサのスポット光が当たっている位置において半導体物質層115の導電性が変化すると、その位置に対応する表側電極112と裏側電極113との間の抵抗値(印加電圧)が変化する。この変化が生じた電極に割当てられた位置座標によって、スポット光が当たっている位置を特定できるようになっている。
【0086】
図5(b)に示す半導体二次元光センサの構造では、光を受けることでその部分が非電導性から電導性に変化する半導体物質を利用しており、スポット光の照射を受けることでその位置で表側と裏側が導通する。高速で各表側電極112と裏側電極113とを走査して導通を検知することで、スポット光の照射位置の座標を計測できる。
【0087】
つぎに、路側アンテナユニット10の設置方法の変形例について、図6を参照しながら説明する。
図6(a)は、上下2段式の路側アンテナユニット及びその駆動機構の概略構成を示す説明図である。この事例では、2基の路側アンテナユニット10が上下方向に連ねて設置されている。2基の路側アンテナユニット10のうち、上段側が車高の高い大型車両向けのアンテナであり、下段側が車高の低い小型・普通車向けのアンテナユニットである。
【0088】
上下各路側アンテナユニット10には、アンテナの指向面方向を変化させるための駆動機構(アクチュエータ161,162、回転角センサ163)がそれぞれ設けられており、それぞれのアンテナの方向をアンテナ駆動制御部16が個別に制御できるようになっている。
【0089】
さらに、上下の各路側アンテナユニット10には、車載アンテナの位置及び方向を検知するためのセンサとして、カメラ120がそれぞれ設けられている。これにより、上下何れかの路側アンテナユニット10のうち、カメラ120によって検知した車載アンテナの高さに近い方のアンテナを用いて電力伝送を行うことができるようになっている。また、このカメラ120を用いて、車載アンテナ側にマーキングされた検出パターンを撮像し、その形状の変化を解析することで、路車間のアンテナの対向度合いを判定することもできる。
【0090】
図6(b)に示すとおり、上下各路側アンテナユニット10の指向面には、アンテナの位置を車両側で容易に認識できるようにするための検出パターンがそれぞれマーキングされている。車両側においてこれらの検出パターンを車載カメラ等により認識することで、上下各路側アンテナユニット10の概略位置を特定できるようになっている。
【0091】
[車側電源装置の構成の説明]
つぎに、車側電源装置3の詳細な構成について図7を参照しながら説明する。図7(a)は、車側電源装置3の概略構成を示すブロック図であり、図7(b)は、車側アンテナユニット30の正面外観を示す図である。
【0092】
車側アンテナユニット30は、磁気共鳴による非接触電力伝送を行う電力伝送用コイルアンテナや、路側電源装置1との間の近距離無線通信や、外部の情報センタとの間の遠距離無線通信、他車両との車車間通信を行うための通信用アンテナ、電力伝送用コイルアンテナの中央に設けられ、アンテナの指向方向(電力伝送用コイルアンテナの中央法線方向)を指し示すスポット光を照射するスポット光照射部を一つの指向面に一体化した装置である。この車側アンテナユニット30は、車体の周囲方向に向けて(ここでは、車体の側面を想定している)設置され、取付面に対して上下及び左右方向に所定範囲内で指向面の向きを変更可能に構成されている。なお、図7(a)に示す事例では、1基の車側アンテナユニット30が設置されている事例を想定しているが、複数の車側アンテナユニット30が車体の側面、前面、後面、上面の各面にそれぞれ設置されていてもよい。
【0093】
目標アンテナ検知センサ31は車載カメラ等からなり、その撮像画像から電力伝送の目標となる路側アンテナの位置を検出するためのものである。アンテナ駆動機構32は、車側アンテナユニット30の指向面の向きを上下左右方向に変更するための機構である。このアンテナ駆動機構32は、図8に示すとおり、路側アンテナの取付高さに応じて車側アンテナユニット30の向きを上下(ピッチ)方向に動かすためのアクチュエータ321や、車側アンテナユニット30の向きを進行方向に沿って左右(ヨー)方向に動かすためのアクチュエータ322、これらの動力を伝達するためのギア類、ピッチ方向及びヨー方向の回転角を計測する回転角センサ(ロータリエンコーダ)323等により構成されている。アンテナ駆動制御部36は、アンテナの角度が指定されると、回転角センサ323の計測結果に基づき、アクチュエータ321,322を駆動し、迅速に指定された角度に車側アンテナユニット30をセットする。
【0094】
電力伝送処理回路33は、車側アンテナユニット30内の電力伝送用コイルアンテナを通じて路側電源装置1との間で電力を送電又は受電する電力装置である。この電力伝送処理回路33は、路車間の電力伝送用コイルアンテナで磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、電力伝送用コイルアンテナの回路のインピーダンスを調節し、送受電を行う。電力変換処理回路34は、電力伝送用コイルアンテナを介して外部から受電した電力を蓄電装置40の充電に適した電圧(大きさ、波形)に変更する。また、車側アンテナユニット30を介して外部に送電をする際、蓄電装置40から供給される電力を所定の電圧、電流、周波数に変換し、電力伝送処理回路33に供給する。無線による電力伝送では、いくつかの伝送周波数を使用することが想定されており、それぞれの周波数に応じた電力変換処理を行う。また、蓄電装置40の二次電池をセル単位で充電及び放電制御できるようにすることで、各セル間のコンディションを均衡化し、蓄電装置40が安定して機能できるようにする。
【0095】
無線通信部35は、車側アンテナユニット30内の通信用アンテナを通じて路側電源装置1や、外部の情報通信センタ、他車両との間で情報通信を行う通信装置である。アンテナ駆動制御部36は、目標アンテナ検知センサ31による検知結果や、無線通信部35からの入力情報、メイン制御部38からの制御信号等に応じてアンテナ駆動機構32を駆動し、車側アンテナユニット30の指向面の向きを上下左右方向に調節する。
【0096】
メイン制御部38は、車側電源装置3が行う充放電管理に関する諸処理を統括制御する情報処理装置である。また、メイン制御部38は、車載通信ネットワークを介して各種車載機器46との間で情報通信可能に構成されており、これにより、自動走行、周辺車両との車間制御や隊列走行、可倒式ドアミラーやパワーウィンドウ等の機器操作、ナビゲーション情報の取得等といった、各種走行制御や機器制御を行う。
【0097】
電力制御部39は、電力変換処理回路34の動作を制御するための情報処理装置である。この電力制御部39は、蓄電状態監視部41からの情報に基づいて蓄電状態を判定し、電力変換処理回路34における電力変換処理のオン/オフ制御を行うと共に、電力変換処理回路34が最適に動作するように電力変換処理のパラメータを設定する。蓄電装置40は、車両の走行や車載機器の動作に使用される電力を蓄えるための二次電池からなる電力装置である。蓄電状態監視部41は、蓄電装置40の蓄電状態(蓄電量、異常の有無)を監視するための装置であり、二次電池の各セルの状態を監視し、各セルの電圧バランスや温度に異常がある場合には電力制御部39に情報を提供する。
【0098】
位置検出部42は、自車両の現在地を検出するための装置である。本実施形態では、GPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Navigation Satellite System)等を利用して現在地を測位する衛星測位機能や、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等を用いて走行方向を推測する推測航法機能、カメラを用いて路面上のラインや周辺の構造物、標識等を撮像し、現在位置を高精度で計測する機能を有するものを想定している。
【0099】
表示部43は、ユーザに対して各種情報を提示するモニタ等の表示装置である。この表示部43には、利用可能な路側電源装置1の位置、路側電源装置1との電力伝送状況、二次電池の蓄電状況、航続距離、その他ユーザに有用な情報が表示される。記憶部44は、車側電源装置3が動作するための制御プログラムや、電気料金の収受に関連する諸データを記憶するための記憶装置である。走行情報入力部45は、車速センサや加速度センサ、操舵角センサ等による検知情報を取得し、メイン制御部38へ入力するための入力装置である。
【0100】
なお、車側アンテナユニット30の指向面には、図7(b)に示すとおり、アンテナの位置を外部から容易に画像認識できるようにするための検出パターン(位置検出用マーク301、センタークロス302、コイル位置マーク303)がマーキングされている。これらのマーキングは、人の目には見えないが赤外線カメラ等で検出できる塗料や表面処理を施し、車両の外観を損なわないようにすることもできる。路側電源装置1側においてこれらの検出パターンをカメラ等により認識することで、車側アンテナユニット30の概略位置や角度が特定される。
【0101】
車側電源装置3の動作の概要は次のとおりである。
メイン制御部38は、無線通信部35を通じて外部の情報センタから路側電源装置1の位置情報を取得する。あるいは、図示しない車載ナビゲーション装置等の情報端末に記憶されている地図データから路側電源装置1の位置情報を取得してもよい。利用可能な路側電源装置1の位置情報が見つかると、メイン制御部38は、その路側電源装置1の位置を対象に周知のナビゲーション装置と同様の経路案内を実施する。例えば、自車両が目的の路側電源装置1まで100m手前の地点まで到達したと判定した場合、「前方100mに路側電源装置がある」旨のメッセージをユーザに対して報知する。また、自車両が目的の路側電源装置1に接近すると、電力伝送及びその料金収受のための処理を開始する。
【0102】
メイン制御部38は、位置検出部42により自車両の現在地を測定し、路側電源装置1の電力伝送用走行エリアに接近すると、目標アンテナ検知センサ31により路側アンテナの探索を開始する。路側アンテナユニット10には位置検出のためのマーキング(図4(b)参照)が施されているため、画像認識により容易に路側アンテナを発見できる。また、撮像した位置検出用マーク101の形状を解析し、路側アンテナが車路に対してどのような角度に向いているかを判定する。
【0103】
一方、車両が電力伝送用走行エリアの入口に設置されている車両検知器(入口用)11の通信圏内に入ると、無線通信部35を通じて車両検知器(入口用)11との狭域通信(DSRC)による路車間通信が開始される。なお、霧等で視界が悪く目標アンテナ検知センサ31により路側アンテナが未検出であっても、車両検知器(入口用)11との路車間通信が開始されることで、路側アンテナへの接近が検知される。
【0104】
つぎに、メイン制御部38は、無線通信部35を通じて車両検知器(入口用)11との間で所定の通信を行う。ここでは、自車両側のリクエストを送信し、それに対する回答を受信する。ここで、路側電源装置1からの回答内容を承諾できない場合は、処理を中止し電力伝送用走行エリアから退出することもできる。路側電源装置1との間で電力伝送を行う場合、共鳴周波数等の電力伝送条件を路側電源装置1に合わせる。
【0105】
つぎに、検知した路側アンテナの位置や指向方向に合わせて、路側アンテナ及び車側アンテナユニット30の指向面同士が確実に正対するように方向制御を行う。このとき、車側アンテナユニット30内の通信用アンテナと、路側アンテナユニット10内の通信用アンテナとを介して、高速で制御データの交換が行われる。
【0106】
