説明

軟組織特徴の再構築のための方法および組成物

本発明は、患者が、生来の組織と同じ大きさ、形状および外見を有するだけでなく、機能しうる感覚を備えた再構築された軟組織特徴を利用できるように、外科的切除に先だって乳輪などの置換すべき皮膚の特徴の型を取り、例えば乳頭および乳輪などの軟組織特徴の大きさと形状を再形成し、そして生体適合性であって、その上での皮膚細胞の上皮化を可能とする能力、細胞を足場組織体へ組込む能力、および周囲の神経線維を足場実体へと浸潤させる能力を有するポリマーまたはバイオポリマー足場を作ることによる、唇、乳輪、およびその他の多くの特徴などの様々な軟組織特徴の再構築に有用な方法および組成物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2003年12月10日出願のPCT/US2004/032934およびPCT/US2004/33194の一部継続出願である米国仮特許出願第60/528064号からの優先権を主張し、それはその全体が示されているかのように本明細書に引用により含まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1. 発明の分野
本特許出願は、合成または生合成された足場上でのヒト培養細胞の培養および該足場上への移植により、弱った組織の置換術を提供することを記載し、該置換術は、特定の皮膚および軟組織特徴の置換、例えば、指先、耳の置換、またはより好ましくは乳輪または乳頭を再構築するための乳房の置換に用いられる。
【0003】
従来技術の説明
米国における女性の8人に1人は、乳癌と診断されることになろう。乳癌の治療法は、未だに主に、乳房切除術、乳房扇状部分切除術、またはその他のタイプの切除術を伴う外科的なものである。乳癌外科手術は、再建術の一部における非常な努力にもかかわらず、かなりの外観の損傷を残す可能性がある。乳房の乳頭および乳輪領域は、乳房切除術の際に除かれることが多く、この領域の再構築は非常に困難なものであった。現在、再構築の努力にもかかわらず、乳頭および乳輪の外見、感覚のいずれも有効に再現することは出来ていない。
【0004】
組織培養技術は、組織および器官等価物の開発に有効に用いられている。かかる技術の基礎には、生細胞、栄養素、および培養条件の適切な組合せを用いることにより、機能的な組織および器官へと再造形されうるコラーゲンマトリックス構造または足場が含まれる。組織等価物は多くの特許に詳細に記載されており、例えば、米国特許第4485096号; 4485097号;4539716号;4546500号;4604346号;4837379号;および5827641号が挙げられ、これらはすべて引用により本明細書に含まれる。本発明者らが適用に成功した組織等価物は生存皮膚等価物であり、実際のヒト皮膚と類似の形態を有する。かかる生存皮膚等価物は二層から構成される: 上部は層を形成している分化したヒト表皮角化細胞でできており、コラーゲンマトリックス中のヒト皮膚線維芽細胞のより厚い下側の層を被覆している。Bell、et al., Recipes for Reconstituting of Skin, J. Biochemical Engineering、113: 113-119 (1991)。
【0005】
細胞移植は、様々な治療上必要とされる器官全体の置換の代替手段として提案されており、かかる治療としては、眼、脳、肝臓、皮膚、軟骨、および血管における疾患の治療が挙げられる。例えば、以下を参照されたい;JP Vacanti et al., J. Pediat. Surg., vol.23, 1988.pp3-9;P Aebischer et al., Brain Res. Vol.488,1988,pp364-368; CB Weinberg and E. Bell, Science, Vol.231,1986,pp.397-340;IV Yannas, Collagen III, ME Nimmi, ed, CRC Press, Boca Raton, 1988; GL Bumgardner et al., Hepatology, Vol.8, 1988, pp.1158-1161; AM Sun et al., Appl. Bioch. Biotech., Vol.10, 1984, pp.87-99; AA Dematriou et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, Vol.83, 1986,pp.7475-7479; WT Green Jr., Clin. Orth. Rel. Res., Vol.124, 1977, pp.237-250; CA Vacanti et al., J. Plas. Reconstr. Surg., 1991:88:753-9; PA Lucas et al., J. Biomed. Mat. Res., Vol.24, 1990, pp.901-911。組織培養にてヒト細胞株を樹立することができれば、失われた組織機能を回復するための治療態様としての細胞移植の有用性が増すであろう。神経堤の組織からヒト培養細胞株を樹立することを可能にすることが特に重要である。というのは神経堤起源の組織または器官は、個体が成体となった後は損傷をそれ自体で修復することが通常できないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インビトロでの細胞の培養に有用な従来型の組織培養実験器具は、通常、培養中の哺乳類細胞の付着、そして場合によっては増殖を促進するために負の電荷で被覆されている。しかし昔から、従来型の組織培養表面を用いて哺乳類神経細胞の満足できる付着、維持、および増殖を達成するのは非常に難しかった。神経細胞の付着および増殖を促進するために、組織培養プレートおよびディッシュに、コラーゲンゲルの層を添加すること、または、ラットEHS腫瘍細胞により分泌される細胞外マトリックスを沈着させることは、改良をもたらしている。しかしながらこれらの技術は、細胞を播種する直前に培養表面にかかる材料を層置しなければならないという欠点が障害となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞増殖および侵入のための足場の作成のために以下の3つのタイプのポリマーを使用することを考慮する: バイオポリマー(生体中で形成されるポリマー: コラーゲン、ゼラチン、等)、合成ポリマー(体外で化学的に合成されるポリマー: アクリレート、ポリビニルアルコール、等)、および生合成ポリマーの組合せ。