説明

軟膏基剤の注入装置

【課題】所定量の軟膏基剤をチューブ容器のような充填口の小さな容器への注入や、広口の軟膏壺であっても正確に所定量を注入可能であるとともに、火傷の心配もなく安全で且つ場所もとらずに使い勝手のよい軟膏基剤の注入装置を提供する。
【解決手段】開閉手段を有する所定口径の注入口が底面に突設された軟膏基剤を収容する容器本体に収容された軟膏基剤を所定の温度に加熱、溶解するための第1の加熱手段が付設されているとともに、容器本体の注入口近傍に軟膏基剤の溶解温度よりも低い所定の温度に加熱する第2の加熱手段が付設されている注入器本体と、注入器本体を垂直または傾斜状態に支持する支持基台とからなるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転・公転式の撹拌脱泡機による混合調剤に使用される容器、特に注入口が狭いチューブ式の容器についても例えば白色ワセリンなどを主剤とする軟膏基剤を注入することが可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院や調剤薬局において皮膚疾患者に対して投薬される軟膏剤の多くは広口容器やチューブ容器に収容された市販のものが用いられているが、市販の軟膏剤は調合されている薬剤の成分が一定であり、患者によっては最適な処方といえず、病院や調剤薬局で独自に成分を調整した軟膏剤を軟膏壺と言われる容器に入れて供給している。
【0003】
ところで、軟膏剤は皮膚への塗着性や保持をよくする必要性などから例えば白色ワセリン、亜鉛化単軟膏、アズノールのような常温で粘性が高い基剤が用いられている。
【0004】
従って、これらの基剤に薬剤を混合調剤する際に常温で均一に混ぜ合わせることが困難であることから、加熱装置により所定の温度に加熱された軟膏練台を用いてヘラにより混合調剤がなされていたが、雑菌の混入や、他の薬剤の混入を防ぐために常に清浄に保つ必要があり、日頃の手入れや掃除が大変であるばかりか粘性のある軟膏基剤を頻繁に混練することから腱鞘炎を発症するなどの問題があった。
【0005】
そこで、短時間で且つ簡単に軟膏剤が混合調剤できる手段として、例えば特開2006−289163号公報などに提示されているような自転・公転式の撹拌脱泡機を用いた手段が有効であることが知られている。
【0006】
この自転・公転式の撹拌脱泡機を用いた混合調剤は、軟膏基剤と薬剤を入れた容器を自転・公転させることにより容器内の収容物に公転による大きな遠心力で押圧力を与え、自転による回転力により混合作用を相互に作用させて撹拌するものであり、従来のヘラにより混練する手段に比べて1/5程度の作業時間ですむばかりか混練と同時に脱泡が行われるので製品の含有空気による経時的劣化を遅延するという福次的な利点も有するなど優れた効果を発揮する。
【0007】
しかしながら、前述の如く軟膏基剤は粘性が高いことから、前述の広口の軟膏壺にヘラで軟膏基剤を充填し、これに所定量の主薬剤を添加した後、蓋をして自転・公転式の撹拌脱泡機により混合調剤することになり、所定量の軟膏基剤を計って充填する作業が困難であり、また、軟膏壺に充填した軟膏は指で掻き取って使用することから使用時に雑菌や埃などか混入することになり衛生面で問題がある。
【0008】
そこで、前記自転・公転式の撹拌脱泡機を用いて混合する調剤軟膏の使用形態として軟膏基剤と薬剤とを更に衛生的で使い勝手の良いチューブ容器に充填することが考えられ、チューブ容器に軟膏基剤と薬剤とを充填して前記自転・公転式の撹拌脱泡機により前記壺状容器と同様に調剤することが確認された。
【0009】
ところが、通常、軟膏用のチューブ容器は胴径が細い胴長に形成されており、常温で極めて大きな粘性を有する軟膏基剤を充填することが極めて困難であった。
【0010】
これを解決する手段として、加熱融解した軟膏基剤をチューブ容器に注入して充填することが考えられるが、軟膏基剤に流動性を与えて注入しやすくするには少なくともチュー
ブ容器に充填する際に軟膏基剤が溶解温度(一般的に用いられる例えば白色ワセリンなどの軟膏基剤における融解温度は38〜60℃程度)を保っていることが求められるが、実際にチューブ容器の充填口において軟膏基剤の融解温度を保持させるためには予めそれ以上の高温度の状態に加熱して貯留しておくことが必要であり、一般に軟膏基剤は熱伝導が低いことから必要量を短時間で溶解させるには例えば80℃程度の温度に耐える貯留槽が必要である。
【0011】