車側アンテナユニット30の方向制御では、まず、スポット光照射部からアンテナの指向方向に向けて照射されるスポット光が路側アンテナのコイル中央に位置するように、アンテナの指向面の方向を調節する。なお、スポット光照射部からのスポット光で路側アンテナのコイルの中央を狙うためには、車両の速度や振動量に応じた車側アンテナユニット30の方向修正が必要である。
【0107】
そして、スポット光照射部からのスポット光が路側アンテナのコイル中央に位置する状態で安定したとき、アンテナの指向面の法線ベクトルを算出し、その方向角の値を路側電源装置1へ通知する。なお、法線ベクトルは、グローバル座標系でもローカル座標系でもよく、車側アンテナユニット30の方向角を、走行情報入力部45からの入力情報に基づく車両の進行方向等で補正したものを算出する。また、将来の走行軌跡が曲線になる場合、その走行経路情報を路側電源装置1側へ併せて通知することで、路側電源装置1側でその後の角度補正を推測できるようになる。そして、その通知された法線ベクトルの値に基づいて、上述のとおり路側電源装置1で路側アンテナの方向調節が行われることで、路側アンテナ及び車側アンテナユニット30の指向面同士が正対する。この状態において電力伝送用コイルアンテナを介して電力伝送を行うことで、伝送効率を向上できる。
【0108】
路側電源装置1から受電、あるいは路側電源装置1へ放電した電力量は電力制御部39により監視される。電力制御部39は、設定量になったら電力伝送処理を停止し、メイン制御部38に完了信号を送信する。一方、設定量の電力伝送が完了しないまま最後の路側アンテナを通過したことが検知された場合、メイン制御部38に結果(伝送した電力量)を通知する。
【0109】
電力伝送用走行エリアの出口にて、メイン制御部38は、電力伝送の結果を無線通信部35に送り、通信用アンテナを介して路側電源装置1の車両検知器(出口用)12へ送信する。並行して路側電源装置1の車両検知器(出口用)12から電力伝送の結果を受信し、メイン制御部38はその整合性を確認する。そして、その結果に応じた情報提示画面を表示部43に表示する。情報提示画面の表示内容としては、路側電源装置1のエリア名称、伝送電力量(対応航続距離)、伝送効率、料金情報(課金/還元金情報)等があり、また、何かエラーなどがあれば表示する。
【0110】
[アンテナ方向制御の概要]
つぎに、路側電源装置1と車側電源装置3とが連携して互いのアンテナユニットの指向面を正対させる方向制御の手順について、図9を参照しながら説明する。ここでいう正対とは、単純に面と面とが向き合うだけでなく、車両側の電力伝送用コイルの中心法線と、路側の電力伝送用コイルの中心法線とが空間で直接的に衝突するような状態が望ましい。このような状態を達成するために、以下のような手順で方向制御を行う。
【0111】
ステップ1:図9(a)参照
車両が路側アンテナユニット10に接近すると、車側電源装置3側では、車側アンテナユニット30の指向面を進行方向前方に向け、目標アンテナ検知センサ(カメラ)31で目標となる路側アンテナユニット10を撮影すると共に、スポット光照射部からアンテナの指向方向に延びるスポット光の照射を開始する。そして、撮像画像からスポット光の照射位置を計測し、路側アンテナユニット10のコイル中央に描かれたセンタークロスを照射ターゲットにして、計測したスポット光の照射位置に応じてアンテナ駆動機構を32を作動させる。このようにして、目標となる路側アンテナユニット10のコイル中央付近にスポット光が当たるように車側アンテナユニット30の方向を調節する。なお、電力伝送用走行エリアを凹凸のない平坦な路面にしておけば、路側アンテナユニット10のコイル中央付近をスポット光で狙うことは容易である。
【0112】
ステップ2:図9(b)参照
路側電源装置1側では、アンテナ面に設けられたスポット光センサ110により、車側アンテナユニット30から放出されているスポット光の照射位置を計測する。計測の結果、スポット光の照射位置がコイル中央からずれている場合、そのずれ量を路側アンテナユニット10の通信用アンテナを通じて車両側へ通知する。車側電源装置3側では、通知されたずれ量の情報を基に、スポット光が路側アンテナユニット10のコイル中央に位置するように、車側アンテナユニット30の方向を調節する。
【0113】
ステップ3:図9(c)参照
路側電源装置1側では、路側アンテナユニット10のコイル中央にスポット光が安定して検知されるようになると、車側電源装置3からアンテナの方向角(アンテナの方線ベクトル)の情報を路側アンテナユニット10の通信用アンテナを通じて受信する。そして、アンテナ駆動制御部16は、路側アンテナユニット10の方向角を車側アンテナユニット30の方向角に対向する値に設定し、その設定どおりにアクチュエータを作動させ、路側アンテナユニット10の方向を調節する。これにより、路側アンテナユニット10の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが平行になり、アンテナ同士が確実に正対する。その後、図9(c)に記した(1)→(2)→(3)の順で示すとおり、車両の移動に合わせて、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方が互いのアンテナユニットを追尾するように方向調整をして、アンテナ同士が正対した状態を維持する。この様な制御を行うことで電力伝送効率が大きくなる。
【0114】
なお、ステップ3において、車側電源装置3が路側電源装置1に対して送信するアンテナの方向角(アンテナの方線ベクトル)は、車側電源装置3のアンテナ駆動機構32における角度センシングの結果から計測される。このとき、車両が電力伝送用走行エリアに沿って引かれたガイドラインに対して斜め方向に走行している場合、車側電源装置3で計測された方向角と、路側アンテナユニット10側から見た車側アンテナユニット30の実際の方向角とにずれが生じる。電力伝送用走行エリアの入口では、ガイドラインに沿って(すなわち、路側アンテナユニット10と所定定距離を隔てて)走行するように、車両に対して進行方向が指示される。しかし、手動運転の場合は、指示通り走行できない場合もある。
【0115】
そこで、図10に示すように、車側電源装置3では、ガイドラインに対する車両の進行方向のずれ角に基づいてアンテナの方向角を補正する。具体的には、ガイドラインに対する車両の進行方向のずれ角を、ステアリング角や画像認識によるライン検知等から計測し、その計測結果に基づいてアンテナの方向角を補正する。路側電源装置1に対しては、補正したアンテナ方向角を送信する。
【0116】
つぎに、カメラによる撮像画像に基づくアンテナの方向調整の方法について、図11を参照しながら説明する。上述したように、路側アンテナユニット10及び車側アンテナユニット30の指向面には、それぞれ位置検出用のマーキングが施されている車側電源装置3側のカメラで路側アンテナユニット10を撮像した場合、あるいは、路側電源装置1側のカメラで車側アンテナユニット30を撮像した場合、何れの場合においても撮像画像における位置検出用マークの形状の歪み具合で自身のアンテナの修正方向を検知できるようになっている。対向相手のアンテナの撮像画像において、位置検出マークの形状が高さ方向に歪んでいる場合、対向相手のアンテナが上下(ピッチ)方向に傾いているため、これに合わせて自身のアンテナの方向角(X軸)を補正する。また。対向相手のアンテナの撮像画像において、位置検出マークの形状が横幅方向に歪んでいる場合、対向相手のアンテナが左右(ヨー)方向に傾いているため、これに合わせて自身のアンテナの方向角(Y軸)を補正する。
【0117】
[路車間電力伝送処理の説明]
つぎに、路側電源装置1と車側電源装置3とが連携して実行する路車間電力伝送処理の処理シーケンスについて、図12〜15のラダーチャートに基づいて説明する。
【0118】
(1)車両検知器(入口用)11−車側電源装置3間の処理シーケンス
図12は、路側電源装置1の車両検知器(入口用)11と、車側電源装置3のメイン制御部38との間で行われる処理シーケンスを示すラダーチャートである。
【0119】
図12に示すとおり、まず、車側電源装置3のメイン制御部38は、自車両の現在地を測定すると共に利用可能な路側電源装置1の位置を確認し、自車両が路側電源装置1の電力伝送用走行エリアに接近したと判定すると、充放電準備処理を開始する(S200)。
【0120】
一方、路側電源装置1の車両検知器(入口用)11は、通過車両の有無を問合せるためのポーリング信号を常時送信している(S100)。ポーリング信号には、路側電源装置1の識別情報である路側IDが含まれる。
【0121】
車両が車両検知器(入口用)11による通信圏内に入ると、メイン制御部38は無線通信部35を通じてポーリング信号を受信する。メイン制御部38は、受信したポーリング信号に対する応答として、自車両の識別情報である車両IDや路側電源装置1に対する要求内容等を含むリクエスト情報を車両検知器(入口用)11へ送信する(S201)。なお、車両IDは、車載器の識別情報や、車載器に挿入された記憶メディアに記録されたユーザの識別情報等、料金決済に必要な情報でもよい。また、路側電源装置1に対する要求内容には、自車両への充電要求か、それとも自車両からの放電要求かを示す充放電区分、充放電する電力量の要求値等の情報が含まれる。なお、路側電源装置1に対する要求内容の決定方法については後述する。
【0122】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3からリクエスト情報を受信すると、そこに含まれる車両IDと、記憶部23に格納されている認証用の車両IDとを照合し、当該車両を認識する(S101)。つぎに、その認識した車両に対して、車両情報送信依頼と路側IDとを含むレスポンスを送信する(S102)。
【0123】
メイン制御部38は、車両情報送信依頼と路側IDとを含むレスポンスを受信すると、当該路側電源装置1へ送信するために必要な車両情報を準備する(S202)。この車両情報とは、具体的に、車両に搭載された充電放電装置の仕様(例えば、世界的に標準化されたカテゴリー番号、対応可能な伝送電力の範囲や伝送周波数帯域(すなわち、共鳴周波数の調節可能範囲)等)や、車両の速度や位置等の走行情報等が含まれたものである。そして、S202で準備した車両情報と自車両の車両IDとを含むレスポンスを車両検知器(入口用)11へ送信する(S203)。
【0124】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3から車両情報と車両IDとを含むレスポンスを受信すると、当該車両からの要求内容と車両情報とを通信データ処理部17へ送信する(S103)。通信データ処理部17へ送信された各情報は、個々の路側アンテナユニット10に付随するアンテナ制御部13やメイン制御部18へ送られ、それぞれ処理される。各アンテナ制御部13は、充放電の要求内容と車両情報とに基づき、車側電源装置の仕様に合った共鳴周波数及び伝送電力等、充放電に関する条件を設定し、その設定した条件に合わせて各アンテナの電力伝送処理回路14を調節する。メイン制御部18は、車両からの要求内容を満たせるか否かを迅速に算定し、要求内容に適した車両の走行方法に関する条件を準備する。具体的には、要求どおりの電力伝送を達成するのに適した走行速度、アンテナとの接近距離、アンテナ同士の対向度合いの精度等の諸条件を設定する。
【0125】
