説明

転圧ローラ車両

【課題】本発明は、車両本体にノズルが組み付けられたまま、既存のノズル口体構造を流用して、簡便にノズルの噴射向きの調整が行える転圧ローラ車両を提供する。
【解決手段】本発明の転圧ローラ車両は、車両本体1の後方側の端部に設けられたノズル25が、冷却媒体供給部16からの冷却媒体が流入する三角形のスリット31を有するシールプレート30と、シールプレートを挟み込むように両側から離反可能に締結された一対のボディプレート35,36とを備え、スリットの開口で車幅方向に扇形に拡がる噴出口39を形成したノズル口体25から構成し、ノズル口体に、ノズル口体外からの操作で、シールプレートを中心回りにずらす操作片40a,40bを設けた。同構成により、ノズルは、車両本体に組み付けられたまま、一対のボディプレート間の密接を解く作業、操作片でシールプレートをずらすという作業を行うだけで、ノズルの噴射方向(車幅方向)が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧ローラを有した車両本体にて、車両端部から冷却媒体を放射状に噴射しながら作業面を移動し、作業面に転圧を施す転圧ローラ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装工事では、タイヤローラ車両(転圧ローラ車両)で、アスファルト(舗装材)の路面(作業面)に転圧作業を施すことが行われる。タイヤローラ車両の多くは、転圧ローラを車輪として構成された車両本体が用いられ、車両本体の走行により、アスファルト舗装面を締め固める(転圧)。
こうした転圧作業は、アスファルトが高温となっているときに行われることが多い。
【0003】
しかし、転圧ローラとして用いられるタイヤローラは、ゴム製なので、路面からの熱に影響されやすい。しかも、熱の影響でアスファルト(舗装材)が付着しやすい。そこで、タイヤローラ車両では、アスファルトが高温な場合、アスファルト面に冷却媒体として水を散水し、路面温度を低下させながら、転圧作業を進めることが行われている。
具体的には、特許文献1にも開示されているように車両本体に、水(冷却媒体)を貯留するタンクやポンプなどで構成される水供給部(冷却媒体供給部)を装備し、車両本体の後方側の端部に、水供給部からの水を後方へ散水する散水ノズル(ノズル)を設けて、後進する際に散水しながらの後進運転により、転圧作業を行っている。
【0004】
ところで、路面への散水は、車両本体の走行する領域を含む広範囲なアスファルト面で行われるよう、車幅方向に拡がる放射状の噴射形状で行われる。特に散水ノズルの多くは、広範囲な噴射領域が得られるよう、円板形のシールプレートと一対の円板形のボディプレートとを重ね合わせたノズル口体が用いられている。
【0005】
具体的にはノズル口体は、外周部から三角形に切り込んだ三角スリットをもつラバー製のシールプレートと、同シールプレートを挟み込むように配置された一対のボディプレートとを有し、一対のボディプレートを締結部材で締結して、外周部に、スリット開口よりなる扇形に拡がる噴出口を形成した構造が用いられる。このノズル口体は、車両本体の左右後部端に配置され、噴出口を後方に開口させている。そして、ノズル口体の上側のボディプレートに、水供給部から延びる配管部材が連結され、水供給部からシールプレートの三角スリットへ通水が行われると、噴出口から水が車両後方へ放射状に散水される。
【0006】
ところで、散水に際し、歩道には水を噴射させないことなど、多々、車幅方向の噴射向きに関する指示を受けることがある。
これに対応すべく、一般にノズル口体は、締結部材であるボルト部材とナット部材である蝶ナット部材とを用いて、一対のボディプレートを分解可能に締結する構造を採用して、分解作業により内部のシールプレートの向きを変更することで、噴射口の向きが変えられるようにしている。
【0007】
