説明

軌道自動自転車のデッドマンブレーキ

【課題】 確実に停車状態を保ち、逸走状態が生じる余地のない、軌道自動自転車のデッドマンブレーキを提供する。
【解決手段】 前後それぞれ一対の車輪1,1´に受支させた車体2に設けた座席4と、前記前輪1又は後輪1´の車軸5との間に、前記座席4に着座したとき前記車体2に進退自在に設けたブレーキ片6が後退させ、離れたときは前進させるブレーキ片の駆動手段を設ける。前記車軸5に設けたブレーキディスク8の車軸5と同心円上に沿う周端面8´に、前記ブレーキ片6の先端部6aが係離する凹欠部9を列設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路の巡回検査時などで用いる、動力エンジンを搭載した軌道自動自転車のデッドマンブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体に設けた座席に掛けたり、離れたりすることによってブレーキ動作が行われるデッドマンブレーキは、殊更例示するまでもなく公知であるが、前記ブレーキ動作は、ブレーキディスクにブレーキ片を係離させて、すなわち、ブレーキ片をブレーキディスクに圧接させて車輪の制動を行うようにしているのが一般である。(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−309237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような従来から行われている構造のものは、所謂摩擦抵抗を利用するものであるから、保守点検作業の不備やブレーキ片の経時変化等々によってブレーキ片のブレーキディスクに対する摩擦力の低下によりブレーキ性能が損われ、当該軌道自転車の逸走を防げないときがある。
【0005】
本発明は、確実に停車状態を保ち、逸走状態が生じる余地のない、軌道自動自転車のデッドマンブレーキを提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前後それぞれ一対の車輪に受支させた車体に設けた座席と、前記前輪又は後輪の車軸との間に、前記座席に着座したとき前記車体に該車体の前後方向に進退自在に設けたブレーキ片が後退する一方、離れたときは前進するブレーキ片の駆動手段を備え、前記車軸に設けたブレーキディスクの車軸と同心円上に沿う周端面に、前記ブレーキ片の先端部が係離する凹欠部を列設した、構成とするのである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブレーキ杆が凹欠部に係合(止)してブレーキ操作が行われるものであるから、軌道自動自転車のレールに沿う移動を確実に規制することができ、従って、逸走のおそれがなく、逸走による重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。また、ブレーキ操作は、ブレーキディスクの車軸と同心円に沿う周端面に設けた凹欠部を利用して行うものであるから、走行時に離席しても、ブレーキ片先端部が周端面を相対的に摺動することにより車輪の転動速度を落とし、転動が緩やかになった時点で凹欠部に該先端部が係合して制動操作を行うことができ、所謂急停車による事故の発生の可能性の少ない装置を提供できる。
【実施例】
【0008】
図面は、本発明に係る軌道自動自転車のデッドマンブレーキの一実施例を示し、図1は軌道自動自転車の正面図、図2は図1の一部拡大欠截図、図3は図2の平面図である。
【0009】
本発明を適用した軌道自動自転車Aは、前後それぞれ一対の車輪1,1´で受支する車体2の後部に動力エンジン3等々の機器を搭載し、その前方に座席(運転席)4を設け、後輪1´側を駆動輪としてレールR上を自在に走行するものである。
【0010】
そして、前記車体2に該車体2の前後方向に進退するブレーキ片6を装置し、このブレーキ片6と前記座席(運転席)4の下方に設けた牽引装置7を線材(ワイヤー)11で連けいして該牽引装置7によって後退する前記ブレーキ片6の先端部6aの前方には、前記前輪1の車軸5に一体的にして固着したブレーキディスク8を設け、該ブレーキディスク8の前記車軸5と同心円上に沿う周端面8´には、前記先端部6aが牽引装置7によって係離する凹欠部9を円周方向に列設してある。
【0011】
前記座席4は、荷重を負荷すると、すなわち、着席すると、前記牽引装置7が機能して該装置7に一端を取付けた線材(ワイヤー)11の他の一端側に取付けた前記ブレーキ片6が、コイルばね12の付勢に抗して後退し、先端6aが凹欠部9から離脱し(従って、前輪1は転動できる状態となる)、荷重の負荷を解くと、コイルばね12の作用によってブレーキ片先端6aは凹欠部9に係合して前輪1を制動する。
【0012】
ブレーキ片6は、前記車体2(のフレーム)に、前輪1の近傍においてボルト13とナット14で取付けた支持材15に車体2の前後方向に移動自在に摺嵌し、該ブレーキ片6と支持材15の後壁15aとの間に介在させた前記コイルばね12によって前記ブレーキディスク8方向、すなわち、前進方向に移動するように付勢されている。
【0013】
このブレーキ片6の後輪に一端を接続した仲介杆16の他端を前記コイルばね12を介して支持材後壁15を通じて支持材15より導出して前記線材11を介して前記牽引装置7と接続してある。
【0014】
線材11は、前記車体2に設けた支持部片17A,17Bに端部を取付けて前記座席4の直下位置と前記前輪1側位置間にわたした樹脂チューブ11´を貫通させたもので、一端は仲介杆16を介して前記ブレーキ片6に、他端は前記牽引装置7に取付けて、牽引装置7とブレーキ片6を連けいするものである。
【0015】
前記ブレーキディスク8は、所謂スプロケットとして適用する歯車体を利用したもので、当該歯車体を2分割したものを前記車軸5の適所に一対の締付けボルト18とナット19で締付け、さらに回り止めの固定ビス20を螺合して車軸5に設けたもので、車軸5と同心円上に沿う周端面8´には前記凹欠部9を円周方向に列設し、該凹欠部9にブレーキ片先端部6aが係離するものである。
【0016】
なお、凹欠部9は図示の形状に限る必要はないが、機能的には周端面8´に等間隔を置いて列設することが望ましい。
【0017】
そして、座席4に着座すると、牽引装置7によって線材11がコイルばね12の付勢(ばね力)に抗してブレーキ片6を牽引してこれをブレーキディスク8(凹欠部9)から離脱させて車輪1の制動を解放し、座席4から離れると、牽引装置7の作用は解かれ、コイルばね12が機能してブレーキディスク先端部6aを凹欠部9に係合(止)させ、車輪1の転動が規制される。
【0018】
なお、図示27は、車輪1の踏面にブレーキシューを圧接して車輪の制動を行う公知の制動装置(構成は問わない)で、実施例の自転車Aは、本発明に係る前記デッドマンブレーキとこの制動装置を備え、通常の走行時には、ハンドル28近傍に装置した制動ハンドルの操作によってこの制動装置27を操作して通常走行時の車輪制動を行い、座席離脱時に実施例装置を機能させて自転車Aの停止状態を確実に保つようにしてある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】軌道自動自転車の正面図。
【図2】図1の一部拡大欠截図。
【図3】図2の平面図。
【符号の説明】
【0020】
1 前輪
1´ 後輪
2 車体
4 座席
5 車軸
6 ブレーキ片
6a 先端部
8 ブレーキディスク
8´ 周端面
9 凹欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後それぞれ一対の車輪に受支させた車体に設けた座席と、前記前輪又は後輪の車軸との間に、前記座席に着座したとき前記車体に該車体の前後方向に進退自在に設けたブレーキ片が後退する一方、離れたときは前進するブレーキ片の駆動手段を備え、前記車軸に設けたブレーキディスクの車軸と同心円上に沿う周端面に、前記ブレーキ片の先端部が係離する凹欠部を列設した、軌道自動自転車のデッドマンブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−208717(P2009−208717A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56204(P2008−56204)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(391030125)保線機器整備株式会社 (39)
【Fターム(参考)】