説明

軟質の低弾性ポリウレタンフォームおよびそれらの製造方法

イソシアネート−反応性成分とイソシアネート成分の反応生成物に基づく新規な、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを開示する。該軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、(a)芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有する芳香族イソシアネートを実質的に含まないイソシアネート成分と、(b)イソシアネート−反応性混合物と、(c)触媒、および(d)水、界面活性剤、架橋剤および添加剤からなる群から選択される1種または複数種の所望成分を反応させることにより調製される。本発明方法により製造される軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、75〜105のイソシアネート指数と、16〜160kg/mの範囲に密度を有し、15%未満の落球反発弾性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族イソシアネートおよび/または脂環式イソシアネートおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートに基づく、低弾性ポリウレタンフォーム、およびその製造方法に関する。また、本発明は、該方法において有用な反応系と、特定のイソシアネート−反応性成分組成に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、圧縮からゆっくりと漸進的に回復することにより特徴づけられ、「低弾性」フォーム、「粘弾性」フォーム、「デッド」フォーム、「高減衰」フォーム、「形状記憶」フォーム、または「回復の遅い」フォームとして既知である。該フォームの物理的性質の大部分は、常套のポリウレタンフォームに近似し、低弾性フォームの弾性力はより低く、一般に、約15%未満である。
【0003】
低弾性ポリウレタンフォームは、優れた衝撃吸収性と優れた振動吸収性を有する。また、該フォームは形状適合性と、エネルギー減衰特性を有し、クッション素材に適している。低弾性フォームは、圧力を低減させるために、マットレス、枕、自動車シートのクッション、および家具のクッションとして使用でき、衝撃吸収体として、競技用の詰め物またはヘルメットに使用できる。
【0004】
柔らかい低弾性ポリウレタンフォームは、ヒトの胸部の触感と似ているので、ブラジャーパッドおよびショルダーパッドに使用できる。
【0005】
通常、低弾性ポリウレタンフォームは、450未満の当量を有する剛性または半剛性のトリオールと、800より高い当量を有する軟質トリオールを含有するポリオールブレンドから製造される。軟質の低弾性ポリウレタンフォームの大部分は、低イソシアネート指数(イソシアネート−反応性基に対するイソシアネート基のモル比×100)で製造される。多くの場合、該指数は90未満である。その結果、高架橋で、比較的低分子量のフォームポリマーが生成されるので、機械的性質、特に引裂き強度および伸びが低下する。また、製品の自由度が狭くなり、フォームの収縮を引き起す場合がある。従って、低弾性ポリウレタンフォームは、低弾性と、実用的な物理的性質と、再現性のある生産特性を備えるために、ポリオール、ポリイソシアネート、界面活性剤、架橋剤、触媒または他の添加剤の種類と量を改良することにより調製されている。
【0006】
米国特許第7388037号明細書において、5〜15mg/KOH/gのヒドロキシル価(ヒドロキシル数とも称され、ポリオール中の、反応に使用できる反応性ヒドロキシル基の量を測定することにより算出され、該測定法は、ASTM D-4274-88に記載されている)を有する軟質ポリオールの使用が開示されており、フォームの柔軟性がもたらされ、架橋を減少させることにより加工可能性が改良されたことを開示する。
【0007】
同様の提案が、米国特許第6617369号明細書に開示されている。全ポリオール組成100重量部に基づき50重量部の量でエチレンオキシドを含有するポリオールから成るポリオール組成物を使用することにより、低弾性と改良された加工可能性を備えるフォームが製造される。
【0008】
米国特許第6391935号明細書において、約1000より大きい数平均当量と、56未満のOH価を有するポリオキシアルキレンモノオールまたはポリエステルと共に、半剛体のポリオールを使用して、15%未満の弾力を有し90より高いイソシアネート指数を保持するフォームが開示されている。
【0009】
米国特許第6790871号明細書において、可塑剤の使用が報告されており、該発明において、ハロゲン化パラフィン、第1級ヒドロキシル基を含有する(C/C)脂肪族ポリマー、およびそれらの混合物を使用して、寒冷条件下でも良好な柔軟性を備える低弾性フォームを製造することが記載されている。
【0010】
軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、NASA(米国航空宇宙局)のAMES研究技術プログラムの結果として60年代半ばにおいて最初に開発された。開発の目的は、離陸および再突入の間に宇宙飛行士を苦しめるGフォースを再分配する低弾性フォームをもたらすため、および長時間の飛行に際して、職業パイロットへより快適な座席を提供するためであった(「IN・TOUCH」第1頁、第11巻第1号、2003年6月巻、ポリウレタンフォームアソシエーション(PFA)の定期刊行物、P.Oボックス1459、ウェーン、ニュージャージー州に記載されている)。しかしながら、その低弾性をもたらすために、配合物は多量の揮発性アミン触媒を必要とし、開発された低弾性フォームは極めて多量の揮発性有機化合物(VOC)を放出するので、密閉された空間で使用することが禁止された。その後、該フォームは、宇宙船または航空機内で使用されていない。
【0011】
近年、芳香族アミン、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)から製造されるポリウレタンフォームの分解による反応生成物としてのトルエンジアミン(TDA)およびジアミノジフェニルメタン(MDA)の安全性に関する懸念が増加しており、このような放出を減少させるために、種々の合成方法が開発されている。TDAおよびMDAは高い毒性化合物であり、世間の注目を集める発ガン性物質となりうる。米国特許第6391935号明細書(2002年5月21日発行、出願人バイエル)は、「粘弾性フォームを製造するために、低指数でトルエンジイソシアネート(TDI)を使用する場合、特に通常の硬化過程の後において、フォームは所望でない高濃度のトルエンジアミンを含有する」と記載する。
【0012】
EUROPUR(軟質ポリウレタンフォームブロック製造欧州連合。該団体は1966年に設立した)は、2007年に、「認証PUR(CertiPUR)」と称される自発的な計画を発表している。認証PURは、製品の安全性、健康性および環境性(SHE)に対する産業の責任を強調する計画である。認証PUR基準と合致させるために、多くの有害物質が制限されるか、禁止されている。認証PUR基準によると、ポリウレタンフォーム中の2,4-TDAおよび4,4’-MDAの総量および、2,4-TDAと4,4’-MDAの各量は、フォーム重量に基づき5ppmの上限を有する。
【0013】
化学物質の登録、評価、認可と制限(REACH)は欧州連合規則である。REACHは2007年6月1日に発効された。該規則は、欧州連合内の全ての企業、製造業者または化学物質の輸入業者が、これらの物質について欧州化学品機関(ECHA)の登録、評価および認可をうけることを要求する。ECHAは、2008年11月28日に定義されたREACH規則の第57条にSVHC(高懸念物質)を公表し、4'4-MDAは15種の有害物質のうちの1つである。
【0014】
米国特許出願公開第2005/0176838A1号明細書は、ウレタンおよびウレア結合の加水分解を減少させるために、15〜500mg KOH/gの間にヒドロキシル価を有する少なくとも1種のアクリレートポリオールを含有するポリオール組成物の使用を開示する。該特許文献は、「この開裂は、性能特性における大幅な悪化のみならず、芳香族アミン、例えばトルエンジアミン(TDA)およびジアミノジフェニルメタン(MDA)の生成も導くことが明らかである」と記載する。
【0015】
米国特許第6800607号明細書は、少なくとも1種の有機酸無水物または無機酸無水物をイソシアネート成分内へ添加し、次いで該イソシアネート成分とポリオール成分を反応させ、軟質ポリウレタンフォームを製造する方法を開示する。ポリウレタンフォーム中の酸無水物は、特に湿潤条件下および暖かい条件下において、関連する酸へと更に加水分解される。これらの酸は、フォーム中に存在する任意のアミン触媒でブロックを加水分解させた後に形成され、次いで、温暖および湿潤条件下にてウレタン結合および/またはウレア結合が再度解離することを防ぐ。残念なことに、このような方法はポリウレタンフォームの反応性を減少させ、その結果、反応混合物中の酸性度を増加させる。該方法は、比較的高い反応性を示す芳香族イソシアネートにのみ使用できるが、それらの比較的低い反応性に起因して、脂肪族イソシアネートまたは脂環式イソシアネートは使用できない。
【0016】
上述した処理を使用することによる大きな欠点は、TDAおよびMDAの生成を抑制できるが、このような芳香族アミンの生成を防げないことである。米国特許出願公開第2005/0176838号A1号明細書および米国特許第6800607号明細書において説明された全ての実施例は、熟成させたサンプル中においてTDAおよびMDAを減少させることができるが、特別な処理を行った場合であっても、依然としてこれらが充分な濃度で存在することを報告する(これら2つの明細書において説明された実施例に関すると、全てのフォーム実施例における2,4-TDAおよび4,4'-MDA濃度は、CertiPUR基準の上限値である5ppmを遙かに超えている)。
【0017】
軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、常套の弾力的な他の発泡材料により置き換えることができない特異的性質を有するので、芳香族イソシアネートを使用しない軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造するための方法を開発する必要がある。脂肪族イソシアネートおよび/または脂環式イソシアネートに基づく、軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、その要求に関して良好な解決策を提供する。
【0018】
脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートが備える、かなり低い反応性に起因して、それらは、ポリウレタンフォームの製造においてほとんど使用されない。より強い触媒の選択、より反応性の高いポリイソシアネート組成物の選択、高い反応性を示すポリオールを使用するポリオール組成物を選択する観点より、ごく僅かな合成法が研究されており、あるいは、実用的な物理的性質を備えるポリウレタンフォームの基礎となる脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートを製造するための別の製造方法が研究されている。
【0019】
米国特許出願公開第2008/0114088号明細書は、ウレタン形成触媒、発泡剤およびフォーム安定剤の存在下で、ポリオール混合物とポリイソシアネート化合物を反応させることを含み、90より大きいイソシアネート指数を示す軟質ポリウレタンフォームの製造方法を開示する。該ポリオール混合組成物は、二重金属シアン化物錯体触媒を用いて、開始剤へ、アルキレンオキシドを開環付加重合させることにより得られ、平均で2〜3個のヒドロキシ基を有し、10〜90mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオールであるポリオール(A)と、平均で、2〜3個のヒドロキシ基を有し15〜250mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエーテルポリオールであるポリオール(B)と、10〜200mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエーテルモノオールであるモノオール(D)と、平均で2〜6個のヒドロキシ基を有しポリオール混合物の全重量に基づき最大10重量%で300〜1830mg/KOH/gのヒドロキシル価を有するポリオールである、所望により添加されるポリオール(C)から成る。適当なイソシアネート化合物は、TDI、MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(MDIとも称される)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびそれらの誘導体からなる群から選択されることが更に記載されている。しかしながら、記載された方法に従いポリウレタンフォームを調製する場合において、これらの脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート、ならびに芳香族環へ直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネート、例えばXDIなどを使用する実施例または詳細な説明は存在しない。実際には、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートなどのより低い反応性に起因して、開示されたポリオール混合物は、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートを単独で使用することが困難である(以下の比較例C1〜C4を参照)。
