説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】転写材の抵抗に関わらず、像担持体上のトナー像を転写材に対し良好に転写することが可能な転写装置を提供する。
【解決手段】本発明の転写装置は、トナーとキャリアを含む液体現像剤で現像された像を担持する転写ベルト40と、前記転写ベルト40を巻き掛けると共に前記トナーの極性と同極性のバイアスが印加される2次転写バックアップローラー41と、前記転写ベルト40を介して前記2次転写バックアップローラー41と当接して転写材に前記像を転写する導電性の2次転写ローラー61と、前記2次転写ローラー61と電気的に接続された第1の導通部材と、前記転写材の前記像が転写される面と接触する導電性の第1接触部材141と、前記第1接触部材141と電気的に接続された第2の導通部材と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びキャリアからなる液体現像剤による像を転写材に転写する転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを用いた画像形成装置においては、像担持体上に形成されたトナー像を、絶縁性が高い転写材に対して転写しようとすると、像担持体−転写材間で、トナーの移動に伴う電流が十分に流れることがなく、転写効率が悪くなることがある。そこで、絶縁性が高い転写材に対して転写を行う場合には、転写材表面にあらかじめ、比較的導電性が高い導電性材料を塗布するなどして導電層を形成しておき、像担持体とこの導電層との間で、トナー移動による電流を流すようにして、転写効率を向上させる転写技術が知られている。
【0003】
このような技術を用いた転写技術としては、例えば、特許文献1(特開2008−270398号公報)には、図3などに関連して、絶縁基材(記録材)への転写性を確保するために、比抵抗が103Ω・cm以下の導電層を設けておき、この記録材への転写を行う
転写位置より上流側において記録材の導電層表面に電極を接触させ、さらにトナー像が形成される像担持体上で転写位置より上流側においてトナーと同極性の電位を像担持体に付与することで、像担持体と記録材の間に転写電圧差を付与してトナーを記録材上に転写する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2008−270398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写材上の導電層の抵抗が1×103Ω・cmと低い場合には、特許文献1記載の発明
の方式で転写が可能である。しかしながら、導電層の抵抗が高い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□以上の場合)、転写材にトナー像を転写するためには、転写部により大きな
電界が必要となり、特許文献1記載の発明のように、像担持体上表面に電位を付与する方法では充分な電界を確保することはできない。結果として、導電層の抵抗が高い場合には転写材への良好な転写性を得ることができない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記のような問題を解決するために、本発明に係る転写装置は、トナーとキャリアを含む液体現像剤で現像された像を担持する像担持体ベルトと、前記像担持体ベルトを巻き掛けると共に前記トナーの極性と同極性のバイアスが印加されるローラーと、前記像担持体ベルトを介して前記ローラーと当接して転写材に前記像を転写する導電性の転写ローラーと、前記転写ローラーと電気的に接続された第1の導通部材と、前記転写材の前記像が転写される面と接触する導電性の接触部材と、前記接触部材と電気的に接続された第2の導通部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る転写装置は、前記第1の導通部材及び前記第2の導通部材は接地する。
【0007】
また、本発明に係る転写装置は、前記接触部材の体積抵抗率は、前記転写ローラーの体積抵抗率より低い。
【0008】
また、本発明に係る転写装置は、前記像担持体ベルトの体積抵抗率は、1.0×105〜9.9×1010Ω・cmである。
【0009】
また、本発明に係る転写装置は、前記転写材の前記像が転写された面と接触する第2接触部材を有する。
【0010】
また、本発明に係る転写装置は、前記接触部材は、前記転写材を搬送するレジストローラーである。
【0011】
また、本発明に係る画像形成装置は、潜像が形成される潜像担持体と、前記潜像担持体に形成された前記潜像を、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤で現像する現像部と、前記現像部で現像された像が転写される像担持体ベルトと、前記像担持体ベルトを巻き掛けると共に前記液体現像剤のトナーの極性と同極性のバイアスが印加されるローラーと、前記像担持体ベルトを介して前記ローラーと当接して転写材に前記像を転写する導電性の転写ローラーと、前記転写ローラーと電気的に接続された第1の導通部材と、前記転写材の前記像が転写される面と接触する導電性の接触部材と、前記接触部材と電気的に接続された第2の導通部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記転写材の種別を記憶する転写材種別記憶部と、前記第1の導通部材と電気的に接続された第1バイアス印加部と、前記第2の導通部材と電気的に接続された第2のバイアス印加部と、前記転写材種別記憶部が記憶する転写材の種別に応じて、前記第1バイアス印加部で印加する電位及び前記第2バイアス印加部で印加する電位を制御する制御部と、を有する。
【0013】
以上、本発明の転写装置及び画像形成装置によれば、第1バイアス印加部又は第2バイアス印加部の何れかを介した電流が流れることで、転写材の抵抗が低い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□未満の場合)であっても、転写材の抵抗が高い場合(表面抵抗率で1
×104Ω/□以上の場合)であっても、いずれの場合でも、像担持体上のトナー像を転
写材に対して良好に転写することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。
【図5】2次転写ニップにおける電流経路を示す模式図である。
【図6】2次転写ニップにおける電流経路を示す模式図である。
【図7】2次転写ニップにおける電流経路を示す模式図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。
