説明

転写装置、画像形成装置、転写方法、及び画像形成方法

【課題】記録紙の表面凹凸にならった画像の濃淡パターンの発生を抑えつつ、放電に起因する白点の発生を抑えることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録紙の種類情報である紙種情報を種類情報取得手段あるオペレーションパネル50によって取得させる。そして、2次転写裏面ローラ33に2次転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段としての2次転写バイアス電源39からの出力電圧におけるプラス極性のピーク値と、マイナス極性のピーク値とのうち、2次転写ニップ内で中間転写ベルト31から記録紙に移動したトナーを記録紙からベルトに戻す方向の電界を生起せしめる方であるプラス極性のピーク値としての戻しピーク値を、紙種情報の取得結果に基づいて変更する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体の表面に担持されるトナー像を記録材に転写する転写装置や転写方法に関するものである。また、かかる転写装置や転写方法を用いる画像形成装置や画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、ドラム状の感光体の表面にトナー像を形成する。感光体には、像担持体としての無端状の中間転写ベルトを当接させて1次転写ニップを形成している。そして、1次転写ニップにおいて、感光体上のトナー像を中間転写ベルトに1次転写する。中間転写ベルトに対しては、ニップ形成部材としての2次転写ローラを当接させて2次転写ニップを形成している。また、中間転写ベルトのループ内には、2次転写対向ローラを配設しており、この2次転写対向ローラと、前述した2次転写ローラとの間に中間転写ベルトを挟み込んでいる。ループ内側の2次転写対向ローラに対してはアースを接続しているのに対し、ループ外の2次転写ローラに対しては2次転写バイアスを印加している。これにより、2次転写対向ローラと2次転写ローラとの間に、トナー像を前者側から後者側に静電移動させる2次転写電界を形成している。そして、中間転写ベルト上のトナー像に同期させるタイミングで2次転写ニップ内に送り込んだ記録紙に対して、中間転写ベルト上のトナー像を2次転写する。
【0003】
かかる構成において、記録紙として、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面における凹部に対して十分量のトナーを転写することができずに、凹部の画像濃度を凸部よりも薄くする結果、表面凹凸にならった濃淡パターンを発生させ易くなる。そこで、特許文献1に記載の画像形成装置においては、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳バイアスを印加している。特許文献1には、2次転写バイアスとして重畳バイアスからなるものを採用することで、記録紙の表面凹凸にならった濃淡パターンの発生を抑え得ることを示す実験結果が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、本発明者らは、実験により、特許文献1に記載の画像形成装置では、2次転写バイアスの電圧条件によっては、濃淡パターンの発生を十分に抑えることができなくなることを見出した。また、電圧条件によっては、濃淡パターンの発生を抑えることができる代わりに、放電に起因する白点を画像中に発生させてしまうことも見出した。
【0005】
これらの問題点について、図1に示す構成を例にして詳しく説明する。同図において、中間転写ベルト531は、その裏面に当接している転写裏面ローラ533により、ニップ形成ローラ536に向けて押圧されている。この押圧により、中間転写ベルト531のおもて面とニップ形成ローラ536とが当接する転写ニップが形成されている。この転写ニップに送り込まれた記録紙Pには、中間転写ベルト531上のトナー像が転写せしめられる。トナー像を転写せしめる転写電界を形成するための転写バイアスは、同図に示される2つのローラのうち、何れか一方に印加される。そして、他方のローラは接地されている。どちらのローラに転写バイアスを印加しても、トナー像を記録紙Pに転写することが可能であるが、転写裏面ローラ533に転写バイアスを印加する場合であって、且つトナーとしてマイナス極性のものを用いる場合を例にして説明する。この場合、転写ニップ内のトナーを転写裏面ローラ533側からニップ形成ローラ536側に移動させるためには、重畳バイアスからなる転写バイアスとして、電位の時間平均値がトナーの極性と同じマイナス極性の電位になるものを印加する。なお、マイナス極性のトナーを用いてニップ形成ローラ536に転写バイアスを印加する場合には、電位の時間平均値がトナーの極性とは逆のプラス極性の電位になるものを用いる必要がある。
【0006】
図2は、転写裏面ローラ533に印加される重畳バイアスからなる転写バイアスの波形の一例を示す波形図である。同図において、オフセット電圧Voff[V]は、転写裏面ローラ533とニップ形成ローラ536との電位差の時間平均値を表している。図示の例では、ニップ形成ローラ536を接地しているので、オフセット電圧Voff[V]は、転写バイアスの直流成分と同じ値になる。図示のように、重畳バイアスは正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Vtという符号が付されているのは、それら2つのピーク値のうち、転写ニップ内でトナーを中間転写ベルト側から記録紙側に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である(以下、送りピーク値Vtという)。また、Vrという符号が付されているのは、トナーを記録紙側から中間転写ベルト側に戻す方(本例ではプラス側)のピーク値である(以下、戻しピーク値Vrという)。図示のような重畳バイアスの代わりに、交流成分だけからなる交流バイアスを印加しても、2次転写ニップにおいてトナーをベルトと記録紙との間で往復移動させることは可能である。しかし、交流バイアスでは、トナーを単に往復移動させるだけで、記録紙上に転移させることはできない。直流成分を含む重畳バイアスを印加してローラ間電位差の時間平均値であるオフセット電圧Voff[V]をトナーと同じマイナス極性にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることが可能になる。
【0007】
本発明者らは、転写バイアスとして直流成分と交流成分とを含む重畳バイアスを印加した場合におけるニップ内でのトナーの挙動を観測したところ、次のようなことを見出した。即ち、重畳バイアスの印加を開始すると、まず始めに、中間転写ベルト上でトナー層の表面に存在しているごく僅かなトナー粒子だけがトナー層から離脱して、記録紙の凹部に向かう。殆どのトナー粒子は、トナー層中に留まったままである。トナー層から離脱したごく僅かなトナー粒子は、記録紙の凹部内に進入した後、電界の向きが逆になると、凹部内からトナー層に逆戻りする。このとき、逆戻りしたトナー粒子は、トナー層中に留まっていたトナー粒子に衝突して、そのトナー粒子の付着力を弱める。すると、次に電界が記録紙に向かう方向に反転したときには、最初よりも多くのトナー粒子がトナー層中から離脱して、記録紙の凹部に向かう。このような一連の挙動を繰り返していくことで、トナー層中から離脱して凹部内に進入するトナー粒子の数を徐々に増やしていって、凹部内に十分量のトナー粒子を転移させていることがわかった。
【0008】
しかしながら、図2に示した戻しピーク値Vr(の絶対値)を比較的小さくすると、記録紙の凹部内に進入したトナー粒子をトナー層に逆戻りさせることができずに、凹部内に留まらせてしまう。すると、後続のトナー粒子の数を増やすことができず、凹部に対するトナー付着量を不足させてしまうことがわかった。また、凹部内に十分量のトナーを転移させるために必要な、戻しピーク値Vrの下限値は、次に説明する理由により、凹部の深さによって異なってくることもわかった。即ち、凹部深さが大きくなるほど、凹部内に進入させたトナー粒子をトナー層まで逆戻りさせるための逆電界としてより強いものが必要になるため、前述の下限値が大きくなるのである。つまり、記録紙の凹部深さが大きくなるほど、凹部内に十分量のトナーを転移させるために必要な、戻しピーク値Vrの下限値も大きくなるのである。よって、凹部深さがかなり大きい記録紙を用いた場合であっても、凹部内に十分量のトナーを転移させるようにするためには、戻しピーク値Vrをかなり大きな値に設定しておく必要がある。しかし、図2の波形からわかるように、戻しピーク値Vrをある程度の大きな値にするためには、ピークツウピーク電圧Vppも大きくする必要がある。すると、放電に起因する白点を画像に発生させ易くなってしまう。この白点は、記録紙の凹部底と、中間転写ベルト等の像担持体との間に形成されるギャップを介して、凹部底と像担持体との間で放電が発生することに起因するものである。また、放電は、ピークツウピーク電圧Vppが大きくなるほど生じ易くなり、同じVppであれば、凹部深さが小さくなるほど生じ易くなる。よって、凹部深さの大きな記録紙にも対応できるように、戻しピーク値Vrを非常に大きな値に設定すると、凹部深さの小さな記録紙を用いた場合には、放電に起因する白点を発生させ易くなってしまう。また、放電に起因する白点の発生を抑えるために、戻しピーク値Vrをある程度の大きさに留めると、凹部深さの大きな記録紙を使用した場合には、凹部内に十分量のトナーを転移させることができずに、濃淡パターンを発生させてしまう。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録材の表面凹凸にならった画像の濃淡パターンの発生を抑えつつ、放電に起因する白点の発生を抑えることができる転写装置や画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体のおもて面に当接して前記像担持体との間で転写ニップを形成するニップ形成部材と、直流成分と交流成分とを重畳した重畳バイアスからなり、前記直流成分が前記像担持体とニップ形成部材との間においてニップ形成部材側の電位を前記像担持体側の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくするものである転写バイアスを印加することにより前記転写ニップ位置で前記像担持体上のトナー像を記録材へと転写する転写バイアス印加手段とを備える転写装置において、前記記録材の種類情報を取得する種類情報取得手段を設けるとともに、前記転写バイアスにおけるプラス極性のピーク値と、マイナス極性のピーク値とのうち、前記転写ニップ内で前記像担持体上から記録材に移動したトナーを記録材から前記像担持体に戻す方向の電界を生起せしめる方である戻しピーク値を、前記種類情報取得手段による前記種類情報の取得結果に基づいて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の転写装置において、前記種類情報取得手段によって取得された前記種類情報に対応する記録材種類が表面凹凸の大きなものであるほど、前記戻しピーク値を大きくする処理を実施するように、前記バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の転写装置において、前記転写バイアスとして、前記交流成分のピークツウピーク電圧Vpp[V]と、前記直流成分の電圧Voff[V]とについて「1/4×Vpp>|Voff|」という関係を具備するもの、を印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の転写装置において、前記種類情報取得手段として、記録材の表面凹部の深さを測定する凹部深さ測定手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の転写装置において、前記像担持体上のトナー像の電位であるトナー像電位Vtoner[V]を測定する電位測定手段を設けるとともに、前記ピークツウピーク電圧Vpp[V]と、前記トナー像電位Vtoner[V]と、前記凹部深さ測定手段による測定結果である凹部深さ測定値D[μm]と、前記直流成分の電圧Voff[V]とについて、「1/2×Vpp−(0.17×D1)×|Vtoner|>|Voff|」という関係を具備する前記転写バイアスを印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3、4又は5の転写装置において、前記転写バイアスとして、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける像担持体表