説明

軟質プロピレン重合体からなる中空成形体、積層中空成形体

【課題】柔軟性、耐熱性、耐キンク性、透明性、強度、繰り返し伸長性、チューブタック性に優れるとともに、水やアルコールおよび酸への耐性に優れている中空成形体、および該中空成形体を用いた積層中空成形体、補強中空成形体および補強積層中空成形体を提供する。
【解決手段】以下の(A)、(B)および必要に応じて(C)からなる組成物(X)からなる中空成形体;(A)アイソタクティックポリプロピレン1〜95重量部(B)エチレン含量が0〜30モル%、α−オレフィン含有量が0〜30モル%であり、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない軟質プロピレン重合体5〜99重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)、(C)前記軟質プロピレン重合体(B)を除く、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある軟質重合体を、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0〜50重量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、耐熱性、大金区政、透明性、強度(破断強度)に優れると共に、水やアルコールおよび酸への耐性に優れた中空成形体に関し、さらにはこの中空成形体を含む積層中空成形体、補強中空成形体、及び補強積層中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水をはじめとする飲料用液体またはアルコールや酸などを含有する給水・給湯チューブあるいはホースとして、これまで軟質塩化ビニル性のものが使用されてきた。ところが、軟質塩化ビニルに含有される可塑剤の溶出の懸念から、可塑剤を含まず人体に安全なオレフィン系材料(特にポリエチレンやポリブテンなど)が用いられてきた。
【0003】
ところが、ポリエチレンやポリブテンでは材料の剛性が高いため、チューブ・ホースの柔軟性や耐キンク性が悪化するため、これらの改良が進められてきた。
【0004】
たとえば、特許文献1では低密度ポリエチレンやエチレン・α−オレフィン重合体などの軟質エチレン重合体を用いたものが、あるいは例えば、特許文献2ではスチレン系エラストマーを主成分としたコンパウンドを用いたものが提案されている。
【0005】
一方、例えば特許文献3においては、最内層にポリエチレンやポリブテン樹脂層、その外側にスチレン系エラストマーを主成分とする熱可塑性樹脂層からなる多層構成のチューブ・ホースも提案されている。
【特許文献1】特開2001−141134
【特許文献2】特開2003−096263
【特許文献3】特開2005−076849
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなチューブ、ホースは柔軟性や耐熱性、耐キンク性をすべて満足させられるものが得られない場合があり、必要に応じてこれらの材料を架橋する必要があった。本発明が解決しようとする課題は、柔軟でありながら良好な耐熱性と耐キンク性を発現するチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の中空成形体は、以下の(A)、(B)および必要に応じて(C)からなる組成物からなる中空成形体である;
(A)アイソタクティックポリプロピレン1〜95重量部
(B)エチレン含量が0〜30モル%、α−オレフィン含有量が0〜30モル%であり、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない軟質プロピレン重合体5〜99重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)、
(C)前記軟質プロピレン重合体(B)を除く、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある軟質重合体を、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0〜50重量部。
【0008】
本発明の中空成形体は、
組成物(X)が、以下の(1)〜(3)を全て満たすことが好ましい;
(1)20%エタノール中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下である
(2)4%酢酸中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下である
(3)水中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下である。
さらに本発明の中空成形体は、組成物(X)が、
(4)ノルマルヘプタン中で25℃/1時間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が600ppm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の積層中空成形体は、前記中空成形体の内側および/または外側に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層を設けてなる。
【0010】