【図10】2次転写ニップにおける抵抗を定義する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示した図である。画像形成装置の中央部に配置された各色の画像形成部に対し、現像装置30Y、30M、30C、30Kは、画像形
成装置の下方部に配置され、転写ベルト40、2次転写部(2次転写ユニット)60、接触定着ユニット90などの構成は画像形成装置の上方部に配置されている。
【0016】
現像装置30Y、30M、30C、30Kは、トナーによる画像を形成するために、感光体10Y、10M、10C、10K、コロナ帯電器11Y、11M、11C、11K、LEDアレイなどの露光ユニット12Y、12M、12C、12K等を備えている。コロナ帯電器11Y、11M、11C、11Kにより、感光体10Y、10M、10C、10Kを一様に帯電させ、露光ユニット12Y、12M、12C、12Kにより、入力された画像信号に基づいて露光を行い、帯電された感光体10Y、10M、10C、10K上に静電潜像を形成する。
【0017】
現像装置30Y、30M、30C、30Kは、概略、現像ローラー20Y、20M、20C、20K、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)からなる各色の液体現像剤を貯蔵する現像剤容器(リザーバ)31Y、31M、31C、31K、これら各色の液体現像剤を現像剤容器31Y、31M、31C、31Kから現像ローラー20Y、20M、20C、20Kに塗布する塗布ローラーであるアニロックスローラー32Y、32M、32C、32K等を備え、各色の液体現像剤により感光体10Y、10M、10C、10K上に形成された静電潜像を現像する。
【0018】
転写ベルト40は、エンドレスのベルトであり、2次転写バックアップローラー41とテンションローラー42に張架され、1次転写部50Y、50M、50C、50Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながら2次転写バックアップローラー41により回転駆動される。1次転写部50Y、50M、50C、50Kは、感光体10Y、10M、10C、10Kと転写ベルト40を挟んで1次転写ローラー51Y、51M、51C、51Kが対向配置され、感光体10Y、10M、10C、10Kとの当接位置を転写位置として、現像された感光体10Y、10M、10C、10K上の各色のトナー像を転写ベルト40上に順次重ねて転写し、フルカラーのトナー像を形成する。
【0019】
2次転写ユニット60(転写装置)は、2次転写ローラー61が転写ベルト40を挟んで2次転写バックアップローラー41と対向配置され、さらに2次転写ローラークリーニングブレード62からなるクリーニング装置が配置される。そして、2次転写ローラー61を配置した転写位置において、転写ベルト40上に形成された単色のトナー像やフルカラーのトナー像を転写材搬送経路Lにて搬送される用紙、フィルム、布等の転写材に転写する。なお、2次転写バックアップローラー41は不図示の駆動源により回転駆動され、転写ベルト40を駆動するようになっている。また、この2次転写バックアップローラー41は、特許請求の範囲において、単に「ローラー」として表現される。
【0020】
経路転写材搬送経路Lの下流には、非接触定着ユニット300(予備定着手段)が配列されている。転写材は、非接触定着ユニット300における予備定着を経て、接触定着ユニット90に搬送されるようになっており、接触定着ユニット90では、用紙等の転写材上に転写された単色のトナー像やフルカラーのトナー像を用紙等の転写材に融着させ定着させる。
【0021】
なお、非接触定着ユニット300は、赤外線ヒーターを少なくとも1本以上設けて非接触加熱部を構成し、転写材Sが接触定着部(接触定着ユニット90)に至る前にトナー像および転写材Sをプレ加熱して最終的な定着性能を向上させる。赤外線ヒーターは本実施形態では波長が2〜3μmである中波長赤外線ヒーターを使用している。
【0022】
テンションローラー42は、2次転写バックアップローラー41などと共に転写ベルト40を張架しており、転写ベルト40のテンションローラー42に張架されている箇所で
、転写ベルトクリーニングブレード49からなるクリーニング装置が当接・配置され、転写ベルト40上の残りトナー、キャリアをクリーニングするようになっている。
【0023】
画像形成装置に対する転写材の供給は給紙装置(不図示)によって行われる。このような給紙装置にセットされた転写材は、所定のタイミングにて一枚ごとに転写材搬送経路Lに送り出されるようになっている。転写材搬送経路Lでは、レジストローラー101、101’によって転写材を2次転写位置まで搬送し、転写ベルト40上に形成された単色のトナー像やフルカラーのトナー像を転写材に転写する。2次転写された転写材は、上記のように、図示されていない転写材搬送手段によって、非接触定着ユニット300を経て接触定着ユニット90に搬送される。また、転写材搬送手段で搬送される間、転写材上のトナー像は非接触定着ユニット300によって非接触予備定着を受ける。
【0024】
接触定着ユニット90は、加熱ローラー91と、この加熱ローラー91側に所定の圧力で付勢された加圧ローラー92とから構成されており、これらのニップ間に転写材を挿通させ、転写材上に転写された単色のトナー像やフルカラーのトナー像を用紙等の転写材に融着し定着させる。
【0025】
接触定着ユニット90はSiゴムなどによる弾性層が設けられた加熱ローラー91・加圧ローラー92により構成される。加圧ローラー92と加熱ローラー91は荷重10〜80Kgfで押圧圧接されている。
【0026】
ここで、現像装置について説明するが、各色の画像形成部及び現像装置の構成は同様であるので、以下、イエロー(Y)の画像形成部及び現像装置に基づいて説明する。
【0027】
画像形成部は、感光体10Yの外周の回転方向に沿って、感光体クリーニングブレード18Y、コロナ帯電器11Y、露光ユニット12Y、現像装置30Yの現像ローラー20Y、第1感光体スクイーズローラー13Y、第2感光体スクイーズローラー13Y’が配置されている。
【0028】
感光体10Yと当接している感光体クリーニングブレード18Yは、感光体10Y上の転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングする。
【0029】
現像装置30Yにおける現像ローラー20Yの外周には、クリーニングブレード21Y、アニロックスローラー32Y、コンパクションコロナ発生器22Yが配置されている。アニロックスローラー32Yには、現像ローラー20Yへ供給する液体現像剤の量を調整する規制ブレード33Yが当接している。液体現像剤容器31Yの中にはオーガ34Yが収容されている。また、感光体10Yと対向する位置には、転写ベルト40を挟むようにして、1次転写部の1次転写ローラー51Yが配置されている。
