軸シール装置の製造方法及び軸シール装置の生産治具、並びに、軸シール装置を備える回転機械
【課題】シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止する軸シール装置を得る。
【解決手段】回転軸5の周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片20が積層され、これら多数枚の薄板シール片20の径方向外方端20a側が互いに連結されると共に径方向内方端20bが自由端とされた軸シール装置11の製造方法であって、多数枚の薄板シール片20を一方向に積層する積層工程S12と、積層された多数枚の薄板シール片20の外方端20a側を互いに連結してシール片積層体12´を形成する連結工程S13と、シール片積層体12´のうち、薄板シール片20の自由端20a側における幅方向両側端部20c,20dがそれぞれ多数集合してなる二つの小口側面12c,12dの一方12cを外部の平面33bに当接させると共に、他方12dを平滑加工する第一平滑加工工程S14とを有する。
【解決手段】回転軸5の周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片20が積層され、これら多数枚の薄板シール片20の径方向外方端20a側が互いに連結されると共に径方向内方端20bが自由端とされた軸シール装置11の製造方法であって、多数枚の薄板シール片20を一方向に積層する積層工程S12と、積層された多数枚の薄板シール片20の外方端20a側を互いに連結してシール片積層体12´を形成する連結工程S13と、シール片積層体12´のうち、薄板シール片20の自由端20a側における幅方向両側端部20c,20dがそれぞれ多数集合してなる二つの小口側面12c,12dの一方12cを外部の平面33bに当接させると共に、他方12dを平滑加工する第一平滑加工工程S14とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸シール装置の製造方法及び軸シール装置の生産治具、並びに、軸シール装置を備える回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の回転機械において、回転軸に対してシールを施す軸シール機構として下記特許文献1のものがある。
【0003】
図13は、従来の軸シール機構100の概略構成斜視図である。
この軸シール機構100は、ステータ側において回転軸Rを囲繞するハウジング101に収容された軸シール装置102を備えている。
【0004】
軸シール装置102は、回転軸Rの周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片103aが積層されたシール片積層体103と、軸方向の流体高圧側においてシール片積層体103の一部を覆う高圧側サイドシール板104と、軸方向の流体低圧側においてシール片積層体103の一部を覆う低圧側サイドシール板105とを備えている。上記シール片積層体103においては、多数枚の薄板シール片103aの径方向外方端側が互いに連結され、径方向内方端が自由端となっており、外方端側がハウジング101に収容され、各薄板シール片103aがそれぞれ接線方向に傾くようにしてハウジング101から回転軸Rに向けて延出している。
【0005】
このような構成の軸シール機構100は、回転軸Rの停止時には薄板シール片103aの内方端が所定の予圧で回転軸Rに接触するが、回転軸Rの回転時には動圧効果によって薄板シール片103aに浮上力が作用する。この浮上力を利用することにより、薄板シール片103aと回転軸Rとに微小な隙間を形成して作動流体をシールすると共に、回転軸Rと各薄板シール片103aとの磨耗を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3917993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような軸シール機構においては、隣接する二つの薄板シール片毎に形成される微小間隙のガス圧力分布を、高圧側サイドシール板及び低圧側サイドシール板の径方向寸法を調整することで設定している。すなわち、上記微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間の大きさを調整することにより、微小間隙のガス圧力分布を設定している。例えば、高圧側サイドシール板に比べて低圧側サイドシール板を短くすると、微小間隙のガス圧力分布を内方端側から外方端側に向かって次第に小さくなるように設定することができ、上述した動圧効果による浮上力を補助するように圧力を作用させることができる。
【0008】
一方、上記の軸シール機構におけるシール片積層体は、通常、薄板シール片を一方向に積層した後に、各薄板シール片の外方端側を溶接等によって連結し、この後に所定の曲率に曲げ加工がされて軸シール装置に組み付けられている。
【0009】
しかしながら、従来の技術では、シール片積層体の製造過程において一部の薄板シール片に生じる積層ズレや薄板シール片の製作誤差等に起因して、上流側空間や下流側空間の一部に大きさの異なる部分が生じてしまい、この部分近傍の各微小間隙のガス圧力分布と、その他の微小間隙のガス圧力分布とが相違してしまうという問題があった。これにより、局所的に浮上特性が変動して、薄板シール片と回転軸とが接触磨耗したり、シール性が低下したりするという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止することができる軸シール装置の製造方法及び軸シール装置の生産治具、並びに、軸シール装置を備える回転機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る軸シール装置の製造方法は、回転軸の周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片が積層され、これら多数枚の薄板シール片の径方向外方端側が互いに連結されると共に径方向内方端が自由端とされて、相互に隣接する二つの薄板シール片毎に微小間隙が形成された軸シール装置の製造方法であって、前記多数枚の薄板シール片を一方向に積層する積層工程と、前記積層された多数枚の薄板シール片の外方端側を互いに連結してシール片積層体を形成する連結工程と、前記シール片積層体のうち、前記薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部がそれぞれ多数集合してなる二つの小口側面の一方を外部の平面に当接させると共に、他方を平滑加工する第一平滑加工工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、二つの小口側面の一方を外部の平面に当接させると共に他方を平滑加工するので、薄板シール片の積層ズレや製作誤差により他方の小口側面が凸凹となっていても平滑的になる。これにより、隣接する薄板シール片毎に形成された微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間のうちの少なくとも一方において、周方向の各部位が均一的な大きさとなる。従って、各微小間隙におけるガス圧力分布が均一的なものとなって、薄板シール片の浮上特性が局所的に相違してしまうことを抑止することができる。従って、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止することができる。
【0013】
前記第一平滑加工工程は、前記外部の平面から一定の間隔を空けて前記他方の小口側面を平滑加工することを特徴とする。
この構成によれば、他方の小口側面が平滑になるので、微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間のうち少なくとも一方の大きさが周方向に亘って、より均一的になる。従って、各微小間隙におけるガス圧力分布がより均一的なものとなって、薄板シール片の浮上特性が局所的に相違してしまうことを更に抑止することができる。
【0014】
また、前記第一平滑加工工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有することを特徴とする。
この構成によれば、第一平滑加工工程の後にシール片積層体を曲げる曲げ工程を有するので、平滑加工が比較的に容易となる。
【0015】
また、前記連結工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有し、前記第一平滑加工工程は、曲率を有した前記シール片積層体に対して施すことを特徴とする。
この構成によれば、連結工程の後にシール片積層体を曲げるので、曲げ加工によって他方の小口側面に凹凸が生じたとしても、平滑的にすることができる。
【0016】
また、前記連結工程の後に、前記シール片積層体の外方端側の少なくとも一部に嵌合可能なリテーナ部材を装着するリテーナ部材装着工程を有し、前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体に前記リテーナ部材を嵌合させた状態で施すことを特徴とする。
この構成によれば、シール片積層体にリテーナ部材を嵌合させた状態で第一平滑加工工程における平滑加工を施すので、径方向外端側がリテーナ部材で保持されることにより、比較的に容易かつ正確に平滑加工をすることができる。
【0017】
また、前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体のうち、前記多数枚の薄板シール片の内方端が集合してなる小口内方端面を支持した状態で施すことを特徴とする。
この構成によれば、シール片積層体のうち、多数枚の薄板シール片の内方端が集合してなる小口内方端面を支持した状態で施すので、平滑加工によって薄板シール片の内方端側が撓むことを抑止することができ、比較的に容易かつ正確に平滑加工をすることができる。
【0018】
また、前記第一平滑加工工程において前記平面に当接させた一方の小口側面を平滑加工する第二平滑加工工程を有することを特徴とする。
この構成によれば、一方の小口側面を平滑加工する第二平滑加工工程を有するので、一方の小口側面が平滑的になる。これにより、両方の小口側面が平滑的なものとなるので、微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間の両方の大きさが均一的なものとなる。従って、各微小間隙におけるガス圧力分布がより均一的なものとなり、局所的に浮上特性が変動することをさらに抑止することができる。従って、シール性の低下をより確実に抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗をより確実に抑止することができる。
【0019】
また、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、前記多数枚の薄板シール片の外方端側と嵌合する外方端嵌合部と、前記薄板シール片の外方端側が前記外方嵌合部に嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする。
また、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、前記シール片積層体に嵌合した前記リテーナ部材と嵌合するリテーナ部材嵌合部と、該リテーナ部材嵌合部に前記リテーナ部材が嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、薄板シール片の外方端側と嵌合する外方端嵌合部又はリテーナ部材と嵌合するリテーナ部材嵌合部と、薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えるので、薄板シール片の位置決めを迅速かつ正確に行うことができ、シール片積層体に対する平滑加工を迅速かつ正確に行うことができる。