本発明の補強中空成形体または補強積層中空成形体は、前記中空成形体または積層中空成形体の外側に、金属繊維、ガラス繊維または合成繊維からなる補強層を設けてなる。
【0011】
また、本発明の補強中空成形体または補強積層中空成形体は、補強層の外周に被覆された熱可塑性樹脂からなる被覆層を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空成形体は、柔軟性、耐熱性、耐キンク性、透明性、強度、繰り返し伸長性、チューブタック性に優れるとともに、水やアルコールおよび酸への耐性に優れている。
【0013】
本発明の中空成形体を用いた積層中空成形体、補強中空成形体および補強積層中空成形体は、給水チューブ・ホース、給湯チューブ・ホース、エアーチューブ・ホースとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(A)アイソタクティックポリプロピレン
本発明の中空成形体を形成する、組成物(X)の構成成分として使用される(A)アイソタクティックポリプロピレンは、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点Tmが140〜170℃、好ましくは145〜170℃、さらに好ましくは150〜165℃であるプロピレン単独重合体またはプロピレンとα―オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体である。なお融点は後述する実施例記載の方法で求めることができる。
【0015】
(A)アイソタクティックポリプロピレンのプロピレン含量は80〜100モル%、好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
【0016】
共重合体の場合に使用されるα−オレフィンとしては、エチレンないし炭素数4〜20までのα−オレフィンが挙げられ、好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ペンテンである。
【0017】
(A)アイソタクティックポリプロピレン、のASTM1238に準じて230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下、MFRと略記)は、0.05〜50g/10分、好ましくは0.1〜20g/10分である。
【0018】
また必要に応じて複数の(A)アイソタクティックポリプロピレンを併用することができ、例えば融点や剛性の異なるの2種類以上の成分を用いることもできる。
【0019】
このような(A)アイソタクティックポリプロピレンは、例えばマグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および電子供与体からなるチーグラー触媒系、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒系でプロピレンを重合あるいはプロピレンと他のα―オレフィンを用いて共重合することにより製造することができる。
【0020】
(B)軟質プロピレン重合体
本発明で用いられる(B)軟質プロピレン系重合体は、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない。ここで融点が観測されないとは、−40℃〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。測定条件は実施例記載の方法で行う。
【0021】
また(B)軟質プロピレン重合体は、プロピレン由来の構成単位を40〜100モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を0〜30モル%の量で含んでいる(ここでプロピレンとエチレンと炭素数4〜20のαオレフィンの合計を100モル%とする)。
【0022】
好ましくはプロピレン由来の構成単位を45〜89モル%、より好ましくは52〜85モル%、さらに好ましくは60〜80モル%、エチレン由来の構成単位を、好ましくは10〜25モル%、さらに好ましくは10〜23モル%、より好ましくは12〜23モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を0〜30モル%、好ましくは0〜25モル%、さらに好ましくは0〜20モル%含んでいる。
【0023】
また、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(a)が必須となる場合には、プロピレン由来の構成単位を45〜89モル%、好ましくは52〜85モル%、好ましくは60〜80モル%、エチレン由来の構成単位を10〜25モル%、好ましくは10〜23モル%、更に好ましくは12〜23モル%、必要に応じて炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(a)を1〜30モル%、好ましくは、3〜25モル%、更に好ましくは、5〜20モル%の量含んでいる。
【0024】
このような量でプロピレン、エチレン成分、必要に応じて炭素数4〜20のα−オレフィン成分を含有する(B)軟質プロピレン重合体は、アイソタクティックポリプロピレンとの相溶性が良好となり、得られる組成物(X)は良好な透明性、機械(破断点)強度、柔軟性、耐熱性、耐傷付性、耐圧縮歪を発揮する傾向がある。
【0025】