すなわち、散水ノズルの噴射方向の調整(可変)が求められるときは、一旦、車両本体側からシールプレートおよび片側のボディプレートを外すという分解作業を行う。そして、内部のシールプレートの向き(三角スリットの向き)を、求められる方向に回動変位させるという設定の作業を行ってから、再び車両本体側のボディプレートに、シールプレートおよびボディプレートを組み付けし直すことで、三角スリットの開口で形成される噴射口の向き(角度)が要望の方向に調整される。歩道側へ水を噴射させないという要望であれば、噴射口のむき(角度)は、路面中央側へずれた位置となる(角度調整)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−90616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、このような分解式は、散水方向の向き調整(車幅方向)の要請が有る都度、ノズル口体を分解してから、シールプレートの位置を変え、再び戻すという作業が求められる。このため、散水ノズルの噴射方向の向き調整は、かなり面倒な作業となっている。
そこで、ノズル口体の全体構造を、別途、散水の向き調整に適した構造に置き換えることが考えられる。しかし、これだと、かなりコスト的な負担が強いられる。
【0010】
そのため、既存のノズル口体の構造を流用して、散水ノズルの噴射方向(車幅方向)の調整作業が容易に行えるようにした転圧ローラ車両が要望されている。
そこで、本発明の目的は、車両本体にノズルが組み付けられたまま、既存のノズル口体構造を流用して、簡便にノズルの噴射向きの調整が行えるタイヤローラ車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、車両本体の後方側の端部に設けられたノズルは、冷却媒体供給部からの冷却媒体が流入する三角形のスリットを有するシールプレートと、シールプレートを挟み込むように両側から離反可能に締結された一対のボディプレートとを備え、スリットの開口で車幅方向に扇形に拡がる噴出口を形成したノズル口体から構成され、同ノズル口体に、当該ノズル口体外からの操作で、シールプレートを中心回りに回動させる操作片を設け、シールプレートを変位可能な状態にしてから、操作片を握持してシールプレートを中心回りに回動させることで、噴射口の向きが車幅方向沿いに可変される。
同構成により、ノズルは、車両本体に組み付けられたまま、一対のボディプレート間の密接を解く作業、操作片でシールプレートを回動させるという作業を行うだけで、ノズルの噴射方向(車幅方向)が調整される。
【0012】
請求項2の発明は、さらに上記目的に加え、噴射位置の認識しやすさを考慮した簡便な構造ですむよう、ノズル口体には、シールプレートを挟む一方のボディプレートが冷却媒体供給部と配管部材により連結されると共に車両本体側に固定され、他方のボディプレートが一方のボディプレートに同ボディプレートの中心回りに回動可能に締結され、かつ他方のボディプレートにシールプレートが接合され、シールプレートを他方のボディプレートと共に中心回りに回動可能とするものとし、操作片は、他方のボディプレートの外面のうち、スリットの開口近傍に位置する当該ボディプレートの外周側の地点に設けられた、つまみ部から構成するものとした。
【0013】
請求項3の発明は、同じく、ノズル口体には、シールプレートを挟む一方のボディプレートが冷却媒体供給部と配管部材により連結されると共に車両本体側に固定され、他方のボディプレートがシールプレートを介して一方のボディプレートに締結して構成されるものとし、操作片は、スリットの開口近傍のシールプレートの外周部に設けられた、ボディプレートの外周部よりも外方へ突き出たつまみ部から構成するものとした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、ノズルの向き(車幅方向)を変えるときは、車両本体にノズルが組み付いたまま、一対のボディプレートとシートプレートとの密接を解き、操作片でシールプレートを中心回りに回動させるという作業を行うだけで、ノズルの噴射方向(角度)を所望の方向(車幅方向)に変えることができる。
それ故、車両本体にノズルが組み付けられたまま、既存のノズル口体の構造を流用して、簡便にノズルの噴射向き(車幅方向)の調整を行うことができる。しかも、既存のノズル口体の構造を流用しているから、コスト的な負担は抑えられる。
請求項2、3の発明によれば、ノズルは、噴射位置の認識しやすさを考慮した簡便な構造ですむ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るタイヤローラ車両の全体を、車両後部に装備されているノズルと共に示す斜視図。
【図2】同ノズルの全体を拡大して示す斜視図。