なお、通信データ処理部17は、車両検知器(入口用)11により検知された車両ID等を分類ラベルとして、車両検知器(入口用)11により車側電源装置3から受信した各情報に時間情報を付加してこれを記憶する。なお、各アンテナと車両間で送受信される通信データは、この車両IDを検索メインキーとするデータレコードとして記憶しておく。このデータレコードは、XML(Extensible Markup Language)のようなタグ付きデータとすると、後のデータ処理を行いやすくなる。
【0126】
つぎに、車両検知器(入口用)11は、アンテナ制御部13及びメイン制御部18で設定された、充放電及び走行方法に関する諸条件を通信データ処理部を通じて受領し、それらの条件に沿って走行及び充放電を行うように依頼する(電力伝送条件設定依頼送信、S104)。
【0127】
メイン制御部38は、車両検知器(入口用)11からの電力伝送条件設定依頼を受信すると、その電力伝送条件の内容を確認する(S204)。そして、その依頼内容を自車両の状況に照らして、路側電源装置1側から提案の電力伝送条件を適用可能であるか否かを判断する(S205)。適用可能であると判断した場合(S205:YES)、路側電源装置1側から提案の電力伝送条件に従って自車両側の各種条件を設定する(S206)。具体的には、依頼内容における充放電に関する条件(共鳴周波数及び伝送電力等)に合わせて電力伝送処理回路33を調節する。また、依頼内容における走行方法に関する条件(車速、アンテナとの接近距離、アンテナの対向度合いの精度等)に合わせて自動走行の制御内容を設定する。そして、提案された電力伝送条件に対する了承通知を車両検知器(入口用)11へ送信する(S207)。
【0128】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3から電力伝送条件に対する了承通知を受信すると、その旨を通信データ処理部17へ通知する(S105)。この了承通知は、通信データ処理部17からメイン制御部18に通知される。メイン制御部18は、合意がなされた電力伝送条件に沿って電力制御部19のスケジューリングを行う。すなわち、路側電源装置1の電力伝送用走行エリアでは、複数の車両が同時期に電力伝送を行う可能性があるため、各車両に対する車両検知及び電力伝送が正確に行えるように電力制御部19に対する送受電のタイムスケジュールを策定する。スケジューリングの結果は、通信データ処理部17を介して各アンテナのアンテナ制御部13に対して通知されると共に、車両に対しても送信される。
【0129】
一方、メイン制御部38がS205において否定判定をした場合(S205:NO)、すなわち、路側電源装置1側から提案の電力伝送条件を適用できないと判定した場合、電力伝送条件の変更依頼を送信するか否かによって処理を分岐する(S208)。変更依頼を送信する場合(S208:YES)、その時点で適用可能な内容の電力伝送条件に変更するための設定変更依頼を車両検知器(入口用)11へ送信する(S209)。変更依頼を送信しない場合(S208:NO)、路車間電力伝送処理を中止する(S210)。
【0130】
車両検知器(入口用)11は、車側電源装置3から設定変更依頼を受信すると、その旨を通信データ処理部17へ通知する(S103)。この設定変更依頼は、通信データ処理部17からメイン制御部18に通知される。メイン制御部18は、設定変更依頼の内容に基づき、その時点で可能な処理を車両側に提案するための新たな電力伝送条件を設定する。例えば、電力伝送用走行エリアを通過するまでの時間において、本路側電源装置1単独で要求された電力量の電力伝送を行えない場合、車両の走行速度を遅く設定したり、本路側電源装置1とは別の場所にある他の路側電源装置1との間で電力伝送を行うといった代替案を策定する。車両検知器(入口用)11は、メイン制御部18で設定された代替案を通信データ処理部を通じて受領し、その代替案に沿って走行及び充放電を行うように依頼するための電力伝送条件設定依頼を再度送信する(S104)。
【0131】
その後、車両検知器(入口用)11は、車両が電力伝送用走行エリアの入口を通過したと判定した場合(S106:YES)、通信データ処理部17に対して通過連絡を行う(S107)。この通過連絡は、通信データ処理部17から各アンテナのアンテナ制御部13及びメイン制御部18へと通知される。
【0132】
(2)各路側アンテナユニット10−車側電源装置3間の処理シーケンス
つぎに、図13,14は、路側電源装置1の各アンテナ制御部13と、車側電源装置3のメイン制御部38との間で行われる処理シーケンスを示すラダーチャートである。この処理シーケンスは、先述の車両検知器(入口用)11−車側電源装置3間の処理シーケンスが終了した後に実行される。
【0133】
図13に示すように、まず、路側電源装置1のアンテナ制御部13は、車両検知器(入口用)11から、検知した車両の認識情報と当該車両の入口通過情報とを受信すると、自身の制御対象である路車間通信処理回路15による当該指定車両との通信準備を行うと共に、自身の制御対象である路側アンテナユニット10の指向面を、接近する指定車両を迎える最大角度にセットする(S300)。例えば、図3に示すように指定車両が電力伝送用走行エリアの右方向から接近する場合には、路側アンテナユニット10の指向面を右方向の最大可動範囲まで方向転換する。その状態で、車側電源装置3からのスポット光の照射を検知するまで待つ(S301)。
【0134】
一方、車側電源装置3のメイン制御部38は、目標アンテナ検知センサ(カメラ)31による撮像画像から、進行方向前方の路側アンテナユニット10の設置側に向けて捕捉対象となる路側アンテナユニットを探索する(S400)。そして、捕捉対象の路側アンテナユニット10を発見した場合(S401:YES)、目標アンテナ検知センサ(カメラ)31により検出した当該アンテナの位置に基づき、車側アンテナユニット30の指向面を捕捉対象の路側アンテナユニット10の方向へ向けると共に、スポット光照射部により車側アンテナユニット30の指向方向を指し示すスポット光の照射を開始する(S402)。
【0135】
アンテナ制御部13は、路側アンテナユニット10の指向面にあるスポット光センサ110によってスポット光の照射を検知すると(S301:YES)、そのアンテナの指向面上における照射位置を計測する(S302)。計測の結果、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央(センターマーク)からずれている場合、そのずれ量を路車間通信処理回路15及び路側アンテナユニット10の通信用アンテナを通じて車側電源装置3に通知する。アンテナ制御部13は、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に安定的に固定(ロック)されるまでの間、スポット光の照射位置の計測とその計測結果の通知を繰返す(S303)。
【0136】
なお、路側アンテナユニット10の車側アンテナ検知センサ等により指定車両が検知された時点で、当該路側アンテナユニット10に付属の電力伝送処理回路14は、予め設定された共鳴周波数及び伝送電力で電力伝送用コイルアンテナによる所定の電力伝送(送電/受電)を開始する。また、同じタイミングで、車側電源装置3の電力伝送処理回路33は、予め設定された共鳴周波数及び伝送電力で電力伝送用コイルアンテナによる所定の電力伝送(受電/送電)を開始する。
【0137】
一方、車側電源装置3のメイン制御部38は、路側アンテナユニット10からスポット光の照射位置の情報を受信すると、この情報を基に、スポット光が目標のコイルアンテナの中央(センターマーク)に位置するように、車側アンテナユニット30の角度を調節する(S403)。角度調節の後、再度受信した照射位置の情報に基づき、スポット光の照射位置が目標のコイルアンテナの中央に位置するか否かを判定する(S404)。依然としてスポット光の照射位置が目標のコイルアンテナの中央からずれている場合は(S404:NO)、再びアンテナの角度調節を繰返す(S403)。角度調節の結果、スポット光の照射位置が目標のコイルアンテナの中央に移動した場合(S404:YES)、アンテナ角度の微調整により目標のコイルアンテナの中央にスポット光が当たる状態を維持する追尾調整(ロック)を行う(S405)。ここで、スポット光の照射位置を目標のコイルアンテナの中央に固定できている場合(S406:YES)、ロック完了を通知するためのアンテナロック情報を目標の路側アンテナユニット10に対して送信する(S408)。一方、スポット光の照射位置を目標のコイルアンテナの中央に固定できていない場合(S406:NO)、S405の追尾調整を繰返し行う。
【0138】
つぎに、アンテナ駆動機構32における回転角の検出値に基づき、アンテナの指向面の法線ベクトルを算出する(S408)。そして、路面のガイドラインの画像認識結果等に基づき、自車両の進行方向のずれによる法線ベクトルの補正の要否を判定する(S409)。補正が不要な場合(S409:NO)、S408で算出した法線ベクトルの値を目標の路側アンテナユニット10に対して送信する(S411)。一方、補正が必要な場合(S409:YES)、ガイドラインに対する自車両の進行方向のずれに基づいて補正値を算出し、補正した法線ベクトルの値を算出し(S410)、補正した法線ベクトルの値を目標の路側アンテナユニット10に対して送信する(S411)。
【0139】
アンテナ制御部13は、車側電源装置3からアンテナロック情報を受信すると、スポット光センサ110によってスポット光の照射位置を計測し、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に固定されているか否かを判定する(S304)。スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に固定されていないと判定した場合(S304:NO)、S303で再びスポット光の照射位置情報を車側電源装置3に通知して、車側アンテナユニット30の方向調節をさせる。一方、スポット光の照射位置がコイルアンテナの中央に固定されていると判定した場合(S304:YES)、車側電源装置3から受信した法線ベクトルの値に合わせて路側アンテナユニット10の指向面の角度を調節し、路側アンテナユニット10の方向角を車側アンテナユニット30の方向角に対向する位置に合わせる(S305)。これにより、路側アンテナユニット10の指向面と車側アンテナユニット30の指向面とが平行になり、アンテナ同士が確実に正対する。
【0140】
つぎに、図14に示すとおり、アンテナ制御部13は、路側アンテナユニット10の現在の角度が規定値(=最大角度到達前)よりも大きくなっているか否かを判定する(S306)。アンテナ角度が規定値以下である場合(S306:NO)、S301(図13)の処理へ戻る。一方、アンテナ角度が規定値よりも大きくなっている場合(S306:YES)、指定車両が本路側アンテナユニット10の追従可動範囲から離脱間近であることを通知するための車両通過目前通知を通信データ処理部17へ送信する(S307)。この車両通過目前通知を受信した通信データ処理部17は、指定車両が次に到達する路側アンテナユニット10のアンテナ制御部13に対して通信準備指令を出す。
【0141】
つぎに、アンテナ制御部13は、本路側アンテナユニット10の追従可動範囲から離脱間近であることを車両に対して通知するためのアンテナ通過予告情報を、車側電源装置3へ送信する(S308)。そして、追従制御の結果、路側アンテナユニット10の現在の角度が最大値よりも大きくなっているか否かを判定する(S309)。アンテナ角度が最大値以下である場合(S309:NO)、当該路側アンテナユニット10による追従制御及び電力伝送を継続する。一方、アンテナ角度が最大値よりも大きくなっている場合(S309:YES)、電力伝送完了を出力する(S310)。この時点で、当該路側アンテナユニット10による車両に対する電力伝送を終了する。そして、本路側アンテナユニット10による電力伝送の完了、及び次のアンテナに関する情報を車側電源装置3へ送信する(S311)。