【0020】
モリモト等による、1992年9月15日に発行された米国特許第5147897号明細書は、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーを使用して、黄変(yellowing)しないポリウレタンフォームの製造を開示する。該方法は、C-C10アルカン酸のカリウム若しくはナトリウム塩またはジアザビシクロアルケン触媒の存在下において、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーと、イソシアネート当量の0.4〜5倍量の水を反応させることを含む。プレポリマーは、100〜5000の平均分子量を有するポリオールと、ヒドロキシル当量の1.4〜2.6倍量の量で脂肪族ポリイソシアネートの付加重合から得られる、脂肪族イソシアネート末端プレポリマーである。脂肪族イソシアネートの反応性は、一般的に、芳香族イソシアネートの反応性よりも低い。プレポリマー内に脂肪族イソシアネートが形成される場合、分子の流動性はさらに減少し、反応性はさらに低減される。低減した反応性とプレポリマーの高い粘度に起因して、モリモト等の方法は、80kg/mより低い密度を有するポリウレタンフォームの製造に使用できず、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造に使用できない。
【0021】
デュ・パーズ等による、2001年6月5日に発行された米国特許第6242555号明細書は、少なくとも900kg/m(56pcf、ポンド/立方フィート)の密度を有する、微小細胞構造または非細胞構造の、軽量で安定したエラストマー性で、柔軟性または半柔軟性のポリウレタンを製造するための反応射出成形(RIM)法を開示する。該発明方法は、有機鉛触媒、有機ビスマス触媒および有機スズ触媒から選択された触媒の存在下で、24.5〜34重量%のNCO含有率を有するイソホロンジイソシアネートトリマー/単量体と、イソシアネート−反応性組成物を反応させることを含む。イソシアネート−反応性組成物は、(1)米国特許第5470813号明細書および、同第5498583号明細書に記載されるようなDMC(二重金属シアン化物)触媒で製造され、2〜4の平均公称官能価(nominal functionality)を有し、800〜4000g/モルの平均当量を有する低不飽和ポリエーテルポリオール(2)官能基として脂肪族OH基または脂環式OH基のみを有し、官能価が2であり、最大80g/モルの当量を有し、第1級OH含有量が少なくとも50%である、約3〜約20重量%の少なくとも1種の鎖延長剤、(3)2〜3の官能性脂肪族>NH、-NHまたは-OH基を有し最大150g/モルの当量を有する触媒を含有する、2〜10重量%の共触媒を含有する。なお、上記触媒のうちの少なくとも1種は第2級アミン基または第1級アミン基であり、上記触媒のうちの少なくとも1種はアミン開始触媒である。この発明は、黄変しないポリウレタン材料を製造する方法を提供する。しかしながら、該方法は反応射出成形法においてのみ使用でき、高密度の成形品の製造において使用される。
【0022】
三井武田ケミカル社による、2003年9月19日に発行された特開2003-261643号公報は、脂環式ポリイソシアネートを基剤とするポリウレタンフォームの製造方法を開示する。「CosmonateNBDI」(三井武田ケミカル社)として市販されている、より高価であり製造方法が限定される、新規なノルボルナンジイソシアネート(2,5(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを、多量の紫外線安定剤を用いてポリエーテルポリオールと反応させることで、黄変がほとんどないポリウレタンフォームが調製される。フォームの機械的特性に関する記載はなく、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造にそれを使用する実施例もない。
【0023】
倉敷紡績社による、2006年9月28日発行された特開2006-257187号公報は、生地、衛生用品または化粧用品向けのほとんど黄変しないポリウレタンフォームの製造方法を開示する。該ポリウレタンフォームは、ポリエーテルポリオールと、(70-30):(30-70)となるように質量を調整した(イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはIPDIトリマーまたはそれらの誘導体):(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)トリマーおよび/またはそれらのHDI誘導体)から成るポリイソシアネート組成物を反応させることにより製造される。さらに、該公報は、架橋の増加に起因して、得られたフォームが、改良されたフォーム硬さと、低い圧縮永久歪みを有することを開示する。軟質の低弾性フォームを製造する際に、ポリイソシアネート組成物を使用することは開示されない。これらのポリイソシアネート組成物を使用することにより、軟質の低弾性フォームを製造することは、多量の架橋に起因して困難であるので、その結果、加工性も悪くなる。それに加えて、このようなトリマーおよび誘導体におけるイソシアネート含量(NCO%)の減少に起因して、単にジイソシアネートを使用することと比べて特定のイソシアネート指数を得るために、該方法は、使用する脂肪族ジイソシアネートまたは脂環式ジイソシアネートよりもさらに多量のイソシアネート混合物を必要とする。これらのポリウレタンフォームのコストは増加する。また、イソシアネートの増加は、結果として劣化を促進する、ポリマー中におけるハードセグメントの増加を意味する。
【0024】
INOAC MTP社による、2001年3月21日に発行された特開2001-72738号公報は、弱酸のアルカリ金属塩と共に、ジアザビシクロアルケンまたはそれらのフェニル塩の存在下、脂肪族ジイソシアネートと、ポリオールオキシアルキレンの総重量100重量部に基づき18重量部より少ない含有量でオキシエチレンを有するポリオールを反応させることにより製造された、優れた耐水性を有し太陽光による変色が生じないポリウレタンフォームを開示する。1,8-ジアザビシクロ-5,4,0-ウンデセン-5(DBU)、DBUのフェニル塩、1,5-ジアザビシクロ-4,3,0-ノネン-5(DBN)、DBNのフェニル塩が特に有用である。これら非イソシアネート−反応性ジアザビシクロアルケンのより低い沸点(例えばDBUは532Paでたった100℃(212F)の融点を有する)に起因して、これらの触媒は最終的なフォーム中に残存し、徐々に該フォームから放出される。その結果、製造されたポリウレタンフォームは多量のVOC放出を有する。
【0025】
INOAC MTP社による、2003年1月15日に発行された特開2003-012756号公報は、脂環式ジイソシアネートとアミン末端化ポリオールを反応させたものから製造された、ほとんど黄変しないポリウレタンフォームを開示する。該公報は更に、これらのポリオールはオキシプロピレン単位のみから成ることを開示する。これらのアミン末端化ポリオキシプロピレンは高価であり、供給先が限られている。軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造するために、有用なアミン末端化ポリオキシプロピレン分子を得ることは困難である。
【0026】
従って、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートと、商業的に入手可能なポリエーテルポリオールを反応させたものを用いることにより容易に製造でき、更なる改良をおこなわずに常套のポリウレタンフォーム製造装置により製造できる、改良された、軟質の低弾性ポリウレタンフォームが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第7388037号明細書
【特許文献2】米国特許第6617369号明細書
【特許文献3】米国特許第6391935号明細書
【特許文献4】米国特許第6790871号明細書
【特許文献5】米国特許第6391935号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0176838A1号明細書
【特許文献7】米国特許第6800607号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0114088号明細書
【特許文献9】米国特許第5147897号明細書
【特許文献10】米国特許第6242555号明細書
【特許文献11】特開2003-261643号公報
【特許文献12】特開2006-257187号公報
【特許文献13】特開2001-72738号公報
【特許文献14】特開2003-012756号公報
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】「IN・TOUCH」第1頁、第11巻第1号、2003年6月巻、ポリウレタンフォームアソシエーション(PFA)の定期刊行物
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、イソシアネート−反応性成分と、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有する芳香族イソシアネートを実質的に含まないイソシアネート成分との反応生成物に基づく、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、1種または複数種の触媒、水、セル調節剤としての界面活性剤、および軟質の低弾性ポリウレタンフォームを調製するための他の添加剤と共に、脂肪族イソシアネートおよび/または脂環式イソシアネート、および/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートとの反応に適当な、新規なイソシアネート−反応性成分組成を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、黄変せず、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、比較的低密度の、黄変しない低弾性ポリウレタンフォームの製造において、1回成形法(one-shot process)を提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの成形品を製造する方法を提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、熱および湿潤環境下において崩壊する間に有毒な芳香族アミンを生成しない、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することである。
【0035】
本発明の別の目的は、不揮発性の触媒により触媒され、VOCの放出濃度を低減させた、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、改良した機械的性質、特に引裂強さ、引張強さおよび弾性率を備え、75〜105のイソシアネート指数を有する低弾性ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【0037】
本発明の別の目的は、可塑剤を使用することなく優れた低弾性と耐久性を有し、硬度が温度変化に対してほとんど変化せず、同時に、高い空気透過性を備える、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、再生可能な生物由来ポリオールを使用することにより、生分解性の低弾性ポリウレタンフォームを製造する方法を提供することである。
