説明

転がり軸受用の間座及びX線管装置用の軸受ユニット

【課題】温度変化にかかわらず、転がり軸受に適正な予圧荷重を付与することができる転がり軸受用の間座を提供する。
【解決手段】軸方向に離れて配置される一対の転がり軸受11,15の外輪12,16間に設けられる間座10である。軸方向一方側の外輪12と同心状に設けられ当該外輪12の側面12aに接触する筒状の第1円環部21と、軸方向他方側の外輪16と同心状に設けられ当該外輪16の側面16aに接触する筒状の第2円環部22と、第1円環部21と第2円環部22との間に周方向に間隔をあけて複数設けられ当該第1円環部21と当該第2円環部22とを連結している柱状の連結部23とを備えている。連結部23は、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる弾性変形部30を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受用の間座及びこの間座を備えているX線管装置用の軸受ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の固定体に対して回転軸を回転可能に支持するために、これら固定体と回転軸との間に形成される環状空間に一対の転がり軸受を軸方向に離して設けた軸受ユニットが用いられる(例えば、特許文献1参照)。この軸受ユニットにおいては、その支持性能を向上させるために、これら転がり軸受の外輪(軌道輪)間に筒状の間座を設け、軸受ユニット(間座を挟む一対の転がり軸受)に対して軸方向の予圧を付与することが行われている。
前記間座の形状は、従来、図6(A)に示しているように筒形状であり、図6(B)に示しているように、この間座90は、その軸方向両側に位置する転がり軸受91,92の外輪93,94と同心状に設けられており、これら外輪93,94によって挟まれた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−243694号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6(B)に示しているように、一対の転がり軸受91,92の間に間座90が設けられた軸受ユニットは、様々な機器に適用されるが、特許文献1に記載のX線管装置などのように、温度変化の大きい環境で用いられた場合、温度変化によって間座90が軸方向に膨張したり収縮したりする。
したがって、軸受ユニットに定位置予圧を付与する場合、従来のような筒形状の間座90であると、適正な予圧荷重が維持されにくくなる。すなわち、常温から高温に温度変化して間座90が軸方向に伸張すると、当該間座90は直線筒形状であることから軸方向の剛性が高く弾性変形しにくいため、予圧が高くなってしまい、適正な予圧荷重を付与することができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、温度変化にかかわらず、転がり軸受に適正な予圧荷重を付与することができる転がり軸受用の間座、及び、この間座を備えているX線管装置用の軸受ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸方向に離れて配置される一対の転がり軸受の軌道輪間に設けられる間座であって、軸方向一方側の前記軌道輪と同心状に設けられ当該軌道輪の側面に接触する筒状の第1円環部と、軸方向他方側の前記軌道輪と同心状に設けられ当該軌道輪の側面に接触する筒状の第2円環部と、前記第1円環部と前記第2円環部との間に周方向に間隔をあけて複数設けられ当該第1円環部と当該第2円環部とを連結している柱状の連結部とを備え、前記連結部は、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる弾性変形部を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、柱状の連結部は、周方向に間隔をあけて複数設けられており、各連結部は、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる弾性変形部を有していることから、温度変化によって間座が軸方向に伸張しようとして当該間座に軸方向圧縮力が作用すると、弾性変形部において周方向に弾性変形が可能となる。この結果、転がり軸受に付与する予圧が高くなってしまうのを防ぎ、適正な予圧荷重を付与することができる。
【0008】
また、前記連結部は、前記弾性変形部として、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分を有しているのが好ましい。
この場合、間座に軸方向圧縮力が作用すると、当該軸方向圧縮力によって、連結部は、座屈することなく、周方向成分を有する弾性変形が可能となる。
【0009】
また、前記第1円環部と前記第2円環部とは同一半径を有し、前記連結部は、前記第1円環部及び前記第2円環部と同一半径の仮想円筒面に沿って配置されているのが好ましく、この場合、間座を半径方向に薄く構成することが可能となる。
【0010】
また、前記連結部は、前記弾性変形部として、前記第1円環部と前記第2円環部との間を結ぶ曲線に沿って曲がっている曲線部を有しているのが好ましい。