【0020】
また、前記多数枚の薄板シール片の内方端に当接する内方端当接部を備えることを特徴とする。
この構成によれば、薄板シール片の内方端に当接する内方端当接部を備えるので、薄板シール片の位置決めをより迅速かつ正確に行うことができ、積層工程をさらに容易にすることができると共に、シール片積層体に対する平滑加工加工をより迅速かつ正確に行うことができ、第一平滑加工工程をさらに容易にすることができる。
【0021】
また、本発明に係る回転機械は、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法によって製造された軸シール装置を前記回転軸の周囲に備えたことを特徴とする。
この構成によれば、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法によって製造された軸シール装置を備えるので、作動流体に対するシール性を維持させた状態で、かつ、継続的に軸方向のシールがなされる。これにより、メンテナンス性が良好な回転機械を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る軸シール装置の生産方法よれば、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止する軸シール装置を得ることができる。
【0023】
また、本発明に係る軸シール装置の生産治具によれば、軸シール装置の生産方法を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る回転機械によれば、メンテナンス性が良好な回転機械とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るガスタービン1の概略全体構成図である。
【図2】図1におけるI−I線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の概略構成断面図であって、回転軸5の軸線に沿った断面を示している。
【図4】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の分解構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の製造に用いる生産治具30の平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の製造に用いる生産治具30の側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1の製造工程の概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の微小間隙sに形成される作動流体gのガス圧力分布図である。
【図10】本発明の実施形態に係るシールセグメント11における薄板シール片20の胴部22の要部断面図であって、回転軸5の軸方向に交差する胴部22の切断面を示すと共に胴部22に作用する圧力をベクトルで示した図である。
【図11】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1の変形例であるシールセグメントの製造方法F2のフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F2に用いる生産治具50である。
【図13】従来の軸シール機構100の概略構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(ガスタービンの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン(回転機械)1の概略全体構成図であり、図2は、図1におけるI−I線断面図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機(回転機械)2と、この圧縮機2にて圧縮された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3から導入された燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン(回転機械)4とを有しており、圧縮機2のローター2aとタービン4のローター4aとが連結されて回転軸5が構成されている。
【0027】
圧縮機2及びタービン4においては、図1に示すように、圧縮機ケーシング2b及びタービンケーシング4bのそれぞれの内周部において周方向に間隔を空けて複数の静翼が環状に固定された環状静翼群6と、回転軸5の外周部において周方向に間隔を空けて複数の動翼が環状に固定された環状動翼群7とが回転軸5の軸方向に交互に配列されている。
【0028】
このようなガスタービン1においては、高圧側から低圧側に作動流体(圧縮空気又は燃焼ガス)gが軸方向に漏出するのを防止するために、各環状静翼群6の内周部に軸シール機構10が配設されている。
また、圧縮機ケーシング2bが回転軸5を支持する軸受け部2c、及び、タービンケーシング4bが回転軸5を支持する軸受け部4cにおいても、作動流体gが高圧側から低圧側に漏れるのを防止するために軸シール機構10が配設されている。
【0029】
図2に示すように、各軸シール機構10は、円弧状に延びるシールセグメント(軸シール装置)11が回転軸5の周囲に周方向に複数(本実施形態では八つ)環状に配置されることで構成されている。
【0030】
(シールセグメントの構成)
図3は、回転軸5の軸線に沿った断面における軸シール機構10の概略構成断面図であり、図4は、シールセグメント11の分解構成図である。
図3に示すように、各シールセグメント11は、ハウジング(環状静翼群6及び軸受け部2c,4cに相当)9に挿入されている。
【0031】
このシールセグメント11は、図3に示すように、薄板シール片20が多数枚積層されたシール片積層体12と(図2,図8,図12参照)、断面コ字状の保持リング(リテーナ部材)13,14と、背面スペーサ15と、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とから構成されている。
【0032】
シール片積層体12は、薄板状の薄板シール片20が多数枚積層され(図2参照)、これら多数枚の薄板シール片20の径方向外方端20a側が互いに連結されたものである。
薄板シール片20は、図3に示すように、薄い鋼板によって形成された部材であり、回転軸5の接線方向から見てT字状に形成され、その幅方向を回転軸5の軸方向に向けている。この薄板シール片20は、図4に示すように、外方端20a側の頭部21と、頭部21よりも幅寸法及び厚さ寸法が小さく形成されると共に頭部21の径方向内縁のおける軸方向中央から延出する胴部22とを備えている。
このような薄板シール片20は、胴部22が頭部21と鈍角を形成するように傾いて延出しており(図5参照)、図4に示すように、胴部22のうち頭部21との境界部分(径方向外方側)において、切り欠き部20x,20yが形成されている。
【0033】
各薄板シール片20は、それぞれの頭部21の側方突出部21cが溶接されており、相互に連結されている。一方、各薄板シール片20の胴部22は、弾性変形可能であり、各薄板シール片20の内方端20bが自由端となっている。
このような薄板シール片20は、上述したように、頭部21の厚さ寸法が胴部22の厚さ寸法よりも大きいことにより、積層状態すると相互に隣接する二つの薄板シール片20の胴部22毎に微小間隙s(図8,図12参照)が形成されている。
【0034】
このような薄板シール片20が多数枚積層されたシール片積層体12は、各薄板シール片20の胴部22の側端部20cが多数集合してなる小口側面12cが高圧側に向けられ、各薄板シール片20の胴部22の側端部20dが多数集合してなる小口側面12dが低圧側に向けられた状態で、ハウジング9に挿入されている。このシール片積層体12は、回転軸5の停止時においては、各薄板シール片20の内方端20b側が回転軸5に所定の予圧で接触するようになっている。
【0035】
高圧側サイドシール板16は、回転軸5の軸方向から見た場合において扇形状の板状部材であり、図3に示すように、回転軸5の軸方向の高圧側においてシール片積層体12の一部を覆っている。この高圧側サイドシール板16は、図3及び図4に示すように、径方向外方側において幅寸法(回転軸5の軸方向)が大きく形成された段差部16aが薄板シール片20の切り欠き部20xに嵌め込まれた状態で、シール片積層体12と保持リング13とに挟まれている。
【0036】
低圧側サイドシール板17は、回転軸5の軸方向から見た場合において扇形状の板状部材であり、図3に示すように、回転軸5の軸方向の低圧側においてシール片積層体12の一部を覆っている。この低圧側サイドシール板17は、径方向外方側において幅寸法(回転軸5の軸方向)が大きく形成された段差部17aが薄板シール片20の切り欠き部20yに嵌め込まれた状態で、シール片積層体12と保持リング14とに挟まれている。
このような構成により、小口側面12dのうち径方向外方側を覆うと共に径方向内方側を高圧側サイドシール板17よりも大きく露出させている。
【0037】
すなわち、これら高圧側サイドシール板16及び低圧側サイドシール板17は、径方向の寸法が、高圧側サイドシール板16よりも低圧側サイドシール板17が小さく形成されており、後述する微小間隙sが所定のガス圧力分布になるように設計されている。
【0038】
保持リング13,14は、断面コ字状で回転軸5の周方向に延びる円弧状部材である。
保持リング13は、図3及び図4に示すように、複数の薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cに対向する面に、凹溝13aが形成されている。
保持リング14は、図3及び図4に示すように、複数の薄板シール片20の頭部21の側方突出部21dに対面する面に、凹溝14aが形成されている。
背面スペーサ15は、薄板シール片20の頭部21と保持リング13,14との間に介挿されている。
【0039】
上記の保持リング13,14は、図3に示すように、保持リング13の凹溝13a及び保持リング14の凹溝14aに、シール片積層体12における各薄板シール片20の頭部21が背面スペーサ15を介して嵌め込まれることにより、シール片積層体12を保持している。
【0040】
このようなシールセグメント11は、図3に示すように、ハウジング9の内周部において断面T字状に形成されると共に回転軸5の周方向に延在するT字環状溝9aに収容されている。具体的には、T字環状溝9aのうち径方向外周側において溝幅(回転軸5の軸方向)が大きく形成された部分に保持リング13,14が収容されており、径方向内周側において溝軸が小さく形成された部分に、高圧側サイドシール板16及び低圧側サイドシール板17と、薄板シール片20の胴部22が収容されている。そして、T字環状溝9aの開口部から回転軸5に向けて胴部22の先端(内方端20b)が突出している。
【0041】
(シールセグメントの製造に用いる治具)
次に、本発明の実施形態に係るシールセグメント11の製造に用いる治具について説明する。
図5は、上記構成からなるシールセグメント11の製造に用いる生産治具30の平面図であり、図6は、生産治具30の側面図である。
【0042】
図5及び図6に示すように、生産治具30は、治具本体31と、この治具本体31から着脱可能な内方端当接部35とを備えている。