本発明は、これらのポリマーの、付着、増殖を支持する足場としての使用、そして最終的には移植の際に細胞を支持する媒体としての使用を考慮する。この使用は、細胞補充療法、特に老化過程において神経堤起源の細胞が損傷することが多い脳および眼の後側における細胞補充療法の成功に重要である。バイオポリマーには以下の7つの一般分類がある: ポリヌクレオチド、ポリアミド、多糖、ポリイソプレン、リグニン、ポリホスファートおよびポリヒドロキシアルカノエート。例えば、米国特許第6495152号を参照。バイオポリマーは、IV型コラーゲンからポリ有機シロキサン組成物まで多様であり、その表面にはカーボン粒子が埋め込まれているか、または、一級アミンおよび任意にペプチドで処理されているか、一級アミンまたはカルボキシル含有シランまたはシロキサンとともに処理され(co-cured)ているか(米国特許第4822741号)、または例えば、その他の修飾コラーゲンが知られており(米国特許第6676969号)、それらは、II型コラーゲン材料をグリコサミノグリカンとともに放置して、脱脂およびその他の処理に供された天然軟骨材料を構成するか、あるいは、精製II型コラーゲン繊維は、グリコサミノグリカンおよびその他の必要な添加剤と混合され得る。かかるさらなる添加剤には、例えば、軟骨細胞(chrondocyte)のII型コラーゲン繊維への付着を補助するコンドロネクチンまたはII型アンカリン、および増殖因子、例えば、軟骨誘導因子(CIF)、インスリン様増殖因子 (IGF)およびトランスフォーミング増殖因子(TGFβ)が挙げられる。
【0008】
発明の概要
本発明の一つの側面は、外科的切除に先だって置換すべき乳輪などの皮膚の特徴の型を取ること、以下の特性を有する足場を用いて、例えば乳頭および乳輪などの軟組織特徴の大きさと形状を再形成することを含む足場の使用を含む: a) 生体適合性; b)皮膚組織を足場の上で上皮化させる能力; c)足場本体に細胞を組込む能力; d)および、神経線維を足場実体へと浸潤させる能力。これによって、患者は生来の組織と同じ大きさと形状および外見を有するのみならず、機能しうる感覚をも有する再構築された軟組織特徴を与えられるという利点を有する。
【0009】
本発明の重要な側面は、置換または再構築されるべき軟組織特徴における神経浸潤を促進するポリマー/バイオポリマーから構成されるあつらえられた形状の足場の使用である。神経の増殖および機能を促進する能力は非常に重要であり、従来技術では適切に解決されていない問題である。
【0010】
本発明の別の重要な側面は、細胞移植過程の際のマイクロキャリア上の多くのヒト細胞タイプ、例えば、上皮細胞、神経細胞、およびその他の細胞の接着のために特化した付着および生存用足場の作成である。本発明に用いられる足場は、当該技術分野において知られている標準的物質、例えば、コラーゲン、ラミニン、およびポリ-L-リシン、によって被覆されていてもよいし、その他の細胞、例えば、腫瘍細胞によって分泌される細胞外マトリックス(ECM)タンパク質であってもよく、かかる細胞外マトリックス(ECM)タンパク質は培養表面上に分泌され、次いで細胞は除去される。本発明者らは、ダイヤモンド状炭素が、ヒト細胞の培養に用いることが出来る新規なマトリックスであることを見いだした。かかるDLC被覆は、ガラス、プラスチック、バイオポリマーゲル、コラーゲンおよびゼラチン、GAGS、合成ポリマーおよび金属から構成されるマイクロキャリア上に沈着させることができる。DLC被覆は、その他のタイプの被覆、例えば、細胞外マトリックス (ECM)、接着分子および増殖因子、の上に添加すればよい。
【0011】
DLCフィルムの機械的およびトライボロジー的性質(空中での摩擦係数およそ0.1、約80GPaもの硬度、そして弾性率は600GPaに達する)は、ダイヤモンドの性質に非常に近い。さらに、これらフィルムは非常に激しい環境中で化学的に不活性であり、ダイヤモンドの密度に近い密度にて沈着させることが可能である。しかし、炭素蒸着とは異なり、ダイヤモンド、DLCフィルムは室温でルーチン的に作られ、それによって、基体が高温に耐えられない用途には特に魅力的となる。
【0012】
本発明の別の側面は、足場表面へのDLCの沈着またはその他のタイプの被覆を教示することであり、これは、ヒトおよび哺乳類の上皮、神経細胞ならびにその他の細胞タイプの付着および増殖を支持する。
【0013】
本発明の足場の構築に利用できるバイオポリマーに加えて、足場はまた、天然または合成起源のポリマーから構成されるものでもよい。天然バイオポリマーには、コラーゲンおよびその他の周知のポリマー物質が含まれる。合成ポリマーは、アクリルおよび誘導体またはコポリマーであってよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドまたはポリ-2- ヒドロキシメタクリレート、ポリビニルアルコールおよび誘導体ならびにコポリマーが挙げられる。足場は薄板であってもよいし、微小粒子形態であってもよい。足場の増殖を支持する性質を向上させるために、付着または増殖促進因子をその組成に合成の際に埋め込むか、または組み込んでもよい。さらに、神経細胞の増殖および複製を支持するのに好適な半固体足場から構成される三次元増殖培地もまたDLCで被覆して、神経細胞の増殖および維持を支持するその能力を増強してもよい。足場はまた、キトサンまたはアルギン酸ナトリウム「メイ・ポリマー(may polymer)」から構成されてもよい。
【0014】
これらおよびその他の本発明の目的、およびそれに付随する多くの利点は、以下の好適な態様の詳細な説明を参照するとより明らかとなるであろう。
【0015】
詳細な説明および好適な態様
本発明の態様の記載において、明確性のために特定の用語を用いる。しかし、本発明はそのように選択された特定の用語に限定される意図ではなく、それぞれの特定の用語は同様の目的を達成するために同様に機能するすべての技術的等価物を含むことを理解されたい。
【0016】