【0030】
感光体10Yは、外周面にアモルファスシリコン感光体などの感光層が形成された円筒状の部材からなる感光体ドラムであり、時計回りの方向に回転する。
【0031】
コロナ帯電器11Yは、感光体10Yと現像ローラー20Yとのニップ部より感光体10Yの回転方向の上流側に配置され、図示しない電源装置から電圧が印加され、感光体10Yをコロナ帯電させる。露光ユニット12Yは、コロナ帯電器11Yより感光体10Yの回転方向の下流側において、コロナ帯電器11Yによって帯電された感光体10Y上に光を照射し、感光体10Y上に潜像を形成する。なお、画像形成プロセスの始めから終わりまでで、より前段に配置されるローラーなどの構成は、後段に配置されるローラーなどの構成より上流にあるものと定義する。
【0032】
現像装置30Yは、コンパクション作用を施すコンパクションコロナ発生器22Y、キャリア内にトナーを概略重量比20%程度に分散した状態の液体現像剤を貯蔵する現像剤容器31Yを有する。
【0033】
また現像装置30Yは、前記の液体現像剤を担持する現像ローラー20Y、液体現像剤を現像ローラー20Yに塗布するための塗布ローラーであるアニロックスローラー32Yと、現像ローラー20Yに塗布する液体現像剤量を規制する規制ブレード33Yと、液体現像剤を攪拌、搬送しつつアニロックローラー32Yに供給するオーガ34Y、現像ローラー20Yに担持された液体現像剤をコンパクション状態にするコンパクションコロナ発生器22Y、現像ローラー20Yのクリーニングを行う現像ローラークリーニングブレード21Yを有する。
【0034】
現像剤容器31Yに収容されている液体現像剤について説明する。本発明に用いられる液体現像剤は、少なくともキャリアオイル・トナー樹脂粒子・分散剤から構成されている。
【0035】
キャリアオイルは、低揮発性でかつトナー樹脂粒子の電気泳動性を確保するために誘電率3以下の電気的絶縁性が高い溶媒を用いる。例えば炭化水素系(流動パラフィン)、シリコーンオイル、動植物油、鉱物油などを用いることができるが、本実施形態では電気絶縁性に優れているジメチルシリコンオイルを用いた。その粘度は50csである。
【0036】
トナー樹脂粒子は、少なくとも着色剤(顔料)とバインダー樹脂を含むものである。バインダー樹脂としてはポリエステル樹脂やエポキシ樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン共重合体、ロジン変性フェノール樹脂などを用いることが可能であるが、本実施例では帯電安定性に優れるエポキシ樹脂を用いた。ベースとなるこの樹脂に対して各色顔料が15wt%程度の割合で分散されている。トナー樹脂粒子の平均粒子径は一般的に0.5〜5μmであるが、本実施形態で用いたトナー樹脂粒子の平均粒子径は2μmである。
【0037】
トナー樹脂粒子はキャリアオイルにより所望の濃度になるまで希釈・分散処理される。本実施形態では分散剤としてアミン官能基を有するポリシロキサン Finish WR1101を用いた。分散剤によりキャリアオイル中に均一分散されたトナー樹脂粒子の濃度は一般的にキャリアオイルとの重量比率で15〜35wt%にまで希釈される。本実施形態では25wt%とした。また必要に応じてキャリアオイル中に帯電制御剤が添加されることがあるが、本実施形態では帯電制御剤は使用していない。
【0038】
上記のようにして構成された液体現像剤中のトナー樹脂粒子は正電荷を帯びており、液体電子写真プロセス中においては、電位の高い構成部材から電位の低い構成部材に移動することとなる。
【0039】
アニロックスローラー32Yは、現像ローラー20Yに対して液体現像剤を供給し、塗布する塗布ローラーとして機能するものである。このアニロックスローラー32Yは、円筒状の部材であり、表面に現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に螺旋状に彫刻された溝による凹凸面が形成されたローラーである。このアニロックスローラー32Yにより、現像剤容器31Yから現像ローラー20Yへと液体現像剤が供給される。装置動作時においては、図1に示すように、オーガ34Yが反時計回り回転し、アニロックローラー32Yに液体現像剤を供給し、アニロックローラー32Yは反時計回りに回転して、現像ローラー20Yに液体現像剤を塗布する。
【0040】
規制ブレード33Yは、厚さ200μm程度の金属ブレードであり、アニロックスロー
ラー32Yの表面に当接し、アニロックスローラー32Yによって担持搬送されてきた液体現像剤の膜厚、量を規制し、現像ローラー20Yに供給する液体現像剤の量を調整する。
【0041】
現像ローラークリーニングブレード21Yは、現像ローラー20Yの表面に当接するゴム等で構成され、現像ローラー20Yが感光体10Yと当接する現像ニップ部より現像ローラー20Yの回転方向の下流側に配置されて、現像ローラー20Yに残存する液体現像剤を掻き落として除去するものである。
【0042】
コンパクションコロナ発生器22Yは、現像ローラー20Y表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、コンパクションコロナ発生器22Yによって、コンパクション部位でコンパクションコロナ発生器22Y側から現像ローラー20Yに向かって電界が印加される。なお、このコンパクションのための電界印加手段は、図1に示すコロナ放電器のコロナ放電に代えて、コンパクションローラーなどを用いても良い。
【0043】
現像ローラー20Yに担持されてコンパクションされた現像剤は、現像ローラー20Yが感光体10Yに当接する現像ニップ部において、所定の電界印加によって、感光体10Yの潜像に対応して現像される。
【0044】
現像残りの現像剤は、現像ローラークリーニングブレード21Yによって掻き落として除去され現像剤容器31Y内の回収部に滴下して再利用される。尚、このようにして再利用されるキャリア及びトナーは混色状態ではない。
【0045】
1次転写の上流側に配置される感光体スクイーズ装置は、感光体10Yに対向して現像ローラー20Yの下流側に配置して感光体10Yに現像されたトナー像の余剰キャリアを回収するものである。この感光体スクイーズ装置は、感光体10Yに摺接して回転する弾性ローラー部材から成る第1感光体スクイーズローラー13Y、第2感光体スクイーズローラー13Y’とから構成され、感光体10Y上に現像されたトナー像から余剰なキャリア及び本来不要なカブリトナーを回収し、顕像(トナー像)内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。なお、感光体スクイーズローラー13Y、13Y’には、所定のバイアス電圧が印加されている。