【0142】
そして、アンテナ制御部13は、本路側アンテナユニット10が最後尾ではない場合(S312:NO)、電力伝送処理の主体を次のアンテナに切替える(S313)。これにより、指定車両が次に通過する路側アンテナユニット10のアンテナ制御部13により、本処理シーケンスによる追従制御及び電力伝送が実行される。あるいは、本路側アンテナユニット10が最後尾である場合(S314:NO)、本処理シーケンスの完了を通信データ処理部17に通知する(S414)。この完了通知は、通信データ処理部17からメイン制御部18に通知される。
【0143】
一方、車側電源装置3のメイン制御部38は、目標の路側アンテナユニット10からアンテナ通過予告情報を受信すると、次の目標となる路側アンテナユニット10の位置を探索して、アンテナの方向切替準備をする(S412)。そして、目標の路側アンテナユニット10から電力伝送完了及び次のアンテナに関する情報を受信すると、現在目標としている路側アンテナユニット10が最後尾であるか否かによって処理を分岐する(S413)。現在目標としている路側アンテナユニット10が最後尾でない場合(S413:NO)、次の目標となる路側アンテナユニット10に向けてアンテナの方向切替を行い(S414)、S403(図13)の処理へ戻る。一方、現在目標としている路側アンテナユニット10が最後尾である場合(S413:YES)、電力伝送処理結果(充放電した電力量等)を集計する(S415)。
【0144】
(3)車両検知器(出口用)12−車側電源装置3間の処理シーケンス
つぎに、図15は、路側電源装置1の車両検知器(出口用)12と、車側電源装置3のメイン制御部38との間で行われる処理シーケンスを示すラダーチャートである。この処理シーケンスは、先述の各路側アンテナユニット10−車側電源装置3間の処理シーケンスが終了した後に実行される。
【0145】
図15に示すとおり、路側電源装置1の車両検知器(出口用)12は、通過車両の有無を問合せるためのポーリング信号を常時送信している(S500)。ポーリング信号には、当該路側電源装置1の路側IDが含まれる。
【0146】
車両が車両検知器(出口用)12による通信圏内に入ると、車側電源装置3のメイン制御部38は無線通信部35を通じてポーリング信号を受信する。メイン制御部38は、受信したポーリング信号に対する応答として、自車両の車両ID及び電力伝送結果を示す情報等を含むレスポンス情報を車両検知器(出口用)12へ送信する(S600)。この電力伝送結果には、車両側で充放電した電力量の集計結果を示す情報が含まれる。
【0147】
車両検知器(出口用)12は、車側電源装置3からレスポンス情報を受信すると、そこに含まれる車両IDと、記憶部23に格納されている認証用の車両IDとを照合し、当該車両を認識する(S501)と共に、通信データ処理部17を通じてこのレスポンス情報をメイン制御部18へ送信する。
【0148】
路側電源装置1のメイン制御部18は、通信データ処理部17を通じて車両のレスポンス情報を受信すると、その内容を確認する(S700)。そして、通信データ処理部17を通じて確認結果を示す情報を車両検知器(出口用)12へ送信する(S701)。この確認結果を示す情報には、当該路側電源装置1の路側ID、該当車両の車両ID、電力伝送の良否判定結果、路側電源装置1が当該車両との間で送受電した電力量の集計結果等の情報が含まれる。車両検知器(出口用)12は、通信データ処理部17を通じて受信した確認結果を当該車側電源装置3へ送信する。
【0149】
車側電源装置3のメイン制御部38は、車両検知器(出口用)12から確認結果通知を受信すると、その情報内容を表示部43に表示する(S601)。そして、自車両の車両IDを含む確認結果受領応答を車両検知器(出口用)12へ送信する(S602)。
【0150】
つぎに、路側電源装置1のメイン制御部18は、当該車両に対して実行した電力伝送に係る料金を計算し(S702)、通信データ処理部17を通じてその料金情報を車両検知器(出口用)12へ送信する。車両検知器(出口用)12は、メイン制御部18から受信した料金情報を当該車側電源装置3へ送信する。なお、料金は、車両に対して送受電した電力量に応じて決定される。例えば、車両に送電した場合はその電力量に応じて課金され、車両から受電した場合はその電力量に応じた料金が還元される。
【0151】
車側電源装置3のメイン制御部38は、車両検知器(出口用)12から料金情報を受信すると、その料金内容を表示部43に表示し(S603)、自車両の車両IDを含む料金情報受領応答を車両検知器(出口用)12へ送信する(S604)。そして、今回の電力伝送の集計結果及び料金等の情報を記憶部44に記録する(S605)。その後、当該路側電源装置1との処理シーケンスを完了し、通信を停止する(S606)。
【0152】
一方、車両検知器(出口用)12は、車側電源装置3から料金情報受領応答を受信する(S502:YES)と、通信データ処理部17を通じて応答があった旨をメイン制御部18へ通知する(S503)。この通知を受けたメイン制御部18は、記憶部23に今回の電力伝送の集計結果及び料金等の情報を該当する車両IDに対応付けて記録する(S703)。また、それらの記録情報は、通信ネットワークを通じて遠隔地にある料金収受センタ等に送られる。
【0153】
[路側電源装置が実行する処理の説明]
つぎに、路側電源装置1の各アンテナ制御部13が、電力伝送用走行エリアを走行する指定車両との間で電力伝送を行う際に実行する電力伝送制御処理の手順について、図16のフローチャートに基づき説明する。この処理は、先述の路側アンテナユニット10−車側電源装置3間の処理シーケンス(図13,14)に対応してアンテナ制御部13が電力伝送を行う処理である。
【0154】
アンテナ制御部13は、まず、車両進行方向の1つ手前のアンテナ制御部13から制御情報を受信した場合(S800:YES)、この制御情報を記憶すると共に、その制御情報の内容(例えば、アンテナ角度)から指定車両の接近度合いを判定する(S801)。つぎに、接近度合いの判定結果に基づき指定車両の検知を行う(S802)。一方、車両進行方向の1つ手前のアンテナ制御部13から制御情報を受信しない場合(S800:NO)、指定車両の検知を行う(S802)。なお、指定車両の検知は、例えば路側アンテナユニット10の通信用アンテナによる近距離無線通信の可否に基づいて判定したり、路側アンテナユニット10の車側アンテナ検知センサによる検知結果に基づいて判定する。
【0155】
S802で指定車両を検知していない場合(S802:NO)、S800の処理へ戻る。一方、対処車両を検知した場合(S802:YES)、路車間通信処理回路15による近距離無線通信により、対処車両との間で情報交換を行う(S803)。ここでは、先述の車両検知器(入口用)11−車側電源装置3間の処理シーケンス(図12)において決定した電力伝送条件の確認や、車両からの車速制御情報や現在位置情報の取得を行う。
【0156】
つぎに、S804では、指定車両に対する他車両による追越しや割込みの有無によって処理を分岐する。他車両による追越しや割込みの有無は、例えば、車両検知器(入口用)11からの他車両に関する車両認識情報や通過情報、手前のアンテナ制御部13からの通過情報、自アンテナ制御部13による他車両の検知結果や情報交換等に基づいて推定する。
【0157】
指定車両に対する追越しや割込みがないと判定した場合(S804:YES)に進むS805では、電力伝送処理回路14及びアンテナ駆動制御部16に対する電力伝送準備を行う。ここでは、予め決められた指定車両との電力伝送条件(共鳴周波数、伝送電力)を電力伝送処理回路14に適用すると共に、指定車両の位置情報や速度制御情報に基づいて電力の送信方向やアンテナを車両に追従させる角速度を設定し、アンテナ駆動制御部16に対して適用する。あるいは、手前のアンテナ制御部13からの制御情報を記憶している場合は、その制御情報(アンテナ角度、追従角速度等)の条件を本アンテナのアンテナ駆動制御部16に対して適用する。
【0158】
つぎに、設定した追従角速度で路側アンテナユニット10を回転させて指向面を指定車両に追従させながら、電力伝送用コイルアンテナによる電力伝送を行うと共に、現在のアンテナ角度、追従角速度、指定車両の位置、通信条件等の情報を含む制御情報を、次のアンテナ制御部13へ送信する(S806)。アンテナの回転角度が所定の最大値未満である間(S807:NO)、S806の処理を継続する。そして、アンテナの回転角度が所定の最大値に到達した場合(S807:YES)、電力伝送を停止すると共に次の車両に対する準備(例えば、アンテナ角度のリセットや通信設定)をする(S808)。その後、S800の処理へ戻る。
【0159】
一方、S804において指定車両に対する追越しや割込みがあると判定した場合(S804:NO)に進むS809では、この追越し又は割込みをする車両(以下、次車両)に対応する電力伝送条件の設定変更、及び電力伝送準備が間に合うか否かを判定する。次車両に対する設定変更及び電力伝送準備が間に合うと判定した場合(S809:YES)、この次車両に対応する電力伝送条件に設定変更すると共に、次車両に対する電力伝送準備をする(S810)。準備後、S806の処理へ移行して次車両に対する電力伝送を開始する。
【0160】
一方、次車両に対する設定変更及び電力伝送準備が間に合わないと判定した場合(S809:NO)、この次車両に対する電力伝送を中止すると共に、電力伝送の中止に関する警報を次車両に対して送信し、さらに、次のアンテナ制御部13に対して次車両に関する車両情報(車速制御情報、現在位置情報等)を送信する(S811)。その後、S800の処理へ戻る。
【0161】
[車側電源装置が実行する処理の説明]
つぎに、車両が電力伝送用走行エリアを走行する際に車側電源装置3のメイン制御部38が実行する車両制御処理の手順について、図17のフローチャートに基づき説明する。この処理は、自車両が走行経路上の路側電源装置1に接近した時点から、この路側電源装置1との電力伝送が完了するまでの期間において実行される。
【0162】
メイン制御部38は、まず、現在位置及び走行経路上にある路側電源装置1の設置位置を確認し、電力伝送の準備を開始する(S900)。つぎに、路側電源装置1の車両検知器(入口用)11から受信した電力伝送条件の内容を確認する(S901)。先述のとおり、電力伝送条件には、充放電したい電力量や、要求どおりの電力伝送を達成するのに適した走行速度、適切なアンテナとの接近距離等の推奨条件が含まれている。そこで、S902では、この推奨条件の内容に応じて処理を分岐する。
【0163】
S902の分岐において適度な電力伝送を行う処理を選択した場合(S902:程々に電力伝送したい)、路側電源装置1の高速用ガイドライン500a(図1参照)に沿って自動走行する高速用ガイドライン認識自動走行モードに移行する(S903)。この走行モーでは、車載カメラによる撮像画像からの画像認識等で高速用ガイドライン500aの位置を認識する(S904)。そして、車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上から逸脱している場合(S904:YES)、車載通信ネットワークを介して車両の操舵装置を制御し、自車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上にくるように方向修正する(S905)。