本発明の第一の側面は、軟組織特徴の形状と外見の再建を行うためのポリマー/バイオポリマー足場の使用である。かかる再建は、軟組織特徴の三次元形状を成形すること、および次いで、バイオポリマー/ポリマー足場上でヒト上皮を播種して増殖させることを含む。
【0017】
軟組織特徴の再構築に必要とされる事項は次に、足場における感覚神経と神経路の浸潤および増殖を介した、再構築された領域における感覚の再建である。ポリマー/バイオポリマー足場は、感覚神経が足場の中で増殖することが出来、それが一定の時間をかけて神経化する(enervate)ように、透過性である。その結果、再構築された軟組織部分において感触の少なくともある程度の感覚が再建する。
【0018】
本発明の組成物と方法を用いて多種類の軟組織特徴の複製と再構築が可能であると考えられる。例えば、乳輪に加えて、その他の部分、例えば、眼瞼、指先、唇、外陰部、耳や鼻の部分、およびその他の多くの軟組織特徴を本明細書に記載のようにして構築することが可能であると考えられる。
【0019】
上記のように、目的の軟組織特徴の再構築に用いられる生物学的足場(bioschaffold)は、広範な材料、例えば、コラーゲンを含む天然バイオポリマーおよびその他の周知のポリマー物質からできていると考えられる。足場は、合成ポリマー、例えば、アクリルおよびその誘導体またはコポリマー、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドまたはポリ-2-ヒドロキシメタクリレート、ポリビニルアルコールおよび誘導体およびポリマーから合成されたものでもよい。ポリマー足場は薄板であってもよいし、微小粒子形態であってもよい。さらに、足場ポリマーは、ラミニンまたはコラーゲンなどの標準的細胞接着タンパク質、ならびに上皮細胞層の付着を促進するためのDLCおよびその他の被覆の使用によって被覆してもよい。
【0020】
本発明のアプローチは、付着タンパク質、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、RGDS、IV型コラーゲン、ポリカルボフィルと結合したbFGF、およびポリカルボフィルと結合したEGFの、足場の中または表面での使用を伴う。ポリカルボフィルは軽度に架橋されたポリマーである。架橋剤はジビニルグリコールである。ポリカルボフィルはまた、その負の電荷の源である複数のカルボキシル遊離基を含有する弱いポリ酸でもある。これら酸基は、細胞表面との水素結合を可能とする。ポリカルボフィルはムチンと同様に、水中で自重の40〜60倍を吸着する能力を有し、一般に市販の下剤として用いられている(Equalactin、Konsyl Fiber、Mitrolan、Polycarb) (Park H、et al.、J. Control Release 1985; 2: 47-57)。ポリカルボフィルは巨大分子であり、それゆえ吸収されない。それはまた、非免疫原性でもあり、実験室においてさえ該ポリマーに対する抗体を作ることができない。
【0021】
最近、研究者らは組織再生のためのポリマー足場に対して生理活性分子を係留する(tethering)ことを報告している。L. Griffith Cima,"Polymer substrates for controlled biological interactions," J. Cell. Biochem., Vol.56, pp.151-161(1994);およびP.R. Kuhl et al., "Tethered epidermal growth factor as a paradigm for growth factor-induced stimulation from the solid phase," Nature Med.,vol. 2、pp. 1022-1027 (1996)を参照されたい。上皮増殖因子(EGF)を星形高分子(star-poly)(エチレンオキシド)(PEO)係留(tether)に共有結合させ、該係留を生分解性足場表面に固着させると、ラット肝細胞の細胞接着が40%上昇し、遊走が示された。L. Griffith-Cima、"Tissue engineered scaffolds for liver regeneration," Presented at Molecular Engineering of Polymers workshop: Directing Biological Response、American Chemical Society、November 1996を参照されたい。さらに、細胞内におけるDNA合成は、遊離EGFを含む培地においてみられたレベルと匹敵することが示された。
【0022】
足場材料のその他の様々な態様を、組織再構築における使用のために上皮細胞とともに用いることが出来る。例えば、米国特許第5986043号は、光重合可能な生分解性ヒドロゲルの、外科手術後の細胞接着の形成の低減における使用、組織表面への局所的な薬物の投与における使用、および患者における組織表面の接着における使用を開示している。米国特許第5906828号は、分岐係留により支持媒体に柔軟に結合した、増殖因子および細胞外マトリックス分子を含む増殖エフェクター分子、および、細胞および組織増殖の刺激および支持のための該組み合わせの使用を開示している。米国特許第5836313号は、ヒドロゲルの透明性、柔軟性および拡散性を維持しつつ角膜上皮細胞増殖のために好適な基体を提供するように設計された、薄層組織とヒドロゲルから構成される二層複合材料を開示している。具体的には、米国特許第6689165号には、PHEMA/MAAヒドロゲルの使用が記載されている。該ヒドロゲルの重合は、角膜上皮培養のために有用な、膨潤における変化をもたらさずに水と置換する溶剤溶液における光重合システムを用いて行われた。
【0023】