【0046】
上記の第1感光体スクイーズローラー13Y、第2感光体スクイーズローラー13Y’からなるスクイーズ装置を経た感光体10Y表面は、1次転写部50Yに進入する。
【0047】
1次転写部50Yでは、感光体10Yに現像された現像剤像を1次転写ローラー51Yにより転写ベルト40へ転写する。この1次転写部においては、1次転写バックアップローラー51に印加される転写バイアスの作用によって、感光体10上のトナー像は転写ベルト40側に転写される。ここで、感光体10Yと転写ベルト40は等速度で移動する構成であり、回転及び移動の駆動負荷を軽減するとともに、感光体10Yの顕像トナー像への外乱作用を抑制している。
【0048】
上記現像装置30Yの現像プロセスと同様のプロセスによって、現像装置30M、30C、30Kにおいても、それぞれの感光体10M、10C、10K上にマゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像が各々形成される。そして、転写ベルト40はイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)各色の1次転写部50のニップを通過し、各色の感光体上の現像剤(現像像)が転写され、色重ねされて2次転写ユニット60(転写装置)のニップ部に進入する。
【0049】
2次転写ユニット60を経た転写ベルト40は、再び1次転写部50で転写像を受ける
ために周回するが、1次転写部50が実行される上流側において転写ベルト40は、転写ベルトクリーニングブレード49などによってクリーニングが実施される。
【0050】
転写ベルト40は、ポリイミド基層上にポリウレタンの弾性中間層を設け、さらにその上にPFA表層が設けられている三層構造となっている。このような転写ベルト40では、ポリイミド基層側において駆動ローラー41、テンションローラー42で張架され、PFA表層側においてトナー像が転写されるようにして用いられる。このように形成された弾性を有する転写ベルト40は、転写材表面への追従性、応答性がよいために、2次転写時において、特に粒子径が小さいトナー粒子を転写材の凹部に対して送り込み転写させるのに有効である。
【0051】
次に、本発明の実施形態に係る画像形成装置における転写装置である2次転写ユニット60のより詳しい構成について説明する。図2及び図3は共に本発明の実施形態に係る画像形成装置における2次転写を説明する図である。
【0052】
図2(A)は2次転写ユニット60でトナー像の転写を受ける転写材Sの断面を示している。この転写材Sは表面抵抗率が1×104Ω/□以上である。また、図2(B)はそ
のような転写材Sを転写した時の電流経路(a→b→c)を示している。
【0053】
図2で説明する転写においては、転写材Sとして、PPC用紙(例:FujiXerox社J紙・P紙など)やオフセット印刷で用いられる塗工紙(例:王子製紙社ウルトラサテン金藤・OKトップコート紙など)などを想定している。これらPPC用紙や塗工紙転写材の体積抵抗率は1×104〜109Ω・cmである。
【0054】
一方、図3(A)は2次転写ユニット60でトナー像の転写を受ける転写材Sの断面を示しているが、この転写材Sは、元の転写材Sorgとこの元転写材Sorgの表面に形成された導電層Cの2層構造のものであり、この転写材S上の導電層の表面抵抗率は1×105
〜9.9×1010Ω/□である。また、図3(B)はそのような転写材Sを転写した時の電流経路(a→b→c)を示している。
【0055】
ここで、図3(A)に示す転写材Sについて説明する。トナー像を転写しようとする転写Sorgがポリエステルやポリスチレンなどの熱可塑性の透明フィルムや合成紙(例:ユ
ポ製スーパーユポFRB−110など)の場合、これら転写材Sorgの体積抵抗値率は1
×1010〜1013Ω・cmである。これら転写材Sorgを用いて転写を行う場合、2次転
写ローラー61と転写ベルト40の間に転写バイアスを作用させても、その抵抗の高さが原因となり転写材Sorg表面と転写ベルト40の間にトナーを移動させるのに充分な電位
差が発生せず良好な転写性が得られなかった。
【0056】
そこで、上記のような高抵抗の転写材Sorgに対しては転写材Sorgの印字面側表面に導電層Cを設けて、導電層表面にバイアス電位を与えることで良好な転写性を確保することが可能となる。
【0057】
転写材Sorgに形成する導電層Cとしては、例えば、下記の組成を有する材料を、キス
コーターで塗布することにより、膜厚が6umで、表面抵抗率が1.26×106Ω/□
である導電層Cを形成することができる。
アンチモン複酸化物:3.1wt%
重合脂肪酸系ポリエステルアミドブロック共重合体: 0.8wt%
イソプロパノール:12.4wt%
1− ブタノール:80.5wt%
炭酸ガス:3.2wt%
なお、導電層Cを形成するための導電性付与材料としてはその他にポリオレフィン、ポリビロール、ポリアニリン等の有機導電性ポリマーや、酸化スズ、インジウム−スズ酸化物等の無機導電材を含む塗工材料を使用することができる。
【0058】
また、導電層Cを形成する際の塗工方法はその他に、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、スクイズコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等各種公知の塗工方法を塗工材料にあわせて選択することが可能である。
【0059】
また、本実施形態中の転写材Sおよび転写材Sorg上の導電層Cの抵抗率は、高抵抗・
抵抗率計ハイレスタ(三菱化学アナリティック製)により測定した結果である。
【0060】
次に、2次転写ユニット60で各構成に付与されるバイアス電圧について説明する。2次転写ユニット60においては、2次転写バックアップローラー41は、第1バイアス印加部151により第1バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0061】
また、第1接触部材141は転写材Sの表面に導電接触する電気接触子(電極部材)であり、第2バイアス印加部152により第2バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0062】
また、2次転写ローラー61は、第3バイアス印加部153により第3バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0063】
図2及び図3の例では、(第1バイアス電圧)=1000V、(第2バイアス電圧)=−300V、(第3バイアス電圧)=−300Vである。なお、第1バイアス印加部151により印加されるバイアス電圧は、トナーと極性が同極性である。
【0064】