治具本体31は、図6に示すように、断面が略L字状のブロック状部材であり、底面31aからの厚さ寸法が大きく形成された外方端当接部32と、底面31aからの厚さ寸法が小さく形成された当接平面部33とを備えている。
【0043】
当接平面部33は、図5及び図6に示すように、治具本体31の幅方向に延在する溝部(外方端嵌合部)33aが外方端当接部32側に形成されており、底面31aからの厚さ寸法がさらに小さくなっている。
【0044】
溝部33aは、図6に示すように、溝断面が略矩形状に形成されており、薄板シール片20の頭部21の側方突出部21c,21d(図4参照)とそれぞれ嵌合可能に形成されている。
【0045】
この当接平面部33は、図6に示すように、薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cを溝部33aに嵌合させた状態において薄板シール片20の側端部20cと当接可能、及び、側方突出部21dを溝部33aに嵌合させた状態において側端部20dと当接可能な当接平面33bを有している。
【0046】
外方端当接部32は、図5及び図6に示すように、当接平面部33の法線方向に沿って延在し、溝部33aに連続する外方端当接面32aを有しており、薄板シール片20の側方突出部21c,21dのいずれか一方を溝部33aに嵌合させた状態にすると、薄板シール片20の外方端20aが外方端当接面32aに当接するようになっている。
【0047】
内方端当接部35は、図5に示すように、その長手方向の寸法が治具本体31の幅寸法と略同大に形成されている。この内方端当接部35は、図6に示すように、薄板シール片20の側方突出部21c,21dのいずれか一方を治具本体31の溝部33aに嵌合させた状態において、治具本体31に装着すると、薄板シール片20の内方端20bに当接する内方端当接面35aを有している。
【0048】
(シールセグメントの製造方法)
続いて、本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法(軸シール装置の製造方法)について説明する。
図7は、シールセグメントの製造方法F1を示すフローチャートであり、図8は、シールセグメントの製造方法F1の製造工程の概略図である。
上述したように、シールセグメント11は、シール片積層体12と、保持リング13,14と、背面スペーサ15と、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とから構成されている。
【0049】
まず始めに、図7及び図8に示すように、プレス等によって、基材となる金属板から多数枚の薄板シール片20を製作する(薄板シール片製作工程S11)。
この際、直線状に積層した際に胴部22間に微小間隙sが形成されるように、頭部21を折り返して頭部21のみを二枚重ねの構成とし、胴部22に対して頭部21の厚さを大きくする。
【0050】
次に、図7に示すように、多数枚の薄板シール片20を積層する(積層工程S12)。具体的には、図8に示すように、各薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cを治具本体31の溝部33aに嵌合させながら、治具本体31の当接平面33bに各薄板シール片20の側端部20cを当接させる。
【0051】
この積層工程S12の際には、図8に示すように、生産治具30から内方端当接部35を取り外した状態で行うと、頭部21の側方突出部21cを治具本体31の溝部33aに嵌合させ易い。また、各薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cを治具本体31の溝部33aに嵌合させることで、薄板シール片20の姿勢が容易に定まり、側端部20cを当接平面33bに当接させ易い。
【0052】
図8に示すように、各薄板シール片20の胴部22の延出方向が同一の方向に向くようにして、治具本体31の幅方向に薄板シール片20を積層していく。このように積層することで、隣接する二つの薄板シール片20の胴部22毎に微小間隙sが形成されていく。ここで、図8に示すように、薄板シール片20の積層ズレや製作誤差により、一部の薄板シール片20が僅かに上方に突出する(図8において突出した薄板シール片20を破線で示す。)。
【0053】
次に、図7に示すように、多数枚の薄板シール片20の外方端20a側を互いに連結してシール片積層体12´を形成する(連結工程S13)。具体的には、図8に示すように、積層された各薄板シール片20の頭部21の側方突出部21dを溶接して線状の接合部Jを形成し、薄板シール片20同士を相互に連結する。このようにして、多数枚の薄板シール片20が直線状に連結されたシール片積層体12´を形成する。
この際にも、溶接の歪みにより、薄板シール片20の一部が僅かに上方に突出して小口側面12dに凸が生じる場合がある。
【0054】
連結工程S13の後に、内方端当接部35を治具本体31に装着し(図6参照)、薄板シール片20の内方端20bに内方端当接面35aを当接させて、内方端20bを支持する。
【0055】
次に、図7に示すように、シール片積層体12の小口側面12cを平面に当接させると共に、他方の小口側面12dを研削(平滑加工)する(第一研削工程(第一平滑加工工程)S14)。具体的には、図8に示すように、小口側面12cを治具本体31の当接平面33bに当接させた状態で、小口側面12dをハンドグラインダーG等で研削する。この際、シール片積層体12における小口外方端面12aが外方端当接面32aに当接し、シール片積層体12の小口内方端面12bが内方端当接面35aに当接して両端支持の状態となる。この状態においては、研削加工を行ったとしても、各薄板シール片20が撓み難くなってハンドグラインダーG等の回転に引張られたり、跳ねたりし難くなる。
このようにして、多数枚の薄板シール片20のうち上方に突出していた薄板シール片20を他の薄板シール片20と平面を構成するまで研削することで、凸凹になっていた小口側面12dを平滑にする。なお、第一研削工程S14における研削加工に代えて、他の加工方法(例えば放電加工)により小口側面12dを平滑にすることも可能である。
【0056】
次に、図7に示すように、所定の曲率でシール片積層体12´を曲げる(曲げ工程S15)。具体的には、図8に示すように、連結されて一体となった頭部21を、胴部22側が凹となるように、所定の曲率で塑性変形させてシール片積層体12とする。
【0057】
最後に、図7に示すように、シール片積層体12と、保持リング13,14と、背面スペーサ15と、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とを組み立ててシールセグメント11を完成させる(組立工程S16)。具体的には、図4に示すように、シール片積層体12の切り欠き部20x,20yに対して、高圧側サイドシール板16の段差部16a、低圧側サイドシール板17の段差部17aをそれぞれ嵌め込むと共に、保持リング13の凹溝13a及び保持リング14の凹溝14aに対して、背面スペーサ15を介在させた状態で、シール片積層体12の頭部21を嵌め込む。
このようにしてシールセグメント11が完成する。
【0058】
(シールセグメントの作用)
続いて、上記のように製造されたシールセグメント11の作用について説明する。図9は、微小間隙sに形成される作動流体gのガス圧力分布図であり、図10は、回転軸5の軸方向に交差する胴部22の切断面を示すと共に胴部22に作用する圧力をベクトルで示した図である。以下、図10に示すように、薄板シール片20の回転軸5に面した面を下面20qとし、その裏側を上面20pとする。
【0059】
ガスタービン1が稼働すると、軸シール機構10を境にして作動流体gの高圧側領域と低圧側領域とが形成される。
高圧側領域と低圧側領域が形成されると、シールセグメント11が高圧側領域から低圧側領域に向けて圧力を受けて、低圧側サイドシール板17がハウジング9に密着する。
【0060】
そして、図9に示すように、作動流体gが、回転軸5の外周面と薄板シール片20の内方端20bとの間を流れると共に、各微小間隙sを流れる。すなわち、微小間隙sを介して対向する上面20pと下面20qとに沿って、微小間隙sに流入した作動流体gが、角部r1から角部r2の方向へ放射状に流れる。
【0061】
つまり、低圧側サイドシール板17の径方向寸法が、高圧側サイドシール板16の径方向寸法よりも大きくされることで、図9に示すように、薄板シール片20の内方端20bかつ高圧側に位置する角部r1で最もガス圧が高く、対角の角部r2に向かって徐々にガス圧が弱まるガス圧力分布40aが形成される。
【0062】
図9に示すように、ガス圧力分布40aは、薄板シール片20の外方端20aに向かって低圧の領域が広がる。そのため、図9に示すように、各薄板シール片20の上面20p及び下面20qに加わるガス圧力分布40b,40cは、薄板シール片20の内方端20bに近いほど大きくなると共に外方端20aに向かうほど小さくなる三角分布形状となる。
【0063】
この際、シールセグメント11においては、シール片積層体12の小口側面12dが平滑になっており、微小間隙sから作動流体gが流出する流出部の下流側空間Lが、周方向における各部位で等しい大きさとなる。つまり、シールセグメント11においては、正常に積層された薄板シール片20に合わせて、小口側面12dから突出した一部の薄板シール片20を研削して平滑にすることで、下流側空間Lのうち周方向における各部位が等しい大きさとなる。
【0064】
ここで、シールセグメント11は、作動流体から圧力を受けてハウジング9に密着することから、設計されたガス圧力分布にするためには、各微小間隙sの流体入口部の上流側空間Hよりも流体出口部の下流側空間Lの大きさを正確に確保する必要がある。上述したように、シールセグメント11における各微小間隙sは、流体出口部の下流側空間Lが等しく正常な大きさで確保され、それぞれのガス圧力分布40aが設計されたガス圧力分布に近似する。
【0065】
図10に示すように、上面20p及び下面20qのそれぞれにおけるガス圧力分布40b,40cは略等しい形状となるが、回転軸5の外周の接線方向に傾くようにして各薄板シール片20が配置されているので、これら上面20p及び下面20qにおける各ガス圧力分布40b,40cの相対位置がずれる。よって、薄板シール片20の外方端20aから内方端20bに向かう任意の点Pにおける上面20p及び下面20qのガス圧に差が生じ、下面20qに加わるガス圧が上面20pに加わるガス圧よりも高くなる。これによって、薄板シール片20の内方端20bに対して回転軸5より浮かせる方向に浮上力FLが発生する。
この際、各微小間隙sのガス圧力分布40aが設計されたガス圧力分布と略同一のものとなるため、浮上力FLも設計されたものと略同一になる。
【0066】
以上のようにして、薄板シール片20に浮上力FLが作用し、動圧効果による浮上力を補助することにより、回転軸5との間に設計された通りのシールクリアランスが形成される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1によれば、作動流体gの低圧側に向けられる小口側面12cを生産治具30の当接平面33bに当接させると共に、作動流体gの高圧側に向けられる小口側面12dを研削する第一研削工程S14を有するので、薄板シール片20の製作誤差や積層ズレ、あるいは溶接の歪み等により小口側面12dが凸凹となっていても平滑的になる。これにより、隣接する薄板シール片20の胴部22毎に形成された微小間隙sの下流側空間Lにおいて、周方向の各部位が均一的な大きさになるので、各微小間隙sにおけるガス圧力分布が略同一になる。よって、薄板シール片20の浮上特性が局所的に低下してしまうことを抑止することができるので、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片20と回転軸5との接触磨耗を抑止することができる。