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するもの、を印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかの転写装置において、前記像担持体上のトナー像の単位面積あたりにおけるトナー付着量の情報を取得する付着量情報取得手段を設けるとともに、前記付着量情報取得手段による取得結果に基づいて、前記直流成分の電圧Voffを変化させる処理を実施するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れかの転写装置において、前記種類情報取得手段によって取得された前記種類情報に対応する記録材種類に応じて、前記転写バイアスとして、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるモードと、直流成分だけからなるものを発生させるモードとで、モードを切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の転写装置において、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳バイアスからなる前記転写バイアスを専用に出力する重畳バイアス電源と、直流電圧だけからなる前記転写バイアスを専用に出力する直流バイアス電源とを、前記転写バイアス印加手段に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の転写装置において、前記像担持体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記ニップ形成部材、又は前記ニップ形成部材を前記像担持体に向けて押圧する押圧部材、とのうち、一方に対して前記重畳バイアス電源から出力される前記転写バイアスを印加し、且つ、他方に対して前記直流バイアス電源から出力される前記転写バイアスを印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10の何れかの転写装置であって、潜像を担持する潜像担持体に当接して1次転写ニップを形成する中間転写体を具備しており、前記像担持体が、前記潜像担持体の表面上で現像されたトナー像を前記1次転写ニップで自らのおもて面に1次転写せしめられる前記中間転写体であり、前記ニップ形成部材が、前記中間転写体のおもて面に当接して2次転写ニップを形成する2次転写ニップ形成部材であり、且つ、前記転写バイアス印加手段が、前記中間転写体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記2次転写ニップ形成部材又は押圧部材とのうち、何れか一方にバイアスを印加して前記電位差を生じせしめるものであることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、像担持体の表面上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体の表面上のトナー像を記録部材に転写せしめる転写手段とを備える画像形成装置において、前記転写手段として、請求項1乃至11の何れかの転写装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明において、表面の凹部深さの比較的小さな記録材は、凹部に対して十分量のトナーを転移させるための戻しピーク値の下限値が比較的小さくなり、且つ凹部内で放電が発生し易いという特性を有する。このような特性の記録材を用いる場合には、戻しピーク値を比較的低くすることで、濃淡パターンを許容範囲に留めつつ、白点の発生を抑えることができる。一方、表面の凹部深さの比較的大きな記録材は、凹部に対して十分量のトナーを転移させるための戻しピーク値の下限値が比較的大きくなり、且つ凹部内で放電が発生し難いという特性を有する。このような特性の記録材を用いる場合には、戻しピーク値を比較的大きくすることで、白点の発生を許容範囲に留めつつ、濃淡パターンの発生を抑えることができる。そこで、本発明においては、
種類情報取得手段によって取得した記録材の種類情報に基づいて、重畳バイアスからなる転写バイアスの戻しピーク値を、その記録材の種類の特性に適した値に変更することで、記録材の表面凹凸にならった画像の濃淡パターンの発生を抑えつつ、放電に起因する白点の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】転写ニップの一例を示す構成図。
【図2】重畳バイアスからなる転写バイアスの波形の一例を示す波形図。
【図3】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図4】同プリンタにおけるK用の画像形成ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図5】重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周波数fと、プロセス線速vと、ピッチムラとの関係を示すグラフ。
【図6】凹部濃度再現性の評価結果がランク1、2、3、4、5となる画像をそれぞれ示す図。
【図7】凸部濃度再現性の評価結果がランク1、2、3、4、5となる画像をそれぞれ示す図。
【図8】白点出現性の評価結果がランク1、2、3、4、5となる画像をそれぞれ示す図。
【図9】第2テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフ。
【図10】2.5[kV]の直流電圧だけからなる2次転写バイアスを印加した条件で出力された黒ベタ画像を示す図。
【図11】オフセット電圧Voff=−1.0[kV]、ピークツウピーク電圧Vpp=5.0[kV]という条件で出力された黒ベタ画像を示す図。
【図12】2.5[kV]の直流電圧だけからなる2次転写バイアスを印加した条件で出力された黒ベタ画像を示す図。
【図13】2.5[kV]の直流電圧と、4.0[kV]のピークツウピーク電圧Vppとからなる2次転写バイアスを印加した条件で出力された黒ベタ画像を示す図。
【図14】2.5[kV]の直流電圧と、8.0[kV]のピークツウピーク電圧Vppとからなる2次転写バイアスを印加した条件で出力された黒ベタ画像を示す図。
【図15】実験に使用された観測実験装置を示す概略構成図。
【図16】2次転写ニップにおける転写初期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図17】2次転写ニップにおける転写中期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図18】2次転写ニップにおける転写後期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図19】第3テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフ。
【図20】第4テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフ。
【図21】レザック66(260kg紙(連量))の表面の拡大撮影像を示す図。
【図22】レザック66(260kg紙(連量))についての断面曲線の一例を示すグラフ。
【図23】各種の記録紙の最大凹部深さDを示すグラフ。
【図24】適正Vr下限値と最大凹部深さDとの関係を示すグラフ。
【図25】適正Vr下限値と、トナー像電位及び最大凹部深さDとの関係を示すグラフ。
【図26】第2変形例に係るプリンタに搭載されている凹部深さ測定手段を示す拡大構成図。
【図27】通紙中の記録紙の凹部深さを測定している凹部深さ測定手段65からの出力電圧を示す波形図。
【図28】第3変形例に係るプリンタの転写ユニット30を示す概略構成図。
【図29】第4変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【図30】第2実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の第1実施形態について説明する。
まず、第1実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図3は、第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、第1実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
【0014】
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図4に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0015】
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本第1実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0016】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
【0017】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0018】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0019】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0020】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0021】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0022】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0023】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0024】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0025】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0026】
先に示した図3において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0027】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0028】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
【0029】
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
【0030】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0031】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0032】
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0033】
転写ユニット31の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0034】
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0035】
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、心金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0036】
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
【0037】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0038】
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ38としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
【0039】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
【0040】
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
