説明

車長判別装置

【課題】装置を簡素化できるとともに車路の狭い場所においても設置条件の制約が少ない車長判別装置を提供する。
【解決手段】本発明の車長判別装置10は、車路1において車両走行方向前後の所定範囲をスキャンするスキャニングセンサ12と、スキャニングセンサ12からのスキャンデータに基づき車路1を通過する車両3の長さを判別する処理装置14と、を備える。スキャニングセンサのスキャンエリアにおいて、車両走行方向に車長判別のための規定長さbを有する規定エリアBと規定エリアBの前後に隣接する前エリアA及び後エリアCとを予め設定しておく。処理装置14は、車両3が前エリアA及び後エリアCに存在せず規定エリアBのみに存在する期間があるか否かによりその車両3が規定長さb以内であるか否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の長さが所定寸法以内であるか否かを判別する車長判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式立体駐車場では入庫可能な車両の大きさに制限があり、また車種(セダン型、ハイルーフ型、小型)などによっても大きさが異なるため、車両の外形寸法によってクラス分けや入庫の可否を判断する必要がある。このため、従来、車両の長さ、幅、高さ等を検出してクラス分けや入庫の可否を判別する装置が種々提案されている(例えば下記特許文献1及び2参照)。このような車両の外径寸法のうち車長は、クラス分けや入庫の可否の判断に大きく影響するが、車高や車幅の検出と比較して規定長さ以内か否かを判断することが難しい。
【0003】
図5は、特許文献1に開示された車種判別装置のうち車長を判別する手段(以下、「車長判別装置」という)の構成図である。この車長判別装置は、車両1の走行方向に間隔を空けて配置された複数のエリアセンサ20a〜20dを備えている。各エリアセンサ20a〜20dは、車両1の通路を横断する光線を水平に放射する発光器と、この発光器からの光を受ける受光器とからなり、この光線が遮光されることにより、その間に車両1があることを検出するようになっている。
また、各エリアセンサ20a〜20dは、複数の光線を上下方向に適当な間隔を空けて放射するようになっている。このように構成された車長判別装置では、エリアセンサ20aを車両1が横切った瞬間の他のエリアセンサ20b〜20dのON/OFF状態をみることにより、車両1の長さがどの範囲内であるか判別できるので、これに基づきクラス分けを行なう。
【0004】
【特許文献1】特開平9−62982号公報
【特許文献2】特開2000−298007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の車長判別装置では、車両1の走行方向に複数のエリアセンサ20a〜20dを配置するため、装置が複雑化するという問題がある。また、車路の両側にエリアセンサ20a〜20dを配置するため、車路の狭い場所には装置を設置することができない等の制約があるという問題がある。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、装置を簡素化できるとともに車路の狭い場所においても設置条件の制約が少ない車長判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車長判別装置は、以下の手段を採用する。
(1)本発明は、車両が通過する車路において車両走行方向前後の所定範囲をスキャンするスキャニングセンサと、該スキャニングセンサからのスキャンデータに基づき前記車路を通過する車両の長さを判別する処理装置と、を備え、前記スキャニングセンサのスキャンエリアは、車両走行方向に車長判別のための規定長さを有する規定エリアと該規定エリアの前後に隣接する前エリア及び後エリアとからなり、前記処理装置は、前記車路を通過する車両が前エリア及び後エリアに存在せず規定エリアのみに存在する期間があるか否かによりその車両が前記規定長さ以内であるか否かを判別する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、各エリアにおける車両の存在の有無を、1台のスキャニングセンサにより検出し、時間毎に見ていくことにより、車両が規定長さ以内であるか否かを判別することができる。このスキャニングセンサは、車両の走行方向に複数設ける必要はなく、また、車路の両側に設ける必要がないので、装置を簡素化できるとともに、車路の狭い場所においても設置条件の制約が少ない。
【0009】
(2)また、上記の車長判別装置において、前記規定エリアの規定長さは複数設定されており、前記処理装置は、規定長さの異なる複数の規定エリアのそれぞれについて、車路を通過する車両が規定長さ以下であるか否かを判別することにより車長のクラス分けを行なう。
【0010】
このように、複数の規定長さを設定することにより、車長判別のための複数のエリアパターンが設定されるので、3種類以上の車長にクラス分けすることができる。したがって、入庫スペースに対応して細かいクラス分けを行なうことができる。
【0011】
(3)また、上記の車長判別装置において、前記スキャニングセンサはレーザレーダである。
【0012】
スキャニングセンサとしてレーザレーダを用いることにより、精度の高い車長判別を行なうことができる。
【0013】
(4)また、上記の車長判別装置において、前記スキャニングセンサは、前記車路の側方に設けられている。
【0014】