【0068】
また、第一研削工程S14において、正常に積層された薄板シール片20に合わせて、小口側面12dから突出した一部の薄板シール片20を研削して平滑にするので、下流側空間Lのうち周方向における各部位を容易に設計された大きさにすることができる。このため、各微小間隙sのガス圧力分布を設計されたガス圧力分布に容易に近似させることができる。
【0069】
また、第一研削工程S14の後にシール片積層体12を曲げる曲げ工程S15を有するので、直線状に連結されたシール片積層体12に研削加工を施せばよく、第一研削工程S14が比較的に容易となる。
【0070】
また、シール片積層体12のうち、多数枚の薄板シール片20の内方端20bが集合してなる小口内方端面12bを支持した状態で施すので、研削により薄板シール片20の内方端20b側が撓むことを抑止することができ、比較的に容易かつ正確に研削加工をすることができる。
【0071】
また、シールセグメント11の生産治具30によれば、多数枚の薄板シール片20の側方突出部21dと嵌合する溝部33aと、多数枚の薄板シール片20の側端部20cに当接する当接平面部33とを備えるので、薄板シール片20の位置決めを迅速かつ正確に行うことができ、積層工程S12を容易にすることができる。また、シール片積層体12の小口側面12dに対する研削加工を迅速かつ正確に行うことができ、第一研削工程S14を容易にすることができる。
【0072】
また、多数枚の薄板シール片20の内方端20bに当接する内方端当接部35を備えるので、薄板シール片20の位置決めをより迅速かつ正確に行うことができ、積層工程S12をさらに容易にすることができる。また、シール片積層体12に対する研削加工をより迅速かつ正確に行うことができ、第一研削工程S14をさらに容易にすることができる。
【0073】
また、ガスタービン1はシールセグメント11を備えるので、作動流体gに対するシール性を維持させた状態で、かつ、継続的に軸方向のシールがなされる。これにより、メンテナンス性を良好にすることができる。
【0074】
(シールセグメントの製造方法の変形例及びこれに用いる生産治具)
図11は、上述したシールセグメントの製造方法F1の変形例であるシールセグメントの製造方法F2のフローチャートであり、図12は、これに用いる生産治具50の平面図である。なお、上述した実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
図11に示すように、シールセグメントの製造方法F2は、薄板シール片20の薄板シール片製作工程S11〜連結工程S13までは、シールセグメントの製造方法F1と同様であるが、薄板シール片20の連結工程S13の後に、シール片積層体12´に対する曲げ工程S24を有し、この後に第一研削工程(第一平滑加工工程)S25を有する点で、シールセグメントの製造方法F1と相違する(図7参照)。
【0076】
シールセグメントの製造方法F2においては、薄板シール片20の連結工程S13までは生産治具30を用いることができるが、第一研削工程S25においては、シール片積層体12が曲率を有した状態であるために、直線状の生産治具30を用いずに、図12に示すように、曲げ工程と同一の曲率が設定された曲線状(平面視扇形)の生産治具50を用いて小口側面12dを研削する。
これにより、連結工程S13の後であって第一研削工程S25の前にシール片積層体12´を曲げるので、曲げ工程S24によって小口側面12dに凹凸が生じたとしても第一研削工程S25により小口側面12dを平滑的にすることができる。
【0077】
なお、このシールセグメントの製造方法F2においては、曲げ工程S24の後に保持リング13,14と、背面スペーサ15とをシール片積層体12に組み付ける予組付工程(リテーナ部材装着工程)S26を有するようにしてもよい。すなわち、シール片積層体12における各薄板シール片20の頭部21を保持リング13,14によって固く保持させることで、薄板シール片20の外方端20a側の撓みを効果的に抑止することができ、比較的に容易かつ正確に研削加工をすることができる。
なお、この場合には、生産治具50の溝部33aを保持リング13,14と嵌合可能に構成すればよく、組立工程S16においては、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とを周方向の一端部から挿入してシールセグメント11を組み立てればよい。
【0078】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、本発明に係るシールセグメント11をガスタービン1へ適用する場合について説明したが、例えば、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の回転機械全般に広く採用することができる。
【0079】
また、上述した実施の形態では、小口側面12cには研削を施さなかったが、この小口側面12cを研削する第二研削工程(第二平滑加工工程)を有する製造方法としてもよい(図7及び図11において符号S30で図示する。)。第二研削工程S30によって小口側面12cを平滑にすることで、図9に示すように、微小間隙sの流体流入部の上流側空間Hの大きさを均一的なものとすることができる。従って、各微小間隙sにおけるガス圧力分布がより均一的なものとなり、局所的に浮上特性が変動することをさらに抑止することができる。よって、シール性の低下をさらに抑止すると共に、薄板シール片20と回転軸5との接触磨耗をさらに抑止することができる。なお、この第二研削工程における研削工程に代えて他の加工方法(例えば放電加工)を用いて小口側面12cを平滑にしてもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態では、研削した小口側面12dを高圧側領域に向ける構成としたが、低圧側領域に向けても構わない。
【0081】
また、上述した実施の形態では、第一研削工程S14,S25において、突出していない薄板シール片20に合わせて突出した薄板シール片20を研削し、小口側面12dを平滑にしたが、当接平面33bから一定の距離を空けて研削を施すことにより、小口側面12dを平滑にしてもよい。この際、薄板シール片製作工程S11において薄板シール片20(の胴部22)の幅寸法に余裕削り代を形成しておくことで、薄板シール片20が過度に研削されることを防止することができる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、第一研削工程S14,S25においてハンドグラインダーGを用いる構成としたが、他の研削工具及び工作機械を用いてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、薄板シール片製作工程S11においてプレスにより薄板シール片20を製作したが、エッチング等の他の方法を用いて薄板シール片を製作してもよい。エッチングによれば、頭部21を二枚重ねにすることなく、直接的に頭部21と胴部22の厚さを調整することが可能である。
【0084】
また、上述した実施の形態では、頭部21と胴部22との間に傾斜を設けた薄板シール片20を積層させたシール片積層体12を用いたが、頭部21と胴部22とが真直状(傾斜していない)の薄板シール片を積層させたシール片積層体について本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…ガスタービン(回転機械)
2…圧縮機(回転機械)
4…タービン(回転機械)
5…回転軸
11…シールセグメント(軸シール装置)
12…シール片積層体
12b…小口内方端面
12c,12d…小口側面
13,14…保持リング(リテーナ部材)
20…薄板シール片
20a…外方端
20b…内方端
20c,20d…側端部
30,50…生産治具(軸シール装置の生産治具)
33a…溝部(外方端嵌合部)
33b…当接平面
35…内方端当接部
F1,F2…シールセグメントの製造方法(軸シール装置の製造方法)
s…微小間隙
S11…薄板シール片製作工程
S12…積層工程
S13…連結工程
S14,S25…第一研削工程(第一平滑加工工程)
S15,S24…曲げ工程
S16…組立工程
S26…予組付工程(リテーナ部材装着工程)
S30…第二研削工程(第二平滑加工工程)
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸シール装置の製造方法及び軸シール装置の生産治具、並びに、軸シール装置を備える回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の回転機械において、回転軸に対してシールを施す軸シール機構として下記特許文献1のものがある。
【0003】
図13は、従来の軸シール機構100の概略構成斜視図である。
この軸シール機構100は、ステータ側において回転軸Rを囲繞するハウジング101に収容された軸シール装置102を備えている。
【0004】
軸シール装置102は、回転軸Rの周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片103aが積層されたシール片積層体103と、軸方向の流体高圧側においてシール片積層体103の一部を覆う高圧側サイドシール板104と、軸方向の流体低圧側においてシール片積層体103の一部を覆う低圧側サイドシール板105とを備えている。上記シール片積層体103においては、多数枚の薄板シール片103aの径方向外方端側が互いに連結され、径方向内方端が自由端となっており、外方端側がハウジング101に収容され、各薄板シール片103aがそれぞれ接線方向に傾くようにしてハウジング101から回転軸Rに向けて延出している。
【0005】
このような構成の軸シール機構100は、回転軸Rの停止時には薄板シール片103aの内方端が所定の予圧で回転軸Rに接触するが、回転軸Rの回転時には動圧効果によって薄板シール片103aに浮上力が作用する。この浮上力を利用することにより、薄板シール片103aと回転軸Rとに微小な隙間を形成して作動流体をシールすると共に、回転軸Rと各薄板シール片103aとの磨耗を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3917993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような軸シール機構においては、隣接する二つの薄板シール片毎に形成される微小間隙のガス圧力分布を、高圧側サイドシール板及び低圧側サイドシール板の径方向寸法を調整することで設定している。すなわち、上記微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間の大きさを調整することにより、微小間隙のガス圧力分布を設定している。例えば、高圧側サイドシール板に比べて低圧側サイドシール板を短くすると、微小間隙のガス圧力分布を内方端側から外方端側に向かって次第に小さくなるように設定することができ、上述した動圧効果による浮上力を補助するように圧力を作用させることができる。
【0008】
一方、上記の軸シール機構におけるシール片積層体は、通常、薄板シール片を一方向に積層した後に、各薄板シール片の外方端側を溶接等によって連結し、この後に所定の曲率に曲げ加工がされて軸シール装置に組み付けられている。
【0009】