【0039】
本発明の別の目的は、ブラジャーパッド、ショルダーパッド、寝具類、枕、家具用クッションおよび自動車座席用クッションの分野において有用な、新規な黄変しない、低弾性ポリウレタンフォームを提供することである。
【0040】
本発明の別の目的は、自動車の車内のフォギングを減少させるために、常套の第3級アミン触媒および/または反応性の第3級アミン触媒を減少または削減させた、ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明に係る1実施態様によると、軟質の低弾性ポリウレタンフォームが開示される。本発明による軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、以下の反応生成物を含有し、該フォームは、約65〜110、好ましくは約70〜105、より好ましくは約75〜105のイソシアネート指数を有する:
a.芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有する芳香族イソシアネートを実質的に含まないイソシアネート成分、
b.以下の(b1)および(b2)成分を含有するイソシアネート−反応性混合物:
(b1)第1イソシアネート−反応性成分であって、(i)少なくとも2.6個のイソシアネート−反応性基、好ましくは2.6〜6.5個のイソシアネート−反応性基、より好ましくは2.65〜6.0個のイソシアネート−反応性基、最も好ましくは2.7〜5.5個のイソシアネート−反応性基、(ii)800未満、好ましくは80〜800、より好ましくは100〜700、最も好ましくは110〜600のヒドロキシル当量、および(iii)70mg KOH/gよりも高く、好ましくは70〜700mg KOH/g、より好ましくは80〜560mg KOH/g、最も好ましくは90〜510mg KOH/gのヒドロキシル価を有する該第1イソシアネート−反応性成分、
(b2)第2イソシアネート−反応性成分であって、(i)6.0未満、好ましくは1.8〜6.0、より好ましくは1.85〜4.5の平均ヒドロキシル官能価を有し、(ii)600〜6000、好ましくは700〜5000、より好ましくは800〜4500のヒドロキシル当量を有し、(iii)9〜94mg KOH/g、好ましくは19〜80mg KOH/g、より好ましくは14〜70mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、(iv)該第2イソシアネート−反応性成分中の全ヒドロキシル基100重量部に基づき、少なくとも30重量部、好ましくは少なくとも40重量部、より好ましくは少なくとも51重量部の第1級ヒドロキシル基を有する該第2イソシアネート−反応性成分、
ただし、該第1イソシアネート−反応性成分は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、20〜90重量部、好ましくは20〜70重量部の量で使用され、該第2イソシアネート−反応性成分は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、10〜80重量部、好ましくは30〜80重量部の量で使用され、
c.触媒、および、
d.水、界面活性剤、架橋剤および添加剤からなる群から選択される1種または複数種の所望成分;
なお、所望により添加される架橋剤は、60〜420g/モルの重量平均分子量を有し、少なくとも2つのイソシアネート−反応性官能基を有する。架橋剤を使用する場合、該架橋剤は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、0.2〜15重量部、好ましくは1.2〜12重量部の量で使用される。
【0042】
所望により、イソシアネート−反応性成分は、イソシアネート−反応性成分100重量部に基づき0〜40重量部のポリマーポリオールを更に含有しても良く、該ポリマーポリオールは、該ポリマーポリオール100重量部に基づき5〜55重量部の固形分を有し、15〜50mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0043】
イソシアネート−反応性成分は、公称ヒドロキシル官能価が1であり、800〜8500g/モルの重量平均分子量を有する、気泡開口剤(cell opener)としてのポリオキシプロピレン(b3)を、フォームの総質量100重量部に基づき0〜3.5重量部含有してもよい。
【0044】
別の実施態様において、本発明は、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造方法に関する。本発明に係る方法は、イソシアネート−反応性混合物、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環式ポリイソシアネートおよび/または、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含まない芳香族イソシアネート成分、水、フォーム配合物中にウレタン結合を形成させるための触媒、およびフォーム安定剤/界面活性剤を含有するフォーム配合物を調製して、次いで該フォーム配合物を発泡させ硬化させることを含む。イソシアネート−反応性混合物は、上述のイソシアネート−反応性組成物から選択される。
【0045】
別の実施態様において、本発明は、1回成形法を使用することにより、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する方法に関する。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、上述の工程により製造され、16〜160kg/m(1〜10ポンド/立方フィート)の密度を有する、軟質の低弾性ポリウレタンフォームに関する。
【0047】
別の実施態様において、本発明は、軟質の低弾性ウレタンフォームの成形品を製造する方法に関する。
【0048】
本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造の場合、常套のポリウレタンフォームの製造装置を特別に改良する必要はない。
【0049】
本発明のイソシアネート−反応性組成物は、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを調製する際に、配合物成分に対する選択の幅を広くすることで幅広い密度と硬度範囲を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を有する芳香族イソシアネートを実質的に含まないイソシアネート成分と、開示したイソシアネート−反応性成分および触媒、並びに所望により添加される水、界面活性剤、架橋剤および添加剤とを反応させることにより製造される、新規な、軟質の低弾性ポリウレタンフォームに関する。
【0051】
イソシアネート成分は、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、および芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートから成る群から選択される1種または複数種のイソシアネートである。脂肪族イソシアネートおよび/または脂環式イソシアネートおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートを使用する場合、本発明は、優れた加工性を備え、フォームの反発性が低い、軟質の低弾性ポリウレタンフォームをもたらす。さらに、本発明は、水以外に更なる発泡剤を使用することなく、幅広い硬度範囲を備える、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造するための1回成形法を開示する。
【0052】
本発明によると、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートに基づく新規なポリウレタン材料が開示される。本発明に係るポリウレタン材料は、ブラジャーパッド、ショルダーパッドにおける材料として有用であり、寝具類、枕、家具用クッション、マットおよび自動車座席用クッションにおいて適当に使用できる、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造に適している。特に、該フォームは寝具類および枕に適している。
【0053】
本発明による1回成形法において、配合した材料はミキシングヘッド内へ同時に注入され、次いで、型内へ注がれるかコンベアー上に注がれる。発泡反応は、極めて速く進行する。上昇泡は、使用する触媒に依存して、実質的に2〜7分以内に完全に凝固する。得られたフォームは、次いで、約24時間かけて後硬化に付され、その最終製品がもたらされる。
【0054】
本発明による方法において、反応組成物は、イソシアネート成分、イソシアネート−反応性成分、触媒、界面活性剤、発泡剤としての水、および本技術分野において既知の添加剤を含有する。所望により、他の添加剤、例えば、顔料/染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、再生フォーム粉末、安定剤、抗菌性化合物および帯電防止剤も使用できる。
【0055】
イソシアネート成分は、脂肪族ジイソシアネートモノマーおよび/または脂環式ジイソシアネートモノマーおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ジイソシアネートモノマー;あるいは、脂肪族ジイソシアネートモノマーおよび/または脂環式ジイソシアネートモノマーおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ジイソシアネートモノマーの混合物、および脂肪族ジイソシアネートモノマー若しくは脂環式ジイソシアネートモノマー若しくは芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ジイソシアネートモノマーの三量化反応生成物であるトリマーを含有する。該イソシアネート成分は、全イソシアネート成分100重量部に基づき、20.5〜50重量部のNCO含有率を示し、2〜3の理論官能価を有する。脂肪族ジイソシアネートモノマー若しくは脂環式ジイソシアネートモノマー若しくは芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ジイソシアネートモノマーは、以下のものから選択された少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない:ヘキサメチレンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、それらのダイマーおよびそれらのトリマー。これらのイソシアネートの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0056】
脂肪族イソシアネートおよび/または脂環式イソシアネートおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートから成るイソシアネートモノマーおよびトリマーに加えて、所望により、イソシアネート成分は、2〜4個のイソシアネート官能基を含有し、脂肪族イソシアネートおよび/または脂環式イソシアネートおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートから成るプレポリマーを、イソシアネート成分の総重量に基づき、35重量%以下の量で更に含有してもよい。
【0057】
該イソシアネート成分は、約65〜110、好ましくは約70〜105、より好ましくは約75〜105のイソシアネート指数で使用される。
【0058】
イソシアネート−反応性混合物は以下の成分(b1)および成分(b2)を含有する:
(b1)第1イソシアネート−反応性成分であって、(i)少なくとも2.6個のイソシアネート−反応性基、好ましくは2.6〜6.5個のイソシアネート−反応性基、より好ましくは2.65〜6.0個のイソシアネート−反応性基、最も好ましくは2.7〜5.5個のイソシアネート−反応性基、(ii)800未満、好ましくは80〜800、より好ましくは100〜700、最も好ましくは110〜600のヒドロキシル当量、(iii)70mg KOH/gより高い、好ましくは70〜700mg KOH/g、より好ましくは80〜560mg KOH/g、最も好ましくは90〜510mg KOH/gのヒドロキシル価を有する該第1イソシアネート−反応性成分、
