説明

軸受け

【課題】 軸受け部材の内面にライニングした樹脂層が軸受け部材内面から剥離することを防止できる軸受けを提供すること。
【解決手段】 金属製軸受け部材11と、軸受け部材11の内面にライニングされた樹脂層20と、を有する軸受け10である。軸受け部材11の内面に、軸方向に長い複数のスプライン12が形成され、スプライン12の管の内周側の開口部の幅寸法がスプライン12の奥側の幅寸法に比べて小さく形成され、軸受け部材11の内面に管の周方向に走る凹部13が形成されている。凹部は管の内面の全周に亘って走る環状溝である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種産業機械に使用される軸受けに関し、詳しくは樹脂層が内面にライニングされた軸受けに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸に対する磨耗を防止したり、軸との滑りを良くするなどのために、金属製軸受け部材の内面に樹脂をライニングすることが行われている。
【0003】
しかし、樹脂層の成形収縮、あるいは金属製軸受け部材との線膨張率の相違により、樹脂層が管の中心方向に向けて収縮し剥離する場合がある。また、樹脂層が回転軸からの負荷や衝撃等によって軸受け部材の内面から剥離する場合がある。
【0004】
従来、例えば、特開平7−19254号公報(特許文献1)では、雌形スプラインシャフトの内面に、軸線方向に延びる凹凸を形成し、この凹凸内面に自己潤滑性樹脂のコーティングを設ける技術が開示されている。
【0005】
しかし、このスプラインシャフトは、軸受けとして使用できず、またコーティングが剥離するおそれがある。
【特許文献1】特開平7−19254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、軸受け部材の内面にライニングした樹脂層が軸受け部材内面から剥離することを防止できる軸受けを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の軸受けは、金属製軸受け部材と、該軸受け部材の内面にライニングされた樹脂層と、を有する軸受けであって、該軸受け部材の内面に、軸方向に長い複数のスプラインが形成され、該スプラインの軸受け部材の内周側の開口部の幅寸法がスプラインの奥側の幅寸法に比べて小さく形成され、該軸受け部材の内面に軸受け部材の周方向に走る凹部が形成されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0008】
一つの実施形態では、前記凹部が、軸受け部材の内面の全周に亘って走る環状溝である。
【0009】
一つの実施形態では、前記樹脂層が熱硬化性樹脂を硬化させて形成されている。
【0010】
本発明の他の軸受けは、金属製軸受け部材と、該軸受け部材の内面にライニングされた樹脂層と、を有する軸受けであって、該軸受け部材の内面に、複数のスプラインが軸方向に向けて形成され、該スプラインの軸受け部材の内周側の開口部の幅寸法がスプラインの奥側の幅寸法に比べて小さく形成され、該軸受け部材の内面に凹凸部が形成されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0011】
一つの実施形態では、前記樹脂層の内面は平滑に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軸受けにおいては、軸受け部材の内面に、軸方向に長い複数のスプラインが形成されていることにより、軸受け部材の内面にライニングされた樹脂層が軸受けの周方向へ移動することが妨げられ、またスプラインの軸受け部材の内周側の開口部の幅寸法がスプラインの奥側の幅寸法に比べて小さく形成されていることにより、樹脂層の収縮等によって軸受けの半径方向内側へ樹脂層が剥離することが防止され、さらに軸受け部材の内面に軸受け部材の周方向に走る凹部が形成されていることにより、軸受け部材の軸方向への樹脂層の移動が妨げられる。
【0013】
従って、軸受け内に配置される軸の摺動、回転等によって樹脂層の剥離現象が防止でき、また樹脂層が軸受け部材の軸方向に抜けることによって起こる剥離現象が防止でき、さらに軸受け部材の中心に向かって樹脂層が収縮することによって起こる剥離現象も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0015】
図1〜図4に示すように、本実施形態の軸受け10は、金属製の軸受け部材11と、該軸受け部材11の内面にライニングされた樹脂層20と、を有する。
【0016】
該軸受け部材11の内面に、5本のスプライン12が軸方向に向けて形成されている。スプライン12の本数は、用途やサイズ等によって変更でき、4〜10が好ましく、特に好ましい本数は5〜8である。このスプライン12の管(軸受け部材)の内周側の開口部の幅寸法L1はスプライン12の奥側の幅寸法L2に比べて小さく形成されている。このスプライン12の断面形状は、ほぼ台形に形成されている。