このように、従来、チューブ容器に軟膏基剤と薬剤とを充填して自転・公転式の撹拌脱泡機を用いた混合調剤方法を用いることにより病院や調剤薬局で処方された軟膏をチューブ容器に充填することが有効であることは確認されているが、常温で流動性がない軟膏基剤をチューブ容器に充填することが困難であり、また、軟膏基剤に流動性を与えるために加熱する手段を採る場合にも高温に加熱する必要から火傷の心配もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−289163号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】日本病院薬剤師会雑誌 第40巻4号395−399 2004年 東京医科大学病院薬剤部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような課題を解決して所定量の軟膏基剤をチューブ容器のような充填口の小さな容器への注入や、広口の軟膏壺であっても正確に所定量を注入可能であるとともに、火傷の心配もなく安全で且つ場所もとらずに使い勝手のよい軟膏基剤の注入装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため本発明は、開閉手段を有する所定口径の注入口が底面に突設された軟膏基剤を収容する容器本体に収容された軟膏基剤を所定の温度に加熱、溶解するための第1の加熱手段が付設されているとともに前記容器本体の注入口近傍に前記軟膏基剤の溶解温度よりも低い所定の温度に加熱する第2の加熱手段が付設されている注入器本体と、前記注入器本体を垂直または傾斜状態に支持する支持基台とからなるものとした。
【0016】
本発明によると、第1の加熱手段により容器本体に収容された軟膏基剤を所定の温度に加熱、溶解するとともに、第2の加熱手段により容器本体の注入口内に滞留する軟膏基剤が大気により冷却されて流動性を消失して流出が阻止されるのを防止する。
【0017】
特に、第1の加熱手段を高温として容器本体に収容された軟膏基剤を迅速に溶解温度に加熱するとともに、第2の加熱手段では保温程度の火傷の心配のない温度に加熱して注入口での固化による流出阻止を防止する。
【0018】
また、本発明において、前記注入器本体を構成する軟膏基剤を収容する容器本体が、開口部に前記開閉手段を有する所定口径の注入口が頂面に突設されているとともに前記注入器本体の底部に達する吸入口を有する通管が挿通、配置されている蓋体を着脱可能に装着した有底筒状であり、前記注入器本体を垂直または傾斜の倒立状態で支持基台に支持する場合には、容器本体として市販の容器に嵌装されている蓋体を取り外して本発明の蓋体をそのまま装着することにより市販の容器を容器本体として使用することができるのできわめて経済的であり、また、市販の容器から移しかえる手間も不要である。
【0019】
尚、前記蓋体に形成した貫通孔に差し込み端が前記注入器本体の底部に達する吸入口を有する通管が挿通、配置されていることにより、蓋体を装着した注入器本体内に充填した軟膏基剤を注入口から注出させる際に注入器本体内に空気を導入することにより内部の減圧により軟膏基剤の注出が阻止されることを防ぎ、必要であれば、貫通孔に形成した空気の導入管から例えば圧搾具などから圧縮空気を送ることにより更に迅速に軟膏基剤が抽出される。
【0020】
更に、本発明において、第1の加熱手段が前記容器本体の胴部に巻回させる帯状のヒータであるとともに断熱カバーで覆われている場合には、注入器本体に充填した軟膏基剤を迅速に加熱することができるばかりか全体を均一な温度に保つことができ、断熱カバーに覆われていることにより大きな保温効果が発揮できるので省エネルギーとすることもできる。
【0021】
更にまた、本発明において、支持基台に複数の支持部が形成されており、前記各支持部に前記注入器本体が着脱可能に支持される場合には予備の注入器本体を備えておくことにより使用中の注入器本体の軟膏基剤がなくなったときに即座に予め加熱して融解しておいた予備の注入器本体から注入することが可能であり、また、複数の注入器本体に異なる種類の軟膏基剤を充填しておくことにより処方に合わせて適宜必要な軟膏基剤を即座に提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