この場合、間座に軸方向圧縮力が作用すると、連結部の弾性変形部における周方向への弾性変形が、より一層容易に実現される。
【0011】
また、前記連結部それぞれにおいて、前記第1円環部との境界部と、前記第2円環部との境界部とは、周方向の位相が異なる位置にあるのが好ましい。
この場合、弾性変形部の形状に関わらず、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる構成を有することができる。
【0012】
また、本発明のX線管装置用の軸受ユニットは、X線管用の真空容器内に設けられる筒状の固定体と、前記固定体に対して回転する回転軸との間に、軸方向に離れて配置される一対の転がり軸受と、前記一対の転がり軸受の軌道輪間に設けられる間座とを備え、前記間座は、上記の間座であることを特徴とする。
本発明によれば、間座が有している柱状の連結部は、周方向に間隔をあけて複数設けられており、各連結部は、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる弾性変形部を有していることから、温度変化によって間座が軸方向に伸張しようとして当該間座に軸方向圧縮力が作用すると、弾性変形部において周方向に弾性変形が可能となる。この結果、転がり軸受に付与する予圧が高くなってしまうのを防ぎ、適正な予圧荷重を付与することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度変化によって間座が軸方向に伸張しようとして当該間座に軸方向圧縮力が作用すると、弾性変形部において周方向に弾性変形が可能となるので、転がり軸受に付与する予圧が高くなってしまうのを防ぎ、適正な予圧荷重を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の間座を有する軸受ユニットが用いられているX線管装置の縦断面図である。
【図2】間座の斜視図である。
【図3】図2の間座の展開図である。
【図4】間座の製造方法を説明する説明図である。
【図5】他の実施形態に係る間座の展開図である。
【図6】(A)は従来の間座の斜視図であり、(B)は従来の間座を有する軸受ユニットを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の間座を有する軸受ユニットが用いられているX線管装置の縦断面図である。このX線管装置1は、例えば医療用X線CT装置に設けられているものであり、ガラスなどのX線透過材からなるX線管用の真空容器2と、この真空容器2内で対向して配置されている電子銃3とターゲット4とを備えている。このX線管装置1は、真空容器2内で、電子銃3から発した電子を高速でターゲット4に衝突させX線を発生させることができる。
【0016】
さらに、このX線管装置1は、真空容器2内に設けられ当該真空容器2に固定されている筒状の固定体5と、この固定体5の径方向内側に設けられターゲット4が固定されている回転軸6と、固定体5に対して回転軸6を回転可能に支持している軸受ユニット7とを備えている。
【0017】
軸受ユニット7は、固定体5と回転軸6との間に形成されている環状の空間Sに軸方向に離れて配置されている2列のX線管用の転がり軸受11,15と、これら転がり軸受11,15の外輪12,16間に設けられている間座10とを備えている。
各転がり軸受11(15)は、軌道輪として内輪13(17)及び外輪12(16)と、これらの間に介在している複数個の転動体14(18)とを有しており、本実施形態では、転動体14は玉であり、転がり軸受11(15)はアンギュラ接触型の軸受である。また、本実施形態では、軸方向一方側の転がり軸受11と他方側の転がり軸受15とは、外径及び内径が同じものであり、同心状に配置されている。そして、この軸方向に離れて配置されている一対の転がり軸受11,15の外輪12,16間に、間座10が設けられている。
【0018】
このX線管装置1では、図1に示しているように、転がり軸受11,15の軸方向の間隔が広くなっており、転がり軸受11,15の軸方向の間隔は、当該転がり軸受11(15)の外径寸法よりも大きい。このため、間座10は、その外径に比べて軸方向に長い。
また、固定体5と回転軸6との間の環状の空間Sは狭く、転がり軸受11(15)の断面高さは小さい。つまり、転がり軸受11(15)の内径と外径との差が小さい。さらに、このX線管装置1は、内部の温度変化が大きく(例えば、20℃〜400℃)、軸受ユニット7は、部品毎の温度差が大きくなる環境で使用される。
【0019】
転がり軸受11,15は回転軸6に外嵌されており、これら転がり軸受11,15間に間座10が設けられ、これら転がり軸受11,15及び間座10を有する軸受ユニット7は、回転軸6に取り付けられている環状の取り付け部材8によって、軸方向の位置(軸方向の移動)が規制されている。軸受ユニット7は、取り付け部材8と回転軸6の一部(基部6a)との間に挟まれた状態にあり、さらに、この取り付け部材8によって、軸受ユニット7には軸方向の予圧が付与された状態にある。このため、間座10には軸方向の圧縮力が作用している。
【0020】