このような(B)軟質プロピレン重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。(B)軟質プロピレン重合体の極限粘度[η]が前記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れた(B)軟質プロピレン重合体となる。
【0026】
この(B)軟質プロピレン重合体は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が4MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下である。(B)軟質プロピレン重合体がこのような範囲にあると柔軟性、透明性、ゴム弾性に優れる。
【0027】
この(B)軟質プロピレン重合体は、X線回折で測定した結晶化度が20%以下、好ましくは0〜15%である。また(B)軟質プロピレン重合体は単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常−10℃以下、好ましくは−15℃以下の範囲にあることが望ましい。(B)軟質プロピレン重合体のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
この(B)軟質プロピレン重合体は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)の関係において以下の関係式が成り立つ。
【0028】
ΔH<345Ln(C3含量mol%)−1492、
ただしこの場合、76≦C3含量(mol%)≦90
【0029】
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は1.5〜4.0、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5であることが好ましい。
【0030】
(B)軟質プロピレン重合体は、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティー(mm分率が)85%以上、好ましくは85〜97.5%、さらに好ましくは87〜97%、特に好ましくは90〜97%の範囲にある。mm分率が上記範囲にあると、機械強度に優れることから、本発明の中空成形体の耐圧強度が向上し本発明に好適である。
国際公開第2004−087775号パンフレットの21項7行目〜26項6行目に記載された方法を用いて測定される。
【0031】
(B)軟質プロピレン重合体の製造
本発明に係わる(B)軟質プロピレン重合体は上記(A)アイソタクティックポリプロピレン製造用メタロセン触媒を用いて同様に製造することができ、これに限定されるものではない。例えば、国際公開2004−087775号パンフレット記載のものを用いることができる。
【0032】
(C)軟質重合体
本発明で必要に応じて用いられる軟質重合体(C)は、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にあるものであり、具体的に以下のものが挙げられる。
【0033】
軟質重合体(C)の具体例としては、スチレン系エラストマー、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられるが、以下で説明するスチレン系エラストマー、エチレン・α−オレフィン共重合体が好ましく用いられる。
【0034】
スチレン系エラストマーは、スチレン系化合物(スチレンを含む。以下において同じ)・ブタジエン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体、ポリイソプレンブロックセグメントとスチレン系化合物・イソプレン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体、スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体、スチレン系化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物、およびスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物などが挙げられるが、これら公知のものが制限なく使用できる。このようなスチレン系エラストマーは、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0035】
また、40℃での動粘度が20〜800cst(センチストークス)、好ましくは40〜600cstさらに流動度が0〜−40℃、好ましくは0〜−30℃、及び引火点(COC法)が200〜400℃、好ましくは250〜350℃の公知のパラフィンオイルは、前記スチレン系エラストマーに取り込まれるため、これを配合することで成形体の柔軟性を大きく向上させることができる。パラフィンオイルの配合量はスチレン系エラストマー100重量部に対して10〜150重量部が好ましい。
【0036】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10までのα−オレフィン共重合させたものを意味するが、下記特徴を有するものが好ましく使用できる。
(a)密度(ASTM 1505 23℃)が0.850〜0.910g/cm、好ましくは0.860〜0.905g/cm3、より好ましくは0.865〜0.895g/cm
(b)190℃、荷重2.16kgで測定されるMFRが0.1〜150g/10分、好ましくは0.3〜100g/10分