所定量の軟膏基剤をチューブ容器のような充填口の小さな容器への注入や、広口の軟膏壺であっても正確に所定量を注入可能であるとともに、火傷の心配もなく安全で且つ場所もとらずに使い勝手のよい軟膏基剤の注入装置を提供することができる。また、例えば例えば直径が18〜25mm程度のチューブ容器では常温にて白色ワセリンなどの軟膏基剤は常温では粘度が高く、そのままでは自転・公転式の撹拌脱泡機にて処理しても、撹拌脱泡ができないが、本発明によればチューブ容器に充填された軟膏基剤は加熱されて粘度が低下しているのでそのままの状態で撹拌脱泡が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の注入器本体についての好ましい実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1に示した実施の形態に用いられる注入器本体の分解斜視図。
【図3】図2に示した実施の形態の注入器本体の縦断面図。
【図4】本発明の異なる実施の形態を示す分解斜視図。
【図5】図4に示した実施の形態の縦断面図。
【図6】図4に示した実施の形態の使用状態における縦断面図。
【図7】本発明に用いられる加熱手段の異なる実施の形態を示す斜視図。
【図8】本発明の注入器本体の異なる実施の形態を示す斜視図。
【図9】図8に示した実施の形態の注入器本体を支持する支持基台についての実施の形態を示す斜視図。
【図10】図8に示した実施の形態の注入器本体を支持する支持基台についての異なる実施の形態を示す斜視図。
【図11】図8に示した実施の形態の注入器本体を支持する支持基台についての更に異なる実施の形態を示す斜視図。
【図12】本発明の更にまた異なる実施の形態を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0025】
図1は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、主として内部に例えば白色ワセリンのような軟膏基剤を充填する一対の注入器本体1,1とこの注入器本体1,1を支持する支持基台2とから構成される。
【0026】
尚、軟膏基剤としては例えば白色ワセリン、亜鉛化単軟膏、アズノールのような常温で粘性が高い基剤が用いられる。
【0027】
そして、注入器本体1は図2および図3に示すように、底面112に口部113が突設された軟膏基剤を収容する例えばステンレスや銅などの金属製で頂面を開口した容器本体11と、前記容器本体11の胴部111に付設される帯状または筒状の電気ヒータからなる第1の加熱手段19と、容器本体11の胴部111の前記口部近傍に付設される帯状または筒状を呈するセラミックヒータなどの電気ヒータからなる第2の加熱手段20と、底部に前記口部113を挿通する開口部64を形成した断熱ケース6と第1の加熱手段19および第2の加熱手段20と前記断熱ケース6との間に嵌挿される断熱材62を有している。図面中、符号17は前記断熱ケース6の開口端に被せられる蓋体である。
【0028】
また、容器本体11の口部113には、例えば水道のコックのような開閉手段14を有する所定口径の注入口15が螺着されている。
【0029】
尚、特に、前記第1の加熱手段19は前記容器本体11に充填された軟膏基剤を溶解保持するための熱源であり、少なくとも使用する軟膏基剤の融点を超える温度に加熱可能なものが必要であり例えば80℃程度の加熱温度に適したものが、第2の加熱手段は前記第1の加熱手段19により溶融された軟膏基剤が流動性を保った状態で前記注入口15から流出可能な温度状態に保持すればよく、また、注出口15は直接手で触れる部分であることから火傷の心配もあり、前記第1の加熱手段19よりも低温、例えば45℃程度の加熱温度に保持可能なものでよい。また、通常の温度制御の場合と同様に温度制御装置(図示せず)により所定の温度制御を行うものである。
【0030】
そして、前記構成を有する注入器本体1,1が前記断熱ケース6に付設したクランプ30を介して支持基台を形成する基台28に立設させた支柱29に止めねじ28,28により固着させたものである。
【0031】
本実施の形態を使用するには、市販の容器(図示せず)に収容されている軟膏基剤をヘラなどを用いて容器本体11内へ移しかえ、前記第1の加熱手段19と第2の加熱手段20を用いて注入器本体1内の軟膏基剤3を加熱溶解する、例えば軟膏基剤3が白色ワセリンの場合には溶融温度は38〜60℃程度であり、この温度になるように加熱すればよいが、本実施の形態では例えば80℃程度に加熱するときわめて迅速且つ確実に加熱時間の短縮を図ることができる。
【0032】
このとき、注入口15については、前記第1の加熱手段19により溶融された軟膏基剤3を第2の加熱手段により溶融状態に保つだけでよく、また、加熱しすぎると注出時に火傷を負う心配があることから例えば45℃程度でよい。