【0041】
2次転写バイアス電源39は、先に図2に示した重畳バイアスからなる2次転写バイアスを出力する。本プリンタにおいて、2次転写バイアスは、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加される。電圧出力手段たる2次転写バイアス電源39は、転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段として機能している。2次転写裏面ローラの芯金に2次転写バイスが印加されると、2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、本プリンタのようにトナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。これにより、トナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ側36に静電移動させることが可能になる。
【0042】
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。本プリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、本プリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラの芯金に印加し、且つニップ形成ローラの芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラの芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分とから構成される。
【0043】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、種々のテストプリントを実施した。各種のテストプリントにおいては、現像剤としては、平均粒径が6.8[μm]であるポリエステル系の粉砕法によるトナーと、平均粒径が55[μm]である表面に樹脂層を被覆した磁性キャリアとからなるものを使用した。
【0044】
[第1テストプリント]
重畳バイアスからなる2次転写バイアスの直流電圧であるオフセット電圧Voffとして、−0.8[kV]を採用した。また、交流成分として、ピークツウピーク電圧Vppが2.5[kV]であるものを採用した。交流成分の周波数f[Hz]や、プロセス線速(中間転写ベルトや感光体の線速)については、適宜変更した。互いに異なる周波数fやプロセス線速の条件下で、普通紙からなる記録紙Pにテスト用の黒ベタ画像を出力した。そして、出力された黒ベタ画像の質を、目視によって2段階で評価した。交流成分の周波数に同期する濃度ムラ(ピッチムラ)が視認されない場合を○、視認される場合を×とした。この結果を次の表1に示す。
【表1】

【0045】
表1に示すように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを400[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。また、プロセス線速vを141[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを200[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。プロセス線速vに応じて、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値が異なるのは、プロセス線速vに応じて、2次転写ニップ内でトナーに作用させる交番電界の回数が変化するからである。具体的には、以下、記録紙Pを進入させていない状態における、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との直接当接による2次転写ニップのローラ表面移動方向の長さであるニップ幅をd[mm]と定義する。2次転写ニップ通過に要する時間であるニップ通過時間[s]は、「ニップ幅d/プロセス線速v」という式で表される。一方、周波数f[Hz]の条件下において、重畳バイアスの交流成分の周期[s]は、「1/周波数f」という式で表される。よって、ニップ通過時間においては、交流成分の1周期分の波形が、「d×f/v」回分だけ印加されることとなる。プリント試験機におけるニップ幅dは3[mm]である。表1に示したように、プロセス線速v=282[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×400/282)と計算することができる。これは、2次転写ニップ内において、約4.26回の交番電界をトナーに作用させることで、ピッチムラの発生を回避し得ることを示している。また、プロセス線速v=141[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は200[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×200/141)と計算することができる。400[Hz]のときと同じ値である。これらのことから、2次転写ニップ通過中に交番電界を約4回作用させることで、ピッチムラのない良好な画像を得ることができると言える。つまり、ピッチムラのない良好な画像を得るためには、「4<d×f/v」という条件が必要になるのである。
【0046】
図5は、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周波数fと、プロセス線速vと、ピッチムラとの関係を示すグラフである。図示のように、周波数fをy軸、プロセス線速vをx軸とする2次元座標において、「f=(4/d)×v」という式で表される直線よりも下側の領域では、ピッチムラが生じてしまう。これに対し、同直線よりも上側の領域では、ピッチムラの発生を回避することができる。
【0047】
[第2テストプリント]
記録紙Pとして、普通紙の代わりに、株式会社NBSリコー社製のFC和紙タイプ さざ波(商品名)を使用した。和紙のような表面凹凸を具備する紙である。このような紙を用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを発生させ易くなる。縦70[mm]、横55[mm]の大きさの黒ベタ画像を、出力するテスト画像として採用した。そして、記録紙Pに出力されたテスト画像について、凹部の濃度再現性、凸部(平滑部)の濃度再現性、及び放電に起因する白点の出現性の3項目を評価した。
【0048】
凹部の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、表面凹凸の凹部内に対して十分量のトナーを進入させていることから、凹部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5として評価した。また、凹部内のごく僅かな領域を白く抜けた領域にしているか、あるいは、凹部の画像濃度が平滑部よりも僅かに低い状態になっている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4よりも、白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合を、ランク3として評価した。また、ランク3に比べ、さらに白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合をランク2として評価した。また、凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合や、さらに悪い場合をランク1として評価した。参考までに、各ランクの黒ベタ画像を図6に示す。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
【0049】
凸部(平滑部)の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、平滑部において十分な画像濃度を得られている場合をランク5とした。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる場合をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い場合をランク2とし、平滑部が全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い場合をランク1として評価した。参考までに、各ランクの黒ベタ画像を図7に示す。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
【0050】
2次転写バイアスによっては、2次転写ニップ内において、記録紙Pの表面凹部と、中間転写ベルト31との間の微小空隙で放電が発生して、画像に白点を出現させることがある。放電に起因する白点の出現性については、次のようにして評価した。即ち、放電に起因するものと考えられる白点が認められない状態をランク5として評価した。また、白点が僅かに認められるものの、認められる数が少なく且つ大きさも小さいことから、ユーザーに提供する画質として問題ないレベルをランク4として評価した。また、ランク4に比べて白点が多く認められ、問題あるほど目立つ状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに白点が多く認められる場合をランク2として評価した。また、白点が画像全体に認められ、ランク2よりも更に悪い状態をランク1として評価した。なお、放電に起因する白点は点状に発生するのに対し、凹部の濃度が非常に薄い場合は凹部全体が白くなる。また、参考までに、各ランクの黒ベタ画像を図7に示す。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
【0051】
第2テストプリントについては、次のようにして行った。即ち、まず、2次転写ニップで交番電界を全く作用させない場合を基準として評価するために、2次転写バイアスとして、直流成分だけからなるものを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力して上記3項目を評価した。この結果を次の表2に示す。
【表2】

【0052】
表2に示すように、2次転写バイアスとして直流成分だけからなるものを採用した場合、直流電圧の増加に伴って凸部の画像濃度も増加していくが、凹部においては必要な画像濃度を得ることができない。直流電圧の値にかかわらず、凹部の濃度再現性はランク1である。また、直流電圧が増加するにつれて、放電に起因する白点の発生が目立ってくる。マイナス極性の直流電圧の絶対値を2[kV]よりも大きくすると、白点の出現性が許容レベルであるランク4を下回ってしまう。
【0053】
次に、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力した。重畳バイアスの交流成分の周波数fについては、500[Hz]に固定した。また、プロセス線速vについては、282[mm/s]に固定した。また、直流成分の電圧であるオフセット電圧については、−0.6[kV]〜−2.0[kV]の範囲内で適宜変更した。また、交流成分のピークツウピーク電圧Vppについては、1.0[kV]〜9.0[kV]の範囲内で適宜変更した。このような条件で出力した黒ベタ画像の凹部濃度再現性を評価した結果を、次の表3に示す。
【表3】

【0054】
表3に示すように、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用すると、バイアス条件によっては、凹部濃度再現性のランクを4以上にし得ることがわかる。凹部濃度再現性については、交流成分のピークツウピーク電圧Vppを大きくするほど、ランクを向上させ、且つ、直流成分であるオフセット電圧Voff(の絶対値)を大きくするほど、ランクを向上させる傾向にある。
【0055】
上記黒ベタ画像の凸部濃度再現性を評価した結果を、次の表4に示す。
【表4】

【0056】
オフセット電圧Voffの絶対値を大きくするほど、凸部(平滑部)の画像濃度を増加させる傾向にあることがわかる。オフセット電圧Voffの絶対値をある程度まで大きくすることで、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にすることができる。ここで注目すべき点は、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用した場合、直流成分だけからなるものを採用する場合に比べて(表2に比べて)、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にするオフセット電圧Voffの値(絶対値)を小さくすることができている点である。