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは0〜39%、さらに好ましくは0〜35%である。
【0037】
コモノマーとして使用される炭素数3から20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンが挙げられ、これらを単独で、または2種以上の組み合わせが可能であり、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。また、必要に応じて他のコノモマー、例えば1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類や、シクロペンテン等の環状オレフィン類等を少量含有してもよく、共重合体中のα−オレフィン含量としては、3〜50モル%、通常5〜30モル%、好ましくは5〜25モル%である。
【0038】
その分子構造は、直鎖状であってもよいし、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。また、複数の異なるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を混合して使用することも可能である。
【0039】
このようなエチレン・αオレフィン共重合体を得る方法については特に制限はないが、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造する法が挙げられる。特にメタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、本発明に好ましく利用できる。
【0040】
組成物(X)
本発明に係る組成物(X)は、上記アイソタクティックポリプロピレン(A)と(B)軟質プロピレン重合体からなることを特徴としている。本発明で用いられる組成物(X)は熱可塑性樹脂組成物であることが好ましい。
【0041】
また本発明で用いられる組成物(X)は、軟質重合体(C)を含んでいてもよく、また必要に応じて後述する無機充填剤や添加剤を含んでいても良い。
【0042】
本発明においてアイソタクティックポリプロピレン(A)は、(A)+(B)の合計を100重量%とした場合に、1〜95重量%、好ましくは5−90重量%、さらに好ましくは15〜50重量%の割合で用いられる。
【0043】
また(B)軟質プロピレン重合体は、(A)+(B)の合計100重量%に対して、5〜99重量%、好ましくは10〜95重量%、さらに好ましくは50〜85重量%の割合で用いられる。この範囲であれば、本発明の中空成形体の柔軟性、耐熱性、耐キンク性、透明性、強度、さらには良好な外観を有する成形性が得られるため好ましい。
【0044】
本発明の組成物(X)において、必要に応じて用いられる軟質重合体(C)は、(A)+(B)の合計100重量部に対して、通常1〜50重量部重量部、好ましくは5〜40重量部の量で用いられる。
【0045】
軟質重合体(C)を上記のような量で含有すると、柔軟性および表面硬度、耐衝撃性、特に耐低温衝撃強度を付与することができるため好ましい。
【0046】
本発明に用いられる組成物(X)中には、さらに必要に応じて、他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0047】
本発明に用いることができる無機充填剤は、例えばタルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維などが挙げられる。これらの中ではタルク、炭酸カルシウムが好ましく、特にタルクが好ましい。タルクは平均粒径が1〜5μm、好ましくは1〜3μmのものが望ましい。無機充填剤は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0048】
さらに本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤、防かび剤、発錆防止剤など公知の添加剤を配合することができる。
【0049】
本発明に用いる組成物(X)において、前記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、(A)アイソタクティックポリプロピレンと(B)軟質プロピレン重合体と、必要に応じて添加される軟質重合体(C)の合計が、例えば、組成物全体の60重量%以上、好ましくは80重量%〜100重量%となるように含まれている態様を例示することができる。残部は前記したような他の樹脂、ゴム、添加剤、無機充填剤などである。この添加量はアイソタクティックポリプロピレン(A)と(B)軟質プロピレン重合体、(C)軟質重合体の種類、分子量、溶融流動性などにより、さらには柔軟性ホースの用途分野、サイズ、要求性状などを考慮して決定される。
【0050】
本発明の組成物(X)として、以下の溶出特性を示すものが好ましい。なおここで、溶出特性は全て、70mm×50mm×0.6mmの寸法の熱成形シートを用いて行う。特にプレスシートが好ましい。
(1)20%エタノール中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppmである
(2)4%酢酸中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppmである
(3)水中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppmである
組成物(X)の溶出特性(1)〜(3)が上記範囲にあるものは、食品および飲料用中空成形体として好適に使用できる。
【0051】
本発明の組成物(X)は(1)〜(3)に加えてさらに以下の溶出特性を示すものがより好ましい。
(4)ノルマルヘプタン中で25℃/1時間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が600ppm以下、好ましくは150ppm以下、より好ましくは30ppmである。
たとえば(4)を満たす組成物(X)を得るには、(B)成分に(A)成分を少量添加することにより蒸発残留物の量を(B)成分に比して減らすことが出来、また(B)成分のプロピレン由来の構成単位と、プロピレン以外の構成単位のモル比を調節することでさらに調整することができる。
【0052】
組成物(X)の溶出特性が上記範囲(4)にあるものは、油成分を含有する食品および飲料用中空成形体として好適に使用できる。
【0053】
上記溶出試験は、厚生省告示370号ならびに20号の食品、添加物等の規格基準第三器具及び容器包装Dの2の(2)の3による試験で実施されるものである。
【0054】
本発明の組成物(X)の好ましい形態例として、以下の構成をあげることができる。
(A)アイソタクティックポリプロピレン
(B)軟質プロピレン重合体
(C)軟質重合体
耐熱安定剤、酸化防止剤
スリップ剤(エルカ酸アミドおよびまたはシリコンオイル)
アンチブロッキング剤(シリカ)
抗菌剤(適当なゼオライトなどの担体に銀イオンを取り込んだもの)
【0055】
組成物(X)の製造
本発明で用いられる組成物(X)は、各成分を上記のような範囲で種々公知の方法、たとえば、多段重合法、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0056】
また、(B)軟質プロピレン重合体に対して、少量の(A)アイソタクティックポリプロピレンを添加してあらかじめペレットを製造し、さらに(A)アイソタクティックポリプロピレンを添加しても良い。この場合、前述した(C)軟質重合体や、無機充填剤、他の添加剤、その他使用しても良い樹脂、ゴム等は、あらかじめペレット化する際に配合してもよく、またペレット形状の(A)およびまたは(B)成分とともに配合しても良い。
【0057】
中空成形体
以下に、本発明の中空成形体、積層中空成形体、補強中空成形体、および補強積層中空成形体について詳細に説明する。
【0058】
本発明の中空成形体は、前記組成物(X)を成形して得られるものである。本発明の中空成形体は、形状、長さなどにより公知の成形方法を選択することができるが、一般に溶融押出成形法が採用される。しかし、長さや複雑断面形状が複雑な場合、長手方向において一定曲率でない場合、断面形状が異なったりする場合には、ブロー成形方法が好ましく採用される。また射出成形方法で製造することもできる。
【0059】
中空成形体の形状としては特に制限はなく、一般の形状である筒状ホースに加えて柔軟性、強度、剛性、耐キンク性、巻き取り性などの点からコルゲート(波形)、スパイラル(螺旋)などであってもよい。
【0060】
本発明の中空成形体の外径としては特に制限はなくその用途により異なるが、一般に0.2mm〜200cm、その肉厚は0.01mm〜20mmである。
前記組成物(X)は優れた透明性を有することから、顔料を配合せずに得られた本発明の中空成形体は良好な内容物の視認性を有する。
【0061】
前記組成物(X)は非架橋でありながら優れたゴム弾性を有することから、本発明の中空成形体は適度な伸縮性を示すとともに良好な屈曲疲労性も示す。
【0062】
積層中空成形体
本発明の積層中空成形体は、前記中空成形体の内側および/または外側に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層を設けてなるものである。なお本発明で単に中空成形体という場合は、組成物(X)からなる成形体自体を指し、何らかの層が積層されている場合は、積層中空成形体、と呼んで区別する。積層中空成形体の成形方法としては特に制限はなく、例えば公知の共押出法を用いて複数の層を同時に押出し成形する方法、または内層に用いる第一の層を押出成形し、その後で第二の層を第一の層の外周面に押圧結着して積層させる方法などが挙げられる。各層は熱接着で結合させてもよく、また公知の接着剤を用いて接着させてもよい。
【0063】
前記中空成形体の内側および/または外側に設けることができる熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては公知のものが使用できるが、例えばアクリル樹脂またはアクリル系エラストマー、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂(TEEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合樹脂(TEMA)、スチレン系エラストマー、低密度または高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン樹脂、オレフィン系エラストマー、接着性(変性)ポリオレフィン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂およびポリエステル系エラストマー、塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂またはポリアミド系エラストマー、ポリウレタン樹脂またはポリウレタン系エラストマーなどが挙げられ、これらの樹脂は架橋されていてもよい。また、前述の公知の添加剤を添加してもよい。またこれらの樹脂をブレンドして用いてもよい。前記熱可塑性樹脂は、前述した組成物(X)と同一でも良いが、組成物(X)以外の熱可塑性樹脂であること、すなわち組成物(X)の要件を満たさない熱可塑性樹脂が好ましい。