(b2)第2イソシアネート−反応性成分であって、(i)6.0未満、好ましくは1.8〜6.0、より好ましくは1.85〜4.5の平均ヒドロキシル官能価、(ii)600〜6000、好ましくは700〜5000、より好ましくは800〜4500のヒドロキシル当量、(iii)9〜94mg KOH/g、好ましくは19〜80mg KOH/g、より好ましくは14〜70mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、(iV)該第2イソシアネート−反応性成分のヒドロキシル基の総重量100重量部に基づき、第1級ヒドロキシル基の含量が少なくとも30重量部、好ましくは少なくとも40重量部、より好ましくは少なくとも51重量部である該第2イソシアネート−反応性成分、
ただし、該第1イソシアネート−反応性成分は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、20〜90重量部、好ましくは20〜70重量部の量で使用され、該第2イソシアネート−反応性成分は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、10〜80重量部、好ましくは30〜80重量部の量で使用され、および、
所望により添加される架橋剤は、60〜420g/モルの重量平均分子量を有し、少なくとも2つのイソシアネート−反応性官能基を有する。架橋剤を使用する場合、該架橋剤は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、0.2〜15重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは0.5〜12重量部、最も好ましくは1.2〜12重量部の量で使用される。
【0059】
所望により、イソシアネート−反応性成分は、イソシアネート−反応性成分100重量部に基づき、0〜50重量部、好ましくは0〜40重量部のポリマーポリオールを更に含有してもよく、該ポリマーポリオールは、該ポリマーポリオール100重量部に基づき5〜55重量部、好ましくは10〜45重量部の固形分を有し、15〜50mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0060】
所望により、イソシアネート−反応性成分は、フォーム総重量100重量部に基づき、0〜5.0重量部、好ましくは0〜3.5重量部のポリオキシプロピレン(b3)を気泡開口剤として含有してもよく、該ポリオキシプロピレンは、公称ヒドロキシル官能価が1であり、400〜9600g/モル、好ましくは600〜9000g/モル、より好ましくは800〜8500g/モルの重量平均分子量を有する。
【0061】
本発明において有用なイソシアネート−反応性成分は、種々の化合物を含む。それらの好ましい例は以下の化合物を含有するがこれに限定されるものではない:
(a)ポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシド付加物を含む、ポリエーテルポリオール、(b)ポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコール、および
(c)ポリ(トリメチレン-エーテル)グリコール。
【0062】
上述のポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシド付加物の例には、以下のものが含まれる:エチレングリコールのアルキレンオキシド付加物、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、グリセロールのトリプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,3-トリヒドロキシヘキサン、グリセリン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトン、キシリトール、アラビトール、ソルビトールおよびマンニトール。使用するアルキレンオキシドの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドが最も好ましい。
【0063】
この種の開始剤から調製されるポリエーテルポリオールは、一般に、アニオン重合法を介して調製することにより、アルキレンオキシドを、開始剤化合物および強塩基触媒、例えば水酸化カリウムまたはある種の有機アミンと結合させる。これらの強塩基触媒を用いるアルキレンオキシド重合は、不飽和量を増加させ、得られるポリエーテルポリオールにおける平均官能価を減少させる。これらの不飽和成分は強い臭気を有し、ポリオールとイソシアネートを反応させる間に、ウレタンの形成を妨害し得る。
【0064】
二重金属シアニド(DMC)錯体は、アルキレンオキシド重合用の既知の触媒である。これらの活性触媒は、強塩基触媒を用いて調製する同様のポリオールと比べて十分に低い不飽和度を有するポリエーテルポリオールを製造するために使用できる。DMC触媒を使用することにより、僅か0.02meq/gの不飽和度を有するポリエーテルポリオールが調製できる。2001年11月7日に発行された欧州特許第0894108号B1明細書に記載された生成物のように、DMCに基づくポリエーテルポリオールは、臭気を減少させ、改良した機械的特性を有する軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造に使用できるので、このようなポリエーテルポリオールは本発明において好ましいポリエーテルポリオールである。
【0065】
実際、ツェレビチノフ(Zerewitinoff)試験により決定されるような活性水素を有する任意の物質は、ポリエーテルポリオールの成分として使用できる。例えば、アミン末端ポリエーテルポリオールが既知であり、使用できる。
【0066】
本発明において、第1のイソシアネート−反応性成分(b1)は、少なくとも2.6個、好ましくは2.6〜6.5個、より好ましくは2.65〜6.0個、最も好ましくは2.7〜5.5個のイソシアネート−反応性基を有することで、低弾性フォームの製造において要求される架橋度をもたらす。このような官能基数の条件下、充分な反応性を確保するために、ヒドロキシル基当量は、800未満である。ヒドロキシル当量が著しく高くなると、ポリオールの反応性はより低下するので、ヒドロキシル当量が極めて高いものは、反応性の低いイソシアネートと反応させる本発明において使用できない。著しく低いヒドロキシル当量を有するイソシアネート−反応性成分は、低弾性フォームに対して要求されるポリマー鎖をもたらすことができない。したがって、好ましいヒドロキシル基当量は80〜800、より好ましくは100〜700、最も好ましくは110〜600である。
【0067】
本発明において使用される第2イソシアネート−反応性成分(b2)は、6.0未満のヒドロキシル官能価を有し、低弾性フォームの物理的特性要求を満足する。著しくより高いヒドロキシル官能価は、より高いヒドロキシル当量を必要とするので、反応性が減少し、本発明において使用できない。反対に、著しくより低いヒドロキシル官能価は乏しいフォーム特性、特に引張強さおよび引裂き強度をもたらす。好ましいヒドロキシル官能価は、1.8〜6.0、より好ましくは1.85〜4.5である。
【0068】
第2イソシアネート−反応性成分(b2)に関する好ましいヒドロキシル当量は、600〜6000、より好ましくは700〜5000、最も好ましくは800〜4500の範囲である。著しくより高いヒドロキシル当量は、反応性を低下させるので、本発明において使用できない。著しくより低いヒドロキシル当量は、ポリマー架橋密度を過度に増加させ、得られたフォームを過度に硬くさせ、温度変化に対する硬度感受性を増加させる。
【0069】
第2イソシアネート−反応性成分(b2)に関して、好ましいヒドロキシル官能価およびヒドロキシル当量をもたらすために、第1級ヒドロキシル基で末端化したより高い反応性を示すポリオールが要求される。本発明における要求を満足し、低弾性フォームを製造するために低い反応性のイソシアネート成分と反応できるように選択される第2イソシアネート−反応性成分(b2)は、該第2イソシアネート−反応性成分のヒドロキシル基の総重量に基づき、少なくとも30重量部、好ましくは少なくとも40重量部、より好ましくは少なくとも51重量部の第1級ヒドロキシル末端基を含有する必要がある。
【0070】
本発明において使用できる、ポリオールの別の種類は、上述のポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールである。ポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールは、テトラヒドロフラン(THF)の開環重合生成物である。ポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールは、ポリエーテルポリオールである。また、PTMEGまたはポリテトラヒドロフラン、並びに種々の商品名「Terathane(登録商標)」および「Poly THF(登録商標)」として知られている。それは、テトラヒドロフランの酸触媒重合により調製される。得られるポリマーは、通常、250〜3000g/モルの間に数平均分子量を有する、中規模のサイズのポリマーである。これらのポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールにおける全てのヒドロキシル基は、第1級ヒドロキシル基である。本発明によると、800〜3000、より好ましくは1200〜2400の平均分子量を有するポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールが、特に好ましいポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールである。
【0071】
本発明において使用できる、第三種目のポリオールは、ポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールである。ポリ(トリメチレン−エーテル)グリコールは、1,3-プロパンジオールにより開始されるオキセタン開環重合から調製でき、あるいは、Sunkara等による、2006年7月11日に発行された米国特許第7074968号明細書に開示されるように、1,3-プロパンジオールの新規な多段階連続式の重縮合反応から調製できる。バイオマスの発酵から得られる1,3-プロパンジオールは、記載された生産工程における原料として使用でき、再生可能で、生分解性のポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールを生産することができる。これらのポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールは、第1級ヒドロキシル基を有し、低い融点を有し、高い柔軟性を有する。ポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールの間でも、800〜3000、より好ましくは1200〜3000g/モルの重量平均分子量を有するポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールが、軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造するために最も好ましい。このようなポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールを使用することの別の動機は、それらの生分解特性に由来する。軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、全フォーム重量の50重量%の高濃度で、これらの生物由来ポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールを使用することにより製造できる。その結果、生分解性の、低弾性ポリウレタンフォームが製造できる。
【0072】
本発明において使用される好ましいポリオールは、ポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)グリコールを含む。エチレンオキシドを使用する場合、ポリマー鎖に沿って任意の形態でエチレンオキシドを組み込んでもよい。エチレンオキシドを、末端基として、内部ブロック内へ組み込ませてもよく、またはポリオール鎖に沿って不規則に分散させてもよい。最も好ましいポリオールは、エチレンオキシド末端ブロックを有するポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)グリコールでる。
【0073】