さらに、米国特許第5830504号および5654267号は、創傷治癒および組織再生の促進に有用であると言われている、マトリックス中で組み合わされたαγβインテグリンリガンドと増殖因子受容体リガンドとの組成物を開示している。米国特許第5760176号および5120829号は、ペプチドをその疎水性ドメインを用いて固体基体に結合させる方法を開示している。米国特許第5716633号は、上皮細胞増殖を促進することが出来る人工水晶体へと調製されたコラーゲンヒドロゲルを開示している。米国特許第5677276号は、創傷治癒および組織再生の促進に利用することが出来る、ヒアルロン酸ポリマーに結合したペプチドを開示している。米国特許第5512474号は、正に荷電した分子と細胞接着因子との組合せを担持する表面を有する支持材料を含む細胞培養システムを開示している。米国特許第5278063号は、細胞培養システムを最適化するため、および、様々な材料でできた表面への細胞の生体接着を向上させるために、表面へペプチドを化学的に移植して細胞表面接着を促進する方法を開示している。米国特許第5171264号は、ポリエチレンオキシド星形分子を支持体表面に共有結合によって固定化することによって作られるヒドロゲルを開示している。上記特許はすべてその全体が示されているかのように本明細書に引用により含める。
【0024】
本発明の一つの態様において、その合成の際に以下の1以上を含む付着混合物が埋め込まれているか、組み込まれている自立ポリマーを開示する:フィブロネクチン、ラミニン、RGDS、ポリカルボフィルと結合したbFGF、ポリカルボフィルと結合したEGF、およびヘパリン硫酸(heparin sulfate)。足場は所望の形状に成形することができ、その表面にヒト上皮培養細胞を播種し、集密までの増殖させることができる。
【0025】
足場表面への上皮細胞の播種に先だって、以下を含むあらかじめ決められた付着タンパク質混合物を剥離表面 (デスメ膜)に添加し、4℃で5〜60分間インキュベートする:フィブロネクチン (PBS中範囲0.1μg〜500 μg/ml)、ラミニン (PBS中0.1μg〜500μg/ml)、RGDS (PBS中0.01μg〜100μg/ml)、IV型コラーゲン (0.1 M 酢酸中範囲0.1μg〜1000μg)。残ったタンパク質混合物はインキュベーション期間の後に除き、その角膜をPBSで3回すすぎ、テフロン型の上に内皮側を上にして置く。
【0026】
ヒト上皮培養細胞を生理的食塩水中0. 05% トリプシンおよび0. 02% EDTAを用いて組織培養ディッシュから取り出す。細胞懸濁液をCoulter Particle Counter(Z1 model、Beckman-Counter)で計数し、約 50,000〜500,000 細胞/mlの調製物、好ましくは、5%胎児ウシ血清を含む培地(DME-H-16)またはフィブロネクチン、ラミニンおよび線維芽細胞増殖因子(10 ng〜400 ng/ml)などの付着タンパク質混合物を含む無血清培地200μl中約 200,000 細胞の調製物を、成形した(molded)生物学的足場の上に注意深く添加する。1%ヒアルロン酸ナトリウム、例えば、Healon(登録商標)(Advanced Medical Optics、Santa Ana、CA)のおよそ0.1〜0.5 mlの層を、細胞懸濁液上に保護剤として層置する。移植された上皮細胞を次いで10% CO2 インキュベーター中37℃で10 分〜24 時間インキュベートする。あるいは、被覆した上皮細胞を20 分間インキュベートし、その乳輪をPBS中25℃で三回すすぐと、すぐに移植に用いることが出来る。
【0027】
あるいは、培養中のヒト上皮細胞の維持方法、乳輪上皮細胞の増殖および付着タンパク質の調製物を、ポリマーゲル組成物からできた人工乳輪型生物学的足場の被覆に使用することができる。
【0028】
簡単に説明すると、ポリゲル型(mold)を乳輪形状となるように成形し、そして細胞側(上皮)を例えば、以下のような付着タンパク質および増殖因子の混合物によって処理する:フィブロネクチン (PBS中範囲 0.1〜500μg/ml)、ラミニン (PBS中範囲 0.1〜500μg/ml)、RGDS (PBS中範囲 0.01〜100 μg/ml)、IV型コラーゲン (0.1 M 酢酸中範囲 0.1 μg〜1000 μg)、FGF (PBS中10〜 400 ng/ml)、EGF (PBS中10〜 400 ng/ml)、またはTGFβ(PBS中1〜100 ng/ml)。10 分〜2 時間4℃でインキュベーションした後、人工型をPBSで三回すすぎ、約 50,000〜 約 106 細胞/ml、好ましくは約 150,000〜 250,000 細胞/200 ml培地 (5%FCSまたはフィブロネクチン、ラミニン、RGDS、およびIV型コラーゲンを含む付着タンパク質混合物を含有するDMA- H16)の密度にてヒト乳輪上皮培養細胞を乳輪型に添加する。層(10mg/mlヒアルロン酸ナトリウム、0.1〜0.5 ml)を保護剤として注意深く細胞層の上に載せ、そのボタンを10% CO2インキュベーターで37℃で10 分〜24 時間インキュベートする。この人工乳輪をPBSで三回すすぐ。
【0029】
本発明に記載の方法では、DLCおよび同様の被覆によるポリマー表面の被覆が可能であり、それによってポリマーは上皮起源由来の細胞のための担体として有用となる。足場は生分解性成分であってもよい。足場は、薄板の形態であってもよいし、微小粒子形態であってもよいし、あるいは半固体ブロックの形態であってもよい。足場はプラズマ銃を用いて被覆され、それによって所望の培養表面上に厚さ200〜 400オングストロームの炭素プラズマの薄層が沈着する。
【0030】
ダイヤモンド状炭素(DLC)被覆と同様に、非晶質窒化炭素(C-N)フィルムは非常に硬く、耐摩耗性を有しうる。該フィルムは人工股関節全置換術の無菌性弛緩の問題の解決のための候補として作用しうる。Du et alにより、器官培養における、シリコン、DLC被覆シリコンおよび非晶質 C- N フィルム-沈着シリコン上での骨芽細胞の形態学的挙動が走査型電子顕微鏡により調査されたと報告されている。シリコンウエハ上の細胞は、付着することができたが、拡張を伴うこの付着を維持することはできなかった。一方、DLC被覆および非晶質 C-N フィルム上では細胞は、細胞生理機能を明らかに損なうことなく付着、拡張および増殖した。被覆およびフィルム上での細胞の形態発育は対照における細胞と同様であった。かかる結果は、DLC被覆の生体適合性を支持するものであり、本発明における非晶質 C-N フィルムの生物医学的応用の可能性を有望なものとする(C. Du et al.、Biomaterials. 1998 Apr-May; 19(7-9): 651-8)。
【0031】