【0164】
同時に、ミリ波レーダや車載カメラ、車車間通信等により電力伝送用走行エリアにおいて自車両の進行方向前方を走行する先行車両を探知する(S906)。そして、先行車両が存在する場合(S906:YES)、車載通信ネットワークを介して車両のアクセルやブレーキを制御し、検知した先行車両との車間距離を適切に保つ車間距離制御を開始する(S907)。
【0165】
つぎに、S908では路側電源装置1との間の電力伝送が完了したか否かを判定し、電力伝送が継続中の場合(S908:NO)、S903の処理へ戻り、電力伝送が完了した場合(S908:YES)、本処理を終了する(S909)。
【0166】
一方、S902の分岐において可能な限り多くの電力伝送を行う処理を選択した場合(S902:できるだけ多く電力伝送したい)、路側電源装置1の低速用ガイドライン500b(図1参照)に沿って自動走行して路側アンテナユニット10との所定の近接距離を維持する低速用ガイドライン認識自動走行モードに移行する(S910)。この走行モーでは、まず、車載通信ネットワークを通じて可倒式ドアミラー及びパワーウィンドウを制御し、可倒式ドアミラーを収納状態にすると共に路側電源装置1に面する側のパワーウィンドウを閉める(S911)。また、車載カメラによる撮像画像からの画像認識等で低速用ガイドライン500bの位置を認識する(S912)。車両の走行位置が低速用ガイドライン500b上から逸脱している場合(S912:YES)、車載通信ネットワークを介して車両の操舵装置を制御し、自車両の走行位置が低速用ガイドライン500b上にくるように方向修正する(S913)。
【0167】
同時に、ミリ波レーダや車載カメラ、車車間通信等により電力伝送用走行エリアにおいて自車両の進行方向前方を走行する先行車両を探知する(S914)。そして、先行車両が存在する場合(S914:YES)、車載通信ネットワークを介して車両のアクセルを制御し、検知した先行車両との車間距離を適切に保つ車間距離制御を開始する(S915)。
【0168】
つぎに、S916では路側電源装置1との間の電力伝送が完了したか否かを判定し、電力伝送が継続中の場合(S916:NO)、S910の処理へ戻り、電力伝送が完了した場合(S916:YES)、本処理を終了する(S917)。
【0169】
一方、S902の分岐において高速走行のまま少量の電力伝送を行う処理を選択した場合(S902:高速走行で少しでもよいから電力伝送したい)、まず、ミリ波レーダや車載カメラ、車車間通信等により高速用ガイドライン500a上を先行する車両を探知する(S918)。そして、高速用ガイドライン500a上に先行車両が存在しない場合(S918:YES)、S919の処理へ移行する一方、先行車両が存在する場合(S918:NO)、本処理を終了する。
【0170】
高速用ガイドライン500a上に先行車両が存在しない場合に進むS919では、路側電源装置1の高速用ガイドライン500aに沿って自動走行する高速用ガイドライン認識自動走行モードに移行する。この走行モーでは、車載カメラによる撮像画像からの画像認識等で高速用ガイドライン500aの位置を認識する(S920)。そして、車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上から逸脱している場合(S920:YES)、車載通信ネットワークを介して車両の操舵装置を制御し、自車両の走行位置が高速用ガイドライン500a上にくるように方向修正する(S921)。
【0171】
つぎに、S922では路側電源装置1との間の電力伝送が完了したか否かを判定し、電力伝送が継続中の場合(S922:NO)、S918の処理へ戻り、電力伝送が完了した場合(S922:YES)、本処理を終了する(S923)。
【0172】
つぎに、車側電源装置3のメイン制御部38が実行する送受電選択処理の手順について、図18のフローチャートに基づき説明する。この処理は、自車両が走行中における所定のタイミング(所定走行距離ごと、又は所定時間ごと)で実行される。
【0173】
メイン制御部38は、まず、対策要否確認処理を実行する(S1000)。この処理では、現在の蓄電状況と今後の走行計画における電力消費量等から、過充電対策又は過消費対策の要否を設定する。なお、この対策要否確認処理の詳細な内容については後述する。
【0174】
つぎに、S1001では、S1000の対策要否確認処理の結果に応じて処理を分岐する。ここでは、過充電対策又は過消費対策が「要」と設定された場合(S1001:YES)、S1002の処理へ移行し、何れの対策も「不要」と設定された場合(S1001:NO)、S1000の処理へ戻る。
【0175】
過充電対策又は過消費対策が「要」と設定された場合に進むS1002では、必要な対策に応じた対処手段の選択と、対処として必要な送受電量の確認をする。具体的には、必要な送受電量の大きさに応じて、自車両内で自己処理するか、周辺の他車両又は計画経路上の路側電源装置1と共同で処理するかを決定する。対処すべき送受電量が小さい場合、自車両で対処可能であると判定する。また、対処すべき送受電量が大きい場合、自車両周辺で無線電力伝送が可能な他車両、又は計画経路上の路側電源装置1を探索し、他車両又は路側電源装置1との共同による対処の可否を判定する。
【0176】
S1002での処理の結果、自車両で対処可能であると判定した場合、S1003をYESへ進み、自車両内充放電処理にて対処する(S1004)。具体的には、バッテリの充電が必要な場合、車載発電機により発電した電力によりバッテリの充電をする。あるいは、バッテリの放電が必要な場合、車載機器によりバッテリの電力を消費する。
【0177】
一方、S1002での処理の結果、他車両と共同で対処可能であると判定した場合、S1004をYESへ進み、車車間充放電処理にて対処する(S1007)。具体的には、バッテリの充電が必要な場合、共同で対処可能な他車両他車両から車側アンテナユニット30を通じて無線受電する。あるいは、バッテリの放電が必要な場合、共同で対処可能な他車両他車両に対して車側アンテナユニット30を通じて無線送電する。共同で対処可能な他車両との間で電力伝送を行う場合、その車両と隊列を組んで走行しながら行う。なお、車車間での電力伝送は本発明の要点ではないので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0178】
一方、S1002での処理の結果、計画経路上の路側電源装置1と共同で対処可能であると判定した場合、S1008をYESへ進み、路車間充放電処理にて対処する(S1009)。具体的には、バッテリの充電が必要な場合、計画経路上の路側電源装置1から車側アンテナユニット30を通じて無線受電する。あるいは、バッテリの放電が必要な場合、計画経路上の路側電源装置1に対して車側アンテナユニット30を通じて無線送電する。なお、路側電源装置1との電力伝送についての詳細は先述のとおりである。
【0179】
つぎに、S1005では、S1004,S1007,S1009の各処理の結果、必要な対処が完了したか否かを判定する。対処が完了した場合(S1005:YES)、S1000の処理へ戻り、対処が完了していない場合(S1005:NO)、S1003の処理へ戻る。
【0180】
一方、S1002での処理の結果、自車両内での自己対処、あるいは他車両や路側電源装置1との共同による対処の何れの対処も不可能であると判定した場合、S1008をNOへ進み、自車両に対する充放電が可能な他の場所への案内や、自車両との間で無線電力伝送が可能な他車両の探索を行い(S1010)、本処理を終了する。
【0181】
つぎに、車側電源装置3のメイン制御部38が実行する対策要否確認処理の手順について、図19のフローチャートに基づき説明する。この処理は、先述の送受電選択処理(図18)のS1000で実行される処理である。
【0182】
メイン制御部38は、まず、所定の対策要否判定タイミングが到来したか否かを判定する(S1100)。対策要否判定タイミングは、例えば走行距離又は時間で規定される。
対策要否判定タイミングが到来した場合(S1100:YES)、蓄電装置40における現在の蓄電状況、及び今後の走行計画における電力消費量と発電可能な電力量とを確認する(S1101)。
【0183】
ここでいう走行計画とは、図20に示すように、例えば出発地から目的地までの走行経路、走行経路の勾配や標高の変化、渋滞状況、走行経路上の経由地点で予定される荷物や乗員の積み下ろしによる重量変化、走行経路上に設置された路側電源装置1の位置等、走行時のエネルギー収支に関する情報が網羅された情報である。この走行計画は、車両の走行開始前に予め車側電源装置3の記憶部44に登録しておくか、車載ナビゲーション装置(図示なし)において設定された経路案内情報をメイン制御部38が車載通信ネットワークを介して取得する。そして、メイン制御部38は、予め設定された走行計画に基づく車両のエネルギー収支の予測から、電力の消費や発電のスケジュールを算定する。
【0184】
図19のフローチャート説明に戻る。つぎに、S1102では、S1001の処理の結果、走行計画に沿った走行によって許容範囲を超える過充電が行われる可能性があるか否かを判定する。過充電の可能性がある場合(S1102:YES)、過充電対策を「要」に設定すると共に、現在時刻及び位置を記録し(S1103)、本処理を終了する。
【0185】
一方、S1102で過充電の可能性がないと判断した場合(S1102:NO)、つぎに、走行計画に沿った走行によって許容範囲を超える過消費になる可能性があるか否かを判定する(S1104)。過消費の可能性がある場合(S1104:YES)、過消費対策を「要」に設定すると共に、現在時刻及び位置を記録し(S1105)、本処理を終了する。一方、S1104で過消費の可能性がないと判断した場合(S1104:NO)、対策を「不要」に設定し(S1106)、本処理を終了する。
【0186】
[別実施形態]
つぎに、本発明の別実施形態について、図21を参照しながら説明する。先述の実施形態では、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方がアンテナユニットを駆動させてアンテナの指向面を互いに対向させる構成について説明した。ここでは、路側電源装置1側のアンテナを固定とし、車側電源装置3側のアンテナのみを駆動させる事例について説明する。
【0187】
図21(a)は、路側アンテナユニット10a(アンテナ1〜4)を、アンテナの指向面を車両の進行方向に対して平行した状態で配列した実施形態を示す。この事例では、各路側アンテナユニット10aの指向面の方向は固定されており、車側電源装置3がアンテナの指向面を路側アンテナユニット10aの方向に向けて駆動させながら、互いに調整した共鳴周波数による電力伝送を行う。
【0188】
図21(b)は、路側アンテナユニット10b(アンテナ1〜3)を、アンテナの指向面を車両の進行方向に対してそれぞれ個別に傾斜させた状態で配列した実施形態を示す。この事例においても、各路側アンテナユニット10bの指向面の方向は固定されており、車側電源装置3がアンテナの指向面を路側アンテナユニット10bの方向に向けて駆動させながら、互いに調整した共鳴周波数による電力伝送を行う。
【0189】
図21(a),(b)の事例においても、図中のグラフに示すとおり、ある特定ポイントで送電電力が一時的に最大値となるが、他の場所では送電電力は最大値よりも小さくなる。その結果、1回の伝送電力量は、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方でアンテナユニットを駆動させる場合の送電電力量よりも小さくなる。しなしながら、路側電源装置1側において、アンテナを駆動するための機構や車側アンテナユニット30の方向角を検知するための構成を省略できるため、設備に係るコストの面で有利である。