なお、本実施形態において、軸受ユニット7に付与する予圧は、転がり軸受11,15の軸方向の相対位置が変化しない定位置予圧である。このために、所定の大きさの予圧を与えるように軸方向寸法が調整された間座10が用いられる。そして、この間座10は、軸方向両側の部材(転がり軸受11,15)によって挟まれていることで、軸方向の伸張が規制された状態として設けられている。間座10の軸方向長さは、軸受ユニット7の寸法に応じて変更自在であるが、例えば、50mm〜100mmとすることができる。
【0021】
図2は、間座10の斜視図である。図1と図2とにおいて、この間座10は、軸方向一方側(左側)に設けられている第1円環部21と、軸方向他方側(右側)に設けられている第2円環部22と、これら第1円環部21と第2円環部22とを連結している複数本の細長い柱状の連結部23とを備えている。なお、図2では、図を解りやすくするため裏側に位置する連結部23を省略している。
【0022】
第1円環部21は、直線の短円筒形状であり、外輪12と同心状に設けられており、この第1円環部21の軸方向端面21aは、外輪12の環状である側面12aに接触する。軸方向端面21aは環状であり、側面12aに対して全周にわたって面接触する。
第2円環部22は、直線の短円筒形状であり、外輪16と同心状に設けられており、この第2円環部22の軸方向端面22aは、外輪16の環状である側面16aに接触する。なお、軸方向端面22aは環状であり、側面16aに対して全周にわたって面接触する。
【0023】
連結部23は、第1円環部21と第2円環部22との間に周方向に間隔をあけて複数設けられており、各連結部23は、軸方向に細長い形状を有している。そして、各連結部23は、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる弾性変形部30を有している。なお、後にも説明するが、第1円環部21と第2円環部22と連結部23とは、同一の部材から成形されており、それぞれの厚さ(径方向寸法)は同じである。例えば、厚さは2mm〜3mmの薄肉である。
【0024】
各連結部23は、薄肉であって細長形状であるが、具体的には、厚さ(径方向の寸法)に比べて軸方向寸法が長く、例えば、軸方向寸法は厚さの10倍以上長い。さらに、各連結部23は、幅(周方向寸法)に比べて軸方向寸法が長く、例えば、軸方向寸法は幅の10倍以上長い。以上のように、連結部23は曲線形状を有し、紐状に長く形成されている。
【0025】
図3は、図2の間座10の展開図である。各連結部23は、弾性変形部30として、第1円環部21と第2円環部22との間を結ぶ曲線Aに沿って曲がっている曲線部24a,24bを有している。図3では、前記曲線Aは略S字形であり、蛇行状の線である。
具体的に説明すると、各連結部23は、第1円環部21寄りの第1の曲線部24aと、第2円環部22寄りの第2の曲線部24bとを有しており、第1の曲線部24aは周方向一方側に凸となる曲線形状を有し、第2の曲線部24bは、周方向他方側に凸となる曲線形状を有しており、第1の曲線部24aと第2の曲線部24bとは中央で滑らかに繋がっている。
【0026】
このように、各連結部23は、弾性変形部30として、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分(曲線部24a,24b)を有している。そして、周方向で隣り合う連結部23,23は、軸方向の仮想直線に対して線対称の関係にある。図3の実施形態では、各連結部23の全体が、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わっている形状であるが、例えば、図示しないが、曲線部24a,24b間に軸方向に直線となる部分(周方向位置が変わらない部分)が介在していてもよい。
【0027】
間座10の材質は、適用される機器に応じて変更可能であり、弾性変形可能な素材からなり、例えば軟鋼とすることが可能であるが、X線管装置1用の軸受ユニット7の場合、高温対応とするために、例えば、オーステナイト系のステンレス鋼、又は、コバルトを主成分とするコバルト合金とするのが好ましい。
【0028】
間座10の製造方法は、図4に示しているように、第1円環部21、第2円環部22及び連結部23を残すように、薄肉の円筒部材40に対してワイヤーカットを行い、不要部分を切除する方法がある。なお、この方法では、不要部分を切除する毎に円筒部材40を所定角度回転させ、同様のワイヤーカットを行い、周方向に複数の連結部23を形成する。
または、図示しないが、平板をプレスにより打ち抜き加工を行った後、これを円筒状に曲げ、突き合わせ接合して、図2に示している間座10としてもよい。なお、前記打ち抜き加工は、図3の展開図に示している形態に、平板を打ち抜き加工すればよい。
以上より、第1円環部21と第2円環部22と複数の連結部23とが一体となった間座10が得られる。
【0029】
図5は、他の実施形態に係る間座10の展開図である。この間座10においても、図3の場合と同様に、軸方向一方側(左側)に設けられている第1円環部21と、軸方向他方側(右側)に設けられている第2円環部22と、これら第1円環部21と第2円環部22とを連結している複数本の柱状の連結部33とを備えているが、連結部33の形状(弾性変形部30の形状)のみが図3と異なる。