【0057】
上記黒ベタ画像の白点出現性を評価した結果を、次の表5に示す。
【表5】

【0058】
交流成分のピークツウピーク電圧Vppを小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。これに対し、オフセット電圧Voffの絶対値を大きくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。
【0059】
図9は、第2テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフである。このグラフは、図示のように、y軸にオフセット電圧Voffの値をとるとともに、x軸にピークツウピーク電圧Vppの値をとった2次元座標上に作成されたものである。2次元座標上には、実線で示される直線L1、点線で示される直線L2、及び一点鎖線で示される直線L3、という3つの直線が描かれている。図示の2次元座標において、直線L1の線上の領域や、直線L1に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、凹部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凹部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L2の線上の領域や、直線L2に比べて同じy座標が大きくなる領域では、凸部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凸部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L3の線上の領域や、直線L3に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、白点出現性のランク許容レベルを下回る3以下という結果になった(放電に起因する白点が目立った)。このため、プロット点を×として示している。なお、直線L1よりも図中上側で且つ直線L2よりも図中下側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、凸部濃度再現性のランクが4を下回った。また、直線L1よりも図中上側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、白点出現性のランクが4を下回った。また、直線L2よりも図中下側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凸部濃度再現性が4を下回るとともに、白点出現ランクが4を下回った。
【0060】
同図では、凹部濃度再現性、凸部濃度再現性、及び白点出現性という3つの項目について、全て許容レベルのランク4以上になった実験結果のみ、プロット点を丸で示している。3つの項目ではなく、凹部濃度再現性だけに着目すると、直線L1よりも図中下側の座標となるオフセット電圧Voff及びピークツウピーク電圧の組合せを採用すればよいことになる。直線L1は、「Vpp=−4×Voff」という式で表される。よって、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を満たす2次転写バイアスを採用することで、紙表面の凹部で十分な画像濃度を得て、凹凸にならった濃淡パターンを抑えることができる。
【0061】
参考までに、2次転写バイアスとして、上記表2に示した実験(2次転写バイアスが直流成分だけからなる)において、凹部の画像濃度を最も濃くすることができた直流電圧=−2.5[kV]という条件で出力した黒ベタ画像を図10に示す。また、図9に示した電位条件のうち、オフセット電圧Voff=−1.0[kV]、ピークツウピーク電圧Vpp=5.0[kV]という条件で出力した黒ベタ画像を図11に示す。2次転写バイアスとして、重畳バイアスからなるものを採用することで、直流成分だけからなるものを採用した場合に比べて、凹部濃度再現性を大幅に改善し得ることがわかる。
【0062】
2次転写バイアスとして、重畳バイアスからなるものを採用した画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。しかしながら、以下に説明する理由により、この画像形成装置では、凹部濃度再現性としてランク4以上を得ることができない。即ち、特許文献1においては、図5として、次のような実験結果が示されている。即ち、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの直流成分に相当するVdcとして、2.0[kV]を採用し、交流成分のVacとして、1〜4[kV]を採用し、且つ交流成分の周波数fとして2[kHz]を採用した条件で、凹部濃度再現性に相当する白抜けグレードを評価している。VdcやVacについては、第1実施形態に係るプリンタとは異なり、ニップ形成ローラに印加し、2次転写裏面ローラについては接地している。そして、Vdcとしてプラス極性のものを採用することで、2次転写ニップ内でトナーを2次転写裏面ローラ側からニップ形成ローラ側に静電的に引き寄せて記録紙上に2次転写している。特許文献1の図5には、次のようなグラフが記載されている。即ち、交流成分のVacが0[kV]から2.0[kV]まで徐々に大きくなるにつれて、白抜けグレードが徐々に改善されていき、2[kV]に達した時点で白抜けグレードが最も改善される。そして、2.0[kV]よりも大きくすると、その増加に伴って白抜けグレードが悪化の一途を辿ることを示すグラフである。グラフで示されているVacの最大値は4[kV]であり、このときに白抜けグレードは最悪の結果になっている。特許文献1においては、交流成分のVacについて、ピークツウピーク電圧であるのか、その半分の振幅であるのかが明記されていない。但し、単純に「ac」と表記する場合には、後者を示す場合が多い。そこで、Vacを振幅であると仮定してみると、特許文献1の図5に示される実験において、Vacを最良の結果が得られている2.0[kV]にした条件を、第1実施形態に係るプリンタの条件に置き換えると、オフセット電圧Voff=−2.0[kV]、ピークツウピーク電圧Vpp=4.0[kV]であることになる。また、Vacを最悪の結果が得られている4[kV]にした条件を、第1実施形態に係るプリンタの条件に置き換えると、オフセット電圧Voff=−2.0[kV]、ピークツウピーク電圧Vpp=8.0[kV]であることになる。本発明者らは、これらの条件を踏まえて、プリント試験機において、重畳バイアスの直流電圧(オフセット電圧Voff)を−2.0[kV]に固定し、ピークツウピーク電圧Vppを1[kV]から8[kV]まで徐々に上げていき、それぞれの条件で記録紙(さざ波)に黒ベタ画像を出力してみた。すると、特許文献1の図5の結果とは異なり、Vppを1[kV]から8[kV]まで上げていくにつれて、紙表面の凹部の画像濃度を徐々に濃くしていく結果が得られた。
【0063】
この実験において、2.0[kV]の直流電圧だけからなる2次転写バイアスの条件で出力した黒ベタ画像を図12に示す。また、2.0[kV]の直流電圧と、4.0[kV]のピークツウピーク電圧Vppとからなる2次転写バイアスの条件(最良の条件)で出力した黒ベタ画像を図13に示す。この条件は、特許文献1に記載の実験では最良の結果とされている条件である。また、2.0[kV]の直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当する)と、8.0[kV]のピークツウピーク電圧Vppとからなる2次転写バイアスの条件で出力した黒ベタ画像を図14に示す。この条件は、特許文献1に記載の実験では最悪の結果とされている条件である。何れの黒ベタ画像も縦70mm×横55mmの大きさである。凹部の画像濃度再現性だけに着目すれば、3つの黒ベタ画像のうち、図13に示した黒ベタ画像で最も良い結果が得られている。この黒ベタ画像は、一見すると、凹部に著しい画像濃度不足を引き起こしているように見える。しかし、溝状の凹部のように見える白抜け部が図12の溝状の凹部よりも著しく太いことからわかるように、凹部の画像濃度不足によるものではなく、放電に起因する多量の白点が線状に繋がったものである。線状に繋がった白点は、紙表面の凹部のうち、特に深さの大きい箇所に沿って発生しており、それほど深くない凹部箇所においては、図12の凹部よりも濃い画像濃度が得られている。しかし、それでも、その画像濃度は、許容レベルを下回るランク3であった。
【0064】
図13の黒ベタ画像を得たオフセット電圧Voff=2.0[kV]、Vpp=4.0[kV]という条件において、両電圧の関係を式で表すと「1/2×Vpp=|Voff|」という式が得られる。この条件は、本発明者らが第2プリントテストによって導き出した「1/4×Vpp>|Voff|」という条件から大きく外れるものである。また、図14の黒ベタ画像を得たVoff=2.0[kV]、Vpp=8.0[kV]という条件において、両電圧の関係を式で表すと「1/4×Vpp=|Voff|」という式が得られる。この条件は、本発明者らが第2プリントテストによって導き出した「1/4×Vpp>|Voff|」という条件には近いものの、僅かに外れるものである。「1/4×Vpp=|Voff|」という条件では、ランク3の凹部濃度再現性しか得ることができなかったのに、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件では、ランク4の凹部濃度再現性を得ることができた。以上のことから、ランク4以上の凹部濃度再現性を得るには、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件にする必要があることがわかった。
【0065】
なお、プリンタ試験機においては、2次転写裏面ローラ33に対して2次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36を接地しているので、両ローラ間における電位差の時間平均値であるオフセット電圧Voffが、2次転写バイアスの直流成分と同じ値になる。しかし、ニップ形成ローラ36を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36に直流電圧を印加した場合、両ローラ間における電位差の時間平均値と、オフセット電圧Voffとは互いに異なる値になる。2次転写ニップ内において、中間転写ベルト31と記録紙Pとの間のトナー粒子の移動には、2次転写バイアスの直流成分そのものではなく、両ローラ間における電位差の時間平均値が関わっている。よって、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件ではなく、「1/4×Vpp>|時間平均値|」という条件を具備させる必要がある。
【0066】
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
なお、上記(2)や(5)の場合においては、「直流成分」は重畳バイアスの直流成分と直流バイアスとを合わせて重畳値を意味する。例えば、ニップ形成部材にVpp=8.0[kV]、直流成分Vdc=+0.5[kV]の重畳バイアスを印加し、裏面当接部材にVdc=−0.5[kV]の直流バイアスを印加する場合には、「直流成分」は、0.5[kV]と0.5[kV]とを合わせて+1.0[kV]となる。
【0067】
[観測実験]
次に、本発明者らが行った観測実験について説明する。
本発明者らは、「1/4×Vpp>Voff」という条件にすることで、凹部で十分な画像濃度を得て紙面凹凸にならった濃淡パターンを従来よりも目立たなくすることができた原因を明らかにするために、特殊な観測実験装置を作製した。
【0068】
図15は、その観測実験装置を示す概略構成図である。この観測実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
【0069】
現像装置231は、第1実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
【0070】
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
【0071】
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録用紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録用紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録用紙214上に転写されている。
