説明

軸受ユニット

【課題】ラジアル剛性を向上させると共に、軸受の低コスト化と低トルク化を図ることが可能な軸受ユニットを提供する。
【解決手段】軸体2とハウジング4との間に沿って配列された3個の第1〜第3の単列軸受6,8,10とを具備し、第1の単列軸受の両側に第2及び第3の単列軸受が配列されていると共に、各単列軸受は、内輪12、外輪14、複数の転動体16を備え、第2の単列軸受と第1の単列軸受との間には、外輪相互間に当接させた状態で間座18が介在されていると共に、第1の単列軸受と第3の単列軸受との間には、内輪相互間に当接させた状態で間座20が介在されており、第2の単列軸受の内輪は、外向フランジ2fに当接され、第3の単列軸受の内輪は、軸体に接着固定され、第2の単列軸受と第1の単列軸受とは、背面組合せで配列され、第1の単列軸受と第3の単列軸受とは、正面組合せで配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスクドライブ(HDD)装置のスイングアームを回転自在に支持する軸受ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の軸受ユニットが用いられたHDD装置としては、例えば図3(a),(b)に示すように、磁気ディスク102を回転させるスピンドルモータ104と、磁気ディスク102に対して情報の記録或いは読取を行うための磁気ヘッド106とを備えたものが知られている。磁気ヘッド106は、軸受ユニットJで回動自在に支持されたスイングアーム108の先端に取り付けられており、その基端には、当該スイングアーム108を回転駆動させるボイスコイル110が設けられている。また、スイングアーム108は、軸受ユニットJを介してHDD装置のベースBs上に回動自在に支持されている。この場合、磁気ディスク102を回転させた状態でスイングアーム108を回動させて、磁気ヘッド106を磁気ディスク102に対して平行移動させることにより、磁気ディスク102に情報を記録したり、或いは磁気ディスク102から情報を読み取ることができる。
【0003】
また、近年では、上述したようなHDD装置において、情報の記録及び読取の高速化が要求されており、これに伴って、当該HDD装置に用いられる軸受ユニットJには、ラジアル方向の剛性(ラジアル剛性)を向上させる要求がされている。そこで、かかる要求に応えるために、例えば特許文献1には、アンギュラ玉軸受の玉数を増加させることでラジアル剛性を向上させる技術が提案されている。また、例えば特許文献2,3には、4個(列)の玉軸受を組み込むことでラジアル剛性を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−329216
【特許文献2】特開2005−207455
【特許文献3】US6,191,924 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、玉数を増加させる技術(特許文献1)では、軸受の部品点数が増加し、製造コストが上昇してしまう場合があり、そのため、当該軸受の低コスト化には一定の限界があった。また、4個(列)の玉軸受を組み込む技術(特許文献2,3)では、軸受回転時のトルクが上昇してしまう場合があり、そのため、当該軸受の低トルク化には一定の限界があった。
そこで、ラジアル剛性を向上させると共に、軸受の低コスト化と低トルク化を図ることができる技術の開発が要望されているが、現在そのような技術は知られていない。
【0006】
本発明は、このような要望に応えるためになされており、その目的は、ラジアル剛性を向上させると共に、軸受の低コスト化と低トルク化を図ることが可能な軸受ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明は、一端側に外向フランジが突設され且つ当該一端側から他端側に向けて延出した軸体と、軸体の外側を覆うように対向配置されたハウジングと、軸体とハウジングとの間に沿って配列された3個の第1〜第3の単列軸受とを具備し、第1の単列軸受の両側に第2及び第3の単列軸受が配列されていると共に、各単列軸受は、内輪及び外輪と、内外輪間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた軸受ユニットであって、第2の単列軸受と第1の単列軸受との間には、外輪相互間に当接させた状態で間座が介在されていると共に、第1の単列軸受と第3の単列軸受との間には、内輪相互間に当接させた状態で間座が介在されており、第2の単列軸受の内輪は、外向フランジに当接され、第3の単列軸受の内輪は、軸体に接着固定され、第2の単列軸受と第1の単列軸受とは、背面組合せで配列され、第1の単列軸受と第3の単列軸受とは、正面組合せで配列されている。