【図3】同ノズルの各部の構造を示す分解斜視図。
【図4】同タイヤローラ車両の後進により、散水しながら転圧作業を行っている状況を示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態の要部となるノズルの全体を示す斜視図。
【図6】同散水ノズルの各部の構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図1ないし図4に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、転圧ローラ車両、例えばタイヤローラ車両を後部から見た図を示し、図2は同タイヤローラ車両の後端部に装備された散水ノズル(本願のノズルに相当)の全体を示し、図3は同散水ノズルの各部の構造を示している。
【0017】
タイヤローラ車両を説明すると、図1中1は、車両前後方向に延びた車体(本願の車両本体に相当)である。この車体1は、前部に前側転圧ローラ2を有し、後部に後側転圧ローラ3を有し、中間部に運転デッキ4を有している。車体1の内部には、走行などに供されるエンジン(図示しない)が格納されている。各転圧ローラ2,3は、タイヤローラ車両の車輪を兼ねる。
【0018】
運転デッキ4には、オペレータ(図示しない)が着座する運転席6、着座したオペレータを上方から覆い隠すキャノピ7が設けられている。運転席6の前方には、各種メータ類が配置された計器盤10が設けられている。また例えば計器盤10の近くには、散水スイッチ12が設けられている。運転席6の前方には、前側転圧ローラ2を操舵するステアリングホイール14、アクセルペダル(図示せず)、ブレーキペダル(図示せず)、前後進切換レバー(図示せず)などが設けられている。15は、車体1に設けられた、運転デッキ4へ乗り下りするための昇降ステップを示している。なお、図1中の矢印「F」は車両前方を示し、同じく「R」は車両後方を示している。
【0019】
つまり、タイヤローラ車両2は、作業者による前後進切換操作、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作により、転圧作業が進められるようになっている。
車体1の後部(前後方向)には、冷却媒体供給部となる水供給部16が格納されている。同水供給部16は、散水に必要な水を貯留するタンク17、タンク17内の水を圧送する散水ポンプ18、散水ポンプ18を制御するコントローラ部19などから構成されている。コントローラ部19に散水スイッチ12が接続してある。
【0020】
また車体1の後端部(前後方向)には、左右方向(車幅方向)の複数個所、ここでは左右の2個所の地点に、路面散水用の散水ノズル25(本願のノズルに相当)が設けられている。散水ノズル25は、いずれも車体1の後方側の端部をなす後部壁1aの内側に隠れるように配置されている。これら散水ノズル25は、配管部材26を介して、散水ポンプ18の吐出部に接続されている。つまり、散水スイッチ12を操作すると、コントローラ部19が散水ポンプ18を運転する指令を発し、タンク17内の水が散水に供されるようにしている。
【0021】
散水ノズル25は、いずれも図2に示されるようなノズル口体28から構成されている。これらノズル口体28は、いずれも従来から採用されている積層構造が用いられている。同構造は、広範囲な散水(噴射)領域を確保するために、円板形のシールプレート30と一対の円板形のボディプレート35,36とを重ね合わせて、ノズル口体28を構成したものである。
【0022】
すなわち、同ノズル口体28の構造を説明すると、シールプレート30は、図2および図3(b)に示されるように外周部から三角形に切り込んだ三角スリット31(以下、単にスリット31という)をもつラバー製の円板形部材が用いられる。一対のボディプレート35,36は、図2および図3(b)に示されるように、シールプレート30とは別体な金属製の円板形部材が用いられる。一対のボディプレート35,36は、図2に示されるようにシールプレート30の両側に同シールプレート30を挟み込むように配置される。同ノズル口体28は、車体1の後端部に配置される。このうち上側に配置されたボディプレート35(本願の一方のボディプレートに相当)の中央部は、散水ポンプ18の吐出部から延びる配管部材26と連結され、散水ポンプ18で圧送される水がスリット31内に流れ込む構造にしてある。
