説明

軟質塩ビ発泡体の製造方法

【課題】優れたクッション性を持つ軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで容易に製造できる軟質塩ビ発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】塩化ビニル樹脂、可塑剤、カルボン酸亜鉛塩及び熱分解型化学発泡剤を含有し、塩化ビニル樹脂100重量部に対する配合量が、可塑剤は50〜120重量部、カルボン酸亜鉛塩は0.1〜5重量部、熱分解型化学発泡剤は3〜30重量部である塩ビペーストゾルコンパンドを、金型に注型して120〜200℃で加熱発泡させる一次発泡工程、及び、一次発泡工程で得られた発泡体を50〜150℃で再加熱する二次発泡工程を有することを特徴とする軟質塩ビ発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたクッション性を持つ軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで容易に製造できる軟質塩ビ発泡体の製造方法に関するものである。
【0002】
軟質性塩ビ発泡体はその構造および素材の特性から多くの機能を有しており、様々な分野で用いられている。軟質塩ビ発泡体を得る手段としては、(1)空気を強制的に混合させて発泡させる方法(機械発泡)と(2)熱分解型発泡剤を用いる方法が知られている。
【0003】
(1)の例としては、塩化ビニル樹脂、可塑剤、整泡剤としてアルキルアリールベンゼンスルホン酸アルキル土類金属塩およびノニオン系界面活性剤からなる塩ビペーストゾル中に空気を強制的に混合攪拌することで一旦ホイップ状とし、次いで加熱することで発泡フォームを得る方法(特許文献1:特開昭49−45165号公報)を挙げることができる。
【0004】
しかし、上述の方法では、気泡(空気)を発生させるための特殊な専用装置を必要とする問題がある。また、安定な気泡を維持させるため、整泡剤の最適な配合比率を調整する必要がある。このようにして調整された塩ビゾルは、ナイフコーター、ロールコーター等の塗布装置で紙や基布上に均一な薄膜層を塗布した後、加熱キュアーされる。そこで、出来上がった発泡体は通常、0.5〜5.0mm厚程度のシート状であり、任意の厚みの発泡体を得ることが出来なかった。
【0005】
さらに、この方法による発泡体は、内部のセル間が繋がった構造(連続気泡構造)を形成し、その構造的特徴から液体を吸い込み又気体が通過する。また、強制的に気泡が封入された状態で加熱キュアーするため、セルサイズが粗大になりやすい。そのため薄い発泡体を得る手法としては不向きであった。
【0006】
上記(2)の手段としては、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、全可塑剤の5〜70重量%を特定の構造を有するものとする可塑剤を40〜100重量部配合され、更に発泡剤を2〜12重量部を配合してなる発泡成形用塩ビペーストゾル組成物を加熱発泡する方法が開示されており、この方法によりべとつき感の少ない表面と固さを備えた発泡体が得られる(特許文献2:特開平5−339413)。しかし、この方法により得られる発泡体は表面のべとつき感は解消できるものの、腰が強く固さがあり、クッション性(高反発性:加重によって塑性変形しにくい性質。)に劣る。そのためその用途は、ビニル壁紙、床材等のインテリア製品のような薄いシート状の製品に限定される。
【0007】
そこで、優れたクッション性を持つ軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで容易に製造できる軟質塩ビ発泡体の製造方法の開発が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れたクッション性を持つ軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで容易に製造できる軟質塩ビ発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するための鋭意研究を行った結果、塩化ビニル樹脂、可塑剤、カルボン酸亜鉛塩、発泡剤を所定の配合比で含有する塩ビペーストゾルコンパンドを金型に注型して加熱発泡(一次発泡)させ、次いで再加熱による発泡成型加工(2次発泡)をすることにより、優れたクッション性を持つ軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで容易に製造できること、そして、このようにして得られた軟質塩ビ発泡体は、その表面状態や外観も良く、さらにこの発泡体をスライスカットしたスライスカット品の外観もよいことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち本発明は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、カルボン酸亜鉛塩及び熱分解型化学発泡剤を含有し、塩化ビニル樹脂100重量部に対する配合量が、可塑剤は50〜120重量部、カルボン酸亜鉛塩は0.1〜5重量部、熱分解型化学発泡剤は3〜30重量部である塩ビペーストゾルコンパンドを、金型に注型して120〜200℃で加熱発泡させる一次発泡工程、及び、一次発泡工程で得られた発泡体を50〜150℃で再加熱する二次発泡工程を有することを特徴とする軟質塩ビ発泡体の製造方法である。
【0011】
本発明の製造方法で使用される塩化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を得るための重合方法は、限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を挙げることができる。
【0012】