【0064】
本発明の組成物(X)からなる中空成形体は前述したように良好な溶出特性を有しているためこれを積層中空成形体の最内層に好適に用いることができるが、これの限りではなく、例えば本発明の積層中空成形体の内側に上記に示した熱可塑性樹脂の中で耐油性、耐薬品性に優れた層を設けることも可能である。
【0065】
本発明の中空成形体または積層中空成形体の外側には金属線、金属繊維、あるいはビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維を巻きつけたり、またはこれらからなる織布、編布などを覆って、中空成形体または積層中空成形体を補強した補強中空成形体または補強積層中空成形体を得ることができる。また補強層の外周に被覆された熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する補強積層中空成形体とすることもできる。より具体的には、補強材として巻きつけられた繊維や布のさらに上から、上記のような熱可塑性樹脂を溶融押出ししてこれらに含浸させるとともに、本発明の中空成形体または積層中空成形体と接着させて、被覆層を有する補強中空成形体または補強積層中空成形体とすることも可能である。
【0066】
本発明の中空成形体、積層中空成形体、補強中空成形体、補強積層中空成形体の外側にシース等で補強することも可能である。
【0067】
このようにして得られた補強中空成形体、または補強積層中空成形体は、耐圧強度、耐傷付き性、耐キンク性などが大きく向上するため、さまざまな産業用途へ適用することができる。例えば、家庭用、農業用としての散水ホース、例えばカップ式自動販売機、ディスペンサー等の飲料用として使用するチューブ・ホース、浄水器や給湯、給水シャワー、
灌漑ホース、洗濯機の給排水ホース、粉体輸送ホース、空調機のドレンホース、住宅、自動車などのダクト用ホース、電機掃除機の吸引ホース、住宅、地下埋設、自動車用などの電気配線内蔵用ホース、光ファイバー配線内蔵用ホース、自動車用のオイルやウオッシャー液用ホース(チューブ)、酸素吸入用チューブ、食品包装や化粧品・サニタリー用チューブ容器、縄跳び用縄などの運動具、フレコン用ロープなどの梱包用ロープなどを挙げることができる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0069】
《実施例および比較例で用いた原料》
(A) アイソタクティックポリプロピレン(rPP)
プロピレン・エチレン・1−ブテンからなるランダムPPを用いた。
Tm=140℃、MFR(230℃)=7.0g/10min、mm=97%、Mw/Mn=4.8
(B)軟質プロピレン重合体(PBER)
プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(MFR=7.2g/10min
、Tm=観測されず、エチレン含量=14モル%、1-ブテン含量=19モル%、Mw/
Mn=2.0、ショアーA硬度=45、mm値=92%)を使用した。
【0070】
この重合体は以下のように製造した。すなわち充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン85gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.78MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.78MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、60.4gであった。
【0071】
(C−1)軟質重合体(EBR)
密度=885kg/m、融点=68℃、MFR(230℃)=7.2g/10min、Mw/Mn=2.1、ショアーA硬度=86のエチレン・1−ブテンランダム共重合体を使用した。
【0072】
(C−2)軟質重合体(EPR)
密度=870kg/m3、融点=44℃、MFR(230℃)=2.2g/10min、Mw/Mn=2.1、ショアーA硬度=71のエチレン・プロピレンランダム共重合体を使用した。
【0073】
(X−1) スリップ剤
シリコンオイル(東レダウコーニング社製 SH−200(500CS))を使用した。
【0074】
(MB−1) スリップ剤マスターバッジ
エルカ酸アミドを4wt%含有するポリプロピレン(アイソタクティックポリプロピレン(rPP))マスターバッジを使用した。
【0075】
(MB−2) アンチブロッキング(AB)剤マスターバッジ
シリカを4wt%含有するポリプロピレン(アイソタクティックポリプロピレン(rPP))マスターバッジを使用した。
【0076】
《上記物性値の測定方法》
(1) 融点(Tm)
パーキンエルマー社製DSC−7型装置(示差走査型熱量計(DSC))を用いて測定した。