本発明において、第1の単列軸受の接触角は、第2及び第3の単列軸受の接触角よりも大きく設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラジアル剛性を向上させると共に、軸受の低コスト化と低トルク化を図ることが可能な軸受ユニットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図、(b)は、同図(a)の軸受ユニットの組立に際し、第1の予圧付与プロセスを示す図、(c)は、同図(a)の軸受ユニットの組立に際し、第2の予圧付与プロセスを示す図。
【図2】(a)は、本発明の変形例に係る軸受ユニットの構成を示す断面図、(b)は、同図(a)の軸受ユニットの組立に際し、予圧付与プロセスを示す図。
【図3】(a)は、HDD装置の構成を示す断面図、(b)は、同図(a)のHDD装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る軸受ユニットについて添付図面を参照して説明する。
図1(a)に示すように、本実施の形態の軸受ユニットJは、一端側に外向フランジ2fが突設され且つ当該一端側から他端側に向けて延出した軸体2と、軸体2の外側を覆うように対向配置されたハウジング4と、軸体2とハウジング4との間に沿って配列された3個の単列軸受6,8,10とを備えている。また、それぞれの単列軸受6,8,10は、軸体2に接着固定された内輪12と、内輪12に対向してハウジング4に接着固定された外輪14と、内外輪12,14間に転動自在に組み込まれた複数の転動体16とを備えて構成されている。
【0011】
なお、図面では、転動体16として“玉”を例示しているが、“ころ”が適用される場合もある。また、図面上で特に参照符号は付さないが、3個の単列軸受(第1の単列軸受6、第2の単列軸受8、第3の単列軸受10)には、それぞれ、複数の転動体16を回転自在に保持する保持器と、軸受内部を軸受外部から密封するための密封板(例えば、シール、シールド)とが設けられているが、これらは必ずしも必要ではない。
【0012】
かかる軸受構成において、3個の単列軸受(第1の単列軸受6、第2の単列軸受8、第3の単列軸受10)は、所定の予圧荷重が付与された状態で軸体2とハウジング4との間に接着固定されている。この場合、3個の単列軸受6,8,10のうち、第1の単列軸受6の予圧荷重は、他の2個の単列軸受(第2の単列軸受8、第3の単列軸受10)よりも大きな予圧荷重に設定されていると共に、当該第1の単列軸受6の接触角L1は、第2の単列軸受8の接触角L2及び第3の単列軸受10の接触角L3よりも大きく設定されている。
【0013】
なお、接触角L1,L2,L3は、各単列軸受6,8,10に予圧荷重を付与した際に各転動体16が内外輪12,14に接した点相互を結んだ線と、軸受中心軸に垂直な平面(ラジアル平面)との成す角度として規定されている。この場合、接触角が大きくなるに従って軸受のアキシアル荷重を負荷する能力が大きくなり、これとは逆に、接触角が小さくなるに従って軸受のラジアル荷重を負荷する能力が大きくなる。
【0014】
ここで、本実施の形態の軸受ユニットJにおける3個の単列軸受6,8,10の配列構成について説明すると、大きな接触角L1の第1の単列軸受6を一端側の外向フランジ2fに当接させると共に、小さな接触角L3の第3の単列軸受10を他端側に配列し、双方の軸受6,10相互の中間に小さな接触角L2の第2の単列軸受8を配列させている。
【0015】
かかる配列構成において、一端側で隣り合った第1の単列軸受6と第2の単列軸受8とは、背面組合せ(DB)で配列されている共に、双方の軸受6,8の予圧方向は、互いに反対方向に設定されている。この場合、大きな接触角L1の第1の単列軸受6の予圧荷重は、他の2個の小さな接触角L2,L3の第2及び第3の単列軸受8,10の予圧荷重の合計と略同一に設定されている。別の捉え方をすると、第1の単列軸受6の予圧荷重は、第2及び第3の単列軸受8,10のそれぞれに付与した各予圧荷重の略2倍に設定されている。このとき、第2及び第3の単列軸受8,10の予圧荷重は、互いに略同程度に設定すれば良い。
【0016】