このように、スキャニングセンサを車路の側方に設けることにより、ガントリー等の大型設備が不要となるので設置が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置を簡素化できるとともに車路の狭い場所においても設置条件の制約が少ないという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車長判別装置10の構成図である。この車長判別装置10は、機械式立体駐車場における入庫口の手前に設けられた車路1に設置され、車路1を通過する車両3の車長を判別する。なお、この車路1には、必要に応じて、車幅、車高等の他の車両寸法を計測又は判別する装置が設置される。
【0018】
図1に示すように、車長判別装置10は、スキャニングセンサ12と、処理装置14とを備えている。
スキャニングセンサ12は、車路1において車両走行方向前後の所定範囲をスキャンする。本実施形態において、スキャニングセンサ12はレーザレーダであり、車路1の側方に配置された支柱16に設置されており、車路1において車両走行方向前後の所定の角度範囲θでレーザ光13を水平方向にスキャン(走査)するようになっている。このレーザ光13のスキャンに際し、車両3を確実に捉えるために、前記の所定の角度θを図1に示すように180°とするのがよい。また、スキャンする高さを、車長判別を適切に行なえる高さに設定するのがよく、図2に示すように、車両3の前後バンパーに相当する所定高さh(例えば車路1の床面から40〜50cm程度)に設定するのがよい。
【0019】
また、図1に示すように、スキャニングセンサ12のスキャンエリアは、車両走行方向に車長判別のための規定長さbを有する規定エリアBとこの規定エリアBの前後に隣接する前エリアA及び後エリアCとからなる。すなわち、スキャンエリアにおいて、車両走行方向に直角な水平線を境界線として各エリアA,B,Cが設定されている。
上記のスキャニングセンサ12により車路1をスキャンすることにより、レーザ光13の照射角度及びその反射時間から、その物体までの角度及び距離の情報を含むスキャンデータが得られる。このスキャンデータは、処理装置14に送信される。処理装置14は、スキャンデータに基づき、車路1を通過する車両3の存在及びその位置を把握することができる。
【0020】
処理装置14は、スキャンデータに基づき車路1を通過する車両3の長さを判別する。処理装置14は、自身のもつ座標上で上記の各エリアA,B,Cを把握しており、スキャニングセンサ12からのスキャンデータに基づき、車路1を通過する車両3が前エリアA及び後エリアBに存在せず規定エリアBのみに存在する期間があるか否かによりその車両3が規定長さb以内であるか否かを判別する。
【0021】
下記表1を参照し、車両3が規定長さ以内である場合の具体例を説明する。表1において、時間は右方向に進み、エリア通過状態を示す欄には、時間毎に車両3がどのエリア(A〜C)に存在するかが示されている。この表1の場合、時間毎に見ていくと、後エリアCのみに存在する期間、規定エリアBと後エリアCに重複して存在する期間、規定エリアBのみに存在する期間、前エリアAと規定エリアBに重複して存在する期間、前エリアAのみに存在する期間がある。したがって、規定エリアBのみに存在する期間があるので、この車両3の大きさは規定長さb以内であると判別する。
【0022】
【表1】

【0023】
下記表2を参照し、車両3が規定長さ以上である場合の具体例を説明する。この表2の見方は、表1と同様である。表2の場合、時間毎に見ていくと、後エリアCのみに存在する期間、規定エリアBと後エリアCに重複して存在する期間、前エリアA、規定エリアB及び後エリアCに重複して存在する期間、前エリアAと規定エリアBに重複して存在する期間、前エリアAのみに存在する期間がある。表1と異なり、規定エリアBのみに存在する期間がないので、この車両3の大きさは規定長さb以上であると判別する。
【0024】
【表2】

【0025】
上記の本実施形態によれば、各エリアA,B,Cにおける車両3の存在の有無を、1台のスキャニングセンサ12により検出し、時間毎に見ていくことにより、車両3が規定長さ以内であるか否かを判別することができる。このスキャニングセンサ12は、車両3の走行方向に複数設ける必要はなく、また、車路1の両側に設ける必要がないので、装置を簡素化できるとともに、車路1の狭い場所においても設置条件の制約が少ない。
【0026】
また、本実施形態によれば、スキャニングセンサ12としてレーザレーダを用いることにより、数ミリオーダーの精度でスキャンデータが得られるので、精度の高い車長判別を行なうことができる。スキャニングセンサ12を車路1の側方に設けることにより、ガントリー等の大型設備が不要となるので設置が容易となる。
【0027】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を説明する。
図3は、本発明の第2実施形態にかかる車長判別装置10による車長判別の実施状態を示す図である。第2実施形態にかかる車長判別装置10の機器構成は、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態では、規定エリアの規定長さが複数設定されている。本実施形態では、規定長さbを有する規定エリアBと、規定長さb’を有する規定エリアB’が設定されている。
【0028】
処理装置14は、自身のもつ座標上で上記のエリアA,B,Cからなるエリアパターン(図3(A))と、エリアA’,B’,C’からなるエリアパターン(図3(B))を把握しており、スキャニングセンサ12からのスキャンデータに基づき、規定長さの異なる複数の規定エリアB、B’のそれぞれについて、車路1を通過する車両3が規定長さb、b’以下であるか否かを判別することにより車長のクラス分けを行なう。この場合、処理装置14は、第1実施形態において説明したのと同様の手法により、車両3が規定長さb以下であるか否かの判別、及び車両3が規定長さb’以下であるか否かの判別を並行して行なう。