DLC被覆方法は以下の通りである: Lawrence Berkeley National Laboratory、Berkeley、CAによって製造された真空アークプラズマ銃からなるプラズマ装置は、関係する高電気出力および熱負荷を最小にするように繰り返しパルスモードにて作動する。炭素陰極が装着されると、プラズマ銃は方向性ストリーミングエネルギー約 20 eVの純粋な炭素プラズマの高密度プルームを形成する。プラズマを陰極からの粒子状物質をすべて除くように90° 磁性フィルター (ベント・ソレノイド)に注入し、放射プラズマプロファイルを平らにするよう作用する大きな永久磁石多極配置(multipore configuration)を通過させる; このようにして、炭素プラズマ沈着を大きな沈着領域にわたって空間的に均一にする。
【0032】
フィルムの均一性をさらに増強させるために、DLC被覆すべき基体をゆっくりと回転する円板に載せることにより、方位角不均一性を排除する。上記装置を用いて約 2〜4000 オングストロームの厚さ、好ましくは約200-400 オングストロームの厚さのDLCフィルムを形成した。
【0033】
細胞増殖または付着を支持する足場の能力を向上させるために、以下の一以上を含む付着混合物を合成の際にその組成に埋め込むか、または組み込む: フィブロネクチン(濃度範囲1μg〜500μg/mlポリマーゲル)、ラミニン(濃度範囲 1μg〜500μg /mlポリマーゲル)、RGDS(濃度範囲 0.1μg〜100μg/mlポリマーゲル)、ポリカルボフィルと結合したbFGF (濃度範囲 1 ng〜500 ng/mlポリマーゲル)、ポリカルボフィルと結合したEGF(濃度範囲 10 ng〜1000 ng/mlポリマーゲル)、NGF(濃度範囲 1 ng〜1000 ng/mlポリマーゲル)およびヘパリン硫酸(濃度範囲 1μg〜 500μg/mlポリマーゲル)。
【0034】
別の態様において、薄板または微小粒子形態にて被覆された足場は、上皮または神経細胞増殖のための担体として、そして、細胞移植術の際の細胞送達のための媒体として、用いられる。半固体ポリマーブロック形態は、神経性刺激検出器として機能するIC チップまたはCCD チップと結合した神経細胞維持装置として用いることが出来る。被覆された表面は、ウシ角膜内皮培養細胞により沈着される細胞外マトリックスでの被覆によってさらに改良され、次いで更にDLC被覆に供される。
【0035】
実施例 1: シート形態のバイオポリマー足場のDLCによる被覆
本発明のバイオポリマーシートはいずれの大きさでもよく、好ましくは 約 2 cm x 2 cmであり、それを回転ディスクに固定し、ディスクをゆっくりと回転するモータの上部のDLC被覆チャンバ中に配置する。プラズマ装置は方向性ストリーミングエネルギー約 20 eVの発射銃(ejecting gun)を介して純粋炭素プラズマの高密度プルームを発する。プラズマを、高品質、水素無含有ダイヤモンド状炭素を形成するためにあらゆる粒子状物質を除くように90°磁性フィルターに注入する。放射プラズマプロファイルを平らにするよう作用する大きな永久磁石多極配置(multipore configuration)を介して輸送される場合、炭素プラズマ沈着は大きな沈着領域にわたって空間的に均一となる。炭素プラズマプルームがポリマーシートを保持しているゆっくりと回転するディスクに近づくにつれ、DLCの均一なフィルムによりシート表面が被覆される。シートは種々の細胞、例えば、上皮細胞の培養に用いることもできるし、または、UV 照射または70%アルコールリンスでの滅菌後に細胞移植のための媒体として用いることもできる。
【0036】
実施例 2: 微小粒子の形態のバイオポリマー足場のDLCによる被覆
バイオポリマー微小粒子を専用の回転チャンバに入れ、炭素プラズマプルームを実施例1に記載のように生じさせる。プラズマ銃はDLCの噴霧をチャンバに導入し、一方、チャンバは垂直軸にてゆっくりと回転している。マイクロキャリアビーズを空気の流れに浮遊させて被覆チャンバに導入し、該ビーズを異なる空気の流れにおいて何回も上下させ、プラズマ銃をすべての面の均一な被覆を確実にするよう作動させる。この工程を約 2-3 時間持続させて、確実に粒子のすべての表面を均一かつ完全に被覆する。均一な約 200-400オングストロームの厚さのDLC薄層が球面全体に沈着する。生成物はUV照射またはアルコールリンスで滅菌し、包装および密閉し、使用時まで棚上で保存する。
【0037】
実施例 3:合成の際にその組成に付着または増殖促進因子が埋め込まれるか、組み込まれており、次いでDLCで被覆されたバイオポリマー足場
本発明の足場は以下の一以上を含む付着または増殖促進因子をその合成の際にその組成に埋め込むか、組み込んでもよい: フィブロネクチン(濃度範囲 1μg〜500μg/mlポリマーゲル)、ラミニン(濃度範囲1μg〜500μg/ml ポリマーゲル)、RGDS(濃度範囲 0.1〜μg〜100μg/mlポリマーゲル)、ポリカルボフィルと結合したbFGF(濃度範囲 lng〜500 ng/mlポリマーゲル)、ポリカルボフィルと結合したEGF(濃度範囲 10 ng〜1000 ng/mlポリマーゲル)、NGF(濃度範囲 1 ng〜1000 ng/mlポリマーゲル)およびヘパリン硫酸(濃度範囲 1μg〜500μg/mlポリマーゲル)。足場を次いで薄板または半固体ブロックにし、DLC沈着は実施例 1に記載したようにして行うことができる。あるいはポリマーは微小粒子または球体にしてもよく、DLC沈着は実施例 2に記載したようにして行うことができる。
【0038】
実施例 4:ウシ角膜内皮培養細胞によって沈着せしめた細胞外マトリックスによる足場の被覆、次いでシートまたは微小粒子のDLCによる被覆