【0017】
このスプライン12は、軸受け部材11の内面の軸方向に、スロッター、ブローチ、鍛造、鋳造等を用いて形成することができる。
【0018】
また、スプライン12とは異なる位置において軸受け部材11の内面に、管の周方向に走る凹部13が形成されている。この凹部13としては、管の内面の全周に亘って走る環状溝で形成するのが好ましい。あるいは、軸受け部材11の内面に凹凸部を形成してもよい。
【0019】
環状溝13の深さは、図1および図2に示すように、スプライン12の深さより小寸法とされている。環状溝13の本数は、図2に示すように1本でもよいが、用途や軸受け部材11のサイズ等によって複数本(例えば、2〜4)形成してもよい。
【0020】
また、軸受け部材11の内面に凹凸を形成する場合、スプライン12が形成されていない軸受け部材11の内面に、スプライン12より浅い深さの凹部を一つ以上形成してもよい。
【0021】
軸受け部材11の内面にライニングされた樹脂層20は、熱硬化性樹脂を硬化させて形成されている。熱硬化性樹脂としては、例えば、ベークライト等のフェノールーホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等があげられる。また、用途に応じて、熱硬化性樹脂に替えて熱可塑性樹脂を用いることもできる。樹脂層20は、軸受け部材11(管)の内面に、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、押し出し成形などの手段で形成することができる。
【0022】
この樹脂層20の内面は平滑に形成されている。つまり、凹凸が形成されていない。
【0023】
従来では、軸受け部材11の内面に樹脂をライニングする場合、三種類の剥離現象を起こすことが予想された。すなわち、管の内周方向に、回転する方向に剥離する場合、管の軸方向に抜ける方向に剥離する場合、および樹脂の成形収縮および金属との線膨張率の相違により、管中心方向に樹脂ライニングが収縮し、剥離する場合である。
【0024】
本発明においては、管の内周方向に回転することによって起きる剥離現象は、スプライン12によって防止できる。管の軸方向に抜けることによって起こる剥離現象は、凹部あるいは環状溝13(抜け止め溝)によって防止できる。また、管の中心に向かって樹脂層20が収縮することによって起こる剥離現象は、スプライン12のアンダーカットによって防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の一実施形態の軸受け部材の正面図である。
【図2】図2は図1に示す軸受け部材の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の軸受けの正面図である。
【図4】図4は図3に示す軸受け部材の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 軸受け
11 軸受け部材
12 スプライン
13 凹部
20樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の軸受け部材と、該軸受け部材の内面にライニングされた樹脂層と、を有する軸受けであって、
該軸受け部材の内面に、軸方向に長い複数のスプラインが形成され、該スプラインの軸受け部材の内周側の開口部の幅寸法がスプラインの奥側の幅寸法に比べて小さく形成され、
該軸受け部材の内面に軸受け部材の周方向に走る凹部が形成されている軸受け。
【請求項2】
前記凹部が、軸受け部材の内面の全周に亘って走る環状溝である請求項1に記載の軸受け。
【請求項3】
前記樹脂層が熱硬化性樹脂を硬化させて形成されている請求項1に記載の軸受け。
【請求項4】
金属製軸受け部材と、該軸受け部材の内面にライニングされた樹脂層と、を有する軸受けであって、
該軸受け部材の内面に、複数のスプラインが軸方向に向けて形成され、該スプラインの軸受け部材の内周側の開口部の幅寸法がスプラインの奥側の幅寸法に比べて小さく形成され、
該軸受け部材の内面に凹凸部が形成されている軸受け。
【請求項5】
前記樹脂層の内面は平滑に形成されている請求項1〜4のいずれかの項に記載の軸受け。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226510(P2006−226510A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44476(P2005−44476)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(502016530)中原化成品工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】