本発明の製造方法で使用される可塑剤として、例えば、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸イソヘプチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルのようなフタル酸エステル系可塑剤、トリ−2−エチルヘキシルトリメリット酸のようなトリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシルのようなニ塩基酸エステル系可塑剤、トリ−2−エチルヘキシルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトのようなリン酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ポリエステル系可塑剤をあげることができる。これらは1種単独で、あるいは2種類以上の組合せで用いることができる。
【0013】
塩ビ樹脂の100重量部に対する可塑剤の配合量は、50〜120重量部である。50重量部未満では金型内の加熱発泡(一次発泡)工程で発泡体表面に亀裂が生じ、表面状態、外観形状を著しく損なう。さらに、そのスライスカット品の外観も悪く、クッション性も低くなる。
【0014】
一方、可塑剤の配合量が120重量部を超えると、発泡体表面に可塑剤の一部が表面に滲み出す(ブリード)現象が起き、表面状態、外観形状が悪く、さらに、そのスライスカット品の外観も悪く、クッション性も低くなる。
【0015】
本発明の製造方法で使用されるカルボン酸亜鉛塩は、熱分解型化学発泡剤の分解開始温度を下げる働きがある。その結果、より温和な条件で十分な発泡を行うことができ、発泡体の表面状態、外観形状、そのスライスカット品の外観等を向上させることができる。特に発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を用いた場合、この効果が著しい。カルボン酸亜鉛塩を含有させない場合は、発泡体の表面状態、外観形状、そのスライスカット品の外観、クッション性が全て低下する。
【0016】
カルボン酸亜鉛塩の例としては、カルボン酸亜鉛正塩、塩基性カルボン酸亜鉛塩、並びにカルボン酸亜鉛正塩及び過塩基性カルボン酸亜鉛塩の混合物挙げることができる。
【0017】
塩ビ樹脂の100重量部に対するカルボン酸亜鉛塩の配合量は、0.1〜5重量部である。0.1重量部未満では発泡剤の未分解物が残り黄着色し易い。また、5重量部を越えると、加熱発泡(一次発泡)において金型内における塩ビ樹脂の溶融状態と熱分解型化学発泡剤の最適な分解開始タイミングが得られず、塩ビ樹脂が充分に溶融する前に急激な分解が起こるためセル潰れ現象が生じる。
【0018】
カルボン酸亜鉛塩は、好ましくは、カルボン酸と酸化亜鉛とを、モル比が2.0:1.0〜1.5:1.0の範囲で反応させて得られる。このようにして得られるものは、カルボン酸2モルに対し酸化亜鉛1モルを反応して得られるカルボン酸正塩と、カルボン酸に対し過剰の酸化亜鉛を反応させることで得られる塩基性カルボン酸亜塩の混合物からなるものである。カルボン酸量がこの範囲の上限より多い場合は、未反応のカルボン酸が残留しやすく、着色やにおい等の問題が生じやすくなる。またカルボン酸量がこの範囲の下限未満では均一で透明な液状化が困難となり発泡体の外観不良を引き起こしやすくなる。
【0019】
ここで用いるカルボン酸としては、炭素数2〜22のカルボン酸、例えば飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び炭素環式カルボン酸が好ましく例示される。より具体的には、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、トリデカン酸、イソデカン、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノレイン酸、エルカ酸、ベヘン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ラウリルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、パラ−t−ブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、アミノ安息香酸、サリチル酸、アミノ酢酸、ブルタミン酸、シュウ酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フタル酸、フマール酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、チオジプロピオン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリット酸等が例示される。中でも、酢酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、オレイン酸、リシノレイン酸が好ましく例示される。
【0020】
本発明の製造方法で使用される発泡剤(化学発泡剤)としては、熱分解型化学発泡剤を例示することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゼンスルホニルホドラジド(OBSH)、ジニトロペンタメチレンテトラミン(OPT)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、重炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。中でも、安全性、価格の観点からADCAが好ましい。
【0021】