架橋剤成分は、重量平均分子量が40〜640、特に60〜420g/モルであり、少なくとも2つのイソシアネート−反応性官能基、例えばOH基、NH基またはNH基、より好ましくは脂肪族若しくは脂環式OH基、NH基またはNH基の官能基を有する架橋剤であってもよい。架橋剤を使用する場合、該架橋剤は、イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、0.2〜15重量部、好ましくは0.5〜15重量部、特に好ましくは0.5〜12重量部、最も好ましくは1.2〜12重量部の量で使用される。
【0074】
架橋剤の典型例には以下のものが含まれる:600未満の数平均分子量を有するエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、450未満の分子量を有するプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,3-トリメチロールヘキサン、グリセリン、ポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシエチレン)、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N-メチル-エタノールアミン、イソホロンジアミン、およびヒドラジン。架橋剤の好ましい例は、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンである。所望により、複数の架橋剤の混合物も使用できる。
【0075】
本発明に係る低弾性フォームの硬度要求に基づき、上述のイソシアネート−反応性成分は、安定分散したポリマーポリオールを含有してもよい。安定分散したポリマーポリオール成分は、その中に分散したエチレン性不飽和モノマーのポリマーを有する任意のポリアルキレンオキシドポリオールであってもよい。安定分散したポリマーポリオールの代表例には、ポリ(スチレンアクリロニトリル)および/またはポリウレアを分散させたポリアルキレンオキシドポリオールが含まれる。安定分散したポリマーポリオールは、バイエル社(商品名「Polymer Polyol」)、BASF社(商品名「Graft Polyol」)、ダウ社(商品名「Copolymer Polyol」)、およびモーベイ(Mobay)社(商品名「PHD Polyol」)などのように、複数の会社から商業的に入手できる。バイエル社、BASF社、およびダウ社製の製品の場合、米国特許第4272619号明細書、同第4640935号明細書、および同第5494957号明細書において記載された方法に従い、ポリ(スチレンアクリロニトリル)をポリオール内へ分散させる。商業的に入手可能な安定分散したポリマーポリオールの例は、以下に示すように、表1に記載される:
【0076】
【表1】

【0077】
安定分散したポリマーポリオールは、「ポリウレタンハンドブック」(ポリウレタンハンドブック、G.エルテル、ISBN0-02-948920-2、ハンサー出版社、1985年)においてエルテルにより開示された方法に準拠して調製できる。任意のポリアルキレンオキシドポリオールが、このような安定分散したポリマーポリオールの調製における分散ベースとして使用できる。このような安定分散ポリマーポリオールの反応性は、主に、このような安定分散したポリマーポリオールの調製において使用されるベースポリオールの反応性に基づく。本発明において使用される、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環式ポリイソシアネートおよび/または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ポリイソシアネートの比較的低い反応性に起因して、2.4〜6(好ましくは2.4〜5.6、最も好ましくは2.4〜5.4)の公称官能価を有し、800〜2000g/モル(好ましくは800〜1600g/モル、最も好ましくは1000〜1600g/モル)の当量を有し、ベースポリオールの重量に基づき、4〜28重量パーセント(好ましくは4〜24重量パーセント)のエチレンオキシド含有量を有するベースポリオールが好ましい。
【0078】
低弾性フォームの加工可能性に応じて、本発明に係るイソシアネート−反応性成分内に気泡開口剤を添加して、上述の低弾性フォームの収縮を改善してもよい。
【0079】
気泡開口剤の代表例には、以下のものが含まれる:安定分散したポリマーポリオール、50重量パーセントより高いオキシエチレン含有量を有するポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)コポリマー、800より高い重量平均分子量を有するポリ(オキシブチレン-オキシプロピレン)コポリマー、600より高い重量平均分子量を有するポリエチレングリコール、400より高い重量平均分子量を有するポリオキシプロピレン、150ミクロン未満の粒径を有するヒュームシリカ粉末、200ミクロン未満の粒径を有するポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末、脂肪族カルボン酸およびそのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、脂環式カルボン酸およびそのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、脂肪族アルカン、脂環式アルカン、ならびにジメチルシリコーン油。好ましい気泡開口剤は、安定分散したポリマーポリオール、50重量パーセントより高いオキシエチレン含有量を有するポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)コポリマー、800より高い重量平均分子量を有するポリ(オキシブチレン-オキシプロピレン)コポリマー、および400より高い重量平均分子量を有するポリオキシプロピレンであり、該好ましい気泡開口剤は、一般に、全フォーム質量100重量部に基づき、0.05〜20重量部、特に0.5〜10重量部の濃度で使用される。最も好ましい気泡開口剤は、400より高い重量平均分子量を有するポリオキシプロピレンである。この場合において、該ポリオキシプロピレンは、公称ヒドロキシル官能価が1であり、400〜9600g/モル、特に600〜9000g/モル、とりわけ特に800〜8500g/モルの重量平均分子量を有する。最も好ましいポリオキシプロピレン気泡開口剤は、通常、全フォーム質量100重量部に基づき0〜5.0重量部、特に0〜3.5重量部の量で使用される。所望により、種々の気泡開口剤の混合物を使用できる。
【0080】
種々の商業的に入手可能なポリウレタン触媒を、本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造において使用できる。触媒を使用する際の典型的な濃度は、0.05〜2.0php(ポリオール100重量部当りの重量部)である。代表的な触媒には以下のものが含まれる:(1)第3級アミン、例えばビス(2,2'-ジメチルアミノ)エチルエーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミンおよびピリジンオキシドなど;(2)ジアゾビシクロアルケン類、例えば1,5-ジアザビシクロ-(4,3,0)ノネン-5、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)ウンデセン-7、1,8-ジアザビシクロ-(5,3,0)デセン-7、1,5-ジアザビシクロ-(5,4,0)ウンデセン-5、1,4-ジアザビシクロ-(3,3,0)オクテン-4、およびジアザビシクロアルケン類の有機塩例えばフェノール塩など;(3)強塩基、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属アルコキシド、ヒドロキシドおよびフェノキシドなど;(4)強酸の酸金属塩、例えば塩化第一スズ、塩化(第二)鉄、三塩化アンチモン、塩化ビスマス、硝酸ビスマスなど(5)種々の金属のキレート、例えば、種々の金属、例えば、Be、Mg、Zn、Pb,Ti、Zr、Sn、Bi、Mo、Mn、Fe、CoおよびNiなどを備える、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、エチルアセトアセテート、サリチルアルデヒド、シクロペンタノン-2-カルボキシレート、アセチルアセトンイミン、ビス-アセチルアセトン-アルキレンジイミン、およびサリチルアルデヒドイミンから得られるキレート類;(6)種々の金属のアルコレートおよびフェノレート、例えばSn(OR)4、Sn(OR)、Ti(OR)4、およびAl(OR)3など、式中Rはアルキルまたはアリールである、およびアルコレートと、カルボン酸、ベータ-ジケトンおよび2-(N,N-ジアルキルアミノ)アルコールとの反応生成物、例えばこれまたは同等の方法により得られるチタンのキレートなど;(7)種々の金属、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属などを有する有機酸の塩、例えば、カルシウムヘキサノアート、酢酸第1スズ、オクタン酸第1スズおよびオレイン酸第1スズなど;(8)四価スズ、三価および五価のAs、SbおよびBiの有機金属誘導体、並びに鉄およびコバルトの金属カルボニルなど。
【0081】
上述の触媒の中でも、有機スズ化合物が、本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する場合において特に有用であることが判明した。好ましい有機スズ化合物は、カルボン酸のジアルキルスズ塩であり、例えば、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジラウリルスズジアセタートおよびジオクチルスズジアセタートなどである。他の有用な有機スズ化合物は、トリアルキルスズヒドロキシド、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジアルコキシド、ジアルキルスズジクロリド、およびジアルキルスズメルカプチドである。これらの化合物の例には、トリメチルスズヒドロキシド、トリブチルスズヒドロキシド、トリオクチルスズヒドロキシド、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジラウリルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、ジブチルスズジメルカプチド、およびジメチルスズジメルカプチドが含まれる。該オルガノスズ化合物は、一般に、本発明に係るイソシアネート−反応性成分(b)の約0.05〜0.8重量パーセント、特に約0.15〜0.55重量パーセントの濃度で使用される。
【0082】
本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造において有用な別の触媒は、種々のブレンステッド酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムは、本発明による軟質の低弾性ポリウレタンフォームを製造する場合において、特に有用であることが判明した。前記種々のブレンステッド酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、一般に、本発明に係るイソシアネート−反応性成分(b)の約0.01〜0.8重量パーセント、特に約0.1〜0.6重量パーセントの濃度で使用される。
【0083】
フォーム形成組成物中に、1種または複数種の界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤は、バルクの表面張力を低減し、気泡の核生成を促進し、発泡フォームを安定させ、および混合できない含有物を乳化させる。ポリウレタンフォーム用途において典型的に使用される表面活性剤は、ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーであり、一般に、イソシアネート−反応性混合物の総量に基づき、約0.2〜約3重量%、好ましくは約0.6〜約2.5重量%の濃度で使用される。ポリウレタンフォームのベースとなる芳香族ジイソシアネートの調製において使用される常套の界面活性剤は、本発明においても使用できる。
【0084】
水は、イソシアネート−反応性成分100重量部に基づき0.5〜6.5重量部の量で使用され、イソシアネートと反応することにより二酸化炭素を生成し、発泡反応用の発泡剤として機能する。さらに、所望により、水と他の既知の発泡助剤との混合物を使用してもよい。水に加えて、発泡助剤として気体または液体の二酸化炭素を使用することが特に好ましい。1993年12月9日発行した国際特許出願公開第93/24304号明細書および1993年3月16日に発行された米国特許第5194453号明細書において提案されるように、フォーム形成反応中の気圧を調整することおよび/または力学的な発泡技術を使用して、フォーム密度を調整することも有用である。