しかしながら、従来の技術では、シール片積層体の製造過程において一部の薄板シール片に生じる積層ズレや薄板シール片の製作誤差等に起因して、上流側空間や下流側空間の一部に大きさの異なる部分が生じてしまい、この部分近傍の各微小間隙のガス圧力分布と、その他の微小間隙のガス圧力分布とが相違してしまうという問題があった。これにより、局所的に浮上特性が変動して、薄板シール片と回転軸とが接触磨耗したり、シール性が低下したりするという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止することができる軸シール装置の製造方法及び軸シール装置の生産治具、並びに、軸シール装置を備える回転機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る軸シール装置の製造方法は、回転軸の周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片が積層され、これら多数枚の薄板シール片の径方向外方端側が互いに連結されると共に径方向内方端が自由端とされて、相互に隣接する二つの薄板シール片毎に微小間隙が形成された軸シール装置の製造方法であって、前記多数枚の薄板シール片を一方向に積層する積層工程と、前記積層された多数枚の薄板シール片の外方端側を互いに連結してシール片積層体を形成する連結工程と、前記シール片積層体のうち、前記薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部がそれぞれ多数集合してなる二つの小口側面の一方を外部の平面に当接させると共に、他方を平滑加工する第一平滑加工工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、二つの小口側面の一方を外部の平面に当接させると共に他方を平滑加工するので、薄板シール片の積層ズレや製作誤差により他方の小口側面が凸凹となっていても平滑的になる。これにより、隣接する薄板シール片毎に形成された微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間のうちの少なくとも一方において、周方向の各部位が均一的な大きさとなる。従って、各微小間隙におけるガス圧力分布が均一的なものとなって、薄板シール片の浮上特性が局所的に相違してしまうことを抑止することができる。従って、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止することができる。
【0013】
前記第一平滑加工工程は、前記外部の平面から一定の間隔を空けて前記他方の小口側面を平滑加工することを特徴とする。
この構成によれば、他方の小口側面が平滑になるので、微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間のうち少なくとも一方の大きさが周方向に亘って、より均一的になる。従って、各微小間隙におけるガス圧力分布がより均一的なものとなって、薄板シール片の浮上特性が局所的に相違してしまうことを更に抑止することができる。
【0014】
また、前記第一平滑加工工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有することを特徴とする。
この構成によれば、第一平滑加工工程の後にシール片積層体を曲げる曲げ工程を有するので、平滑加工が比較的に容易となる。
【0015】
また、前記連結工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有し、前記第一平滑加工工程は、曲率を有した前記シール片積層体に対して施すことを特徴とする。
この構成によれば、連結工程の後にシール片積層体を曲げるので、曲げ加工によって他方の小口側面に凹凸が生じたとしても、平滑的にすることができる。
【0016】
また、前記連結工程の後に、前記シール片積層体の外方端側の少なくとも一部に嵌合可能なリテーナ部材を装着するリテーナ部材装着工程を有し、前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体に前記リテーナ部材を嵌合させた状態で施すことを特徴とする。
この構成によれば、シール片積層体にリテーナ部材を嵌合させた状態で第一平滑加工工程における平滑加工を施すので、径方向外端側がリテーナ部材で保持されることにより、比較的に容易かつ正確に平滑加工をすることができる。
【0017】
また、前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体のうち、前記多数枚の薄板シール片の内方端が集合してなる小口内方端面を支持した状態で施すことを特徴とする。
この構成によれば、シール片積層体のうち、多数枚の薄板シール片の内方端が集合してなる小口内方端面を支持した状態で施すので、平滑加工によって薄板シール片の内方端側が撓むことを抑止することができ、比較的に容易かつ正確に平滑加工をすることができる。
【0018】
また、前記第一平滑加工工程において前記平面に当接させた一方の小口側面を平滑加工する第二平滑加工工程を有することを特徴とする。
この構成によれば、一方の小口側面を平滑加工する第二平滑加工工程を有するので、一方の小口側面が平滑的になる。これにより、両方の小口側面が平滑的なものとなるので、微小間隙の流体流入部の上流側空間及び流体流出部の下流側空間の両方の大きさが均一的なものとなる。従って、各微小間隙におけるガス圧力分布がより均一的なものとなり、局所的に浮上特性が変動することをさらに抑止することができる。従って、シール性の低下をより確実に抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗をより確実に抑止することができる。
【0019】
また、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、前記多数枚の薄板シール片の外方端側と嵌合する外方端嵌合部と、前記薄板シール片の外方端側が前記外方嵌合部に嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする。
また、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、前記シール片積層体に嵌合した前記リテーナ部材と嵌合するリテーナ部材嵌合部と、該リテーナ部材嵌合部に前記リテーナ部材が嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、薄板シール片の外方端側と嵌合する外方端嵌合部又はリテーナ部材と嵌合するリテーナ部材嵌合部と、薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えるので、薄板シール片の位置決めを迅速かつ正確に行うことができ、シール片積層体に対する平滑加工を迅速かつ正確に行うことができる。
【0020】
また、前記多数枚の薄板シール片の内方端に当接する内方端当接部を備えることを特徴とする。
この構成によれば、薄板シール片の内方端に当接する内方端当接部を備えるので、薄板シール片の位置決めをより迅速かつ正確に行うことができ、積層工程をさらに容易にすることができると共に、シール片積層体に対する平滑加工加工をより迅速かつ正確に行うことができ、第一平滑加工工程をさらに容易にすることができる。
【0021】
また、本発明に係る回転機械は、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法によって製造された軸シール装置を前記回転軸の周囲に備えたことを特徴とする。
この構成によれば、上記のうちのいずれかの軸シール装置の製造方法によって製造された軸シール装置を備えるので、作動流体に対するシール性を維持させた状態で、かつ、継続的に軸方向のシールがなされる。これにより、メンテナンス性が良好な回転機械を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る軸シール装置の生産方法よれば、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片と回転軸との接触磨耗を抑止する軸シール装置を得ることができる。
【0023】
また、本発明に係る軸シール装置の生産治具によれば、軸シール装置の生産方法を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る回転機械によれば、メンテナンス性が良好な回転機械とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るガスタービン1の概略全体構成図である。
【図2】図1におけるI−I線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る軸シール機構10の概略構成断面図であって、回転軸5の軸線に沿った断面を示している。
【図4】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の分解構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の製造に用いる生産治具30の平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の製造に用いる生産治具30の側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1の製造工程の概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係るシールセグメント11の微小間隙sに形成される作動流体gのガス圧力分布図である。
【図10】本発明の実施形態に係るシールセグメント11における薄板シール片20の胴部22の要部断面図であって、回転軸5の軸方向に交差する胴部22の切断面を示すと共に胴部22に作用する圧力をベクトルで示した図である。
【図11】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1の変形例であるシールセグメントの製造方法F2のフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法F2に用いる生産治具50である。
【図13】従来の軸シール機構100の概略構成斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(ガスタービンの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン(回転機械)1の概略全体構成図であり、図2は、図1におけるI−I線断面図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機(回転機械)2と、この圧縮機2にて圧縮された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3から導入された燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン(回転機械)4とを有しており、圧縮機2のローター2aとタービン4のローター4aとが連結されて回転軸5が構成されている。
【0027】
圧縮機2及びタービン4においては、図1に示すように、圧縮機ケーシング2b及びタービンケーシング4bのそれぞれの内周部において周方向に間隔を空けて複数の静翼が環状に固定された環状静翼群6と、回転軸5の外周部において周方向に間隔を空けて複数の動翼が環状に固定された環状動翼群7とが回転軸5の軸方向に交互に配列されている。
【0028】