塩ビ樹脂の100重量部に対する熱分解型化学発泡剤の配合量は、3.0〜30重量部である。3.0重量部未満では金型内における発泡剤分解ガスによる内圧が充分に得られず、その結果良好な発泡体を得ることができない。又、30重量部を越えると加熱発泡時において未分解発泡剤が残る。従って、この範囲外の配合量では、発泡体の表面状態、外観形状、そのスライスカット品の外観、クッション性が低下する。
【0022】
本発明の方法は、塩ビゾルコンパンドを金型に注型した後、密閉状態で加熱発泡(一次発泡)する工程を有することを特徴とする。金型サイズ(縦、横、深)は、目的とする発泡体製品の大きさによって決まり、特に制限はない。密閉状態を保持するため、高圧プレス機にて金型を上下から加圧する。この時の圧力は150〜200kg/cmが好ましい。
【0023】
一次発泡での加熱温度は120〜200℃であり、好ましくは140〜180℃である。配合するカルボン酸亜鉛塩により発泡剤の分解温度を下げることができるが、120℃未満では発泡剤を完全に分解させることができず、その結果、発泡体の表面状態、外観形状、そのスライスカット品の外観、クッション性が低下する。200℃超えると上昇した金型内部の圧力に耐えうる金型容器の設備上の安全面において問題が生じる。
【0024】
一次発泡工程後、発泡体を大気圧下に放出すると高圧下で凝縮した発泡剤分解ガスが瞬時に膨張し発泡倍率2〜3倍程度の発泡体が形成される。この発泡体は次工程の再加熱による発泡成形加工(二次発泡)によりさらに膨張が進み、最終的には発泡倍率5〜10倍の軟質塩ビ発泡体に仕上がる。この時の温度は50〜150℃であることを特徴とする。50℃より低い場合は充分に膨張せず、150℃を超える場合は発泡体の外表面が黄変色し極めて美観を損ねることになる。又、その結果、発泡体の表面状態、外観形状のみではなく、そのスライスカット品の外観、クッション性が低下する。
【0025】
上記の本発明の塩ビペーストゾルは、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記の成分以外を添加することは可能である。好ましくはさらに、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、塩基性カルボン酸アルカリ土類金属塩、セル調整剤、充填剤、発泡促進剤、減粘剤、難燃剤、防黴剤、抗菌剤、顔料等が混合される。
【0026】
アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、加熱加工中の耐熱性を付与するために必要に応じて添加される。例としては、カルボン酸カリムウ塩、カルボン酸ナトリウム塩等の、カルボン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸マグネシウム塩、カルボン酸カルシウム塩、カルボン酸バリウム塩等のカルボン酸のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。これらの原料となるカルボン酸としては、カルボン酸亜鉛塩の製造原料として、前記で例示されたカルボン酸と同様なものを挙げることができる。
【0027】
塩基性カルボン酸アルカリ土類金属塩は、耐熱性を付与するために必要に応じて添加され、塩基性カルボン酸バリウム塩およびカルシウム塩、マグネシウム塩が好ましい。塩基性カルボン酸アルカリ土類金属塩の原料となるカルボン酸としては、カルボン酸亜鉛塩の製造原料として、前記で例示されたカルボン酸と同様なものを挙げることができる。又、塩基性カルボン酸アルカリ土類金属塩としては、市販されているものも使用できる。例えば、米国ハモンド社のプラスチスタブ2116、プラスチスタブ2508、プラスチスタブ2513、プラスチスタブ2106が挙げられる。上記金属塩以外の耐熱性の付与剤、色調改良剤、着色防止剤等も必要に応じて配合してもよい。
【0028】
セル調整剤は、セル径を小さく均一にするために必要に応じて添加され、平均分子量1000〜1000000のメタクリル酸ブチルエステルポリマー、メタクリル酸イソブチルエステルポリマー、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステルポリマー等を挙げることができる。
【0029】
充填剤は強度を付与するために必要に応じて添加され、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミ、クレー、シリカ等挙げることができる。
【0030】
酸化亜鉛(微細酸化亜鉛を含む)以外の発泡促進剤としては、水酸化亜鉛、塩化亜鉛に代表される亜鉛化合物、尿素、二酸化チオ尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミンに代表される含チッソ系化合物を挙げることができる。
【0031】
難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ほう酸等を挙げることができる。
【0032】
本発明の製造方法において、塩ビペーストゾルコンパウンドは、前記の組成を、常法により混合して得ることができる。
【0033】
本発明の軟質の塩ビ発泡体は、前記の本発明の方法、即ち、塩化ビニル樹脂、可塑剤、カルボン酸亜鉛塩、熱分解型化学発泡剤、からなる塩ビペーストゾルコンパンドを金型に注型して加熱発泡(一次発泡)させ、次いで再加熱による発泡成型加工(2次発泡)によって得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の軟質塩ビ発泡体の製造方法によれば、優れたクッション性を持つ軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで容易に製造できる。そしてこの方法により製造された軟質塩ビ発泡体(本発明の軟質塩ビ発泡体)は、その表面状態や外観形状も良く、さらにこの発泡体をスライスカットしたスライスカット品の外観も良い。軟質塩ビ発泡体を、任意の厚みで製造できるとともに、それをスライスカットしたスライスカット品の外観も良いので、薄いシート状の製品についても、厚い発泡体を得てそれをスライスカットする方法により、優れた生産性で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に実施例及び比較例により、この発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例により限定されるものではない。