先の第1接触部材141は、転写材表面の導電層Cに接する電極部材である。第1接触部材141として、本実施形態においては、ステンレス製ブラシを用いたが、他にアルミ製・鉄製などの金属ブラシであってもよい。またブラシ構造に限らず金属製ローラーもしくは表面に導電性の弾性層を設けたローラー対によって転写材を担持搬送しつつ電極部材として作用する電極ローラーであってもよい。この第1接触部材141は、転写材上の導電層Cに接している必要があり、転写材幅方向では全域で転写材と接触していることが望ましいが、幅方向端部のみで接触していても良い。
【0065】
なお、第1接触部材141の体積抵抗は、2次転写ローラー61の体積抵抗より低く設定されることが好ましい。これは、2次転写バイアスに基づく電流が、導電層Cの電流路を通ることなく、2次転写ニップ内で転写材Sが存在しない領域(幅方向両端部)を通ることを避けるためである。
【0066】
表面抵抗率が1×104Ω/□以上である転写材S上を利用して転写を行う場合、特許
文献1のように像担持体(転写ベルト40)表面に転写電位を付与する方法では良好な転写性が得られない。これは、転写材の表面抵抗が大きいため、中間転写体上から転写材表面の導電層に流れる電流が小さくなりトナー像を転写材表面に転写するのに必要な電流が確保できないからである。電流を確保するために転写ベルト40表面に与える電位を大きくすることも考えられるが、非接触電位付与手段の電位を上げても電位付与手段と転写ベルト40表面の間で放電が発生してしまい中間転写体上の電位を一定以上に上昇させることはできない。
【0067】
そこで本実施形態では転写ベルト40の内部にあって転写部にてニップを形成する転写材Sの印字面側に配される2次転写バックアップローラー41に転写バイアスを印加する
構成がとられる。また、転写ベルト40表面と転写材S表面の間に電界を発生させるために、転写部にてニップを形成する転写材印字面とは反対側に接する2次転写ローラー61に電流が流れる経路(図2)を設けると同時に、転写材上の導電層Cを経由し、この導電層Cに接する第1接触部材141を通して電流が流れる経路(図3)を設けるようにした。
【0068】
具体的には2次転写バックアップローラー41に+1000Vの転写電位を与え、2次転写ローラー61および第1接触部材141には−300Vの転写電位を与えることで経路を設けた。これにより、転写ベルト40と転写材表面の間には転写ベルト40表面の方が高い電位が発生することになる。
【0069】
つまり、本実施形態においては、転写ニップ内部で転写ベルト40表面と転写材S表面の間に電界を発生させ、トナー像を転写材Sに転写するために必要な電流を確保することができる。したがって、転写材S上の抵抗が高い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□以
上の場合)であっても転写部にてトナー像を転写材Sに転写するために必要な電流を確保することが可能となり、結果としてトナー像の転写材Sへの良好な転写性を得ることが可能となった。
【0070】
ここで、転写材表面もしくは転写材表面の導電層Cの抵抗が、転写材の厚み方向の抵抗より大きい場合は図2に示すように電流は2次転写ローラー61側に主に流れることになる。一方で転写材S表面もしくは転写材S表面の導電層Cの抵抗が、転写材Sの厚み方向の抵抗より小さい場合は図3に示すように電流は転写材表面の導電層Cを経由して第1接触部材141に主に流れることになる。
【0071】
つまり、本実施形態においては、転写材上の表面抵抗および転写材の体積抵抗に応じて、電流は最適な経路で流れていることになり、様々な抵抗の転写材に対して安定的に転写することが可能となる。
【0072】
以上、本発明の転写装置及び画像形成装置によれば、第1バイアス印加部151から、
第2バイアス印加部1152又は第3バイアス印加部153の何れかを介した電流が流れることで、転写材の抵抗が低い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□未満の場合)であっ
ても、転写材の抵抗が高い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□以上の場合)であっても
、いずれの場合でも、像担持体上のトナー像を転写材に対して良好に転写することが可能となるのである。
【0073】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における2次転写を説明する図であり、図4(A)は(第1バイアス電圧)=+300V、(第2バイアス電圧)=−1200V、(第3バイアス電圧)=−1200Vの場合を示しており、図4(B)は(第1バイアス電圧)=+1500V、(第2バイアス電圧)=0V、(第3バイアス電圧)=0Vの場合を示している。
【0074】
図4(A)は、2次転写バックアップローラー41に+300Vの転写電位を、2次転写ローラー61および電極部材に−1200Vの電位を与えた例である。このような転写電圧の印加方法(電圧値)でも転写ニップ部ではトナー像を転写材に転写するために必要な電界を発生させることが可能である。(転写ベルト40と2次転写ローラー/第1接触部材141には1500Vの電位差が確保されているため)しかし、第1接触部材141もしくは2次転写ローラー61により負電荷を帯びた転写材Sはその静電気力により転写ニップ通過後に転写ベルト40もしくは2次転写ローラー61に巻きついてしまう事象が発生した。
【0075】
その一方で図4(B)に示すように2次転写バックアップローラー41に+1500Vの転写電位を、2次転写ローラー61および第1接触部材141に0V(接地電位)を与えたところ、転写材が電荷を帯びることなく、またすでに第1接触部材141よりも上流の工程において帯びていた電荷を第1接触部材141により除去することが可能となったため転写ベルト40や2次転写ローラー61への巻きつきは発生しなくなった。結果として転写材Sの巻きつきジャムを低減することが可能となり、良好な用紙搬送性を確保することができた。
【0076】
次に、本発明に好適な転写ベルト40の体積抵抗について検討する。図5乃至図7は本構成における転写部の断面を転写材の搬送方向から見ている図であり、2次転写ニップにおける電流経路を示す模式図である。
【0077】
つまり図5乃至図7において転写材は紙面に対して手前側(もしくは奥側)に向かって搬送されることになる。転写材より幅の広い転写ベルト40および2次転写ローラー61によって転写材Sは転写部にて担持搬送される。転写ベルト40はカラー画像に対応するため表面に弾性層を設けているため、幅方向で転写材が存在しない端部においては転写ベルト40表面と2次転写ローラー61表面が直接接触していることになる。
【0078】