【0190】
あるいは、図21に示す別実施形態の他に、路側電源装置1側のアンテナのみを駆動させ、車側電源装置3側のアンテナを固定とする構成であってもよい。その場合、車側アンテナユニット30の指向面の方向は固定されており、路側電源装置1は、車両の走行位置に合わせて各路側アンテナユニット10の指向面を車側アンテナユニット30の指向面に追従させながら、互いに調整した共鳴周波数による電力伝送を行う。
【0191】
このような構成においても、1回の伝送電力量は、路側電源装置1及び車側電源装置3の双方でアンテナユニットを駆動させる場合の送電電力量よりも小さくなる。しなしながら、車側電源装置3側において、アンテナを駆動するための機構や路側アンテナユニット10の方向角を検知するための構成を省略できるため、車載設備に係るコストの面で有利である。
【0192】
[効果]
上記実施形態の路車間電力伝送システムによれば、以下のような効果を奏する。
(1)路側電源装置1及び車側電源装置3の双方で、互いに電力伝送用のアンテナユニットの指向面が正対するように方向制御を行うことで、磁気共鳴による電力伝送におけるエネルギー損失を低減し、電力の伝送効率を向上できる。特に、車両が走行しながら電力伝送を行う際、車両の移動に合わせて互いのアンテナユニットの指向面を追尾することができるため、走行しながらでも車載バッテリの充電や放電を効率よく行うことができる。
【0193】
(2)路側電源装置1及び車側電源装置3の双方で、互いに電力伝送用コイルアンテナによる磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数を合致させることができる。これにより、設計仕様に応じて様々な電力伝送の条件を持つ装置間で磁気共鳴を成立させて電力伝送サービスを効率よく利用できる。
【0194】
(3)車側電源装置3は、推奨される電力伝送条件に応じた走行モードを選択し、それに応じた車両の自動制御を行うことができる。例えば、伝送する電力量に応じて推奨される走行位置を示すガイドラインに沿って車両が走行するようにステアリング制御を行うことで、車両と路側アンテナユニット10距離を適切な距離に維持したまま走行することができる。また、電力伝送用走行エリアを走行する先行車両との車間距離を所定範囲に維持するように自車両の速度を調節することで、電力伝送用走行エリアを次々に走行してくる車両同士が安全な車間距離を保つことができる。
【0195】
(4)路側電源装置1は、走行する車両の位置に合わせて複数の路側アンテナユニット10の制御を次々に切替えながら連続して電力伝送を行うことができる。また、複数の車両が連続して電力伝送用走行エリアへ進入してくる場合でも、複数の路側アンテナユニット10を使って順次電力伝送を行うことができる。
【0196】
[実施形態の構成と特許請求の範囲に記載の構成との対応]
上記実施形態の路車間電力伝送システムの各部構成と、特許請求の範囲に記載の構成との対応は次のとおりである。
【0197】
(1)路側電源装置1について
路側アンテナユニット10(電力伝送用コイルアンテナ)が路側コイルアンテナに相当する。アクチュエータ161,162が路側駆動手段に相当する。車両検知器11及び路車間通信処理回路15が、車側通信手段に相当する。アンテナ制御部14及び電力伝送処理回路14が、路側周波数調整手段及び路側送受電制御手段に相当する。路側アンテナユニット10(車側アンテナ検知センサ)が路側位置検出手段に相当する。アンテナ制御部13及びアンテナ駆動制御部16が、路側方向調節手段に相当する。
【0198】
(2)車側電源装置3について
車側アンテナユニット30(電力伝送用コイルアンテナ)が車側コイルアンテナに相当する。アンテナ駆動機構32が車側駆動手段に相当する。無線通信部35が車側通信手段に相当する。電力伝送処理回路33及びメイン制御部38が、車側周波数調整手段及び車側送受電制御手段に相当する。目標アンテナ検知センサ31が車側位置検出手段に相当する。アンテナ駆動制御部36及びメイン制御部38が、車側方向調節手段に相当する。車側アンテナユニット30(スポット光照射部)が光源手段に相当する。メイン制御部38が、走行計画取得手段、送受電要否判断手段及び車両制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0199】
1…路側電源装置、10…路側アンテナユニット、11…車両検知器(入口用)、車両検知器(出口用)、13…アンテナ制御部、14…電力伝送処理回路、15…路車間通信処理回路、16…アンテナ駆動制御部、17…通信データ処理部、18…メイン制御部、19…電力制御部、20…蓄電装置、21…電力変換処理回路、22…電力ルータ、23…記憶部、101…位置検出用マーク、102…センタークロス、103…コイル位置マーク、110…スポット光センサ、111…光センサ、112…表側電極、113…裏側電極、114…電路、115…半導体物質層、116…透明導電膜、120…カメラ、161,162…アクチュエータ、163…回転角センサ、500…ガイドライン。
【0200】
3…車側電源装置、30…車側アンテナユニット、31…目標アンテナ検知センサ(カメラ)、32…アンテナ駆動制御部、34…電力伝送処理回路、35…通信データ処理回路、36…アンテナ駆動制御部、38…メイン制御部、39…電力制御部、40…蓄電装置、41…蓄電状態監視部、42…位置検出部、43…表示部、44…記憶部、45…走行情報入力部、301…位置検出用マーク、302…センタークロス、303…コイル位置マーク、321,322…アクチュエータ、323…回転角センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する車側駆動手段と、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記路側コイルアンテナの位置を検出する車側位置検出手段と、
前記車側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記車側駆動手段を制御して前記車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する車側方向調節手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備えることを特徴とする車載電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載電源装置において、
前記車側コイルアンテナには、送受電面の中心法線の方向に沿って照準光を照射する光源手段が設けられており、
前記車側方向調節手段は、前記光源手段からの照準光が当たっている位置と、前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置との位置関係に基づいて、前記車側コイルアンテナの送受電面の中心法線軸を前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置に合わせるように前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを調節すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車載電源装置において、
自車両の走行計画に関する走行計画情報を取得する走行計画取得手段と、
前記走行計画取得手段により取得した走行計画情報に基づいて自車両のバッテリの蓄電状況を予測し、その予測結果に応じた外部からの受電又は外部への送電の要否を判断する送受電要否判断手段とを更に備え、
前記車側送受電制御手段は、前記送受電要否判断手段による判断結果に従って、前記路側電源装置からの受電、又は前記路側電源装置に対する送電の何れかを選択して実行すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車載電源装置において、
前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、所定の送受電時走行条件に沿うように自車両の状態を制御する車両制御手段を更に備えること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載電源装置において、
前記車両制御手段は、前記路側コイルアンテナの設置場所に沿って設けられている送受電時走行範囲上を自車両が走行するように操舵装置の操舵を調節すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車載電源装置において、
前記車両制御手段は、前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、自車両の前方を先行する他車両との車間距離を所定範囲に維持するように自車両の速度を調節すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6の何れか1項に記載の車載電源装置において、
前記車両制御手段は、前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、特定の外装機器を収納状態にすること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項8】
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する路側駆動手段と、
車両に搭載された車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出する路側位置検出手段と、
前記路側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記路側駆動手段を制御して前記路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する路側方向調節手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備えることを特徴とする路側電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の路側電源装置において、
前記路側方向調節手段は、前記車側コイルアンテナの送受信面の方向角に関する情報を取得し、その取得した方向角の情報に基づいて前記路側コイルアンテナの送受電面を前記車側コイルアンテナの送受電面に向けて正対させること
を特徴とする路側電源装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の路側電源装置において、
車路に沿って配列する複数の前記路側コイルアンテナと、
前記複数の路側コイルアンテナに対して各個に備えられた複数の前記路側駆動手段とを備え、
前記各路側駆動手段には、前記路側コイルアンテナの送受電面の方向を車両の走行方向に沿って変えられる追従可動範囲が設定されており、
前記路側方向調節手段は、前記追従可動範囲内に前記車側コイルアンテナが入っている前記路側コイルアンテナを対象に、当該車両の移動に合わせて当該路側コイルアンテナを前記車側コイルアンテナの方へ向ける追従制御をすると共に、当該車両の移動に伴い前記路側コイルアンテナの追従可動範囲から前記車側コイルアンテナの位置が逸脱すると、追従制御の対象を車両の移動方向に隣接する次の前記路側コイルアンテナに順次交代し、