【0036】
塩ビペーストゾルの調整
表1に示す塩ビペーストゾル配合例(A〜K)が各々全重量で800gになるよう、2000mlのポリエチレン製カップに所定量計り取り、3枚プロペラ羽根ディスパ攪拌機で600rpm、3分間、予備混合させた後、1200rpm、5分間、攪拌し塩ビペーストゾルを作成する。
【0037】
なお、実施例、比較例で用いた各成分の詳細は以下の通りである。
・塩化ビニル樹脂: P−21(商品名)新第一塩ビ社製の塩ビペースト樹脂
・DINP: 可塑剤(フタル酸ジイソノニル)
・ADCA: 発泡剤(アゾジカルボンアミド):大塚化学社製のAZ−VI−25(商品名)
・カルボン酸亜鉛塩
1)塩基性2−エチルヘキシル酸亜鉛塩: 2−エチルヘキシル酸1.5モルと酸化亜鉛1モルを混合して反応させ、反応生成水を減圧下で除去して得られたもの。
2)塩基性ネオデカン酸亜鉛塩: ネオデカン酸1.5モルと酸化亜鉛1モルを混合して反応させ、反応生成水を減圧下で除去して得られたもの。
3)オレイン酸亜正塩: オレイン酸2.0モルと酸化亜鉛1モルを混合して反応させ、反応生成水を減圧下で除去して得られたもの。
4)KF−708S(商品名): 共同薬品社製:請求項2に該当するBa/Zn系液状安定剤。炭素数2〜10の混合酸と酸化亜鉛を加熱して得られる塩基性カルボン酸亜鉛塩を50%含む。
・炭酸カルシウム: BF−200S(商品名)備北粉化工業社製
・酸化チタン: R820(商品名)石原産業社製
【0038】
[一次発泡]
この塩ビペーストゾルを200mm×200mm×20mmの金属製金型枠に注型する。この時、内部に空癖が残らないように、200mm×200mm×2mmの金属板を密着するように載せ、加熱冷却が可能な伝熱プレスにて200kg/mの圧力をかけた後、表2又は表3に示す条件にて加熱する。次いで60分かけて室温まで冷却した後、除圧し、発泡倍率2〜3倍程度の一次発泡体を得る。
【0039】
[二次発泡]
一次発泡体を熱風式恒温槽に入れ、表2又は表3に示す温度で75分間加熱し、発泡倍率5〜6倍程度の二次発泡体である軟質塩ビ発泡体を得る。得られた発泡体は、表面状態、外観形状、及びスライスカット片の外観を目視により評価し、又クッション性を下記の方法により評価し、その結果を表2又は表3に表した。
【0040】
1)表面状態は次の5段階で評価した。
良い(白色平滑な発泡体)5>4>3>2>1(黄色でヒビワレが目立つ発泡体)悪い
2)外観形状は次の5段階で評価した。
良い(歪みがない):5>4>3>2>1:(歪み、ソリが目立つ)悪い
3)スライスカット品の外観は次の5段階で評価した。
二次発泡体をスライスカッターで10mm厚にスライスする。切断面のセル状態を目視で観察する。
良(セルが緻密で整う):5>4>3>2>1:(切断面のセルが不揃い)悪い
4)クッション性および緩衝性は上から指で押した時の戻りの速さを次の5段階で評価した。
良(瞬時に戻る):5>4>3>2>1:(戻らない)悪い
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表2及び表3から明らかなように、実施例により得られた軟質塩ビ発泡体は、比較例に比べて、表面状態、外観状態、およびスライスカット品の外観が良好であり、クッション性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の方法により製造された軟質塩ビ発泡体は、クッション性を必要とする部材に好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開昭49−45165号公報
【特許文献2】特開平5−339413号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂、可塑剤、カルボン酸亜鉛塩及び熱分解型化学発泡剤を含有し、塩化ビニル樹脂100重量部に対する配合量が、可塑剤は50〜120重量部、カルボン酸亜鉛塩は0.1〜5重量部、熱分解型化学発泡剤は3〜30重量部である塩ビペーストゾルコンパンドを、金型に注型して120〜200℃で加熱発泡させる一次発泡工程、及び、一次発泡工程で得られた発泡体を50〜150℃で再加熱する二次発泡工程を有することを特徴とする軟質塩ビ発泡体の製造方法。
【請求項2】
カルボン酸亜鉛塩が、炭素数2〜22のカルボン酸と酸化亜鉛を、カルボン酸:酸化亜のモル比が2.0:1.0〜1.5:1.0範囲で反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の軟質塩ビ発泡体の製造方法。
【請求項3】
請求項1の製造方法により製造されることを特徴とする軟質塩ビ発泡体。

【公開番号】特開2010−285500(P2010−285500A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139114(P2009−139114)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000162157)共同薬品株式会社 (7)
【出願人】(000112772)フジ化成工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】