また、大きな接触角L1の第1の単列軸受6の予圧方向は、第2及び第3の単列軸受8,10の予圧方向とは反対方向に設定されている。これにより、第1の単列軸受6と第2の単列軸受8とが背面組合せ(DB)で配列されると共に、第2の単列軸受8と第3の単列軸受10とが並列組合せ(DT)で配列されることになる。なお、背面組合せ(DB)の軸受は、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を負荷する能力があり、並列組合せ(DT)の軸受は、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を負荷する能力がある。
【0017】
次に、本実施の形態の軸受ユニットJの組立方法の一例について説明する。
まず、図1(b)に示すように、大きな接触角L1の第1の単列軸受6を軸体2とハウジング4との間に挿入し、その内輪12を外向フランジ2fに当接させた状態で軸体2に接着固定する。このとき、第1の単列軸受6の外輪14は、ハウジング4に接着固定しないで移動フリーな状態にしておく。また、第1の単列軸受6のラジアル内部すきまは、予め他の2つの単列軸受(第2及び第3の単列軸受8,10)よりも大きく設定しておく。
【0018】
続いて、外輪間座18を軸体2とハウジング4との間に挿入し、第1の単列軸受6の外輪14に当接させた後、小さな接触角L2の第2の単列軸受8を軸体2とハウジング4との間に挿入し、その外輪14を外輪間座18に当接させる。この状態において、第2の単列軸受8側から外向フランジ2f方向へ第1の予圧荷重F+αを加える。このとき、第1の予圧荷重F+αは、第2の単列軸受8の内輪12に加えられ、その状態を維持しつつ当該内輪12を軸体2に接着固定する。これにより、第2の単列軸受8は、軸体2とハウジング4との間に固定(仮止め)される。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、外輪間座20を軸体2とハウジング4との間に挿入し、第2の単列軸受8の外輪14に当接させた後、小さな接触角L3の第3の単列軸受10を軸体2とハウジング4との間に挿入し、その外輪14を外輪間座20に当接させる。この状態において、第3の単列軸受10側から外向フランジ2f方向へ第2の予圧荷重Fを加える。このとき、第2の予圧荷重Fは、第3の単列軸受10の内輪12に加えられ、その状態を維持しつつ当該内輪12を軸体2に接着固定し、更に外輪14をハウジング4に接着固定する。
【0020】
この場合、第1の予圧荷重F+αは、第2の予圧荷重Fを加えたときに第2の単列軸受8の予圧荷重の減少分を考慮して、第2の予圧荷重Fよりも大きく設定されている。具体的に説明すると、軸体2とハウジング4との間に仮止めされた第2の単列軸受8は、その内輪12が軸体2に接着固定され、その外輪14がハウジング4に沿って移動フリーな状態となっている。また、上述したように、第1の単列軸受6の外輪14もハウジング4に沿って移動フリーな状態となっている。
【0021】
このような状態において、第2の予圧荷重Fを第3の単列軸受10の内輪12に加えたとき、その予圧力は、第3の単列軸受10の外輪14から外輪間座20を介して第2の単列軸受8の外輪14に伝達されると共に、外輪間座18を介して第1の単列軸受6の外輪14に伝達される。このとき、第1及び第2の単列軸受6,8の外輪14は、共にハウジング4に沿って所定量だけ移動することになる。
【0022】
ここで、第1の単列軸受6は、既に付与されている予圧荷重(第1の予圧荷重F+α)が更に増加することになるが、これとは逆に、第2の単列軸受8は、既に付与されている予圧荷重(第1の予圧荷重F+α)が減少する。従って、第1の予圧荷重F+αは、第2の予圧荷重Fを加えたときに第2の単列軸受8の予圧荷重の減少分(α)を考慮して、第2の予圧荷重Fよりも大きく設定されている。別の言い方をすると、第2の予圧荷重Fを加えたときに、既に第2の単列軸受8に付与された第1の予圧荷重F+αが減少しても、当該第2の単列軸受8に第2の予圧荷重Fが残留するように、第1の予圧荷重F+αが設定されている。
【0023】
これにより、一端側の第1の単列軸受6には、第2の予圧荷重Fの略2倍の予圧荷重が付与された状態となり、中央の第2の単列軸受8及び他端側の第3の単列軸受10には、それぞれ第2の予圧荷重Fが付与された状態となる(図1(a))。なお、第1の予圧荷重F+αは、軸受ユニットJの内部諸元や使用目的などに応じて任意に設定されるため、特に数値限定はしないが、概ねF×1.3〜F×1.5程度に設定すれば良い。