【0072】
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
【0073】
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
【0074】
トナーの挙動については、次のようにして撮影する。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影する。
【0075】
図15に示した観測実験装置と、第1実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録紙に転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、観測実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録紙214としては、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名) 260kg紙(四六版連量)を使用した。レザック66は、「さざ波」よりも紙表面の凹凸の度合いが大きい紙である。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。観測実験装置では、記録紙の裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録紙に転写し得る転写バイアスの極性が、第1実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを500[Hz]、オフセット電圧Voffを200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを400[V]から2600[V]まで200[V]単位で変化させていきながら、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、ピークツウピーク電圧Vppを800[V]未満に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4未満になったが、Vppを800〜2200[V]の範囲に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4以上になった。転写試験装置でも、プリンタ試験機と同様に、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件で、凹部濃度再現性を許容レベルまで良好にすることができたのである。なお、ピークツウピーク電圧Vppを2400[V]に設定した条件では、凹部濃度再現性は許容レベルであるものの、許容レベルを超える白点が発生してしまった。
【0076】
次に、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、オフセット電圧Voffを200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを1000[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件で、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加する。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図16に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図17に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図18に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(観測実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
【0077】
一方、オフセット電圧Voffを200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを800[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」を満足しない条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録紙Pの凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録紙Pの凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録紙Pの凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。
【0078】
以上のように、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備することで、図16〜図18に示したような現象を生起せしめて、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーを転移させ得ることがわかった。なお、図16〜図18に示したような現象を生起せしめるためには、転写ニップ内で最低でもトナー粒子を2往復させる必要がある。このため、ニップ通過時間については、交流成分の周期の2倍以上に設定する必要がある。望ましくは、既に述べたように、転写ニップ内で交番電界を4回以上作用させることが望ましい(f>(4/d)×v)。
【0079】
[第3テストプリント]
記録紙Pとして、特殊製紙株式会社製のレザック66(260kg紙(連量=四六版千枚当たりの重量))を使用した。第2テストプリントと同様に、縦70[mm]、横55[mm]の大きさの黒ベタ画像を出力して、凹部の濃度再現性、凸部(平滑部)の濃度再現性、及び放電に起因する白点の出現性の3項目を評価した。オフセット電圧Voffについては、−0.6[kV]〜−1.5[kV]の範囲で変化させた。また、ピークツウピーク電圧Vppについては、2.1[kV]〜9.0[kV]の範囲で変化させた。
【0080】
図19は、第3テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフである。図示の2次元座標において、直線L4の線上の領域や、直線L4に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、凹部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凹部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L5の線上の領域や、直線L5に比べて同じy座標が大きくなる領域では、凸部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凸部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L6の線上の領域や、直線L6に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、白点出現性のランクが許容レベルを下回る3以下という結果になった(放電に起因する白点が目立った)。このため、プロット点を×として示している。なお、直線L4よりも図中上側で且つ直線L5よりも図中下側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、凸部濃度再現性のランクが4を下回った。また、直線L4よりも図中上側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、白点出現性のランクが4を下回った。また、直線L5よりも図中下側で且つ直線L6よりも図中上側の領域では、凸部濃度再現性が4を下回るとともに、白点出現ランクが4を下回った。
【0081】
図示のように、3つの直線で囲まれる三角形の領域だけで良好な画像が得られるという現象は、先に図9に示した第2テストプリントの結果と同様である。但し、各直線のうち、直線L1や直線L4の傾きが、第2テストプリントとは異なっている。参考までに、第2テストプリントにおける実験結果の1つである直線L1を点線として図19に示した。
【0082】
[第4テストプリント]
記録紙Pとして、特殊製紙株式会社製のレザック66(175kg紙(連量))を使用した。その表面の凹部は、上述した「さざ波」の凹部よりも深さが大きいが、第3テストプリントで使用されたレザック66(260kg紙(連量))の凹部よりも深さが小さい。第2テストプリントと同様に、縦70[mm]、横55[mm]の大きさの黒ベタ画像を出力して、凹部の濃度再現性、凸部(平滑部)の濃度再現性、及び放電に起因する白点の出現性の3項目を評価した。オフセット電圧Voffについては、−0.6[kV]〜−1.5[kV]の範囲で変化させた。また、ピークツウピーク電圧Vppについては、2.1[kV]〜8.0[kV]の範囲で変化させた。
【0083】
図20は、第4テストプリントの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフである。図示の2次元座標において、直線L7の線上の領域や、直線L7に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、凹部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凹部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L8の線上の領域や、直線L8に比べて同じy座標が大きくなる領域では、凸部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凸部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L9の線上の領域や、直線L9に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、白点出現性のランクが許容レベルを下回る3以下という結果になった(放電に起因する白点が目立った)。このため、プロット点を×として示している。なお、直線L7よりも図中上側で且つ直線L8よりも図中下側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、凸部濃度再現性のランクが4を下回った。また、直線L7よりも図中上側で且つ直線L9よりも図中上側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、白点出現性のランクが4を下回った。また、直線L8よりも図中下側で且つ直線L9よりも図中上側の領域では、凸部濃度再現性が4を下回るとともに、白点出現ランクが4を下回った。
【0084】
図示のように、3つの直線で囲まれる三角形の領域だけで良好な画像が得られるという現象は、先に図9に示した第2テストプリントの結果や、先に図19に示した第3テストプリントの結果と同様である。但し、各直線の傾きが第2テストプリントや第3テストプリントとは異なっている。参考までに、第2テストプリントにおける実験結果の1つである直線L1を点線として図20に示した。
【0085】
既に述べたように、先に示した図9(第2プリントテスト)においては、VoffとVppとの組合せとして、直線L1よりも図中下側の座標をとるものを用いないと、記録紙表面の凹部上の画像濃度が薄くなって、濃淡パターンが強調されてしまう。また、先に示した図20(第4プリントテスト)においては、VoffとVppとの組合せとして、直線L7よりも図中下側の座標をとるものを用いないと、記録紙表面の凹部上の画像濃度が薄くなって、濃淡パターンが強調されてしまう。また、先に示した図19(第3プリントテスト)においては、VoffとVppとの組合せとして、直線L4よりも図中下側の座標をとるものを用いないと、記録紙表面の凹部上の画像濃度が薄くなって、濃淡パターンが強調されてしまう。実験に使用した記録紙の表面凹部の深さは、第2テストプリント(図9)、第4テストプリント(図20)、第3テストプリント(図19)の順に大きくなっている。このことから、凹部の深さが大きくなるほど、凹部内に十分量のトナーを転移させ得るか否かの境界を示す直線(L1、L4、L7)の傾きが大きくなることがわかる。また、直線L1、直線L4、直線L7に着目すると、直線L4よりも下側に存在する領域や、直線L7よりも下側に存在する領域は、全て、直線L1よりも下側に存在する領域の中に含まれていることがわかる。これは、記録紙として、和紙のような表面凹凸のあるものを用いる場合には、少なくとも、直線L1よりも下側になる電位条件(VoffとVppとの組合せ)を採用する必要があることを意味している。