このようなガスタービン1においては、高圧側から低圧側に作動流体(圧縮空気又は燃焼ガス)gが軸方向に漏出するのを防止するために、各環状静翼群6の内周部に軸シール機構10が配設されている。
また、圧縮機ケーシング2bが回転軸5を支持する軸受け部2c、及び、タービンケーシング4bが回転軸5を支持する軸受け部4cにおいても、作動流体gが高圧側から低圧側に漏れるのを防止するために軸シール機構10が配設されている。
【0029】
図2に示すように、各軸シール機構10は、円弧状に延びるシールセグメント(軸シール装置)11が回転軸5の周囲に周方向に複数(本実施形態では八つ)環状に配置されることで構成されている。
【0030】
(シールセグメントの構成)
図3は、回転軸5の軸線に沿った断面における軸シール機構10の概略構成断面図であり、図4は、シールセグメント11の分解構成図である。
図3に示すように、各シールセグメント11は、ハウジング(環状静翼群6及び軸受け部2c,4cに相当)9に挿入されている。
【0031】
このシールセグメント11は、図3に示すように、薄板シール片20が多数枚積層されたシール片積層体12と(図2,図8,図12参照)、断面コ字状の保持リング(リテーナ部材)13,14と、背面スペーサ15と、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とから構成されている。
【0032】
シール片積層体12は、薄板状の薄板シール片20が多数枚積層され(図2参照)、これら多数枚の薄板シール片20の径方向外方端20a側が互いに連結されたものである。
薄板シール片20は、図3に示すように、薄い鋼板によって形成された部材であり、回転軸5の接線方向から見てT字状に形成され、その幅方向を回転軸5の軸方向に向けている。この薄板シール片20は、図4に示すように、外方端20a側の頭部21と、頭部21よりも幅寸法及び厚さ寸法が小さく形成されると共に頭部21の径方向内縁のおける軸方向中央から延出する胴部22とを備えている。
このような薄板シール片20は、胴部22が頭部21と鈍角を形成するように傾いて延出しており(図5参照)、図4に示すように、胴部22のうち頭部21との境界部分(径方向外方側)において、切り欠き部20x,20yが形成されている。
【0033】
各薄板シール片20は、それぞれの頭部21の側方突出部21cが溶接されており、相互に連結されている。一方、各薄板シール片20の胴部22は、弾性変形可能であり、各薄板シール片20の内方端20bが自由端となっている。
このような薄板シール片20は、上述したように、頭部21の厚さ寸法が胴部22の厚さ寸法よりも大きいことにより、積層状態すると相互に隣接する二つの薄板シール片20の胴部22毎に微小間隙s(図8,図12参照)が形成されている。
【0034】
このような薄板シール片20が多数枚積層されたシール片積層体12は、各薄板シール片20の胴部22の側端部20cが多数集合してなる小口側面12cが高圧側に向けられ、各薄板シール片20の胴部22の側端部20dが多数集合してなる小口側面12dが低圧側に向けられた状態で、ハウジング9に挿入されている。このシール片積層体12は、回転軸5の停止時においては、各薄板シール片20の内方端20b側が回転軸5に所定の予圧で接触するようになっている。
【0035】
高圧側サイドシール板16は、回転軸5の軸方向から見た場合において扇形状の板状部材であり、図3に示すように、回転軸5の軸方向の高圧側においてシール片積層体12の一部を覆っている。この高圧側サイドシール板16は、図3及び図4に示すように、径方向外方側において幅寸法(回転軸5の軸方向)が大きく形成された段差部16aが薄板シール片20の切り欠き部20xに嵌め込まれた状態で、シール片積層体12と保持リング13とに挟まれている。
【0036】
低圧側サイドシール板17は、回転軸5の軸方向から見た場合において扇形状の板状部材であり、図3に示すように、回転軸5の軸方向の低圧側においてシール片積層体12の一部を覆っている。この低圧側サイドシール板17は、径方向外方側において幅寸法(回転軸5の軸方向)が大きく形成された段差部17aが薄板シール片20の切り欠き部20yに嵌め込まれた状態で、シール片積層体12と保持リング14とに挟まれている。
このような構成により、小口側面12dのうち径方向外方側を覆うと共に径方向内方側を高圧側サイドシール板17よりも大きく露出させている。
【0037】
すなわち、これら高圧側サイドシール板16及び低圧側サイドシール板17は、径方向の寸法が、高圧側サイドシール板16よりも低圧側サイドシール板17が小さく形成されており、後述する微小間隙sが所定のガス圧力分布になるように設計されている。
【0038】
保持リング13,14は、断面コ字状で回転軸5の周方向に延びる円弧状部材である。
保持リング13は、図3及び図4に示すように、複数の薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cに対向する面に、凹溝13aが形成されている。
保持リング14は、図3及び図4に示すように、複数の薄板シール片20の頭部21の側方突出部21dに対面する面に、凹溝14aが形成されている。
背面スペーサ15は、薄板シール片20の頭部21と保持リング13,14との間に介挿されている。
【0039】
上記の保持リング13,14は、図3に示すように、保持リング13の凹溝13a及び保持リング14の凹溝14aに、シール片積層体12における各薄板シール片20の頭部21が背面スペーサ15を介して嵌め込まれることにより、シール片積層体12を保持している。
【0040】
このようなシールセグメント11は、図3に示すように、ハウジング9の内周部において断面T字状に形成されると共に回転軸5の周方向に延在するT字環状溝9aに収容されている。具体的には、T字環状溝9aのうち径方向外周側において溝幅(回転軸5の軸方向)が大きく形成された部分に保持リング13,14が収容されており、径方向内周側において溝軸が小さく形成された部分に、高圧側サイドシール板16及び低圧側サイドシール板17と、薄板シール片20の胴部22が収容されている。そして、T字環状溝9aの開口部から回転軸5に向けて胴部22の先端(内方端20b)が突出している。
【0041】
(シールセグメントの製造に用いる治具)
次に、本発明の実施形態に係るシールセグメント11の製造に用いる治具について説明する。
図5は、上記構成からなるシールセグメント11の製造に用いる生産治具30の平面図であり、図6は、生産治具30の側面図である。
【0042】
図5及び図6に示すように、生産治具30は、治具本体31と、この治具本体31から着脱可能な内方端当接部35とを備えている。
治具本体31は、図6に示すように、断面が略L字状のブロック状部材であり、底面31aからの厚さ寸法が大きく形成された外方端当接部32と、底面31aからの厚さ寸法が小さく形成された当接平面部33とを備えている。
【0043】
当接平面部33は、図5及び図6に示すように、治具本体31の幅方向に延在する溝部(外方端嵌合部)33aが外方端当接部32側に形成されており、底面31aからの厚さ寸法がさらに小さくなっている。
【0044】
溝部33aは、図6に示すように、溝断面が略矩形状に形成されており、薄板シール片20の頭部21の側方突出部21c,21d(図4参照)とそれぞれ嵌合可能に形成されている。
【0045】
この当接平面部33は、図6に示すように、薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cを溝部33aに嵌合させた状態において薄板シール片20の側端部20cと当接可能、及び、側方突出部21dを溝部33aに嵌合させた状態において側端部20dと当接可能な当接平面33bを有している。
【0046】
外方端当接部32は、図5及び図6に示すように、当接平面部33の法線方向に沿って延在し、溝部33aに連続する外方端当接面32aを有しており、薄板シール片20の側方突出部21c,21dのいずれか一方を溝部33aに嵌合させた状態にすると、薄板シール片20の外方端20aが外方端当接面32aに当接するようになっている。
【0047】
内方端当接部35は、図5に示すように、その長手方向の寸法が治具本体31の幅寸法と略同大に形成されている。この内方端当接部35は、図6に示すように、薄板シール片20の側方突出部21c,21dのいずれか一方を治具本体31の溝部33aに嵌合させた状態において、治具本体31に装着すると、薄板シール片20の内方端20bに当接する内方端当接面35aを有している。
【0048】
(シールセグメントの製造方法)
続いて、本発明の実施形態に係るシールセグメントの製造方法(軸シール装置の製造方法)について説明する。
図7は、シールセグメントの製造方法F1を示すフローチャートであり、図8は、シールセグメントの製造方法F1の製造工程の概略図である。
上述したように、シールセグメント11は、シール片積層体12と、保持リング13,14と、背面スペーサ15と、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とから構成されている。
【0049】
まず始めに、図7及び図8に示すように、プレス等によって、基材となる金属板から多数枚の薄板シール片20を製作する(薄板シール片製作工程S11)。
この際、直線状に積層した際に胴部22間に微小間隙sが形成されるように、頭部21を折り返して頭部21のみを二枚重ねの構成とし、胴部22に対して頭部21の厚さを大きくする。
【0050】
次に、図7に示すように、多数枚の薄板シール片20を積層する(積層工程S12)。具体的には、図8に示すように、各薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cを治具本体31の溝部33aに嵌合させながら、治具本体31の当接平面33bに各薄板シール片20の側端部20cを当接させる。
【0051】
この積層工程S12の際には、図8に示すように、生産治具30から内方端当接部35を取り外した状態で行うと、頭部21の側方突出部21cを治具本体31の溝部33aに嵌合させ易い。また、各薄板シール片20の頭部21の側方突出部21cを治具本体31の溝部33aに嵌合させることで、薄板シール片20の姿勢が容易に定まり、側端部20cを当接平面33bに当接させ易い。
【0052】
図8に示すように、各薄板シール片20の胴部22の延出方向が同一の方向に向くようにして、治具本体31の幅方向に薄板シール片20を積層していく。このように積層することで、隣接する二つの薄板シール片20の胴部22毎に微小間隙sが形成されていく。ここで、図8に示すように、薄板シール片20の積層ズレや製作誤差により、一部の薄板シール片20が僅かに上方に突出する(図8において突出した薄板シール片20を破線で示す。)。
【0053】
次に、図7に示すように、多数枚の薄板シール片20の外方端20a側を互いに連結してシール片積層体12´を形成する(連結工程S13)。具体的には、図8に示すように、積層された各薄板シール片20の頭部21の側方突出部21dを溶接して線状の接合部Jを形成し、薄板シール片20同士を相互に連結する。このようにして、多数枚の薄板シール片20が直線状に連結されたシール片積層体12´を形成する。
この際にも、溶接の歪みにより、薄板シール片20の一部が僅かに上方に突出して小口側面12dに凸が生じる場合がある。
【0054】
連結工程S13の後に、内方端当接部35を治具本体31に装着し(図6参照)、薄板シール片20の内方端20bに内方端当接面35aを当接させて、内方端20bを支持する。
【0055】