【0085】
本発明によるフォーム形成組成物中に、他の添加剤を所望により組み込んでもよい。これらの更なる添加剤には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、充填剤、再生フォーム粉末、安定剤、抗菌剤化合物および帯電防止剤。このような添加剤は、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの性質に悪影響を及ぼしてはならない。
【0086】
本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、成形法またはスラブストック法の何れを使用しても成形できる。成形法は、密閉金型中に反応性混合物を注入し、発泡させ、成形させる方法である。スラブストック法は、反応性混合物をコンベアベルト上へ注ぎ、開放系において発泡させる方法である。
【0087】
本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、JIS K6400法(1997年度版)に従い測定した場合、約10〜約200キログラム/立方メートル、特に約16〜160キログラム/立方メートルの範囲に密度を有する。
【0088】
本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、JIS K6400法(1997年度版)に従い測定した場合、20%未満、特に15%未満の落球反発弾性(ball resilience)を有する。
【0089】
本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、常套の軟質性ポリウレタンフォームに関する技術分野において予測できるフォーム硬度と同等のフォーム硬度を有する。1つの実施態様において、本発明に係るフォームは150N/314cm未満の硬度を有する。別の実施態様において、本発明に係るフォームは6〜120N/314cm、または6〜90N/314cmの硬度を有する。本発明に係る軟質ポリウレタンフォームの硬度は、適当なイソシアネート指数を選択すると共に、第2イソシアネート−反応性成分(b2)に対する第1イソシアネート−反応性成分(b1)の割合を調整することにより変更できる。イソシアネート指数が80未満であると共に、より多くの第2イソシアネート−反応性成分(b2)を使用することで、本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームのIFD25%硬度は、6N/314cmへと減少する。イソシアネート指数が95以上であると共に、より多くの第1イソシアネート−反応性成分(b1)を使用することで、本発明に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームのIFD25%硬度は、120N/314cmへと増加する。IFD25%フォーム硬度は、JIS K6400法(1997年度版)に従い測定した。一般に、枕およびマットレスにおいて有用な軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、耐荷重性と快適性のバランスをもたらすために、12〜24N/314cmの範囲でIFD25%硬度を必要とする。競技用パッドまたはヘルメットなどの用途は、振動および衝撃を吸収するために、フォームに高い硬度を要求する。
【実施例】
【0090】
実施態様
以下の詳細な説明において、符号、用語および略語として使用されるものは、以下の定義を有する。
【0091】
ISO1は、バイエルAG社製のDesmodur Iとして商業的に入手可能なイソホロンジイソシアネートに関連する。
【0092】
ISO2は、50重量パーセントのイソホロンジイソシアネート(Desmodur I)と、50重量パーセントのヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(Desmodur N3600として商業的に入手できる)の混合物に関連し、いずれもバイエルAG社製である。
【0093】
ISO3は、トルエンジイソシアネートに関連し、80重量パーセントの2,4−トルエンジイソシアネートおよび20重量パーセントの2,6-トルエンジイソシアネートの組成物である(いずれもバイエルAG社製)。
【0094】
ISO4は、バイエルAG社製のDesmodur Hとして商業的に入手可能な、ヘキサメチレンジイソシアネートに関する。
【0095】
ISO5は、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマーに関連し、バイエルAG社製のDesmodur N3600として商業的に入手できる、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量化反応生成物である。
【0096】
ISO6は、三井武田化学社製のTakenate500として商業的に入手可能な、キシリレンジイソシアネートに関する。
【0097】
P1は、韓国のSKケミカル社製のYUKOL 1030として商業的に入手可能であり、550g/モルの平均分子量と310mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、グリセリン開始ポリオキシプロピレンに関する。
【0098】
P2は、約117の平均ヒドロキシル当量を有するソルビトール開始ポリオキシプロピレンに関する。
【0099】
P3は、台湾のダイレンケミカル社製の、約900のヒドロキシル当量を有するポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールに関する。
【0100】
P4は、E.Iデュポン社製の、およそ25のAPHAカラーを有し、約1070の平均ヒドロキシル当量を有する、生物由来の1,3−プロパンジオールから調製されたポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールに関する。
【0101】
P5は、バイエルAG社製のACCLAIM POLYOL 4220Nとして商業的に入手可能であり、公称官能価が2であり、約28mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、ヒドロキシル基総重量の約87重量%の含有量で第1級ヒドロキシル官能基を含有し、4000g/モルの平均分子量を有し、DMC触媒を使用してジプロピレングリコール開始剤へ、プロピレンオキシドを重付加させ、次いでエチレンオキシドをキャップすることにより調製される、低不飽和ポリエーテルポリオールに関する。
【0102】
P6は、バイエルAG社製のACCLAIM POLYOL 4200として商業的に入手可能であり、公称官能価が2であり、第2級ヒドロキシル官能基を100重量%で含有し、0.005meq/gの不飽和度を有し、約28mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、4000g/モルの平均分子量を有し、DMC触媒を使用してジプロピレングリコール開始剤へプロピレンオキシドを重付加させることによって調製された、低不飽和ポリエーテルポリオールに関する。
【0103】
P7は、バイエルAG社製のACCLAIM POLYOL 3300Nとして商業的に入手可能であり、公称官能価が3であり、第2級ヒドロキシル官能基を100重量%で含有し、0.005meq/gの不飽和度を有し、約57.6mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、3000g/モルの平均分子量を有し、DMC触媒を使用して1,1,1-トリメチロールプロパン開始剤へプロピレンオキシドを重付加させることによって調製された、低不飽和ポリエーテルポリオールに関する。
【0104】
P8は、バイエルAG社製のACCLAIM POLYOL 2220Nとして商業的に入手可能であり、公称官能価が2であり、ヒドロキシル基総重量の約87重量%の含有量で第1級ヒドロキシル官能基を含有し、約56mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、2000g/モルの平均分子量を有し、DMC触媒を使用してジプロピレングリコール開始剤へプロピレンオキシドを重付加させ、次いでエチレンオキシドでキャップすることにより調製された、低不飽和ポリエーテルポリオールに関する。
【0105】
P9は、バイエルAG社製のACCLAIM POLYOL 8200として商業的に入手可能であり、公称官能価が2であり、第2級ヒドロキシル官能基を100重量%で含有し、約14mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、8000g/モルの平均分子量を有し、DMC触媒を使用してジプロピレングリコール開始剤へプロピレンオキシドを重付加させことによって調製された、低不飽和ポリエーテルポリオールに関する。
【0106】
P10は、公称官能価が2であり、0.03meq/gの不飽和度を有し、約56.1mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、2000g/モルの平均分子量を有し、ヒドロキシル基の総重量に基づき63重量%の含有量で第1級ヒドロキシル基を含有し、19重量%のオキシエチレン含有量を有し、水酸化カリウム触媒を使用してジプロピレングリコール開始剤へプロピレンオキシドを重付加させ、次いでエチレンオキシドでキャップさせることにより調製された、ポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)コポリマーに関する。
【0107】
P11は、水酸化カリウム触媒を使用してソルビトール開始剤へプロピレンオキシドを重付加させ、次いでエチレンオキシドでキャップさせることにより調製された、ポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)コポリマーに関する。該ポリ(オキシプロピレン−オキシエチレン)コポリマーは、公称官能価が6であり、約31.3mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、ヒドロキシル基の総重量に基づき85重量%の含有量で第1級ヒドロキシル基を含有し、28重量%のオキシエチレンを含有する。
【0108】
P12は、28.5mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、45重量%のスチレン-アクリロニトリルコポリマーを分散させた、ポリマーポリオールに関する。基剤となるポリオールは、バイエルAG社製のARCOL POLYOL HS-100として商業的に入手可能な、1050の当量を有する、不規則に配置したEO-POポリオールトリオールである。
【0109】
P13は、8.5mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、水酸化カリウム触媒を使用してブタノール開始剤へプロピレンオキシドを重付加させることにより調製されたモノオールに関する。
【0110】
DEOAは、シグマ-アルドリッヒ社から入手した、99重量%より高い純度を有する、ジエタノールアミンである。
【0111】
PEG400は、シグマ-アルドリッヒ社から入手した、98.5%より高い純度を有し、400の平均分子量を有する、試薬グレードのポリ(エチレングリコール)である。
【0112】
グリセリンは、シグマ-アルドリッヒ社から入手した、99%より高い純度を有するグリセリンのGC試薬である。
【0113】
SCは、シグマ-アルドリッヒ社から入手した、99%より高い純度を有する試薬級の炭酸ナトリウムと、脱イオン水から調製した、炭酸ナトリウムの2M水溶液である。
【0114】
SBCは、シグマ-アルドリッヒ社から入手した、99%より高い純度を有する試薬級の炭酸水素ナトリウムと、脱イオン水から調製した、炭酸水素ナトリウムの0.5M水溶液である。
【0115】
DC5950は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社からDABCO DC 5950として商業的に入手可能な、ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー界面活性剤である。
【0116】
DC5179は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社からDABCO DC 5179として商業的に入手可能な、低放出型のポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー界面活性剤を意味する。
【0117】