【0086】
[第5テストプリント]
特開平9−146381号公報には、ピークツウピーク電圧Vpp=2.1[kV]、周波数f=2.0[kHz]の交流電圧に、0.6[kV]のオフセット電圧Voffを重畳した転写バイアスを用いる画像形成装置が記載されている。2.1を4で除算すると0.525となり、これは0.6よりも小さい。よって、同公報に記載の画像形成装置では、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備していない。従って、これまでの実験結果によれば、この画像形成装置では、「さざ波」という凹部深さの比較的小さな紙であっても、濃淡パターンを発生させてしまうと思われた。そこで、実際に、同公報に記載の電圧条件で黒ベタ画像を出力してみたところ、凹部濃度再現性はランク1という非常に悪い結果になった。
【0087】
[凹部深さ測定試験]
「さざ波」のような、凹部の深さが比較的小さい記録紙であれば、転写バイアスに対して「直線Lよりも下側になる」=「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備させるだけでよい。しかし、凹部の深さが比較的大きい記録紙では、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件だけでは、凹部内へのトナーの転移不足を引き起こす。このため、凹部の深さが大きくなるにつれて、「直線L7よりも下側」、更に「直線L4よりも下側」という具合に、適切な電位条件の領域を狭めていく必要がある。直線の傾きは、L1>L7>L4」という順に大きくなっていき、その順でVppに対するVoffの割合が低くなっていく。図2に示したように、振幅である「1/2×Vpp」からVoffを差し引いたものが戻しピーク値Vrである。よって、凹部の深さが大きくなるにつれてVppに対するVoffの割合を低くする必要があるということは、凹部の深さが大きくなるにつれて戻しピーク値Vrを大きくしていく必要があるということを意味している。
【0088】
そこで、凹部の深さと、凹部に十分量のトナーを転移させることが可能な最小限の戻しピーク値Vr(以下、適正Vr下限値という)との関係を調べることにしたが、その前に、各種の記録紙について凹部深さを測定しておく必要がある。このため、まずは、各種の記録紙の凹部深さを測定した。
【0089】
測定装置としては、東京精密社製の「SURFCOM 1400D」を用いた。測定点については、記録紙表面を顕微鏡で観察して、表面全域の中から、被検領域とする箇所をアトランダムに5つ選んだ。それぞれの箇所について、評価長さ20[mm]、基準長さ20[mm]という条件で、断面曲線の最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)を測定した。そして、得られた5つの最大断面高さPtのうち、上位3つの平均値を求めた。以上の作業を、同じ種類の3枚の記録紙について行って、前記平均値の3枚の平均を、最大凹部深さDとして求めた。
【0090】
記録紙としては、特殊製紙株式会社製のレザック66の260kg紙、215kg、175kg紙、130kg紙、及び100kg紙(何れも連量)、並びに、(株)NBSリコー社製のFC和紙タイプ「さざ波」の6種類を用意した。これら6種類の記録紙についてそれぞれ、上述のようにして最大凹部深さDを測定した。
【0091】
図21は、レザック66(260kg紙(連量))の表面の拡大撮影像を示すものである。図中点線で示す軌道に沿って断面高さの測定を行った。図示の軌道においては、図22にしめすような断面曲線が得られた。このような断面曲線に基づいて6種類の記録紙についてそれぞれ最大凹部深さDを測定した結果を、図23に示す。
【0092】
[第6テストプリント]
図23に示した6種類の記録紙についてそれぞれ、次のようにして適正Vr下限値を調べた。即ち、転写バイアスの戻しピーク値Vrを変化させながら、それぞれの戻しピーク値Vrの条件で黒ベタ画像を出力する。そして、それぞれの出力画像について、凹部濃度再現性を評価し、ランク4以上の結果が得られた戻しピーク値Vrだけを適正データとして抽出した。そして、得られた適正データのうち、最も低いものを、適正Vr下限値とした。6種類の記録紙についてそれぞれ求めた適正Vr下限値と、凹部最大深さとに基づいて、両者の関係が図24に示すような1次関数直線の関係であることを確かめた。
【0093】
但し、図示のような1次関数直線が得られるためには、中間転写ベルト31のトナー像の電位であるトナー像電位Vtonerが一定である必要がある。トナー像電位Vtonerが変化してしまうと、転写効率が変化するため、適正Vr下限値も変化する。そこで、本発明者らは、記録紙の種類を一定にした条件で、トナー像電位Vtonerやバイアス条件を変化させながら、黒ベタ画像を出力して凹部濃度再現性を評価した。すると、適正Vr下限値とトナー像電位Vtonerとの間にも、一次関数直線の関係が成立することを見出した。更に詳細な実験を行ったところ、図25にグラフで示すように、適正Vr下限値については、「適正Vr下限値=0.17×最大凹部深さD×|Vtoner|」という式で表し得ることが解った。
【0094】
なお、トナー像電位Vtonerについては、次のようにして求めることができる。即ち、黒単色のトナー像を形成する場合は、黒単色の黒ベタ画像の表面電位を、トナー像電位Vtonerとする。ここで言う黒ベタ画像は、1cm×1cmの全領域における各画素がそれぞれ黒の画素値を持っているものである。Adobe社の画像ソフトであるPhotoshopで、モノクロ二階調モードにて作成した全面黒の画像を、PostScript対応のプリンタドライバからプリントされるベタ画像と同じ画像構造を有するものである。一方、カラー画像を形成する場合は、マゼンタとシアンとを重ねた2色ベタ画像を中間転写ベルト31上に重ね合わせて転写した際におけるベルト上のトナー層の表面電位をトナー層電位Vtonerとする。この場合の2色ベタ画像とは、Adobe社のPhotoshopで、CMYKカラーモードにて作成した全面マゼンタと全面シアンとを重ねた画像をプリントした際のトナー像(=同じレーザー書き込み)と同じ画像構造を有するものである。PostScript対応のプリンタドライバを使ってAdobe社のPhotoshopで作成されたベタ画像と同じ画像構造のものとする理由は、PostScriptがDTPなど用いられる、最も汎用的なデータ規格だからである。
【0095】
次に、第1実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
先に示した図3において、第1実施形態に係るプリンタは、紙種情報取得手段たるオペレーションパネル50と、制御部60とを備えている。オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受け付けたりする。タッチパネルは、制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示する。
【0096】
制御部60は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等からなり、プリンタ内の各種機器の駆動を制御したり、演算処理を実施したりするものである。制御部60のフラッシュメモリは、次の表6に示すようなデータテーブルを記憶している。
【表6】

【0097】
このデータテーブルは、各種の記録紙について、商品名と、それに対応する適切なピークツウピーク電圧Vpp、周波数f、及びオフセット電圧Voffとを関連付けている。表6では、便宜上、商品名の欄に単純なアルファベット1文字を記しているが、実際には、各メーカーから市販されている商品名が入力されている。このデータテーブルにおいて、各種の記録紙に対応するピークツウピーク電圧Vpp及びオフセット電圧Voffは、それぞれ次のようにして設定されたものである。即ち、対応する記録紙を用いて、第5プリントテストと同様にして適正Vr下限値を求めた後、その適正Vr下限値を実現する値に、ピークツウピーク電圧Vpp及びオフセット電圧Voffを設定したものである。よって、例えば商品名Aの記録紙であれば、データテーブル中の商品名Aに対応するピークツウピーク電圧Vpp及びオフセット電圧Voffの組合せを具備する2次転写バイアスを印加することで、濃淡パターンの発生を抑えることができる。
【0098】
操作者は、給紙カセット100内に収容している記録紙Pの紙種を変更した場合に、オペレーションパネル50に具備される図示しない紙種変更ボタンを押す。このボタン押下操作を検知した制御部60は、表6のデータテーブル中に含まれる全ての商品名を一覧形式でオペレーションパネル50のタッチパネル画面に表示させ、それらのうち、どれをセットしたのかを操作者に問い合わせる。操作者がこの問い合わせに従って、セットした記録紙の商品名を画面上でタップすると、制御部60は、フラッシュメモリ内に記憶しているセット中記録紙商品名のデータを、タップされた商品名と同じものに更新する。また、その商品名に対応するピークツウピーク電圧Vpp、周波数f、及びオフセット電圧Voffの組合せを表6のデータテーブルから特定する。そして、フラッシュメモリ内に記憶している目標Vpp、目標f、目標Voffの値を、特定結果と同じ値に更新する。プリントジョブ処理を開始したときには、2次転写バイアス電源39から、目標Vppと同じピークツウピーク電圧Vpp、目標fと同じ周波数f、及び目標Voffと同じオフセット電圧Voffが出力されるように、2次転写バイアス電源39に対して制御信号を出力する。これにより、適正Vr下限値を満足する重畳バイアスから2次転写バイアスが、2次転写裏面ローラ33に印加される。
【0099】
なお、本プリンタでは、このように、紙種に応じてVpp及びVoffの組合せを変更しているが、先に示した図2からわかるように、Vpp及びVoffの組合せを変更すれば、それに伴って戻しピーク値Vrも変更される。つまり、本プリンタにおいては、紙種に応じて戻しピーク値Vrを変更するようになっている。
【0100】
また、本プリンタにおいて、表6のデータテーブルにある各種の記録紙の全てが、和紙のような表面凹凸に富んだものであるわけではない。普通紙なども含まれている。表面凹凸のない記録紙では、濃淡パターンが発生せず、2次転写バイアスとして重畳バイアスよりも直流バイアスを印加した方が良い場合もある。そこで、データテーブルにおいて、表面凹凸のない記録紙については、Vppの欄や、周波数fの欄が空白になっている。制御部60は、Vppの欄や、周波数fの欄が空白になっている記録紙については、オフセット電圧Voffだけを出力させるように、2次転写バイアス電源39に制御信号を出力する。
【0101】
また、Vppの欄や、周波数fの欄が空白になっていない記録紙、即ち、表面凹凸のある記録紙では、データテーブル中のVpp及びVoffの組合せを採用することで適正Vr下限値を実現することができるので、その組合せは、必ず、次の条件を具備している。即ち、即ち、2次転写裏面ローラ33の芯金とニップ形成ローラ36の芯金との電位差の時間平均値であるVdと、交流成分のピークツウピーク電圧Vpp[V]とについて、「1/4×Vpp>|Vd|」というという関係を具備し、且つ前者の芯金の電位を後者の芯金の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくするという条件である。
【0102】
また、データテーブル中の各周波数fは、「周波数f[Hz]>(4/ニップ幅d)×プロセス線速v」という条件を具備する値になっている。よって、第1テストプリントの項で説明したように、ピッチムラのない良好な画像を得ることができる。なお、高速モードと普通モードとの切り替えのように、互いにプロセス線速vの異なる複数の速度モードを具備するものにおいては、各速度モードについて、それぞれ専用のデータテーブルをフラッシュメモリ内に記憶させておく。こうすることで、全ての速度モードで、「周波数f[Hz]>(4/ニップ幅d)×プロセス線速v」という条件を具備することができる。
【0103】