試料約5mgをアルミパンに詰めて200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/分で−40℃まで冷却し、−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重にて測定した。
(3) 分子量分布(Mw/Mn)
分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
直径27mm、長さ600mmの分離カラム(TSK GNH HT)を用い、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。
(4)プロピレン含量、1-ブテン含量および立体規則性(mmmm)
13C−NMRを利用して求めた。
(5)ショアーA硬度
プレス成形機により2mm厚シートを作製し、測定後室温で48時間経過させた後、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った(ASTM D2240に準拠)。
成形条件:温度190℃、加熱・加圧時間7分間、15℃チラーで冷却
(6)密度
ASTM D1505に従い、室温で測定した。
【0077】
《実施例および比較例の評価方法》
(1)溶出特性
実施例および比較例に記載の方法で得られたチューブから0.6mm厚のプレス成形シートを作製(成形条件:温度190℃、加熱・加圧時間7分間、15℃チラーで冷却)し、これをもって下記の溶出特性を評価した。
(i)20%エタノール中で60℃/30分間浸出させた溶液の蒸発残留物を測定した。
(ii)4%酢酸中で60℃/30分間浸出させた溶液の蒸発残留物を測定した。
(iii)純水中で60℃/30分間浸出させた溶液の蒸発残留物を測定した。
(iv)ノルマルヘプタン中25℃/1時間浸出させた溶液の蒸発残留物を測定した。
【0078】
(2)引張り試験
実施例および比較例に記載の方法で得られたチューブを切り開き、長さ方向にJIS K7113−2 1/2号型のダンベルサイズに切り抜き、引張り試験を行った。
【0079】
(3)透明性
実施例および比較例に記載の方法で得られたチューブを切り開き、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−2000」を用い、シクロヘキサノール溶液中でシートの拡散透過光量および全透過光量を測定し、下式により内部ヘイズを計算した。
内部ヘイズ=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
【0080】
(4)耐キンク性
実施例および比較例に記載の方法で得られたチューブを60cm長に切り、これを手で円状に丸めながら徐々に直径を小さくしていき、チューブがキンク(折れ曲がる)したときの円の直径(mm)を測定した(n数=5、平均値)。
【0081】
(5)耐熱性
95℃の熱湯中に入れた100gの錘を、実施例および比較例に記載の方法で得られたチューブを5mm幅×30cmの短冊状に切り出したサンプルで吊り上げたときに、これらが破断するか否かを評価した(チューブは熱湯中で15秒間保持)。
○:吊り上げ可能、×:吊り上げ不可能
【0082】
(6)繰り返し伸張評価
得られたチューブを150%伸張させた後すぐにこれを回復させる、このような操作を10回繰り返した後のチューブの外観変化を観察した。
○:ほとんど変化なし、×:くびれが発生
【0083】
(7)チューブタック性
得られたチューブを折り曲げて内面同士を密着させた際のタック性を評価した。
○:タックがまったくない
△:ややタックがあるが自然に剥がれる
×:タックが強く自然に剥がれない
【0084】
(8)低温脆化温度
得られたチューブから2mm厚のプレス成形シートを作製し、これをASTM D746の方法に準拠して測定した。
成形条件:温度190℃、加熱・加圧時間7分間、15℃チラーで冷却
【0085】
[実施例1]
事前に(A)アイソタクティックポリプロピレン(rPP)と(B)軟質プロピレン重合体(PBER)を20重量部/80重量部の割合で混練して得たペレット形状の組成物(a)100重量部に対し、(X−1)スリップ剤を500ppm配合したものを、押出し中空成形機を用いて180℃で押出して、直径/肉厚=13mm/2mmのチューブを成形した。
このチューブを用いて上記に示した方法で評価した結果を表.1に示す。
【0086】
[実施例2]
実施例1に記載の組成物(a)100重量部に対し、(X−1)スリップ剤を500ppm、(MB−1)スリップ剤マスターバッジを5重量部、(MB−2)アンチブロッキング(AB)剤マスターバッジを5重量部配合したものを、押出し中空成形機を用いて180℃で押出して、直径/肉厚=13mm/2mmのチューブを成形した。
このチューブを用いて上記に示した方法で評価した結果を表.1に示す。
【0087】
[実施例3]
実施例1に記載の組成物(a)80重量部((A)アイソタクティックポリプロピレン(rPP)と(B)軟質プロピレン重合体(PBER)を16重量部/64重量部)と、さらに(A)アイソタクティックポリプロピレン(rPP)を20重量部に対し、(X−1)スリップ剤を500ppm配合したものを、押出し中空成形機を用いて180℃で押出して、直径/肉厚=13mm/2mmのチューブを成形した。
このチューブを用いて上記に示した方法で評価した結果を表.1に示す。
【0088】
[実施例4]