前記路側送受電制御手段は、前記追従制御の対象となっている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送すること
を特徴とする路側電源装置。
【請求項11】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する車側駆動手段と、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記路側コイルアンテナの位置を検出する車側位置検出手段と、
前記車側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記車側駆動手段を制御して前記車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する車側方向調節手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備える車載電源装置と、
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する路側駆動手段と、
前記車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出する路側位置検出手段と、
前記路側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記路側駆動手段を制御して前記路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する路側方向調節手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備える路側電源装置と、
を有することを特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記車載電源装置では、
前記車側コイルアンテナには、送受電面の中心法線の方向に沿って照準光を照射する光源手段が設けられており、
前記車側方向調節手段は、前記光源手段からの照準光が当たっている位置と、前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置との位置関係に基づいて、前記車側コイルアンテナの送受電面の中心法線軸を前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置に合わせるように前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを調節し、
前記路側電源装置では、
前記路側方向調節手段は、前記車側コイルアンテナの送受信面の方向角に関する情報を取得し、その取得した方向角の情報に基づいて前記路側コイルアンテナの送受電面を前記車側コイルアンテナの送受電面に向けて正対させること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記路側電源装置では、
車路に沿って配列する複数の前記路側コイルアンテナと、
前記複数の路側コイルアンテナに対して各個に備えられた複数の前記路側駆動手段とを備え、
前記各路側駆動手段には、前記路側コイルアンテナの送受電面の方向を車両の走行方向に沿って変えられる追従可動範囲が設定されており、
前記路側方向調節手段は、前記追従可動範囲内に前記車側コイルアンテナが入っている前記路側コイルアンテナを対象に、当該車両の移動に合わせて当該路側コイルアンテナを前記車側コイルアンテナの方へ向ける追従制御をすると共に、当該車両の移動に伴い前記路側コイルアンテナの追従可動範囲から前記車側コイルアンテナの位置が逸脱すると、追従制御の対象を車両の移動方向に隣接する次の前記路側コイルアンテナに順次交代し、
前記路側送受電制御手段は、前記追従制御の対象となっている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送すること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13の何れか1項に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記車載電源装置では、
自車両の走行計画に関する走行計画情報を取得する走行計画取得手段と、
前記走行計画取得手段により取得した走行計画情報に基づいて自車両のバッテリの蓄電状況を予測し、その予測結果に応じた外部からの受電又は外部への送電の要否を判断する送受電要否判断手段とを更に備え、
前記車側送受電制御手段は、前記送受電要否判断手段による判断結果に従って、前記路側電源装置からの受電、又は前記路側電源装置に対する送電の何れかを選択して実行すること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項15】
請求項11ないし請求項14の何れか1項に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記車載電源装置では、
前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、所定の送受電時走行条件に沿うように自車両の状態を制御する車両制御手段を更に備えること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項16】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節された前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備える車載電源装置と、
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する路側駆動手段と、
前記車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出する路側位置検出手段と、
前記路側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記路側駆動手段を制御して前記路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する路側方向調節手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備える路側電源装置と、
を有することを特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項17】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する車側駆動手段と、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記路側コイルアンテナの位置を検出する車側位置検出手段と、
前記車側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記車側駆動手段を制御して前記車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する車側方向調節手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備える車載電源装置と、
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節された前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備える路側電源装置と、
を有することを特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項1】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する車側駆動手段と、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記路側コイルアンテナの位置を検出する車側位置検出手段と、
前記車側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記車側駆動手段を制御して前記車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する車側方向調節手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備えることを特徴とする車載電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載電源装置において、
前記車側コイルアンテナには、送受電面の中心法線の方向に沿って照準光を照射する光源手段が設けられており、
前記車側方向調節手段は、前記光源手段からの照準光が当たっている位置と、前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置との位置関係に基づいて、前記車側コイルアンテナの送受電面の中心法線軸を前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置に合わせるように前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを調節すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車載電源装置において、
自車両の走行計画に関する走行計画情報を取得する走行計画取得手段と、
前記走行計画取得手段により取得した走行計画情報に基づいて自車両のバッテリの蓄電状況を予測し、その予測結果に応じた外部からの受電又は外部への送電の要否を判断する送受電要否判断手段とを更に備え、
前記車側送受電制御手段は、前記送受電要否判断手段による判断結果に従って、前記路側電源装置からの受電、又は前記路側電源装置に対する送電の何れかを選択して実行すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車載電源装置において、
前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、所定の送受電時走行条件に沿うように自車両の状態を制御する車両制御手段を更に備えること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載電源装置において、
前記車両制御手段は、前記路側コイルアンテナの設置場所に沿って設けられている送受電時走行範囲上を自車両が走行するように操舵装置の操舵を調節すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車載電源装置において、
前記車両制御手段は、前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、自車両の前方を先行する他車両との車間距離を所定範囲に維持するように自車両の速度を調節すること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6の何れか1項に記載の車載電源装置において、
前記車両制御手段は、前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、特定の外装機器を収納状態にすること
を特徴とする車載電源装置。
【請求項8】