放電に起因する白点は、ピークツウピーク電圧Vppが比較的大きく、且つ|Voff|が比較的大きい場合に発生している。これはトナーを中間転写ベルト31側から記録紙P側に移動させる方向の極性のピーク値Vt(図2参照)が比較的大きい場合に相当する。|Vt|=|Voff|+|Vr|という式で示されるピーク値Vtが、放電に起因する白点の発生に関与していると考えられる。図2から、Vt、Voffの極性がそれぞれマイナス極性である場合には、「Vt=−1/2×Vpp+Voff」であることから、「Voff=1/2×Vpp+Vt」という関係が成立している。一方、図9に示した直線L3は、「Voff=1/2×Vpp−4.55」という式で示されるため、Vt=−4.55[kV]以上の領域において顕著な白点が発生していると言える。
【0104】
本発明者らは、良好な画像が成立する領域のVoff下限値Voffminが異なる複数の条件で放電による異常画像の発生電圧について確認したところ、放電に起因する白点の発生にはやはりVtが関与しており、白点の発生を許容レベルに留めることができるピーク値Vtの上限値Vtmaxと下限値Voffminnとは、「Vtmax=1.7×Voffmin−3.1」という関係式で示されることがわかった。トナーとして、プラス極性のものを用いる場合も考慮すると、その関係式を変形した「|Vtmax|=1.7×|Voffmin|+3.1」という関係式を具備させることが望ましい。
【0105】
そこで、第1実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写バイアスとして、「|Vtmax|=1.7×|Voffmin|+3.1」という関係式を具備するものを印加するように、2次転写バイアス電源39を構成している。
【0106】
本プリンタにおいては、2次転写バイアス電源39や制御部60などの組合せにより、電位差発生手段が構成されている。
【0107】
次に、第1実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、各変形例に係るプリンタの構成は、以下に特筆しない限り、第1実施形態のものと同様である。
[第1変形例]
【0108】
先に図25に示したように、適正Vr下限値については、次式で表すことができる。
適正Vr下限値=0.17×|Vtoner|×D・・・(1)
【0109】
一方、戻しピーク値Vrは、先に図2に示したように、Vppの半分である振幅からVoffの絶対値を減算した値に等しいので、次式が成立する。
1/2×Vpp−|Voff|=Vr・・・(2)
【0110】
この式の左辺が、上記(1)の式における右辺よりも大きければ、戻しピーク値Vrが適正Vr下限値よりも大きいことになる。即ち、凹部に十分量のトナーが転移して濃淡パターンの発生が抑えられることになる。よって、次式を満足させればよい。
1/2×Vpp−|Voff|>0.17×|Vtoner|×D・・・(3)
【0111】
制御部60は、次の表7に示すようなデータテーブルをフラッシュメモリに記憶している。
【表7】

【0112】
このデータテーブルは、各種の記録紙について、商品名と、それに対応する最大凹部深さD[μm]とを関連付けている。最大凹部深さDは、上述した凹部深さ測定試験によって求められたものである。
【0113】
本プリンタは、先に図3に示したように、電位センサ38を有している。この電位センサ38は、中間転写ベルト31上に1次転写された各色のトナー像のトナー像電位Vtonerを測定することができる。制御部60は、操作者からの命令に基づくプリントジョブを開始する直前や、連続プリントジョブ中における紙間タイミングなど、所定のタイミングで、中間転写ベルト31上に所定の大きさのベタ画像を所定のトナー付着量で形成して、そのトナー像電位Vtonerを測定する。そして、その測定結果を、フラッシュメモリに記憶する。
【0114】
操作者は、給紙カセット100内に収容している記録紙Pの紙種を変更した場合に、オペレーションパネル50に具備される図示しない紙種変更ボタンを押す。このボタン押下操作を検知した制御部60は、表7のデータテーブル中に含まれる全ての商品名を一覧形式でオペレーションパネル50のタッチパネル画面に表示させ、それらのうち、どれをセットしたのかを操作者に問い合わせる。操作者がこの問い合わせに従って、セットした記録紙の商品名を画面上でタップすると、制御部60は、フラッシュメモリ内に記憶しているセット中記録紙商品名のデータを、タップされた商品名と同じものに更新する。また、その商品名に対応する最大凹部深さDのデータを表7のデータテーブルから特定する。フラッシュメモリ内に記憶しているトナー像電位Vtonerのデータと、最大凹部深さDのデータとに基づいて、上記(1)の式によって適正Vr下限値を算出して、算出結果をフラッシュメモリ内に記憶する。
【0115】
制御部60は、次の表8に示すデータテーブルもフラッシュメモリ内に記憶している。
【表8】

【0116】
前述した適正Vr下限値の算出結果を得たら、それ対応するVpp、周波数f、及びVoffの組合せを、このデータテーブルの中から特定する。そして、フラッシュメモリ内に記憶している目標Vpp、目標f、目標Voffの値を、特定結果と同じ値に更新する。プリントジョブ処理を開始したときには、2次転写バイアス電源39から、目標Vppと同じピークツウピーク電圧Vpp、目標fと同じ周波数f、及び目標Voffと同じオフセット電圧Voffが出力されるように、2次転写バイアス電源39に対して制御信号を出力する。これにより、適正Vr下限値を満足する重畳バイアスから2次転写バイアスが、2次転写裏面ローラ33に印加される。
【0117】
なお、本プリンタにおいて、表7のデータテーブルにある各種の記録紙の全てが、和紙のような表面凹凸に富んだものであるわけではない。普通紙なども含まれている。表面凹凸のない記録紙では、濃淡パターンが発生せず、2次転写バイアスとして重畳バイアスよりも直流バイアスを印加した方が良い場合もある。そこで、データテーブルにおいて、表面凹凸のない記録紙については、最大凹部深さDの欄が空白になっている。制御部60は、最大凹部深さDの欄が空白になっている記録紙については、オフセット電圧Voffだけを出力させるように、2次転写バイアス電源39に制御信号を出力する。
【0118】
また、本プリンタにおいては、表面凹凸がある記録紙であっても、「さざ波」のような最大凹部深さDが比較的小さいものについては、表7のデータテーブルの最大凹部深さDの欄に、数値の代わりに、深さについて小さいことを示す「S」というアルファベットを入力している。制御部60は、最大凹部深さDの欄に「S」というアルファベットが入力されている記録紙については、最大凹部深さDに基づいて適正Vr下限値を求めてVpp及びVoffを特定する代わりに、予め定められた所定のVpp及びVoffの組合せを採用する。この組合せは、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備するようになっている。
【0119】
「さざ波」のような最大凹部深さDが比較的小さいものについて、そのような固定の組合せを用いるようにしたのは、次に説明する理由による。即ち、最大凹部深さDが比較的小さい記録紙では、最大凹部深さDに基づいて計算したVpp及びVoffの組合せが、1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備せずに、濃淡パターンの発生を十分に抑えることができなくなることを、本発明者らが実験によって見出したからである。最大凹部深さDが比較的小さいものについて、そのような固定の組合せを用いることで、そのような事態の発生を回避することができる。
【0120】
[第2変形例]
図26は、第2変形例に係るプリンタに搭載されている凹部深さ測定手段を示す拡大構成図である。この凹部深さ測定手段65は、光源としての半導体レーザー65aと、光位置検出素子65bと、投光レンズ65cと、受光レンズ65dとを有している。半導体レーザー65aから発せられたコヒーレント光は、投光レンズ65cを通して集光され、記録紙P上の所定のエリアに照射される。記録紙Pから拡散反射された光線の一部は、受光レンズ65dを介して光位置検出素子65d上にスポットを結像する。このスポットの位置を検出することで記録紙P上の表面の凹部深さを検出する。かかる構成の凹部深さ測定手段65は、レジストローラ対101の直前の位置で、記録紙Pの表面の凹部深さを検出するように配設されている。
【0121】
図27は、通紙中の記録紙の凹部深さを測定している凹部深さ測定手段65からの出力電圧を示す波形図である。同図において、記録紙1、記録紙2は、何れも表面平滑性の良い紙である。このような記録紙を検出対象としている凹部深さ測定手段65からの出力電圧は、図示のように変動が少ない。一方、記録紙3、記録紙4は、表面平滑性の悪い紙である。このような記録紙を検出対象としている凹部深さ測定手段65からの出力電圧は、図示のように比較的大きく変動する。制御部60は、このような、波形の変動を解析することで、レジストローラ対101に送られる直前の記録紙の凹部深さを算出する。
【0122】
凹部深さを算出した制御部60は、それを最大凹部深さDであるとみなして、第1変形例と同様にして、目標Vpp、目標f、目標Voffの値を、特定結果と同じ値に更新する。
【0123】
[第3変形例]
図28は、第3変形例に係るプリンタの転写ユニット30を示す概略構成図である。この転写ユニット30の2次転写バイアス電源は、第1電源39aと第2電源39bとを有している。第1電源39aは、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳バイアスを2次転写バイアスとして出力して2次転写裏面ローラ33に印加するものである。一方、第2電源39bは、2次転写バイアスとして、直流電圧のみからなるものであって、トナーとは逆の極性のものを出力して、ニップ形成ローラ36に印加するものである。
【0124】
制御部60は、2次転写バイアスについては、第1変形例と同様にして、どのような条件のものを採用するのかを決定する。そして、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用した場合には、第1電源39aに制御信号を送って、第1電源39aから重畳バイアスからなる2次転写バイアスを出力させる。これに対し、2次転写バイアスとして、直流バイアスだけからなるものを採用した場合には、第2電源39bに制御信号を送って、第2電源39bから直流バイアスからなる2次転写バイアスを出力させる。
【0125】
直流電圧だけからなる2次転写バイアスと、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとの切り替えを、1つの電源の中だけで行うことも可能であるが、市場に出回っているプリンタの多くは、直流電圧だけからなる2次転写バイアスのみを出力するようになっている。このようなプリンタの場合に、本発明を適用できるように改造を施す場合、既存の電源を撤去しなければならない。これに対し、図示のように、2種類のバイアスの切り替えを、互いに異なる電源によって行うようにする場合、直流バイアスだけを出力する既存の電源をそのまま活かして、新たな電源を増設するだけで済む。よって、既存の機種を容易に改造することができる。
【0126】
また、第1電源39aと、第2電源39bとで、互いに異なるローラに電圧を印加するように構成したことで、既存機の空きスペースを有効利用し易くなるというメリットもある。
【0127】
これまで、像担持体である中間転写ベルト31とニップ形成部材であるニップ形成ローラ36との当接による2次転写ニップにおいて、本発明を適用した例について説明したが、次のような1次転写ニップにおいて、本発明を適用することも可能である。即ち、像担持体たる無端ベルト状の感光体の裏面に裏面当接部材を当接させて、無端ベルト状の感光体をニップ形成部材に向けて押圧して、感光体とニップ形成部材とを当接させることで形成した1次転写ニップである。
【0128】
また、図29に示すような構成のプリンタにおける2次転写ニップにも、本発明を適用することが可能である。このプリンタは、1つの感光体2の周囲に、Y,M,C,Bk用の現像装置8Y,M,C,Kを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体2の表面を帯電装置6によって一様に帯電させた後、感光体2の表面に対してY用の画像データに基づいて変調されたレーザ光ーを照射して,感光体2の表面にY用の静電潜像を形成する。そして、このY用の静電潜像を現像装置8Yによって現像してYトナー像を得た後、これを中間転写ベルト31上に1次転写する。その後、感光体2の表面上の転写残トナーをドラムクリーニング装置3によって除去した後、感光体2の表面を帯電装置6によって再び一様に帯電させる。次に、感光体2の表面に対して、M用の画像データに基づいて変調されたレーザー光を照射して、感光体2の表面にM用の静電潜像を形成した後、これを現像装置8Mによって現像してMトナー像を得る。そして、このMトナー像を中間転写べルト31上のYトナー像に重ね合わせて1次転写する。以降、同様にして、感光体2上でCトナー像、Kトナー像を順次現像して、ベルト上のYMトナー像上に順次重ね合わせて1次転写していく。これにより、中間転写ベルト31上に4色重ね合わせトナー像を形成する。