【0030】
連結部33は、第1円環部21と第2円環部22との間に周方向に間隔をあけて複数設けられている点、並びに、各連結部33は、柱状である点、及び、第1円環部21と第2円環部22との間を結ぶ曲線(曲線B)に沿って曲がっている曲線部を有している点は、図3の実施形態と共通しているが、曲線Bの形態(曲線部の形態)が異なる。
【0031】
すなわち、連結部33は、弾性変形部30として、第1円環部21寄りの第1の曲線部34aと、第2円環部22寄りの第2の曲線部34bとを有しており、第1の曲線部34aは周方向一方側に凸となる曲線形状を有し、第2の曲線部34bも、周方向一方側に凸となる曲線形状を有している。そして、第1の曲線部34aと第2の曲線部34bとは中央で滑らかに繋がっている。つまり、図5では、前記曲線Bは一つの弧状(円弧状)の線である。
【0032】
このように、各連結部33は、弾性変形部30として、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分(曲線部34a,34b)を有している。そして、周方向で隣り合う連結部33,33は、軸方向の仮想直線に対して線対称の関係にある。図5の実施形態では、各連結部33の全体が、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わっている形状であるが、例えば、図示しないが、曲線部34a,34b間に軸方向に直線となる部分(周方向位置が変わらない部分)が介在していてもよい。
【0033】
以上のように、前記各実施形態に係る間座10によれば、細長い柱状の連結部23(33)が、周方向に間隔をあけて複数設けられており、各連結部23(33)は、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる曲線部24a,24b(34a,34b)を有している。つまり、連結部23(33)は、仮想円筒面9(図2参照)上をうねった形状を有している。そして、連結部23(33)は、円環部21,22と軸方向で突き合わされた状態となって一体的に繋がっている。
【0034】
このため、間座10に軸方向圧縮力が作用すると、曲線部24a,24b(34a,34b)それぞれにおいて周方向に膨らむように(曲率半径を小さくするように)弾性変形することができる。つまり、各連結部23(33)において、軸方向の力のみが作用して軸方向にのみ弾性変形するのではなく、また、座屈することなく、周方向成分を有する弾性変形が容易となる。
【0035】
したがって、従来の間座と比べると軸方向の剛性を小さくすることが可能となり、バネ性を持った間座10が得られる。
この結果、温度上昇によって間座10が軸方向に伸張しようとして当該間座10に軸方向圧縮力が作用すると、弾性変形部30において周方向に弾性変形が可能となるので、転がり軸受11,15に付与する予圧が高くなってしまうのを防ぎ、適正な軸方向の予圧荷重を付与することができる。
【0036】
また、連結部23(33)及び円環部21,22との境界部は、周方向等間隔で設けられている。このため、間座10は外輪12,16に対して周方向で均等な力で押し返すことができ、均等な面圧で接触することが可能となる。
以上より、軸受ユニット7が温度変化の大きい環境で用いられたとしても、当該軸受ユニット7に適正な軸方向の予圧荷重を設定することが可能となり、また、その予圧荷重が維持され、転がり軸受11,15及び回転軸6は適正な状態で回転することができ、長寿命とすることが可能となる。
【0037】
また、前記各実施形態に係る間座10では、第1円環部21と第2円環部22とは同一半径を有しており、連結部23(33)は、これら第1円環部21及び第2円環部22と同一半径の仮想円筒面9(図2参照)に沿って配置されている。このため、間座10を半径方向に薄く構成することが可能となる。特に、上記のとおり、図1のX線管装置1の場合、固定体5と回転軸6との間の環状の空間Sは狭く、転がり軸受11(15)の断面高さが小さいが、間座10を径方向に薄く構成することによって、この狭い空間Sに、間座10を配置することが可能となる。
【0038】
また、図5の間座10の場合、連結部33それぞれにおいて、第1円環部21との境界部36と、第2円環部22との境界部37とは、周方向の位相が同じ位置にある。
しかし、図3の間座10の場合、連結部23それぞれにおいて、第1円環部21との境界部26と、第2円環部22との境界部27とは、周方向の位相が異なる位置にある。
【0039】
また、間座10の連結部は、図示した形態以外であってもよく、図3を参考にして説明すると、連結部は、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分(弾性変形部30)を有していればよく、例えば、一つの連結部における第1円環部21との境界部26の周方向の位相(位置)と、当該連結部における第2円環部22との境界部27の周方向の位相(位置)とが、異なる位置にあれば、当該連結部は、図3の二点鎖線で示している直線Lに沿った直線形状であってもよい。つまり、連結部は、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分を有していればよい。