【0023】
さらに述べれば、上側のボディプレート35(本願の一方のボディプレートに相当)と下側のボディプレート36(本願の他方のボディプレートに相当)の相互は締結構造で締結されている。具体的には、図2に示されるように例えば上側のボディプレート35の外周部に、複数、所定の間隔でボルト部材37(締結部材)の取着(例えば溶接による)し、同ボルト部材37の先端部を、シールプレート30を通じ、下側のボディプレート36に貫通させ、貫通したボルト部分に蝶ナット部材38(ナット部材)をねじ込んである。つまり、上下のボディプレート35,36を分解可能に締結させて、シールプレート30を挟み付けている。
【0024】
同構造にて、ノズル口体28の全体を構成しつつ、ノズル口体28の外周部に、スリット開口がなす噴出口、詳しくは扇形に拡がる噴出口39を形成している。噴射口39は、車体後方に開口していて、水供給部19から、配管部材26を通じて、スリット31へ通水が行われると、水が噴出口39から車両後方へ扇形に散水される構造としている。
【0025】
この分解式のノズル口体28そのままだと、散水ノズル25の噴射方向(車幅方向)の調整が求められたときは、上側(固定側)のボディプレート35から、シールプレート30、下側(離脱側)のボディプレート36を外すというノズル口体28の分解作業を行った後、シールプレート30の向き(スリット31の向き)をずらす作業を行い、再び上側のボディプレート35に、向きを変えたシールプレート30、ボディプレート36を組み付けし直すという面倒な作業が強いられる。
そこで、この面倒な作業を改善するよう、ノズル口体28には、図2および図3に示されるように既存の部品を流用して、散水ノズル25の噴射向き(車幅方向)の調整作業が容易に行えるようにした手段が講じられている。
【0026】
同手段は、ノズル口体28に、ノズル口体28外からの操作で、シールプレート30を中心回りに回動させる操作片40を設け、離反可能に締結された一対のボディプレート35,36を活用して、ノズル口体28を分解せずに、散水ノズル25の噴射方向の向き(車幅方向)が変えられるようにしたものである。
同構造には、例えば、シールプレート30および下側のボディプレート36の双方を、ボディプレート中心回りに変位可能な構造とし、下側のボディプレート36の外面に、上記操作片40をなすつまみ部40aを設けた構造が用いられている。
【0027】
具体的には、図3(b)に示されるように締結ボルト部材37が挿通するシールプレート30のボルト孔30aと、同じく下側(離脱側)のボディプレート36のボルト孔36aを、いずれもプレート中心部を中心とした弧を描く長孔で形成する。これら長孔を有したシールプレート30、下側のボディプレート36を、図3(a)に示されるようにボルト孔30a,36a同士が合わさるように、接合、例えば接着する。そして、一体となったシールプレート30、下側のボディプレート36は、上記ボルト部材37、蝶ナット部材38で締結してあり(図2)、蝶ナット部材38を緩めると、シールプレート30のボディプレート35(上側)に対する密着が解かれ、シールプレート30およびボディプレート36(下側)の双方が、上側のボディプレート35に対して中心回りに可変可能となる。
【0028】
つまみ部40aは、図3(a),(b)に示されるように下側のボディプレート36(他方のボディプレート)の外面のうち、スリット31の開口近傍となる地点、ここではスリット31の開口端が配置される、ボディプレート36側面の外周側の地点に設けられている。このつまみ部40aは、同ボディプレート36の側面から例えば棒状に突き出た部材から構成され、作業者が握持できる構造にしてある。
つまり、蝶ナット部材38の緩めにより、ボディプレート35,36間の締結を緩めて、シールプレート30を下側のボディプレート36と共に変位可能な状態にした後、つまみ部40aを操作して、シールプレート30を中心回りに回動させると、噴射口28の向き(車幅方向の角度)が変えられる構造にしている。
【0029】
こうしたタイヤローラ車両によると、図4に示されるように高温となっているアスファルト舗装面S(作業面)を転圧するときは、散水スイッチ12をオンし、ステアリング操作やアクセル操作を駆使して、アスファルト舗装面Sを後進する。すると、散水ノズル25の噴射口39からは、水が扇形の噴射形状で路面へ噴射される(散水)。続いて、水で冷やされたアスファルトの路面は、各転圧ローラ2,3で転圧され、アスファルト舗装面Sを締め固める。