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する路側駆動手段と、
車両に搭載された車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出する路側位置検出手段と、
前記路側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記路側駆動手段を制御して前記路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する路側方向調節手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備えることを特徴とする路側電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の路側電源装置において、
前記路側方向調節手段は、前記車側コイルアンテナの送受信面の方向角に関する情報を取得し、その取得した方向角の情報に基づいて前記路側コイルアンテナの送受電面を前記車側コイルアンテナの送受電面に向けて正対させること
を特徴とする路側電源装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の路側電源装置において、
車路に沿って配列する複数の前記路側コイルアンテナと、
前記複数の路側コイルアンテナに対して各個に備えられた複数の前記路側駆動手段とを備え、
前記各路側駆動手段には、前記路側コイルアンテナの送受電面の方向を車両の走行方向に沿って変えられる追従可動範囲が設定されており、
前記路側方向調節手段は、前記追従可動範囲内に前記車側コイルアンテナが入っている前記路側コイルアンテナを対象に、当該車両の移動に合わせて当該路側コイルアンテナを前記車側コイルアンテナの方へ向ける追従制御をすると共に、当該車両の移動に伴い前記路側コイルアンテナの追従可動範囲から前記車側コイルアンテナの位置が逸脱すると、追従制御の対象を車両の移動方向に隣接する次の前記路側コイルアンテナに順次交代し、
前記路側送受電制御手段は、前記追従制御の対象となっている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送すること
を特徴とする路側電源装置。
【請求項11】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する車側駆動手段と、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記路側コイルアンテナの位置を検出する車側位置検出手段と、
前記車側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記車側駆動手段を制御して前記車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する車側方向調節手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備える車載電源装置と、
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する路側駆動手段と、
前記車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出する路側位置検出手段と、
前記路側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記路側駆動手段を制御して前記路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する路側方向調節手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備える路側電源装置と、
を有することを特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記車載電源装置では、
前記車側コイルアンテナには、送受電面の中心法線の方向に沿って照準光を照射する光源手段が設けられており、
前記車側方向調節手段は、前記光源手段からの照準光が当たっている位置と、前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置との位置関係に基づいて、前記車側コイルアンテナの送受電面の中心法線軸を前記路側コイルアンテナの送受電面の中心位置に合わせるように前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを調節し、
前記路側電源装置では、
前記路側方向調節手段は、前記車側コイルアンテナの送受信面の方向角に関する情報を取得し、その取得した方向角の情報に基づいて前記路側コイルアンテナの送受電面を前記車側コイルアンテナの送受電面に向けて正対させること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記路側電源装置では、
車路に沿って配列する複数の前記路側コイルアンテナと、
前記複数の路側コイルアンテナに対して各個に備えられた複数の前記路側駆動手段とを備え、
前記各路側駆動手段には、前記路側コイルアンテナの送受電面の方向を車両の走行方向に沿って変えられる追従可動範囲が設定されており、
前記路側方向調節手段は、前記追従可動範囲内に前記車側コイルアンテナが入っている前記路側コイルアンテナを対象に、当該車両の移動に合わせて当該路側コイルアンテナを前記車側コイルアンテナの方へ向ける追従制御をすると共に、当該車両の移動に伴い前記路側コイルアンテナの追従可動範囲から前記車側コイルアンテナの位置が逸脱すると、追従制御の対象を車両の移動方向に隣接する次の前記路側コイルアンテナに順次交代し、
前記路側送受電制御手段は、前記追従制御の対象となっている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送すること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13の何れか1項に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記車載電源装置では、
自車両の走行計画に関する走行計画情報を取得する走行計画取得手段と、
前記走行計画取得手段により取得した走行計画情報に基づいて自車両のバッテリの蓄電状況を予測し、その予測結果に応じた外部からの受電又は外部への送電の要否を判断する送受電要否判断手段とを更に備え、
前記車側送受電制御手段は、前記送受電要否判断手段による判断結果に従って、前記路側電源装置からの受電、又は前記路側電源装置に対する送電の何れかを選択して実行すること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項15】
請求項11ないし請求項14の何れか1項に記載の路車間電力伝送システムにおいて、
前記車載電源装置では、
前記路側電源装置との間で電力の伝送を行う際、所定の送受電時走行条件に沿うように自車両の状態を制御する車両制御手段を更に備えること
を特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項16】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節された前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備える車載電源装置と、
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記路側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する路側駆動手段と、
前記車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記車載電源装置を搭載する車両に設置された車側コイルアンテナの位置を検出する路側位置検出手段と、
前記路側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記路側駆動手段を制御して前記路側コイルアンテナの送受電面を当該検出した車側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する路側方向調節手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記路側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備える路側電源装置と、
を有することを特徴とする路車間電力伝送システム。
【請求項17】
車体の周囲方向に向けて設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための車側コイルアンテナと、
前記車側コイルアンテナの送受電面の向きを変更する車側駆動手段と、
路側電源装置との間で情報通信を行うための車側通信手段と、
前記車側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該路側電源装置が備える路側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記車側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する車側周波数調整手段と、
前記路側コイルアンテナの位置を検出する車側位置検出手段と、
前記車側位置検出手段により検出した位置に基づき、前記車側駆動手段を制御して前記車側コイルアンテナの送受電面を当該検出した路側コイルアンテナの方向へ向けるように調節する車側方向調節手段と、
前記車側周波数調整手段により共鳴周波数が調節され、前記車側方向調節手段により送受電面の向きが調節されている前記車側コイルアンテナを使って、前記路側電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する車側送受電制御手段と、
を備える車載電源装置と、
車路側方に設置され、磁気共鳴現象を使って非接触で電力を送電又は受電するための路側コイルアンテナと、
前記車載電源装置との間で情報通信を行うための路側通信手段と、
前記路側通信手段による磁気共鳴条件に関する情報通信に基づき、当該車載電源装置が備える車側コイルアンテナとの磁気共鳴を成立させるための共鳴周波数に合わせて、前記路側コイルアンテナの共鳴周波数を調節する路側周波数調整手段と、
前記路側周波数調整手段により共鳴周波数が調節された前記路側コイルアンテナを使って、前記車載電源装置との間で当該共鳴周波数の交流電力を伝送する路側送受電制御手段と、
を備える路側電源装置と、
を有することを特徴とする路車間電力伝送システム。
【図3】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図20】
【図21】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−157167(P2012−157167A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14238(P2011−14238)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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