図5は転写ベルト40の体積抵抗率が1×104Ω・cmであり、転写材Sの体積抵抗
率が1×108Ω・cmである場合、つまり転写ベルト40の抵抗が転写材に対して小さ
い時を表している。転写ベルト40に与えられた電荷は抵抗の大きい転写材Sを避けるように幅方向で転写材が存在しない端部を経由して2次転写ローラー61に移動する。つまり電流は端部に流れることとなり、転写ベルト40表面と転写材表面の間にはトナー像を転写するのに充分な電流が流れない。
【0079】
一方で図6は転写ベルト40の体積抵抗率が1×1012Ω・cmであり、転写材Sの体積抵抗率が1×109Ω・cmである場合、つまり転写ベルト40の抵抗が転写材Sに対
して大きい時を表している。この場合は転写ベルト40の体積抵抗が大きいため端部を含めて電流はほとんど流れないことになる。つまり転写ベルト40表面と転写材表面の間にはトナー像を転写するのに充分な電流が流れない。
【0080】
次に図7は転写ベルト40の体積抵抗率が1×107Ω・cmであり、転写材の体積抵
抗率が1×107Ω・cmである場合、つまり転写ベルト40の抵抗が転写材Sの抵抗と
概ね等しい時を表している。この時、転写材Sが存在しない端部からの経路と、転写材が存在する経路の抵抗値に大きな差が生まれないため、転写ベルト40表面と転写材表面の間にはトナー像を転写させるために必要な電流を確保することが可能となる。
【0081】
つまり、転写ベルト40の抵抗が転写材Sの抵抗に対して小さ過ぎると端部からの流出により転写性を確保できず、転写ベルト40の抵抗が大きいと全域に渡って流れる電流が小さくなるため転写性を確保できなくなる。転写材Sの体積低効率を踏まえると転写ベルト40の体積抵抗率は上記上限と下限の関係から、1×105〜9.9×1010Ω・cm
が望ましい。この転写ベルト40の体積抵抗については、電流が2次転写ローラー61を経由して流れる場合も転写材表面の導電層Cを経由して流れる場合も共通して必要となる特性である。
【0082】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。本発明の画像形成装置構成において、A4サイズやA3・A2・A1サイズなど所定のサイズにカットされた転写材S(枚葉転写材)に画像を形成する場合を考える。
【0083】
図3のように2次転写部の転写材搬送方向上流にのみ転写材表面に接触する第1接触部材141を設けた状態でかつ転写材Sorgの体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上で、導
電層Cが設けられているような場合、転写材Sが第1接触部材141に接触していて同時に転写部に担持されていれば転写材表面の導電層Cを経由して電流が流れるためにトナー像を転写材に転写することは可能である。
【0084】
しかし、転写材Sの搬送が進んで転写材後端が第1接触部材141の位置を通過した後には導電層C表面に電流が流れず、かつ転写材の体積抵抗率の高さから2次転写ローラー61側にも電流が流れないために転写材後端付近はトナー像が転写されることがない。
【0085】
そこで、本実施形態においては、図8に示すように転写部の転写材搬送方向下流にも第2接触部材142を設けた。
【0086】
これにより、転写材後端が上流側の第1接触部材141(前段電極部材)を通過した後でも、下流側の第2接触部材142(後段電極部材)が転写材表面に接触しているため、枚葉転写材であっても転写ベルト40と転写材表面の間には常にトナー像を転写するために必要な電流を確保することが可能となった。
【0087】
ここで、図8では第1接触部材141・第2接触部材142の電極部材として前段・後段ともにブラシ電極を用いているが、いずれか一方が、もしくは両方の電極部材が2本のローラー対で転写材を挟み込んで担持搬送する電極ローラーであっても良い。
【0088】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図9は本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における2次転写部を説明する図である。
【0089】
転写ベルト40上に形成されるトナー像と転写材S上の所望の位置に転写するために、2次転写部の転写材S搬送方向上流側に転写材Sの位置合わせを行う転写材S位置合わせ手段を設ける必要がある。この転写材Sの位置合わせ手段として レジストローラー(ゲートローラー)が広く使用されている。
【0090】
以下、レジストローラー(ゲートローラー)の機能について説明する。画像形成装置においては、印字動作が開始されると給紙部(不図示)にてピックアップされた転写材Sは、回転停止状態にあるレジストローラーにその先端を当てた状態で停止される。これにより転写材Sのスキューを補正する。さらに、転写ベルト40上にトナー像が形成され始めてから予め定めた所定時間後にレジストローラーが駆動を開始することで転写材Sは2次転写部に搬送されて、転写ベルト40上のトナー像が転写材S上の形成されるべき正確な位置に転写されることとなる。もしくはレジストローラーが駆動を開始してから予め定めた所定時間後に転写ベルト40上にトナー像が形成され始めて、転写ベルト40上のトナー像が転写材S上の形成されるべき正確な位置に転写されることとなる。上記2種類の方法については、現像部と転写ベルト40が接触する位置から転写部までの距離と、レジストローラーから転写部までの距離のうちどちらが大きいかによって選択される。
【0091】
これまで、説明した実施形態においては、2次転写部より転写材S搬送方向上流の直前で、第1接触部材141が転写材Sに接触すると、位置合わせされた転写材Sの搬送経路が変化してしまい転写部への突入タイミングがずれる可能性があり、さらにその接触抵抗によって転写材Sに再度スキューが発生する可能性もある。結果として転写ベルト40に形成されたトナー像は転写材S上のトナー像を所望の位置に正確に転写されないことになる。
【0092】
そこで本実施形態では、第1接触部材141と、レジストローラーとを共用化する構成
とした。すなわち、本実施形態においては、第1接触部材141がレジストローラーであることを特徴としている。本実施形態では、図9に示すようにレジストローラーを第1接触部材141として作用させるために、レジストローラーに0V(接地電位)を与えた。
【0093】
これにより、転写材S表面に第1接触部材141を接触させつつ、レジストローラーによって位置合わせが行われた転写材Sが転写部に至るまでの間に、これまで説明した実施形態のように第1接触部材141には接触しない。つまり、良好な転写性を確保しつつ、転写材Sの所定の位置にトナー像を転写することが可能となった。なお、図9ではレジストローラー対のうちトナー像形成面(印字面)側のみに0V(接地電位)を付与しているが、印字面裏側のローラーにも0V(接地電位)を付与してもよい。