【0024】
以上、本実施の形態によれば、軸体2とハウジング4との間に沿って配列された第1の単列軸受6の予圧荷重を他の2個の単列軸受(第2の単列軸受8、第3の単列軸受10)よりも大きな予圧荷重に設定すると共に、当該第1の単列軸受6の接触角L1を他の2個の単列軸受8,10の接触角L2,L3よりも大きく設定したことにより、より大きな予圧荷重を受けても転動体16と内外輪12,14との間の接触面圧を低く抑えることができる。これにより、軸受ユニットJ全体の予圧荷重を大きくすることができる。即ち、同様の軸受を3個使用した軸受ユニットに比べて予圧荷重を大きく設定することができる。
【0025】
この結果、本実施の形態の軸受ユニットJは、同様の軸受を2個使用した既存の軸受ユニットよりもラジアル剛性を飛躍的に向上させることができる。別の捉え方をすると、本実施の形態の軸受ユニットJは、同様の軸受を2個使用した既存の軸受ユニットよりもラジアル剛性を向上させながら、同様の軸受を4個使用した既存の軸受ユニットに比べて軸受回転時のトルク上昇を抑えることができる。
【0026】
従って、本実施の形態の軸受ユニットJを例えば図3に示すようなHDD装置に組み込んで、そのスイングアーム108を回動自在に支持した場合、当該スイングアーム108を高速でスムーズに動作させることができる。これにより、例えば記録トラック密度が30万TPI以上の磁気ディスク102に対して、スイングアーム108の磁気ヘッド106を高速で且つスムーズに走査させることが可能となり、その結果、情報の記録或いは読取精度を飛躍的に向上させることができる。
【0027】
また、本実施の形態の軸受ユニットJによれば、従来のように玉数を増加させる必要が無いため、軸受の部品点数が増加することも無い。これにより、低コストの軸受ユニットJを実現することができる。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることは無く、以下のような変形例も本発明の範囲に含めることができ、同様の効果を得ることができる。このため、以下の説明では、本変形例の構成についての説明にとどめ、その効果の説明は省略する。
【0029】
図2(a)には、本発明の変形例に係る軸受ユニットJの構成が示されており、当該軸受ユニットJにおいて、小さな接触角L2の第2の単列軸受8を一端側の外向フランジ2fに当接させると共に、小さな接触角L3の第3の単列軸受10を他端側に配列し、双方の軸受8,10相互の中間に大きな接触角L1の第1の単列軸受6を配列させている。
【0030】
かかる配列構成において、一端側で隣り合った第2の単列軸受8と第1の単列軸受6とは、背面組合せ(DB)で配列されている共に、双方の軸受8,6の予圧方向は、互いに反対方向に設定されている。この場合、大きな接触角L1の第1の単列軸受6の予圧荷重は、他の2個の小さな接触角L2,L3の第2及び第3の単列軸受8,10の予圧荷重の合計と略同一に設定されている。別の捉え方をすると、第1の単列軸受6の予圧荷重は、第2及び第3の単列軸受8,10のそれぞれに付与した各予圧荷重の略2倍に設定されている。このとき、第2及び第3の単列軸受8,10の予圧荷重は、互いに略同程度に設定すれば良い。
【0031】
また、大きな接触角L1の第1の単列軸受6の予圧方向は、第2及び第3の単列軸受8,10の予圧方向とは反対方向に設定されている。これにより、第2の単列軸受8と第1の単列軸受6とが背面組合せ(DB)で配列されると共に、第1の単列軸受6と第3の単列軸受10とが正面組合せ(DF)で配列されることになる。なお、背面組合せ(DB)の軸受及び正面組合せ(DF)の軸受は、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を負荷する能力がある。
【0032】
次に、本変形例の軸受ユニットJの組立方法の一例について説明する。
図2(b)に示すように、小さな接触角L2の第2の単列軸受8を軸体2とハウジング4との間に挿入し、その内輪12を外向フランジ2fに当接させた状態で軸体2に接着固定する。このとき、第2の単列軸受8の外輪14は、ハウジング4に接着固定しないで移動フリーな状態にしておく。
【0033】