バイオポリマーまたはポリマーシート、および微小粒子のブロックをまず培養表面上へのDLC沈着に先だって細胞外マトリックス (ECM)によって被覆してもよい。これを達成するために、ウシ角膜内皮細胞(BLE)を低密度 (約 2000〜 150,000 細胞/ml 、好ましくは約 20,000 細胞/ml)でシートまたはブロックの表面に播種するか、または、微小粒子の表面に付着させる。BCE 細胞は、10% ウシ血清、5%胎児ウシ血清、2%デキストラン (40,000 MV)および50 ng/mlのbFGFを添加したDME-H16を含有する培地に維持する。細胞を10% CO2中37℃で7 日間インキュベートし、その間に、濃度50 ng/mlのbFGFを一日おきに添加する。ポリマーシート、ブロック、または微小粒子を20 mM 水酸化アンモニウムによって5 分間処理することによりBCE 細胞を除去する。そして細胞外マトリックス被覆を有するバイオポリマーを十分な量のPBSで10回洗浄する。乾燥後、ECM被覆ポリマーシートまたはブロックを実施例 1に記載のようにDLC沈着に供し、一方、ECM被覆微小粒子を実施例 2に記載のようにDLC沈着に供する。ECMとDLCによる連続した被覆の後、ポリマーシート、ブロック、または微小粒子をUV照射またはアルコールリンスで滅菌し、神経細胞増殖のために、または細胞移植の媒体として使用する。
【0039】
実施例 5:組織培養実験器具の培養表面上のDLC沈着
平板培養表面、例えば、ディッシュ、フィルターインサート、チャンバスライド、シートおよびブロックの場合、器具を真空チャンバ中で培養表面を上にしてプラズマ銃に曝して、被覆工程を先に記載したように進めるとよい。マイクロキャリアビーズの場合、ビーズはすべての側面の均一な被覆を確実にするためにチャンバにおける流れの中に導入する必要がある。フラスコおよび試験管などの内側表面については、特殊改変プラズマ銃を容器に挿入し、所望の表面を被覆する。約 20〜 約 4000オングストローム、好ましくは約 200〜400オングストロームの均一な厚さのDLC薄層が培養表面に沈着する。生成物はUV照射またはアルコールリンスで滅菌し、包装し、密封し、使用時まで棚の上で保存できる。
【0040】
実施例 6: ウシ角膜内皮培養細胞により分泌されるECM、およびDLC沈着による培養表面の連続被覆
この態様において、低密度培養(約 1000〜 約 50,000 細胞/ml 、好ましくは 2000-5000 細胞/ml )のウシ角膜内皮細胞を目的の実験器具の培養表面に播種する。実験器具としては、ディッシュ、フラスコ、試験管、フィルターインサート、チャンバスライド、マイクロキャリアビーズ、ローラーボトル、細胞回収装置、シートおよびブロックが挙げられる。細胞を、10% ウシ血清、5% 胎児ウシ血清、2% デキストラン (40,000 MV)、50ng/mlのbFGFを添加したDME-H16を含む培地中に維持する。ウシ角膜内皮細胞を集密となるまで7-10 日間培養し、50 ng/mlのbFGFを一日おきに添加する。培地を除去し、細胞を蒸留水中の十分な20 mM 水酸化アンモニウムにて3〜30 分間処理する。表面を次いで十分な量のPBSで10回洗浄し、残余の水酸化アンモニウムを除去し、無菌層流フード中で乾燥させる。次いでDLC被覆を細胞外マトリックスの上に先に記載したようにして行うとよい。生成物をUV照射またはアルコールリンスで滅菌し、包装し、密封し、使用時まで棚の上で保存する。
【0041】
実施例 7:付着または増殖促進剤、次いでDLC沈着による培養表面の連続的被覆
この代替の態様において、一以上の付着または増殖促進剤は、以下から構成されるものであった:フィブロネクチン(濃度範囲 1μg〜500μg/m)、ラミニン(濃度範囲 1 μg〜500μg/ml)、RGDS(濃度範囲 0.1 μg〜100μg/ml)、ポリカルボフィルと結合したbFGF(濃度範囲 1 ng〜400 ng/ml)、ポリカルボフィルと結合したEGF(濃度範囲 10ng〜 1000 ng/ml)。付着または増殖促進剤を培養表面に添加し、次いで4℃で20 分間〜2 時間インキュベートする。表面を PBSで3回すすぎ、無菌層流フード中で乾燥させる。次いで生成物に、培養表面の付着または増殖促進剤被覆の上部にDLC 層を沈着させる。実験器具はUV照射またはアルコールリンスで滅菌し、包装し、密封し、使用時まで保存する。
【0042】
実施例 8: RPEおよびその他の神経細胞の被覆マイクロキャリア上での付着および培養
網膜色素上皮 (RPE) 細胞を、ウシ角膜内皮細胞由来の細胞外マトリックス (ECM)で前もって被覆した60mm 組織培養ディッシュで培養する。RPE 細胞に、15% 胎児ウシ血清 (FCS)および100 ng/mlの濃度のbFGFを含む培地を一日おきに与える。集密となると、培地を交換し、5 mlの新しい培地を添加する。次いで、DLCまたはその他の組合せであらかじめ被覆しておいた5-10x106 マイクロキャリアビーズをディッシュに添加する。多くのビーズがよく行き渡るように、ディッシュを8字型動作で8-10回回転させ、次いで10% C02で37℃でインキュベートし、マイクロキャリアをRPE 細胞と直接接触している底に沈ませる。濃度 100ng/mlのbFGF溶液を一日おきに培養に添加し、2.5 mlの培地をマイクロキャリアへの影響ができるだけ少なくなるよう細心の注意を払って上部から非常に注意深く吸引する。ディッシュからのRPE 細胞層は徐々にマイクロキャリアビーズに付着するようになり、ビーズ周囲にて増殖し始め、ビーズを培養ディッシュに投入してから7〜10 日後においてはマイクロキャリアビーズの全表面を被覆する層が形成されるに至る。マイクロキャリアを次いで細胞層から穏やかに剥離し、ローラーボトル中でさらに3 日間培養し、その後、細胞移植術のための脳幹への注入のために使用できるようになる。
【0043】
実施例 9: 乳頭再構築のための生合成ポリマーまたはヒドロゲル足場中での神経再生
0.5〜5%のゼラチンを含むN-ポリイソプロピルアクリルアミド/ゼラチン相互貫入ネットワークを以下の手順により合成する。N-イソプロピルアクリルアミド (NIPAAM) 濃溶液を3.98 gのNIPAAM、0.068 gのN,N'-メチレンビス (アクリルアミド)、および0.122 mLのN,N,N',N'-テトラメチルチレンジアミンを十分に脱塩した水に総容積25 mLとなるように溶解することによって調製する。脱塩水中の5.16%ゼラチン (w/w水溶液)を、適当な量のゼラチンを脱塩水に溶解することによって調製した。過硫酸カリウム(KPS)溶液を5 mLの脱塩水に0.12 gの過硫酸カリウムを溶解することによって調製する。溶液は使用時まで約 4〜6℃で保存する。
【0044】