【0029】
例えば、図3(A)に示すように、規定長さbを有する規定エリアBに関しての判別では、車両3は規定長さb以下であると判別される。また、図3(B)に示すように、規定長さb’を有する規定エリアB’に関しての判別では、車両3は規定長さb’以上であると判別される。したがって、この場合、処理装置14は、車両3の大きさをb’以上b以下のクラスにクラス分けする。
また、別の車両の車長判別においてb’以下と判別した場合は、これに対応するクラスにクラス分けする。b以上と判別した場合は、入庫不可のクラスにクラス分けする。
なお、規定長さは2種類に限られず、3種類以上に設定してもよい。
【0030】
本実施形態によれば、複数の規定長さを設定することにより、車長判別のための複数のエリアパターンが設定されるので、3種類以上の車長にクラス分けすることができる。したがって、入庫スペースに対応して細かいクラス分けを行なうことができる。
【0031】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を説明する。
図4は、本発明の第3実施形態にかかる車長判別装置10の構成図である。本実施形態では、スキャニングセンサ12が車路1の上方に設置されている。このスキャニングセンサ12は、車路1の上方に配置されたガントリー等の支持部材18に取り付けられており、車路1において車両走行方向前後の所定範囲をスキャンする。本実施形態のスキャニングセンサ12は第1実施形態と同様にレーザレーダであり、車路1において、車路1の床面に向って車両走行方向前後の所定の角度範囲θでレーザ光13をスキャン(走査)するようになっている。また、図4に示すように、スキャニングセンサ12のスキャンエリアは、車両走行方向に車長判別のための規定長さbを有する規定エリアBとこの規定エリアBの前後に隣接する前エリアA及び後エリアCとからなる。
【0032】
処理装置14は、スキャニングセンサ12からのスキャンデータに基づき車路1を通過する車両3の長さを判別する。処理装置14は、自身のもつ座標上で上記の各エリアA,B,Cを把握しており、スキャニングセンサ12からのスキャンデータに基づき、車路1を通過する車両3が前エリアA及び後エリアBに存在せず規定エリアBのみに存在する期間があるか否かによりその車両3が規定長さb以内であるか否かを判別する。この車長判別は、第1実施形態において説明したのと同様の手法により行なうことができる。
【0033】
このように、本実施形態によっても、第1実施形態と同様に車両3が規定長さ以内であるか否かを判別することができ、スキャニングセンサ12を車路1の側方に設置することに関連する部分を除き、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、複数の規定長さを設定することにより、3種類以上の車長にクラス分けする構成としてもよい。
【0034】
上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車長判別装置の構成図である。
【図2】図1に関連し、スキャニングセンサによるスキャン高さを説明する図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる車長判別装置による車長判別の実施状態を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる車長判別装置の構成図である。
【図5】従来の車長判別装置の構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車路
3 車両
10 車長判別装置
12 スキャニングセンサ
13 レーザ光
14 処理装置
16 支柱
18 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が通過する車路において車両走行方向前後の所定範囲をスキャンするスキャニングセンサと、
該スキャニングセンサからのスキャンデータに基づき前記車路を通過する車両の長さを判別する処理装置と、を備え、
前記スキャニングセンサのスキャンエリアは、車両走行方向に車長判別のための規定長さを有する規定エリアと該規定エリアの前後に隣接する前エリア及び後エリアとからなり、
前記処理装置は、前記車路を通過する車両が前エリア及び後エリアに存在せず規定エリアのみに存在する期間があるか否かによりその車両が前記規定長さ以内であるか否かを判別する、ことを特徴とする車長判別装置。
【請求項2】
前記規定エリアの規定長さは複数設定されており、前記処理装置は、規定長さの異なる複数の規定エリアのそれぞれについて、車路を通過する車両が規定長さ以下であるか否かを判別することにより車長のクラス分けを行なう請求項1記載の車長判別装置。
【請求項3】
前記スキャニングセンサはレーザレーダである請求項1又は2記載の車長判別装置。
【請求項4】
前記スキャニングセンサは、前記車路の側方に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の車長判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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