次に、図7に示すように、シール片積層体12の小口側面12cを平面に当接させると共に、他方の小口側面12dを研削(平滑加工)する(第一研削工程(第一平滑加工工程)S14)。具体的には、図8に示すように、小口側面12cを治具本体31の当接平面33bに当接させた状態で、小口側面12dをハンドグラインダーG等で研削する。この際、シール片積層体12における小口外方端面12aが外方端当接面32aに当接し、シール片積層体12の小口内方端面12bが内方端当接面35aに当接して両端支持の状態となる。この状態においては、研削加工を行ったとしても、各薄板シール片20が撓み難くなってハンドグラインダーG等の回転に引張られたり、跳ねたりし難くなる。
このようにして、多数枚の薄板シール片20のうち上方に突出していた薄板シール片20を他の薄板シール片20と平面を構成するまで研削することで、凸凹になっていた小口側面12dを平滑にする。なお、第一研削工程S14における研削加工に代えて、他の加工方法(例えば放電加工)により小口側面12dを平滑にすることも可能である。
【0056】
次に、図7に示すように、所定の曲率でシール片積層体12´を曲げる(曲げ工程S15)。具体的には、図8に示すように、連結されて一体となった頭部21を、胴部22側が凹となるように、所定の曲率で塑性変形させてシール片積層体12とする。
【0057】
最後に、図7に示すように、シール片積層体12と、保持リング13,14と、背面スペーサ15と、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とを組み立ててシールセグメント11を完成させる(組立工程S16)。具体的には、図4に示すように、シール片積層体12の切り欠き部20x,20yに対して、高圧側サイドシール板16の段差部16a、低圧側サイドシール板17の段差部17aをそれぞれ嵌め込むと共に、保持リング13の凹溝13a及び保持リング14の凹溝14aに対して、背面スペーサ15を介在させた状態で、シール片積層体12の頭部21を嵌め込む。
このようにしてシールセグメント11が完成する。
【0058】
(シールセグメントの作用)
続いて、上記のように製造されたシールセグメント11の作用について説明する。図9は、微小間隙sに形成される作動流体gのガス圧力分布図であり、図10は、回転軸5の軸方向に交差する胴部22の切断面を示すと共に胴部22に作用する圧力をベクトルで示した図である。以下、図10に示すように、薄板シール片20の回転軸5に面した面を下面20qとし、その裏側を上面20pとする。
【0059】
ガスタービン1が稼働すると、軸シール機構10を境にして作動流体gの高圧側領域と低圧側領域とが形成される。
高圧側領域と低圧側領域が形成されると、シールセグメント11が高圧側領域から低圧側領域に向けて圧力を受けて、低圧側サイドシール板17がハウジング9に密着する。
【0060】
そして、図9に示すように、作動流体gが、回転軸5の外周面と薄板シール片20の内方端20bとの間を流れると共に、各微小間隙sを流れる。すなわち、微小間隙sを介して対向する上面20pと下面20qとに沿って、微小間隙sに流入した作動流体gが、角部r1から角部r2の方向へ放射状に流れる。
【0061】
つまり、低圧側サイドシール板17の径方向寸法が、高圧側サイドシール板16の径方向寸法よりも大きくされることで、図9に示すように、薄板シール片20の内方端20bかつ高圧側に位置する角部r1で最もガス圧が高く、対角の角部r2に向かって徐々にガス圧が弱まるガス圧力分布40aが形成される。
【0062】
図9に示すように、ガス圧力分布40aは、薄板シール片20の外方端20aに向かって低圧の領域が広がる。そのため、図9に示すように、各薄板シール片20の上面20p及び下面20qに加わるガス圧力分布40b,40cは、薄板シール片20の内方端20bに近いほど大きくなると共に外方端20aに向かうほど小さくなる三角分布形状となる。
【0063】
この際、シールセグメント11においては、シール片積層体12の小口側面12dが平滑になっており、微小間隙sから作動流体gが流出する流出部の下流側空間Lが、周方向における各部位で等しい大きさとなる。つまり、シールセグメント11においては、正常に積層された薄板シール片20に合わせて、小口側面12dから突出した一部の薄板シール片20を研削して平滑にすることで、下流側空間Lのうち周方向における各部位が等しい大きさとなる。
【0064】
ここで、シールセグメント11は、作動流体から圧力を受けてハウジング9に密着することから、設計されたガス圧力分布にするためには、各微小間隙sの流体入口部の上流側空間Hよりも流体出口部の下流側空間Lの大きさを正確に確保する必要がある。上述したように、シールセグメント11における各微小間隙sは、流体出口部の下流側空間Lが等しく正常な大きさで確保され、それぞれのガス圧力分布40aが設計されたガス圧力分布に近似する。
【0065】
図10に示すように、上面20p及び下面20qのそれぞれにおけるガス圧力分布40b,40cは略等しい形状となるが、回転軸5の外周の接線方向に傾くようにして各薄板シール片20が配置されているので、これら上面20p及び下面20qにおける各ガス圧力分布40b,40cの相対位置がずれる。よって、薄板シール片20の外方端20aから内方端20bに向かう任意の点Pにおける上面20p及び下面20qのガス圧に差が生じ、下面20qに加わるガス圧が上面20pに加わるガス圧よりも高くなる。これによって、薄板シール片20の内方端20bに対して回転軸5より浮かせる方向に浮上力FLが発生する。
この際、各微小間隙sのガス圧力分布40aが設計されたガス圧力分布と略同一のものとなるため、浮上力FLも設計されたものと略同一になる。
【0066】
以上のようにして、薄板シール片20に浮上力FLが作用し、動圧効果による浮上力を補助することにより、回転軸5との間に設計された通りのシールクリアランスが形成される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係るシールセグメントの製造方法F1によれば、作動流体gの低圧側に向けられる小口側面12cを生産治具30の当接平面33bに当接させると共に、作動流体gの高圧側に向けられる小口側面12dを研削する第一研削工程S14を有するので、薄板シール片20の製作誤差や積層ズレ、あるいは溶接の歪み等により小口側面12dが凸凹となっていても平滑的になる。これにより、隣接する薄板シール片20の胴部22毎に形成された微小間隙sの下流側空間Lにおいて、周方向の各部位が均一的な大きさになるので、各微小間隙sにおけるガス圧力分布が略同一になる。よって、薄板シール片20の浮上特性が局所的に低下してしまうことを抑止することができるので、シール性の低下を抑止すると共に、薄板シール片20と回転軸5との接触磨耗を抑止することができる。
【0068】
また、第一研削工程S14において、正常に積層された薄板シール片20に合わせて、小口側面12dから突出した一部の薄板シール片20を研削して平滑にするので、下流側空間Lのうち周方向における各部位を容易に設計された大きさにすることができる。このため、各微小間隙sのガス圧力分布を設計されたガス圧力分布に容易に近似させることができる。
【0069】
また、第一研削工程S14の後にシール片積層体12を曲げる曲げ工程S15を有するので、直線状に連結されたシール片積層体12に研削加工を施せばよく、第一研削工程S14が比較的に容易となる。
【0070】
また、シール片積層体12のうち、多数枚の薄板シール片20の内方端20bが集合してなる小口内方端面12bを支持した状態で施すので、研削により薄板シール片20の内方端20b側が撓むことを抑止することができ、比較的に容易かつ正確に研削加工をすることができる。
【0071】
また、シールセグメント11の生産治具30によれば、多数枚の薄板シール片20の側方突出部21dと嵌合する溝部33aと、多数枚の薄板シール片20の側端部20cに当接する当接平面部33とを備えるので、薄板シール片20の位置決めを迅速かつ正確に行うことができ、積層工程S12を容易にすることができる。また、シール片積層体12の小口側面12dに対する研削加工を迅速かつ正確に行うことができ、第一研削工程S14を容易にすることができる。
【0072】
また、多数枚の薄板シール片20の内方端20bに当接する内方端当接部35を備えるので、薄板シール片20の位置決めをより迅速かつ正確に行うことができ、積層工程S12をさらに容易にすることができる。また、シール片積層体12に対する研削加工をより迅速かつ正確に行うことができ、第一研削工程S14をさらに容易にすることができる。
【0073】
また、ガスタービン1はシールセグメント11を備えるので、作動流体gに対するシール性を維持させた状態で、かつ、継続的に軸方向のシールがなされる。これにより、メンテナンス性を良好にすることができる。
【0074】
(シールセグメントの製造方法の変形例及びこれに用いる生産治具)
図11は、上述したシールセグメントの製造方法F1の変形例であるシールセグメントの製造方法F2のフローチャートであり、図12は、これに用いる生産治具50の平面図である。なお、上述した実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
図11に示すように、シールセグメントの製造方法F2は、薄板シール片20の薄板シール片製作工程S11〜連結工程S13までは、シールセグメントの製造方法F1と同様であるが、薄板シール片20の連結工程S13の後に、シール片積層体12´に対する曲げ工程S24を有し、この後に第一研削工程(第一平滑加工工程)S25を有する点で、シールセグメントの製造方法F1と相違する(図7参照)。
【0076】
シールセグメントの製造方法F2においては、薄板シール片20の連結工程S13までは生産治具30を用いることができるが、第一研削工程S25においては、シール片積層体12が曲率を有した状態であるために、直線状の生産治具30を用いずに、図12に示すように、曲げ工程と同一の曲率が設定された曲線状(平面視扇形)の生産治具50を用いて小口側面12dを研削する。
これにより、連結工程S13の後であって第一研削工程S25の前にシール片積層体12´を曲げるので、曲げ工程S24によって小口側面12dに凹凸が生じたとしても第一研削工程S25により小口側面12dを平滑的にすることができる。
【0077】
なお、このシールセグメントの製造方法F2においては、曲げ工程S24の後に保持リング13,14と、背面スペーサ15とをシール片積層体12に組み付ける予組付工程(リテーナ部材装着工程)S26を有するようにしてもよい。すなわち、シール片積層体12における各薄板シール片20の頭部21を保持リング13,14によって固く保持させることで、薄板シール片20の外方端20a側の撓みを効果的に抑止することができ、比較的に容易かつ正確に研削加工をすることができる。
なお、この場合には、生産治具50の溝部33aを保持リング13,14と嵌合可能に構成すればよく、組立工程S16においては、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17とを周方向の一端部から挿入してシールセグメント11を組み立てればよい。
【0078】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、本発明に係るシールセグメント11をガスタービン1へ適用する場合について説明したが、例えば、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の回転機械全般に広く採用することができる。
【0079】