NIPAAMの重合: ゼラチン (gelation)溶液を約 55℃に加熱し、ゼラチンが完全に融解するまで撹拌する。ゼラチン溶液を約 30〜 約 35℃に冷却した後、1.53 mL のゼラチン溶液を1.47 mLの脱塩水と混合し、次いで3.0 mLのNIPAAM 溶液を添加する。混合物を数分間撹拌し、次いで0.12 mLのKPSを混合物に添加する。混合物を次いで即座にヒト乳頭の形状を有する型に注入する。型を密封容器に入れる。少なくとも3回窒素を用いて混合物を脱気することにより酸素を繰り返し除去する。混合物を少なくとも2時間室温で重合させる。
【0045】
ゼラチン架橋: 重合完了後、ゲルを型から取り出し、0.5% グルタルジアルデヒド水溶液に浸し、PNIPAAMゲルの内部のゼラチン鎖を架橋すると、相互貫入ネットワークが形成する。結果として得られたゲル乳頭足場を数日間にわたって脱塩水で(水を毎日交換することにより)洗浄し、残余の低分子と未反応NIPAAMモノマーを除去する。清浄なゲル乳頭足場を4〜6℃で保存する。
【0046】
移植および臨床評価:標準的乳房再構築手順にしたがって、生合成 PNIPAAM/ゼラチン乳頭足場を再構築された乳房の上に縫合し、術後7日間は毎日、その後は週に一回調べる。乳頭触覚感受性を乳頭の上の5カ所でCochet-Bonnet esthesiometer (Handaya、Tokyo)を用いて測定した。簡単に説明すると、細い繊維をこのツールから伸長させて乳頭に接触させ、対象の感触応答を記録する。まず、長く伸長した繊維を用いて非常にソフトに接触させ、その後対象が明らかに応答するまで徐々に繊維を短くする(より堅くし、触覚をよりはっきりさせる)。伸長を触覚感受性閾値として記録する。
【0047】
実施例 10 : 再構築された乳輪内部での神経細胞の再生
神経栄養因子が、末梢神経再生を刺激することが示されている。生合成足場乳頭に適用可能な可溶性因子としては限定的ではないが以下が挙げられる:酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、神経増殖因子(NGF)、グリア増殖因子 (GGF)、脳由来神経栄養因子 (BDNF)、繊毛様神経栄養因子 (CNTF)、血小板由来増殖因子 (PDGF)、およびインスリン様増殖因子1 (IGF-1)。
【0048】
PNIPAAM/ゼラチン・ゲル乳頭足場を実施例1に記載のように調製する。上記の増殖因子を、ゲルが低分子および未反応NIPAAMモノマーを含まなくなった際にゲルに添加する。増殖因子が豊富にあるゲル乳頭を移植に必要となるまで4〜6℃で保存する。
【0049】
実施例 11: 修飾バイオポリマー足場の態様
実施例1に記載の調製方法にしたがって、ポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)を以下からなる群から選択されるモノマーとの共重合により修飾できる:アクリレート、アクリル酸、メタクリレート、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、およびそれらの誘導体。生物起源の様々な生分解性ポリマーおよびポリマーにより、本発明のアクリルアミドポリマーを置換することができることを理解されたい。
【0050】
実施例 12: ゼラチンに基づく足場
別の態様において、実施例 10に記載の調製方法にしたがって、ゼラチンを、コラーゲンまたはゼラチンとコラーゲンとの組合せによって置換する。この方法を実施例 10にしたがって行う。
【0051】
本発明の記載に当たり、添付の請求の範囲によって規定される本発明の精神から逸脱することなく本発明に対する様々な改変が当業者に明らかである。米国特許第、特許出願、およびその他のすべての上記参考文献の開示は、すべてその全体が示されているかのように本明細書に引用により含める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、哺乳類の軟組織特徴または領域の補綴再構築のための生体適合性基体:
a)ポリマー、バイオポリマーまたはそれらの組合せを含む足場;
b) 足場の合成の際の付着または増殖促進剤の足場への埋め込みまたは組込み;および、
c)ここで、該足場はレシピエント哺乳類の皮膚上皮特徴または領域の形状となるように成形されている。
【請求項2】
以下を含む、哺乳類の軟組織特徴または領域の補綴再構築のための生体適合性基体:
a) ポリマー、バイオポリマーまたはそれらの組合せを含む足場;
b) 足場の合成の際の以下の一以上を含む付着または増殖促進剤の足場への埋め込みまたは組込み: ラミニン、フィブロネクチン、RGDS、ポリカルボフィルと結合したbFGF、ポリカルボフィルと結合したEGF、およびヘパリン硫酸;および、
c) ここで、該足場はレシピエント哺乳類の皮膚上皮特徴または領域の形状となるように成形されている。
【請求項3】
再構築されるべき軟組織特徴が、ヒトの耳、乳輪、鼻、唇、外陰部、指先、および爪床などのいずれの軟組織特徴であってもよい、請求項1の生体適合性基体。
【請求項4】
足場が以下を含む群から選択される請求項1の組成物:
a)コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、フィブリンおよびアルギン酸を含むがそれらに限定されない天然ポリマー;
b)ポリアクリル酸および誘導体、ポリエチレンオキシドおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリホスファゼン、ポリペプチド;PNIPAAM/ゼラチン;NIPAAMを含むがそれらに限定されない合成ポリマー;および、
c) a)の天然ポリマーとb)の合成ポリマーの混合物を含むさらなる組成物。
【請求項5】
以下の工程を含む、哺乳類の軟組織領域の補綴再構築方法:
a) 患者の軟組織領域の三次元型を作る工程;
b)合成の際に付着および/または増殖剤が埋め込まれたか、または組込みまれた足場を含む生体適合性基体を作成する工程;
c) 該生体適合性基体を該患者の軟組織領域の三次元型に入れて、再構築するべき患者の軟組織領域の解剖学的レプリカである軟組織領域の形に成形する工程;
d)工程cの生体適合性基体を後の再構築外科手術の際に患者の適当な組織に移植し、除去可能な縫合糸で固定する工程;
e)上皮細胞を足場の表面で増殖させて皮膚被覆を提供し、生体適合性基体によって提供される足場と継ぎ目無く結合させる工程;および、