このとき、図1中の二点鎖線α1のように進行方向前方へ均等に水を散水するのではなく(通常)、路面の状況から、例えば歩道Hに水は噴射させない散水を行うとの指示を受けたとする。
【0030】
この指示を受けて、歩道側の散水ノズル25は、噴射向き(車幅方向)を変える。このときには、作業者は、蝶ナット部材39を図2中の矢印a方向へ回し、各蝶ナット部材39を緩める。これで、下側のボディプレート36を下げ、シールプレート30を上側のボディプレート35から、若干、離し、シールプレート30を周方向に変位できる状態にする。この後、作業者は、下側のボディプレート36から突き出ているつまみ部40aを握持する。ついで、図2中の矢印b方向へ操作し、下側のボディプレート36を回動変位させる。このときシールプレート30は、ボディプレート36と一体なので、ボディプレート36と共に中心回りに変位する。
【0031】
ここで、つまみ部40aが有る地点は、噴射口29の位置を示しているから、同つまみ部40aを指標として、つまみ部40aを当初位置から所望の路面中央側へ向う角度にずらす。すると、噴射口29の散水領域は、図1および図4中に示す当初のα1から路面中央側、例えば図4中のα2の地点にずれる。つまり、散水領域は車幅方向片側にずれる。
【0032】
その後、蝶ナット部材39を締め付け直すと、散水ノズル25の噴射方向は、路面中央側(α2)に調整される。この散水ノズル25の噴射方向の調整により、歩道Hには水が噴射されない角度の設定が講じられる。当初位置に戻すときは、蝶ナット部材38を緩め、図2中の矢印c方向(矢印bと反対方向)へボディプレート36(含むシールプレート30)を回動変位させて、当初位置に戻せばよい。
反対に歩道Hへ水を噴射したい場合は、逆に散水ノズル25の噴射向き(角度)を歩道H側へずらせばよい。噴射向きの可変は、歩道H側の散水ノズル25だけでなく、路面中央側の散水ノズル25でも行える。
【0033】
このように散水ノズル25の噴射向き(車幅方向の噴射角度)は、面倒なノズル口体28の分解を伴う作業ではなく、ボディプレート35とシートプレート30との密接を解き、つまみ部40a(操作片40)の操作で、シールプレート30を中心回りに回動させるという作業を行うだけで、所望の方向(車幅方向)に変えることができる。
それ故、車体1に散水ノズル25が組み付けられたまま、既存のノズル口体28の構造を流用して、簡便に散水ノズル25の噴射向き(車幅方向の噴射角度)を調整することができる。しかも、噴射向きの調整は、既存のノズル口体28の構造を流用しているから、コスト的な負担を抑えることができ、安価ですむ。
【0034】
特に噴射向きを調整する構造は、下側のボディプレート36(他方のボディプレート)にシールプレート30を接合して、シールプレート30をボディプレート36と共に中心回りに変位可能にし、ボディプレート36の、スリット29の開口近傍となる外面部分につまみ部40aを設けた構造なので、簡便である。しかも、つまみ部40自身が噴射位置(噴射角度)を示すので、噴射位置(噴射角度)が認識しやすく、容易に散水ノズル25の噴射向き(角度)の調整ができる。
【0035】
図5および図6は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例で、シールプレートと下側のボディプレートとを接合せずにすむ簡便な構造で、散水ノズル25の噴射向きの調整が行えるようにしたものである。
【0036】
具体的には、シールプレート30は、長孔で形成されたボルト孔30aをもつ構造とする。下側のボディプレート36は、当初の円形な孔で形成されたボルト孔36aをもち、第1の実施形態と同様、既存のボルト部材37、蝶ナット部材38(いずれも締結部材)で、上側のボディプレート35と離反可能に締結する構造とする。またシールプレート30の外周面のうち、スリット31の開口近傍、例えばスリット31の開口をなす各角部の外面部分には、操作片40をなす一対のつまみ部45bが設けられている(図5、図6)。つまみ部45bは、いずれもスリット31の各辺にならって外方へ一体に突き出た帯板状の突出部で形成され、第1の実施形態と同様、噴射位置を示す指標としての役割りも果たしている。つまみ部45bは、いずれもボディプレート35,36の外周面(外周部)よりも外方へ突き出ていて、ノズル口体28外での握持を容易にして、シールプレート30の向きを変える作業をしやすくしている。