すなわち、図3に示しているように、連結部それぞれにおいて、第1円環部21との境界部26と、第2円環部22との境界部27とが、周方向の位相が異なる位置にある場合、連結部(弾性変形部30)の形状に関わらず、当該連結部は、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分を有することができ、周方向成分を有する弾性変形が可能となる。
【0040】
ただし、図3及び図5の実施形態のように、連結部23(33)は、第1円環部21と第2円環部22との間を結ぶ曲線A(B)に沿って曲がっている曲線部を、弾性変形部30として有しているのが好ましく、この場合、間座10に軸方向圧縮力が作用すると、連結部が直線Lに沿った直線形状である場合よりも、周方向成分を有する弾性変形がより一層容易に実現される。
【0041】
前記実施形態では、連結部23(33)が全体的に曲線に沿った形状である場合を説明したが、一部のみが曲線的に形成されていてもよい。例えば、図示しないが、連結部は、軸方向に平行な直線形状である部分と、円弧形状(例えば180°の円弧形状)となる部分とから構成され、直線形状である部分が、連結部の軸方向両側に設けられ、これらを円弧形状となる部分が、連結部の中央部で繋いでいる構成であってもよい。または、これとは反対に、円弧形状となる部分が、連結部の軸方向両側に設けられ、これらを直線形状である部分が、連結部の中央部で繋いでいる構成であってもよい。
このように、本発明の柱状の連結部には、一部のみが円弧形状で膨らんだ形状であり、残りが直線形状となる構成も含まれる。
【0042】
また、本発明の間座10、及び、軸受ユニット7は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
図1では、軸受ユニット7をX線管装置1用として説明したが、その他の機器に適用することができる。また、間座10を、外輪間に位置させる外輪用のものとして説明したが、内輪間に位置させる内輪用の間座であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
2:真空容器、 5:固定体、 6:回転軸、 9:仮想円筒面、 10:間座、 11:転がり軸受、 12:外輪(軌道輪)、 12a:側面、 15:転がり軸受、 16:外輪(軌道輪)、 16a:側面、 21:第1円環部、 22:第2円環部、 23:連結部、 24a:曲線部、 24b:曲線部、 26:境界部、 27:境界部、 30:弾性変形部、 33:連結部、 34a:曲線部、 34b:曲線部、 36:境界部、 37:境界部、 A:曲線、 B:曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に離れて配置される一対の転がり軸受の軌道輪間に設けられる間座であって、
軸方向一方側の前記軌道輪と同心状に設けられ当該軌道輪の側面に接触する筒状の第1円環部と、
軸方向他方側の前記軌道輪と同心状に設けられ当該軌道輪の側面に接触する筒状の第2円環部と、
前記第1円環部と前記第2円環部との間に周方向に間隔をあけて複数設けられ当該第1円環部と当該第2円環部とを連結している柱状の連結部と、
を備え、
前記連結部は、軸方向圧縮力が作用すると周方向に弾性変形が可能となる弾性変形部を有していることを特徴とする転がり軸受用の間座。
【請求項2】
前記連結部は、前記弾性変形部として、軸方向に進むにしたがって周方向位置が変わる部分を有している請求項1に記載の転がり軸受用の間座。
【請求項3】
前記第1円環部と前記第2円環部とは同一半径を有し、
前記連結部は、前記第1円環部及び前記第2円環部と同一半径の仮想円筒面に沿って配置されている請求項1又は2に記載の転がり軸受用の間座。
【請求項4】
前記連結部は、前記弾性変形部として、前記第1円環部と前記第2円環部との間を結ぶ曲線に沿って曲がっている曲線部を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受用の間座。
【請求項5】
前記連結部それぞれにおいて、前記第1円環部との境界部と、前記第2円環部との境界部とは、周方向の位相が異なる位置にある請求項1〜4のいずれか一項に記載の転がり軸受用の間座。
【請求項6】
X線管用の真空容器内に設けられる筒状の固定体と、前記固定体に対して回転する回転軸との間に、軸方向に離れて配置される一対の転がり軸受と、
前記一対の転がり軸受の軌道輪間に設けられる間座と、を備え、
前記間座は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の間座であることを特徴とするX線管装置用の軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246948(P2012−246948A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116979(P2011−116979)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】