f)神経および神経線維を生体適合性基体の中へと増殖させ、感覚を有する軟組織領域を提供する工程。
【請求項6】
以下の工程を含む、哺乳類の軟組織領域の補綴再構築方法:
a) 患者の軟組織領域の三次元型を作る工程;
b)合成の際に以下の一以上を含む付着剤が埋め込まれたか、または組込みまれた足場を含む生体適合性基体を作成する工程: ラミニン、フィブロネクチン、RGDS、ポリカルボフィルと結合したbFGF、ポリカルボフィルと結合したEGF、およびヘパリン硫酸;
c) 該生体適合性基体を該患者の軟組織領域の三次元型に入れて、再構築するべき患者の軟組織領域の解剖学的レプリカである軟組織領域の形に成形する工程;
d) 工程cの生体適合性基体を後の再構築外科手術の際に患者の適当な組織に移植し、除去可能な縫合糸で固定する工程;
e) 上皮細胞を足場の表面で増殖させて皮膚被覆を提供し、生体適合性基体によって提供される足場と継ぎ目無く結合させる工程;および、
f) 神経および神経線維を生体適合性基体の中へと増殖させ、感覚を有する軟組織領域を提供する工程。
【請求項7】
該再構築するべき軟組織特徴がヒトの耳、乳輪、鼻、唇、外陰部、指先、および爪床などのいずれの軟組織特徴であってもよい、請求項5の哺乳類の軟組織領域の補綴再構築方法。
【請求項8】
該生体適合性基体が以下を含む群から選択されるバイオポリマーから構成される請求項5の方法:
a)コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、フィブリンおよびアルギン酸を含むがそれらに限定されない天然ポリマー;
b)ポリアクリル酸および誘導体、ポリエチレンオキシドおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリホスファゼン、ポリペプチド; PNIPAAM/ゼラチン; NIPAAMを含むがそれらに限定されない合成ポリマー;および、
c) a)の天然ポリマーとb)の合成ポリマーの混合物を含むさらなる組成物。
【請求項9】
以下の工程を含む、哺乳類の耳領域の補綴再構築方法:
a) 患者の耳領域の三次元型を作る工程;
b)合成の際に以下の一以上を含む付着剤が埋め込まれたか、または組込みまれたバイオポリマーを含む生体適合性基体を作成する工程: ラミニン、フィブロネクチン、RGDS、ポリカルボフィルと結合したbFGF、ポリカルボフィルと結合したEGF、およびヘパリン硫酸;
c) 該生体適合性基体を該患者の耳の三次元型に入れて、患者の耳の解剖学的レプリカである耳の形に成形する工程;
d) 工程cの生体適合性基体を後の再構築外科手術の際に患者の頭皮組織に移植し、除去可能な縫合糸で固定する工程;
e) 上皮細胞を足場の表面で増殖させて皮膚被覆を提供し、生体適合性基体によって提供される足場と継ぎ目無く結合させる工程;および、
f) 神経および神経線維を生体適合性基体の中へと増殖させ、感覚を有する耳を提供する工程。
【請求項10】
生体適合性基体が以下を含む群から選択されるバイオポリマーから構成される請求項7の方法:
a)コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、フィブリンおよびアルギン酸を含むがこれらに限定されない天然ポリマー;
b) ポリアクリル酸および誘導体、ポリエチレンオキシドおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリホスファゼン、ポリペプチド; PNIPAAM/ゼラチン; NIPAAMを含むがこれらに限定されない合成ポリマー; および、
c)a)の天然ポリマーとb)の合成ポリマーの混合物を含むさらなる組成物。
【請求項11】
以下の工程を含む、哺乳類の乳輪および乳頭領域の補綴再構築方法:
a) 患者の乳輪および乳頭領域の三次元型を作る工程;
b)合成の際に以下の一以上を含む付着または増殖剤が埋め込まれたか、または組込みまれた足場を含む生体適合性基体を作成する工程: ラミニン、フィブロネクチン、RGDS、ポリカルボフィルと結合したbFGF、ポリカルボフィルと結合したEGF、およびヘパリン硫酸;
c) 生体適合性基体を該患者の耳の三次元型に入れて、患者の乳輪および乳頭領域の解剖学的レプリカである耳の形に成形する工程;
d) 工程cの生体適合性基体を後の再構築外科手術の際に患者の乳房組織に移植し、除去可能な縫合糸で固定する工程;
e) 上皮細胞を足場の表面で増殖させて皮膚被覆を提供し、生体適合性基体によって提供される足場と継ぎ目無く結合させる工程;および、
f) 神経および神経線維を生体適合性基体の中へと増殖させ、感覚を有する乳輪および乳頭を提供する工程。
【請求項12】
生体適合性基体が以下を含む群から選択される足場から構成される請求項11の方法:
a)コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、フィブリンおよびアルギン酸を含むがこれらに限定されない天然ポリマー;
b) ポリアクリル酸および誘導体、ポリエチレンオキシドおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリホスファゼン、ポリペプチド; PNIPAAM/ゼラチン; NIPAAMを含むがこれらに限定されない合成ポリマー; および、
c)a)の天然ポリマーとb)の合成ポリマーの混合物を含むさらなる組成物。

【公表番号】特表2007−521114(P2007−521114A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543961(P2006−543961)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041179
【国際公開番号】WO2005/061019
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506188655)
【氏名又は名称原語表記】Hank C. K. WUH
【出願人】(506121560)セルラー・バイオエンジニアリング・インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】CELLULAR BIOENGINEERING, INC.
【Fターム(参考)】