Niax A-230は、ケムチュラ社により販売されている第3級アミン混合物を意味する。
【0118】
SOは、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製の、DABCO T-9として商業的に入手可能なオクタン酸第一スズを意味する。
【0119】
DBTDLは、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製の、DABCO T-12として商業的に入手可能なジラウリン酸ジブチルスズを意味する。
【0120】
UVは、エバーライト・ケミカル・インダストリアル社製の、CAS番号が25973-55-1である、2-(2'-ヒドロキシ-3'5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾールである。
【0121】
「指数」は、反応混合物中の反応性イソシアネート基の総モルを、反応混合物中のイソシアネート−反応性基の総モル数で割り、100を乗じた割合を意味する。
【0122】
「pbw」は、重量部を意味する。
【0123】
以下に記載の詳細な説明の場合、実施例においてもたらされるポリウレタンフォームの特性は、以下の試験方法に従い決定した。
【0124】
「中心密度」は、JIS K6400法(1997年版)に従い測定した。
【0125】
「IFD(押込力たわみ;Indentation Force Deflection)硬度25%」は、25パーセント圧縮荷重の条件下にて、JIS K6400法(1997年版)に従い測定した。
【0126】
「CLD(圧縮荷重たわみ;Compression Load Deflection) 硬度25%」は、25パーセント圧縮荷重の条件下にて、JIS K6400法(1997年版)に従い測定した。
【0127】
「硬度の変化」は、23℃にて測定したCLD硬度に対する、-5℃にて測定したCLD硬度に関する増加率(単位%)を意味する。CLD硬度25%は、JIS K6400法(1997年版)に従って測定した。試験に付したサンプルは、試験の前に少なくとも24時間かけて特定の温度にて熟成させた。
【0128】
「引張強さ」は、JIS K6400法(1997年版)に従って測定した。
【0129】
「弾性率」は、JIS K6400法(1997年版)に従って測定した。
【0130】
「引裂き強度」は、JIS K6400法(1997年版)に従って測定した。
【0131】
中心部の「落球反発弾性」は、JIS K6400法(1997年版)に従って測定した。
【0132】
「乾燥圧縮永久歪み」は、JIS K6400法(1997年版)に従う、乾燥、熱条件下における圧縮永久歪みを意味する。
【0133】
「湿潤圧縮永久歪み」は、JIS K6400法(1997年版)に従う、湿潤、熱条件下における圧縮永久歪みを意味する。
【0134】
「紫外線安定度」は、AATCC16-1990、オプションE法に従って得られた耐変色性を測定した値である。
【0135】
フォームのサンプルをUVランプ下に配置し、20時間かけて紫外線へ曝した。得られた結果は、基準となるグレースケールカードと比較して、1〜5段階に表す。グレード5は、全く色変化が生じなかったことを意味し、グレード1は、ほとんど黒ずんだ色に変化したことを意味する。グレード値が4以上の表示は、肉眼による外観の変化を確認できないことを意味する。
【0136】
「成形性」は、成形品の評価であり、発泡後に良好な表皮を有し収縮を有さないフォームを「良好」と評価し、発砲後に収縮を有するが2回押圧した後に復元するフォームを「押圧可」と評価し、収縮があり、2回押圧した後に復元しないフォームを「乏しい」と評価する。
【0137】
以下の実施例は、本発明を説明するために用いられるが、あらゆる方法において本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。他に定められない限り、全ての部およびパーセンテージは、重量部および重量パーセントで表される。
【0138】
実施例
実施例1〜10および比較例C1〜C5
実施例1〜10に記載の軟質の低弾性ポリウレタンフォームおよび、比較例C1〜C5に記載のポリウレタンフォームを、表2-1および表2-2において表示されたような成分を混合することにより調製した。選択した全ての材料は、発泡前に少なくとも24時間かけて、23±1℃の温度に制御したチャンバー中で熟成させた。有機スズ化合物およびイソシアネート以外の材料を、有機スズ化合物を添加する前に、40秒間、回転速度を1500rpmに設定したカウルズ型ミキサーを使用して、1.5リットルのステンレススチール製のビーカー内で相互に予備混合させた。有機スズ化合物を使用する場合、予備混合の後に有機スズ化合物を該ビーカー内に添加し、更に20秒間、回転速度1500rpmにて、再び混合させた。次いで、選択したイソシアネート化合物を、該混合物内へ添加し、3000rpmの速度で5秒間、配合物と混合させた。次いで、混合物を、紙が敷かれて、上部が開放した45cm(W)×45cm(L)×45cm(H)の木製箱内へ注入し、発泡を開始させた。フォームがその最終高さに到達した後、フォームを箱の中で更に10分間放置し、箱からフォームを取り出した。次いで、製造したフォームを、少なくとも72時間、空気を換気しながら27±2℃に温度制御した貯蔵キャビネット内に保持した。
【0139】
フォーム試料を、JIS K6400法(1997年版)に記載される試料寸法に従って、実験室用の電動帯びノコを使用して、製造したフォームの中心から切り出した。次いで、引裂き強度、引張強度および弾性率測定用の試料を、特定の厚さのフォームシートから、JIS K6400法(1997年版)に記載される試料寸法に従って、ダイカットした。全ての試料を、物理的性質を測定する前に、少なくとも24時間かけて、湿度50%、23±1℃の温度に制御したチャンバー中で熟成させた。
【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
実施例1〜10は、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造に関して、常套の標準的なフォーム配合(比較例C5)と比較した、加工可能性、フォームの機械的特性および配合適応性を説明する。従来の高不飽和ポリオールおよびDMC低不飽和ポリオールを、比較例5において共に使用した。比較例C1〜C4は、崩壊したフォームまたは綿菓子様のフォームを形成するのみであり、強度を有さないので、フォームの更なる物理的性質の測定に使用できなかった。実施例1〜10は、本発明に係るイソシアネート−反応性組成物(b)が充分な反応性を付与できるので、軟質の低弾性ポリウレタンフォームの製造における重付加重合において、脂肪族イソシアネートまたは脂環式イソシアネートと反応できることを説明する。
【0143】
実施例11〜18
選択したポリオールP3およびP4を、60±1℃の温度を示すオーブンで先ず溶融させたことを除き、実施例1〜10の調製で使用した方法と同様の方法を、実施例11〜実施例18の調製に使用した。ポリオール全体を溶融させ、次いで、該ポリオールを、更なる発泡工程の前に、6時間かけて、28±1℃の温度を有する熟成チャンバー内で貯蔵した。選択した全ての他の材料を、発泡前に少なくとも24時間かけて、23±1℃の温度に制御した別のチャンバー中で熟成させた。
【0144】
先ず、60秒間、3000rpmの速度で、カウルズ型高剪断ミキサーを用いて、選択したポリオールP3およびP4を、他のポリオール内へ混合させた。実施例11〜18に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームは、表3で示されるような成分を混合することにより調製した。有機スズ化合物およびイソシアネート以外の材料を、有機スズ化合物を添加する前に、40秒間、回転速度を2000rpmに設定したカウルズ型ミキサーを使用して、1.5リットルのステンレススチール製のビーカー内で相互に予備混合させた。有機スズ化合物を使用する場合、予備混合の後に有機スズ化合物を該ビーカー内に添加し、更に20秒間、回転速度2000rpmにて、再び混合させた。次いで、選択したイソシアネート化合物を、該混合物内へ添加し、3000rpmの速度で5秒間、配合物と混合させた。次いで、混合物を、紙が敷かれ、上部が開放した45cm(W)×45cm(L)×45cm(H)の木製箱内へ注入し発泡を開始させた。フォームがその最終高さに到達した後、フォームを箱の中で更に10分間放置し、箱からフォームを取り出した。次いで、製造したフォームを、少なくとも72時間、空気を換気しながら27±2℃に温度制御した貯蔵キャビネット内に保持した。
【0145】
フォーム試料を、JIS K6400法(1997年版)に記載される試料寸法に従って、実験室用の電動帯びノコを使用して、製造したフォームの中心から切り出した。次いで、引裂き強度、引張強度および弾性率測定用の試料を、特定の厚さのフォームシートから、JIS K6400法(1997年版)に記載される試料寸法に従って、ダイカットした。全ての試料を、物理的性質を測定する前に、少なくとも24時間かけて、湿度50%、23±1℃の温度に制御したチャンバー中で熟成させた。
【0146】
【表4】

【0147】
実施例15において、密閉セルフォームが得られ、該フォームは、内部温度が減少し始める間に、収縮が始まった。フォームの更なる収縮を防ぐために、該フォームへ、一組のステンレススチール製の電動ローラクラッシャーを2回通過させることにより、該フォームを破砕した。破砕したフォームを、物理的性質を更に測定する前に、少なくとも72時間かけて、湿度50%、23±1℃の温度に制御したチャンバー中で熟成させた。実施例15において示された物理的特性は、破砕フォームの中心部から試料を切り取り測定した。
【0148】
実施例19〜27
実施例19〜27に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームを、表4に示した成分を混合することにより調製した。実施例1〜18の調製において記載した方法と同様な方法を、実施例19〜27の調製に使用した。紫外線添加剤は、予備混合工程中にイソシアネート−反応性混合物内へ添加した。
【0149】
実施例19〜27のフォームに関する物理的特性の測定は、紫外線安定度の測定を除き、実施例1〜18に説明した方法と同様にしておこなった。紫外線安定度の測定に際して、5cm(幅)×10cm(長さ)×0.5cm(厚さ)のフォーム試料の30cm上方に、OSRAM ULTRA-VITALUX300ワットの紫外線電球を配設して、80±1℃の内部温度に設定したオープン中へ該フォーム試料を収納した。該試料を、20時間かけて紫外線光に曝した。結果を、基準となるグレースケールカードと比較して、1〜5段階で表した。グレード5は、全く色変化が生じなかったことを意味し、グレード1は、ほとんど黒ずんだ色に変化したことを意味する。グレード値が4以上の表示は、肉眼による外観の変化を確認できないことを意味する。
【0150】
【表5】

【0151】
実施例19〜27において調製したフォームによると、開示されたイソシアネート−反応性混合物は、24kg/m(約1.5pcf)の低さの密度を有し、黄変しない低弾性ポリウレタンフォームの製造に使用できることが判る。これらの低密度で、黄変しない低弾性ポリウレタンフォームは、服飾用途、例えば、ブラジャーパッドおよびショルダーパッドに有用である。
【0152】
実施例28〜30
実施例28〜30に係る軟質の低弾性ポリウレタンフォームを、表5において示される成分を混合することにより調製した。選択された全ての材料を、発泡前に少なくとも24時間かけて、23±1℃の温度に制御したチャンバー中で熟成させた。有機スズ化合物およびイソシアネート以外の材料を、有機スズ化合物を添加する前に、40秒間、回転速度を1500rpmに設定したカウルズ型ミキサーを使用して、1.5リットルのステンレススチール製のビーカー内で相互に予備混合させた。有機スズ化合物を使用する場合、予備混合の後に有機スズ化合物を該ビーカー内に添加し、更に20秒間、回転速度1500rpmにて、再び混合させた。次いで、選択したイソシアネート化合物を、該混合物内へ添加し、3000rpmの速度で5秒間、配合物と混合させた。混合物を、上面に4つの穴を備える蓋を有し、予め60℃の温度に予備加熱した40cm(W)×40cm(L)×10cm(H)のアルミ製金型内へ直に導入し、該金型を60℃に保持し、次いで該蓋を被せた。金型を60℃の温度にて10分間保持した後、成形した軟質の低弾性ポリウレタンフォームを金型から取り出した。次いで、製造したフォームを、更なる試験へ付す前に、少なくとも72時間かけて、空気を換気しながら27±2℃に温度制御した貯蔵キャビネット内に貯蔵した。