実施例1に記載の組成物(a)90重量部((A)アイソタクティックポリプロピレン(rPP)と(B)軟質プロピレン重合体(PBER)を18重量部/72重量部)と、さらに(C−1)軟質重合体(EBR)を10重量部に対し、(X−1)スリップ剤を500ppm配合したものを、押出し中空成形機を用いて180℃で押出して、直径/肉厚=13mm/2mmのチューブを成形した。
このチューブを用いて上記に示した方法で評価した結果を表.1に示す。
【0089】
[比較例1]
(C−1)軟質重合体(EBR)100重量部に対し、(X−1)スリップ剤を500ppm配合したものを、押出し中空成形機を用いて180℃で押出して、直径/肉厚=13mm/2mmのチューブを成形した。
このチューブを用いて上記に示した方法で評価した結果を表.1に示す。
【0090】
[比較例2]
(C−2)軟質重合体(EPR)100重量部に対し、(X−1)スリップ剤を500ppm配合したものを、押出し中空成形機を用いて180℃で押出して、直径/肉厚=13mm/2mmのチューブを成形した。
このチューブを用いて上記に示した方法で評価した結果を表.1に示す。
【0091】
[実施例5]
共押出中空成形機により、実施例1と同じ組成からなるものを外層、下記に示す物性を有するポリエチレン樹脂(D)を内層とし、直径13mm、外層の肉厚が1.8mm、内層の肉厚が0.2mmの積層中空成形体を得た。得られた積層中空成形体は良好に接着しており剥離することはなかった。
得られた積層中空成形体の耐キンク性を表.2に示す。
【0092】
ポリエチレン樹脂(D):
密度=925kg/m、融点=120℃、MFR(190℃)=3.8g/10minの直鎖状低密度ポリエチレンを使用した。
【0093】
[比較例3]
上記ポリエチレン樹脂(D)からなる単層の直径13mm、肉厚2mmの中空成形体を作成し、実施例5と同様の評価を行った。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の中空成形体、積層中空成形体、耐圧積層中空成形体は、柔軟性や耐熱性、耐キンク性に優れるため、給水チューブ・ホース、給湯チューブ・ホース、エアーチューブ・ホースとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の積層中空成形体の一例を示す図である。
【図2】本発明の積層中空成形体の一例を示す図である。
【図3】本発明の補強積層中空成形体の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1.組成物(X)からなる中空成形体
2.(X)以外の熱可塑性樹脂層
3.本発明の中空成形体または積層中空成形体
4.補強するための繊維
5.熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)、(B)および必要に応じて(C)を含んでなる組成物(X)からなる中空成形体;
(A)アイソタクティックポリプロピレン1〜95重量部
(B)エチレン含量が0〜30モル%、α−オレフィン含有量が0〜30モル%であり、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が120℃未満または融点が観測されない軟質プロピレン重合体5〜99重量部(ただし(A)と(B)の合計を100重量部とする)、
(C)前記軟質プロピレン重合体(B)を除く、ショアーA硬度が95以下および/またはショアーD硬度が60以下の範囲にある軟質重合体を、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0〜50重量部。
【請求項2】
組成物(X)が、以下の(1)〜(3)を全て満たす請求項1記載の中空成形体;
(1)20%エタノール中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下である
(2)4%酢酸中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下である
(3)水中で60℃/30分間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が30ppm以下である
【請求項3】
組成物(X)が、(4)ノルマルヘプタン中で25℃/1時間浸出させる溶出試験において、蒸発残留物が600ppm以下である請求項2記載の中空成形体。
【請求項4】
前記中空成形体の内側および/または外側に少なくとも1層の熱可塑性樹脂層を設けてなる積層中空成形体。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の中空成形体または積層中空成形体の外側に、金属繊維、ガラス繊維または合成繊維からなる補強層を設けてなる補強中空成形体または補強積層中空成形体
【請求項6】
請求項5に記載の耐圧積層中空成形体において、補強層の外周に被覆された熱可塑性樹脂からなる被覆層を有している補強中空成形体または補強積層中空成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−217580(P2007−217580A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40354(P2006−40354)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】