【0033】
そして、前述のような状態にして調剤するのを待ち、調剤が必要なときには、図1に示すように、後端部を開放したチューブ容器4を用意し、その後端に形成した開放部に開閉手段14を操作して注入口15から容器本体11に貯留している溶融状態の軟膏基剤を所定量だけ注いで充填する。
【0034】
前記注入口15の口径が6.5mm程度の小径であっても自然流出が可能であり、その結果、例えば胴径が18もmm程度のチューブ容器4であっても容易に充填することがで
きた。
【0035】
図4は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、主として内部に例えば白色ワセリンのような軟膏基剤を充填する注入器本体1とこの注入器本体1を倒立させた状態で支持する支持基台2とから構成される。
【0036】
そして、注入器本体1は、有底筒状で軟膏基剤を収容する容器本体11とその開口部に例えばねじ嵌合により着脱可能に且つ少なくとも液密に被着される蓋体12とを有している。
【0037】
尚、通常軟膏基剤は例えば500g〜1kg程度の有底筒状の容器に充填して市販されているので容器本体11として市販の容器に嵌装されている蓋体13を取り外して本発明の蓋体12をそのまま装着することにより市販の容器を容器本体11として使用することができるのできわめて経済的であり、また、市販の容器から移しかえる手間も不要である。
【0038】
また、前記本発明における蓋体12は例えばステンレスや銅、鉄などの容器本体11を形成する樹脂に比べて熱伝導率のよい金属により形成されると好ましく、その頂面に例えば水道のコックのような開閉手段14を有する所定口径の注入口15が突設しているとともに蓋体12に形成した貫通孔16に差し込み端が容器本体11の底部に達する吸入口171を有する通管17が挿通、配置されている。
【0039】
更に、前記容器本体1の胴部111には容器本体に収容された軟膏基剤を所温度に加熱、溶解するための帯状のヒータである第1の加熱手段19が巻回され、前記蓋体12の胴部121には例えば帯状のセラミックヒータなどからなる第2の加熱手段20が設けられている。この第2の加熱手段は蓋体12の胴部に巻く回させた帯状または環状の帯体に付設し、或いは直接蓋体12に内蔵させてもよくも手段は問わない。
【0040】
特に、前記第1の加熱手段19は前記容器本体11に充填された軟膏基剤を溶解保持するための熱源であり、少なくとも使用する軟膏基剤の融点を超える温度に加熱可能なものが必要であり(例えば80℃程度)、第2の加熱手段は前記第1の加熱手段19により溶融された軟膏基剤を流動性を保った状態で前記注入口15から流出可能な温度状態に保持すればよく、また、注出口15は直接手で触れる部分であることから火傷の心配もあり、前記第1の加熱手段19よりも低温(例えば45℃程度)に保持可能なものでよい。
【0041】
勿論、第1及び第2の加熱手段19,20は他の従来周知の形式のものであってもよく、また、通常の温度制御の場合と同様に温度制御装置(図示せず)により所定の温度制御を行うものである。
【0042】
一方、前記注入器本体1を垂直または傾斜の倒立状態に支持する支持基台2は、本実施の形態では前記注入器本体1を支持する支持基台本体28とこの支持基台本体28の下部に配置された脚部22,22とから構成される。
【0043】
そして、支持基台本体21は全体が箱形で内部に注入器本体1を傾斜状態で支持する支持部211が配置されているとともに、少なくとも頂板23の一部に軟膏基剤3を充填した注入器本体1を収容可能なように開閉部分23が形成されており、前板24の下端縁には収容した注入器本体1の注入口15を開閉手段14を含めて露出させる半円弧状の切欠部25が形成されている。
【0044】
尚、本実施の形態に示した支持基台2は一例であり、注入器本体1を垂直または傾斜の
倒立状態に支持することが可能であればよく、他の形状や構造であっても良い、また、本実施の形態では支持基台2を箱形としたことにより内部に収容、配置する注入器本体1を包囲することにより保温効果を発揮するので放射熱による熱損出が少なくエネルギー効率に優れているが、支持基台2を断熱剤で構成し或いは断熱処理を施すことで、より一層の低エネルギー化を図ることができる。
【0045】
以上の構成を有する本実施の形態は、前述のように、例えば市販されている状態の軟膏基剤容器の蓋体13を取り外して本実施の形態における蓋体12を装着し、胴部に第1の加熱手段19を巻回、装着し、これを図1および図6に示すように斜め倒立状態にして支持部211で支持することにより基台本体の所定位置に支持する。