【0129】
その後、中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像を、2次転写ニップで記録紙の表面に一括2次転写して、記録紙上にフルカラー画像を形成する。そして、定着装置90によって記録紙にフルカラー画像を定着せしめた後、記録紙を機外に排出する。
【0130】
このような構成のプリンタにおける2次転写バイアス電源39を、第1実施形態と同様に構成してもよい。
【0131】
また、本発明を電子写真方式のプリンタに適用した例について説明したが、直接記録方式によってカラー画像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。この直接記録方式とは、潜像担持体によらず、トナー飛翔装置からドット状に飛翔させたトナー群を記録体や中間記録体に直接付着させて画素像を形成することで、記録紙や中間記録体に対してトナー像を直接形成する方式である。特開2002−307737号公報に記載の画像形成装置などに採用されている。像担持体たる中間記録体から記録紙にトナー像を転写するための転写ニップにおいては、本発明の適用が可能である。
【0132】
次に、第2実施形態に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係るプリンタの構成は、第1実施形態や各変形例と同様である。
図30は、第2実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、ニップ形成部材として、中間転写ベルトの代わりに、無端状の紙搬送ベルト121を各色の感光体2Y,M,C,Bkに当接させている点が、第1実施形態に係るプリンタと異なっている。紙搬送ベルト121は、その表面に保持した記録紙を、自らの無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の1次転写ニップに順次通していく。この過程で、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が、記録紙の表面に重ね合わせて転写されていく。
【0133】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kの表面において、レーザー光Lの照射によって形成された静電潜像の電位を検知する電位センサ9Y,M,C,Kが設けられている。これら電位センサ9Y,M,C,Kは、TDK株式会社製の表面電位センサ(EFS−22D)からなり、感光体2Y,M,C,Kの表面に対して約4[mm]の間隙をもって対向するように配設されている。
【0134】
紙搬送ベルト121のループ内側では、Y,M,C,K用の1次転写ローラ25Y,M,C,Kが紙搬送ベルト121の裏面に当接して、紙搬送ベルト121を感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧している。第2実施形態に係るプリンタにおいては、Y,M,C,Kの各色において、感光体2Y,M,C,Kを一様帯電せしめる帯電装置(6Y,M,C,K)と、一様帯電後の表面に光書込を行う図示しない光書込ユニットと、1次転写ローラ(25Y,M,C,K)とにより、感光体の静電潜像と、押圧部材たる1次転写ローラの芯金との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を生じせしめる電位差発生手段が構成されている。
【0135】
なお、紙搬送ベルト121を感光体2Y,M,C,Kに当接させる代わりに、1次転写ローラ25Y,M,C,Kを感光体2Y,M,C,Kに直接当接させて、Y,M,C,K用の1次転写ニップを形成してもよい。この場合、1次転写ローラ25Y,M,C,Kをニップ形成部材として機能させることになる。
【0136】
1次転写バイアス電源81Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像と、1次転写ローラ25Y,M,C,Kの芯金との電位差における戻しピーク値Vrを、紙種に応じて変更するようになっている。
【0137】
本プリンタの制御部は、電源立ち上げ直後、待機時、連続プリント動作の一時中断時など、所定のタイミングで次のような潜像電位測定処理を実施するようになっている。即ち、まず、感光体2Y,M,C,K上にそれぞれ1cm×1cmの大きさのパッチ状静電潜像を形成し、そのパッチ状静電潜像の電位を電位センサ9Y,M,C,Kによって検知する。そして、その検知結果をそれぞれ、RAM等のデータ記憶手段に記憶する。1次転写電源81Y,M,C,Kは、制御部から送られてくるY,M,C,Kのパッチ状静電潜像の電位と、紙種とに基づいて、適切な戻しピーク値Vrを演算する。そして、その演算結果が得られる1次転写バイアス(重畳バイアス)を出力する。これにより、交流成分のピークツウピーク電圧Vpp[V]と、オフセット電圧Voffとについて、「1/4×Vpp>|Voff|」という関係を具備し、且つ1次転写ローラ25Y,M,C,Kの芯金の電位の時間平均値を感光体2Y,M,C,Kの静電潜像の電位の時間平均値よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくする。そして、第1実施形態と同様にして、紙種に応じた適正Vr下限値を満足する重畳バイアスから2次転写バイアスを、2次転写裏面ローラ33に印加する。
【符号の説明】
【0138】
30:転写ユニット(転写装置)
31:中間転写ベルト(像担持体)
33:2次転写裏面ローラ(裏面当接部材)
36:ニップ形成ローラ(ニップ形成部材)
39:2次転写バイアス電源(バイアス印加手段の一部)
50:オペレーションパネル(種類情報取得手段)
60:制御部(バイアス印加手段の一部)
65:凹部深さ測定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0139】
【特許文献1】特開2006−267486号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体のおもて面に当接して前記像担持体との間で転写ニップを形成するニップ形成部材と、
直流成分と交流成分とを重畳した重畳バイアスからなり、前記直流成分が前記像担持体とニップ形成部材との間においてニップ形成部材側の電位を前記像担持体側の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくするものである転写バイアスを印加することにより前記転写ニップ位置で前記像担持体上のトナー像を記録材へと転写する転写バイアス印加手段とを備える転写装置において、
前記記録材の種類情報を取得する種類情報取得手段を設けるとともに、
前記転写バイアスにおけるプラス極性のピーク値と、マイナス極性のピーク値とのうち、前記転写ニップ内で前記像担持体上から記録材に移動したトナーを記録材から前記像担持体に戻す方向の電界を生起せしめる方である戻しピーク値を、前記種類情報取得手段による前記種類情報の取得結果に基づいて変更する処理を実施するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1の転写装置において、
前記種類情報取得手段によって取得された前記種類情報に対応する記録材種類が表面凹凸の大きなものであるほど、前記戻しピーク値を大きくする処理を実施するように、前記バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2の転写装置において、
前記転写バイアスとして、前記交流成分のピークツウピーク電圧Vpp[V]と、前記直流成分の電圧Voff[V]とについて「1/4×Vpp>|Voff|」という関係を具備するもの、を印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3の転写装置において、
前記種類情報取得手段として、記録材の表面凹部の深さを測定する凹部深さ測定手段を設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4の転写装置において、
前記像担持体上のトナー像の電位であるトナー像電位Vtoner[V]を測定する電位測定手段を設けるとともに、
前記ピークツウピーク電圧Vpp[V]と、前記トナー像電位Vtoner[V]と、前記凹部深さ測定手段による測定結果である凹部深さ測定値D[μm]と、前記直流成分の電圧Voff[V]とについて、
「1/2×Vpp−(0.17×D1)×|Vtoner|>|Voff|」という関係を具備する前記転写バイアスを印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項3、4又は5の転写装置において、
前記転写バイアスとして、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける像担持体表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するもの、を印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの転写装置において、
前記像担持体上のトナー像の単位面積あたりにおけるトナー付着量の情報を取得する付着量情報取得手段を設けるとともに、
前記付着量情報取得手段による取得結果に基づいて、前記直流成分の電圧Voffを変化させる処理を実施するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの転写装置において、
前記種類情報取得手段によって取得された前記種類情報に対応する記録材種類に応じて、前記転写バイアスとして、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるモードと、直流成分だけからなるものを発生させるモードとで、モードを切り替える処理を実施するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項8の転写装置において、
直流電圧に交流電圧を重畳した重畳バイアスからなる前記転写バイアスを専用に出力する重畳バイアス電源と、直流電圧だけからなる前記転写バイアスを専用に出力する直流バイアス電源とを、前記転写バイアス印加手段に設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項10】
請求項9の転写装置において、
前記像担持体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記ニップ形成部材、又は前記ニップ形成部材を前記像担持体に向けて押圧する押圧部材、とのうち、一方に対して前記重畳バイアス電源から出力される前記転写バイアスを印加し、且つ、他方に対して前記直流バイアス電源から出力される前記転写バイアスを印加するように、前記転写バイアス印加手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかの転写装置であって、
潜像を担持する潜像担持体に当接して1次転写ニップを形成する中間転写体を具備しており、
前記像担持体が、前記潜像担持体の表面上で現像されたトナー像を前記1次転写ニップで自らのおもて面に1次転写せしめられる前記中間転写体であり、
前記ニップ形成部材が、前記中間転写体のおもて面に当接して2次転写ニップを形成する2次転写ニップ形成部材であり、
且つ、前記転写バイアス印加手段が、前記中間転写体の裏面に当接する裏面当接部材と、前記2次転写ニップ形成部材又は押圧部材とのうち、何れか一方にバイアスを印加して前記電位差を生じせしめるものであることを特徴とする転写装置。
【請求項12】
像担持体の表面上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体の表面上のトナー像を記録部材に転写せしめる転写手段とを備える画像形成装置において、
前記転写手段として、請求項1乃至11の何れかの転写装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−42827(P2012−42827A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185454(P2010−185454)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】