また、上述した実施の形態では、小口側面12cには研削を施さなかったが、この小口側面12cを研削する第二研削工程(第二平滑加工工程)を有する製造方法としてもよい(図7及び図11において符号S30で図示する。)。第二研削工程S30によって小口側面12cを平滑にすることで、図9に示すように、微小間隙sの流体流入部の上流側空間Hの大きさを均一的なものとすることができる。従って、各微小間隙sにおけるガス圧力分布がより均一的なものとなり、局所的に浮上特性が変動することをさらに抑止することができる。よって、シール性の低下をさらに抑止すると共に、薄板シール片20と回転軸5との接触磨耗をさらに抑止することができる。なお、この第二研削工程における研削工程に代えて他の加工方法(例えば放電加工)を用いて小口側面12cを平滑にしてもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態では、研削した小口側面12dを高圧側領域に向ける構成としたが、低圧側領域に向けても構わない。
【0081】
また、上述した実施の形態では、第一研削工程S14,S25において、突出していない薄板シール片20に合わせて突出した薄板シール片20を研削し、小口側面12dを平滑にしたが、当接平面33bから一定の距離を空けて研削を施すことにより、小口側面12dを平滑にしてもよい。この際、薄板シール片製作工程S11において薄板シール片20(の胴部22)の幅寸法に余裕削り代を形成しておくことで、薄板シール片20が過度に研削されることを防止することができる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、第一研削工程S14,S25においてハンドグラインダーGを用いる構成としたが、他の研削工具及び工作機械を用いてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、薄板シール片製作工程S11においてプレスにより薄板シール片20を製作したが、エッチング等の他の方法を用いて薄板シール片を製作してもよい。エッチングによれば、頭部21を二枚重ねにすることなく、直接的に頭部21と胴部22の厚さを調整することが可能である。
【0084】
また、上述した実施の形態では、頭部21と胴部22との間に傾斜を設けた薄板シール片20を積層させたシール片積層体12を用いたが、頭部21と胴部22とが真直状(傾斜していない)の薄板シール片を積層させたシール片積層体について本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…ガスタービン(回転機械)
2…圧縮機(回転機械)
4…タービン(回転機械)
5…回転軸
11…シールセグメント(軸シール装置)
12…シール片積層体
12b…小口内方端面
12c,12d…小口側面
13,14…保持リング(リテーナ部材)
20…薄板シール片
20a…外方端
20b…内方端
20c,20d…側端部
30,50…生産治具(軸シール装置の生産治具)
33a…溝部(外方端嵌合部)
33b…当接平面
35…内方端当接部
F1,F2…シールセグメントの製造方法(軸シール装置の製造方法)
s…微小間隙
S11…薄板シール片製作工程
S12…積層工程
S13…連結工程
S14,S25…第一研削工程(第一平滑加工工程)
S15,S24…曲げ工程
S16…組立工程
S26…予組付工程(リテーナ部材装着工程)
S30…第二研削工程(第二平滑加工工程)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片が積層され、これら多数枚の薄板シール片の径方向外方端側が互いに連結されると共に径方向内方端が自由端とされて、相互に隣接する二つの薄板シール片毎に微小間隙が形成された軸シール装置の製造方法であって、
前記多数枚の薄板シール片を一方向に積層する積層工程と、
前記積層された多数枚の薄板シール片の外方端側を互いに連結してシール片積層体を形成する連結工程と、
前記シール片積層体のうち、前記薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部がそれぞれ多数集合してなる二つの小口側面の一方を外部の平面に当接させると共に、他方を平滑加工する第一平滑加工工程とを有することを特徴とする軸シール装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一平滑加工工程は、前記外部の平面から一定の間隔を空けて前記他方の小口側面を平滑加工することを特徴とする請求項1に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項3】
前記第一平滑加工工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項4】
前記連結工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有し、
前記第一平滑加工工程は、曲率を有した前記シール片積層体に対して施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項5】
前記連結工程の後に、前記シール片積層体の外方端側の少なくとも一部に嵌合可能なリテーナ部材を装着するリテーナ部材装着工程を有し、
前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体に前記リテーナ部材を嵌合させた状態で施すことを特徴とする請求項4に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項6】
前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体のうち、前記多数枚の薄板シール片の内方端が集合してなる小口内方端面を支持した状態で施すことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項7】
前記第一平滑加工工程において前記平面に当接させた一方の小口側面を平滑加工する第二平滑加工工程を有することを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、
前記多数枚の薄板シール片の外方端側と嵌合する外方端嵌合部と、
前記薄板シール片の外方端側が前記外方嵌合部に嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする軸シール装置の生産治具。
【請求項9】
請求項4に記載の軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、
前記シール片積層体に嵌合した前記リテーナ部材と嵌合するリテーナ部材嵌合部と、
該リテーナ部材嵌合
部に前記リテーナ部材が嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする軸シール装置の生産治具。
【請求項10】
前記多数枚の薄板シール片の内方端に当接する内方端当接部を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の軸シール装置の生産治具。
【請求項11】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法によって製造された軸シール装置を前記回転軸の周囲に備えたことを特徴とする回転機械。
【請求項1】
回転軸の周囲に沿って周方向に多数枚の薄板シール片が積層され、これら多数枚の薄板シール片の径方向外方端側が互いに連結されると共に径方向内方端が自由端とされて、相互に隣接する二つの薄板シール片毎に微小間隙が形成された軸シール装置の製造方法であって、
前記多数枚の薄板シール片を一方向に積層する積層工程と、
前記積層された多数枚の薄板シール片の外方端側を互いに連結してシール片積層体を形成する連結工程と、
前記シール片積層体のうち、前記薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部がそれぞれ多数集合してなる二つの小口側面の一方を外部の平面に当接させると共に、他方を平滑加工する第一平滑加工工程とを有することを特徴とする軸シール装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一平滑加工工程は、前記外部の平面から一定の間隔を空けて前記他方の小口側面を平滑加工することを特徴とする請求項1に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項3】
前記第一平滑加工工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項4】
前記連結工程の後に前記シール片積層体を曲げる曲げ工程を有し、
前記第一平滑加工工程は、曲率を有した前記シール片積層体に対して施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項5】
前記連結工程の後に、前記シール片積層体の外方端側の少なくとも一部に嵌合可能なリテーナ部材を装着するリテーナ部材装着工程を有し、
前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体に前記リテーナ部材を嵌合させた状態で施すことを特徴とする請求項4に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項6】
前記第一平滑加工工程は、前記シール片積層体のうち、前記多数枚の薄板シール片の内方端が集合してなる小口内方端面を支持した状態で施すことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項7】
前記第一平滑加工工程において前記平面に当接させた一方の小口側面を平滑加工する第二平滑加工工程を有することを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、
前記多数枚の薄板シール片の外方端側と嵌合する外方端嵌合部と、
前記薄板シール片の外方端側が前記外方嵌合部に嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする軸シール装置の生産治具。
【請求項9】
請求項4に記載の軸シール装置の製造方法に用いられる軸シール装置の生産治具であって、
前記シール片積層体に嵌合した前記リテーナ部材と嵌合するリテーナ部材嵌合部と、
該リテーナ部材嵌合
部に前記リテーナ部材が嵌合した状態において、前記多数枚の薄板シール片の自由端側における幅方向両側端部の一方に当接する当接平面とを備えることを特徴とする軸シール装置の生産治具。
【請求項10】
前記多数枚の薄板シール片の内方端に当接する内方端当接部を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の軸シール装置の生産治具。
【請求項11】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の軸シール装置の製造方法によって製造された軸シール装置を前記回転軸の周囲に備えたことを特徴とする回転機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−236969(P2011−236969A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108691(P2010−108691)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】
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