【0094】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。トナー像を転写する転写材Sは先に述べた透明フィルムや合成紙の他に、例えばPPC用紙(例:FujiXerox社J紙・P紙など)やオフセット印刷で用いられる塗工紙(例:王子製紙社ウルトラサテン金藤・OKトップコート紙など)などがある。これらPPC用紙や塗工紙転写材Sの体積抵抗率は1×104〜109Ω・cmである。
【0095】
このようにトナー像を転写する転写材Sの体積抵抗は先に述べたフィルムや合成紙も含めると1×104〜1013Ω・cmと広範囲にわたり、図2及び図3に関連して説明した
ように、転写材Sに応じて電流経路は2次転写ローラー側と転写材S表面側の2通りで切り替わることになる。
【0096】
ここで、2次転写部におけるそれぞれの電流経路の抵抗を図10に示すR1〜R6と定義する。
【0097】
転写材Sの種類が(1)例えば、フィルムの場合、その体積抵抗率は1×1012Ω・cm程度であるためR3が非常に大きくなり、この場合電流は導電層Cを設けることによりR1→R5→R6の経路で流れる。転写材Sの種類が(2)PPC用紙の場合、その体積抵抗率は1×106Ω・cmであるため(小さいため)、電流はR1→R2→R3→R4
の経路で流れる。
【0098】
また、第1接触部材141と2次転写ニップ部との間の放電を避けるために、第1接触部材141と2次転写ニップ部とは、最低でも30mm以上離す必要がある。抵抗R5の大きさはその距離に比例するため、この距離の影響でR5は必然的に大きい値になってしまう。
【0099】
ここで、(1)の場合と(2)の場合、ともに2次転写バックアップローラー41に+2000Vのバイアス電圧を、2次転写ローラー61および第1接触部材141に0V(接地電位)を与えると、(1)の場合はR5の抵抗の大きさから30μAの電流しか発生しないが、(2)の場合はR3が比較的小さい抵抗であるため、150μAの電流が発生した。転写材Sにトナー像を転写するために最適な電流値は50〜100μA程度であるため、(1)の場合は電流が小さく転写性が確保できず、(2)の場合は電流が大きいため転写部にて放電が発生して画像欠陥が生じた。
【0100】
このように転写材Sの種類に応じてその電流経路が決定されるが、その際に印加する転写バイアスは経路および転写材S抵抗に応じて変化させることが望ましい。そこで、本実施形態では、図1に示すようにレジストローラー101、101’より上流側に転写材の判別手段を設けた。
【0101】
ここで転写材の判別手段として転写材Sの表面抵抗を測定する表面抵抗測定手段を設け
た。表面抵抗測定手段は、体積抵抗率が1×106Ω・cmで厚さ3mmの導電弾性層を
有する直径φ20mmの2本のローラー対を互いに圧接させ、このローラー対を転写材S搬送方向に2対配置(第1ローラー対111、第2ローラー対112)することで構成される。これらローラー対のうち転写材S印字面側のローラー間に電位差を設け、さらに両ローラー対によって転写材Sが担持搬送された時に印字面側の2本のローラー間に流れる電流を、電流測定部113によって測定し、転写材Sの表面抵抗値を測定する。
【0102】
また、転写材の判別手段として、転写材Sの体積抵抗を測定する体積抵抗測定手段を設けてもよい。体積抵抗測定手段は、体積抵抗率が1×106Ω・cmで厚さ3mmの導電弾性層を有する直径φ20mmの2本のローラーを互いに圧接させることにより構成される。これら2本のローラー間に電位差を設け、さらにローラー対によって転写材Sが担持搬送された時に流れる電流によって転写材Sの体積抵抗値を測定する。
【0103】
この転写材の判別手段により転写材Sの表面抵抗もしくは体積抵抗を測定することにより、その転写材Sが転写される際に発生する電流経路を予測し、それに応じて転写バイアスを印加する。
【0104】
より具体的に説明すると、電流測定部113で測定された測定値は、コントローラー130に入力される。このようなコントローラー130としては、CPUやRAM、ROM等を備える汎用の情報処理装置を用いることができる。コントローラー130は、入力された所定情報に基づいて所定ブロックへの命令を出力する動作を前記CPUに実行させるプログラムを予め前記ROMに記憶させてある。
【0105】
また、コントローラー130は、第1バイアス印加部151によって印加する第1電位、第2バイアス印加部152によって印加する第2電位、及び第3バイアス印加部153によって印加する第3電位をそれぞれ制御することができるようになっている。前記ROMには、電流測定部113で測定された測定値に対応する転写材の種別を記憶すると共に、当該転写材種別に応じた第1電位、第2電位、及び第3電位を記憶するテーブルを有しており、前記CPUはこのテーブルに基づいて、第1バイアス印加部151及び第2バイアス印加部152を制御するようになっている。
【0106】
図10に示す例では(1)のように転写材Sの体積抵抗が大きいと判断された場合には、電流経路は転写材S表面の経路となるため、転写バイアスを大きく(2500V)することで最適な電流が得られた。また(2)のように転写材Sの体積抵抗が小さいと判断された場合には、電流経路は2次転写ローラーの経路となるため、転写バイアスを小さく(1200V)することで最適な電流が得られた。結果として、良好な転写性を確保しつつ、画像欠陥のない良好な画質が得られた。
【0107】
以上、本発明の転写装置及び画像形成装置によれば、第1バイアス印加部から、第2バイアス印加部又は第3バイアス印加部の何れかを介した電流が流れることで、転写材の抵抗が低い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□未満の場合)であっても、転写材の抵抗が
高い場合(表面抵抗率で1×104Ω/□以上の場合)であっても、いずれの場合でも、
像担持体上のトナー像を転写材に対して良好に転写することが可能となる。
【0108】
また、本発明の転写装置及び画像形成装置においては、2次転写ローラー61および第1接触部材141に0V(接地電位)を与えたことにより、転写材が電荷を帯びることなく、また第1接触部材141より上流の工程にて転写材が帯びていた電荷を除去することが可能となり、転写ベルト40もしくは2次転写ローラー61への転写材の巻きつきを低減することができた。結果として、良好な用紙搬送性を確保することができた。
【0109】
転写ベルト40の体積抵抗率を1×105〜9.9×1010Ω・cmとすることで、2