【0046】
次に、前記第1の加熱手段19と蓋体12に設置されている第2の加熱手段20を用いて注入器本体1内の軟膏基剤3を加熱溶解する、例えば軟膏基剤3が白色ワセリンの場合には溶融温度は38〜60℃程度であり、この温度になるように加熱すればよいが、本実施の形態では容器本体11として市販の比較的厚手の熱伝導が低く、また高温耐性に心配のある合成樹脂材により形成されているばかりか溶融させる軟膏基剤である白色ワセリン自体も熱伝導度がよくないことから迅速な加熱時間や熱効率を考慮した結果、例えば80℃程度に加熱する場合が優れている。勿論、容器本体11を例えば金属のような熱伝導度のよいものや耐高温性の高い他の材料により形成した場合には、市販の容器から移し替える手間はかかるが、より高温で加熱することも可能であって、加熱時間の短縮を図ることもできる。
【0047】
このとき、蓋体12については、前記第1の加熱手段19により溶融された軟膏基剤3を溶融状態に保つだけでよく、少なくとも溶融温度に蓋体12内を保てばよい。
【0048】
そして、前述のような状態にして調剤するのを待ち、調剤が必要なときには、後端部を開放したチューブ容器4を用意し、その後端に形成した開放部に開閉手段14を操作して注入口15から容器本体11に貯留している溶融状態の軟膏基剤を所定量だけ注いで充填する。
【0049】
本実施の形態においても、前記注入口15の口径が6.5mm程度の小径であっても自然流出が可能であり、その結果、例えば胴径が18mm程度のチューブ容器4であっても容易に充填することができた。
【0050】
このとき、本実施の形態では蓋体12に空気送り用の通管17が備えられているので軟膏基剤3の流出によっても容器本体11内が負圧になる心配が無く、前記注入口15の口径が6.5mm程度の小径であっても自然流出が可能であり、その結果、例えば胴径が18mm程度のチューブ容器4であっても容易に充填することができた。
【0051】
また、本実施の形態では、前記導入管17の先端に手動式のゴムポンプ5を接続して圧縮空気を送ることにより、例えば軟膏基剤3の残量が少ない場合や通管が詰まったような場合にも容器本体11内の圧力を上昇させて軟膏基剤3を注出させることもできる。
【0052】
図7は本発明の更に異なる実施の形態を示すものであり、注入器本体11の構成は前記図1〜3に示した実施の形態とほぼ同様であるが、帯状の第1の加熱手段19と環状部材に付設した第2の加熱手段20とが一体に形成されており、それぞれ1つのコネクター4により制御装置(図示せず)等に接続可能としたものであり、装着に際して、蓋体12を環状の第2の加熱手段に差し込んで、容器本体11の胴部に帯状を呈する第1の加熱手段を巻回した後、両端部に付設した面状ファスナ201を用いて止着すればよく、装着性等に優れたものとなっている。
【0053】
また、図8に示した実施の形態は、注入器本体1は前記各実施の形態と同様であるが、前記注入器本体1を例えばABS樹脂のような比較的熱伝導度の低い材質により形成された断熱ケース6に断熱材62により断熱層を形成して収容したものであり、前記図3乃至5に記載した実施の形態のように支持基台2に断熱部を設けることなしに保温効果を向上させることができる。
【0054】
特に、本実施の形態は前記断熱ケース6を分割してそれらを蝶番63により開閉可能として装着性を良好にしたものであり、一部に開口部64を形成して注入部を突出させているので断熱ケース6に収容した状態で支持基台に支持させることによりそのまま使用することができるという利点を有している。
【0055】
図9乃至図11は前記図8に示した実施の形態の注入器本体1についての支持基台2を示すものであり、特に支持基台2が複数の注入器本体1を取り付可能な構成であり、例えば異なる種類の軟膏基剤を用意しておく場合、或いは同一種類の軟膏基剤であっても予備の注入器本体1を用意して予め充填した軟膏基剤を溶融状態に保っておき、先に使用した注入器本体1が途中で空になっても即座に予備の注入器本体1に切り替えることにより加熱時間を待たずして注出させることができるので極めて効率が良く、患者を待たせる心配もない。
【0056】
図9に示した実施の形態は、支持基台2が例えばリング状の基部26とこの基部26を支える複数(例えば3本)の支持脚27,27,27により形成されており、前記断熱ケース6に収容した注入器本体1を例えば止めねじ28,28により斜めに倒立させた状態で各支持脚27に断熱ケース6に設けた支持部61,61を固着するものである。