【0037】
このような噴射位置の認識しやすさを考慮した簡便な調整構造でも、第1の実施形態と同様、ボディプレート35、36とシートプレート30との密接を解き、つまみ部45b(操作片40)で、シールプレート30を中心回りに回動させるという作業を行うだけで、散水ノズル25の噴射向きを所望の方向(車幅方向における噴射角度)に変えることができ、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
但し、図5および図6において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、棒状や帯板状などのつまみ部を用いたが、これに限らず、他の形状のつまみ部、さらには取手部で操作片を形成してもよく、操作片の形状や構造には限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 車体(車両本体)
2,3 前側転圧ローラ,後側転圧ローラ(転圧ローラ)
16 水供給部(冷却媒体供給部)
25 散水ノズル(ノズル)
26 配管部材
28 ノズル口体
30 シールプレート
31 スリット
35,36 ボディプレート
37 ボルト部材
38 蝶ナット部材
39 噴出口
40a,40b つまみ部(操作片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体供給部および転圧ローラを有し、前記転圧ローラで作業面を走行し、当該作業面に転圧を施す車両本体と、前記車両本体の後方側の端部に設けられ、前記冷却媒体供給部から供給される冷却媒体を車両後端部から車幅方向に拡がる放射状に噴射するノズルとを備えた転圧ローラ車両であって、
前記ノズルは、前記冷却媒体供給部からの冷却媒体が流入する三角形のスリットを有するシールプレートと、前記シールプレートを挟み込むように両側から離反可能に締結された一対のボディプレートとを備え、前記スリットの開口で前記車幅方向に扇形に拡がる噴出口を形成したノズル口体から構成され、
前記ノズル口体には、当該ノズル口体外からの操作で、前記シールプレートを中心回りに回動させる操作片が設けられ、
前記噴射口の向きが、前記シールプレートを変位可能な状態にしてから、前記操作片を握持して前記シールプレートを中心回りに回動させることで車幅方向沿いに可変される
ことを特徴とする転圧ローラ車両。
【請求項2】
前記ノズル口体は、前記シールプレートを挟む一方のボディプレートが前記冷却媒体供給部と配管部材により連結されると共に車両本体側に固定され、他方のボディプレートが前記一方のボディプレートに同ボディプレートの中心回りに回動可能に締結され、かつ前記他方のボディプレートに前記シールプレートが接合され、当該シールプレートを前記他方のボディプレートと共に前記中心回りに回動可能にしてなり、
前記操作片は、前記他方のボディプレートの外面のうち、前記スリットの開口近傍に位置する当該ボディプレートの外周側の地点に設けられたつまみ部から構成されることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ車両。
【請求項3】
前記ノズル口体は、前記シールプレートを挟む一方のボディプレートが前記冷却媒体供給部と配管部材により連結されると共に車両本体側に固定され、他方のボディプレートが前記シールプレートを介して前記一方のボディプレートに締結されて構成され、
前記操作片は、前記スリットの開口近傍の前記シールプレートの外周部に設けられた、前記ボディプレートの外周部よりも外方へ突き出たつまみ部から構成されることを特徴とする請求項1に記載の転圧ローラ車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241496(P2012−241496A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115726(P2011−115726)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】