次転写部における幅方向で転写材が存在しない端部からの電荷流出を防ぎつつ、トナー像を転写材に転写するために必要な電流を転写ベルト40表面と転写材表面の間に流すことが可能となる。結果として、トナー像の転写材への良好な転写性を得ることが可能となった。
【0110】
また、本発明の転写装置及び画像形成装置においては、2次転写部の転写材搬送方向下流側にも第2接触部材142を設けることで、転写材がカットされた形態である枚葉転写材であっても常に転写ベルト40表面と転写材表面の間にトナー像を転写するために必要な電流を確保することができた。結果として、枚葉転写材に対してより広範囲にわたってトナー像の転写材への良好な転写性を得ることが可能となった。
【0111】
また、本発明の転写装置及び画像形成装置においては、2次転写部の転写材搬送方向上流に位置するレジストローラーを第1接触部材141として使用することで、転写材上でのトナー像位置ズレを防止しつつ、良好な転写性を得ることが可能となった。
【0112】
また、本発明の転写装置及び画像形成装置においては、転写材判別手段を設け、その結果に応じて最適な転写バイアスを印加することで、転写材にトナー像を転写する最適な電流を確保することが可能となった。結果として、良好な転写性を確保しつつ、画像欠陥のない良好な画質が得られた。
【符号の説明】
【0113】
10Y、10M、10C、10K・・・感光体、11Y、11M、11C、11K・・・コロナ帯電器、12Y、12M、12C、12K・・・露光ユニット、13Y、13M、13C、13K・・・第1感光体スクイーズローラー、13Y’、13M’、13C’、13K’・・・第2感光体スクイーズローラー、14Y、14Y’、14M、14M’、14C、14C’、14K、14K’、・・・感光体スクイーズローラークリーニングブレード、18Y、18M、18C、18K・・・感光体クリーニングブレード、20Y、20M、20C、20K・・・現像ローラー、21Y、21M、21C、21K・・・現像ローラークリーニングブレード、22Y、22M、22C、22K・・・コンパクションコロナ発生器、30Y、30M、30C、30K・・・現像装置、31Y、31M、31C、31K・・・現像剤容器、32Y、32M、32C、32K・・・アニロックスローラー、31Y、31M、31C、31K・・・現像剤容器、33Y、33M、33C、33K・・・規制ブレード、34Y、34M、34C、34K・・・オーガ(供給ローラー)、40・・・転写ベルト、41・・・2次転写バックアップローラー、42・・・テンションローラー、45・・・現像剤回収部、46・・・転写ベルトクリーニングローラー、47・・転写ベルトクリーニングローラークリーニングブレード、49・・・転写ベルトクリーニングブレード、50Y、50M、50C、50K・・・1次転写部、51Y、51M、51C、51K・・・1次転写バックアップローラー、60・・・2次転写ユニット、61・・・2次転写ローラー、85・・・2次転写ユニット回収貯留部、90・・・接触定着ユニット、91・・・加熱ローラー、92・・・加圧ローラー、101、101’・・・レジストローラー、110・・・表面抵抗測定部、111・・・第1ローラー対、112・・・第2ローラー対、113・・・電流測定部、130・・・コントローラー、141・・・第1接触部材、142・・・第2接触部材、151・・・第1バイアス印加部、152・・・第2バイアス印加部、153・・・第3バイアス印加部、300・・・非接触定着ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアを含む液体現像剤で現像された像を担持する像担持体ベルトと、
前記像担持体ベルトを巻き掛けると共に前記トナーの極性と同極性のバイアスが印加されるローラーと、
前記像担持体ベルトを介して前記ローラーと当接して転写材に前記像を転写する導電性の転写ローラーと、
前記転写ローラーと電気的に接続された第1の導通部材と、
前記転写材の前記像が転写される面と接触する導電性の接触部材と、
前記接触部材と電気的に接続された第2の導通部材と、
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記第1の導通部材及び前記第2の導通部材は接地する請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記接触部材の体積抵抗率は、前記転写ローラーの体積抵抗率より低い請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記像担持体ベルトの体積抵抗率は、1.0×105〜9.9×1010Ω・cmである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項5】
前記転写材の前記像が転写された面と接触する第2接触部材を有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項6】
前記接触部材は、前記転写材を搬送するレジストローラーである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項7】
潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体に形成された前記潜像を、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤で現像する現像部と、
前記現像部で現像された像が転写される像担持体ベルトと、
前記像担持体ベルトを巻き掛けると共に前記液体現像剤のトナーの極性と同極性のバイアスが印加されるローラーと、
前記像担持体ベルトを介して前記ローラーと当接して転写材に前記像を転写する導電性の転写ローラーと、
前記転写ローラーと電気的に接続された第1の導通部材と、
前記転写材の前記像が転写される面と接触する導電性の接触部材と、
前記接触部材と電気的に接続された第2の導通部材と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記転写材の種別を記憶する転写材種別記憶部と、
前記第1の導通部材と電気的に接続された第1バイアス印加部と、
前記第2の導通部材と電気的に接続された第2のバイアス印加部と、
前記転写材種別記憶部が記憶する転写材の種別に応じて、前記第1バイアス印加部で印加する電位及び前記第2バイアス印加部で印加する電位を制御する制御部と、
を有する請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−145818(P2012−145818A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4913(P2011−4913)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】