続いて、外輪間座18を軸体2とハウジング4との間に挿入し、第2の単列軸受8の外輪14に当接させた後、大きな接触角L1の第1の単列軸受6を軸体2とハウジング4との間に挿入し、その外輪14を外輪間座18に当接させる。このとき、第1の単列軸受6のラジアル内部すきまは、予め他の2つの単列軸受(第2及び第3の単列軸受8,10)よりも大きく設定しておく。
【0034】
続いて、内輪間座22を軸体2とハウジング4との間に挿入し、第1の単列軸受6の内輪12に当接させた後、小さな接触角L3の第3の単列軸受10を軸体2とハウジング4との間に挿入し、その内輪12を内輪間座22に当接させる。この状態において、第3の単列軸受10側から外向フランジ2f方向へ予圧荷重F+βを加える。このとき、予圧荷重F+βは、第3の単列軸受10の外輪14に加えられ、これにより、3つの単列軸受8,6,10には、予圧荷重F+βが同時に付与される。
【0035】
この場合、予圧荷重F+βは、当該予圧荷重を解除したときに予め設定した残留予圧荷重Fが接触角の小さな2つの単列軸受8,10に付与され、接触角の大きな単列軸受6にFの2倍の残留予圧が付与されるように、残留予圧荷重Fよりも大きく設定されている。具体的に説明すると、第2の単列軸受8の外輪14は、ハウジング4に沿って移動フリーな状態となっており、第1の単列軸受6の内外輪12,14は、軸体2及びハウジング4に沿って移動フリーな状態となっている。
【0036】
このような状態において、予圧荷重F+βを第3の単列軸受10の外輪14に加えたとき、その予圧力は、各転動体16から内輪12に伝達された後、当該内輪12から内輪間座22を介して第1の単列軸受6の内輪12に伝達される。そして、当該内輪12に伝達された予圧力は、各転動体16から外輪14に伝達された後、外輪間座18を介して第2の単列軸受8の外輪14に伝達される。このとき、第3の単列軸受10の内外輪12,14、第2の単列軸受8の外輪14、第1の単列軸受6の内外輪12,14は、共に軸体2及びハウジング4に沿って所定量だけ移動することになる。
【0037】
そして、かかる状態を維持しつつ第3の単列軸受10の外輪14をハウジング4に接着固定し、更に、内輪12を軸体2に接着固定した後、予圧荷重F+βを解除する。これにより、中央に配列された第1の単列軸受6には、第2及び第3の単列軸受8,10の予圧荷重Fの略2倍の予圧荷重が付与された状態となる(図2(a))。なお、予圧荷重F+βは、軸受ユニットJの内部諸元や使用目的などに応じて任意に設定されるため、特に数値限定はしないが、概ねF×1.3〜F×1.5程度に設定すれば良い。
【符号の説明】
【0038】
2 軸体
2f 外向フランジ
4 ハウジング
6,8,10 単列軸受
12 内輪
14 外輪
16 転動体
18,20 間座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に外向フランジが突設され且つ当該一端側から他端側に向けて延出した軸体と、
軸体の外側を覆うように対向配置されたハウジングと、
軸体とハウジングとの間に沿って配列された3個の第1〜第3の単列軸受とを具備し、
第1の単列軸受の両側に第2及び第3の単列軸受が配列されていると共に、
各単列軸受は、内輪及び外輪と、内外輪間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた軸受ユニットであって、
第2の単列軸受と第1の単列軸受との間には、外輪相互間に当接させた状態で間座が介在されていると共に、
第1の単列軸受と第3の単列軸受との間には、内輪相互間に当接させた状態で間座が介在されており、
第2の単列軸受の内輪は、外向フランジに当接され、
第3の単列軸受の内輪は、軸体に接着固定され、
第2の単列軸受と第1の単列軸受とは、背面組合せで配列され、
第1の単列軸受と第3の単列軸受とは、正面組合せで配列されていることを特徴とする軸受ユニット。
【請求項2】
第1の単列軸受の接触角は、第2及び第3の単列軸受の接触角よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92980(P2012−92980A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288005(P2011−288005)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2007−21308(P2007−21308)の分割
【原出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】