【0057】
この実施の形態では、簡単な構成で安価に且つ場所を取らずに複数の注入器本体1を設置することができる。尚、本実施の形態では断熱ケース6に設けた支持部61を固着する3本の支持脚27,27,27を設置したが、支持脚と注入器本体1とを更に増やしてもよく、更には、リング状の基部26に支持部を設けて複数の注入器本体1を取り付けるとともにリング状の基部26を支持脚27,27,27に対して水平方向に回動可能としておくことにより(図示せず)一方向において所望の注入器本体1を手前に配置することができるのできわめて便利である。
【0058】
また、図10に示した実施の形態は、支持基台2が基台28に支持柱29を立設させたものであり、前記支持柱29に斜め下方向へ向けて止着した複数のクランプ30に注入器本体1が固着されている。
【0059】
特に、本実施の形態では、注入器本体1を固着する支持柱29が回転可能であり、各注入器本体1が支持柱29を中心とした放射方向に角度を変えて支持させておくことにより支持柱29を回転させることで所望の注入器本体1を手前に位置させて使用することができる。尚、図中、符号8は各注入器本体1の加熱手段(図示せず)へプラグ71を介して電気を送るためのコンセント72やスイッチ73を備えた制御部である。
【0060】
更に、図11に示した実施の形態は、前記図10に示した実施の形態とほぼ同様であるが、一対の注入器本体1,1が支持柱29を挟んで対向位置に支持部6,6にそれぞれ配置されたものであり、重量のある注入器本体1,1をバランスよく配置したので支持柱29を基台28の中心に安定した状態に立設させることが可能であり、更に使い勝手がよい。
【0061】
図12は本発明の更にまた異なる実施の形態を示すものであり、全体の構成は善は図1
に示した実施の形態とほぼ同様であるが、容器本体11が前記図5に示した実施の形態のように市販の容器本体11の蓋体13を取り去ってそのままの状態で口部に本発明の金属製の注出口15を付設する蓋体12をそのまま嵌め込んだものであり、前記図1に示した実施の形態と異なり、市販の容器をそのまま容器本体11として使用することができるので軟膏基材の移し替えが不要でありきわめて便利である。
【符号の説明】
【0062】
1 注入器本体、2 支持基台、3 軟膏基剤、4 チューブ容器、6 支持部、11
容器本体、15 注入口、16 貫通孔、17 通管、19 第1の加熱手段、20 第2の加熱手段、112 底面、171 吸入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉手段を有する所定口径の注入口が底面に突設された軟膏基剤を収容する容器本体に収容された軟膏基剤を所定の温度に加熱、溶解するための第1の加熱手段が付設されているとともに前記容器本体の注入口近傍に前記軟膏基剤の溶解温度よりも低い所定の温度に加熱する第2の加熱手段が付設されている注入器本体と、前記注入器本体を垂直または傾斜状態に支持する支持基台とからなることを特徴とする軟膏基剤の注入装置。
【請求項2】
前記注入器本体を構成する軟膏基剤を収容する容器本体が、開口部に前記開閉手段を有する所定口径の注入口が頂面に突設されているとともに前記注入器本体の底部に達する吸入口を有する通管が挿通、配置されている蓋体を着脱可能に装着した有底筒状であり、前記注入器本体を垂直または傾斜の倒立状態で支持基台に支持することを特徴とする請求項1に記載の軟膏基剤の注入装置。
【請求項3】
前記第1の加熱手段が前記容器本体の胴部に巻回させる帯状のヒータであるとともに断熱カバーで覆われている請求項1または2に記載の軟膏基剤の注入装置。
【請求項4】
前記注入口が金属製である請求項1,2または3に記載の軟膏基剤の注入装置。
【請求項5】
前記支持基台に複数の支持部が形成されており、前記各支持部に前記注入器本体が着脱可能に支持されることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の軟膏基剤の注入装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−11070(P2012−11070A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151896(P2010−151896)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(510180717)
【Fターム(参考)】