【0153】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明によるポリウレタンフォームは、低弾性を有し、ブラジャーパッド、ショルダーパッド用の充填材としての使用に適し、また、寝具類、枕、家具用クッションおよび自動車座席用クッションとしての使用にも適する。特に、寝具類および枕としての使用に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分a〜成分dの反応生成物を含有する低弾性フォームであって、約65〜110、好ましくは約70〜105、より好ましくは約75〜105のイソシアネート指数を有する該フォーム:
a.芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有する芳香族イソシアネートを実質的に含まないイソシアネート成分、
b.以下の成分(b1)および成分(b2)を含有するイソシアネート−反応性混合物;
(b1)第1イソシアネート−反応性成分であって、少なくとも2.6個のイソシアネート−反応性基、好ましくは2.6〜6.5のイソシアネート−反応性基、より好ましくは2.65〜6.0のイソシアネート−反応性基、最も好ましくは2.7〜5.5のイソシアネート−反応性基、
800未満、好ましくは80〜800、より好ましくは100〜700、最も好ましくは110〜600のヒドロキシル当量、および
70mg KOH/gより高い、好ましくは70〜700mg KOH/g、より好ましくは80〜560mg KOH/g、最も好ましくは90〜510mg KOH/gのヒドロキシル価を有する該第1イソシアネート−反応性成分、
(b2)第2イソシアネート−反応性成分であって、6.0未満、好ましくは1.8〜6.0、より好ましくは1.85〜4.5の平均ヒドロキシル官能価、
600〜6000、好ましくは700〜5000、より好ましくは800〜4500のヒドロキシル当量、および
9〜94mg KOH/g、好ましくは19〜80mg KOH/g、より好ましくは14〜70mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、
該第2イソシアネート−反応性成分中の全ヒドロキシル基100重量部に基づき、少なくとも30重量部、好ましくは少なくとも40重量部、より好ましくは少なくとも51重量部の第1級ヒドロキシル基を含有する該第2イソシアネート−反応性成分、
ただし、該第1イソシアネート−反応性成分は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、20〜90重量部、好ましくは20〜70重量部の量で使用され、
該第2イソシアネート−反応性成分は、該イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき、10〜80重量部、好ましくは30〜80重量部の量で使用される、
c.触媒;および
d.水、界面活性剤、架橋剤および添加剤からなる群から選択される1種または複数種の所望成分。
【請求項2】
イソシアネート成分が、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、および芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートから成る群から選択される1種または複数種のイソシアネートである請求項1に記載のフォーム。
【請求項3】
脂肪族イソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートモノマー、または脂肪族ポリイソシアネートモノマーと、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ポリイソシアネート若しくは脂環式ポリイソシアネート若しくは脂肪族ポリイソシアネートの三量化反応生成物であるトリマーとの混合物を含有する請求項1または2に記載のフォームであって、
該混合物が、イソシアネート成分中の全イソシアネート基100重量部に基づき、20.5〜50.0重量部のNCO含有率を有し、2〜3の平均理論官能価を有し、
好ましくは、該混合物中の該脂肪族ポリイソシアネートモノマーがヘキサメチレンジイソシアネートであり、該トリマーがヘキサメチレンジイソシアネートの三量化反応生成物である該フォーム。
【請求項4】
脂環式イソシアネートが、脂環式ポリイソシアネートモノマー、または脂環式ポリイソシアネートモノマーと、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ポリイソシアネート若しくは脂環式ポリイソシアネート若しくは脂肪族ポリイソシアネートの三量化反応生成物であるトリマーとの混合物を含有する請求項1から3のいずれかに記載のフォームであって、
該混合物が、イソシアネート成分中の全イソシアネート基100重量部に基づき、20.5〜38.0重量部のNCO含有率を有し、2〜3の平均理論官能価を有し、
好ましくは、該混合物中の該脂環式ポリイソシアネートモノマーがイソホロンジイソシアネートであり、および該トリマーがヘキサメチレンジイソシアネートの三量化反応生成物である該フォーム。
【請求項5】
芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートが、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ポリイソシアネートモノマー、または芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ポリイソシアネートモノマーと、芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族ポリイソシアネート若しくは脂環式ポリイソシアネート若しくは脂肪族ポリイソシアネートの三量化反応生成物であるトリマーとの混合物を含有する請求項1から4のいずれかに記載のフォームであって、
該混合物が、イソシアネート成分中の全イソシアネート基100重量部に基づき、20.5〜44.0重量部のNCO含有率を有し、2〜3の平均理論官能価を有し、
好ましくは、該混合物中の芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない該芳香族ポリイソシアネートモノマーがキシリレンジイソシアネート若しくはテトラメチルキシリレンジイソシアネートであり、該トリマーがヘキサメチレンジイソシアネートの三量化反応生成物である該フォーム。
【請求項6】
脂肪族イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、並びにこれらのダイマーおよびトリマーから成る群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1から5のいずれかに記載のフォーム。
【請求項7】
脂環式イソシアネートが、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、並びにこれらのダイマーおよびトリマーから成る群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1から6のいずれかに記載のフォーム。
【請求項8】
芳香族環に直接結合したイソシアネート基を含有しない芳香族イソシアネートが、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、並びにこれらのダイマーおよびトリマーから成る群から選択される少なくとも1種である請求項1から7のいずれかに記載のフォーム。
【請求項9】
第1イソシアネート−反応性成分(b1)がポリオキシプロピレンである請求項1から8のいずれかに記載のフォームであって、
該ポリオキシプロピレンが、少なくとも3個のイソシアネート−反応性基及び、0.05meq/g未満の不飽和度を有し、
好ましくは、該ポリオキシプロピレンが二重金属シアン化物(DMC)錯体により触媒されたプロピレンオキシドの開環付加重合から調製され、約0.020meq/g未満の不飽和度を有するポリマーである該フォーム。
【請求項10】
第2イソシアネート−反応性成分(b2)が、1200〜2400g/モルの重量平均分子量を有するポリ(テトラメチレン-エーテル)グリコールである請求項1から9のいずれかに記載のフォームであって、該第2イソシアネート−反応性成分(b2)における全てのヒドロキシル官能基が第1級ヒドロキシル基である該フォーム。
【請求項11】
第2イソシアネート−反応性成分(b2)が、1200〜3000g/モルの重量平均分子量を有するポリ(トリメチレン-エーテル)グリコールである請求項1から10のいずれかに記載のフォームであって、該第2イソシアネート−反応性成分(b2)における全てのヒドロキシル官能基が第1級ヒドロキシル基である該フォーム。
【請求項12】
第2イソシアネート−反応性成分(b2)がポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーである請求項1から11のいずれかに記載のフォームであって、
該コポリマーが、該第2イソシアネート−反応性成分100重量部に基づき、オキシエチレンを少なくとも7.5重量部含有する該フォーム。
【請求項13】
第2イソシアネート−反応性成分(b2)が、2個のヒドロキシ基を有する開始剤へプロピレンオキシドを重付加させ、次いでエチレンオキシドでキャップさせることにより調製されるポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーである請求項12に記載のフォームであって、
該コポリマーが、0.05meq/g未満の不飽和度を有し、該第2イソシアネート−反応性成分(b2)におけるヒドロキシル基の総重量に基づき、51重量%より高い含有量で第1級ヒドロキシル基を含有する該フォーム。
【請求項14】
架橋剤が60〜420g/モルの重量平均分子量と、少なくとも2個のイソシアネート−反応性官能基を有する請求項1から13のいずれかに記載のフォームであって、
該架橋剤が、イソシアネート−反応性混合物100重量部に基づき0.2〜15重量部、好ましくは1.2〜12重量部の量で使用される該フォーム。
【請求項15】
イソシアネート−反応性成分が、該イソシアネート−反応性成分100重量部に基づき、0〜40重量部のポリマーポリオールを更に含有する請求項1から14のいずれかに記載のフォームであって、該ポリマーポリオールが、ポリマーポリオール100重量部に基づき5〜55重量部の固形分及び、15〜50mg KOH/gのヒドロキシル価を有する該フォーム。
【請求項16】
イソシアネート−反応性成分が、全フォーム100重量部に基づき0〜5.0重量部、好ましくは0〜3.5重量部のポリオキシプロピレン(b3)を気泡開口剤として更に含有する請求項1から15のいずれかに記載のフォームであって、該ポリオキシプロピレンが、1の公称ヒドロキシル官能価及び、800〜8500g/モルの重量平均分子量を有する該フォーム。
【請求項17】
触媒(c)が、ブレンステッド酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と有機金属触媒を含有する混合物である請求項1から16のいずれかに記載のフォーム。
【請求項18】
ブレンステッド酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が、重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムである請求項17に記載のフォーム。
【請求項19】
架橋剤(c)が、以下の化学式(I)で表される化合物である請求項1から18のいずれかに記載のフォーム:
【化1】

(式中、xは1〜3の整数である。)
【請求項20】
架橋剤(c)がジエタノールアミンである請求項19に記載のフォーム。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の成分a〜成分dを反応させることを含む、請求項1から20のいずれかに記載のフォームであって、約65〜110、好ましくは70〜105、より好ましくは約75〜105のイソシアネート指数を有する該フォームの製造方法。

【公表番号】特表2012−509368(P2012−509368A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536723(P2011−536723)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000226
【国際公開番号】WO2010/057355
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511123337)優潔(亜州)有限公司 (1)
【Fターム(参考)】